説明

顔撮影装置および顔撮影方法

【課題】異なる時期に同じ人物の顔撮影を行う場合に、同一撮影位置で顔画像を撮影可能な顔撮影装置およびその方法を提供する。
【解決手段】顔を所定位置に保持させる顔保持手段と、保持されている顔を撮影する撮影カメラ4と、撮影された顔画像のデータを記憶する顔画像データ保存部36と、撮影カメラ4で撮影された顔画像を表示する表示手段と、前回撮影された第1顔画像を表示する第1表示領域80aとリアルタイム顔画像を表示する第2表示領域80bとが交互に繰り返して表示されるように第1顔画像とリアルタイム顔画像とを合成する画像合成手段とを備え、同一の顔を再度撮影する際に、合成顔画像80を表示させ、当該合成顔画像が前記第1顔画像と一致または略一致するように、撮影位置を移動してリアルタイム顔画像を微調整するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌の状態を診断する場合などに使用される顔撮影装置および顔撮影方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
かかる顔撮影装置は、美容皮膚科、美容外科、形成外科などにおいて使用されており、定期的に人の顔を撮影することで肌の状態の経時的な変化を観察し、化粧品や肌治療の効果を確認する目的で使用されている(例えば、下記特許文献1)。具体的には、得られた顔画像からシミ・シワ・毛穴・色ムラなどの評価を行なうものであり、さらには、紫外線を使用したポルフィリン・かくれジミなどの評価も行なわれている。このような肌状態の評価を行なうために、以前に撮影した顔画像と今回撮影した顔画像とを画像処理技術(ソフトウェア)を用いて比較することが行なわれている。従って、以前の顔画像と現在の顔画像が同じ条件で撮影されている必要がある。
【0003】
ところで、証明写真等の人物を撮影する撮影装置であって、撮影用ガイド(鼻梁、目範囲)を表示し、被験者自身が撮影用ガイドを用いて撮影位置を位置決めすることができる撮影装置が公知である(下記特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−148540号公報
【特許文献2】特開2003−21859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の場合、顔を保持する顔保持手段は、通常はあごの部分と額の部分を保持するのみであり、日を開けて顔を保持させた場合、同じ状態で顔を保持できているとは限らない。また、あご載せ台の高さと、額押さえの高さ及び前後位置をスケールで読み取ることが開示されているが、あご載せ台の高さと、額押さえの高さ及び前後位置が同じ状態にセットされていたとしても、保持されている顔の角度が前回撮影時とは変わっている可能性もあり、再現性という点では不十分な面があった。従って、対応させるべきシミ・シワなどの位置が異なってしまい、正しい評価を行なうことができなくなる可能性があった。
【0006】
また、上記特許文献2のように、撮影ガイドを表示するようにして、被験者自身が撮影位置を位置決めして再度撮影時に顔画像を撮影しても、撮影ガイド自体が万人に適用できるように設定された撮影ガイドであり、前回の顔画像の撮影位置と同じ撮影位置で今回の顔画像を撮影することは困難である。
【0007】
また、顔画像撮影において、装置のオペレータが、前回撮影の顔画像と今回撮影の顔画像をモニターで視認しながら、オペレータが撮影位置を被験者に指示するように構成されている場合がある。かかる場合、オペレータの指示が的確であっても、被験者はその指示のみで顔の姿勢を微調整する必要があり、大変煩わしく、簡単に位置決めできるものではなく、改善が望まれていた。
【0008】
また、再度の顔画像の撮影の際に、前回撮影された顔の画像を、半透明状態に表示させ、今回撮影の顔をこの半透明状態の顔画像に位置合わせすることが考えられるが、半透明状態の顔画像と今回の顔を重ねあわせる構成であるため、微小な角度ズレ等を確認することが困難であると考えられる。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、異なる時期に同じ人物の顔撮影を行う場合に、同一撮影位置で顔画像を撮影可能な顔撮影装置およびその方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明に係る顔撮影装置は、
顔を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段で撮影された顔画像のデータを記憶する顔画像データ記憶手段と、
前記撮影手段で撮影された顔画像を表示する表示手段と、
前記顔画像データ記憶手段に記憶されている前回撮影された第1顔画像を表示する第1表示領域と前記撮影手段によってリアルタイムに撮影されているリアルタイム顔画像を表示する第2表示領域とが交互に繰り返して表示されるように第1顔画像とリアルタイム顔画像とを合成する画像合成手段と、を備え、
同一の顔を再度撮影する際に、前記画像合成手段で合成された合成顔画像を前記表示手段に表示させ、当該合成顔画像が前記第1顔画像と一致または略一致するように、撮影位置を移動してリアルタイム顔画像を微調整するように構成したことを特徴とする。
【0011】
かかる構成による顔撮影装置の作用・効果について説明する。撮影手段により顔の撮影を行う。なお、顔の撮影に際し、被験者が顔を動かさないように固定して撮影してもよく、例えば、顔保持手段(例えば、額押さえ部とあご載せ台)により顔を所定位置に保持して顔の撮影を行なうように構成してもよい。撮影された顔画像を特定するために、識別ID、氏名、撮影日、顔画像ID等の情報を関連付けて記憶しておくことが好ましい。そして、後日の、同一人物の顔画像を撮影する場合において、顔画像データ記憶手段に記憶されている顔画像をモニター等に読み出す際に、識別ID、氏名、撮影日、顔画像ID等の情報から同一人物の顔画像を特定することが容易となる。しかし、同一人物の顔画像を特定できたとしても、前回と今回とで、撮影位置(アングル撮影)が微妙に異なる場合があり、撮影位置を微調整して、前回と今回の顔画像が一致するように構成することが要望されている。
【0012】
本発明では、同じ顔を再度撮影する際に、前回撮影された第1顔画像を顔画像データ記憶手段から読み出し、さらに、今回撮影の顔をリアルタイムで撮影する。この第1顔画像を表示する第1表示領域とリアルタイム顔画像を表示する第2表示領域とが交互に繰り返して表示されるように第1顔画像とリアルタイム顔画像とが合成された合成顔画像を表示手段(モニター等)に表示させる。第1顔画像とリアルタイム顔画像の表示領域が交互に繰り返されているので、表示領域の境で第1顔画像とリアルタイムの画像の端部同士が合わさるように構成されいる。そして、合成顔画像が前記第1顔画像と一致または略一致するように、撮影位置(顔位置・顔の角度または撮影手段の位置、撮影姿勢)を移動してリアルタイム顔画像が微調整される。合成顔画像が、第1顔画像と一致または略一致したら、顔画像を撮影する。一致するまたは略一致するか否かの判断は、装置オペレータが行い、その判断方法は、表示領域境界における、特定部位(目、鼻、口、ほくろ、眉等)の一致性を判断する方法、顔全体の輪郭を判断する方法等が挙げられるが、特定部位の一致性を判断する方法が好ましい。特定部位の輪郭は顔全体の輪郭よりも、むくみ等の面積変動が小さいと考えられるからである。この結果、前回撮影の第1顔画像と撮影位置が一致または略一致した再度撮影のリアルタイム顔画像を得ることができ、これを撮影することで、肌診断に供される今回撮影の第2顔画像を得ることができる。
【0013】
また、本発明の他の好適な一実施形態として、画像合成手段は、前記第1表示領域の色濃度と第2表示領域の色濃度を異なるように構成することが好ましい。例えば、第1表示領域の色濃度を予め設定された基準値よりも濃度を高く設定しておき、第2表示領域の色濃度を基準値に設定しておくことが例示される。
【0014】
この構成によって、第1表示領域と第2表示領域との境を正確に読み取れるので、合成顔画像が、第1顔画像と一致または略一致するか否かの判断を精度良く行なえる。
【0015】
また、本発明の他の好適な一実施形態として、第1表示領域および/または第2表示領域の色濃度を変更する色濃度変更手段を、さらに備えることが好ましい。
【0016】
この構成によって、多種多様の顔(色白または色黒の顔)に合わせて、第1表示領域および/または第2表示領域の色濃度を変更することができるので、合成顔画像が、第1顔画像と一致または略一致するか否かの判断を精度良く行なえる。また、色濃度変更手段は、第1表示領域および/または第2表示領域の色濃度を高い濃度と低い濃度とを切り替え変更できるように構成される。高い濃度と低い濃度を交互に切り換え変更することによって、例えば、シミ、ほくろの位置を正確に判断でき、オペレータの判断に有効である。
【0017】
また、本発明の他の好適な一実施形態として、第1表示領域と第2表示領域との境界に境界線を表示するように構成することが好ましい。
【0018】
この構成によって、第1表示領域と第2表示領域との境を正確に読み取れるので、合成顔画像が、第1顔画像と一致または略一致するか否かの判断を精度良く行なえる。
【0019】
また、本発明の他の好適な一実施形態として、再度撮影後に、前記再度撮影の第2顔画像と前記第1顔画像とを照合できるように構成することが好ましい。
【0020】
この構成によって、リアルタイム顔画像と第1顔画像とが一致または略一致したと判断されて撮影された静止画の顔画像(第2顔画像)と、第1顔画像とを確認のために照合することができる。リアルタイム顔画像は粗い解像度の画像であることが多く、かかる場合、第1顔画像との一致性判断を精度よく行えない場合もあるからである。そのため、第1顔画像とそれと同じ解像度の第2顔画像とを照合する。照合の結果、一致度が低い場合、再び撮影が行なわれるように構成される。
【0021】
また、本発明の他の好適な一実施形態として、市松模様の表示態様で前記第1表示領域と第2表示領域とを交互に繰り返すように構成することが好ましい。
【0022】
この構成によって、市松模様表示で第1顔画像とリアルタイム顔画像とを交互に表示させることができ、第1顔画像とリアルタイム顔画像とが一致または略一致しているかを精度良く判断できる。
【0023】
また、市松模様のピッチを変更可能に構成することが好ましい。人物によって顔の特定部位の位置、距離が異なるため、ピッチを変更可能に構成し、万人に適用できるように構成することが好ましいからである。また、市松模様のピッチは、複数の特定部位(例えば、鼻、目、眉、口等)をそれぞれ分割して境が形成されるように構成することが好ましい。これによって、複数の特定部位のそれぞれにおいて境が形成されているため、第1顔画像とリアルタイム顔画像との一致性を高精度に判断できる。さらに、ピッチを小さくして、レイヤー表示に近い状態に表示させたり、ピッチを大きくしたりして、ピッチを適宜変更できるように構成して、判断精度を向上させることができる。ピッチの変更指示は、装置オペレータが適宜指示可能に構成できる。
【0024】
また、本発明の他の好適な一実施形態として、ストライプの表示態様で前記第1表示領域と第2表示領域とを交互に繰り返すように構成することが好ましい。ストライプは、縦、横、または斜めのいずれかが予め設定されていてもよく、装置オペレータによって選択できるように構成されていても良い。
【0025】
この構成によって、ストライプ表示で第1顔画像とリアルタイム顔画像とを交互に表示させることができ、第1顔画像とリアルタイム顔画像とが一致または略一致しているかを精度良く判断できる。
【0026】
また、他の本発明は、前回撮影された顔画像に基づいて前回と同一人物の顔を再度撮影することができる顔撮影方法であって、同一の顔を再度撮影する際に、第1顔画像を表示する第1表示領域とリアルタイムに撮影されているリアルタイム顔画像を表示する第2表示領域とが交互に繰り返される合成顔画像を表示し、前記合成顔画像が前記第1顔画像と一致または略一致するように、撮影位置を移動してリアルタイム顔画像を微調整し、第2顔画像を撮影することを特徴とする。この構成の作用効果は、上記記載の顔撮影装置の作用効果と同一である。
【0027】
また、他の本発明は、顔を撮影する撮影手段と、前記撮影手段で撮影された顔画像のデータを記憶する顔画像データ記憶手段とを備える顔撮影装置であって、
前回撮影された第1顔画像を表示する第1表示領域と今回撮影された第2顔画像を表示する第2表示領域とが交互に繰り返して表示されるように第1顔画像と第2顔画像とを合成する画像合成手段と、
画像合成手段によって合成された合成顔画像を表示手段に表示させ、当該合成顔画像を構成する第1顔画像と第2顔画像とで一の顔画像を形成するように、第1顔画像または第2顔画像の画像サイズを拡大または縮小処理する画像処理手段と、を備えることを特徴とする。
【0028】
この構成によって、前回撮影された第1顔画像を表示する第1表示領域と今回撮影された第2顔画像を表示する第2表示領域とが交互に繰り返して表示されるように合成された合成顔画像を、当該合成顔画像を構成する第1顔画像と第2顔画像とで一の顔画像を形成するように、第1顔画像または第2顔画像を拡大または縮小処理することができ、第1顔画像と同じ画像サイズの第2顔画像を得ることができる。すなわち、再度撮影で得られた第2顔画像の画像サイズが、第1顔画像の画像サイズと異なる場合に、例えば、第2顔画像の画像サイズを第1顔画像のそれと同じにできる。拡大または縮小する指示は、装置オペレータがマウスでドラック指示できるように構成してもよい。
【0029】
また、他の本発明は、前回撮影の第1顔画像と一致または略一致する今回撮影の第2顔画像を得る方法であって、前記第1顔画像を表示する第1表示領域と前記第2顔画像を表示する第2表示領域とが交互に繰り返して表示され、前記第1顔画像と前記第2顔画像とで一の顔画像を形成するように、第1顔画像または第2顔画像を拡大または縮小処理することを特徴とする。この構成の作用効果は、上記記載の顔撮影装置の作用効果と同一である。
【0030】
また、上記顔撮影装置において、第1表示領域にリアルタイム顔画像を表示し、または第2表示領域に第1顔画像を表示するように切り替える表示切り替え手段がさらに具備されていてもよい。
【0031】
この構成によって、例えば、第1表示領域に第1顔画像とリアルタイム顔画像とを交互に表示できるため、第1表示領域での第1顔画像の残像とリアルタイム顔画像とで効果的に、第1顔画像とリアルタイム顔画像とが一致しているか否かを判断できる。一方、第2表示領域に第1顔画像とリアルタイム顔画像とを交互に表示できるため、第2表示領域でのリアルタイム顔画像の残像と第1顔画像とで効果的に、第1顔画像とリアルタイム顔画像とが一致しているか否かを判断できる。切り替え表示の指示は、例えば、装置オペレータが指示可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
(実施形態1)
本発明に係る顔撮影装置の好適な実施形態1を図面を用いて説明する。図1は、顔撮影装置の内部構成を示す横断面図を示し、図2は、図1に示す顔撮影装置の縦断面図である。図3、4は、撮影カメラの回転移動機構の詳細を示す図である。
【0033】
この顔撮影装置Aは、美容皮膚科、美容外科、形成外科などにおいて使用されている。定期的あるいは適度な期間を空けて人の顔を撮影することで肌の状態の経時的な変化を観察し、化粧品や肌治療の効果を確認する目的で使用される。この装置は、得られた顔画像からシミ・シワ・毛穴・色ムラなどの評価を行なう機能を有し、さらには、紫外線を使用したポルフィリン・かくれジミなどの評価を行なうこともできる。
【0034】
<顔撮影装置の構成>
図1において、顔撮影装置Aは、略立方体形状の筐体1を備えており、顔の撮影を行う時は筐体1内の所定箇所に顔を保持させた状態で行い、室内光などが筐体1内部に侵入しにくいような構造が採用されている。筐体1の正面には開口部1aが形成されており、ここから顔を挿入させる。人の顔を所定位置に保持するための顔保持手段として、あご載せ台2と額押さえ3が設けられている。あご載せ台2と額押さえ3は、人の顔の大きさや形状などに対応できるように手動で位置調整ができるように構成されている。開口部1aからの外光進入を防止するためにカーテン1bが設けられる。
【0035】
顔を撮影するための撮影手段として撮影カメラ4が設けられており、カメラ支持体5に保持されている。図1に示すように、撮影カメラ4による顔の撮影位置は、正面位置P0と左右の側面位置P1、P2の3箇所が設定されている。正面位置P0は、ちょうど撮影カメラ4が顔と向かい合う位置であり、側面位置P1,P2は正面位置P0に対して45゜に設定された位置である。ただし、この45゜という角度については、この数値に限定されるものではなく、他の角度に設定してもよく、また、側面位置P1,P2も2箇所だけでなく、更に多くの側面位置が設定されていてもよい。例えば、30゜,45゜,60゜,75゜に設定されていてもよい。
【0036】
撮影カメラ4は、デジタルカメラが使用されるが、どのようなタイプのものを使用してもよい。必要に応じてビデオ機能を有するものを使用してもよく、静止画像を撮影可能なビデオカメラを使用してもよい。撮影カメラ4は、リアルタイムに画像を撮影でき、このリアルタイムに撮影されたリアルタイム画像は、モニター等に表示されるように構成されている。
【0037】
このように、複数個所での顔画像を撮影するために、撮影カメラ4は顔位置を中心として回転移動できるように構成されている。撮影カメラ4の回転中心Bは、あご載せ台2の位置に設定されている。
【0038】
顔を照明するための光源8が筐体1内の複数個所に配置されている。光源8は、顔の位置を中心として円周方向に沿って顔に面するように配置されていると共に、図2に示すように、上方にも複数個所に配置される。光源8には、可視光を照射する光源と紫外線を照射するブラックライトがあり、目的に応じて使い分けもしくは両方が使用される。可視光を照射する光源8は、ハロゲンランプ、蛍光灯、LEDなど適宜のものを使用することができる。光源8として、フラッシュ光源を使用してもよい。
【0039】
光源8から照射される光を均一に拡散するための拡散板9が光源8と顔の間に配置される。拡散板9は、図1に示す横断面形状において円弧形状(半円形状)に形成されている。図2に示すように、拡散板9は、顔の正面だけでなく天井部と底面部にも配置されており、従って、この拡散板9により顔が包囲されるような形態となる。なお、拡散板9は、半円形でなくてもよく、多角形、楕円形状を呈していてもよい。撮影カメラ4は、拡散板9の背後側に移動することになるため、正面位置P0と側面位置P1,P2において撮影を可能にするため矩形の開口部9aが形成される。
【0040】
図2に示すように、被験者モニター211(表示手段に相当する)が筐体1内であって撮影カメラ4の下側に設置されている。この被験者モニター211には、撮影カメラ4で撮影された顔画像をリアルタイムに表示できる。後述する第1表示制御部30cによって、前回撮影の第1顔画像と今回撮影されているリアルタイムの顔画像とを合成した合成顔画像を表示することができる。被験者は、この被験者モニター211に表示された合成顔画像を視認しながら、自ら顔位置を動かし、撮影位置を微調整することができる。また、装置のオペレータの指示により被験者が自ら顔を動かしたり、オペレータが被験者の顔を動かすことができる。
【0041】
<カメラ移動機構>
次に、撮影カメラ4の移動機構の詳細を図3、4により説明する。回転中心Bには駆動モータ10と駆動軸11が設けられており、この駆動軸11にアーム12が連結される。アーム12の先端部12aに2本の連結軸13が垂直方向に植設され、この連結軸13の上部先端にカメラ支持体5が結合される。カメラ支持体5は、側面視で略コの字形状を有しており、コの字形状の内側に撮影カメラ4が配置されている。
【0042】
アーム12の先端側の裏面には、ローラ支持体14がアーム先端部12aに対して垂直方向を軸として回転自在に取り付けられており、ローラ支持体14にローラ15が回転自在に保持されている。このローラ15により、回転中心Bに対して撮影カメラ4をスムーズに回転移動させることができる。図1のP3は、撮影カメラ4の回転移動の軌跡を示している。撮影カメラ4と顔保持手段との相対位置は、カメラ位置センサー33によって検出され、この検出信号が相対位置制御部32に送信されて、駆動モータ10を制御するように構成されている。相対位置は、回転中心Bを基点とした撮影カメラ4の相対的3次元座標である。すなわち、顔保持手段(あご載せ台2と額押さえ3)を回転中心として撮影カメラ4を回転移動するように構成されている。相対位置は、撮影位置データを構成している。なお、撮影カメラ4の回転移動機構については、本実施形態に限定されるものではなく、種々の変形例が考えられる。
【0043】
図1に戻り、制御装置20は、顔撮影装置Aの動作を制御する機能と、撮影カメラ4により撮影された顔画像に関する画像処理を行う機能を有する。オペレータ用のOPモニター21(表示手段に相当する)には、撮影された顔画像が表示される。また、被験者モニター211と同様に、OPモニター21には、後述する第1表示制御部30cによって、前回撮影の第1顔画像と今回撮影されているリアルタイムの顔画像とを合成した合成顔画像を表示することができる。装置のオペレータは、OPモニター21を視認しながら、被験者に撮影位置の微調整に関する指示を行える。また、オペレータは、顔保持手段であるあご載せ台2と額押さえ3を微調整することもできる。また、撮影カメラ4の撮影位置(撮影姿勢、高さ調整等)を微調整することもできる。
【0044】
キーボード22は、顔撮影装置Aに対する種々の動作指令入力や画像処理を行なうための種々の動作指令やデータ入力などを行なう。制御装置20、OPモニター21、キーボード22は、汎用のコンピュータ(パソコン)により構成してもよい。
【0045】
<制御関係>
次に、顔撮影装置Aの主要な制御機能について図5の制御ブロック図により説明する。コントローラ30は、顔撮影装置Aを統括的に制御する機能を提供するものであり、CPU、メモリ、その他の必要なプログラム等により構成される。照明制御部31は、光源8の点灯・消灯制御を行なう。光源8は、顔画像の撮影を行う時に点灯される。可視光と紫外線を使い分ける場合に、そのいずれを点灯させるのか、あるいは両方を点灯させるのかについての制御も行われる。
【0046】
相対位置制御部32は、撮影カメラ4を正面位置P0,側面位置P1,P2の各位置に停止させるための移動制御を行うものであり、駆動モータ10に対する動作指令を行なう。撮影カメラ4を所定の位置に停止させるために、カメラ位置センサー33が設けられている。カメラ位置センサー33としては、上記3つの撮影位置を検出するためのセンサーが設けられており、例えば、アーム12の位置を光センサーやマイクロスイッチなどにより検出するように構成できる。
【0047】
また、上記3つの撮影位置だけではなく、それらの中間的な位置も検出することができるようにしている。例えば、駆動モータ10に連動して回転するエンコーダからの信号や、駆動モータ10(パルスモータ)へ供給する駆動パルスのカウント値などに基づいて、細かいステップで撮影カメラ4の位置を検出することができる。従って、撮影カメラ4が移動可能な全範囲について位置検出を行なうことができる。
【0048】
基本的には、相対位置制御部32による撮影カメラ4の位置制御は正面位置P0,側面位置P1,P2の3箇所で停止させるように行なわれる。撮影姿勢(顔の角度等)の微調整は、被験者自身またはオペレータによって行なわれる。また、オペレータが撮影カメラ4の撮影位置の微調整を行なってもよい。
【0049】
カメラ制御部34は、撮影カメラ4の動作を制御するものであり、具体的にはシャッターを切ることで顔画像の撮影を行う。顔画像の撮影は、正面位置P0,側面位置P1,P2の3箇所において夫々行なわれる。
【0050】
顔画像データ保存部36(顔画像データ記憶手段に相当する)は、撮影カメラ4により撮影された顔画像データが保存される。顔画像データは、デジタルのカラー画像データであり、JPEG等の適宜のファイル形式で保存される。顔画像データは、正面画像・左右側面画像(顔画像IDで特定できる)ごとに保存され、人物を特定する人物ID(識別情報)・撮影年月日、及び撮影位置と共に保存される。
【0051】
コントローラ30は、撮影位置設定手段30a、第1画像合成部30b、第1表示制御部30c、色濃度変更指示部30d、ピッチ変更指示部30e、確認指示部30f、第2画像合成部30g、合成指示部30h、第2表示制御部30iの機能を有する。
【0052】
撮影位置設定手段30aは、顔画像データ保存部36に記憶されている前回撮影の撮影位置(撮影カメラ4と顔との相対位置、例えば正面、側面位置)に基づいて、相対位置制御部32に指令を出し、撮影カメラ4を前回と同じ撮影条件となるように正面位置P0、または側面位置P1、P2へ移動させるように構成されている。
【0053】
第1画像合成部30b(画像合成手段に相当する)は、顔画像データ保存部36に記憶されている前回撮影された第1顔画像を表示する第1表示領域と撮影カメラ4によってリアルタイムに撮影されているリアルタイム顔画像を表示する第2表示領域とが交互に繰り返して表示されるように第1顔画像とリアルタイム顔画像とを合成することができる。また、第1画像合成部30bは、第1表示領域と第2表示領域との境界に境界線を表示するように合成処理を行うことができる。また、第1画像合成部30bは、予め設定されたピッチ幅の市松模様の表示態様で第1表示領域と第2表示領域とを交互に繰り返すように合成処理することができる。また、第1画像合成部30bは、ストライプの表示態様で第1表示領域と第2表示領域とを交互に繰り返すように合成処理することができる。また、第1画像合成部30bは、第1表示領域の色濃度と第2表示領域の色濃度を異なるように構成できる。
【0054】
色濃度変更指示部30d(色濃度変更手段に相当する)は、オペレータからの操作指示に基づいて、第1および/または第2表示領域の色濃度を変更する指令を第1画像合成部30bに行ない、この指令に応じて、第1画像合成部30bは、第1および/または第2表示領域の色濃度を変更するように構成されている。色濃度に関する設定データは予め不図示のメモリに記憶されており、第1画像合成部30bは、指令に応じて色濃度に関する設定データをメモリから読み出し画像処理を実行する。設定データは、色濃度の基準値、この基準値から段階的に高い濃度、低い濃度が設定されている。また、色濃度変更指示部30dは、オペレータからの操作指示に基づいて、最も高い濃度と最も低い濃度を相互に切り替え変更する指令を第1画像合成部30bに行ない、この指令に応じて、第1画像合成部30bは、第1および/または第2表示領域の色濃度を最も高い濃度と最も低い濃度を相互に切り替え変更するように構成されている。
【0055】
ピッチ変更指示部30eは、オペレータからの操作指示に基づいて、市松模様のピッチを変更するための指令を第1画像合成部30bに行ない、この指令に応じて、第1画像合成部30bは、市松模様のピッチを変更するように構成されている。市松模様のピッチは、複数の特定部位(例えば、鼻、目、眉、口等)をそれぞれ分割して境が形成されるように構成することが好ましく、例えば、オペレータがOPモニター21に表示された顔画像を確認しながら、マウス等の入力手段を用いて、複数の特定部位をそれぞれ分割して境が形成されるようにピッチを自由に変更できるように構成される。これによって、複数の特定部位のそれぞれにおいて境が形成されているため、第1顔画像とリアルタイム顔画像との一致性を高精度に判断できる。また、ピッチ幅をオペレータが自由に変更できる自由モードを構成し、かかる自由モードをとともに、または独立に、第1顔画像から特定部位の位置を解析し、複数の特定部位をそれぞれ分割して境が形成されるように市松模様のピッチ幅を算出するピッチ算出手段を有し、このピッチ算出手段で算出されたピッチ幅の市松模様となるように第1表示領域と第2表示領域とが形成される最適ピッチモードを選択できるように構成できる。
【0056】
第1表示制御部30cは、OPモニター21、被験者モニター211に撮影カメラ4で撮影された顔画像を表示するように制御する。例えば、第1表示制御部30cは、初回撮影時に、撮影カメラ4で撮影された顔画像をOPモニター21、被験者モニター211に表示させるように制御する。また、同一の顔を再度撮影する際に、第1画像合成部30bで合成された合成顔画像をOPモニター21、被験者モニター211に表示させるように制御する。
【0057】
確認指示部30fは、オペレータからの操作指示に基づいて、再度撮影後に、再度撮影の第2顔画像と第1顔画像とを照合(再確認)する指令を第2画像合成部30gに行なう。
【0058】
第2画像合成部30gは、第1顔画像を表示する第1表示領域と第2顔画像を表示する第2表示領域とが交互に繰り返して表示(市松模様表示またはストライプ表示)されるように第1顔画像と第2顔画像とを合成し確認合成画像を作成する。また、合成指示部30hは、オペレータからの操作指示に基づいて、OPモニター21に表示された第1顔画像または第2顔画像に対する各種画像処理(例えば、平面移動処理、重ね合わせ処理)の指示を第2画像合成部30gに行い、この指示に基づいて、第2画像合成部30gは、第1顔画像または第2顔画像に対する各種画像処理(例えば、平面移動処理、重ね合わせ処理)を行なう。
【0059】
第2表示制御部30iは、第2画像合成部30gで合成された確認合成顔画像をOPモニター21、被験者モニター211に表示させるように制御する。また、第2表示制御部30iは、第2画像合成部30gによる第1顔画像または第2顔画像に対する各種画像処理(平面移動処理、重ね合わせ処理、サイズの拡大、縮小処理)の結果の画像をOPモニター21、被験者モニター211に表示させるように制御する。
【0060】
画像処理部38は、顔画像データに基づいて、肌治療などの効果を確認するために必要なソフトウェアにより構成される。具体的には、前回撮影した顔画像と今回撮影した顔画像との比較を画像処理技術を用いて行い、例えば、顔の特定部位におけるシミやシワなどの大きさ形状の比較、面積の算出、変色の度合いの解析などを行なう機能を有する。これらの解析結果についてはデータ化されて記憶部(不図示)に記憶される。
<作動フローチャート>
【0061】
次に、実施形態1の顔画像の撮影を行う時の手順を図6、7のフローチャートにより説明する。まず、初めての撮影か否かが判断される(S1)。例えば、顔撮影装置を起動し、操作画面上で、初回撮影モードか、再度撮影モードかを選択する。次いで、初回撮影の場合、ステップS2に移行し、被験者の顔をあご載せ台2と額押さえ3により保持させる(S2)。次に、撮影カメラ4を撮影位置に移動すべく、駆動モータ10により駆動させる(S3)。初期の撮影位置は、正面位置P0になるように設定されている。撮影カメラ4が撮影位置にセットされると、撮影状態にはいり、被験者モニター211、OPモニター21に、リアルタイムに顔画像が表示される(S4)。
【0062】
被験者は、被験者モニター211を視認しながら、シミ等が的確に撮影されるように顔位置、角度を適宜動かして微調整を行なう(S5)。撮影位置が定まったら診断に供される顔画像を撮影する(S6)。そして、ステップS6で撮影された顔画像と撮影位置(正面位置P0)とを関連づけて顔画像データ保存部36に保存する(S7)。なお、人物ID、撮影位置ID、撮影日時等の情報も関連づけられて保存される。
【0063】
次いで、他の撮影位置へ移動するか否かの判断がなされる(S8)。正面以外に、側面P1,P2でも撮影を行なう場合に、ステップS3に処理が戻り、撮影位置を変えて撮影が行なわれる。
【0064】
初めての撮影ではなく、再度の撮影である場合、再度の撮影処理に移行する。被験者の人物IDおよび撮影位置IDを選択して、同じ被験者の前回の顔画像(第1顔画像と称する)を顔画像データ保存部36から読み出す(S11)。
【0065】
次いで、被験者の顔をあご載せ台2と額押さえ3により保持させる(S12)。次に、撮影カメラ4を撮影位置IDに対応する撮影位置に移動すべく、駆動モータ10により駆動させる(S13)。撮影カメラ4が撮影位置にセットされると、リアルタイムの撮影状態にはいる(S14)。第1顔画像とリアルタイム撮影のリアルタイム顔画像は、第1画像合成部30bによって画像合成され(S15)、市松模様(図8(a))の表示態様で各モニター(21、211)に表示される(S16)。図8(c)に、合成処理された合成顔画像80を示す。合成顔画像80は、市松模様に表示領域が分割され、第1表示領域80aに第1顔画像が表示され、第2表示領域80bにリアルタイム顔画像が表示されている。第1表示領域80aと第2表示領域80bとの境界は境界線80cが設けられている。図8において、説明上、第1表示領域80aを斜線で示しているが、実際の表示では斜線はない。第1表示領域80aと第2表示領域80bは、一致度の判断または領域を区別しやすいように、いずれか一方または両方を色抜き表示、グレー表示(濃淡表示)にしてもよい。また、第1表示領域80aと第2表示領域80bは、一致度の判断または領域を区別しやすいように、それぞれの色濃度を異なるように構成してもよく、さらに、それぞれの色濃度を変更するように構成されていてもよい。また、いずれか一方または両方を白黒反転表示(高い色濃度と低い色濃度とを相互に表示)できるように構成してもよい。また、第1表示領域80aの第1顔画像を半透明表示してもよい。また、特定部位(鼻、口、目、眉、ほくろ)を輪郭表示してもよく、顔全体を輪郭表示するようにしてもよい。これらの表示態様は、予め設定されていてもよく、オペレータが操作画面から指示して選択、それぞれを切り替えできるように構成される。また、オペレータが操作画面から指示して市松模様表示(図8(a))とストライプ表示(図8(b))を切り替えるように構成されている。
【0066】
各モニター(21、211)に表示された合成顔画像80を視認し、診断に供される顔画像として撮影してもよいか否かを判断する(S17)。第1顔画像とリアルタイム顔画像とが、その表示領域の境界において、端部同士が一致または略一致していないと判断した場合、顔位置を微調整する(S18)。ここでの判断は、第1表示領域80aと第2表示領域80bとの境界で、特定部位または顔の輪郭が一致または略一致しているか否かで判断される。「一致または略一致」は、完全に一致する場合と、診断用として問題のない程度(オペレータ判断による)に一致している場合を含む概念である。
【0067】
ステップS15〜18では、オペレータが、各種表示態様で判断できるように構成されている。すなわち、表示態様を市松模様からストライプに変更したり、それぞれの色濃度を変更したり、白黒反転表示して確認したりして精度良く判断できるものである。また、第1顔画像を半透明表示にし、市松模様のピッチを小さく変更していき、合成顔画像をレイヤー表示(半透明表示に近い表示となる)にして判断することができる。
【0068】
被験者の顔位置または撮影カメラ4を移動させて微調整が行なわれ、図8(d)に示すように、合成顔画像80がズレていない状態(例えば、特定部位の位置が一致している状態)になれば、ステップS19に移行し、この状態の顔画像を撮影する(S19)。撮影された顔画像は撮影位置(例えば、正面位置P0)とともに前回の第1顔画像のデータを関連づけられて顔画像データ保存部36に保存される(S20)。なお、人物ID、撮影位置ID、撮影日時等の情報も関連づけられて保存される。
【0069】
次いで、ステップS19で撮影された顔画像が、診断に供される程度に精度良く(第1顔画像と比較できる程度に精度良く)撮影されていることを確認するか否かを判断する(S21)。リアルタイムで撮影されている画像が粗い画像である場合に、ステップS17の判断を精度良く行なえない場合があり、静止画どうしで確認したい場合があるからである。
【0070】
確認する場合、ステップS22に移行し、第1顔画像とステップS19で撮影された顔画像(第2顔画像と称する)とを照合するために、第1顔画像と第2顔画像は、第2画像合成部30gによって画像合成され(S22)、市松模様の表示態様で各モニター(21、211)に表示される(S23)。
【0071】
オペレータがモニターに表示された合成された顔画像を確認し、診断に供される程度に精度良く(第1顔画像と比較できる程度に精度良く)、第2顔画像が撮影されているか否かを判断する(S24)。診断に供される程度に精度良く第2顔画像が撮影されていないと判断すれば、ステップS14に戻り、撮影をやり直す。診断に供される程度に精度良く第2顔画像が撮影されていると判断すれば、ステップS25に移行し、他の撮影位置(例えば、側面位置P1,P2)で撮影するか否かを判断する(S25)。他の撮影位置で撮影を行なう場合、ステップS11に戻り、上記ステップの撮影動作を繰り返す。
【0072】
以上の動作において、ステップS21で診断に供される程度に精度良く撮影されているか否かを判断していたが、かかる動作は、ステップS25の次に行ってもよく、リアルタイム撮影の画像が粗くなければ、かかる動作を実行しなくてもよい。また、ステップS21の確認動作は、撮影時に被験者が動いてしまう場合もあり、このような場合における確認として機能してもよい。
【0073】
また、ステップS22において、第1顔画像と第2顔画像とが第2画像合成部30gによって画像合成され、市松模様の表示態様で表示されるように構成していたが、市松模様の替わりにストライプ表示するように構成してもよい。また、第1顔画像と第2顔画像とを並列に表示し、オペレータの操作指示で、第1顔画像または第2顔画像を平面移動させ、合成するように構成することもできる。
【0074】
以上の実施形態1において、再度撮影の際に、前回の第1顔画像とリアルタイム撮影の顔画像を例えば市松模様で表示するように構成することで、第1顔画像とリアルタイム顔画像とが一致または略一致するように顔位置、角度を簡単に素早く微調整することができる。
【0075】
また、以上の実施形態1において、顔位置と角度を被験者自身が微調整するように構成したが、これに制限されず、例えば、顔位置と角度を、オペレータが被験者の顔を動かすことで微調整することもでき、顔保持手段を動かして微調整するように構成することもできる。
【0076】
また、以上の実施形態1において、被験者自身が被験者モニター211を視認し、顔の位置、角度を微調整する構成であったが、これに制限されない。例えば、オペレータがOPモニター21に表示された、第1顔画像と第2顔画像の合成表示を視認して、顔位置、角度の微調整を被験者に指示するように構成してもよい。
【0077】
(実施形態2)
実施形態2では、前回撮影の第1顔画像と、今回撮影された第2顔画像とを比較し、第1顔画像と同じサイズになるように第2顔画像を拡大または縮小処理する構成の顔撮影装置について以下に説明を行なう。
【0078】
実施形態2の機能構成において、実施形態1の機能構成と同様のものは、同じ符号を付している。以下では、実施形態2に特有の機能、作用について詳細に説明し、実施形態1と同様の機能についてはその説明を省略または簡略する。
【0079】
図9に示す、画像処理指示30jは、オペレータからの操作指示に基づいて、第1顔画像と第2顔画像とを照合する指示を第3画像合成部30k、画像処理手段30mに行なう。第1顔画像は、前回撮影の顔画像であり、1または複数ある場合もある。第2顔画像は、前回撮影から時間を経た今回の再度撮影に係るものである。第1顔画像と第2顔画像は、顔画像データ保存部36に関連づけられて保存されている。
【0080】
第3画像合成部30k(画像合成手段に相当する)は、顔画像データ保存部36から読み出された第1顔画像と第2顔画像を合成処理できる。第3画像合成部30kは、第1顔画像を表示する第1表示領域と第2顔画像を表示する第2表示領域とが交互に繰り返して表示(市松模様表示またはストライプ表示)されるように第1顔画像と第2顔画像とを合成した合成顔画像を作成することができる。
【0081】
また、画像処理手段30mは、第1顔画像と第2顔画像との画像サイズが同じになるように、第1顔画像または第2顔画像の画像サイズを拡大または縮小処理することができる。
【0082】
画像処理指示部30nは、オペレータからの操作指示に基づいて、OPモニター21に表示された第1顔画像または第2顔画像に対する各種画像処理(例えば、平面移動処理、重ね合わせ処理、サイズの拡大、縮小処理)の指示を第3画像合成部30kまたは画像処理手段30mに行い、この指示に基づいて、第30画像合成部30kまたは画像処理手段30mは、第1顔画像または第2顔画像に対する各種画像処理(例えば、平面移動処理、重ね合わせ処理、サイズの拡大、縮小処理)を行なう。
【0083】
第3表示制御部30pは、第3画像合成部30kまたは画像処理手段30mによる第1顔画像または第2顔画像に対する各種画像処理(平面移動処理、重ね合わせ処理、サイズの拡大、縮小処理)の結果の画像をOPモニター21に表示させるように制御する。
<作動フローチャート>
【0084】
次に、実施形態2の画像処理の手順を図10のフローチャートにより説明する。まず、OPモニター21の操作画面の操作で、オペレータが第1顔画像と第2顔画像との照合処理(画像サイズの照合処理)を選択し、表示されている人物IDまたは撮影IDを選択する。この選択により、人物IDまたは撮影IDに対応する第1顔画像と第2顔画像が、顔画像データ保存部36から読み出される(S31)。
【0085】
読み出された第1顔画像と第2顔画像は、第3顔画像合成部30kによって、市松模様表示(またはストライプ表示)になるように合成処理され(S32)、OPモニター21に表示される(S33)。
【0086】
OPモニター21に表示された合成の顔画像を画像処理するか否かを判断する(S34)。第1顔画像と第2顔画像の画像サイズが異なっていると、OPモニター21には凸凹の合成顔画像が表示される。第1顔画像と第2顔画像の画像サイズが異なっていると、画像処理部38による画像処理で第2顔画像を有効に使用できないことになる。
【0087】
画像処理をする必要があると判断したらステップS35に行き、第2顔画像を画像処理する(S35)。第1顔画像より第2顔画像を画像処理(拡大または縮小)するほうが前回画像との比較の観点から好ましい。オペレータからの画面操作指示によって(例えば、選択した第2顔画像をドラック指示する)、画像処理指示部30nが、画像処理手段30mおよび第3画像合成部30kに指令する。具体的には、第2顔画像が画像処理され、画像処理された第2顔画像は、第1顔画像と合成処理され、OPモニター21に表示される。
【0088】
第2顔画像を拡大または縮小処理することで、第1顔画像の画像サイズと同じであると判断すれば、ステップS36に行き、第1顔画像と関連づけて顔画像データ保存部36に保存する。画像処理された顔画像を第3顔画像として第1顔画像、第2顔画像と関連づけて保存することが好ましい。
【0089】
次いで、他の顔画像についても上記動作を行なうか否かを判断する(S37)。他の顔画像についても処理を行なう場合は、S31に戻り、そうでない場合は、この照合処理を終了する。
【0090】
以上の実施形態2によれば、前回撮影された第1顔画像を表示する第1表示領域と今回撮影された第2顔画像を表示する第2表示領域とが交互に繰り返して表示されるように合成された合成顔画像を、当該合成顔画像を構成する第1顔画像と第2顔画像とで一の顔画像を形成するように、第2顔画像を拡大または縮小処理することができ、第1顔画像と同じサイズの第3顔画像を得ることができ、診断用の顔画像を適切に得ることができる。
【0091】
(実施形態3)
上記実施形態1,2は、ソフトウェアとハードウエア(CPU、メモリ等)を協働作用によって実現でき、専用回路、ファームウエア等で、またはそれらの組み合わせで実現することもできる。
【0092】
ソフトウェアで実現する場合、そのプログラムは以下のようになる。このプログラムは、記録媒体に記録され、記録媒体として提供可能であり、また、通信回線を介して提供(ダウンロード提供)されてもよい。通信回線を介して提供される場合、その一部の機能のみが提供されてもよく、他の一部がサーバ装置に残っていてもよく、全体の機能として本発明の機能が発揮されていれば本発明の技術的範囲に含まれる。
【0093】
本発明のソフトウエアプログラムは、コンピュータに、
前回撮影と同一の顔を再度撮影する際に、前回撮影の第1顔画像を表示する第1表示領域と今回撮影に係るリアルタイムに撮影されているリアルタイム顔画像を表示する第2表示領域とが交互に繰り返される合成顔画像を作成するステップと、
作成された合成顔画像を表示するステップと、
を実行させるためのプログラムである。
【0094】
また、他のソフトウエアプログラムは、コンピュータに、
前回撮影の第1顔画像を表示する第1表示領域と今回撮影の第2顔画像を表示する第2表示領域とが交互に繰り返される合成顔画像を作成するステップと、
作成された合成顔画像を表示するステップと、
前記第1顔画像と前記第2顔画像とで一の顔画像を形成するように、第1顔画像または第2顔画像の画像サイズを拡大または縮小処理するステップと、
を実行させるためのプログラムである。
【0095】
<別実施形態>
本実施形態においては、被験者の顔正面を固定し、撮影カメラ4が顔正面を中心に左右に回転移動する構成であったが、これに制限されない。例えば、撮影カメラ4を固定し、あご載せ台2と額押さえ3を、それら各々の中心軸周りに回転できるように構成し、撮影カメラ4で被験者の顔の正面、側面等を適宜撮影できるように構成できる。
【0096】
また、本実施形態においては、顔保持手段としてあご載せ台2と額押さえ3を用いていたが、これに制限されず、例えば、あご載せ台2または額押さえ3のみで顔を保持させてもよく、あるいは、顔保持手段を設けずに、被験者が顔を固定するように構成できる。
【0097】
また、本実施形態においては、撮影カメラ4の撮影位置への設定は自動的に行なっているが、これらを手動で行うようにしてもよい。この場合、正しい位置に撮影カメラ4が設定されたか否かを確認するために外部表示させることが好ましい。例えば、最後の微調整をするに際して撮影カメラ4を移動させた時に、正しい位置に来たときに外部表示をさせるようにする。表示のさせ方としては、LEDなどのランプで表示させたり、ブザーで警告音を発生させるなどの方法がある。また、モニター21に表示させるようにしてもよい。
【0098】
また、本実施形態では、撮影カメラ4はカメラ支持体5に固定されているが、カメラ支持体5に対して相対移動できるように撮影カメラ4を取り付けてもよい。これにより、撮影カメラ4の微調整を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】顔撮影装置の内部構成を示す横断面図
【図2】顔撮影装置の内部構成を示す縦断面図
【図3】撮影カメラの回転移動機構の詳細構成を示す斜視図
【図4】撮影カメラの回転移動機構の詳細構成を示す側面図
【図5】実施形態1の顔撮影装置の制御機能を示すブロック図
【図6】実施形態1の作動フローチャート
【図7】実施形態1の作動フローチャート
【図8】市松模様、ストライプの表示態様および合成された合成顔画像について説明するための図
【図9】実施形態2の顔撮影装置の制御機能を示すブロック図
【図10】実施形態2の作動フローチャート
【符号の説明】
【0100】
2 あご載せ台
3 額押さえ
4 撮影カメラ
5 カメラ支持体
20 制御装置
30 コントローラ
30a 撮影位置設定手段
30b 第1画像合成部
30c 第1表示制御部
30d 色濃度変更指示部
30e ピッチ変更指示部
30f 確認指示部
30g 第2画像合成部
30h 合成指示部
30i 第2表示制御部
30j 画像処理指示
30k 第3画像合成部
30m 画像処理手段
30n 画像処理指示部
30p 第3表示制御部
32 相対位置制御部
33 カメラ位置センサー
34 カメラ制御部
36 顔画像データ保存部
38 画像処理部
A 顔撮影装置
P0 正面位置
P1,P2 側面位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段で撮影された顔画像のデータを記憶する顔画像データ記憶手段と、
前記撮影手段で撮影された顔画像を表示する表示手段と、
前記顔画像データ記憶手段に記憶されている前回撮影された第1顔画像を表示する第1表示領域と前記撮影手段によってリアルタイムに撮影されているリアルタイム顔画像を表示する第2表示領域とが交互に繰り返して表示されるように第1顔画像とリアルタイム顔画像とを合成する画像合成手段と、を備え、
同一の顔を再度撮影する際に、前記画像合成手段で合成された合成顔画像を前記表示手段に表示させ、当該合成顔画像が前記第1顔画像と一致または略一致するように、撮影位置を移動してリアルタイム顔画像を微調整するように構成したことを特徴とする顔撮影装置。
【請求項2】
前記画像合成手段は、前記第1表示領域の色濃度と第2表示領域の色濃度を異なるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の顔撮影装置。
【請求項3】
前記色濃度を変更する色濃度変更手段を、さらに備える請求項2に記載の顔撮影装置。
【請求項4】
前記第1表示領域と第2表示領域との境界に境界線を表示するように構成したことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の顔撮影装置。
【請求項5】
前記再度撮影後に、前記再度撮影の第2顔画像と前記第1顔画像とを照合できるように構成したことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の顔撮影装置。
【請求項6】
市松模様の表示態様で前記第1表示領域と第2表示領域とを交互に繰り返すように構成したことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の顔撮影装置。
【請求項7】
市松模様のピッチを変更可能に構成したことを特徴とする請求項6に記載の顔撮影装置。
【請求項8】
ストライプの表示態様で前記第1表示領域と第2表示領域とを交互に繰り返すように構成したことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の顔撮影装置。
【請求項9】
顔を撮影する撮影手段と、前記撮影手段で撮影された顔画像のデータを記憶する顔画像データ記憶手段とを備える顔撮影装置であって、
前回撮影された第1顔画像を表示する第1表示領域と今回撮影された第2顔画像を表示する第2表示領域とが交互に繰り返して表示されるように第1顔画像と第2顔画像とを合成する画像合成手段と、
画像合成手段によって画像合成された合成顔画像を表示手段に表示させ、当該合成顔画像を構成する第1顔画像と第2顔画像とで一の顔画像を形成するように、第1顔画像または第2顔画像の画像サイズを拡大または縮小処理する画像処理手段と、を備えることを特徴とする顔撮影装置。
【請求項10】
前回撮影された顔画像に基づいて前回と同一人物の顔を再度撮影することができる顔撮影方法であって、
同一の顔を再度撮影する際に、第1顔画像を表示する第1表示領域とリアルタイムに撮影されているリアルタイム顔画像を表示する第2表示領域とが交互に繰り返される合成顔画像を表示し、
前記合成顔画像が前記第1顔画像と一致または略一致するように、撮影位置を移動してリアルタイム顔画像を微調整し、第2顔画像を撮影することを特徴とする顔撮影方法。
【請求項11】
前回撮影の第1顔画像と一致または略一致する今回撮影の第2顔画像を得る方法であって、
前記第1顔画像を表示する第1表示領域と前記第2顔画像を表示する第2表示領域とが交互に繰り返して表示され、
前記第1顔画像と前記第2顔画像とで一の顔画像を形成するように、第1顔画像または第2顔画像の画像サイズを拡大または縮小処理することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−171264(P2008−171264A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−4886(P2007−4886)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】