説明

顔料分散液及びその製造方法、カラーフィルター用感光性着色樹脂組成物、並びに、カラーフィルター

【課題】微細な顔料や顔料濃度が高い場合においても顔料分散安定性に優れ、生産性が高い顔料分散液及びその製造方法、顔料分散安定性に優れながら、地汚れの問題がなく、密着性に優れ、顔料濃度の高い着色層を精度良く形成可能なカラーフィルター用着色樹脂組成物、及び当該樹脂組成物を用いたカラーフィルターを提供する。
【解決手段】少なくとも顔料(A)、3級以下のアミンを有する重合体(B)、アミンと反応可能な低分子化合物(C)、及び溶剤(D)を混合し、前記重合体(B)と前記低分子化合物(C)とを反応させながら、前記顔料(A)を分散させる顔料分散工程を有することを特徴とする顔料分散液の製造方法及び当該製造方法により製造された顔料分散液、当該顔料分散液を用いた感光性着色樹脂組成物、並びにカラーフィルターである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料の分散安定性に優れた顔料分散液及びその製造方法、カラーフィルター用感光性着色樹脂組成物、並びに、カラーフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に用いられるカラーフィルターは、一般的に、透明基板と、透明基板上に形成され、赤、緑、青の三原色の着色パターンからなる着色層と、各着色パターンを区画するように透明基板上に形成された遮光部とを有している。
このような着色層の形成方法としては、顔料分散法、染色法、電着法、印刷法などが知られている。中でも、分光特性、耐久性、パターン形状及び精度等の観点から、平均的に優れた特性を有する顔料分散法が最も広範に採用されている。
【0003】
顔料分散法では、例えば、顔料を含有する着色層用感光性樹脂組成物を透明基板上に設け、所望のパターン形状に露光した後現像して、各色の着色層をパターン状に形成する。このように着色層を形成する場合、現像後に着色層用感光性樹脂組成物の未溶解物が残存する(以下、”地汚れ”という場合がある)ことがある。着色層用感光性樹脂組成物の未溶解部が基板上の非画素部に残存した場合には、透過率やコントラストの低下、表示不良などを引き起こすほか、パターンエッジ部に残存した場合には、ITO膜の剥離や、液晶セル化工程でのシール性劣化を起こすなど、後工程にまで影響を及ぼすような問題が生じていた。
【0004】
近年、カラーフィルターの色再現性向上のため、着色層に対しては、より高透過、且つ高濃度であることが要求されている。高濃度の着色層を形成するためには、使用する着色層用樹脂組成物中の顔料濃度を上げる必要があるが、顔料の濃度を高くすることによって顔料の分散安定性が得られ難いという問題が発生している。また、顔料の濃度を高くすることによって、感光性や溶解性などの着色層形成性に寄与する成分が相対的に減少した結果、本来有していた層形成能が不十分になり、現像後に未露光部の着色層用感光性樹脂組成物が残存し易くなるといった問題(地汚れの増加)や、現像時に着色層用感光性樹脂組成物のパターン状硬化膜の基板との密着性が不十分となるといった問題が生じている。
【0005】
基板に未露光部の感光性樹脂組成物が残る地汚れの問題を解決するために、特許文献1では、着色樹脂組成物に分子量が800以下の有機カルボン酸無水物を配合する方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1に開示されるような方法であっても、顔料濃度が高い場合の分散安定性を良好にした上で、地汚れの発生を十分に抑制することができなかった。また、露光後の硬化物の密着性を十分に高いものとすることが難しかった。
【0006】
また近年、より高精細、高輝度、高コントラストの画面が求められており、これに対してより微細な顔料の使用が検討されている。しかしながら、より微細な顔料は不安定であるため、分散安定性が得られ難いという問題が生じている。この問題を解決するために、極性を高くした顔料分散剤の使用(例えば、特許文献2)が提案されている。しかしながらこの場合、極性が高いことにより使用可能な溶剤の制約を受け、使用範囲が限定される。また、市販の顔料分散剤は、より微細な顔料の分散安定性を得るためには、必要量が多くなる傾向があり、現像性や製膜後の密着性等に不具合を生じやすく、顔料分散安定性と層形成性とのトレードオフ関係に陥って性能向上が困難であった。
【0007】
また、顔料を均一に分散する方法として、顔料、モノマーを含む水溶液に重合開始剤を加えて重合させ、顔料含有重合体水溶液を作る方法が提案されている(特許文献3)。しかしながら、この方法を有機溶剤に適用した場合、顔料が分散された水と有機溶剤との濡れ性が異なるため、重合後の溶液において顔料が沈降しやすいという問題がある。また、水溶液から顔料含有重合体を取り出すことはコスト高につながるという問題もある。
【0008】
また、ある特定の溶剤を分散助剤として添加することにより、顔料分散安定化を図る方法が提案されている(特許文献4)。しかしながら、この分散助剤を用いた分散安定化効果には限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3610626号公報
【特許文献2】特開2004−182787号公報
【特許文献3】特開平6−289214号公報
【特許文献4】特開2008−248109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記実情に鑑み、本発明は、微細な顔料や顔料濃度が高い場合においても顔料分散安定性に優れ、生産性が高い顔料分散液及びその製造方法、顔料分散安定性に優れながら、地汚れの問題がなく、密着性に優れ、顔料濃度の高い着色層を精度良く形成可能なカラーフィルター用感光性着色樹脂組成物、及び当該樹脂組成物を用いたカラーフィルターを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、溶剤中で、3級以下のアミンを有する重合体と、当該アミンと反応する低分子化合物とを反応させるのと同時に、顔料を分散させるin situ分散法によると、予め合成した分散剤を用いた場合とは全く異なる分散性能が得られるという知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係る顔料分散液の製造方法は、少なくとも顔料(A)、3級以下のアミンを有する重合体(B)、アミンと反応可能な低分子化合物(C)、及び溶剤(D)を混合し、前記重合体(B)と前記低分子化合物(C)とを反応させながら、前記顔料(A)を分散させる顔料分散工程とを有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る顔料分散液は、前記本発明に係る顔料分散液の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、溶剤(D)中で、顔料(A)、3級以下のアミンを有する重合体(B)、アミンと反応可能な低分子化合物(C)を混合し、前記重合体(B)と前記低分子化合物(C)とを反応させながら、前記顔料(A)を分散することにより、微細な顔料や顔料濃度が高い場合においても顔料分散安定性に優れた顔料分散液を提供することができる。
【0014】
本発明に係る顔料分散液及びその製造方法においては、前記重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)は、下記一般式(1)〜(3)よりなる群から選択される1種以上であることが、微細な顔料や顔料濃度が高い場合においても顔料分散安定性に優れ、更に、現像性に優れたものとすることができる点から好ましい。
【0015】
【化1】

【0016】
【化2】

【0017】
【化3】

(一般式(1)〜(3)において、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは−O−Rを表し、Rは、炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1〜4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表す。また、一般式(3)において、Xは、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。)
【0018】
本発明に係る顔料分散液及びその製造方法においては、前記3級以下のアミンを有する重合体(B)のアミン価が10mgKOH/g〜200mgKOH/gであることが、微細な顔料や顔料濃度が高い場合においても顔料分散安定性に優れる点から好ましい。
【0019】
本発明に係る顔料分散液及びその製造方法においては、前記重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)の分子量が50〜400であることが、微細な顔料や顔料濃度が高い場合においても顔料分散安定性に優れる点から好ましい。
【0020】
本発明に係るカラーフィルター用感光性着色樹脂組成物は、前記本発明に係る顔料分散液と、多官能性モノマー(E)、及び光重合開始剤(F)を含有することを特徴とする。
本発明のカラーフィルター用感光性着色樹脂組成物は、前記本発明に係る顔料分散液を用いることにより、顔料分散安定性に優れながら、地汚れの問題がなく、密着性に優れ、顔料濃度の高い着色層を精度良く形成可能なカラーフィルター用感光性着色樹脂組成物とすることができる。
【0021】
本発明に係るカラーフィルターは、前記本発明に係るカラーフィルター用感光性着色樹脂組成物を用いて形成された着色層を有することを特徴とする。
本発明によれば、上記カラーフィルター用感光性着色樹脂組成物を用いて形成された着色層を有するものであるため、本発明のカラーフィルターを、地汚れの問題がなく、基板に対する密着性が高い着色層とすることができる。その結果、透過率やコントラストの低下、表示不良、ITO膜の剥離や、液晶セル化工程でのシール性劣化等の問題が抑制されたカラーフィルターが得られる。また、前記カラーフィルター用感光性着色樹脂組成物は顔料濃度を高くしたり、微細顔料を用いても顔料分散安定性が高いため、このような感光性着色樹脂組成物を用いて形成された着色層を有することにより、色再現性の高いものや、高精細、高輝度、高コントラストなカラーフィルターとすることが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、微細な顔料や顔料濃度が高い場合においても顔料分散安定性に優れ、生産性の高い顔料分散液及びその製造方法、顔料分散安定性に優れながら、地汚れの問題がなく、密着性に優れ、顔料濃度の高い着色層を精度良く形成可能なカラーフィルター用感光性着色樹脂組成物、及び当該樹脂組成物を用いたカラーフィルターを提供するといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のカラーフィルターの一例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の顔料分散液及びその製造方法、カラーフィルター用感光性着色樹脂組成物、並びに、カラーフィルターについて順に説明する。なお、本明細書において、
顔料分散液とは、顔料と溶剤とその他必要に応じて加えられた成分からなり、顔料を分散して得られる混合物のことである。顔料分散液と、必要に応じてバインダー樹脂や感光性成分や他の硬化性成分やレベリング剤、カップリング剤等の添加剤等を混合することにより、顔料分散性の高い着色樹脂組成物を調製することができる。
【0025】
I.顔料分散液及びその製造方法
本発明に係る顔料分散液の製造方法は、少なくとも顔料(A)、3級以下のアミンを有する重合体(B)、アミンと反応可能な低分子化合物(C)、及び溶剤(D)を混合し、前記重合体(B)と前記低分子化合物(C)とを反応させながら、前記顔料(A)を分散させる顔料分散工程とを有することを特徴とする。
また、本発明に係る顔料分散液は、上記製造方法により製造された顔料分散液であり、少なくとも顔料(A)、3級以下のアミンを有する重合体(B)、アミンと反応可能な低分子化合物(C)、及び溶剤(D)を混合し、前記重合体(B)と前記低分子化合物(C)とを反応させながら、前記顔料(A)を分散させて得られることを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、溶剤(D)中で、3級以下のアミンを有する重合体(B)とアミンと反応する低分子化合物(C)とを反応させるのと同時に、前記顔料(A)を分散させるin situ分散法により、予め合成した分散剤を用いて顔料を分散した場合とは全く異なる分散性能が得られ、その結果、微細な顔料や顔料濃度が高い場合においても顔料分散安定性に優れ、生産性が高い顔料分散液を提供することができる。前記予め合成した分散剤には、従来の市販されている顔料分散剤のほか、3級以下のアミンを有する重合体(B)と当該アミンと反応する低分子化合物(C)とを顔料が存在しない状態で予め反応させて顔料分散剤とした場合も含まれる。また、本発明の効果は、後述する比較例で示したように、3級以下のアミンを有する重合体(B)と顔料(A)とを分散させた後に、アミンと反応する低分子化合物(C)を添加しても得られるものではない。
【0027】
溶剤(D)中で、3級以下のアミンを有する重合体(B)と当該アミンと反応する低分子化合物(C)とを反応させるのと同時に、前記顔料(A)を分散させることにより、上述した効果を発揮する理由としては、以下のように推測される。
顔料分散剤は極性が高く、自己凝集を起こしやすい性質がある。従来のように、顔料分散剤を顔料近傍で生成させずに予備合成した顔料分散剤を加えて分散を試みると、顔料分散剤同士が凝集し顔料への吸着が妨げられ易い。そのため、顔料分散剤の量を増加させる必要がある。このような場合、完全に顔料に吸着していない不必要な分散剤が存在するため、それらが凝集することで分散系全体の相溶性を阻害することが起こる。
それに対して、本発明によれば、分散場と反応場を同時に提供して顔料の分散を行うことにより、3級以下のアミンを有する重合体(B)が当該アミンと反応する低分子化合物(C)と反応してin situで顔料に効率的に吸着することができ、顔料の再凝集が起き難い理想的な分散系が得られる。
また、顔料近傍において3級以下のアミンを有する重合体(B)と当該アミンと反応する低分子化合物(C)からなる少量の顔料分散剤で良好な顔料分散性が得られるため、顔料に吸着していない不必要な顔料分散剤が殆ど存在しない。その結果、分散系内の樹脂部と溶剤との相溶性に悪影響がなく、安定した顔料分散性が得られる。更に、本発明によれば、3級以下のアミンを有する重合体(B)と当該アミンと反応する低分子化合物(C)とを予め合成させる工程が不要なため、生産性が高い。
【0028】
以下、本発明の顔料分散液は、顔料(A)、3級以下のアミンを有する重合体(B)及び/又はその反応物、前記重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)及び/又はその反応物、及び溶剤(D)を少なくとも含有するが、更に必要に応じて他の成分を含んでもよいものである。以下、用いられる各成分を説明する。
<顔料(A)>
本発明に用いられる顔料としては、公知の顔料を用いることができる。本発明において使用可能な有機顔料の具体例を下記表1および表2に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
また、用いることができる無機顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、ベンガラ、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。
なお、これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いても良い。
【0032】
また、本発明に用いられる顔料の分散平均粒径としては、後に製造される着色樹脂組成物を用いてカラーフィルターの着色層を形成した場合に、所望の発色が可能なものであれば特に限定されるものではなく、通常、0.01μm〜0.30μmの範囲内であることが好ましく、なかでも0.01μm〜0.10μmの範囲内であることが好ましい。本発明の顔料分散剤を用いた着色樹脂組成物を用いてカラーフィルタの着色層を形成した場合に、輝度、コントラストに優れた着色層とすることができるからである。なお、上記顔料の分散平均粒径は、光散乱方式の粒度分布測定装置により測定することができる。
【0033】
本発明の顔料分散液に用いられる顔料の含有量としては、後に製造される着色樹脂組成物を用いてカラーフィルターの着色層を形成した場合に、所望の発色が可能なものであれば特に限定されるものではなく、用いる顔料の種類によっても異なり特に限定されない。顔料分散液の固形分中において、1重量%〜80重量%の範囲内であることが好ましく、なかでも10重量%〜70重量%の範囲内であることが好ましい。上記顔料の含有量が、上記範囲より多くても少なくても、分散液の粘度の安定性を欠いたり、また分散粒径が適切な範囲でないものになる可能性があるからである。また、本発明において固形分とは、溶剤を除く全ての成分が含まれ、液状の化合物等も固形分に含まれる。
【0034】
<3級以下のアミンを有する重合体(B)>
3級以下のアミンを有する重合体(B)とは、3級アミン、2級アミン、及び1級アミンよりなる群から選択される1種以上のアミンを有する重合体である。アミンの重合体における位置関係は主鎖、側鎖、重合体末端、いずれにも限定されない。また、アミンを含む繰り返し単位の位置関係は、重合体上ランダム状でもブロック状でもいずれも好適に用いられる。
【0035】
重合体(B)中の3級以下のアミン含有量としては、重合体(B)のアミン価が10mgKOH/g〜200mgKOH/gとなる範囲であることが好ましく、更に10mgKOH/g〜190mgKOH/gとなる範囲、より更に10mgKOH/g〜170mgKOH/gとなる範囲であることが好ましい。重合体(B)のアミン価が上記範囲外の場合には、分散液の保存安定性が低下する恐れがある。なお、上記アミン価としては、JIS−K7237により求めることができる。
【0036】
また、アミンの構造は特に限定されないが、好適なものとしては、例えば、−NHR、−NR’R”があり、R、R’R”は置換基を有してもよいアルキル基、アリル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基などが挙げられる。好適なものとしては、例えば、―NR’R”であって、R’R”がアルキル基、アリール基、アラルキル基であり、さらに好適なものとしてはR’R”がアルキル基、具体的には例えばメチル基、エチル基(R’及びR”は同一であっても異なっていても良い)などが挙げられる。
【0037】
前記3級以下のアミンを有する重合体(B)の重量平均分子量は、3,000〜70,000であることが好ましく、更に4,000〜60,000であることが好ましく、より更に5,000〜50,000であることが好ましい。前記3級以下のアミンを有する重合体(B)の重量平均分子量が3,000未満の場合には、顔料分散性の安定性が低下する恐れがある。一方、前記3級以下のアミンを有する重合体(B)の重量平均分子量が70,000を超える場合には、地汚れが発生したり、現像性が低下する恐れがある。ここで、重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
【0038】
重合体の主鎖構造としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂が好ましい。
【0039】
3級以下のアミンを有する重合体(B)は、市販の顔料分散剤から適宜選択して用いてもよい。このような市販の顔料分散剤としては、例えば、具体的な商品名として、Ciba EFKA-4300, Ciba EFKA-4330(以上、チバスペシャリティケミカルズ社製)、Disperbyk161, Disperbyk162, Disperbyk182, Disperbyk2001, BYK-LPN6919, BYK-LPN21116(以上、ビックケミー社製)、SOLSPERSE32000、SOLSPERSE33000(以上、ルーブリゾール社製)、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB827(以上、味の素ファインテクノ(株)製)等を挙げることができる。
【0040】
3級以下のアミンを有する重合体(B)の配合量は、顔料を均一に分散することができるものであれば特に限定されるものではないが、上記顔料100重量部に対して、5〜90重量部であることが好ましく、更に10〜70重量部であることが、顔料分散安定性の点から好ましい。上記3級以下のアミンを有する重合体(B)の配合量が、上記範囲より小さいと、上記顔料を均一に分散することが困難になり、上記範囲より大きいと、上記感光性着色樹脂組成物とした時に現像性が低下したり、地汚れが発生する恐れがあるからである。本発明によれば、顔料分散剤に相当する3級以下のアミンを有する重合体(B)の配合量を少なくすることができるので、上記顔料100重量部に対して、20〜50重量部と少量であっても、好適に用いられる。
【0041】
なお、3級以下のアミンを有する重合体(B)の反応物としては、典型的には、後述する前記重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)との反応物が挙げられる。
【0042】
<前記重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)>
前記重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)は、溶剤中で組み合わせて用いる前記重合体(B)が有するアミンと反応可能な官能基を有する低分子化合物である。アミンと反応可能な官能基としては、例えば、炭酸、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、硫酸、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール、ハロゲン化アリル、硫酸ジアルキル、アルキル又はアリールスルホン酸メチル類、炭酸エステル、リン酸エステル等が挙げられる。
【0043】
鋭意検討の結果、アミンと反応可能な官能基の構造の異なる低分子化合物(C)の分子量は、50〜400であることが好ましく、更に100〜350であることが好ましく、より更に100〜300であることが好ましいことを見出した。
【0044】
前記重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)としては、中でも、下記一般式(1)〜(3)よりなる群から選択される1種以上であることが好ましい。このような化合物群から選択される化合物を用いる場合には、分散安定性に優れ、さらに現像性も優れるというメリットがある。
【0045】
【化4】

【0046】
【化5】

【0047】
【化6】

(一般式(1)〜(3)において、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは−O−Rを表し、Rは、炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1〜4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表す。また、一般式(3)において、Xは、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。)
【0048】
〜Rにおける炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基としては、直鎖又は分岐鎖のいずれでも良く、また、環状構造を含んでいても良く、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、テトラデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。好ましくは、炭素数1〜15の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられ、更に好ましくは炭素数1〜8の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。
【0049】
前記重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)としては、具体的には例えば、メチルクロライド、メチルブロマイド、エチルクロライド、エチルブロマイド、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、n−ブチルクロライド、ヘキシルクロライド、オクチルクロライド、ドデシルクロライド、テトラデシルクロライド、ヘキサデシルクロライド、フェネチルクロライド、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、ベンジルヨーダイド、クロロベンゼン、アリルクロライド、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジ−n−プロピル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジ−n−プロピル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、メタンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸メチル、モノブチルリン酸、ジブチルリン酸、メチルリン酸、ジベンジルリン酸、ジフェニルリン酸、フェニルホスフィン酸、フェニルホスホン酸などが挙げられる。
【0050】
前記重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)の配合量は、顔料を均一に分散することができるものであれば特に限定されるものではないが、上記3級以下のアミンを有する重合体(B)の100重量部に対して、5〜50重量部であることが好ましく、更に10〜40重量部であることが、顔料分散安定性の点から好ましい。上記低分子化合物(C)の配合量が、上記範囲より少なくても多くても、顔料分散安定性を保つことが困難になる恐れがあるからである。
【0051】
なお、低分子化合物(C)の反応物としては、典型的には、前記重合体(B)との反応物が挙げられる。
【0052】
<溶剤(D)>
本発明に係る顔料分散液には、顔料を分散させるために溶剤が含まれる。
本発明に用いられる溶剤としては、本発明に用いられる各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは均一に分散可能な溶剤であれば良い。具体的には、シクロヘキシルアセテート;メトキシブチルアセテート(MBA);エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のジエチレングリコールモノアルキルエーテル類;ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート等のジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル等の他のエーテル類;シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、ぎ酸n−アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸イソプロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;γ−ブチロラクトン、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート等を挙げることができる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0053】
本発明に係る顔料分散液は、以上のような溶剤を、当該溶剤を含む顔料分散液の全量に対して、通常は60〜85重量%の割合で用いて調製する。溶剤が少なすぎると、粘度が上昇し、顔料分散性が低下しやすい。また、溶剤が多すぎると、顔料濃度が低下し、後に製造される着色樹脂組成物を調製後、目標とする色度座標に達成することが困難な場合がある。
【0054】
<その他の成分>
本発明の顔料分散液は、必要に応じて本発明の目的を妨げない範囲において、その他の成分を含んでいても良い。たとえば、その後の着色樹脂組成物を調製する際に、着色樹脂組成物を構成する感光性組成物と前記顔料分散液が相溶しやすくするためのポリマー(バインダー樹脂)を含んでいても良い。このようなポリマーは選択により、顔料分散補助樹脂としても機能する。
その他、必要に応じて本発明の目的を妨げない範囲において、濡れ性向上のための界面活性剤、密着性向上のためのシランカップリング剤、消泡剤、ハジキ防止剤、酸化防止剤、凝集防止剤、紫外線吸収剤などを添加することができる。
【0055】
[バインダー樹脂]
本発明に用いられるバインダー樹脂としては、特に限定されるものではないが、カラーフィルターの製造に用いられることから、耐熱性および、製造工程において使用される有機溶剤への耐性を有する樹脂であることが好ましい。具体的には、エポキシ系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などの感光性または非感光性の樹脂を挙げることができる。
【0056】
上述したなかでも、特に好ましい樹脂としては、カルボキシル基等の酸性官能基を有するアルカリ可溶性樹脂を挙げることができる。カルボキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、カルボキシル基含有不飽和単量体と、他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体との共重合体が好ましく、さらに分子内にエポキシ基と、エチレン性不飽和基とを併せ持つ化合物、例えばグリシジル(メタ)アクリレートなどを付加させ、側鎖にエチレン性不飽和基を導入したものも好ましい。
【0057】
カルボキシル基不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、フタル酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が好ましく、(メタ)アクリル酸が特に好ましい。なお、カルボキシル基含有不飽和単量体は、単独もしくは数種類を組み合わせることができる。
【0058】
エチレン性不飽和単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシル(メタ)エチルアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等、および、これらのマクロモノマー類;N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルフェニルマレイミド等のN置換マレイミド類等、N−ビニルピロリドン等を挙げることができる。なお、エチレン性不飽和単量体は、単独もしくは数種類を組み合わせることができる。
【0059】
バインダー樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、3,000〜30,000であることが好ましく、更に5,000〜25,000であることが、現像性、及び密着性の点から好ましい。
【0060】
上記バインダー樹脂を用いる場合の含有量は、固形分の100重量部当り、通常、1重量部〜60重量部の範囲内であることが好ましく、中でも5重量部〜40重量部の範囲内であることが好ましい。上記範囲より少ないと、後述の感光性着色樹脂組成物とした時に硬化性が不十分となり、良好なパターンを形成できない恐れがあるからである。また、上記範囲より多いと、後述の感光性着色樹脂組成物とした時に現像性が悪化したり、地汚れが発生しやすくなる恐れがあるからである。
【0061】
<顔料分散液の製造方法>
本発明に係る顔料分散液の製造方法は、少なくとも顔料(A)、3級以下のアミンを有する重合体(B)、アミンと反応可能な低分子化合物(C)、及び溶剤(D)を混合し、前記重合体(B)と前記低分子化合物(C)とを反応させながら、前記顔料(A)を分散させる顔料分散工程を有する。
【0062】
少なくとも顔料(A)、3級以下のアミンを有する重合体(B)、アミンと反応可能な低分子化合物(C)、及び溶剤(D)を混合する工程は、特に限定されるものではないが、少なくとも3級以下のアミンを有する重合体(B)及び溶剤(D)を含有する溶液をまず調製し、その後顔料(A)、及び前記重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)を添加して混合することが、本発明のin situ分散の効果を高め、高い顔料分散安定性が得られる点から好ましい。
すなわち、3級以下のアミンを有する重合体(B)及び溶剤(D)を含有する溶液に、顔料(A)、及び前記重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)を添加した後に、前記重合体(B)と前記低分子化合物(C)とを反応させながら、前記顔料(A)を分散する顔料分散工程を行うことが、本発明のin situ分散の効果を高め、高い顔料分散安定性が得られる点から好ましい。
また、上記分散工程において、分散開始時に前記低分子化合物(C)が3級以下のアミンを有する重合体(B)100重量部に対して、少なくとも5重量部程度含まれていれば、前記低分子化合物(C)を分散工程中に分割して添加していっても、好適に分散することができる。
【0063】
顔料分散工程は、公知の分散機を用いて顔料を分散させることによって行えばよい。分散処理を行うための分散機としては、2本ロール、3本ロール等のロールミル、ボールミル、振動ボールミル等のボールミル、ペイントコンディショナー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミル等のビーズミルが挙げられる。ビーズミルの好ましい分散条件として、使用するビーズ径は0.03〜3.00mmが好ましく、より好ましくは0.05〜2.0mmである。
【0064】
顔料を分散させる工程は特に限定されるものではないが、例えば、ジルコニアビーズ等を適宜加え、ペイントシェーカー(浅田鉄鋼社製)等を用いて1時間〜15時間程度分散を行う方法が挙げられる。分散時間は、良好な顔料分散性と分散安定性が確保できるように適宜選択される。
【0065】
本発明の顔料分散液は、後述するカラーフィルター用感光性着色樹脂組成物の予備調製用の他、インクジェットインク等として用いることができる感光性成分が不要な着色樹脂組成物、又は熱硬化性着色樹脂組成物の予備調製用としても用いることができる。
【0066】
II.カラーフィルター用感光性着色樹脂組成物
本発明に係るカラーフィルター用感光性着色樹脂組成物は、上記本発明に係る顔料分散液と、多官能性モノマー(E)、及び光重合開始剤(F)を含有することを特徴とする。本発明によれば、上記本発明に係る顔料分散液を含有する樹脂組成物を用いることにより、顔料分散安定性に優れながら、地汚れの問題がなく、密着性に優れ、顔料濃度の高い着色層を精度良く形成可能なカラーフィルター用着色樹脂組成物とすることができる。
【0067】
溶剤(D)中で、3級以下のアミンを有する重合体(B)と当該アミンと反応する低分子化合物(C)とを反応させるのと同時に、前記顔料(A)を分散させた上記本発明に係る顔料分散液を含有することにより、上述した効果を発揮する理由としては、以下のように推測される。
従来の方法では顔料に対する顔料分散剤の吸着効率が悪いため、十分な分散性を得るためには顔料分散剤の添加量を多くする必要があった。顔料分散剤は現像性能、基材密着性能を殆ど持たないため、顔料分散剤の増加は地汚れの発生、密着性の低下を招いていた。
それに対し本願によれば、顔料分散剤量は必要最小限のため、現像性能、基材密着性能に対し、悪影響が起き難い。また、分散剤の量が減ることにより硬化成分を増やすことができ、硬化性、密着性を上げることができる。さらに、アミン(B)と反応させる低分子化合物(C)の構造により、アミンを有する重合体に現像性能、基材密着性能等の任意の性能を付加することが可能なため、良好な分散性能を保持しながら目的に応じた様々な性能の分散液を得ることが可能である。
【0068】
本発明に係るカラーフィルター用感光性着色樹脂組成物は、上記本発明に係る顔料分散液、並びに、多官能性モノマー(E)、及び光重合開始剤(F)を少なくとも含有するが、更に必要に応じて他の成分を含んでもよいものである。以下、用いられる各成分を説明する。
尚、上記本発明に係る顔料分散液に含まれ得る成分については、上記顔料分散液の箇所において説明したものと同様のものを用いることができるので、ここでの説明は省略する。
【0069】
<多官能性モノマー(E)>
本発明のカラーフィルター用感光性着色樹脂組成物に含まれる多官能性モノマーとしては、重合可能なものであれば特に限定されるものではないが、通常、エチレン性不飽和二重結合を2つ以上含むものである。
このような多官能性モノマーとしては、なかでも、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0070】
上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、長鎖脂肪族ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、プロピレンジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、アクリル化イソシアヌレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジ(メタ)アクリレート、リン酸ジ(メタ)アクリレート、亜鉛ジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0071】
また、多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ウレタントリ(メタ)アクリレート、エステルトリ(メタ)アクリレート、ウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、エステルヘキサ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の三官能以上の(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの多官能(メタ)アクリレートは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用して使用してもよい。
【0072】
特に、本発明の感光性着色樹脂組成物に優れた光硬化性(高感度)が要求される場合には、多官能(メタ)アクリレートが、重合可能な二重結合を1分子中に2つ(二官能)以上有することが好ましく、さらに3つ(三官能)以上有することが好ましい。
【0073】
上記多官能性モノマーの含有量は、感光性着色樹脂組成物中の固形分に対して、5重量%〜60重量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは10重量%〜40重量%の範囲内である。上記多官能性モノマーの含有量が少なすぎると十分に硬化が進まず、露光箇所が溶出する場合があるからである。また、上記多官能性モノマーを有する化合物の含有量が多すぎると未露光箇所でも現像できなくなる場合があるからである。
【0074】
<光重合開始剤(F)>
本発明に用いられる光重合開始剤(F)は、一般的にカラーフィルターの製造に用いられるものを使用することができる。1種に限定されず、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0075】
このような光重合開始剤としては、具体的には、紫外線のエネルギーによりフリーラジカルを発生する化合物であって、ベンゾイン、ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン誘導体またはそれらのエステルなどの誘導体;キサントン、ジエチルチオキサントンおよびイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン誘導体;イルガキュアOXE−01、イルガキュアOXE−02(以上チバ、スペシャルティケミカルズ社製)、ADEKA OPT−N−1919(旭電化製)などのオキシムエステル化合物、クロロスルフォニル、クロロメチル多核芳香族化合物、クロロメチル複素環式化合物、クロロメチルベンゾフェノン類などの含ハロゲン化合物;トリアジン類;フルオレノン類;ハロアルカン類;光還元性色素と還元剤とのレドックスカップル類;有機硫黄化合物;過酸化物などが挙げられる。
【0076】
更に、光重合開始剤としては、具体的には、ミヒラーケトン、4,4'−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4'−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−エチルアントラキノン、フェナントレン等の芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル類、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メチルフェニル)イミダゾール2量体、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチルチアゾール化合物、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチリル−S−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(1−p−ジメチルアミノフェニル−1,3−ブタジエニル)−S−トリアジン、2−トリクロロメチル−4−アミノ−6−p−メトキシスチリル−S−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス-トリクロロメチル−S−トリアジン、2−(4−ブトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン等のハロメチル−S−トリアジン系化合物、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1 −[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン、1,2−ベンジル −2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1, 1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、エタノン、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(o−アセチルオキシム)、4−ベンゾイル−メチルジフェニルサルファイド、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルフォリルニル)フェニル]−1−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2 −(4−モルフォリニル)−1−プロパノン、1,2−オクタジオン等が挙げられる。
【0077】
また、3級アミン構造を有する光重合開始剤を用いることができる。3級アミン構造を有する光重合開始剤は、分子内に酸素クエンチャーである3級アミン構造を有するため、光重合開始剤から発生したラジカルが酸素により失活し難く、感度を向上させることができるといった利点を有する。
上記3級アミン構造を有する光重合開始剤の市販品としては、例えば、イルガキュア907、イルガキュア369(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、ハイキュアABP(川口薬品製)などが挙げられる。
【0078】
本発明に用いられる光重合開始剤の含有量としては、カラーフィルターの着色層を形成することができるものであれば良いが、本発明の感光性着色樹脂組成物の固形分中に、3重量%〜40重量%の範囲内であることが好ましく、なかでも、5重量%〜35重量%の範囲内であることが好ましい。上記光重合開始剤の含有量が、上記範囲より少ないと、ラジカル重合を十分に進行させることができず、硬化が不十分となり、硬化性が低下する恐れがあるからである。また、上記範囲より多いと副反応が起こりやすく経時安定性を損なう恐れがあるからである。
【0079】
<その他の成分>
更に、本発明のカラーフィルター用感光性着色樹脂組成物には、必要に応じて、その他の成分を含有することができる。中でも、上述したバインダー樹脂のうち、カルボキシル基等の酸性官能基を有するアルカリ可溶性樹脂を含有することが現像性の点から好ましい。
【0080】
本発明のカラーフィルター用感光性着色樹脂組成物には、更に、増感剤、重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤等の添加剤を含んでいても良い。
【0081】
<感光性着色樹脂組成物における配合割合>
本発明の感光性着色樹脂組成物における顔料(A)の含有量としては、本発明の感光性着色樹脂組成物を用いてカラーフィルターの着色層を形成した場合に、所望の発色が可能なものであれば特に限定されるものではなく、用いる顔料の種類によっても異なるが、上記感光性着色樹脂組成物の固形分中において、1重量%〜70重量%の範囲内であることが好ましく、なかでも10重量%〜60重量%の範囲内であることが好ましい。上記顔料の含有量が、上記範囲より多いと、本発明の感光性着色樹脂組成物を用いてカラーフィルターの着色層を形成した場合に、現像性が低下したり、地汚れが発生する可能性があるからである。また、上記範囲より少ないと、本発明の感光性着色樹脂組成物を用いてカラーフィルターの着色層を形成した場合に、着色層を発色が十分なものとすることができない可能性があるからである。
【0082】
本発明の感光性着色樹脂組成物における3級以下のアミンを有する重合体(B)と前記重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)及び/又はそれらの反応物の含有量としては、上記本発明の顔料分散液において述べたように顔料を基準として適宜選択されるものである。目安としては、3級以下のアミンを有する重合体(B)と前記重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)及び/又はそれらの反応物の合計の含有量は、感光性着色樹脂組成物の固形分中において、1重量%〜60重量%の範囲内であることが好ましく、なかでも5重量%〜50重量%の範囲内であることが、好ましい。上記合計の含有量が、感光性着色樹脂組成物の固形分中において、1重量%未満の場合には、顔料を均一に分散することが困難になる恐れがある。一方、上記合計の含有量が、感光性着色樹脂組成物の固形分中において、60重量%を超える場合には、硬化性の低下を招く恐れがある。
【0083】
本発明の感光性着色樹脂組成物に用いられる溶剤(D)の含有量としては、着色層を精度良く形成することができるものであれば特に限定されるものではない。通常、上記感光性着色樹脂組成物中に、65重量%〜95重量%の範囲内であることが好ましく、なかでも70重量%〜90重量%の範囲内であることが好ましい。上記溶剤の含有量が、上記範囲内であることにより、塗布性に優れたものとすることができるからである。
【0084】
本発明の感光性着色樹脂組成物に必要に応じて用いられる、アルカリ可溶性樹脂のような前記バインダー樹脂の含有量としては、上記感光性着色樹脂組成物の固形分中において、1重量%〜70重量%の範囲内であることが好ましく、なかでも5重量%〜60重量%の範囲内であることが、硬化性及び現像性の点から好ましい。
【0085】
本発明の感光性着色樹脂組成物に用いられる、界面活性剤の含有量としては、上記感光性着色樹脂組成物の固形分中において、0.001重量%〜5重量%の範囲内であることが好ましい。
【0086】
<感光性着色樹脂組成物の製造方法>
本発明のカラーフィルター用感光性着色樹脂組成物の製造方法は、予め、上記本発明に係る顔料分散液を準備し、当該顔料分散液を用いて調製すれば、特に限定されない。当該顔料分散液に、多官能性モノマー(E)、光重合開始剤(F)、及びその他の成分を添加して、均一に混合乃至分散させても良い。或いは、多官能性モノマー(E)、光重合開始剤(F)、及びその他の成分を溶剤(D)と混合、分散又は溶解した感光性成分溶液を調製して、準備した顔料分散液と感光性成分溶液とを混合し、必要に応じて分散処理を行うことによって、カラーフィルター用感光性着色樹脂組成物を製造しても良い。
【0087】
III.カラーフィルター
次に、本発明のカラーフィルターについて説明する。本発明のカラーフィルターは、上記カラーフィルター用感光性着色樹脂組成物を用いて形成された着色層を有するものである。
【0088】
このような本発明のカラーフィルターについて、図を参照して説明する。図1は、本発明のカラーフィルターの一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、カラーフィルター10は、透明基板1と、上記透明基板1上にパターン状に形成され、開口部を有する遮光部2と、上記遮光部2の開口部上に形成された着色層3とを有するものである。
ここで、上記着色層は、上記「II.カラーフィルター用感光性着色樹脂組成物」の項に記載のカラーフィルター用感光性着色樹脂組成物を用いて形成されたものである。
【0089】
本発明によれば、上記本発明に係るカラーフィルター用感光性着色樹脂組成物を用いて形成された着色層を有するものであるため、カラーフィルターを、地汚れの問題がなく、基板に対する密着性が高い着色層とすることができる。その結果、透過率やコントラストの低下、表示不良、ITO膜の剥離や、液晶セル化工程でのシール性劣化等の問題が抑制されたカラーフィルターが得られる。また、前記カラーフィルター用感光性着色樹脂組成物は顔料濃度を高くしたり、微細顔料を用いることができるため、このような感光性着色樹脂組成物を用いて形成された着色層を有することにより、色再現性の高いものや、高精細、高輝度、高コントラストなカラーフィルターとすることが可能になる。
以下、本発明のカラーフィルターの各構成について説明する。
【0090】
<着色層>
本発明に用いられる着色層は、上記カラーフィルター用感光性着色樹脂組成物を用いて形成されたものである。
このような本発明に用いられる着色層の配列としては、一般的なカラーフィルターの着色層が有するものとすることができ、例えば、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の配列とすることができる。また、着色層の幅、面積等は任意に設定することができる。
上記着色層の厚みとしては、通常、1μm〜5μmの範囲内であることが好ましい。
【0091】
本発明に用いられる着色層の形成方法は、上記カラーフィルター用感光性着色樹脂組成物を、後述する透明基板上に塗布し、乾燥させ、露光および現像を行うフォトリソグラフィー法により形成することができる。
なお、上記カラーフィルター用感光性着色樹脂組成物については、上記「II.カラーフィルター用感光性着色樹脂組成物」の項に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0092】
<カラーフィルター>
本発明のカラーフィルターは、上記着色層以外に、通常、透明基板と、遮光部とを少なくとも有するものである。このような透明基板および遮光部としては、一般的なカラーフィルターに使用されるものを用いることができる。
【0093】
本発明のカラーフィルターの製造方法としては、上記カラーフィルター用感光性着色樹脂組成物を用いたフォトリソグラフィー法によって、上記着色層を形成するものであれば特に限定されるものではなく、一般的なカラーフィルターの製造方法を用いることができる。
【0094】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0095】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
【0096】
(実施例1:顔料分散液の製造)
3級以下のアミンを有する重合体(B)(MMA/DMMA=60/40重量%、アミン価 140mgKOH/g、重量平均分子量 10,000、プロピレングルコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液、固形分60重量%)を9.2重量部、酸基含有バインダー樹脂(BzMA/MMA/MAA=50/35/15重量%、重量平均分子量 10,000、PGMEA溶液、固形分40重量%)を6.1重量部、及び溶剤(D)(PGMEA)を68.7重量部についてディゾルバーで攪拌混合して均一溶解させた。当該溶液に、重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)(リン酸ジブチル、DP-4;商品名、大八化学社製)を1.0重量部及び顔料(A)(C.I.ピグメントレッド254)15.0重量部を加え、ビーズミルを用いて、前記重合体(B)と前記低分子化合物(C)とを反応させながら、前記顔料(A)を分散し、実施例1の顔料分散液を製造した。ここで、MMA;メチルメタクリレート、DMMA;ジメチルアミノエチルメタクリレート、BzMA;ベンジルメタクリレート、MAA;メタクリル酸、PGMEA;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである。
【0097】
(実施例2:顔料分散液の製造)
3級以下のアミンを有する重合体(B)(MMA/DMMA=60/40重量%、アミン価 140mgKOH/g、重量平均分子量 10,000、PGMEA溶液、固形分60重量%)を8.3重量部、酸基含有バインダー樹脂(BzMA/MMA/MAA=50/35/15重量%、重量平均分子量 10,000、PGMEA溶液、固形分40重量%)を6.1重量部、及び溶剤(D)(PGMEA)を69.1重量部についてディゾルバーで撹拌混合して、重合体溶液を得た。当該重合体溶液に、重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)(リン酸ジブチル、DP-4;商品名、大八化学社製)を1.0重量部及びBzCl(ベンジルクロライド、関東化学社製)を0.5重量部、並びに顔料(A)(C.I.ピグメントレッド254)15.0重量部を添加し、ビーズミルを用いて、前記重合体(B)と前記低分子化合物(C)とを反応させながら、前記顔料(A)を分散し、実施例2の顔料分散液を製造した。
【0098】
(実施例3:顔料分散液の製造)
3級以下のアミンを有する重合体(B)(MMA/DMMA=60/40重量%、アミン価 140mgKOH/g、重量平均分子量 10,000、PGMEA溶液、固形分60重量%)を7.5重量部、酸基含有バインダー樹脂(BzMA/MMA/MAA=50/35/15重量%、重量平均分子量 10,000、PGMEA溶液、固形分40重量%)を6.1重量部、及び溶剤(D)(PGMEA)を69.4重量部についてディゾルバーで攪拌混合して均一溶解させた。当該溶液に、重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)(リン酸ジブチル、DP-4;商品名、大八化学社製)を2.0重量部及び顔料(A)(C.I.ピグメントレッド254)15.0重量部を加え、ビーズミルを用いて、前記重合体(B)と前記低分子化合物(C)とを反応させながら、前記顔料(A)を分散し、実施例3の顔料分散液を製造した。
【0099】
(実施例4:顔料分散液の製造)
3級以下のアミンを有する重合体(B)(MMA/DMMA=60/40重量%、アミン価 140mgKOH/g、重量平均分子量 10,000、PGMEA溶液、固形分60重量%)を8.3重量部、酸基含有バインダー樹脂(BzMA/MMA/MAA=50/35/15重量%、重量平均分子量 10,000、PGMEA溶液、固形分40重量%)を6.7重量部、及び溶剤(D)(PGMEA)を74.0重量部についてディゾルバーで攪拌混合して均一溶解させた。当該溶液に、重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)(p−トルエンスルホン酸メチル、東京化成社製)を1.0重量部及び顔料(A)(C.I.ピグメントブルー15:6)10.0重量部を加え、ビーズミルを用いて、前記重合体(B)と前記低分子化合物(C)とを反応させながら、前記顔料(A)を分散し、実施例4の顔料分散液を製造した。
【0100】
(比較例1:比較顔料分散液の製造)
実施例1において、低分子化合物(C)を用いなかった以外は実施例1と同様にして、比較例1の顔料分散液を製造した。
【0101】
(比較例2:比較顔料分散液の製造)
[比較顔料分散剤1の合成]
3級以下のアミンを有する重合体(B)(MMA/DMMA=60/40重量%、アミン価 140mgKOH/g、重量平均分子量 10,000、PGMEA溶液、固形分60重量%)92重量部と、重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)(リン酸ジブチル、DP-4;商品名、大八化学社製)10重量部と、PGMEA 224重量部とを配合し、室温で2時間撹拌して、固形分20重量%の比較顔料分散剤1を合成した。
H NMRの測定により、当該アミンを有する重合体のアミン部位とDP-4のリン酸が反応したことを確認した。
[比較顔料分散液の調製]
上記合成した比較顔料分散剤1の溶液(固形分20重量%)32.5重量部、酸基含有バインダー樹脂(BzMA/MMA/MAA=50/35/15重量%、重量平均分子量 10,000、PGMEA溶液、固形分40重量%)6.1重量部、及びPGMEA46.4重量部をディゾルバーで撹拌混合して、均一に溶解させた。当該溶液に、顔料(A)(C.I.ピグメントレッド254) 15.0重量部を加え、ビーズミルを用いて分散し、比較例2の顔料分散液を得た。
【0102】
(比較例3:比較顔料分散液の製造)
[比較顔料分散剤2の合成]
固形分20重量%溶液となるように、3級以下のアミンを有する重合体(B)(MMA/DMMA=60/40重量%、アミン価 140mgKOH/g、重量平均分子量 10,000、PGMEA溶液、固形分60重量%)83重量部と、PGMEA 226重量部と、BzCl 5重量部とをフラスコに仕込み、窒素雰囲気下で80℃で4時間加熱攪拌後、冷却してアミンとBzClを反応させた重合体溶液を得た。この重合体溶液に、重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)(リン酸ジブチル、DP-4;商品名、大八化学社製)10重量部を加え、室温で3時間攪拌し、固形分20重量%の比較顔料分散剤2の溶液を調製した。
H NMRの測定により、当該アミンを有する重合体のアミン部位とBzCl及びDP-4のリン酸がそれぞれ反応したことを確認した。
[比較顔料分散液の調製]
上記合成した比較顔料分散剤2(固形分20重量%)32.5重量部、酸基含有バインダー樹脂(BzMA/MMA/MAA=50/35/15重量%、重量平均分子量 10,000、PGMEA溶液、固形分40重量%)を6.1重量部、及びPGMEA46.4重量部についてディゾルバーで撹拌混合して、重合体溶液を得た。当該重合体溶液に、顔料(A)(C.I.ピグメントレッド254)15.0重量部を添加し、ビーズミルを用いて前記顔料(A)を分散し、比較例3の顔料分散液を製造した。
【0103】
(比較例4:比較顔料分散液の製造)
比較例1と同様にしてビーズミルを用いて前記顔料(A)を分散後、低分子化合物(C)(リン酸ジブチル、DP-4;商品名、大八化学社製)1.0重量部を添加し、ディゾルバーで1時間撹拌混合し、比較例4の顔料分散液を製造した。
【0104】
(比較例5:比較顔料分散液の製造)
比較例1と同様にしてビーズミルを用いて前記顔料(A)を分散後、低分子化合物(C)(リン酸ジブチル、DP-4;商品名、大八化学社製)1.0重量部及びBzCl(ベンジルクロライド、関東化学社製)0.5重量部を添加し、ディゾルバーで1時間撹拌混合し、比較例5の顔料分散液を製造した。
【0105】
(実施例5〜8及び比較例6〜10:着色感光性樹脂組成物)
実施例1〜4及び比較例1〜5の顔料分散液をそれぞれ用い、下記に示す組成を、ディゾルバーを使用して均一に混合して、実施例5〜8及び比較例6〜10の感光性着色樹脂組成物を調製した。
<感光性着色樹脂組成物の組成>
・各顔料分散液:16.0重量部(固形分換算)
・バインダー樹脂(BzMA/MAA/GMA=30/40/30重量%、重量平均分子量 12,000):7.7重量部
・多官能モノマー(ジペンタエリストールヘキサアクリレート(DPHA)):3.3重量部
・光重合開始剤(IRGACURE369、チバスペシャリティーケミカルズ社製):1重量部
・光重合開始剤(IRGACURE907、チバスペシャリティーケミカルズ社製):1重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)):60.8重量部
【0106】
[評価]
(1)顔料分散液の分散安定性
実施例及び比較例で得られた各顔料分散液について、25℃で7日間保存前後の粘度を測定し、保存前後の粘度の変化率を比較した。粘度については、回転振動型粘度計を用いて、25.0±1.0℃における粘度を測定した。分散安定性について下記基準で評価を行った。結果を表3に示す。
○:保存前後の粘度の変化率が5%未満。
△:保存前後の粘度の変化率が5%以上10%未満。
×:保存前後の粘度の変化率が10%以上。
(2)着色層の形成
アルカリ洗浄済みのガラス基板上に、上記感光性着色樹脂組成物をスピンコーティングし、上記感光性着色樹脂組成物からなる着色層形成用層を形成した後、室温3分間、80℃のホットプレート上で3分間加熱することによりプリベイクさせ、乾燥させた。 次いで、乾燥後の上記着色層形成用層を、超高圧水銀灯を用いて100mJ/cmでマスク露光し硬化させた。
次いで、0.05wt%水酸化カリウム(KOH)を現像液として用いてスピン現像し、現像液に60秒間接液させた後に純水で洗浄することで現像処理を行った。その後、パターン形成された基板を230℃のオーブン内で30分間ポストベイクした。ポストベイク後の着色層形成用層からなる着色層の膜厚は、1.9μmであった。
(3)着色層の現像性
上記着色層の形成において、未露光部が溶解し、現像されるまでの時間を測定し、下記基準で評価を行った。現像の終了は、目視により判断した。結果を表3に示す。
○:10秒〜30秒で現像が終了する。
△:31秒〜60秒で現像が終了する。
×:60秒以内で現像が終了しない。
(4)着色層の密着性
1μm〜100μmの線幅のラインパターンを露光し、現像後に溶解されずに密着しているラインパターンの最小線幅を測定し、下記基準で評価した。結果を表に示す。
○:10μm以下の線幅のラインが密着している。
△:10μmより大きく、20μm以下の線幅のラインが密着している。
×:20μm以下の線幅のラインが密着しない。
【0107】
【表3】

【0108】
表3の結果から、以下のことが明らかになった。
アミンと反応可能な低分子化合物(C)を顔料分散時に配合した実施例1〜4の顔料分散液は、保存前後の粘度の変化率が小さく、顔料分散安定性が良好なことがわかった。また、実施例1〜4の顔料分散液を用いて製造された感光性着色樹脂組成物は、いずれも密着性に優れ、現像性も良好で地汚れが発生し難いことが明らかになった。
一方、アミンと反応可能な低分子化合物(C)を用いなかった比較例1の顔料分散液を用いた場合は、顔料分散安定性が悪く、密着性も悪いものであった。
また、アミンと反応可能な低分子化合物(C)と3級以下のアミンを有する重合体(B)とを予め反応させた顔料分散剤を用いて顔料を分散させた比較例2と3の顔料分散液を用いた場合は、密着性は良好であったが、現像性が悪かった。
さらに、3級以下のアミンを有する重合体(B)を用いて顔料を分散後、アミンと反応可能な低分子化合物(C)を後から添加した比較例4と5の顔料分散液を用いた場合は、顔料分散安定性が悪く、密着性も悪いものであった。
【符号の説明】
【0109】
1 基板
2 遮光部
3 着色層
10 カラーフィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも顔料(A)、3級以下のアミンを有する重合体(B)、アミンと反応可能な低分子化合物(C)、及び溶剤(D)を混合し、前記重合体(B)と前記低分子化合物(C)とを反応させながら、前記顔料(A)を分散させる顔料分散工程を有することを特徴とする、顔料分散液の製造方法。
【請求項2】
前記重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)は、下記一般式(1)〜(3)よりなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の顔料分散液の製造方法。
【化1】

【化2】

【化3】

(一般式(1)〜(3)において、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは−O−Rを表し、Rは、炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1〜4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表す。また、一般式(3)において、Xは、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。)
【請求項3】
前記3級以下のアミンを有する重合体(B)のアミン価が、10mgKOH/g〜200mgKOH/gであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の顔料分散液の製造方法。
【請求項4】
前記重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)の分子量が、50〜400であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の顔料分散液の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の顔料分散液の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする顔料分散液。
【請求項6】
請求項5に記載の顔料分散液と、多官能性モノマー(E)、及び光重合開始剤(F)を含有することを特徴とする、カラーフィルター用感光性着色樹脂組成物。
【請求項7】
請求項6に記載のカラーフィルター用感光性着色樹脂組成物を用いて形成された着色層を有することを特徴とする、カラーフィルター。

【図1】
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【公開番号】特開2010−235748(P2010−235748A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84779(P2009−84779)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【Fターム(参考)】