説明

顔料分散液の製造方法、およびカラーフィルター用ペースト

【課題】顔料を効率的に微細化分散させ、経時後における顔料の再凝集を防止し、ひいてはコントラスト、表面平滑性の高いカラーフィルターを供与できるカラーフィルター用ペーストを高い生産性で製造する。
【解決手段】メディアと分散処理槽を有するメディア攪拌型分散機、および該メディア攪拌型分散機に顔料と溶媒とを含有する顔料分散液を送液する送液ポンプを用いて顔料を溶媒中に分散させる顔料分散液の製造方法であって、メディアとして平均粒径φが0.01〜0.10(mm)のものを用い、送液ポンプとして下記式(1)で表される脈動率αが10%以下のポンプを用い、かつ下記式(2)で表される分散液が該分散機を1回通過する際の分散処理槽での滞留時間rt(分)を0.5〜1.0(分)として分散を行うことを特徴とする顔料分散液の製造方法。
【数1】


【数2】



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散安定性に優れた顔料分散体の製造方法ならびに該製造方法によって製造された分散体を用いたカラーフィルター用ペーストおよびカラーフィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、液晶表示装置には、透明基板の画素部位に複数の異なる色(例えば赤、緑、青の光の3原色)を配列したカラーフィルターを使用する。透明基板上に複数色の画素を規則正しく配列させる方法としては、感光性着色ペーストを使用する、或いは非感光性着色ペーストと感光性ポジ型レジストを組み合わせたフォトリソグラフィー技術によるもの、印刷法によるもの、電着法によるもの、フィルム転写法によるもの、インクジェット方式によるものなどが知られている。これらの中で、パターン精度や光の透過率・コントラストといったカラーフィルターの性能と、製造歩留まりやコストとの兼ね合いから、フォトリソグラフィー技術によるものが一般的に使用されている。フォトリソグラフィー技術によるカラーフィルター製造に使用される着色ペーストとしては、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸の溶液、或いはアクリル樹脂を主成分とする樹脂溶液に顔料を分散した着色ペーストが知られており、これら顔料分散タイプの着色ペーストがカラーフィルターの製造に一般的に使用されている。
【0003】
通常は、着色層を形成するに先立ち、ブラックマトリックスと呼ばれる遮光層を形成する。ブラックマトリックスは、各画素間に配列された格子状の遮光領域であり、液晶表示装置の表示コントラストを向上させるために設けられている。ブラックマトリックスとしては、Cr、Al、Niなどの金属薄膜(厚さ約0.1〜0.2μm)やCrと透明基板間に酸化クロムや酸窒化クロム等の層を設けた多層クロム膜が用いられるが、コストや環境汚染の面から、遮光剤と樹脂からなるブラックペーストを使用した樹脂ブラックマトリックスが使用されることもある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
近年、カラーフィルターに要求される透過率・コントラスト、表面平滑性等の特性が高性能化するのにともない、着色ペーストおよびブラックペースト(以下、両者を合わせて単に「ペースト」と呼ぶ)に要求される特性も高くなっている。特に顔料分散着色ペーストにおいては、顔料を数十nmオーダーにまで微細に分散させることが重要となっている(例えば、特許文献2、3参照)。
【0005】
顔料を溶媒中へ微細に分散させる装置として、メディアを用いた分散機(以下、「ビーズミル」と呼ぶ)が知られており、ボールミル、アトライター、サンドミル等がある。ビーズミルは分散メディアを用い、処理槽内にポンプにより供給した処理材料と分散メディアを攪拌子で攪拌し、攪拌子と分散メディアの運動で、処理材料に与えるずり力とせん断力および分散メディアによる粒体の補足と破壊により、該処理材料を微細化するものであり、処理材料の分散に影響を与える因子として、メディアの直径、処理槽内への充填率、およびメディアを処理材料に衝突させるための攪拌子の回転速度が支配的である。
【0006】
特に分散メディアの直径は粉砕効率に大きな影響を与え、直径が大きいほど大きな粒子を、小さいほど小さな粒子を効率よく粉砕することが知られている。また、効率よく顔料を微細に分散させる方法として、遠心力によりメディアと被分散体を分離し、粒径が0.3mmφ以下のメディアを用いる方法や(例えば、特許文献4,5参照)、粒径が0.3mmφ以下のメディアを用い、ロータピンを備えた湿式分散機に、顔料、顔料誘導体、及び液状媒体を含む顔料組成物を供給して分散する方法(例えば、特許文献6参照)が知られている。メディアの平均粒径が0.3mmφ以上では被分散体を数十nmオーダーまで分散することは非常に困難であり、達したとしても非常に長い分散時間を要し、分散後も不安定なため再凝集し易いといった問題が生じるが、0.1mmφ以下という微小なメディアを用いた分散では、その分散効率は飛躍的に向上し、かつ安定に顔料を微分散化できることがわかっている。しかしながら、微小なメディアと分散液を分離するのが困難であり、一般的には遠心力により分離を行うが、分散液の送液流量が多く、粘度が高い場合にはメディアが分離できずに流出したり、目詰まりを起こすといった問題があった。
【0007】
また、ビーズによる粉砕力を大きくし顔料を微分散化させる方法としては、ポンプを用いて分散液を脈動させて送液しビーズミルに導入する方法が知られており(非特許文献1)分散液の送液用ポンプとして一般的に使用されている、ギアポンプ、チューブポンプ、ホースポンプ、ダイヤフラムポンプといった定量ポンプを用いることで、脈動が生じた状態で送液される事となる。しかしながら、脈動が生じた状態でビーズミル内に分散液を導入するとミル出口側にビーズの圧密が生じ、上述の通り0.1mmφ以下の微小メディアを用いた分散では、一層ビーズの分離が困難となる問題がある。これに対し、塗工装置では脈動が無く精度の高い送液が必要となることから、一般的にダイヤフラムポンプやシリンジポンプが使用されている。(例えば、特許文献7、8参照)
一方、顔料を微細に分散させるにつれ、顔料は凝集し増粘する傾向となる。増粘の原因としては、顔料分散時の過分散・未分散といった分散状態のばらつきが挙げられ、分散機での滞留時間分布をシャープにする必要がある。分布をシャープにするには、被分散液を分散機に通液させるパス回数を多くすることが知られている。その方法としては、分散機に分散液を供給する槽と処理した分散液を受ける槽を設け、槽を互いに交換しながら複数回ミルを通液させるパス分散方式、複数の分散機を直列に連結する連結分散方式、循環槽と分散機を連結し循環しながら分散させる循環分散方式があり、現状では、作業性、品種切り替えの容易さから循環分散方式が主流となっている。さらに、循環の流量を多くすることでワンパス当たりの分散機内での滞留時間を短く採り、パス回数を多くして徐々に目標粒度に接近させてゆくマルチパス分散方式が提案されている。(例えば、非特許文献2)しかしながら、微小なメディアを用いた分散においては、前述の通り大流量で循環分散を行うことが困難なため分散後顔料の粒径分布がブロードになり、所望の特性を得ることが困難であった。
【特許文献1】特開平5−72524号公報
【特許文献2】特開昭60−129739号公報
【特許文献3】特開昭60−129707号公報
【特許文献4】特開2000−171931号公報
【特許文献5】特開2002−105356号公報
【特許文献6】特開2004−81945号公報
【特許文献7】特開平8−229497号公報
【特許文献8】特開2000−140739号公報
【非特許文献1】「APEMA NO.14」、[online]、2001年発行、アイメックス社技術情報誌、[平成17年11月1日検索]、インターネット <URL : http://www.aimex-apema.jp/>
【非特許文献2】「塗料の研究 NO.143」関西ペイント株式会社情報誌、2005年4月発行、p17
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は 、かかる従来技術の欠点に鑑み創案されたもので、その目的とするところは、メディア攪拌型分散機を用いた顔料分散体の製造工程において、分散後の顔料粒径が小さく、且つ保存安定性に優れた顔料分散液を安定的に製造する方法を提供し、ひいてはコントラスト、表面平滑性の高いカラーフィルターを供与できるカラーフィルター用ペーストを製造することを可能とする方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる本発明の目的は以下の構成により達成される。
すなわち、メディアと分散処理槽を有するメディア攪拌型分散機、および該メディア攪拌型分散機に顔料と溶媒とを含有する顔料分散液を送液する送液ポンプを用いて顔料を溶媒中に分散させる顔料分散液の製造方法であって、メディアとして平均粒径φが0.01〜0.10(mm)のものを用い、送液ポンプとして下記式(1)で表される脈動率αが10%以下のポンプを用い、かつ下記式(2)で表される分散液が該分散機を1回通過する際の分散処理槽での滞留時間rt(分)を0.5〜1.0(分)として分散を行うことを特徴とする顔料分散液の製造方法である。
【0010】
【数1】

【0011】
【数2】

【0012】
また、顔料分散液を送液させるポンプとして、2つの送液部からなり互いの吐出流量波形の位相を180°ずらして送液させる、或いは3つの送液部からなり互いの吐出流量波形の位相を120°ずらして送液させるポンプを用いることが好ましく、更には、3連式ダイヤフラムポンプ又は2連式ダイヤフラムポンプを用いることが好ましい。
【0013】
そして、分散工程で用いるメディアとしては嵩密度が4.0g/cm2以上であることが好ましい。また、顔料が有機顔料であることが好ましい。また、メディア撹拌型分散機としては、遠心分離によりメディアと顔料分散液を分離することが好ましい。
【0014】
また、少なくとも第1の分散工程と第2の分散工程を有する顔料分散液の製造方法であって、第1の分散工程および第2の分散工程が上記顔料分散液の製造方法を有しており、第1の分散工程で用いるメディアの平均粒径をφ1(mm)、第2の分散工程で用いるメディアの平均粒径をφ2(mm)としたときに、φ1/φ2が4以上40以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は着色剤と樹脂、及び溶媒を主成分とする顔料組成物を送液ポンプを用いてメディア攪拌型分散機に導入し湿式分散する際に、ポンプの脈動を抑えて送液し、更には被処理物が分散機内を一回通過する際の滞留時間を適切な範囲とすることにより、保存安定性に優れた顔料分散体を高い運転性で製造することを可能とするものである。そしてこのような製造方法により得られた顔料分散体とマトリックス樹脂を混合することにより、透過率、コントラスト、表面平滑性の高いカラーフィルターを製造しうるカラーフィルター用ペーストを製造するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0017】
すなわち、本発明は、一般にビーズミルと通称されているメディア攪拌型分散機を用いて、処理材料を分散処理することにより可能とされるものである。ビーズミルは、ステーターとロータの間隙に処理材料の流路を設け、この流路内に充填されたメディアで分散処理を行うタイプ、ベッセルと呼ばれる円筒形の処理槽内に充填されたメディアで分散処理を行うタイプなど、機種も多く、機構的にも各種のものがあるが、メディアを攪拌することで粒体を分散するという基本構造は共通している。後者の代表的なものは以下の通りであるが、この形態に特に限定されない。
【0018】
円筒形のベッセルと、この両端の、一方に処理材料の入り口、他方に処理材料の出口を有し、処理材料の出口には、処理材料とメディアを分離し、処理材料のみを取り出すセパレーターを具備する。セパレーターには大きく分けてスクリーンセパレーター、ギャップセパレーター及び遠心分離方式セパレーターがあり、近年はこれら各種セパレーターを組み合わせたセパレーターも開発されている。スクリーンセパレーターは、メディアを通さない大きさの編み目を持ち、処理材料のみを処理槽の外へ排出する機構であり、ギャップセパレーターは、回転軸に取り付けられたロータと軸受け部に具備されたステータに隙間を作り、ここでメディアと処理材料を分離する機構となっている。
【0019】
図1にギャップセパレーターを有する分散機の概略図の一例を示す。処理材料は入口4よりメディアで満たされた粉砕処理室7に導入され、粉砕処理される。その後、処理材料をメディアの平均粒径以下の隙間が設けられたギャップセパレーター2に通液させることで、処理材料とメディアを分離し、処理材料のみが出口1より取り出される。この様な構造を持つ分散機の具体的な例としては、株式会社シンマルエンタープライゼス製“DYNO−MILL”を挙げることができる。また、遠心分離セパレーターはメディアと処理材料の混合物を回転翼等からなる遠心分離部に通液させることにより遠心力によって比重の重いメディアのみを分離するものである。図2に遠心分離セパレーターを有する分散機の概略図の一例を示す。処理材料は入口14よりメディアで満たされた粉砕処理室15に導入され、粉砕処理される。その後、処理材料はセントリセパレーターと呼ばれる遠心分離セパレーター10に通液され、回転主軸11と同期して高速で回転するローターセパレーターと呼ばれる撹拌翼によってメディアと処理材料は遠心分離され、出口8より取り出される。この様な構造を持つ分散機の具体的な例としては、寿工業株式会社製UAM(“ウルトラアペックスミル”)を挙げることができる。
【0020】
本発明では、第1の分散工程と第2の分散工程にて用いるビーズミルにおいて、それぞれ異なる方式によりメディアと被分散体を分離することが望ましい。本発明においては0.1mmφ以下のメディアを用いることが必要であるが、スクリーンセパレーター或いはギャップセパレーターでは、加工精度の問題上完全にメディアを分離するのが困難であったり、分離部での目詰まりにより十分な流量で通液できないといった問題が有る。よって、遠心分離方式によりメディアを分離するのが好ましく、更には遠心分離とスクリーンを併せて用いることが好ましい。図3に遠心分離スクリーンセパレーターを有する分散機の概略図の一例を示す。この様な構造を持つ分散機の具体的な例としては、アシザワファインテック株式会社製“スターミルLMZ”、“スターミルZRS”等を挙げることができる。
【0021】
ベッセルの一方には軸受けが固定され、その軸受けに円筒形の処理槽内を円周方向に攪拌するための回転軸が槽内中央に設けられている。軸受けと回転軸の接合部には、処理材料が軸受けを介して流出しないためのシール機構を有する。シール機構には、グランドパッキン、リップシール、シングルメカニカルシール、ダブルメカニカルシール等があり、耐久性の高いダブルメカニカルシールが好ましく用いられるが、特にこれらに限定されない。
【0022】
回転軸には種々の形状をした攪拌羽根が一定の間隔で取り付けられ、円周方向に回転しメディアおよび処理材料に運動エネルギーとせん断力を与える。攪拌羽根の形状にはディスク型、ピン型、ピン付きディスク型等がある。ピン型は、回転軸に取り付けるリングから、円周方向にピンが何本か突き出た構造をしている。ピンの太さ、形状、本数には様々なものがあるが、特にこれらに限定されない。
【0023】
ディスクは穴あき型、カム型、波状円盤型、突起付き円盤型、ピン付き円盤型等があるが、特にこれらに限定されない。撹拌羽根の材質には、セラミック、ポリウレタン、テフロン(登録商標)、ポリエチレン等が用いられ、中でも耐摩耗性、耐薬品性、耐熱性等の点からはセラミックが好ましく用いられ、被分散体への衝撃を抑えマイルドに分散する観点からは樹脂製の撹拌羽根が好ましく用いられる。ベッセルは、その設置方向により縦型と横型が存在し、また横型の中には分散状況により、ベッセルの角度を変化させる機構を持ったものもあるが、特にこれらに限定されない。ベッセル内側の材質には、ガラス、超硬合金、ステンレス、鉄、セラミック等が用いられ、中でも耐摩耗性、耐薬品性、耐熱性等の点からセラミックが好ましく用いられる。メディアが激しく衝突して高温を発するため、耐摩耗性が高く、熱伝導が良く冷却効果の高いジルコニアや、ジルコニア強化アルミナが特に好ましく用いられるが、特にこれらに限定されない。
【0024】
入口部、出口部に関しても、メディアの衝突が考えられる部位の材質は、ベッセルと同様の考え方で材料選択がなされるが、特にこれらに限定されない。ベッセルの外側は、ベッセル内部を冷却するためのジャケットを具備しているのが好ましいが、特にこれらに限定されない。この様に構成された装置の処理槽内に、メディアを一定の充填率で満たし、処理材料と一緒に攪拌羽根で攪拌され分散が行われる。
【0025】
本発明の効果を顕著なものとするためには、適切なメディアを選択し用いることが非常に重要となり、その特徴を以下に述べる。
【0026】
本発明においては平均粒径が0.1mmφ以下のメディアを用いて分散を行うが、粒径の異なるメディアを用いて2段階の工程によって分散を行うことでより顕著な効果を得ることができる。ここで、本発明における平均粒径とは、メディアの円相当径をいい、メディア100個の最長径と最短径の平均値をもって求めたものである。具体的には、ビーズを実体顕微鏡で拡大撮影し、その画像から粒径を求めることができる。第一の分散工程にて使用されるメディアの平均粒径をφ1(mm)としたときに、φ1は、0.1〜1.0mmの範囲が好ましく、0.3〜1.0mmの範囲が特に好ましい。第一の分散工程においては、粗大な被分散体の粉砕を目的としており、メディアの平均粒径が大きいほどより効果的に粗大粒子を破砕することが可能となる。一方、第2の分散工程において用いるメディアの平均粒径をφ2(mm)としたときに、φ2としては0.01mm以上0.10mm以下が好ましく、0.01mm以上0.05mm以下であることが特に好ましい。より小さな径のメディアを使用することにより短時間で被分散体にダメージを与えることなくマイルドに分散することが可能となる。
【0027】
この第一の分散工程で使用するメディアの平均粒径φ1と第2の分散工程で使用するメディアの平均粒径φ2の比率Rとしたとき、比率の範囲としてはR=φ1/φ2が4以上40以下であることが好ましく、更には6以上20以下であることが特に好ましい。比率Rが4未満においては、2段階分散による生産性向上が見られず、比率Rが40を超える場合においては、第一工程にて粉砕した後の被分散体が大きいため第2工程において粉砕できず粗大な粒子として残留するといった問題が生じる。
【0028】
メディアの材質には、シリカ、超硬合金、鋼球、セラミック等のビーズが用いられ、中でも耐摩耗性、耐薬品性、耐熱性等の点からセラミックが好ましく用いられ、さらに好ましくは耐摩耗性が高く、熱伝導が良く冷却効果の高いジルコニアや、ジルコニア強化アルミナが用いられるが、特にこれらに限定されない。ただし、第2の分散工程に使用するメディアの嵩密度としては4.0g/cm以上が好ましく、高いほど衝撃力が大きくなり分散処理時間を短縮させることが可能となる。ここでいう嵩密度とは、メディア材料に存在する気孔を材料の一部と考慮して得られる密度をいうが、分野により用語が統一されていないので、上記定義の嵩密度を見掛け密度あるいは単に密度と呼ぶ場合もある。また、0.10mm以下と微小なメディアを遠心分離方式によって分離する際にも、メディアの嵩密度が高い方が安定な分離が可能となり好ましい。また、メディアの平均粒径の分布としては、本発明の効果を顕著なものとするために第2の分散工程に用いるメディアの粒径分布の標準偏差をσ(mm)としたとき、σ/φ2が0.15以下であることが好ましく、更にはσ/φ2が0.10以下であることがより好ましい。メディアの平均粒径φが0.10mm以下の範囲において粒径分布のシャープなメディアを用いることにより、被分散体の粒度分布もよりシャープなものとなり、透明性・安定性の良好な分散体を得ることが可能となる
メディアの充填率は50〜90(%)が好ましく、70〜87(%)がより好ましい。ここでいう充填率とは、分散機の粉砕処理室内の空間体積に対する最密に充填されたメディアのメディア間の空隙を含めた体積の比率をいう。メディアの充填率が50(%)以下の場合、ショートパスの影響が顕著となり、滞留時間が長時間必要となり分散効率が悪くなる。さらに滞留時間が長くなると、前記一部または全部の処理材料が過分散されてしまい、その一部または全部の処理材料が再凝集し、処理材料全体の品質を低下させる弊害が発生する。メディアの充填率が90(%)以上の場合、起動時の回転軸への負荷が増大し装置の損傷を引き起こす。この為必要以上に充填率を高くして分散効率を高くすることは出来ない。
【0029】
本発明で行う分散は、循環槽と分散機を連結し処理材料を循環しながら分散させる循環分散方式を採用している。分散液をビーズミルに送液させ、循環分散させる際に用いるポンプについて以下に述べる。
【0030】
本発明においては分散液を送液するポンプの選定が非常に重要となり、送液の際に脈動が生じないことが必要となる。送液の脈動を抑えることにより、分散機内への液導入部での圧力変動が小さくなり、分散ビーズが偏ることによる分散効率の低下やビーズの流出・閉塞を防ぐことが可能となる。分散液を送液するのに用いるポンプの脈動率α(%)が10%以下であることが好ましく、更には5%以下であることが好ましい。ここで、脈動率α(%)の計算は次式(1)で表される。
【0031】
【数3】

【0032】
ただし、送液ポンプ流量の単位時間当たりの最大変動幅、および送液ポンプ流量の平均流量は、質量流量計を使用して吐出側圧力0.20(MPa)における測定間隔0.25秒、ダンピング0.20秒での測定値とする。
【0033】
一般的に、分散液の送液用としては定量ポンプが好ましく用いられ、渦巻きポンプ、ギアポンプ、チューブポンプ、ホースポンプ、ダイヤフラムポンプ等が使用されている。しかしながら、渦巻きポンプ、ギアポンプでは、分散液中の顔料等のスラリーによりインペラやギア、ポンプ室の摩耗、軸封(シール)部での摩耗が起こりやすく、またスラリーの固着が固着するといった問題が生じる。一方、チューブポンプ、ホースポンプでは、回転するギヤ部分を他段階とすることで脈動を抑えるように工夫されたものもあるが、その改善は不十分である。また、脈動以外の問題点として、使用する溶媒によっては配管からの抽出物が有り、塗液でのハジキの原因となるといった問題がある。ダイヤフラムポンプは吐出・吸込を繰り返すため、吐出状態は正弦波の波形となり、180°〜360°の間は吐出しないため、脈動が大きいという問題がある。脈動を抑えるためには、空気の圧縮性を利用したエアチャンバーやアキュムレータが一般的に使用されているが、チャンバー内での分散液の滞留や顔料等スラリーの沈降による凝集物が問題となることが多い。
【0034】
それに対し、無脈動ポンプとしては、兵神装備株式会社の“ヘイシンモーノポンプ”、“2連式ダイヤフラムポンプ”及び “3連式ダイヤフラムポンプ”等が挙げられる。
【0035】
ヘイシンモーノポンプは雄ねじの構造をしたローターと雌ねじ構造をしたステーターからなり、ローターが偏心回転することで、ローター・ステーター間の液体を無脈動・定量に送液できるポンプである。耐溶剤性には優れるが、スラリーによってはローター・ステーター部での摩耗が問題となる。2連式ダイヤフラムポンプでは、ポンプヘッドを2つにし、吐出流量波形の位相を180°ずつずらして運転することで、合成された流れはほぼ一定流となり、更に特殊な形状のカムを用いて流量波形を台形とする事で、より脈動のない送液を可能としたものである。同様にポンプヘッドを3つにし、吐出流量波形の位相を120°ずつ変えて運転する3連式ダイヤフラムポンプも好ましい。また、ダイヤフラムポンプにおいては、接液部を耐溶剤の高い素材へ変更が容易であり、摩耗による劣化といった問題も生じない。同様な思想で脈動を抑えたポンプとして、2連式のチューブポンプ(株式会社イワキ社製 WM−520DiN/L)もあるが、前述の通り、配管からの抽出が懸念されるため、好ましくない。
【0036】
顔料の微分散化による増粘を抑制するため、分散液の分散機内での滞留時間分布をシャープにする必要がある。分散液の分散機でのをシャープにするには、循環の流量を多くすることで一回通過当たりの分散機内での滞留時間を短く採り、通過回数を多くして徐々に目標粒度に接近させてゆくマルチパス分散方式が好ましい。つまり、一回通過当たりの分散機内での滞留時間rt(分)を短くする必要がある。分散液が分散機を1回通過する際の粉砕室での滞留時間rt(分)は、下記の式で表される。
【0037】
【数4】

【0038】
ここで、L(cm/分)は分散液を分散機に送液させる際のポンプの平均流量、V(cm)は分散機の粉砕室空隙容積であり、具体的には分散機の粉砕室容積から充填ビーズ及びディスク等の容積を除いた容積である。
これに対し、循環分散における処理時間の計算は、滞留時間DT(分)を定義することにより、処理槽および処理材料の量及び循環流量に関わらず、処理効率を比較することが出来る。滞留時間の計算は、処理材料の体積=v(cm)、分散機の粉砕室容積=V(cm)、運転時間=T(分)としたとき、下記の式で表される。
【0039】
【数5】

【0040】
よって、循環分散におけるパス回数はDT/rt=L/v×Tとなる。
【0041】
ポンプの流量は流量計を用いたフィードバックにより制御されることが好ましい。無脈動定量ポンプでも、流量変動が皆無ではないため、流量計のフィードバックで流量を制御することで分散機導入部での圧力変動の影響回避に万全を期すことができる。
【0042】
ワンパス当たりの滞留時間rt(分)としては、1分以下が好ましく、更には、0.5分以上1分以下が好ましい。流量が少ない範囲においては、前述の通り滞留時間分布がブロードとなり、顔料の未分散・過分散が生じるため分散安定性が悪化する。一方、流量が多すぎると分散機内でのビーズ偏りが生じ分散性が悪化する。
【0043】
また、滞留時間DT(分)の範囲としては2分以上60分以下が好ましく、更には2分以上30分以下が好ましい。
【0044】
処理材の分散に大きく寄与する因子として撹拌翼等のローターの回転速度が挙げられるが、本発明における回転速度としては5m/s以上15m/s以下が好ましく、更には7m/s以上14m/s以下が好ましい。ローター回転速度が5m/s以下においては、被分散体を十分に粉砕・分散することができなかったり、遠心分離方式のセパレーターを用いた分散機においては、遠心分離能力低下によるメディアの偏りやメディアの流出といった問題が生じる。また、ローター回転速度が15m/s以上においては、被分散体に過剰なエネルギーがかかり過分散になりやすいといった問題が生じる。
【0045】
本発明において、湿式分散機に供給される顔料分散体としては顔料及び溶媒を主成分とし、必要により、樹脂、顔料誘導体、分散剤、及び界面活性剤等の添加剤等を混合してからなるものを使用する。
【0046】
本発明の第2の分散工程において、安定に分散を行うために顔料分散液の粘性が重要となる。顔料分散液の粘度が高すぎると、微小なメディアが十分に遠心分離できずに、メディアの偏りが生じ、セパレーター部での閉塞やメディアの流出といった問題が生じる。よって、本発明の第2の分散工程に用いる顔料分散液の粘度としては、25℃における剪断速度38/秒での粘度が50mPa・s未満であることが好ましく、更には25℃における剪断速度38/秒での粘度が30mPa・s未満であることが好ましい。
【0047】
顔料分散液に使用される顔料としては、有機顔料、無機顔料のいずれも好適に用いることができるが、色度特性の点で有機顔料を使用することが望ましい。顔料のうち、透明性が高く、耐光性、耐熱性、耐薬品性に優れたものは特に好ましい。
【0048】
顔料分散液に使用される溶媒については、特に限定はなく、分散する顔料の分散安定性および添加する樹脂等の溶解性に併せて、水および有機溶剤を用いることができる。
顔料分散液に使用される樹脂としては、特に制限はなく、感光性または非感光性いずれの材料でも用いられる。
顔料分散液に添加される分散剤としては、特に限定されるものではなく、種々のものを単独、または混合して用いることができる。
【0049】
本発明で対象となるカラーフィルター用ペーストは、着色ペースト、ブラックペーストのいずれでも良く、上記顔料分散体に樹脂及び溶媒等を添加し希釈して得られる。さらに、紫外線吸収剤、分散剤、界面活性剤などの種々の添加剤を添加しても良く、感光性のペーストについては、更に光重合開始剤、重合性モノマー等が添加される。
【0050】
本発明の製造方法で得られたペーストで作成されるカラーフィルターについて説明する。カラーフィルターは、透明基板上に3原色からなる着色層を複数配列したものであり、カラーフィルターは3原色からなる各着色層により被覆された画素を一絵素とし、多数の絵素により構成されている。カラーフィルターに用いられる透明基板としては、特に限定されるものでなく、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、表面をシリカコートしたソーダライムガラスなどの無機ガラス類、有機プラスチックのフィルムまたはシートなどが好ましく用いられる。
【0051】
ここで言う3原色は、加色混法によりカラー表示を行う場合には、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色が選ばれ、減色混法によりカラー表示を行う場合には、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の3原色が選ばれる。一般には、これらの3原色を含んだ要素を1単位としてカラー表示の絵素とすることができる。
【0052】
着色層を形成する方法としては、着色ペーストを直接あるいはあらかじめブラックマトリックスを形成した基板上に塗布・乾燥した後に、パターニングを行う。
【0053】
ペーストを塗布する方法としては、スピンコーティング法、ロールコーティング法、バーコーティング法、ダイコーティング法などを用いることができるが、これらの方法に特に限定されない。基板へペーストを塗布してウェット膜を形成した後、オーブンやホットプレートを用いて加熱乾燥(セミキュア)を行う。セミキュア条件は、使用する樹脂、溶媒、ペースト塗布量により異なるが通常60〜200℃で1〜60分加熱することが好ましい。
【0054】
このようにして得られたペースト塗膜は、樹脂が非感光性の樹脂である場合は、その上にポジ型フォトレジストの塗膜を形成した後に、また、樹脂が感光性の樹脂である場合は、そのままかあるいは酸素遮断膜を形成した後に、露光・現像を行う。必要に応じて、ポジ型フォトレジストまたは酸素遮断膜を除去し、再び、加熱乾燥(キュア)する。キュア条件は樹脂により異なるが、ポリイミド前駆体からポリイミド系樹脂を得る場合には、通常200〜300℃で1〜60分加熱するのが一般的である。
【0055】
塗布する着色層のキュア後膜厚は、要求される色特性と着色ペーストの着色剤/マトリックス樹脂比率により決定される。通常、着色剤/マトリックス樹脂比率は重量比で5/95〜70/30の範囲内であるが、好ましくは10/90〜60/40の範囲で使用するのが良い。着色剤比率が5未満の場合、十分な色純度を得るために塗布する必要のある膜厚が厚くなりすぎるため、画素間の段差が大きくなり、液晶の配向不良などの弊害が発生する。着色剤比率が70を越えると、マトリックス樹脂が不足するため画素の密着性が悪くなる等の弊害がある。 この好ましい範囲内の着色剤/マトリックス樹脂比率に設定した場合、望ましい色特性を得るために塗布する必要のあるキュア後膜厚は0.2〜4.0μmである。0.2μmより薄いと十分な色純度が得られず、4.0μmより厚いと光透過率が不足する。
【0056】
ブラックマトリックスには、通常(20〜200)μm×(20〜300)μmの開口部が設けられるが、この開口部を少なくとも被覆するように3原色からなる着色層が複数配列される。3原色のパターン配置は、モザイク型、トライアングル型、ストライプ型、4画素配置型など目的により、いずれも好適に用いることができる。
【0057】
ブラックマトリックスの遮光性は、OD値(透過率の逆数の常用対数)で表されるが、液晶表示装置の表示品位を向上させるためには、好ましくは2.5以上であり、より好ましくは3.0以上である。OD値の上限は、ブラックマトリックスの膜厚により定められる。
【0058】
ブラックマトリックスの膜厚は、好ましくは0.5〜1.5μm、より好ましくは0.8〜1.2μmである。膜厚が、0.5μmよりも薄い場合は、遮光性が不十分になることから好ましくない。また、膜厚が1.5μmよりも厚い場合は、遮光性は確保できるものの、カラーフィルターの平坦性が犠牲になり易く、段差が生じ易い。表面段差が生じた場合、カラーフィルター上部に透明導電膜や液晶配向膜を形成させても段差は殆ど軽減されず、液晶配向膜のラビングによる配向処理が不均一になり、液晶表示装置の表示品位が低下する。表面段差を小さくするためには、着色層上に透明保護膜を設けることが有効である。
【0059】
また、ブラックマトリックスの反射率は、画素と遮光領域の境界面における反射光による影響を低減し液晶表示装置の表示品位を向上させるために、400〜700nmの可視領域での視感度補正された反射率(Y値)で2%以下が好ましく、より好ましくは1%以下である。反射率が2%以上の場合、表面反射光のために表示コントラストが低下する。
【0060】

次に本発明を用いて作成される液晶表示装置について説明する。カラーフィルターは、カラーフィルターと透明電極基板とを対向させて作成する。カラーフィルターには、必要に応じて着色層上に透明保護膜を設けても差し支えない。また、カラーフィルター上にはITO膜などの透明電極を形成する。
【実施例】
【0061】
以下、実施例および比較例を用いて、本発明の製造方法を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
実施例及び比較例に用いたビーズミル、送液ポンプ及び分散ビーズは以下の通りである。
・メディア攪拌型分散機
(1)“ダイノーミルKDL”(株): シンマルエンタープライゼス製、セパレーター:ギャップ方式
(2)“ ウルトラアペックスミル”(UAM):寿工業株式会社製、セパレーター:遠心分離方式
・送液ポンプ
(1) サニタリー無脈動定量ポンプSPSYWA2:(株)タクミナ製、2連式ダイヤフラムポンプ
(2) サニタリー定量ポンプSARXMW1:(株)タクミナ製、1連式ダイヤフラムポンプ
・分散ビーズ
(1)ジルコニアビーズ 0.30mmφ:東レ(株)製、嵩密度=6.03g/cm
(2)ジルコニアビーズ 0.10mmφ:東レ(株)製、嵩密度=6.02g/cm
(3)ジルコニアビーズ 0.05mmφ:(株)ニッカトー製、嵩密度=6.06g/cm
(4)シリカビーズ 0.10mmφ:高周波熱錬株式会社製、嵩密度=3.20g/cm
また、送液ポンプの平均流量及び脈動率は以下の方法で測定したものとする。
【0063】
A.流量の測定方法
流量の測定は送液ポンプの送液部にコリオリ式質量流量計(“プロマス83M”、エンドレスハウザージャパン株式会社製)を接続して行い、吐出側圧力が0.20MPaにおいて測定間隔を0.25秒、電流出力ダンピングを0.20秒として送液ポンプの平均流量及び送液ポンプ流量の最大変動幅を2分間測定し、吐出流量波形の位相、および脈動率を計算した。
また、実施例中で使用されるポリアミック酸A−1、および顔料分散液G−0、G−1、G−2、G−3は次の方法で製造されたものとする。
B.ポリアミック酸A−1の製法
4,4′−ジアミノフェニルエーテル;330.6g(0.75mol)、3,3′−ジアミノジフェニルスルフォン;49.6g(0.20mol)、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン;12.4g(0.005mol)をγ−ブチロラクトン2730gと共に仕込み、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物;161.0g(0.49mol)とピロメリット酸二無水物;106.8g(0.49mol)を添加し、60℃で5時間反応させた。無水マレイン酸1.96g(0.02mol)を添加し、更に60℃で1時間反応させ、ポリアミック酸(A−1とする)溶液を得た。
【0064】
C.顔料分散液G−0、G−1およびG−2の製法
緑顔料(Pigment Green 36);3.3重量%、黄顔料(Pigment Yellow 138);3.0重量%、ポリアミック酸A−1;4.7重量%、γ−ブチロラクトン;89.0重量%をタンクに仕込み、ホモミキサー(特殊機化製)で1時間撹拌し顔料分散液G−0を得た。この顔料分散液G−0の粘度を、1度34秒の先端角を有するコーンプレートが装着されたRC500型粘度計(東機産業製)を使用して測定したところ、25℃における剪断速度38/秒での粘度は2.85mPa・sであった。
【0065】
引き続き顔料分散液G−0を粒径φ1;1.00mmのジルコニアビーズを充填率:85%で充填した、ギャプセパレーターを備えたビーズミル(ダイノミル)に供給し、回転速度11m/sで滞留時間DT(1)が3分となるよう分散を行い、顔料分散液G−1を得た。この顔料分散液G−1の粘度を、1度34秒の先端角を有するコーンプレートが装着されたRC500型粘度計(東機産業製)を使用して測定したところ、25℃における剪断速度38/秒での粘度は2.90mPa・sであった。
【0066】
同様に顔料分散液G−0を粒径φ1;3.00mmのジルコニアビーズを充填率:85%で充填した、ギャプセパレーターを備えたビーズミル(ダイノミル)に供給し、回転速度11m/sで滞留時間DT(1)が3分となるよう分散を行い、顔料分散液G−2を得た。この顔料分散液G−1の粘度を、1度34秒の先端角を有するコーンプレートが装着されたRC500型粘度計(東機産業製)を使用して測定したところ、25℃における剪断速度38/秒での粘度は3.10mPa・sであった。
【0067】
実施例1
粒径φ2;0.05mmのジルコニアビーズを充填率;75%で遠心分離セパレーターを備えたビーズミル(UAM−2、粉砕室容積=1700(cm))に充填し(粉砕室空隙容積=920(cm))、顔料分散液G−0を2連式ダイヤフラムポンプを用いて脈動率;2.4%・送液ポンプ平均流量1500(cm/分)で供給し(rt=0.61(分))、回転速度10m/sで滞留時間DT(2)が25分となるよう分散を行った。この分散液を孔径2μのポリフロンフィルター(ADVANTEC社製 PF020)で濾過した後ポリイミド前駆体A−1希釈液で希釈して緑色着色ペーストを作成した。得られた着色ペーストを無アルカリガラス基板上にスピンコートし、その後熱処理することによりポリイミド着色膜(P1−0)を得た。また、2週間冷凍保存した分散液を用いて同様にポリイミド着色膜(P1−1)を得た。
【0068】
実施例2
分散メディアのみを変更して実施例1と同様に分散を行い、粒径φ2;0.10mmのジルコニアビーズを充填率;75%で遠心分離セパレーターを備えたビーズミル(UAM−2、粉砕室容積=1700(cm))に充填し(粉砕室空隙容積=920(cm))、顔料分散液G−0を2連式ダイヤフラムポンプを用いて脈動率;2.4%・送液ポンプ平均流量1500(cm/分)で供給し(rt=0.61(分))、回転速度10m/sで滞留時間DT(2)が25分となるよう分散を行った。この分散液を孔径2μのポリフロンフィルター(ADVANTEC社製 PF020)で濾過した後ポリイミド前駆体A−1希釈液で希釈して緑色着色ペーストを作成した。得られた着色ペーストを無アルカリガラス基板上にスピンコートし、その後熱処理することによりポリイミド着色膜(P2−0)を得た。また、2週間冷凍保存した分散液を用いて同様にポリイミド着色膜(P2−1)を得た。
【0069】
実施例3
分散メディアのみを変更して実施例1と同様に分散を行い、粒径φ2;0.10mmのアルミナビーズを充填率;75%で遠心分離セパレーターを備えたビーズミル(UAM−2、粉砕室容積=1700(cm))に充填し(粉砕室空隙容積=920(cm))、顔料分散液G−0を2連式ダイヤフラムポンプを用いて脈動率;2.4%・送液ポンプ平均流量1500(cm/分)で供給し(rt=0.61(分))、回転速度10m/sで滞留時間DT(2)が25分となるよう分散を行った。この分散液を孔径2μのポリフロンフィルター(ADVANTEC社製 PF020)で濾過した後ポリイミド前駆体A−1希釈液で希釈して緑色着色ペーストを作成した。得られた着色ペーストを無アルカリガラス基板上にスピンコートし、その後熱処理することによりポリイミド着色膜(P3−0)を得た。また、2週間冷凍保存した分散液を用いて同様にポリイミド着色膜(P3−1)を得た。
【0070】
実施例4
粒径φ2;0.05mmのジルコニアビーズを充填率;75%で遠心分離セパレーターを備えたビーズミル(UAM−2、粉砕室容積=1700(cm))に充填し(粉砕室空隙容積=920(cm))、顔料分散液G−1を2連式ダイヤフラムポンプを用いて脈動率;2.4%・送液ポンプ平均流量1500(cm/分)で供給し(rt=0.61(分))、回転速度10m/sで滞留時間DT(2)が25分となるよう分散を行った。この分散液をポリイミド前駆体A−1希釈液で希釈して緑色着色ペーストを作成した。得られた着色ペーストを無アルカリガラス基板上にスピンコートし、その後熱処理することによりポリイミド着色膜(P4−0)を得た。また、2週間冷凍保存した分散液を用いて同様にポリイミド着色膜(P4−1)を得た。
【0071】
実施例5
送液ポンプのみを変更して実施例4と同様に分散を行い、顔料分散液G−1を2連式ダイヤフラムポンプを用いて脈動率;2.7%・送液ポンプ平均流量1000(cm/分)で供給し(rt=0.92(分))、回転速度10m/sで滞留時間DT(2)が25分となるよう分散を行った。この分散液をポリイミド前駆体A−1希釈液で希釈して緑色着色ペーストを作成した。得られた着色ペーストを無アルカリガラス基板上にスピンコートし、その後熱処理することによりポリイミド着色膜を得た(P5−0)。また、2週間冷凍保存した分散液を用いて同様にポリイミド着色膜(P5−1)を得た。
【0072】
実施例6
粒径φ2;0.05mmのジルコニアビーズを充填率;60%で遠心分離セパレーターを備えたビーズミル(UAM−2、粉砕室容積=1700(cm))に充填し(粉砕室空隙容積=1074(cm))、顔料分散液G−1を2連式ダイヤフラムポンプを用いて脈動率;8.5%・送液ポンプ平均流量2000(cm/分)で供給し(rt=0.54(分))、回転速度10m/sで滞留時間DT(2)が25分となるよう分散を行った。この分散液をポリイミド前駆体A−1希釈液で希釈して緑色着色ペーストを作成した。得られた着色ペーストを無アルカリガラス基板上にスピンコートし、その後熱処理することによりポリイミド着色膜(P6−0)を得た。また、2週間冷凍保存した分散液を用いて同様にポリイミド着色膜(P6−1)を得た。
【0073】
実施例7
顔料分散液のみを変更して実施例4と同様に分散を行い、顔料分散液G−2を2連式ダイヤフラムポンプを用いて脈動率;2.4%・送液ポンプ平均流量1500(cm/分)で供給し(rt=0.61(分))、回転速度10m/sで滞留時間DT(2)が25分となるよう分散を行った。この分散液を孔径2μのポリフロンフィルター(ADVANTEC社製 PF020)で濾過した後ポリイミド前駆体A−1希釈液で希釈して緑色着色ペーストを作成した。得られた着色ペーストを無アルカリガラス基板上にスピンコートし、その後熱処理することによりポリイミド着色膜を得た(P7−0)。また、2週間冷凍保存した分散液を用いて同様にポリイミド着色膜(P7−1)を得た。
【0074】
比較例1
送液ポンプのみを変更して実施例4と同様に分散を行い、顔料分散液G−1を1連式ダイヤフラムポンプを用いて脈動率;28.0%・送液ポンプ平均流量1500(cm/分)で供給し(rt=0.61(分))、回転速度10m/sで分散を行ったところ、ビーズが流出したため運転を中止した。
【0075】
比較例2
送液ポンプのみを変更して実施例4と同様に分散を行い、顔料分散液G−1を1連式ダイヤフラムポンプを用いて脈動率;26.7%・送液ポンプ平均流量1000(cm/分)で供給し(rt=0.92(分))、回転速度10m/sで滞留時間DT(2)が25分となるよう分散を行った。この分散液をポリイミド前駆体A−1希釈液で希釈して緑色着色ペーストを作成した。得られた着色ペーストを無アルカリガラス基板上にスピンコートし、その後熱処理することによりポリイミド着色膜を得た(P8−0)。また、2週間冷凍保存した分散液を用いて同様にポリイミド着色膜(P8−1)を得た。
【0076】
比較例3
送液ポンプのみを変更して実施例4と同様に分散を行い、顔料分散液G−1を2連式ダイヤフラムポンプを用いて脈動率;8.5%・送液ポンプ平均流量2000(cm/分)で供給し(rt=0.46(分))、回転速度10m/sで滞留時間DT(2)が25分となるよう分散を行った。この分散液をポリイミド前駆体A−1希釈液で希釈して緑色着色ペーストを作成した。得られた着色ペーストを無アルカリガラス基板上にスピンコートし、その後熱処理することによりポリイミド着色膜を得た(P9−0)。また、2週間冷凍保存した分散液を用いて同様にポリイミド着色膜(P9−1)を得た。
【0077】
比較例4
送液ポンプのみを変更して実施例4と同様に分散を行い、顔料分散液G−1を2連式ダイヤフラムポンプを用いて脈動率;2.0%・送液ポンプ平均流量500(cm/分)で供給し(rt=1.83(分))、回転速度10m/sで滞留時間DT(2)が25分となるよう分散を行った。この分散液をポリイミド前駆体A−1希釈液で希釈して緑色着色ペーストを作成した。得られた着色ペーストを無アルカリガラス基板上にスピンコートし、その後熱処理することによりポリイミド着色膜を得た(P10−0)。また、2週間冷凍保存した分散液を用いて同様にポリイミド着色膜(P10−1)を得た。
【0078】
実施例1〜7および比較例1〜4での送液条件を表1に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
上記得られた分散液について、分散直後の粘度及び冷凍保存下での2週間経時後の粘度の測定を行った。分散時のビーズ流出の有無と併せて評価結果を表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
また、上記得られた着色塗膜について、コントラスト、表面粗さについて評価を行い、評価結果を表3に示す。表3に記した値は以下の方法によって得られ、着色膜のC光源におけるy=0.600での値とする。
【0083】
(1)粘度
1度34秒の先端角を有するコーンプレートが装着されたRC500型粘度計(東機産業製)を使用し、25℃における剪断速度38/秒での粘度を測定した。
【0084】
(2)色度
顕微分光光度計MCPD−2000(大塚電子製)を使用し、C光源での透過率Y、x値、y値を測定した。
【0085】
(3)コントラスト
偏光板で基板サンプルを挟み、色彩輝度計BM−5A(トプコン製)を使用して平行ニコルの輝度とクロスニコルの輝度の比からコントラストを測定した。
【0086】
(4)表面粗さ
表面形状測定装置サーフコム1500A(東京精密)を使用し、表面粗さを測定した。
【0087】
【表3】

【0088】
実施例での運転ではビーズの流出もなく、得られた分散液としても保存安定性に優れていることがわかる。また、実施例で得られた着色塗膜も、比較例で得られた塗膜と比較し、分散液を経時させた場合においても良好なコントラスト、表面粗さを示した。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の顔料分散液の製造方法に用いられるギャップセパレーターを有する分散機の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の顔料分散液の製造方法に用いられる遠心分離方式セパレーターを有する分散機の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の顔料分散液の製造方法に用いられる遠心分離、スクリーンセパレーターを有する分散機の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0090】
1、8、19 処理材料の出口
2 ギャップセパレーター
3、12、20 撹拌羽根
4、14 処理材料の入口
5、9、16 メカニカルシール
6、11、17 回転主軸
7、15、21 粉砕処理室
10 セントリーセパレーター
13 逆流弁
18 遠心分離スクリーンセパレーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディアと分散処理槽を有するメディア攪拌型分散機、および該メディア攪拌型分散機に顔料と溶媒とを含有する顔料分散液を送液する送液ポンプを用いて顔料を溶媒中に分散させる顔料分散液の製造方法であって、メディアとして平均粒径φが0.01〜0.10(mm)のものを用い、送液ポンプとして下記式(1)で表される脈動率αが10%以下のポンプを用い、かつ下記式(2)で表される分散液が該分散機を1回通過する際の分散処理槽での滞留時間rt(分)を0.5〜1.0(分)として分散を行うことを特徴とする顔料分散液の製造方法。
【数1】

【数2】

【請求項2】
送液ポンプが2個または3個の送液部を有し、送液部が2個の場合は送液部での互いの吐出流量波形の位相を180°ずらして送液させる送液ポンプを使用し、送液部が3個の場合は送液部での互いの吐出流量波形の位相を120°ずらして送液させる送液ポンプを使用することを特徴とする請求項1に記載の顔料分散液の製造方法。
【請求項3】
送液ポンプが2連式ダイヤフラムポンプ又は3連式ダイヤフラムポンプであることを特徴とする請求項2に記載の顔料分散液の製造方法。
【請求項4】
メディアの嵩密度が4.0g/cm以上であることを特徴とする請求項1〜3に記載の顔料分散液の製造方法。
【請求項5】
顔料が有機顔料であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の顔料分散液の製造方法。
【請求項6】
メディア撹拌型分散機が、遠心分離によりメディアと顔料分散液を分離することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の顔料分散液の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の顔料分散液の製造方法が少なくとも第1の分散工程と第2の分散工程を有する顔料分散液の製造方法であって、第1の分散工程および第2の分散工程が請求項1〜6のいずれかに記載の顔料分散液の製造方法を有しており、第1の分散工程で用いるメディアの平均粒径をφ1(mm)、第2の分散工程で用いるメディアの平均粒径をφ2(mm)としたときに、φ1/φ2が4以上40以下であることを特徴とする顔料分散液の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の顔料分散液の製造方法により得られた顔料分散液と樹脂を含有することを特徴とするカラーフィルター用ペースト。
【請求項9】
任意の色数で各色別に所望のパターン状に設けられた着色層及び遮光層からなる画素を有するカラーフィルターにおいて、該着色層または遮光層に請求項8に記載のカラーフィルター用ペーストを使用したことを特徴とするカラーフィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−231075(P2007−231075A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−52458(P2006−52458)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】