説明

顔料調製物、その製造法および使用

少なくとも1つの顔料および一般式CH3−(CH2n−CH2−O−[(CH2p−O]m−Hの少なくとも1つの化合物を含有する顔料調製物。この顔料調製物は、分散または乾燥によって製造されてよい。この顔料調製物は、水性塗料および水性ラッカー系、分散塗料、印刷用インキ、インキ系および被覆系中での着色および/または静電防止仕上げ加工のために使用されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料調製物、その製造法および使用に関する。
【0002】
粉末顔料は、熱可塑性樹脂の着色のために使用される。粉末顔料の利点は、この粉末顔料が担体材料に依存しないことである。しかし、この利点は、しばしば分散可能性の費用に対して達成される。
【0003】
分散可能性を改善するために、この顔料は、樹脂(ドイツ連邦共和国特許第2540355号明細書)またはポリマー(米国特許第3133893号明細書)で被覆される。
【0004】
特殊な乾燥法は、欧州特許第0036520号明細書の記載から公知であり、この場合微粒状顔料および臨界温度が顔料の分解温度より低い液体は、圧力下で液体の臨界温度を上廻る温度に加熱され、次に放圧され、この場合温度は、絶えず液体の露点曲線を上廻るように維持される。
【0005】
更に、有機顔料および/またはカーボンブラックおよび一連のアルキルベンゼンスルホネートまたは特殊なスルホコハク酸エステルからなる界面活性剤を含有し、場合によっては湿式粉砕後に水性媒体からの噴霧乾燥または凍結乾燥によって乾燥される顔料調製物は、欧州特許第0282855号明細書の記載から公知である。
【0006】
欧州特許第1103173号明細書の記載から、顔料およびポリエーテルポリオールを含有する、種物を着色するための顔料調製物は、公知である。
【0007】
更に、米国特許第2005090609号明細書の記載から、50〜5000μmの平均粒度および15m2/g以下のBET表面積を有し、特にポリエーテルを基礎とする少なくとも1つの非イオン性の界面活性の添加剤10〜40質量%を含有する顔料顆粒は、公知である。
【0008】
この公知の顔料調製物は、攪拌可能性が劣悪であるという欠点を有する。本発明の課題は、水中での良好な攪拌可能性("stir in")を有する顔料調製物を製造することである。
【0009】
本発明の対象は、顔料調製物であり、この顔料調製物は、当該顔料調製物が少なくとも1つの顔料および一般式I
CH3−(CH2n−CH2−O−[(CH2p−O]m−H I
〔式中、n=8〜18、特にn=10〜18、特に有利にn=14〜18、殊に有利にn=14〜16、p=1〜4、特にp=2およびm=15〜25、特にm=18〜23、特に有利にm=20〜23を表わす〕で示される少なくとも1つの化合物を含有することによって特徴付けられる。
【0010】
顔料としては、カーボンブラックまたは有色顔料が使用されてよい。
【0011】
有色顔料としては、例えば黄顔料、オレンジ顔料、赤顔料、マゼンタ顔料、バイオレット顔料、青顔料、シアン顔料、緑顔料またはブラウン顔料が使用されてよい。特に、有色顔料としては、無機有色顔料、例えば紺青、ウルトラマリンブルー、コバルトブルーまたは混合相の青色顔料、または有機青顔料、例えばフタロシアニンブルーまたはインダントレンブルーが使用されてよい。
【0012】
カーボンブラックとしては、WO 98/45361またはドイツ連邦共和国特許第19613796号明細書の記載から公知のファーネスカーボンブラック、ガスカーボンブラック、フレームカーボンブラック、アセチレンカーボンブラック、Si含有カーボンブラック、ドイツ連邦共和国特許第19521565号明細書の記載から公知のインバージョン・カーボンブラック(Inversionsruss)およびWO 98/42778の記載から公知の金属含有カーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックとしては、好ましくは8〜80nm、特に10〜35nmの平均一次粒径および40〜200ml/100g、特に60〜150ml/100gのDBP数を有する顔料カーボンブラックを使用することができる。ガスカーボンブラックは、8〜30nm、特に10〜25nmの平均一次粒径を有することができる。ガスカーボンブラックは、2〜5、特に3.5〜4.5のpH値を有することができる。
【0013】
好ましいのは、一般式I CH3−(CH2n−CH2−O−[(CH22−O]m−H〔式中、n=10、12、14、16およびm=18〜23を表わす〕で示される化合物であることができる。
【0014】
例えば、一般式Iの化合物は、CH3−(CH210−CH2−O−[(CH22−O]18−H、CH3−(CH212−CH2−O−[(CH22−O]18−H、CH3−(CH214−CH2−O−[(CH22−O]18−H、CH3−(CH216−CH2−O−[(CH22−O]18−H、CH3−(CH210−CH2−O−[(CH22−O]20−H、CH3−(CH212−CH2−O−[(CH22−O]20−H、CH3−(CH214−CH2−O−[(CH22−O]20−H、CH3−(CH216−CH2−O−[(CH22−O]20−H、CH3−(CH210−CH2−O−[(CH22−O]23−H、CH3−(CH212−CH2−O−[(CH22−O]23−H、CH3−(CH214−CH2−O−[(CH22−O]23−HまたはCH3−(CH216−CH2−O−[(CH22−O]23−Hであることができる。
【0015】
顔料調製物は、殺生剤、pH調整剤、保湿剤、付着剤、消泡剤を含有することができる。
【0016】
顔料調製物は、沈降珪酸および/または熱分解法珪酸を含有することができる。
【0017】
顔料調製物は、分散剤を含有することができる。
【0018】
分散剤は、非イオン性、カチオン性、アニオン性または両性の湿潤剤であることができる。本発明による顔料調製物は、一般式Iの化合物を除いて分散剤不含であることができる。
【0019】
顔料調製物は、少なくとも1つの顔料、一般式I
CH3−(CH2n−CH2−O−[(CH2p−O]m−H I
〔式中、n=8〜18、特にn=10〜18、特に有利にn=14〜18、殊に有利にn=14〜16、p=1〜4、特にp=2およびm=15〜25、特にm=18〜23、特に有利にm=20〜23を表わす〕で示される少なくとも1つの化合物、pH調整剤、場合によっては保湿剤、場合によっては付着剤、場合によっては消泡剤および場合によっては殺生剤からなることができる。
【0020】
顔料調製物は、5〜5000μm、特に10〜1000μm、特に有利に50〜500μmの平均粒径を有することができる。
【0021】
顔料調製物は、0.1〜20質量%、特に11〜20質量%を含有することができる。
【0022】
顔料調製物は、顔料50〜99質量%、特に60〜90質量%および式Iの化合物1〜50質量%、特に10〜40質量%を含有することができる。
【0023】
本発明の特に好ましい実施態様において、顔料調製物は、ガスカーボンブラック、ピグメントイエロー74、ピグメントブルー15:3およびピグメントレッド122の群から選択された少なくとも1つの顔料、一般式I
CH3−(CH2n−CH2−O−[(CH2p−O]m−H I
〔式中、n=8〜18、特にn=10〜18、特に有利にn=14〜18、殊に有利にn=14〜16、p=1〜4、特にp=2およびm=15〜25、特にm=18〜23、特に有利にm=20〜23を表わす〕で示される少なくとも1つの化合物、pH調整剤、場合によっては保湿剤、場合によっては付着剤、場合によっては消泡剤および場合によっては殺生剤からなることができる。
【0024】
更に、本発明の対象は、顔料調製物が0.1質量%未満、特に0.09質量%未満、特に有利に0.06質量%未満の貯蔵前と貯蔵後の固体物質量の差を2時間の攪拌時間および24時間の貯蔵時間で有することを特徴とする、顔料調製物である。
【0025】
貯蔵前と貯蔵後の固体物質量の差は、顆粒5gを150mlの大型のフラスコ中内の脱イオン水95g中に添加し、pH値をAMP90により8〜9に上昇させることにより、測定される。長さ3cmの三角の電磁攪拌機を用いて、IKA社の電磁攪拌板RETベーシック(RETbasic)上で900rpmで2時間攪拌する。引続き、試料を100mlの混合シリンダー中に移し、90mlのマーキングで試料2.5mlを3mlのPP−ピペットで取り出す。
【0026】
この試料から、Satorius MA 100を用いて固体の量が測定される:
測定パラメーター:
温度:130℃、
計量した量:2〜4g、
スイッチの切断条件:質量損失50秒当たり1mg。
【0027】
24時間後、再び90mlのマーキングで試料2.5mlを取出し、再び固体の量を測定する。
【0028】
更に、本発明の対象は、少なくとも1つの顔料および一般式Iの少なくとも1つの化合物を少なくとも1つの溶剤中に分散させ、引続き乾燥させることを特徴とする、顔料調製物の製造法である。
【0029】
溶剤としては、水、グリコール、グリセリン、アルコールまたは前記化合物の混合物を使用することができる。
【0030】
乾燥は、凍結乾燥または噴霧乾燥、または別の造粒法、例えば渦動床造粒または流動床乾燥によって行なうことができる。
【0031】
顔料調製物を製造するためには、分散のためにパールミル、超音波、ディスパックス反応器(Dispax)、ディスソルバー、振盪型混合装置、例えばスキャンデックスミキサー(Scandex)、回転子−固定子分散装置、例えばウルトラ−ターラックス(Ultra-Turrax)、またはホモジェナイザーを使用することができる。
【0032】
凍結および乾燥は、冷凍縮合室(Eiskondensatorkammer)中で行なうことができる。凍結速度は、0.01〜10℃/分、特に0.1〜3.0℃/分であることができる。
【0033】
乾燥は、ノズル噴霧部および並流部、半向流部(Fontainenzerstaeubung)および向流ガス案内部を備えた噴霧乾燥機を用いて行なうことができる。噴霧ノズルとしては、一物質流ノズル、二物質流噴霧ノズルまたは多重通路噴霧ノズル(Mehrkanalspruehduesen)を使用することができる。
【0034】
ノズル初期圧力は、1〜20バール、特に10〜20バールであることができる。入口温度は、150〜220℃、特に160〜200℃であることができる。
【0035】
本発明による顔料調製物は、水性塗料および水性ラッカー系、分散塗料、印刷用インキ、インキ系および被覆系中での着色および/または静電防止仕上げ加工のために使用されることができる。
【0036】
更に、本発明の対象は、少なくとも1つの本発明による顔料調製物を含有するインキである。
【0037】
本発明による顔料調製物は、好ましくは、公知の顔料調製物よりも良好な攪拌可能性("stir in")を有する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明による顔料調製物1〜3および参照調製物5の測定された沈降プロフィールを示す線図。
【図2】本発明による顔料調製物2または3および参照調製物4の測定された沈降プロフィールを示す線図。
【図3】噴霧乾燥された顔料調製物の実施可能性の時間依存性を試験するために、本発明による顔料調製物を0.5時間、1時間、2時間および3時間攪拌した場合の沈降プロフィールを示す線図。
【図4】噴霧乾燥された顔料調製物の実施可能性の時間依存性を試験するために、本発明による顔料調製物を0.5時間、1時間、2時間および3時間攪拌した場合の別の沈降プロフィールを示す線図。
【図5】200倍の倍率でインキを光学顕微鏡により撮影した写真。
【実施例】
【0039】
例1(沈降特性)
水性カーボンブラック分散液の組成は、第1表中に示されている。
【0040】
【表1】

【0041】
アルカノールS2は、Tego社のp=2、m=2およびn=16を有する一般式1の化合物である(物質群:脂肪アルコールエトキシレート)。
【0042】
アルカノールS20は、Tego社のp=2、m=20およびn=16を有する一般式1の化合物である(物質群:脂肪アルコールエトキシレート)。
【0043】
アルカノールS60は、Tego社のp=2、m=60およびn=16を有する一般式1の化合物である(物質群:脂肪アルコールエトキシレート)。
【0044】
アルカノールS100は、Tego社のp=2、m=100およびn=16を有する一般式1の化合物である(物質群:脂肪アルコールエトキシレート)。
【0045】
アルカノールL23Pは、Tego社のp=2、m=23およびn=10を有する一般式1の化合物である(物質群:脂肪アルコールエトキシレート)。
【0046】
Brij 58は、Aldrich社のp=2、m=16およびn=20を有する一般式1の化合物である(物質群:脂肪アルコールエトキシレート)。
【0047】
Brij 98は、Aldrich社の式CH3−(CH27−CH=CH−(CH27−CH2−O−[(CH22−O]20−Hの化合物である(物質群:脂肪アルコールエトキシレート)。
【0048】
顔料グレードカーボンブラックNIPex 160IQは、Degussa GmbH社の20nmの平均一次粒径を有するガスカーボンブラックである。
【0049】
AMP 90は、Angus Chemie社の2−アミノ−2−メチル−プロパノールである。
【0050】
湿潤剤溶液の調製
水が装入され、一般式1の化合物またはBrij 98は、最大60℃への加熱下に溶解し、冷却後にAMP 90でアルカリ性になる。
【0051】
2.カーボンブラックの混入
調製された湿潤剤溶液中の顔料グレードカーボンブラックNIPex 160IQは、緩徐に攪拌しながら(手でかまたは遅速の攪拌機で)次第に混入される。
【0052】
3.分散
項目2で調製された分散液は、パールミルで分散される。
【0053】
顔料分散液1〜3ならびに参照分散液2〜4は、分散後に薄膜の均一な分散液を生じる。
【0054】
参照分散液1は、劣悪な水溶性のためにアルカノールS2によって製造することはできない。
【0055】
噴霧乾燥
引続き、分散液は、噴霧乾燥される(Buechi 190 Mini Spray Dryer)。分散液は、ぜん動ポンプを用いて噴霧ノズルに輸送され、160℃の入口温度で乾燥される。分離は、サイクロンにより行なわれる。これから、第2表中に記載された顔料調製物が生じる。
【0056】
【表2】

【0057】
参照調製物5としては、BASF SE社のXFastブラックED 7484、直接に水性ラッカー調製物中に攪拌混入することができかつピグメントブラック7を含有する、ダスト貧有のさらさらと流れうる"攪拌型(Stir in)"顆粒が使用される。
【0058】
顔料調製物の残留湿分は、試料に対してSatorius社の赤外乾燥機MA 100を用いて算出される。
【0059】
測定パラメーター:
温度:130℃、
計量した量:2〜4g、
スイッチの切断条件:質量損失50秒当たり1mg。
【0060】
顔料調製物の粒径は、試料250mlに対してRetsch社のCamsizerを用いて次の測定パラメーターで算出される:
粒子モデル:球状
映像比:1:1
シュート:75mm
沈降プロフィール:
噴霧乾燥した生成物の沈降挙動を試験するために、顆粒5g宛を大型の150mlのビーカー内の脱イオン水95g中に導入し、pH値をAMP 90を用いて8〜9に上昇させる。長さ3cmの三角の電磁攪拌機を用いて、IKA社の電磁攪拌板RETベーシック(RETbasic)上で3時間攪拌する。
【0061】
引続き、得られた分散液1gを脱イオン水19gで希釈し、沈降プロフィールをL. U. M. GmbH社のLumifuge 116 Stability Analyserを用いて評価する。この場合、試料の透過率は、測定キュベット中の時間および場所に依存して遠心分離下で測定される。
【0062】
測定パラメーター:
1.それぞれ30秒の10回の測定プロフィール、n=2000rpm、光ファクター(Lichtfaktor)3、
2.それぞれ120秒の200回の測定プロフィール、n=2000rpm、光ファクター(Lichtfaktor)3。
【0063】
累積透過率の上昇率が少なくなればなるほど、沈降速度は、ますます僅かになり、分散液、ひいては顔料調製物の攪拌可能性もますます安定する。
【0064】
図1および2には、測定された沈降プロフィールが図示されている。
【0065】
本発明による顔料調製物1〜3は、参照調製物2〜5よりも明らかに低い沈降速度を示す。この結果は、本発明による顔料調製物1〜3の実施可能性が明らかに良好であることを証明する。
【0066】
例2(実施可能性の時間依存性)
噴霧乾燥された顔料調製物の実施可能性の時間依存性を試験するために、本発明による顔料調製物1 5gを脱イオン水95g中に装入し、pH値をAMP 90で8〜9に調節し、三角の電磁攪拌機を用いて0.5時間、1時間、2時間および3時間IKA社の電磁攪拌板RETベーシック(RETbasic)上で攪拌する。
【0067】
引続き、得られた懸濁液1gを脱イオン水19gで希釈し、沈降プロフィールをL. U. M. GmbH社のLumifuge 116 Stability Analyserを用いて評価する。
【0068】
測定パラメーター:
1.それぞれ30秒の10回の測定プロフィール、n=2000rpm、光ファクター(Lichtfaktor)3、
2.それぞれ120秒の200回の測定プロフィール、n=2000rpm、光ファクター(Lichtfaktor)3、
結果は、第3表中に示されている。
【0069】
本発明による顔料調製物1は、3時間後に透過率の急激な変化を全く示さず、電磁攪拌機での3時間の攪拌後に、懸濁液は、安定性であると見なすことができる。
【0070】
比較のために、参照調製物5を同様に測定する。
【0071】
そのために、参照調製物5 5gを脱イオン水95g中に装入し、pH値をAMP 90を用いて8〜9に上昇させ、電磁攪拌機を用いて0.5時間、1時間、2時間および3時間攪拌する。
【0072】
引続き、得られた懸濁液1gを脱イオン水19gで希釈し、沈降プロフィールをL. U. M. GmbH社のLumifuge 116 Stability Analyserを用いて評価する。
【0073】
測定パラメーター:
1.それぞれ30秒の10回の測定プロフィール、n=2000rpm、光ファクター(Lichtfaktor)3、
2.それぞれ120秒の200回の測定プロフィール、n=2000rpm、光ファクター(Lichtfaktor)3、
結果は、第4表中に示されている。
【0074】
また、3時間後に、参照調製物5の場合には、安定した懸濁液を全く生じない。
【0075】
例3(顔料添加されたインキの印刷試験)
次の実施例において、本発明による顔料調製物を基礎とするインキジェットプリンター用インキを製造し、印刷試験を実施する。
【0076】
1.湿潤剤溶液の調製
水を装入し、アルカノールS 20を最大60℃に加熱しながら溶解し、冷却後に、AMP 90でpH値をアルカリ性に調節する。
【0077】
2.顔料の混入
調製された湿潤剤溶液中の顔料は、緩徐に攪拌しながら(手でかまたは遅速の攪拌機で)次第に混入される。
【0078】
3.分散
項目2で調製された分散液は、パールミルで分散される。
【0079】
水性顔料分散液の組成は、第3表中に示されている。
【0080】
【表3】

【0081】
ピグメントレッド122は、Sunfast Red 122の商品名でのSun社のマゼンタ顔料である。
【0082】
ピグメントブルー15:3は、Hostaperm Blau B2Gの商品名でのClariant社のシアン顔料である。
【0083】
ピグメントイエロー74は、Sunbrite Yellow 74の商品名でのSun社の黄顔料である。
【0084】
4.噴霧乾燥
引続き、顔料分散液は、噴霧乾燥される(Buechi 190 Mini Spray Dryer)。分散液は、ぜん動ポンプを用いて噴霧ノズルに輸送され、160℃の入口温度で乾燥される。分離は、サイクロンにより行なわれる。これから、第4表中に記載された顔料調製物が生じる。
【0085】
【表4】

【0086】
参照調製物6としては、BASF SE社のXFastイエローED 7574、直接に水性ラッカー調製物中に攪拌混入することができかつピグメントイエロー184を含有する、ダスト貧有のさらさらと流れうる"攪拌型(Stir in)"顆粒が使用される。
【0087】
参照調製物7としては、BASF SE社のXFastマゼンタED 7576、直接に水性ラッカー調製物中に攪拌混入することができかつピグメントレッド122を含有する、ダスト貧有のさらさらと流れうる"攪拌型(Stir in)"顆粒が使用される。
【0088】
参照調製物8としては、BASF SE社のXFastブルーED 7566、直接に水性ラッカー調製物中に攪拌混入することができかつピグメントブルー15:2を含有する、ダスト貧有のさらさらと流れうる"攪拌型(Stir in)"顆粒が使用される。
【0089】
この顔料調製物の性質を試験するために、実験室用標準インキ混合物中の顆粒5gを1時間で羽根型攪拌機を用いて攪拌混入する。引続き、光学顕微鏡により顔料調製物の分散度を評価する。
【0090】
第5表は、製造されたインキの概要を示す。
【0091】
【表5】

【0092】
光学顕微鏡による評価のためのグレード評価目盛:
1:2μmを上廻る粒子はない。
2:2μmを上廻る粒子は少ない。
3:2μmを上廻る粒子は多い。
4:5μmを上廻る粒子は多い。
5:10μmを上廻る粒子は多い。
【0093】
図5は、200倍の倍率でインキを光学顕微鏡により撮影した写真を示す。
【0094】
本発明によるインキ1、2および3は、参照インキ1、2および3よりも明らかに良好な攪拌挙動を示す。
【0095】
光学顕微鏡による評価のために、本発明によるインキ1〜3は、攪拌可能性が不足しているために印刷することができない。
【0096】
本発明によるインキは、500nmの深度フィルターを介して濾過し、Mimaki社の大型フォーマットのプリンターを用いて印刷する。
【0097】
参照インキ1〜3は、攪拌可能性が不足しているために印刷することができないので、参照インキとしてオリジナルミマキインキ(Original Mimaki Tinten)を使用する。
【0098】
次の第6表には、算出された値がまとめられている。
【0099】
【表6】

【0100】
評価目盛:
1:極めて良好
5:劣悪
粘度の測定:
流動学的挙動を剪断制御速度(CSR)を有する回転試験でPhysica Rheometer UDS 200を用いて検出する。1000S-1の剪断速度で粘度値を読取る。
【0101】
表面張力の測定:
Kuess社の気泡型張力計BP2を用いて、動的表面直力を算出する。最終値を3000msで読取る。
【0102】
pH値の測定:
pH値をScott社のpH計量器CG 837を使用して希釈されていない懸濁液に対して測定する。そのために、ガラス電極を溶液中に浸漬し、5分後に温度補正されたpH値を読取る。
【0103】
光学密度の測定:
印刷のデモンストレーションによる光学密度をGretagMcBeth社のデンシトメーターで測定する。
【0104】
印刷可能性の測定:
印刷試験をMimaki JV4 プリンターを用いて実施する。そのために、インキを500nmのフィルターユニットを用いて濾過し、真空下に脱気する。完成されたインキを清浄化された元来のプリンターカートリッジ中に注入し、印刷する。印刷のデモンストレーションを縞模様(ノズルの閉塞)、印刷のシャープさおよび内部の色の滲みに関連して目視的に評価する。
【0105】
リファイア挙動の測定:
リファイア試験において、インキの印刷開始時の挙動または印刷なしの1日後、3日後および7日後のインキの乾燥挙動を目視的に評価する。
【0106】
本発明によるインキ1〜3は、極めて良好に印刷することができ、印刷なしの7日後でも全く閉塞を示さない。光学密度の値は、印刷製造業者からの参照インキの場合よりも高い。
【0107】
例4(攪拌可能性)
次の例で、調製物の攪拌可能性("stir in")を詳説する。
【0108】
貯蔵前と貯蔵後の固体物質量の差:
噴霧乾燥した生成物の性質を試験するために、顆粒5g宛を大型の150mlのビーカー内の脱イオン水95g中に導入し、pH値をAMP 90を用いて8〜9に上昇させる。長さ3cmの三角の電磁攪拌機を用いて、IKA社の電磁攪拌板RETベーシック(RETbasic)上で900rpmで2時間攪拌する。引続き、試料を100mlの混合シリンダー中に移し、90mlのマーキングで試料2.5mlを3mlのPP−ピペットで取り出す。この試料から、Satorius MA 100を用いて固体物質が測定される:
測定パラメーター:
温度:130℃、
計量した量:2〜4g、
スイッチの切断条件:質量損失50秒当たり1mg。
【0109】
24時間後、再び90mlのマーキングで試料2.5mlを取出し、再び固体物質の量を測定する。
【0110】
参照調製物9としては、BASF SE社のXFastイエローED 1252、直接に水性ラッカー調製物中に攪拌混入することができかつピグメントイエロー74を含有する、ダスト貧有のさらさらと流れうる"攪拌型(Stir in)"顆粒が使用される。
【0111】
参照調製物10としては、BASF SE社のXFastレッド 3855、直接に水性ラッカー調製物中に攪拌混入することができかつピグメントレッド112を含有する、ダスト貧有のさらさらと流れうる"攪拌型(Stir in)"顆粒が使用される。
【0112】
参照調製物11としては、BASF SE社のXFastバイオレットED 7575、直接に水性ラッカー調製物中に攪拌混入することができかつピグメントバイオレット23を含有する、ダスト貧有のさらさらと流れうる"攪拌型(Stir in)"顆粒が使用される。
【0113】
【表7】

【0114】
本発明による顔料調製物は、参照調製物よりも貯蔵前と貯蔵後の明らかに小さな固体物質量の差を示し、それによってよりいっそう良好な攪拌可能性を有する(第7表)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料調製物であって、この顔料調製物が少なくとも1つの顔料および一般式I
CH3−(CH2n−CH2−O−[(CH2p−O]m−H I
〔式中、n=8〜18、p=1〜4およびm=15〜25を表わす〕で示される少なくとも1つの化合物を含有することを特徴とする、顔料調製物。
【請求項2】
顔料が有色顔料またはカーボンブラックである、請求項1記載の顔料調製物。
【請求項3】
顔料がガスカーボンブラックである、請求項1記載の顔料調製物。
【請求項4】
一般式Iの化合物は、CH3−(CH210−CH2−O−[(CH22−O]18−H、CH3−(CH212−CH2−O−[(CH22−O]18−H、CH3−(CH214−CH2−O−[(CH22−O]18−H、CH3−(CH216−CH2−O−[(CH22−O]18−H、CH3−(CH210−CH2−O−[(CH22−O]20−H、CH3−(CH212−CH2−O−[(CH22−O]20−H、CH3−(CH214−CH2−O−[(CH22−O]20−H、CH3−(CH216−CH2−O−[(CH22−O]20−H、CH3−(CH210−CH2−O−[(CH22−O]23−H、CH3−(CH212−CH2−O−[(CH22−O]23−H、CH3−(CH214−CH2−O−[(CH22−O]23−HまたはCH3−(CH216−CH2−O−[(CH22−O]23−Hである、請求項1記載の顔料調製物。
【請求項5】
残留湿分が0.1〜20質量%である、請求項1記載の顔料調製物。
【請求項6】
顔料調製物において、この顔料調製物が2時間の攪拌時間および24時間の貯蔵時間で0.1質量%未満の貯蔵前と貯蔵後の固体物質量の差を有することを特徴とする、顔料調製物。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の顔料調製物の製造法において、少なくとも1つの顔料および一般式Iの少なくとも1つの化合物を少なくとも1つの溶剤中に分散させ、引続き乾燥させることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の顔料調製物の製造法。
【請求項8】
顔料調製物を噴霧乾燥するかまたは凍結乾燥する、請求項7記載の顔料調製物の製造法。
【請求項9】
水性塗料および水性ラッカー系、分散塗料、印刷用インキ、インキ系および被覆系中での着色および/または静電防止仕上げ加工のための請求項1から6までのいずれか1項に記載の顔料調製物の使用。
【請求項10】
インキにおいて、このインキが請求項1から6までのいずれか1項に記載の少なくとも1つの顔料調製物を含有することを特徴とする、インキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−529243(P2010−529243A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510725(P2010−510725)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056194
【国際公開番号】WO2008/148639
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】