説明

顆粒状組成物の製造方法

【課題】本発明は、粒子状の物質の形成を防止し、さらに溶解性を改善した顆粒状組成物を提供するを目的とする。
【解決手段】本発明は、水溶性タンパク質を含むママコ形成性成分と油脂とを混合して油脂-ママコ形成性成分混合物を調製し、前記油脂-ママコ形成性成分混合物と乳化剤とを混合して乳化剤-油脂-ママコ形成性成分混合物を調製し、残りの成分を前記乳化剤-油脂-ママコ形成性成分混合物と混合し、造粒することを含む、ママコ形成性成分を含む顆粒状組成物の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は顆粒状組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インスタント食品をはじめ、種々の顆粒状組成物が開発されている。これらの顆粒状組成物は、温水や水に入れてすぐに水に分散し、溶けることが必要である。澱粉などの粉末は、水に分散しながら溶解するが、分散するよりも早く、水との接触面でのみ水和する場合には、溶解していない粉末が中に閉じ込められた状態となるママコ(だま)が生じる。これを防止するために、疎水性の乳化剤を添加する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、ココアパウダーや粉ミルクなどは、水濡れが悪く、水に容易に分散、溶解しないで、ママコ(だま)を形成する。これを防止するために、親水性の乳化剤を添加する方法が知られている(特許文献2)。
しかしながら、食材によってはこれらの公知の方法では、その溶解性が足りない場合がある。特に、多くの素材を通常よりも多量に含有するダイエット用食品においては、これらの公知の方法では満足できる溶解性を得ることができず、さらに溶解性を向上させることが求められている。本発明者等は、予めママコを形成しやすい成分を乳化剤と混合することによって、温水や水への溶解性に優れた顆粒状組成物を得ることができることを見出した(特願2006−292692号)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−121061号公報
【特許文献2】特開2000−125767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記方法は、ママコの形成防止については、十分満足できるものであるが、ママコ形成性成分が水溶性タンパク質を含む場合には、粒子状の物質が溶解しないで表面に浮遊することが分かった。本発明の目的は、このような粒子状の物質の形成を防止し、さらに溶解性を改善した顆粒状組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記課題に対して鋭意検討した結果、予め水溶性タンパク質を含むママコを形成しやすい成分を油脂と混合し、次いで乳化剤と混合することによって、粒子状の物質の形成を防止し、温水や水への溶解性に優れた顆粒状組成物を得ることができることを見出した。
したがって、本発明は、水溶性タンパク質を含むママコ形成性成分と油脂とを混合して油脂-ママコ形成性成分混合物を調製し、前記油脂-ママコ形成性成分混合物と乳化剤とを混合して乳化剤-油脂-ママコ形成性成分混合物を調製し、残りの成分を前記乳化剤-油脂-ママコ形成性成分混合物と混合し、造粒することを含む、ママコ形成性成分を含む顆粒状組成物の製造方法を提供する。
また、本発明は前記製造方法で得られた顆粒状組成物を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法で得られた顆粒状組成物は、粒子状の物質の形成を防止して、温水や水に入れてすぐに分散、溶解し、食品、飼料、医薬品、医薬部外品、化粧品、工業製品用として利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のママコ形成性成分を含む顆粒状組成物を製造する方法は、水溶性タンパク質を含むママコ形成性成分と油脂とを混合して油脂-ママコ形成性成分混合物を調製する工程を含む。ここで、ママコ形成性成分とは、水又はお湯に容易に分散・溶解せずママコを形成するものを意味する。
ママコ形成性成分には、親水性成分及び疎水性成分とがある。親水性のママコ形成性成分としては、大豆タンパク質、水溶性カゼイン、アルブミンなどの水溶性タンパク質類や澱粉類、穀粉類などが挙げられる。また、疎水性のママコ形成性成分としては、ココアパウダー、粉ミルクなどの油分を含む食品由来の成分が挙げられる。
本発明における「水溶性タンパク質を含むママコ形成性成分」は、例えば大豆タンパク質、水溶性カゼイン、アルブミンなどの水溶性タンパク質類や穀粉類、ココアパウダー、粉ミルクなどであり、これらの2種以上の混合物であってもよい。また、水溶性タンパク質を含むママコ形成性成分と油脂とを混合して油脂-ママコ形成性成分混合物を調製する工程においては、さらに「水溶性タンパク質を含むママコ形成性成分」以外のママコ形成性成分を一緒に混合してもよい。
【0008】
油脂-ママコ形成性成分混合物を調製する際に用いられる油脂としては、菜種、綿実、大豆、ごま、紅花、ひまわり、コーン、米、オリーブ、パームなどの植物性油脂や、ラード、ヘット、魚油などの動物性油脂が挙げられる。また、前記油脂は、抽出、精製しただけの油脂であってもよく、さらに水素添加、分別、エステル交換などの改質を行なった油脂であってもよい。常温で固体の油脂の場合は、加温溶解して使用してもよい。
水溶性タンパク質を含むママコ形成性成分と油脂とを混合して油脂-ママコ形成性成分混合物を調製する工程においては、必ずしも顆粒状組成物に含まれるすべてのママコ形成性成分を油脂と混合する必要はない。顆粒状組成物に含まれるママコ形成性成分のうち、「水溶性タンパク質を含むママコ形成性成分」のみを油脂と混合して油脂-ママコ形成性成分混合物を調製してもよい。なお、すべての「水溶性タンパク質を含むママコ形成性成分」を油脂と混合して油脂-ママコ形成性成分混合物を調製することが、前記粒子状の物質の形成防止に効果的である。
なお、混合方法及び混合装置は、公知の方法及び装置を用いることができる。
【0009】
本発明のママコ形成性成分を含む顆粒状組成物の製造方法は、さらに前記油脂-ママコ形成性成分混合物と乳化剤とを混合して乳化剤-油脂-ママコ形成性成分混合物を調製する工程を含む。
乳化剤-油脂-ママコ形成性成分混合物を調製する際に用いられる乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル(ポリグリセリン脂肪酸エステルなど)、サポニン(ダイズサポニンなど)、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン(植物レシチンなど)などが挙げられる。本発明において、乳化剤は水分を含む乳化剤であるのが好ましい。好ましい水分含量は乳化剤の種類やHLBなどによって違ってくるため限定はできないが、好ましい含量を超えて水分を加えると分離を生じる。適した水分を加えて溶解した乳化剤の物性が硬すぎる場合は、軟らかくする目的で糖類やアルコールを使用してもよい。
油脂-ママコ形成性成分混合物と乳化剤とを混合して乳化剤-油脂-ママコ形成性成分混合物を調製する工程においては、前記油脂-ママコ形成性成分混合物に加えて、他のママコ形成性成分を一緒に混合してもよいが、乳化剤-油脂-ママコ形成性成分混合物は、必ずしも顆粒状組成物に含まれるすべてのママコ形成性成分を含んでいる必要はない。
乳化剤-油脂-ママコ形成性成分混合物は、顆粒状組成物に含まれるママコ形成性成分の中で最もママコを形成しやすいママコ形成性成分を含むことが好ましい。
なお、混合方法及び混合装置は、公知の方法及び装置を用いることができる。
【0010】
本発明のママコ形成性成分を含む顆粒状組成物の製造方法は、さらに残りの成分を乳化剤-油脂-ママコ形成性成分混合物と混合し、造粒することを含む。
残りの成分としては、一般に食品、飼料、医薬品、医薬部外品、化粧品、工業製品用として用いられる原材料であれば、それぞれ食品、飼料、医薬品、医薬部外品、化粧品、工業製品用として用いることができる。なお、乳化剤-油脂-ママコ形成性成分混合物を調製する際に、顆粒状組成物に含まれるママコ形成性成分の一部を用いた場合には、残りのママコ形成性成分は、前記残りの成分として乳化剤-油脂-ママコ形成性成分混合物と混合される。造粒前の乳化剤-油脂-ママコ形成性成分混合物において、ダマが存在しないことが好ましい。ここで、本発明において、「ダマが存在しない」とは、10メッシュで乳化剤-油脂-ママコ形成性成分混合物を篩って残った量が前記混合物1kg当たり5g以下であることを意味する。好ましくは、1g以下である。
なお、混合及び造粒方法並びに混合及び造粒装置は、公知の方法及び装置を用いることができる。
【実施例】
【0011】
(実施例1)
乳蛋白(タツアジャパン社製TATUA500)50kg及び米油(植田製油社製ナイスフライングオイルR)3kgを2分間混合した。得られた混合物を乳化剤(三菱化学フーズ社製リョートーエステルSP)(水分含量45重量%)と3分間混合し、流動層造粒機((株)パウレック社製)を用いて顆粒状組成物を製造した。なお、混合はマイクロスピードミキサー(宝工機社製マイクロスピードミキサーMSR−100型)を用いて行った。また、造粒バッチ量は700g(粉末)であり、バインダーには1.5%澱粉溶液(80℃)を使用した。
得られた顆粒にお湯を注ぐときれいに分散し、溶解した。下記比較例1で見られたような米粒状の小さな白い粒子は認められなかった。
【0012】
(比較例1)
米油を用いなかった以外は実施例1と同様にして顆粒状組成物を製造した。
得られた顆粒にお湯を注ぐときれいに分散した。ママコは生成しなかったが、米粒状の小さな白い粒子が表面に浮遊した。
【0013】
(造粒前の混合物の比較)
造粒前の混合物(すなわち、乳化剤-油脂-ママコ形成性成分混合物)を比較すると、実施例1の混合物では、ダマは存在しなかったが、比較例1の混合物では、ダマが存在した。10メッシュでこれらの混合物を篩って残った量(以下、「10メッシュアップ」という)を比較した。比較例1の混合物では、1kg当たり18gであったが、実施例1の混合物では、1kg当たり0gであった。次に10メッシュを通過させた混合物を20メッシュで篩って残った量(以下、「10メッシュパス20メッシュアップ」という)を比較した。比較例1の混合物では、20g当たり1.5gであったが、実施例1の混合物では、20g当たり0.03gであった。これらのことから、比較例1では、造粒前の混合物において、ダマが存在し、これが顆粒を溶かしたときに米粒状の小さな白い粒子となっているものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性タンパク質を含むママコ形成性成分と油脂とを混合して油脂-ママコ形成性成分混合物を調製し、
前記油脂-ママコ形成性成分混合物と乳化剤とを混合して乳化剤-油脂-ママコ形成性成分混合物を調製し、
残りの成分を前記乳化剤-油脂-ママコ形成性成分混合物と混合し、
造粒すること
を含む、ママコ形成性成分を含む顆粒状組成物の製造方法。
【請求項2】
前記乳化剤が水分を含む乳化剤である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の製造方法で得られた顆粒状組成物。

【公開番号】特開2009−55877(P2009−55877A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227864(P2007−227864)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】