説明

順浸透装置および順浸透法

【課題】順浸透装置を改善する。
【解決手段】 フィード溶液と、カチオン源およびアニオン源をイオン化した状態で含むドロー溶液とを半透膜を介して接触させ、該半透膜によって前記フィード溶液から分離された水で前記ドロー溶液を希釈する希釈手段と、前記希釈手段により希釈されたドロー溶液を、カチオン源およびアニオン源と、水とに分離する分離手段と、前記分離手段により分離されたカチオン源およびアニオン源を、前記希釈されたドロー溶液に戻し、溶解させる溶解手段と、を有し、前記アニオン源およびカチオン源は、それぞれ、非荷電体の状態での分子量が31以上であり、かつ、標準状態におけるヘンリー定数が1.0×104[Pa/mol・fraction]以上であることを特徴とする、順浸透装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、順浸透法(FO法)および、該FO法による分離および/または濃縮を行うことが可能な順浸透装置(FO装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
水不足は、世界中の乾燥地域や人口密度の高い地域において深刻な問題となっている。そこで、海水から塩を除去する海水処理技術が求められている。
【0003】
海水処理技術としては、膜処理法が知られており、該膜処理法では、通常、半透膜が用いられる。半透膜は、特定の大きさ以下の分子やイオンのみを透過させる膜として知られ、例えば、海水中の水は透過させるが塩は透過させない膜である。そして、溶質濃度が互いに異なる2種の溶液を、半透膜を隔てて接触させると、両溶液間に浸透圧差が生じ、溶質濃度が低い側、すなわち、浸透圧の低い側の溶液の溶媒が、溶質濃度が高い側、すなわち、浸透圧の高い側へ浸透する。この浸透現象は、理論的には、浸透圧差がゼロになる段階まで続く。例えば、海水と水とを半透膜を隔てて接触させた場合、水が海水側へ浸透して、平衡状態を形成しようとする。
このような半透膜を利用した膜処理法として、逆浸透法(RO法)と順浸透法(FO法)が知られている。
【0004】
RO法は、浸透圧の高い側から浸透圧の低い側へ水等の低分子成分を逆行して浸透させる技術である。このような逆浸透を起こさせるため、RO法では、浸透圧が高い側に、両溶液の浸透圧差を超える高い圧力を印加する。例えば、海水から水を分離する場合、海水と水とを半透膜を隔てて接触させ、海水側に、海水と水の浸透圧差を超える圧力、通常は、該浸透圧差をはるかに上回る圧力を印加して、海水中の水を水側に浸透させる。
【0005】
これに対し、FO法は、特許文献1および特許文献2においても開示されているとおり、浸透圧の高いドロー溶液(draw溶液)を用いて、人為的に、2種の溶液間に浸透圧差を生じさせて水を移動させる方法である。具体的には、原料溶液であるフィード溶液(feed溶液)と、該フィード溶液より浸透圧の高いドロー溶液とを半透膜を隔てて接触させる。そうすると、両溶液の浸透圧差により、フィード溶液の水がドロー溶液側へ浸透する。その後、ドロー溶液中の溶質成分を揮発させて回収することにより、フィード溶液の水を分取する。また、逆に、濃縮されたフィード溶液を分取する場合もある。
以下に、海水から水を分離する場合の一例を図1に従って説明する。
図1は、FO法を利用した海水処理装置の一例を示したものであって、実線の矢印は海水または海水から分離された水11の流れを、点線はドロー溶液またはドロー溶液の溶質12の流れを、それぞれ示している。最初に、海水11とドロー溶液12とが、半透膜13を介して接触する。海水11中の水は、半透膜13を介して、ドロー溶液12側に浸透する。そして、放散塔14中において、海水の水によって希釈されたドロー溶液からドロー溶液の溶質成分を揮発させることによって、水16と、ドロー溶液の溶質成分15とに分離する。ドロー溶液の溶質成分15は、ガス吸収器17にて希釈されたドロー溶液に溶解され、ドロー溶液12として再利用される。尚、18は圧力計である。
【0006】
ここで、ドロー溶液の溶質成分は、放散塔14にてガス化して分離されるため、高い揮発性を有することが求められる。また、ドロー溶液の溶質成分は、希釈されたドロー溶液に溶解されることから、高い溶解度を有することも求められる。さらに、ドロー溶液の溶質成分は、半透膜を透過しないことが当然に求められる。これらの要求に劣ると、FO装置またはFO法における、フィード溶液からの水の半透膜透過速度が劣ったり、ドロー溶液の溶質が、半透膜を漏れ出して、フィード溶液側へ移動してしまう速度が速くなったり、さらには、フィード溶液の水で希釈されたドロー溶液から溶質成分を揮発させることによって得られる水中の、ドロー溶液の溶質の残存量(放散性能)が大きいという問題が発生する。
ここで、ドロー溶液としては、アンモニアイオンと二酸化炭素イオンの溶液や、アンモニアイオンの溶液、二酸化硫黄の溶液などを用いる例が知られている(特許文献2、3)。しかしながら、上述の高い揮発性、高い溶解度および半透膜の不透過性を併せ持つものは得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6391205号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0145568号明細書
【特許文献3】米国特許第3171799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、特許文献2では、アンモニアと二酸化炭素を溶質とするドロー溶液を利用することによって、ドロー溶液の溶質成分の高い溶解度を確保しつつ、高い揮発性を達成し、それによって、FO法の処理性能と、放散性能の向上の両立を達成している。しかしながら、本発明者が検討したところ、アンモニアは希釈手段において、半透膜から漏れ出してしまう問題があることが分かった。すなわち、特許文献2の方法では、FO装置において、アンモニアを大量に補充することが必要であった。また、特許文献3では、ドロー溶液の溶質成分として、亜硫酸を使用することで半透膜の漏れ速度を減少させている。しかしながら、かかるドロー溶液では、高い溶解度を達成するためには、揮発性の低い溶質しか利用することができず、十分な放散性能を達成することは不可能であった。
本発明は、上記課題を解決するものであって、FO装置およびFO法において、フィード溶液からの水の半透膜透過速度を高く保ち、ドロー溶液の溶質が、半透膜を漏れ出して、フィード溶液側へ移動してしまうことを抑制し、さらに、フィード溶液の水で希釈されたドロー溶液から溶質成分を揮発させることによって得られる水中の、ドロー溶液の溶質の残存量を減らすこと(放散性能の向上)を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる状況のもと、本願発明者が鋭意検討を行った結果、ドロー溶液として、アニオン源およびカチオン源を含み、カチオン源は非荷電体の状態で分子量が31以上であり、かつ、カチオン源およびアニオン源の標準状態におけるヘンリー定数が1.0×104[Pa/mol・fraction]以上であるものを用いることにより、上記課題を解決しうることを見出した。
一般的に、ヘンリー定数が小さいほど水和し易く水和半径が大きいと考えられている(文献Journal of Chemical & Enginnering Data, 53(2008) 2873-2877式(4), (5), (6)の展開式、lnKaw=ΔGhyd/RT、ここでKawは無次元化されたヘンリー定数、ΔGhydは水和自由エネルギー(大きな負であるほど水和し易い)、Rはアボガドロ定数、Tは絶対温度)。また、水和半径が大きいほど半透膜における溶質の漏れが遅いと考えられている(文献Deaalination, 144(2002) 387-392 Fig2(b), 390ページ左段7行目〜右段8行目、文献Journal of Membrane Science, 74(1992) 95-103、Fig4, 5, 98ページ左段34行目〜101ページ左段9行目)。これは、水和量が大きい物質ほど、水中から揮発しにくい(ヘンリー定数が小さい)と考えると自然なことであり、半透膜の漏れ難さと揮発しやすさの両立が困難でることを表している。従って、ドロー溶液の成分を調整することによって、上記問題を解決することは極めて困難であると予測された。しかしながら、驚くべきことに、本願発明者が鋭意検討した結果、特定以上の分子量を持ち、かつ、特定のヘンリー定数を満たすカチオン源とアニオン源をドロー溶液の溶質成分として用いることにより、これらの問題を解決しうることを見出したのである。
具体的には、以下の手段により、本発明の課題は解決された。
【0010】
<1>フィード溶液と、カチオン源およびアニオン源をイオン化した状態で含むドロー溶液とを半透膜を介して接触させ、該半透膜によって前記フィード溶液から分離された水で前記ドロー溶液を希釈する希釈手段と、
前記希釈手段により希釈されたドロー溶液を、カチオン源およびアニオン源と、水とに分離する分離手段と、
前記分離手段により分離されたカチオン源およびアニオン源を、前記希釈されたドロー溶液に戻し、溶解させる溶解手段と、
を有し、
カチオン源は、非荷電体の状態での分子量が31以上であり、かつ、アニオン源およびカチオン源は、それぞれ、標準状態におけるヘンリー定数が1.0×104[Pa/mol・fraction]以上であることを特徴とする、順浸透装置。
<2>標準状態における、アニオン源の非荷電体の酸解離定数(pKa)が6.0〜7.0である、<1>に記載の順浸透装置。
<3>標準状態における、カチオン源の非荷電体の塩基解離定数(pKb)が2.0〜4.5である、<1>または<2>に記載の順浸透装置。
<4>カチオン源および/またはアニオン源の非荷電体の1atmにおける沸点が100℃未満である、<1>〜<3>のいずれか1項記載の順浸透装置。
<5>標準状態における、カチオン源の非荷電体の塩基解離定数(pKb)が、4.0〜4.5である、<1>〜<4>のいずれか1項に記載の順浸透装置。
<6>カチオン源の標準状態におけるヘンリー定数が1.0×105[Pa/mol・fraction]以上であることを特徴とする、<1>〜<5>のいずれか1項に記載の順浸透装置。
<7>カチオン源の標準状態におけるヘンリー定数が3.0×105[Pa/mol・fraction]以上であることを特徴とする、<1>〜<6>のいずれか1項に記載の順浸透装置。
<8>半透膜と接触させる直前のドロー溶液中のアニオン源およびカチオン源の濃度が、それぞれ、水1kgあたり、2.4mol以上であることを特徴とする、<1>〜<7>のいずれか1項に記載の順浸透装置。
<9>前記アニオンが、炭酸イオンおよび/または炭酸水素イオンである、<1>〜<8>のいずれか1項に記載の順浸透装置。
<10>前記アニオン源と前記カチオン源のモル比が、1:1〜1:2である、<1>〜<9>のいずれか1項に記載の順浸透装置。
<11>前記カチオン源がアミン化合物である、<1>〜<10>のいずれか1項に記載の順浸透装置。
<12>前記カチオン源が、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、イソプロピルアミン、ジメチルアミンおよびジエチルアミンから選択される少なくとも1種以上である、<1>〜<11>のいずれか1項に記載の順浸透装置。
<13>カチオン源およびアニオン源のヘンリー定数が、1.00×105[Pa/mol・fraction]以上であり、カチオン源の分子量が、45〜74の範囲内にある、<1>〜<12>のいずれか1項に記載の順浸透装置。
<14>カチオン源が、トリメチルアミンまたはジメチルエチルアミンであり、アニオン源が二酸化炭素である、<1>〜<13>のいずれか1項に記載の順浸透装置。
<15>前記希釈されたドロー溶液を90℃以下で加熱することによって、カチオン源およびアニオン源と、水とに分離することを特徴とする、<1>〜<14>のいずれか1項に記載の順浸透装置。
<16>前記希釈手段に導入されるドロー液の温度が、前記希釈手段に導入されるフィード溶液の温度±5℃であることを特徴とする、<1>〜<15>のいずれか1項に記載の順浸透装置。
<17>前記分離手段で得られた水、カチオン源、およびアニオン源の少なくとも1つを熱源として用いて、前記希釈されたドロー液を温める熱交換器を有することを特徴とする、<1>〜<16>のいずれか1項に記載の順浸透装置。
<18>前記希釈する前のフィード液を冷却源として用いて、前記溶解手段の装置、分離手段で得られたカチオン源、およびアニオン源の少なくとも1つを冷却する熱交換器を有することを特徴とする、<1>〜<17>のいずれか1項に記載の順浸透装置。
<19>前記分離手段の最高温度と前記溶解手段の最低温度の差が35℃未満であることを特徴とする、<1>〜<18>のいずれか1項に記載の順浸透装置。
<20>前記順浸透装置が水浄化装置であり、前記希釈手段により希釈されたドロー溶液から、カチオン源およびアニオン源と、水とに分離し、該水成分を目的物として回収することを特徴とする、<1>〜<19>のいずれか1項に記載の順浸透装置。
<21>前記フィード溶液が海水である、<20>に記載の順浸透装置。
<22>前記順浸透装置が濃縮装置であり、フィード溶液とドロー溶液とを半透膜を介して接触させた後の濃縮されたフィード溶液を目的物として回収することを特徴とする、<1>〜<21>のいずれか1項に記載の順浸透装置。
<23>アニオン源およびカチオン源を含み、かつ、カチオン源は、非荷電体の状態での分子量が31以上であり、かつ、アニオン源およびカチオン源は、それぞれ標準状態における水中におけるヘンリー定数が1.0×104[Pa/mol・fraction]以上であることを特徴とする、順浸透法用のドロー溶液。
<24>標準状態における、アニオン源の非電荷体の酸解離定数(pKa)が、6.0〜7.0である、<23>に記載の順浸透法用のドロー溶液。
<25>標準状態における、カチオン源の非電荷体の塩基解離定数(pKb)が、2.0〜4.5である、<23>または<24>に記載の順浸透法用のドロー溶液。
<26>標準状態における、水中におけるヘンリー定数が3.0×104[Pa/mol・fraction]以上である、<23>〜<25>のいずれか1項に記載の順浸透法用のドロー溶液。
<27>アニオン源およびカチオン源の濃度が、それぞれ、水1kgあたり、2.4mol以上であることを特徴とする、<23>〜<26>のいずれか1項に記載の順浸透法用のドロー溶液。
<28>アニオンが、炭酸イオンおよび/または炭酸水素イオンであり、カチオン源がトリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、イソプロピルアミン、ジメチルアミンおよびジエチルアミンから選択さる少なくとも1種以上である、<23>〜<27>のいずれか1項に記載の順浸透法用のドロー溶液。
<29>フィード溶液と、カチオン源およびアニオン源が溶解したドロー溶液とを半透膜を介して接触させ、該半透膜によって前記フィード溶液から分離された液体で前記ドロー溶液を希釈する希釈工程と、
前記希釈工程において希釈されたドロー溶液から、カチオン源およびアニオン源と、水とに分離する分離工程と、
前記分離工程において分離されたカチオン源およびアニオン源を、前記希釈されたドロー溶液に戻し、溶解させる溶解工程と、
を有し、
前記カチオン源は、非荷電体の状態での分子量が31以上であり、かつ、アニオン源およびカチオン源は、それぞれ標準状態における水中におけるヘンリー定数が1.0×104[Pa/mol・fraction]以上であることを特徴とする、順浸透法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のFO装置およびFO法において、透過速度を高く保ち、ドロー溶液の溶質が、半透膜を漏れ出して、フィード溶液側へ移動してしまうことを抑制し、さらに、フィード溶液の水で希釈されたドロー溶液から溶質成分を揮発させることによって得られる水中の、ドロー溶液の溶質の残存量を減らすこと(放散性能の向上)が可能になった。この結果、ドロー溶液の溶質成分を追加することなく、FO装置およびFO法の施行が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、従来のFO装置の構造を示す一例である。
【図2】図2は、本願実施例で用いるFO装置の構造を示す一例である。
【図3】図3は、カチオン源の分子量の漏れの相関関係を示すグラフである。
【図4】図4は、Henry定数と分子量の漏れの相関関係を示すグラフである。
【図5】図5は、本願実施例で採用したシュミレーションフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書における、アニオン源とは、水に溶解したときに、アニオンを発生させる物質をいい、カチオン源とは、水に溶解したときに、カチオンを発生させる物質をいう。従って、アニオン源およびカチオン源は、通常、非荷電体である。また、本発明における「標準状態」とは、25℃、105Pa(≒1気圧)を意味する。
【0014】
本発明のFO装置は、フィード溶液と、カチオン源およびアニオン源をイオン化した状態で含むドロー溶液とを半透膜を介して接触させ、該半透膜によって前記フィード溶液から分離された水で前記ドロー溶液を希釈する希釈手段と、前記希釈手段により希釈されたドロー溶液を、カチオン源およびアニオン源と、水とに分離する分離手段と、前記分離手段により分離されたカチオン源およびアニオン源を、前記希釈されたドロー溶液に戻し、溶解させる溶解手段とを有し、前記カチオン源は、非荷電体の状態での分子量が31以上であり、かつ、前記アニオン源およびカチオン源は、それぞれ、標準状態におけるヘンリー定数が1.0×104[Pa/mol・fraction]以上であることを特徴とする。以下本発明の詳細について説明する。
【0015】
本発明のFO装置は、FO法を用いて分離・濃縮・ろ過等を行う装置をいう。すなわち、浸透圧の高いドロー溶液を用いて、人為的に、2種の溶液間に浸透圧差を生じさせて水を移動させる方法を含む限り特に定めるものではない。例えば、浸透圧差に加えて、圧力をかけて液送する場合も本発明におけるFO法に含まれる。従って、本発明のFO装置において、最終的に回収される目的物は、ドロー溶液側で分離される水であってもよいし、フィード溶液側で濃縮される液体であってもよい。
ドロー溶液側で分離される水を目的物として回収する場合、本発明のFO装置は、好ましくは、水浄化装置であり、対象となるフィード溶液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、海水、ブラキッシュウォーター、河川、湖、沼、池等の自然界から得られる水、工場や各種工業施設から排出される工業廃水、家庭や一般施設から排出される一般廃水、水処理施設における微生物培養液などが挙げられる。これらの中でも、安定かつ大量に得られる入手容易性と、浄化の必要性の点で海水が特に好ましい。
濃縮されたフィード溶液を目的物として回収する場合、本発明のFO装置は、好ましくは、濃縮装置である。この場合のフィード溶液としては、果汁や野菜ジュースの濃縮等が挙げられる。
【0016】
本発明のFO装置は、通常、希釈手段と、分離手段と、溶解手段とを有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。また、本発明のFO法は、希釈工程と、分離工程と、溶解工程を有し、本発明のFO装置等によって実行されるものである。
【0017】
<希釈手段>
希釈手段は、フィード溶液とドロー溶液とを半透膜を介して接触させ、該半透膜により、フィード溶液から分離された水で前記ドロー溶液を希釈する工程である。この工程は、例えば、15〜40℃で行うことができる。希釈手段に導入されるドロー液がフィード液によって温められるとドロー溶液中の溶質がガス化し発泡する可能性があり、また、逆に冷やされるとドロー液中の溶質が析出する可能性があるため、導入されるドロー液は前記希釈手段に導入されるフィード溶液の温度±5℃であることが望ましい。また、フィード溶液の液送圧力は、ROと異なり低圧で駆動することができ、例えば1×104Pa〜5×105Paとすることができる。
半透膜としては、その素材、形状、大きさ、構造などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、平膜、平膜を用いたスパイラル型モジュール、中空糸型モジュール、チューブラー型モジュール、などが挙げられる。また、膜面に対するドロー液とフィード液の送液方向については制限はなく、逆平行、平行、または90度などの角度で非平行方向に送液しても良い。また、送液流路の半透膜面から見た厚みは特に制限はなく、例えば10μm〜10mmであっても良い。流路の厚みは薄いほどフィード液からの半透膜を介した水の透過効率が向上するため望ましいが、つまりなども生じ易くなるため、適切な厚みが選択される。
また、半透膜の素材についても水と溶質の分離ができれば特に制限はなく、例えば、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、芳香族ポリスルホン、ポリベンゾイミダゾール、などが挙げられ、好ましくはアセチル基置換度が2.50〜2.95の酢酸セルロース、芳香族ポリアミドが選択される。
また、半透膜の製造方法としては水と溶質の分離ができれば特に制限はなく、例えば非溶媒誘起相分離法(NIPS)、熱誘起相分離法(TIPS)、界面重合法、溶媒蒸発法、などが挙げられる。各製膜方法としては例えば膜学実験法「人工膜編」(日本膜学会編)の1.2高分子膜の製膜法に記載の方法で行うことができる。また、溶媒蒸発法で半透膜を製膜する場合、膜厚を1um未満の薄膜とすることが好ましい。この場合薄膜を塗布基板(フィルム状を含む)から剥離する際に半透膜を破壊してしまうおそれがあるため、予め塗布基板上に犠牲層を塗布しておき、犠牲層ごと剥離する方法を取ることができる。ここで犠牲層とは溶媒浸漬や加熱などによって自発的に剥離もしくは溶解する層を指す。
半透膜としてはFO膜として製造された膜に加えて、RO膜で使用されている膜をそのまま、もしくは改良して用いることができるが、好ましくは内部濃度分極による透過性能悪化が抑制されているFO膜が選択される。具体例としては、Hydration Technology Inovations社製、Expedition内蔵膜や同社製、X−Pack内蔵膜を用いることができる。
【0018】
フィード溶液
フィード溶液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、海水、ブラキッシュウォーター、河川、湖、沼、池等の自然界から得られる水、工場や各種工業施設から排出される工業廃水、家庭や一般施設から排出される一般廃水、水処理施設における微生物培養液、MBR(メンブレンバイオリアクター)の微生物培養液、果汁、野菜ジュース等が挙げられる。これらの中でも、安定かつ大量に得られる入手容易性と、浄化の必要性の点で海水が特に好ましい。
また、フィード溶液は前記希釈手段で処理を行う前に各種の前処理を行っても良い。具体的には凝集剤処理、沈降処理、砂ろ過や精密ろ過などのろ過処理などの一般的な水処理方法が挙げられる。更にJournal of Membrane Science 362(2010)p417−p426に記載のOsmotic Dilutionのようにフィード液を事前に別の順浸透装置においてドロー液として用いて希釈する方法が挙げられる。本方法によるとフィード溶液の溶質濃度が減少するために、本発明の順浸透装置における希釈速度が向上することや投入エネルギーが大幅に減少するなどの効果が見込まれる。
【0019】
ドロー溶液
ドロー溶液は、ヘンリー定数が1.0×104[Pa/mol・fraction]以上のアニオン源とカチオン源を、溶質として含む。ヘンリー定数とは、物質が大量の水に溶けている溶液における、物質のモル分率と飽和蒸気分圧の関係を示す物性値であり、これが大きいほどその水溶液中において揮発性が高いことまた、溶解度が低いことを示し、書籍「化学便覧(丸善株式会社発行)」、書籍「増補 ガス吸収(化学工業株式会社発行)」、文献「Compilation of Henry's Law Constants for Inorganic and Organic Species of Potential Importance in Environmental Chemistry、( HYPERLINK "http://www.mpch-mainz.mpg.de/~sander/res/henry.html" http://www.mpch-mainz.mpg.de/~sander/res/henry.html)などに記載されている。また、溶質が荷電体(イオン)となる場合、飽和蒸気圧と相関するのは溶質のうちの非荷電体成分のみであるため、ヘンリー定数は溶質の非荷電体成分のモル分率と飽和蒸気分圧の関係を示す物性値である。そのため、水溶液のpHによってアニオン源やカチオン源が荷電体のアニオンやカチオンになるとその飽和蒸気圧は下がる、つまり溶解度は高くなる。本発明においては、ヘンリー定数が1.0×104[Pa/mol・fraction]以上に高いアニオン源とカチオン源を用いるため、非荷電体の状態では溶解度が低いが、アニオン源とカチオン源を共存させることでpHが調整され、それぞれの荷電体の割合が高くなり、単独の溶液の場合と比べてこれらの溶解度は格段に高くすることができる。
【0020】
ドロー溶液は、アニオン源とカチオン源を含む。ここで、アニオン源およびカチオン源はイオン化した状態でドロー溶液中に含まれる。
ドロー溶液中のアニオン源及びカチオン源の含有量は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記希釈手段においては、フィード溶液から水を分離する速度を高める観点から高濃度であることが好ましい。例えば、希釈手段直前におけるドロー溶液の濃度は水1kgあたり、溶解物質総濃度が4.8mol以上であることが好ましい。溶液のpHが極端に高い、もしくは低いと半透膜などの劣化を招くおそれがあるため、pHは4〜10であることが望ましい。また、アニオン源として二酸化炭素を用いた場合、溶解度を高めるためにpHが8以上となる混合比が好ましい。また、アニオン源とカチオン源のモル比が、1:1〜1:2であることが好ましく、1:1.2〜1:1.7であることがさらに好ましい。この比率はアニオン種、カチオン種によっても適宜適切な値が選択される。
一方、前記分離手段においては、分離効率を高めることと、分離に要するエネルギーを低く抑える観点から希釈されたドロー液は低濃度であることが好ましい。このことから希釈手段における希釈率は高い方が好ましい。ただし、希釈されたドロー液とフィード液の浸透圧差が小さくなると、希釈手段における半透膜を介した水の透過速度が極端に低下するため、適切な各濃度、希釈率が選択される。
【0021】
カチオン源
本発明におけるカチオン源は、非荷電体の状態での分子量が31以上であり、かつ、標準状態におけるヘンリー定数が1.0×104[Pa/mol・fraction]以上であることを特徴とする。このようなカチオン源をアニオン源と併せて採用することにより、FO装置において、水の半透膜透過速度を高く保ち、ドロー溶液の溶質が、半透膜を漏れ出して、フィード溶液側へ移動してしまうことを抑制し、さらに、フィード溶液の水で希釈されたドロー溶液から溶質成分を揮発させることによって得られる水中の、ドロー溶液の溶質の残存量を減らすこと(放散性能の向上)ができる。
カチオン源の非荷電体の状態での分子量は、好ましくは45〜74であり、より好ましくは45〜62である。
カチオン源の標準状態におけるヘンリー定数は1.0×105[Pa/mol・fraction]以上であることが好ましい。上限は特に定めるものではないが、例えば、1.0×107[Pa/mol・fraction]以下とすることができる。このような範囲とすることにより、分離手段における揮発性を高めることができ、それに伴い分離手段において余計に揮発してしまう水の量を減らすことが可能となり、結局分離に要するエネルギーを低く抑えることが可能となる。
カチオン源の標準状態における、非荷電体の塩基解離定数(pKb)は低すぎると、前記分離手段において揮発性が低下し、分離される水におけるカチオン源の残留量が高くなる、更に分離に要するエネルギーが高くなるという問題がある。逆に前記pKbが高すぎると前記吸収器におけるpHが低くなりアニオン源の溶解量が低くなり、前記希釈手段における水の半透膜透過速度が低下するという問題がある。そのため、前記pKbは適切に選択する必要があり、2.0〜4.5であることが好ましく、4.0〜4.5であることがより好ましい。
このようにカチオン源の分子量、ヘンリー定数、pKbを上記の適切な範囲とすることにより、カチオン源が、半透膜を漏れ出して、フィード溶液側へ移動してしまうことをより効果的に抑制すると同時に、前記分離手段の分離効率を高めそこに要するエネルギーを低く抑え、かつ前記希釈手段の効率を高くすることが可能になる。
カチオン源の非荷電体の1atmにおける沸点は100℃未満であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、分離手段において分離されたカチオン源のガスが操作中に凝縮することを抑制することが可能になる。下限値は特に定めるものではないが、例えば、−20℃以上とすることができる。
半透膜と接触させる直前のドロー溶液中の、カチオン源の濃度が水1kgあたり、2.4mol以上であることが好ましく、3.0mol/kg以上であることがより好ましい。このような手段を採用することにより、前記希釈手段における水の半透膜透過速度を高くすることが可能になる。上限値については、特に定めるものではないが、通常、8.0mol/kg以下とすることができる。
【0022】
カチオン源としては、特に、本発明の趣旨を逸脱しない限り特に定めるものではないが、アミン化合物であることが好ましく、下記一般式(I)で表すことができる。
一般式
n−NH(3-n)
(一般式(I)中、RはC1〜C4の直鎖又は分岐の脂肪族基を表し。nは1、2、もしくは3を表す。)
【0023】
一般式(I)中、Rは好ましくはC1のメチル基である。nは、好ましくは3である。
具体例としては、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、イソプロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、n−プロピルアミン、エチルアミン、n−ブチルアミン、イソプロピルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、ピロリジン、メチルアミン、エチルメチルアミン、メチルn−プロピルアミン、メチルイソプロピルアミン、ペンチルアミン、ジメチルn−プロピルアミン、ジメチルイソプロピルアミン、エチルn−プロピルアミン、エチルイソプロピルアミン、ジエチルメチルアミンから選択される少なくとも1種以上であることがさらに好ましく、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、イソプロピルアミン、ジメチルアミンおよびジエチルアミンから選択される少なくとも1種以上であることがよりさらに好ましく、トリメチルアミンまたはジメチルエチルアミンであることが特に好ましい。
【0024】
アニオン源
本発明におけるアニオン源は、標準状態におけるヘンリー定数が1.0×104[Pa/mol・fraction]以上であることを特徴とする。このようなアニオン源をカチオン源と併せて採用することにより、FO装置において、透過速度を高く保ち、ドロー溶液の溶質が、半透膜を漏れ出して、フィード溶液側へ移動してしまうことを抑制し、さらに、フィード溶液の水で希釈されたドロー溶液から溶質成分を揮発させることによって得られる水中の、ドロー溶液の溶質の残存量を減らすこと(放散性能の向上)ができる。
標準状態における、アニオン源の非荷電体の塩基解離定数(pKa)は、2.0〜4.5であることが好ましく、4.0〜4.5であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、分離手段においてカチオンより優先的に揮発分離され、全体として分離効率を向上させられ、かつ希釈手段において、アニオン源が半透膜を漏れ出して、フィード溶液側へ移動してしまうことを抑制するという効果が得られる。
アニオン源の非荷電体の1atmにおける沸点は100℃未満であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましく、0℃以下であることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、分離手段においてカチオンより優先的に揮発分離され、全体として分離効率を向上させられるという効果が得られる。下限値は特に定めるものではないが、通常、−100℃以上である。
アニオン源の標準状態におけるヘンリー定数は、1.0×107[Pa/mol・fraction]以上であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、分離手段においてカチオンより優先的に揮発分離され、全体として分離効率を向上させられるという効果が得られる。上限値は特に定めるものではないが、通常、1.0×1010[Pa/mol・fraction]以下である。
また、標準状態における、アニオン源の非荷電体の酸解離定数(pKa)が6.0〜7.0であることが好ましい。
【0025】
半透膜と接触させる直前のドロー溶液中の、アニオン源の濃度が水1kgあたり、2.4mol以上であることが好ましく、2.8mol/kg以上であることがより好ましい。このような手段を採用することにより、前記希釈手段における半透膜を介した水の透過速度を高くすることが可能になる。上限値については、特に定めるものではないが、通常、8.0mol/kg以下とすることができる。
アニオン源としては、特に、本発明の趣旨を逸脱しない限り特に定めるものではないが、二酸化炭素(CO2)、炭酸(H2CO3)、二酸化硫黄(SO2)などが挙げられる。これらの中でも、揮発性の高さ、安定性、低反応性、入手容易性の点で二酸化炭素(CO2)が特に好ましい。従って、アニオンとしては、炭酸イオンおよび炭酸水素イオンの混合物が好ましい。また、場合によってカルバメートイオンのような複合イオンを含んでいても良い。
【0026】
<溶解手段>
溶解手段は、分離手段により分離されたドロー溶液の揮発性の溶質を希釈手段によって希釈されたドロー溶液に戻し、溶解する。溶解手段としては、特に制限はなく、一般的なガス吸収に用いられている装置の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、書籍「増補 ガス吸収(化学工業株式会社発行)」のp49〜p54、p83〜p144に記載されている装置、部品、条件などを任意に選択することができ、具体的には、吸収器、充填塔、棚段塔、スプレー塔、流動充填塔を用いた方式、液膜十字流接触方式、高速旋回流方式、機械力利用方式、などが挙げられる。また、マイクロリアクター、メンブレンリアクター等の微小流体の制御機構を利用して薄層気液層を構築して吸収させてもよい。また、アンモニア吸収冷凍機などのヒートポンプで用いられる吸収器と類似の構造体を利用しても良い。
充填塔に詰める充填物としては、規則充填物でも不規則充填物でもよく、例えば書籍「増補 ガス吸収(化学工業株式会社発行)」のp221〜p242に記載されている充填物を任意に選択することができる。
【0027】
充填物、塔、ディストリビューター、サポート等の構成部品材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステンレス鋼、アルミキルド鋼等の鋼鉄系材料;チタン、アルミニウム等の非鉄材料;ガラス、アルミナ等のセラミックス;カーボン、合成ポリマー、ゴム等の素材、などが挙げられる。また、溶解手段においてはガスであるアニオン源およびカチオン源を効率的に吸収させるために、冷却機能を有することが好ましい。冷却機能としては、熱交換部を溶解手段の全体に含んでいる一体型でも良く、1つもしくは複数の熱交換器を溶解手段の一部として付属していても良い。溶解の効率化の観点から一体型が好ましく選択される。また、溶解手段は、複数種類のガス吸収器を利用してもよい。
溶解手段における操作温度は一般的には低くすることで溶解効率を向上することが可能だが、常温以下にするには莫大な冷却エネルギーが必要となるため、必要エネルギー量の観点から常温以上、また常温〜常温+15℃であることが好ましい。ここで常温とは周囲の温度を指す。
【0028】
<分離手段>
分離手段では、希釈手段により希釈されたドロー溶液から、ドロー溶液の揮発性の溶質を分離して、水・濃縮フィード液等の目的液を得る。
分離手段は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば一般的な放散に用いられる放散塔、放散装置、膜プロセスユニット、マイクロリアクター等の微小流体の制御機構、などが挙げられる。これらの中でも、放散塔が特に好ましい。
【0029】
放散塔で行う場合、加熱温度は、90℃以下であることが好ましく、75℃以下であることがより好ましい。このような手段を採用することにより、利用価値が低い低熱媒体をそのエネルギー源として用いることが可能となるため著しく経済性が高くなる。下限値は特に定めるものではないが、通常、30℃以上である。
分離手段の加熱方法としては希釈されたドロー溶液の加熱が可能であれば適宜選択することができるが、経済的な観点から電気を利用した加熱や100℃以上の高温熱源による加熱ではなく、100℃未満の廃熱を利用した加熱を選択することが好ましい。具体的には火力発電所や原子力発電所などの発電所、焼却炉、鉄鋼業や石油化学工業などの工場、鏡やレンズなどを用いた太陽光集光システムなどを選択することができる。好ましくは廃熱量の観点から発電所を選択することができる。
放散塔としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば棚段塔、充填塔、などが挙げられる。
棚段塔としては、例えば、書籍「蒸留技術(化学工学協会編)」のp139〜p143、書籍「解説化学工学(培風館発行)」のp141〜p142に記載の構造体、具体的には泡鐘(バブルキャップ)トレイ、バルブトレイ、多孔板(シーブ)トレイ、などが挙げられる。
充填塔に詰める充填物としては、規則充填物でも不規則充填物でもよく、例えば書籍「解説化学工学(培風館発行)」のp155〜p157、書籍「増補 ガス吸収(化学工業株式会社発行)」のp221〜p242に記載されている充填物を任意に選択することができる。
膜プロセスユニットとしては、例えば、学術論文「Journal of Membrane ScienceVol.124,Issue1,p1〜p25」などに記載の膜蒸留ユニットを用いることができる。
マイクロリアクターとしては、例えば書籍「マイクロ化学チップの技術と応用(丸善株式会社発行)」に記載のリアクターを用いることができる。
なお、アニオン源として二酸化炭素を用いた場合、炭化水素系の放散塔などと比較すると水和や脱水などの遅い反応を含むため、各段において気液の平衡に達するまでに長時間を要する。そのため、分離手段を効率的に機能させるためには各種充填物や棚段において炭化水素系を想定した時に算出される推奨の保持時間より長く保持させる方が好ましい。保持時間を長くする方法としては、例えば放散塔の直径を大きくする、棚段塔を選択する、孔径を調整するなどの一般的な手法を取ることができる。
【0030】
<その他の工程>
その他の工程としては、例えば制御工程、駆動工程などが挙げられ、これらは制御手段、駆動手段により実施される。
制御手段としては、各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0031】
<必要エネルギー>
本発明の順浸透法ではより特定のアニオン源、カチオン源などの条件を選択することによって、必要なエネルギーを大幅に減らすことができる。特に順浸透法では投入するエネルギー源として、質の低い低熱源を利用することができるため、産業的な意義が大きい。ここで質が低いエネルギーとは一般的な用途に利用することができない、もしくはその効率が悪いエネルギーを指す。例えば100℃を下回る熱はタービンなどで電気変換する効率が悪いため、利用価値が低い。本発明の順浸透法では、主に分離手段における加熱エネルギーと送液エネルギーが必要となるが、ROと異なり送液の圧力が低いため、そのほとんどが分離手段における加熱エネルギーである。ただし、溶解手段における温度が常温より低いと冷却エネルギーが莫大になるため、常温以上に設定する必要があることなど、総合エネルギーを低くするためには分離手段だけでなくシステム全体として最適な条件を選ぶ必要がある。
【0032】
本発明の順浸透システムの熱力学的なシミュレーションを行うと、分離手段におけるエネルギーを抑制するには、分離部において、アニオン源やカチオン源と共に無駄に揮発させてしまう水の量を減らすことが効果的であることが判る。特に、アニオン源として二酸化炭素を用いた場合、分離手段の初期にアニオン源が優先的に揮発して分離されるため、残されたカチオン源の揮発分離のしやすさが重要となる。つまり、カチオン源の選択基準としてはその揮発エネルギーではなく、ヘンリー定数が高くpKbが高いカチオンを選択することが重要となる。また、溶解手段においては、二酸化炭素を効率良く溶解させることが必要であるが、前述の通り溶解手段における温度を低くしすぎると莫大な冷却のエネルギーが必要となるため、常温〜常温+15℃の範囲が好ましい。そのため、二酸化炭素の溶解効率を向上させるために、ドロー溶液のpHが高い方が好ましいので、カチオン源のpKbは低い方が好ましい。このように分離手段と溶解手段においてカチオン源に求められるpKbが相反するため、適切な領域が存在することが示される。具体的には必要エネルギーの観点からカチオン源はpKbが3.2〜4.5かつヘンリー定数は1.0×105[Pa/mol・fraction]以上であることが好ましく、pKbが4.0〜4.5かつヘンリー定数は3.0×105[Pa/mol・fraction]以上であることがより好ましい。より具体的には、例えばトリメチルアミン、ジメチルエチルアミンが好ましく選択される。
【0033】
上述したものの他、本発明においては、本発明を逸脱しない範囲内において、米国特許第6391205号明細書、米国特許出願公開第2005/0145568号明細書、国際公開WO2007/146094号パンフレットに記載の技術を採用することができる。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0035】
本実施例では、以下の物質をカチオン源およびアニオン源を用いた。
ヘンリー定数(Henry定数)は、Compilation of Henry's Law Constants for Inorganic and Organic Species of Potential Importance in Environmental Chemistry( HYPERLINK "http://www.mpch-mainz.mpg.de/~sander/res/henry.html" http://www.mpch-mainz.mpg.de/~sander/res/henry.html)に基づく値であり、複数記載されているものは
著しく外れている値を除いて平均値を採用している。単位は、Pa/mol fractionで表している。分子量は、非荷電の状態のそれぞれの化合物の分子量である。pKaおよびpKbは文献「化学便覧 基礎編 日本化学会編、丸善」などの一般的な文献に基づく値である。沸点は、1気圧、に基づく値である。
【0036】
【表1】

【0037】
溶質の半透膜漏れ速度
希釈手段における溶質の漏れ速度を解析するモデル実験として、カチオン源のみの水溶液から半透膜を透過してくる速度を解析した。なお、本発明においてアニオン源として二酸化炭素を用いた場合、アニオン源とその荷電体、カチオン源とその荷電体のうち最も半透膜を透過し易いものは非荷電のカチオン源であることが判っているため、カチオン源を選択する上で有効な解析である。
ドロー溶液としてアンモニア(関東化学製)、ジメチルアミン(東京化成製)、エチルアミン(東京化成製)、プロピルアミン(和光純薬製)、トリメチルアミン(和光純薬製)、ジエチルアミン(和光純薬製)を純水でそれぞれ純水1kg当たり0.4molの濃度で調製した。フィード溶液としては純水を用いた。半透膜としては、Hydration Technology Innovations社製、Expedition内蔵膜(以下、「HT膜」と称する)を用いた。フィード溶液100mlとドロー溶液100mlを、ペリスタポンプを用いて流速20mm/秒で流し、半透膜(HT膜)を保持したセル中で半透膜を介してフィード液とドロー液を接触させた。この時、膜接触面積は280mm2、各流れは平行に同じ向きとした。30分間送液した状態で両液を接触させた後、フィード溶液に含まれる各カチオン源の濃度を測定し、半透膜透過速度を見積もった。なお、カチオン濃度はフィード液のpHと電気伝導度を測定し、検量線からそこに含まれる各カチオン源の濃度を見積もった。結果を表2に示した。また、カチオン源の分子量との相関関係を図3、カチオン源の分子量×ヘンリー定数との相関関係を図4に示した。
【0038】
【表2】

【0039】
結果、表2、図3に示す通り、分子量が31以上のカチオン源を用いることでその半透膜透過速度が抑制できることが示された。また、図4に示す通り、分子量が大きいだけでなくヘンリー定数も大きいカチオン源を選択することで半透膜透過速度をより抑制できることが示された。
【0040】
ドロー溶液の調整
表3に示す組成でドロー液を調製した。ここで、CO2は二酸化炭素(CO2ガスボンベを使用)を用い、予め調製したカチオン源水溶液を冷やしながらガス吸収を行って調製し、トリフルオロ酢酸(和光純薬製)は液体として添加し、SO2は亜硫酸水溶液(和光純薬製)を用いて調製した。
【0041】
フィード溶液の調整
フィード溶液として、ウシ血清アルブミン(和光純薬製)の0.1重量%溶液(0.1% BSA)または、塩化ナトリウム(和光純薬製)の0.6M溶液(0.6M NaCl)を用いた。
【0042】
図2に示すFO装置のうち、希釈手段、分離手段をそれぞれ独立に組み立てた。図2では、実線の矢印はフィード溶液またはフィード溶液から分離された水の流れを、点線はドロー溶液またはドロー溶液の溶質の流れを、それぞれ示している。本FO装置では、希釈手段21と、溶解手段22と、分離手段23とを有している。
最初に希釈手段として、フィード溶液200mlとドロー溶液200mlとを、希釈手段21において、半透膜24(HT膜)を介して接触させた(膜接触面積280mm2)。各液はペリスタポンプを用いて平行に同じ向きに流速20mm/秒で流した。フィード溶液中の水が半透膜24を介して、溶解手段22側に浸透する速度は、フィード液とドロー液の重量をリアルタイムで測定することによって解析した。また、3時間流した後のフィード液に含まれる、ドロー溶液中から漏れ出したカチオン濃度を各種アミン電極、もしくはガスクロマトグラフィーにて定量化し、計算によって漏れ速度を算出した。なお、アミン定量に用いたアミン電極とは市販のアンモニア電極(東亜ディーケーケー株式会社製、ポータブルイオン計IM−32Pにアンモニア複合電極AE−2041を接続した物)の内部液を測定対象アミンの塩化物水溶液(例えば50mMトリメチルアミンクロライド水溶液)に置換した電極を用いた。測定方法としては、サンプル液をNaOH水溶液でpHを調整した上で安定した状態における起電力を測定した。また、それぞれの測定対照ごとに各種濃度の水溶液でアミン濃度と起電力の検量線を作成した上でサンプル中のアミン濃度を見積もった。
続いて分離手段として放散塔を用いて溶質残存量を測定した。放散塔としては、規則充填物(Sulzer Chemteck社製、Laboratory Packing EX;以下「ラボパック」と称する)を内蔵した2重管構造の放散塔を用い、底部においてマントルヒーターで加熱を行った状態で、フィード溶液の水によって希釈されたドロー溶液を放散塔上部から連続的に供給した。分離手段23中の放散塔において、ドロー溶液の溶質成分を揮発させることによって、水とドロー溶液の溶質成分とに分離した。この時、塔頂部を、冷却部を介して真空ポンプに接続し、内部の圧力を1.0×104Paになるように自動制御を行った。3時間運転を行う間、到底部から適宜分離液をサンプリングし、定常状態の間における放散塔底部に排出される液中に含まれるカチオンの残存濃度を測定した。測定方法は上記の希釈手段と同様に実施した。
【0043】
透過流速
上記において、フィード溶液からの水の半透膜透過流速を測定した。
○:300μmol/mm2hr以上
△:30μmol/mm2以上300μmol/mm2未満
×:30μmol/mm2未満
上記のうち、△以上が実用可能レベルである。
【0044】
漏れ速度
上記において、半透膜からドロー溶液の溶質成分の漏れを測定した。以下の評価に従って評価した。
○:1μmol/mm2未満
△:1μmol/mm2以上5μmol/mm2未満
×:5μmol/mm2以上
上記のうち、△以上が実用可能レベルである。
【0045】
溶質残存量
上記において、ドロー溶液からカチオン源およびアニオン源が分離された後の水中におけるドロー溶液の残存量を測定した。以下の評価に従って評価した。
◎:50μM未満
○:50μM以上200μM未満
△:200μM以上1mM未満
×:1mM以上
上記のうち、△以上が実用可能レベルである。
【0046】
【表3】

【0047】
上記表から明らかなとおり、カチオン源として、ヘンリー定数が1.0×104[Pa/mol・fraction]未満である場合またはカチオン源の分子量が31未満である場合(比較例3〜5)、漏れ速度または溶質残存量が劣っていた。また、アニオン源として、ヘンリー定数が1.0×104[Pa/mol・fraction]未満である場合(比較例6)、溶質残存量が劣っていた。
一方、前記カチオン源の非荷電体の状態での分子量が31以上であり、かつ、カチオン源およびアニオン源の標準状態におけるヘンリー定数がそれぞれ1.0×104[Pa/mol・fraction]以上である場合、透過流速、漏れ速度および溶質残存量のいずれにも優れたものであった。特に、カチオン源およびアニオン源のヘンリー定数が、それぞれ1.00×105[Pa/mol・fraction]以上であり、カチオン源の分子量が、45〜74の範囲内にある場合に、特にこれらの効果に優れることが分かった。更にカチオン源およびアニオン源のヘンリー定数が、それぞれ3.00×105[Pa/mol・fraction]以上である場合、よりこれらの効果に優れることが分かった。また、カチオン源のpKbが4.0〜4.5の範囲内にある場合に更にこれらの効果に優れることが分かった。カチオン源として、トリメチルアミン又はジメチルエチルアミンを用い、アニオン源として二酸化炭素を用いたときにも、特にこれらの効果に優れることが分かった。
【0048】
上記実施例2、6、7、比較例3について、図2に示すFO装置全体のエネルギーシミュレーションを行った。シミュレーションを行ったシステムの模式図を図5に示した。ここでAbsorberは溶解手段を、Stripperは分離手段をMIX1は希釈部を示す。カチオン源はアンモニアもしくは各種アミンを採用し、アニオン源は二酸化炭素とした。各種カチオン源、アニオン源の諸物性はOLI Systemsの保有するデータを利用した。またスケールとしては、結果には直接は関係ないが、浄化して得られる水(TR_WATER)の流速を1000トン/日として見積もった。
希釈部において、カチオン源、アニオン源の濃度は水1kg当たりそれぞれ4.2mol、3.0molからそれぞれ1.4mol、1.0molに25℃の純水で希釈されるとし、この時のカチオン源およびアニオン源のロスはないとした。希釈されたドロー液(Solution)はSplit1にてStripperとAbsorberに分割された。この時の分割比は約2:1としたが、Stripperからカチオン源やアニオン源と共に水がAbsorberに移動してもAbsorberにて目的濃度にできるようにStripper側が多くなる設定とした。Stripperは、理論段数30段の充填型放散塔を用い圧力損失はないとした。また、圧力は、TR_WATERに含まれるAbsorberを冷却し最終的に25℃でカチオン源、アニオン源の濃度が水1kg当たりそれぞれ4.2mol、3.0molとなる圧力(25℃におけるドロー液の飽和蒸気圧)に設定した。この圧力においてStripper底部から得られる水(TR_WATER)に含まれるカチオン源濃度が水1kg当たり60μmolとなるような放散塔底部温度に設定した。また、また、シミュレーションの都合上Absorber上部から抜けるガス(Vent)を設定したが、この量は全体に比べて無視できる程度に少なくした。Split1において分割された希釈されたドロー液(ABS_RC)はMIX2においてそれぞれ25℃のアニオン源、カチオン源が溶解された後、Absorberに導入されるとした。また、この時の補充されるアニオン源、カチオン源はTR_WATERに残留することで失われる量を補充するとした。
さらに図5に示すように2箇所の熱交換器(HX1、HX2)で熱交換を行うとし、それぞれの熱交換器のUA値を4.0×108、2.0×109とした。また、配管における熱のロス、圧力損失、不均一状態による塩の析出はないとし、水和反応などの反応速度や拡散速度などによる律速はないとし、また気体と液体の混相流も適切に流せるとした。得られた結果のうち、Stripper底部において与えた加熱量を必要エネルギーとして見積もった。
【0049】
シミュレーションの結果を下記表4に示す。表4に示すとおり、実施例6、7、比較例3においては必要エネルギーが100kWh/m3(水1m3を得るのに必要な熱エネルギーの総和)以上であったのに対して、実施例2の、カチオン源としてトリメチルアミン、アニオン源として二酸化炭素をそれぞれ溶解手段における濃度を4.2mol/kg、3.0mo/kgとした条件において67kWh/m3となり、省エネルギー性が非常に高いことが示された。これは主にStripperにおける無駄な水の揮発量が抑えられたことが主要因である。
【0050】
【表4】

【0051】
上記のシミュレーションにおける吸収器(Absorber)温度と放散塔底(Stripper)温度を表5に示す。表3に示す通り、比較例3では放散塔底温度、つまり最も加熱される温度が63℃であったのに対して、実施例2では51℃と見積もられ、吸収器温度との温度差が26℃となった。これは比較例3の温度差38℃と比較しても極めて小さいことが示された。装置全体における加熱温度と冷却温度の差が小さいことは、それだけ質の低いエネルギー源で装置を回すことができることを表すため、実施例2で示した結果は経済的に非常に有効であることが示された。
【表5】

【符号の説明】
【0052】
11 海水
12 ドロー溶液
13 半透膜
14 放散塔
15 ドロー溶液の揮発成分
16 水
17 ガス吸収器
18 圧力計
21 希釈手段
22 溶解手段
23 分離手段
24 半透膜
25 ガス吸収器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィード溶液と、カチオン源およびアニオン源をイオン化した状態で含むドロー溶液とを半透膜を介して接触させ、該半透膜によって前記フィード溶液から分離された水で前記ドロー溶液を希釈する希釈手段と、
前記希釈手段により希釈されたドロー溶液を、カチオン源およびアニオン源と、水とに分離する分離手段と、
前記分離手段により分離されたカチオン源およびアニオン源を、前記希釈されたドロー溶液に戻し、溶解させる溶解手段と、
を有し、
カチオン源は、非荷電体の状態での分子量が31以上であり、かつ、アニオン源およびカチオン源は、それぞれ、標準状態におけるヘンリー定数が1.0×104[Pa/mol・fraction]以上であることを特徴とする、順浸透装置。
【請求項2】
標準状態における、アニオン源の非荷電体の酸解離定数(pKa)が6.0〜7.0である、請求項1に記載の順浸透装置。
【請求項3】
標準状態における、カチオン源の非荷電体の塩基解離定数(pKb)が2.0〜4.5である、請求項1または2に記載の順浸透装置。
【請求項4】
カチオン源および/またはアニオン源の非荷電体の1atmにおける沸点が100℃未満である、請求項1〜3のいずれか1項記載の順浸透装置。
【請求項5】
標準状態における、カチオン源の非荷電体の塩基解離定数(pKb)が、4.0〜4.5である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の順浸透装置。
【請求項6】
カチオン源の標準状態におけるヘンリー定数が1.0×105[Pa/mol・fraction]以上であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の順浸透装置。
【請求項7】
カチオン源の標準状態におけるヘンリー定数が3.0×105[Pa/mol・fraction]以上であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の順浸透装置。
【請求項8】
半透膜と接触させる直前のドロー溶液中のアニオン源およびカチオン源の濃度が、それぞれ、水1kgあたり、2.4mol以上であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の順浸透装置。
【請求項9】
前記アニオンが、炭酸イオンおよび/または炭酸水素イオンである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の順浸透装置。
【請求項10】
前記アニオン源と前記カチオン源のモル比が、1:1〜1:2である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の順浸透装置。
【請求項11】
前記カチオン源がアミン化合物である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の順浸透装置。
【請求項12】
前記カチオン源が、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、イソプロピルアミン、ジメチルアミンおよびジエチルアミンから選択される少なくとも1種以上である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の順浸透装置。
【請求項13】
カチオン源およびアニオン源のヘンリー定数が、1.00×105[Pa/mol・fraction]以上であり、カチオン源の分子量が、45〜74の範囲内にある、請求項1〜12のいずれか1項に記載の順浸透装置。
【請求項14】
カチオン源が、トリメチルアミンまたはジメチルエチルアミンであり、アニオン源が二酸化炭素である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の順浸透装置。
【請求項15】
前記希釈されたドロー溶液を90℃以下で加熱することによって、カチオン源およびアニオン源と、水とに分離することを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の順浸透装置。
【請求項16】
前記希釈手段に導入されるドロー液の温度が、前記希釈手段に導入されるフィード溶液の温度±5℃であることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に記載の順浸透装置。
【請求項17】
前記分離手段で得られた水、カチオン源、およびアニオン源の少なくとも1つを熱源として用いて、前記希釈されたドロー液を温める熱交換器を有することを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項に記載の順浸透装置。
【請求項18】
前記希釈する前のフィード液を冷却源として用いて、前記溶解手段の装置、分離手段で得られたカチオン源、およびアニオン源の少なくとも1つを冷却する熱交換器を有することを特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項に記載の順浸透装置。
【請求項19】
前記分離手段の最高温度と前記溶解手段の最低温度の差が35℃未満であることを特徴とする、請求項1〜18のいずれか1項に記載の順浸透装置。
【請求項20】
前記順浸透装置が水浄化装置であり、前記希釈手段により希釈されたドロー溶液から、カチオン源およびアニオン源と、水とに分離し、該水成分を目的物として回収することを特徴とする、請求項1〜19のいずれか1項に記載の順浸透装置。
【請求項21】
前記フィード溶液が海水である、請求項20に記載の順浸透装置。
【請求項22】
前記順浸透装置が濃縮装置であり、フィード溶液とドロー溶液とを半透膜を介して接触させた後の濃縮されたフィード溶液を目的物として回収することを特徴とする、請求項1〜21のいずれか1項に記載の順浸透装置。
【請求項23】
アニオン源およびカチオン源を含み、かつ、カチオン源は、非荷電体の状態での分子量が31以上であり、かつ、アニオン源およびカチオン源は、それぞれ標準状態における水中におけるヘンリー定数が1.0×104[Pa/mol・fraction]以上であることを特徴とする、順浸透法用のドロー溶液。
【請求項24】
標準状態における、アニオン源の非電荷体の酸解離定数(pKa)が、6.0〜7.0である、請求項23に記載の順浸透法用のドロー溶液。
【請求項25】
標準状態における、カチオン源の非電荷体の塩基解離定数(pKb)が、2.0〜4.5である、請求項23または24に記載の順浸透法用のドロー溶液。
【請求項26】
標準状態における、水中におけるヘンリー定数が3.0×104[Pa/mol・fraction]以上である、請求項23〜25のいずれか1項に記載の順浸透法用のドロー溶液。
【請求項27】
アニオン源およびカチオン源の濃度が、それぞれ、水1kgあたり、2.4mol以上であることを特徴とする、請求項23〜26のいずれか1項に記載の順浸透法用のドロー溶液。
【請求項28】
アニオンが、炭酸イオンおよび/または炭酸水素イオンであり、カチオン源がトリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、イソプロピルアミン、ジメチルアミンおよびジエチルアミンから選択さる少なくとも1種以上である、請求項23〜27のいずれか1項に記載の順浸透法用のドロー溶液。
【請求項29】
フィード溶液と、カチオン源およびアニオン源が溶解したドロー溶液とを半透膜を介して接触させ、該半透膜によって前記フィード溶液から分離された液体で前記ドロー溶液を希釈する希釈工程と、
前記希釈工程において希釈されたドロー溶液から、カチオン源およびアニオン源と、水とに分離する分離工程と、
前記分離工程において分離されたカチオン源およびアニオン源を、前記希釈されたドロー溶液に戻し、溶解させる溶解工程と、
を有し、
前記カチオン源は、非荷電体の状態での分子量が31以上であり、かつ、アニオン源およびカチオン源は、それぞれ標準状態における水中におけるヘンリー定数が1.0×104[Pa/mol・fraction]以上であることを特徴とする、順浸透法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−91166(P2012−91166A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212056(P2011−212056)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】