説明

顔料入りインクジェットインキセット

本発明はインクジェット印刷のためのインキセットに関し、詳しくは、指定された顔料着色剤に基づく少なくとも3種の着色インキを含むインキセットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット印刷のためのインキセットに関し、詳しくは、指定された顔料着色剤に基づく少なくとも3種の着色インキよりなるインキセットに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷は、インキの小滴が紙などのプリント媒体上に沈着して所望の画像を形成する非衝撃印刷プロセスである。小滴は、マイクロプロセッサーによって発生した電気信号に応答してプリントヘッドから噴出される。こうした記録において用いられるインキは、例えば、良好な分散安定性、噴出安定性および媒体への良好な定着を含む厳しい要求を受ける。
【0003】
染料と顔料の両方はインクジェットインキのための着色剤として用いられてきた。染料が顔料に比べて優れたカラー特性を典型的に提供する一方で、染料は速く色あせし、より擦り落とされがちである。水性媒体に分散した顔料を含むインキは、印刷された画像の耐水性および耐光性において水溶性染料を用いるインキより有利に優れる。
【0004】
顔料の種々の組み合わせを有するインキセットが開示されてきた。米国特許公報(特許文献1)には、PB15:3シアンインキ、PR122マゼンタインキおよびPY74イエローインキを有する顔料インキセットが開示されている。米国特許公報(特許文献2)には、シアンインキがビスフタロシアニルアルミノテトラフェニルシロキサン顔料を含有することを除き、類似のインキセットが開示されている。
【0005】
米国特許公報(特許文献3)には、PB15:3シアンインキ、PR122マゼンタインキ、PY74イエローインキおよびPB7(カーボンブラック)ブラックインキを含む顔料インキセットが開示されている。米国特許公報(特許文献4)には、PB15:3シアンインキ、PR122マゼンタインキおよびPY155イエローインキを含む顔料インキセットが開示されている。
【0006】
米国特許公報(特許文献5)には、PB15:3シアンインキ、PR122マゼンタインキおよび種々の異なるイエローインキを有する幾つかのセットを含む幾つかの顔料インキセットが開示されている。
【0007】
顔料の他の組み合わせ、および追加のカラーを有するインキセットは、米国特許公報(特許文献6)、米国特許公報(特許文献7)および米国特許公報(特許文献8)で開示されている。
【0008】
上述した刊行物のすべては、完全に記載されたかのようにすべての目的のために本明細書に引用して援用する。
【0009】
インクジェットインキのための着色剤としての顔料の利点を拡大し利用する顔料インキセットがなお必要とされている。
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,994,427号明細書
【特許文献2】米国特許第5,738,716号明細書
【特許文献3】米国特許第6,395,079号明細書
【特許文献4】米国特許第6,153,000号明細書
【特許文献5】米国特許第6,030,441号明細書
【特許文献6】米国特許第6,152,999号明細書
【特許文献7】米国特許第6,419,733号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2002/0043175号明細書
【特許文献9】米国特許第5,554,739号明細書
【特許文献10】米国特許第5,571,311号明細書
【特許文献11】米国特許第5,609,671号明細書
【特許文献12】米国特許第5,672,198号明細書
【特許文献13】米国特許第5,698,016号明細書
【特許文献14】米国特許第5,707,432号明細書
【特許文献15】米国特許第5,718,746号明細書
【特許文献16】米国特許第5,747,562号明細書
【特許文献17】米国特許第5,749,950号明細書
【特許文献18】米国特許第5,803,959号明細書
【特許文献19】米国特許第5,837,045号明細書
【特許文献20】米国特許第5,846,307号明細書
【特許文献21】米国特許第5,851,280号明細書
【特許文献22】米国特許第5,861,447号明細書
【特許文献23】米国特許第5,885,335号明細書
【特許文献24】米国特許第5,895,522号明細書
【特許文献25】米国特許第5,922,118号明細書
【特許文献26】米国特許第5,928,419号明細書
【特許文献27】米国特許第5,976,233号明細書
【特許文献28】米国特許第6,057,384号明細書
【特許文献29】米国特許第6,099,632号明細書
【特許文献30】米国特許第6,123,759号明細書
【特許文献31】米国特許第6,153,001号明細書
【特許文献32】米国特許第6,221,141号明細書
【特許文献33】米国特許第6,221,142号明細書
【特許文献34】米国特許第6,221,143号明細書
【特許文献35】米国特許第6,277,183号明細書
【特許文献36】米国特許第6,281,267号明細書
【特許文献37】米国特許第6,329,446号明細書
【特許文献38】米国特許第6,332,919号明細書
【特許文献39】米国特許第6,375,317号明細書
【特許文献40】米国特許出願公開第2001/0035110号明細書
【特許文献41】EP−A−第1086997号明細書
【特許文献42】EP−A−第1114851号明細書
【特許文献43】EP−A−第1158030号明細書
【特許文献44】EP−A−第1167471号明細書
【特許文献45】EP−A−第1122286号明細書
【特許文献46】国際公開第01/10963号パンフレット
【特許文献47】国際公開第01/25340号パンフレット
【特許文献48】国際公開第01/94476号パンフレット
【特許文献49】米国特許第5,085,698号明細書
【特許文献50】EP−A−第0556649号明細書
【特許文献51】米国特許第5,231,131号明細書
【特許文献52】米国特許第5,753,016号明細書
【特許文献53】米国特許第6,277,184号明細書
【特許文献54】米国特許第5,310,778号明細書
【特許文献55】米国特許第5,221,334号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によると、少なくとも3種の異なる着色インキを含むカラー印刷のためのインクジェットインキセットであって、
(i)前記インキの少なくとも1種がビヒクルと、PB15:3およびPB15:4からなる群から選択される銅フタロシアニン顔料とを含むシアンインキであり、
(ii)前記インキの少なくとも1種がビヒクルとPR122マゼンタ顔料とを含むマゼンタインキであり、
(iii)前記インキの少なくとも1種がビヒクルとPY95イエロー顔料とを含むイエローインキである
ことを特徴とするインクジェットインキセットが提供される。
【0012】
好ましくは、インキセットは少なくとも4種の異なる着色インキを含み、ここで、前記インキの少なくとも1種は、好ましくはビヒクルとカーボンブラック顔料とを含むブラックインキである。インキセットは、例えばオレンジインキおよび/またはグリーンインキなどの1つまたは複数の他の着色インキを任意選択的に含んでもよい。
【0013】
本発明は、基材上にインクジェット印刷する方法であって、
(A)デジタルデータ信号に応答するインクジェットプリンタを提供する工程、
(B)印刷しようとする基材を前記プリンタに装填する工程、
(C)上述したインクジェットインキセットを前記プリンタに装填する工程および
(D)前記デジタルデータ信号に応答して前記インクジェットインキセットを用いて基材上に印刷する工程
を含む方法も提供する。
【0014】
Y95に基づくイエローインキの使用は、上述したシアンインキおよびマゼンタインキと組み合わせて大きな色域を達成するように(他の先行技術イエロー顔料インクジェットインキと比べて)優れたクロマおよび好ましい色相角を提供する。また、有利なことに、Y95がイエローの「ニュートラル」シェードであるので、インキセットはグリーンとレッドの良好なバランスを達成することができる。更に、Y95を適切に分散させることが可能であるとともに、インクジェット印刷の厳しい要求を満たすインキに配合することが可能であることを以後に実証する。
【0015】
本発明のこれらの特徴および利点ならびに他の特徴および利点は以下の詳細な説明を読むことから当業者によってより容易に理解されるであろう。分かりやすくするために別々の実施形態の文脈において以上および以下で記載されている本発明の特定の特徴を単一実施形態の組み合わせで提供してもよいことは認められるべきである。逆に、簡単にするために単一実施形態の文脈で記載されている本発明の種々の特徴を別々にまたはあらゆる下位組み合わせで提供してもよい。更に、文脈によって特に明確に指定されない限り、単数の指示内容は複数も含んでよい(例えば、「a」および「an」は1つ、あるいは1つまたは複数を指してもよい)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明によると、インキセットが提供される。インキセットは、少なくとも1種のシアンインキ、少なくとも1種のマゼンタインキおよび少なくとも1種のイエローインキの少なくとも3種の主たるインキを含む。これらの主たるインキの各々は、次に、ビヒクルおよびビヒクルに分散した(顔料である)適切な着色剤よりなる。
【0017】
少なくとも1種のシアンインキは、好ましくは銅フタロシアニン顔料、最も好ましくはC.I.顔料ブルー15:3および/または15:4よりなる。少なくとも1種のマゼンタインキは、好ましくはキナクリドン顔料、最も好ましくはC.I.顔料レッド122よりなる。少なくとも1種のイエローインキはC.I.顔料イエロー95よりなる。
【0018】
顔料は「CI」番号によって日常的に参照される。「CI」番号を有する顔料に関する情報は、米国繊維化学染色協会(American Association of Textile Chemists and Colorists)(AATCC)と連携して染料着色剤協会(Society of Dyers and Colourists)(SDC)によって刊行された「カラーインデックス(Colour Index)」から見られる。SDCのウェブサイトは、http://www.sdc.org.uk/publications/ci4intro.htmであり、更なる情報はSDCに問い合わせることにより見つけてもよい。
【0019】
インキセットは、好ましくはカーボンブラック顔料を含むブラックインキを任意選択的に含んでもよい。カーボンブラック顔料が存在する時、カーボンブラック顔料は、例えば、米国特許公報(特許文献9)、米国特許公報(特許文献10)、米国特許公報(特許文献11)、米国特許公報(特許文献12)、米国特許公報(特許文献13)、米国特許公報(特許文献14)、米国特許公報(特許文献15)、米国特許公報(特許文献16)、米国特許公報(特許文献17)、米国特許公報(特許文献18)、米国特許公報(特許文献19)、米国特許公報(特許文献20)、米国特許公報(特許文献21)、米国特許公報(特許文献22)、米国特許公報(特許文献23)、米国特許公報(特許文献24)、米国特許公報(特許文献25)、米国特許公報(特許文献26)、米国特許公報(特許文献27)、米国特許公報(特許文献28)、米国特許公報(特許文献29)、米国特許公報(特許文献30)、米国特許公報(特許文献31)、米国特許公報(特許文献32)、米国特許公報(特許文献33)、米国特許公報(特許文献34)、米国特許公報(特許文献35)、米国特許公報(特許文献36)、米国特許公報(特許文献37)、米国特許公報(特許文献38)、米国特許公報(特許文献39)、米国特許公報(特許文献40)、(特許文献41)、(特許文献42)、(特許文献43)、(特許文献44)、(特許文献45)、(特許文献46)、(特許文献47)および(特許文献48)(それらの開示は完全に記載されたかのようにすべての目的のために本明細書に引用して援用する)で開示されたものなどの好ましくは「自己分散」カーボンブラックである。
【0020】
インキセットは、オレンジインキ、特にC.I.顔料オレンジ43、36、34、61、64または71の1つまたは複数よりなるオレンジインキ、および/またはグリーンインキ、特にC.I.顔料グリーン36または7の1つまたは複数よりなるグリーンインキなどの他のカラーを任意選択的に含んでもよい。
【0021】
伝統的には、顔料は、高分子分散剤または界面活性剤などの分散剤によってビヒクル中の分散液に安定化される。しかし、より最近、いわゆる「自己分散性」顔料または「自己分散」顔料(以後「SDP」)が開発されてきた。その名称が示唆するように、SPDは分散剤なしでビヒクルに分散可能である。ブラック顔料は、自己分散するように表面処理によって(例えば前に援用した(特許文献48)参照)、伝統的な方法での分散剤による処理によって、または表面処理と分散剤のある組み合わせによって分散液に安定化させてもよい。
【0022】
好ましくは、分散剤を用いる時、分散剤はランダム高分子分散剤または構造化高分子分散剤である。好ましいランダムポリマーには、アクリルポリマーおよびスチレン−アクリルポリマーが挙げられる。ABブロックコポリマー、BABブロックコポリマーおよびABCブロックコポリマー、分岐ポリマーおよびグラフトポリマーを含む構造化分散剤は最も好ましい。幾つかの有用な構造化ポリマーは、米国特許公報(特許文献49)、(特許文献50)および(特許文献51)で開示されている。それらの開示は、完全に記載されたかのようにすべての目的のために本明細書に引用して援用する。
【0023】
顔料の有用な粒度は、典型的には約0.005〜約15マイクロメートルの範囲内である。好ましくは、顔料の粒度は、約0.005〜約5マイクロメートル、より好ましくは約0.005〜約1マイクロメートル、最も好ましくは約0.005〜約0.3マイクロメートルの範囲であるのがよい。
【0024】
ブラック着色剤は、例えば米国特許公報(特許文献52)で開示されたブラック染料としての染料であってもよい。ブラック着色剤は、例えば米国特許公報(特許文献53)で開示されたように染料と顔料の組み合わせであってもよい。前の参考文献の両方の開示は、完全に記載されたかのようにすべての目的のために本明細書に引用して援用する。
【0025】
ビヒクルは水性または非水性であることが可能である。「水性ビヒクル」という用語は、水または水と少なくとも1種の水溶性有機溶媒(共溶媒)の混合物を意味する。適する混合物の選択は、所望の表面張力および粘度、選択された着色剤、インキの乾燥時間、およびインキが印刷される基材のタイプなどの特定の用途の要件に応じて異なる。選択してもよい水溶液有機溶媒の代表的な例は、米国特許公報(特許文献49)で開示されている(その開示は、完全に記載されたかのようにすべての目的のために本明細書に引用して援用する)。
【0026】
水と水溶性溶媒の混合物を用いる場合、水性ビヒクルは典型的には約30%〜約95%の水を含有し、残り(すなわち、約70%〜約5%)は水溶性溶媒である。好ましい組成物は、水性ビヒクルの全重量を基準にして約60%〜約95%の水を含有する。
【0027】
インキ中の水性ビヒクルの量は、インキの全重量を基準にして典型的には約70%〜約99.8%、好ましくは約80%〜約99.8%の範囲内である。
【0028】
水性ビヒクルは、界面活性剤またはグリコールエーテルおよび1,2−アルカンジオールなどの浸透剤を含めることにより速い浸透(迅速乾燥)であるようにすることが可能である。グリコールエーテルには、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルおよびジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテルが挙げられる。1,2−アルカンジオールは好ましくは1,2−C4−6アルカンジオール、最も好ましくは1,2−ヘキサンジオールである。適する界面活性剤には、エトキシル化アセチレンジオール(例えばエアー・プロダクツ(Air Products)製の「サーフィノールズ(Surfynols)」(登録商標)シリーズ)、エトキシル化第一アルコール(例えばシェル(Shell)製の「ネオドール(Neodol)」(登録商標)シリーズ)、エトキシル化第二アルコール(例えばユニオン・カーバイド(Union Carbide)製の「タージトール(Tergitol)」(登録商標)シリーズ)、スルホスクシネート(例えばサイテック(Cytec)製の「アエロゾル(Aerosol)」(登録商標)シリーズ)、オルガノシリコーン(例えばウィトコ(Witco)製の「シルウェット(Silwet)」(登録商標)シリーズ)およびフルオロ界面活性剤(例えば本願特許出願人製の「ゾニル(Zonyl)」(登録商標)シリーズ)が挙げられる。
【0029】
添加されるグリコールエーテルおよび1,2−アルカンジオールの量は適切に決定しなければならないが、インキの全重量を基準にして典型的には約1〜約15重量%、より典型的には約2〜約10重量%の範囲内である。界面活性剤は、インキの全重量を基準にして典型的には約0.01〜約5%、好ましくは約0.2〜約2%の量で用いてもよい。
【0030】
「非水性ビヒクル」は、非水性溶媒またはこうした溶媒の混合物より実質的になるビヒクルを意味し、それらの溶媒は極性および/または非極性であることが可能である。極性溶媒の例には、アルコール、エステル、ケトンおよびエーテル、特にグリコールのモノ−およびジ−アルキルエーテルならびにモノ−、ジ−およびトリ−プロピレングリコールのモノメチルエーテルならびにエチレングリコール、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコールのモノ−n−ブチルエーテルなどのポリグリコールが挙げられる。非極性溶媒の例には、精製蒸留製品および副生物を含む少なくとも6個の炭素原子を有する脂肪族および芳香族の炭化水素およびそれらの混合物が挙げられる。
【0031】
水を非水性ビヒクルに故意に添加しない時でさえ、偶発的な多少の水が配合物に入り込む場合があるが、これは一般には約2〜4%以下である。定義により、本発明の非水性インキは、非水性ビヒクルの全重量を基準にして約10重量%以下、好ましくは約5重量%以下の水を有する。
【0032】
他の成分がインキの安定性およびジェット性を妨げない程度に、こうした他の成分をインクジェットインキに配合してもよい。その程度は、日常の実験によって容易に決定することが可能である。こうした他の成分は、一般的な意味において当業界で周知されている。
【0033】
耐久性を改善するために(分散剤以外の)ポリマーをインキに添加してもよい。ポリマーは、ビヒクルに可溶性であるか、または分散させることが可能であり(例えば、「エマルジョンポリマー」または「ラテックス」)、イオン性または非イオン性であることが可能である。ポリマーの有用なクラスには、ポリアクリレート、スチレン−ポリアクリレートおよびポリウレタンが挙げられる。
【0034】
微生物の成長を抑制するために殺虫剤を用いてもよい。
【0035】
例えば重金属不純物の有害作用を排除するために、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、イミノ二酢酸(IDA)、エチレンジアミン−ジ(o−ヒドロキシフェニル酢酸)(EDDHA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、トランス−1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸(CyDTA)、ジエチレントリアミン−N,N,N’,N”,N”−五酢酸(DTPA)およびグリコールエーテルジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸(GEDTA)ならびにそれらの塩などの金属イオン封鎖剤(キレート化剤)を含めることは有利な場合がある。
【0036】
滴速度、小滴の分離長さ、滴サイズおよびストリーム安定性はインキの表面張力および粘度によって大いに影響を受ける。インクジェットインキは、典型的には25℃で約20ダイン/cm〜約70ダイン/cmの範囲内の表面張力を有する。粘度は25℃で約30cPほどに高いことが可能であるが、典型的には多少、より低い。インキは、噴出条件およびプリントヘッド設計に調節することができる物理的特性を有する。インキは、インクジェット装置内で著しい程度に目詰まりしないように長期間にわたって優れた貯蔵安定性を有するべきである。更に、インキは、インキが接触することになるインクジェット印刷装置の部品を腐食させるべきでなく、インキは本質的に無臭および無毒であるべきである。
【0037】
特定のいかなる粘度範囲にもプリントヘッドにも限定されないけれども、本発明によって考慮された用途は、より低い粘度のインキを一般に必要とする。従って、本発明インキの粘度(25℃)は、約7cps未満、好ましくは約5cps未満であることが可能であり、最も有利には約3.5cps未満である。
【実施例】
【0038】
以下の略語を用いる。
BzMA=ベンジルメタクリレート
HEMA=ヒドロキシエチルメタクリレート
ETEGMA=エチルトリエチレングリコールメタクリレート
MAA=メタクリル酸
【0039】
(シアン分散液)
代表的なシアン分散液を次の通り調製することが可能である。水(159.5グラム)、45.5%KOH(7.3グラム)、ポリマー分散剤溶液(13//13/7.5、BzMA//MMA/ETEGMA)の2−ピロリドン中の固形物43%)(58.1グラム)およびP.B.15:4顔料(「アズテック・ケミスパース(Aztech Chemisperse)」(登録商標)シアン(Cyan)1541、マグルーダ・カラー・カンパニー(Magruder Color Company)(75.0グラム)の混合物を高速分散機内で攪拌する。顔料が完全に濡れた後、追加の水75.0グラムを添加する。得られたスラリーを250ml水平媒体ミル内で4時間にわたり混練する。一旦所望の粒度を達成すると、123.9グラムの水と1.2グラムの「プロキセル(Proxel)」GXL(殺虫剤、アベシア(Avecia))で分散液を更に希釈する。最終コンセントレートは15重量%シアン顔料を含有する。
【0040】
PB15:3およびPB15:4分散液の多くの他の実施例は、前に本明細書に援用した技術を含む文献中に存在する。
【0041】
(マゼンタ分散液)
代表的なマゼンタ分散液を次の通り調製することが可能である。水(127.4グラム)、45.5%KOH(7.3グラム)、ポリマー分散剤溶液(13//13/7.5、BzMA//MMA/ETEGMA)の2−ピロリドン中の固形物43%)(58.1グラム)およびPR122顔料(「サンファスト・マゼンタ(Sunfast Magenta)」122 228−2410、サン・ケミカル(Sun Chemical)(75.0グラム)の混合物を高速分散機内で攪拌する。顔料が完全に濡れた後、追加の水75.0グラムを添加する。得られたスラリーを250ml水平媒体ミル内で4時間にわたり混練する。一旦所望の粒度を達成すると、123.9グラムの水と1.2グラムの「プロキセル(Proxel)」GXL(殺虫剤、アベシア(Avecia))で分散液を更に希釈する。最終コンセントレートは15重量%マゼンタ顔料を含有する。
【0042】
PR122分散液の多くの他の実施例は、前に本明細書に援用した技術を含む文献中に存在する。
【0043】
(イエロー分散液)
以下の処方を用いて、Y95、Y128およびY155の分散液を米国特許公報(特許文献54)(その開示は、完全に記載されたかのようにすべての目的のために本明細書に引用して援用する)に記載されたように二本ロール機プロセスによって製造した。ブロックコポリマー分散剤を米国特許公報(特許文献55)(その開示は、完全に記載されたかのようにすべての目的のために本明細書に引用して援用する)に記載された手順により製造した。
【0044】
53重量部の「クロモファル(Cromophal)」(登録商標)イエロー(Yellow)GR(チバ(Ciba))顔料、36部のポリマー分散剤(BZMA//MAA/ETEGMA、13//13/7.5)および11部のテトラエチレングリコールからY95の分散液を調製した。分散液をKOHで中和し、水に落として、15%顔料コンセントレートを形成させた。
【0045】
53重量部の「クロモフタル(Cromophtal)」(登録商標)イエロー(Yellow)8GN(チバ(Ciba))、31部のポリマー分散剤(BzMA//MAA/、13//10)および16部の2−ピロリドンからY128の分散液(比較イエロー分散液)を調製した。分散液をKOHで中和し、水に落として、15%コンセントレートを形成させた。
【0046】
57重量部の「インクジェット・イエロー(Ink Jet Yellow)」4G(クラリアント(Clariant))、29部のポリマー分散剤(BzMA/MAA、13//10)および14部の2−ピロリドンからY155の分散液(比較イエロー分散液)を調製した。分散液をKOHで中和し、水に落として、15%コンセントレートを形成させた。
【0047】
PY110の分散液(比較イエロー分散液)を次の通り調製した。水(89.7グラム)、ジメチルエタノールアミン(8.4グラム)、ポリマー分散剤溶液(13//10BzMA/MMAの2−ピロリドン中の固形物39%)(76.9グラム)およびPY110顔料(「クロモフタル(Cromophtal)」(登録商標)イエロー(Yellow)3RT、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals))(75.0グラム)の混合物を高速分散機内で攪拌した。顔料が完全に濡れた後、76.1グラムのDI水を添加した。得られたスラリーを250ml水平媒体ミル内で4時間にわたり混練した。一旦所望の粒度を達成すると、172.7グラムのDI水と1.2グラムの「プロキセル(Proxel)」GXL(殺虫剤、アベシア(Avecia))で分散液を更に希釈した。最終コンセントレートは15重量%イエロー顔料であった。
【0048】
PY74の分散液(比較イエロー分散液)を次の通り調製した。水(118.5グラム)、ジメチルエタノールアミン(7.9グラム)、ポリマー分散剤溶液(13//10BzMA/MMAの2−ピロリドン中の固形物39%)(73.1グラム)およびPY74顔料(「アズテック・ケミスパース(Aztech Chemisperse)」(登録商標)イエロー(Yellow)7490、マグルーダ・カラー・カンパニー(Magruder Color Company)(85.5グラム)の混合物を高速分散機内で攪拌した。顔料が完全に濡れた後、追加の水217.9グラムを添加した。得られたスラリーを媒体ミルで4時間にわたり混練した。一旦所望の粒度を達成すると、水と1.43グラムの「プロキセル(Proxel)」GXL(殺虫剤、アベシア(Avecia))で分散液を更に希釈し、最終コンセントレートが15重量%イエロー顔料であるようにした。
【0049】
(インキの調製)
イエローインキを調製するために、顔料コンセントレートを以下の処方によるビヒクルに分散させ、各場合のイエロー顔料の最終重量がインキの全重量の3.5%であるようにした。
【0050】
【表1】

【0051】
(他の先行技術イエローインキに対する本イエローインキの比較)
本インキセットと殆どの先行技術インキセットとの間の主たる相違はイエロー着色剤の選択である。以下の表は、本発明セットY95のイエロー顔料に対してイエロー顔料Y128、Y110、Y74およびY155を比較している。
【0052】
51645ペンを用いる「ヒューレット・パッカード(Hewlett Packard)」980インクジェットプリンタで印刷することにより、100%覆う試験パッチを各イエローインキにより製造した。クロマおよび色相角を「スペクトロアイ(Spectroeye)」(ニューヨーク州ニューウィンザのグレタグ・マクベス(Gretag Macbeth(New Windsor,NY)))により測定した。耐光性をASTM G26−方法3(光への連続暴露、水スプレーなし)に準拠して試験し、デルタ(Delta)Eを暴露600時間後に報告した。
【0053】
【表2】

【0054】
理想的には、イエローインキは、ビブラントプリントを与えるために高いクロマ、セット中の他のシアンプロセスカラーおよびマゼンタプロセスカラーと組み合わせた時に良好な色バランス、ならびに光消滅に対する高い抵抗を与えるために90度の色相角を有する。90度の色相角はイエローの「ピュア」または「ニュートラル」シェードと考えられる。90を遥かに上回る色相角を有する顔料は若干グリーンに見え、90を下回る顔料はオレンジに見える。データは、他のイエローと比べて、Y95が最高クロマおよび最も好ましい色相角を有することを示している。Y95は、Y128、Y155およびY110より多少劣った耐光性であるが、それでも許容可能であり、明らかにY74より遥かに良好である。
【0055】
(インキセット)
本発明のインキセットは、例えば、前述したビヒクル中にシアン分散液(約2〜3%)を含有するシアンインキ、前述したビヒクル中にマゼンタ分散液(約3〜4%)を含有するマゼンタインキおよび前述したビヒクル中にPY95分散液(約3〜4%)を含有するイエローインキよりなることが可能である。ここで、指示した百分率は最終インキ中の重量%顔料である。
【0056】
他のビヒクル、例えば前に本明細書に引用して援用された技術の中で記載されたビヒクルを適切に用いることが可能である。周知されているように、各ビヒクルは特定のプリンタのために最適化される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3種の異なる着色インキを含むカラー印刷のためのインクジェットインキセットであって、
(i)前記インキの少なくとも1種がビヒクルと、PB15:3およびPB15:4からなる群から選択される銅フタロシアニン顔料とを含むシアンインキであり、
(ii)前記インキの少なくとも1種がビヒクルとPR122マゼンタ顔料とを含むマゼンタインキであり、
(iii)前記インキの少なくとも1種がビヒクルとPY95イエロー顔料とを含むイエローインキである
ことを特徴とするインクジェットインキセット。
【請求項2】
少なくとも4種の異なる着色インキを含み、前記インキの少なくとも1種がブラックインキであることを特徴とする請求項1に記載のインキセット。
【請求項3】
前記ブラックインキがビヒクルとカーボンブラック顔料とを含むことを特徴とする請求項2に記載のインキセット。
【請求項4】
前記カーボンブラック顔料が自己分散カーボンブラック顔料であることを特徴とする請求項3に記載のインキセット。
【請求項5】
ビヒクルとオレンジ顔料とを含むオレンジインキ、および/またはビヒクルとグリーン顔料とを含むグリーンインキを更に含むことを特徴とする請求項1に記載のインキセット。
【請求項6】
前記オレンジ顔料がC.I.顔料オレンジ43、36、34、61、64および71からなる群から選択され、前記グリーン顔料がC.I.顔料グリーン36および7からなる群から選択されることを特徴とする請求項5に記載のインクジェットインキセット。
【請求項7】
各ビヒクルが水性ビヒクルであることを特徴とする請求項1に記載のインキセット。
【請求項8】
各ビヒクルが水性ビヒクルであることを特徴とする請求項3に記載のインキセット。
【請求項9】
各ビヒクルが水性ビヒクルであることを特徴とする請求項5に記載のインキセット。
【請求項10】
基材上にインクジェット印刷する方法であって、
(A)デジタルデータ信号に応答するインクジェットプリンタを提供する工程、
(B)印刷しようとする基材を前記プリンタに装填する工程、
(C)請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクジェットインキセットを前記プリンタに装填する工程および
(D)前記デジタルデータ信号に応答して前記インクジェットインキセットを用いて基材上に印刷する工程
を含むことを特徴とする方法。

【公表番号】特表2007−505206(P2007−505206A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533398(P2006−533398)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/016410
【国際公開番号】WO2004/106443
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】