説明

顔認証装置及び顔認証端末

【課題】構成が簡単で被認証者の顔を正面から撮像できる認証精度が高い顔認証装置を提供する。
【解決手段】セキュリティーゲートの壁パネル20a 内にはハーフミラー14が嵌め込まれ、被認証者が対面する鏡面と反対側の面にカメラ16(A〜B)が写野が上下に重なるように縦に並ぶ。被認証者はミラー14の向こう側にあるカメラ16が見えないので、特定位置にあるカメラ16に自らの顔を無理に向けることはない。鏡面を正面から視認した被認証射の顔は複数のカメラ16のいずれかにより適正に撮影され、質の高い顔画像が得られる。記憶手段に予め蓄積した登録顔画像と前記顔画像とを比較し、両者が一致した場合に前記被認証者が前記登録顔画像を登録した人物であると認定し、認証信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ等の撮像手段で被認証者の顔を撮像して顔画像を取得し、記憶手段に予め蓄積した登録顔画像(本人の登録顔画像又は複数人の登録顔画像)と前記顔画像とを比較し、両者が一致したと判断した場合に前記被認証者が前記登録顔画像を登録した人物であると認定し、認証信号を出力する顔認証装置と、この顔認証装置の顔認証端末に関する。
本発明の顔認証装置及び顔認証端末は、例えば、互いに区画されるべき2つのエリアの境界に設置されて両エリア間の人の入退出を管理するセキュリティーゲートに応用可能である。このセキュリティーゲートは、建物の出入り口や建物内の区画された領域間のゲート等に設けられ、内外の人の出入りを管理する装置として利用されるものであるが、本発明は、このセキュリティーゲートに近接して外側のエリアに設けられ、アクセスしてきた人物の顔を撮影して登録された人物の顔と一致した場合にゲートを通過可能とするセキュリティー手段として有用である。
【背景技術】
【0002】
カメラ等の撮像手段で被認証者の顔を撮像して顔画像を取得し、記憶手段に予め蓄積しておいた登録顔画像と前記顔画像とを比較し、両者が一致したと判断した場合に前記被認証者が登録された人物の一人であると認定し、認証信号を出力してセキュリティーゲートの開閉制御に利用する顔認証装置が知られている。
【0003】
下記特許文献1は、係る顔認証装置に関するものであり、単一のカメラによる顔画像の撮像時に被認証者の顔部分を照明するもので、被認証者の身長方向に沿って複数の照明灯を設け、カメラで取得した被認証者の顔画像に基づいて被認証者の身長を推定し、この推定した被認証者の身長に応じて複数の照明灯を選択的に点灯制御し、認証成功率を高めようとするものである。
【特許文献1】特開2004−30156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の顔認証装置では、カメラが撮影した顔画像を液晶モニターに表示し、被認証者が自分の顔が適正に写っているかを自ら確認するようになっている場合が多いが、この液晶表示装置は高価であり、これが従来の顔認証装置の普及の妨げになっていた。
【0005】
また、従来の顔認証装置では、前記特許文献1記載の顔認証装置のようにカメラが1台であるため、被認証者の身長の高低により適正な状態の顔画像が得られない場合が生じる可能性がある。このため、従来は広角レンズを使用して撮影範囲を広くとるのが一般的であったが、この場合、カメラと顔のアングルが身長によって大きく変動し、認証精度に悪影響が生じていた。
【0006】
また、比較的狭い場所に設置した1台のカメラで被認証者の身長の高低の広い範囲をカバーするためには、カメラを比較的低い位置でやや上向きに設置する場合が多いが、この場合には背の高い人はやや下向き加減でカメラを視認することとなり、カメラは顔を下から見上げる状態となる。このような場合には、顔を正面から撮影した登録画像との照合に精度上の支障が生じる場合があり、また下から見上げた画像では顔認証時の顔の特徴認識に問題が生じ、認証精度に悪影響を及ぼす場合があった。
【0007】
そこで、カメラを被認証者の身長に合せて上下に移動可能とした顔認証装置もあるが、機構が複雑で高価になり、信頼性も低くなってしまう。
【0008】
本発明は、顔画像を移すモニターや可動部分がなく、構成が簡単で価格を適正に設定でき、しかも被認証者の顔をできる限り正面から撮像できるために認証精度も高く、またモニターがないにも係わらず被認証者が自分の顔の写り具合を自ら確認できる顔認証装置及びこれに使用される顔認証端末を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載された顔認証装置は、撮像手段で被認証者の顔を撮像して顔画像を取得し、記憶手段に予め蓄積した複数の登録顔画像と前記顔画像とを比較し、両者が一致したと判断した場合に前記被認証者が前記登録顔画像を登録した所定の人物の一人であると認定して認証信号を出力する顔認証装置において、
前記被認証者が対面する表面側が鏡面であるハーフミラーと、
前記ハーフミラーの裏面側に上下に間隔をおいて撮像範囲が上下で重なるように配置され、前記ハーフミラーを介して前記被認証者の顔を撮像する複数の撮像手段と、
前記複数の撮像手段に前記被認証者の顔を撮像させるとともに、前記複数の撮像手段によって得られた複数の顔画像の中から前記登録顔画像と比較するのに適した顔画像を選択して前記登録顔画像との比較を行う制御手段と、
を具備することを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載された顔認証装置は、請求項1記載の顔認証装置において、前記撮像手段が、前記ハーフミラーの裏面に接して設けられたことを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載された顔認証装置は、請求項1記載の顔認証装置において、設置スペースによって定まる前記被認証者と前記ハーフミラーの表面との間隔に応じ、前記撮像手段の焦点距離に合せて、前記撮像手段を前記ハーフミラーの裏面から所望の間隔だけ離して設けたことを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載された顔認証装置は、請求項1記載の顔認証装置において、前記ハーフミラーの裏面側の全体を遮光するとともに、前記ハーフミラーを保持するとともに前記撮像手段を取り付けるパネル部材を有することを特徴としている。
【0013】
請求項5に記載された顔認証装置は、請求項1記載の顔認証装置において、前記撮像手段の上下方向の位置を調節自在としたことを特徴としている。
【0014】
請求項6に記載された顔認証装置は、請求項1記載の顔認証装置において、互いに区画されるべき第1のエリアと第2のエリアとの境界に設置されて両エリア間の入退出を管理するセキュリティーゲートに近接して前記第1又は第2のエリアに設けられ、前記認証信号が出力された場合に前記セキュリティーゲートを通過可能とするように構成されたことを特徴としている。
【0015】
請求項7に記載された顔認証端末は、
撮像手段で被認証者の顔を撮像して顔画像を取得し、記憶手段に予め蓄積した複数の登録顔画像と前記顔画像とを比較し、両者が一致したと判断した場合に前記被認証者が前記登録顔画像を登録した所定の人物の一人であると認定して認証信号を出力する顔認証装置に用いられる顔認証端末において、
前記被認証者が対面する表面側が鏡面であるハーフミラーと、
前記ハーフミラーの裏面側に上下に間隔をおいて撮像範囲が上下で重なるように配置され、前記ハーフミラーを介して前記被認証者の顔を撮像する複数の撮像手段と、
を具備することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の顔認証装置によれば、被認証者からは撮像手段が見えないので、被認証者はある特定の位置にある撮像装置に無理に合せようとして極端な姿勢をとったり顔を無理に上向き又は下向きにすることがない。すなわち、被認証者は、ハーフミラーの鏡面に映った自分の顔を正面から自然な姿勢で視認するだけであり、このような被認証者の顔は高さ方向に間隔をおいて配置された複数の撮像装置のいずれかによって適正に撮像することができる。従って、被認証者の身長の高低に係わらず、得られる被認証者の顔画像の質は常に高く、登録画像と比較するのに適しており、従って登録画像との比較照合も迅速かつ適正に行われ、判断上のエラーも少ない。
【0017】
請求項2記載の顔認証装置によれば、請求項1記載の顔認証装置において、撮像手段がハーフミラーの裏面に接しているのでハーフミラーの裏面側において不要な光が撮像手段に入り込むおそれが少ない。
【0018】
請求項3記載の顔認証装置によれば、請求項1記載の顔認証装置をセキュリティーゲート内の壁面に取り付けた例のように、設置スペースが狭くてハーフミラーと反対側の壁との間隔を十分にとれない場合には、被認証者とハーフミラーの表面との間隔に応じ、撮像手段の焦点距離に合せて撮像手段をハーフミラーの裏面から所望の間隔だけ離して設けることができるので、上記のような狭い設置スペースにも問題なく配置することができる。
【0019】
請求項4記載の顔認証装置によれば、請求項1記載の顔認証装置において、ハーフミラーを保持するパネル部材によりハーフミラーの裏面側の全体が遮光されるので撮像手段に不要な光が入り込むことがない。
【0020】
請求項5記載の顔認証装置によれば、請求項1記載の顔認証装置において、撮像手段の上下方向の位置を調節して適正な顔画像が得られる被認証者の身長の範囲を任意に調整・設定することができる。
【0021】
請求項6記載の顔認証装置によれば、セキュリティーゲートの互いに区画されるべき第1エリアと第2エリアの境界に請求項1記載の顔認証装置を設置すれば、登録された人物だけを認証して認証信号を出力し、セキュリティーゲートを開可能としてき通行を許可する手段として有効に利用することができる。
【0022】
請求項7に記載された顔認証端末によれば、被認証者からは撮像手段が見えないので、被認証者はある特定の位置にある撮像装置に無理に合せようとして極端な姿勢をとったり顔を無理に上向き又は下向きにすることがない。すなわち、被認証者は、ハーフミラーの鏡面に映った自分の顔を正面から自然な姿勢で視認するだけであり、このような被認証者の顔は高さ方向に間隔をおいて配置された複数の撮像装置のいずれかによって適正に撮像することができる。従って、被認証者の身長の高低に係わらず、得られる被認証者の顔画像の質は常に高く、登録画像と比較するのに適しており、従って登録画像との比較照合も迅速かつ適正に行われ、判断上のエラーも少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施の形態につき添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の顔認証装置が適用されるセキュリティーゲートの正面図、図2は同平面図、図3は同左側面図、図4は扉を閉止した状態の同斜視図、図5は扉を開いて顔認証装置の一部が見える状態にある斜視図、図6は第1の例の顔認証装置の(a)正面図及び(b)縦断面図、図7は第1の例の顔認証装置による顔認証の手順を示す流れ図、図8は第2の例の顔認証装置の正面図、図9は第2の例の顔認証装置の縦断面図、図10は図8のI−I切断線における拡大断面図、図11は第2の例の顔認証装置の背面側から見た撮像装置の拡大図である。
【0024】
(1)本発明の顔認証装置が適用されるセキュリティーゲート(図1〜図5)
図1乃至図5に示すセキュリティーゲート1は、互いに区画されるべき第1のエリアと第2のエリアとの境界に設置されて両エリア間の人の入退出を管理する装置であり、例えば建物の入口に設けられて建物入口での人の出入りを管理するために用いられる。
【0025】
セキュリティーゲート1は、円筒を縦2分割にした形状の周壁筐体部2,2の間に、矩形箱型の中間筐体部20を挟んで着脱可能に一体化したユニット式のゲート筐体4を本体としている。該ゲート筐体4の2つの半円筒状の周壁筐体部2,2には、それぞれ全高にわたって開口3が形成されている。各開口3には、該開口3を閉止しうる大きさの円筒周面形状であって、ゲート筐体4の周壁筐体部2に沿って互いに反対方向に移動自在とされた一対の扉5,5が設けられている。この扉5は透明な樹脂製である。
【0026】
そして、図5の扉を開いた状態に示すように、2つの半円筒状の周壁筐体部2,2の間にある矩形箱型の中間筐体部20の内面側には、本セキュリティーゲート1において入退室を管理する顔認証装置10の顔認証端末11(端末パネル)が設けられている。
【0027】
まず、人が一方の周壁筐体部2の扉5の外に接近すると、図示しないセンサが当該人物を検出し、又は当該人物がゲート筐体4の外に設けられたスイッチを押すことにより、その扉5,5が開かれる。その人物は一方の周壁筐体部2の内部に入ることができるが、周壁筐体部2の内部は狭いので通常は1人しか入ることができず、一人ずつセキュリティ確認をして通過を許可するか否か判断するようになっている。
【0028】
仮に2人以上が入室したとしても(共連れと呼ぶ)、本例では2つの半円筒状の周壁筐体部2,2の部分及びそれらの間にある矩形の中間筐体部20ごとに、それぞれの床板の下にロードセルが設けられて内部に入った者の重量を測定できるようになっており、入室後の重量測定から2人以上が入室したと制御手段が判断した場合には、被認証者の顔認証装置の使用の有無に関わらず、反対側の周壁筐体部2の扉5をロックして他方エリアYへの通過を許さず、また必要に応じて入り口側の周壁筐体部2の扉5もロックして最初のエリアXに戻れないようにして内部に閉じ込め、所定部署に通報するなどの措置をとる。入室が適正であれば、被認証者が室内で顔認証装置により認証を得る段階に移行することができる。
【0029】
(2)第1例の顔認証装置(図6、図7)
第1例の顔認証装置の構成を図6及び図7を参照して説明する。
この顔認証装置は、前記中間筐体部20の室内側の壁パネル20aの一方に矩形の開口12を設け、この開口12に取り付けられるものである。図6に示すように、壁パネル20aの開口12の裏面側(被認証者の存在する壁パネル20aの表面側と反対側)には、その縁部に沿って取付け具13が設けられ、開口12よりも一回り大きく開口12と略同等形状のハーフミラー14が開口12を閉塞するように保持されている。ハーフミラー14は、被認証者が対面して自らを視認する鏡面(表面側)がセキュリティーゲート1の室内側にあり、半透明面(裏面側)が筐体の壁パネル20aの内側にある。本例のハーフミラー14は幅15cm、高さ86cmであり、下辺が床面から112cmの位置に来るように配置される。
【0030】
ゲート筐体4の壁パネル20a内には、ハーフミラー14の縦中心線に平行に、ハーフミラー14の裏面との間に適当な間隔をおいて、支持柱15が固定されている。その支持柱15には、適当な間隔をおいて撮像手段としてのカメラ16が複数台(本例では3台)取り付けられている。各カメラ16のレンズはハーフミラー14の裏面に微小間隔をおいて対面しており、ハーフミラー14の裏面側において反射した不要な光がカメラ16のレンズに入射することはない。なお、カメラ16のレンズの先端に弾性材料製からなる筒型の遮光部材を設け、これがハーフミラー14の背面側に接するようにすれば、遮光はより確実になる。
【0031】
ここで、カメラ16の配置と間隔は任意であるが、この顔認証装置10を利用する被認証者達の身長の範囲を連続的にカバーし、身長の高低に係わらずに好適な画質の顔画像がえられるよう、次のように設定されている。
【0032】
まず本例では、複数のカメラ16を写野が重なるように配置しているので、これらカメラ16の画角は従来の顔認証装置のカメラのような広角である必要はなく、標準レンズ程度の画角で十分であり、このため各カメラ16で得られる顔画像は広角レンズを用いた場合のように不必要に歪むことがなく、顔認証において特徴データ抽出のポイントとなる顔の特徴の把握にも問題は生じない。
【0033】
次に、本例の3つのカメラ16は、この顔認証装置10を利用する被認証者達の身長の範囲をカバーするような高さに配置されるとともに、撮像範囲に不連続部分が生じないように上下に隣接して並ぶカメラ16の画角が重なるような適当な間隔で配置される。
【0034】
具体的には、このカメラ16は焦点距離f=2.5mmであり、焦点から20cmの距離における撮影可能範囲の高さが36cmである。各カメラ16の上下間隔を25cmとし、床からの高さで最も下のカメラ16から順に130cm、155cm、180cmの各位置に配置する。この配置によれば、3つのカメラ16の写野に途切れはなく上下に重なって連続し、被認証者の顔17の位置が112cmから198cmまで良好に撮影可能である。
【0035】
本例の顔認証装置10によれば、被認証者はハーフミラー14の向こう側にあるカメラ16が見えないので、被認証者はある特定の位置にあるカメラ16に自らの顔の向きを無理に合せようとして極端な姿勢をとることがなく、また顔を無理に上向き又は下向きにすることもない。すなわち、被認証者は、ハーフミラー14の鏡面に映った自分の顔を正面から自然な姿勢で視認するだけであり、このような被認証者の顔は高さ方向に間隔をおいて配置された複数のカメラ16のいずれかによって適正に撮影される。従って、被認証者の身長の高低に係わらず、得られる被認証者の顔画像は正面から撮影された(又はそれに近い)質の高いものであり、顔の特徴部分である目等を顔認証の基本情報として識別する際に誤差が入りにくいという点において登録画像と比較するのに適しており、従って登録画像との比較照合も迅速かつ適正に行われ、判断上のエラーも少ない。
【0036】
被認証者の撮影とその後のデータの処理は、例えば図7に示すフローチャートの手順で行われる。この手順は、本顔認証装置10の図示しない制御手段が実行する。まず、被認証者が個人識別手段としてのIDカードをカードリーダ18に通し、又は暗唱番号を入力する等の行為を行うと、制御手段が予備的な本人確認を行ない、その結果が正しければ、顔認証を開始する(S1)。
【0037】
顔認証が開始されると、被認証者の顔の高さに係わらず、本例の3台のカメラ16(A〜C)は自動的に次々と(又は同時に)撮影を行い(S2〜S4)、各カメラ16によって得られた被認証者の3つの画像データは、制御手段において比較用の1画面内に並べて合成される(S5)。
【0038】
次に、1画面中に合成された画像の中から顔画像を適当な順序で検索し(S6)、顔が検出されなければ3台のカメラ16による撮影は適切に行われなかったこととなり、認証作業は終了する(S7)。顔が検出されれば、最初に検出された顔画像から目を検索する(S8)。目が検出されなければ再び顔画像の検索に戻り、前記順序に従って次の顔画像を検出し、その顔画像において目を検出する(S9、S6)。目を検出した場合にはその顔画像が登録された顔画像と比較するのに適しているかをチェックする(S10)。不適切であれば認証作業を終了し(S11)、適切と判断されれば以下の顔照合段階前のデータ処理のステップに進む(S11〜S14)。
【0039】
すなわち、カメラ16で撮影した顔画像の少なくとも一つが登録画像との比較に適していれば、その比較に先立ち、当該顔画像を収縮・膨張処理し(S12)、尖鋭化処理し(S13)、さらに登録された顔画像データと比較するための顔特徴データ抽出を行う(S14)。
【0040】
そして、被認証者の顔をカメラ16で撮影して得た顔画像データから生成した顔特徴データと、本装置に予め登録された顔画像データの顔特徴データとを照合する。ここで、比較の手法であるが、一つには、カメラ16から取得されるライブ画像と、本装置に予め登録された被認証者の特徴データを比較し、別途設定されたしきい値を越えた場合に本人として同定する手法がある。
【0041】
また、カメラ16から取得されるライブ画像と、本装置に予め登録されたすべての顔特徴データを比較し、特徴の一致度が別途設定されたしきい値を越えた場合に、その最高の一致度を示した被認証者を本人として同定する手法もある。
【0042】
いずれの顔認証手法によるとしても、撮像した被認証者の顔画像が、本装置に予め登録された人物の顔画像と一致するものと判断されれば、入り口側の周壁筐体部2の扉5がロックされると同時に出口側の周壁筐体部2の扉5が開放され、セキュリティ確認された当該人物は希望の反対側のエリアYに行くことができる。
【0043】
また、本例においては、カメラ16がハーフミラー14の裏面に接しているので、ハーフミラー14の裏面側において不要な光が撮像手段に入り込むおそれが少ないという効果がある。
【0044】
さらに、本例では、セキュリティーゲート1内のスペースが狭いために、ゲート内においてハーフミラー14と反対側の壁との間隔を十分にとれない場合には、被認証者とハーフミラー14の表面との間隔に応じ、カメラ16の焦点距離に合せて、カメラ16をハーフミラー14の裏面から所望の間隔だけ離して設けることができる。例えば、図6(a)中に想像線にて示すように、セキュリティーゲート1の筐体の内部空間の余裕に合せて支持柱15及びカメラ16の配置をハーフミラー14の裏面から後方に所望距離だけ後退させて配置することもできるので、上記のような狭い設置スペースにも問題なく配置することができる。
【0045】
(3)第2例の顔認証装置(図8〜図11)
第2例の顔認証装置30の主として顔認証端末31の構成を図8〜図11を参照して説明する。
この顔認証装置30は、第1の例と基本的な構造は同一であり、また第1例と同様に図1〜図5に示した前記セキュリティーゲート1のセキュリティー制御装置として使用するものであることも同様である。以下、前記セキュリティーゲート1のゲート筐体4内に取り付けられる本例の顔認証装置30の顔認証端末31の構造について説明する。
【0046】
前記セキュリティーゲート1の中間筐体部20の室内側の壁パネル20aは、中空角形の柱材32によって保持されており、この壁パネル20aには縦長の矩形の開口32が設けられている。図10に示すように、壁パネル20aの開口32の裏面側(被認証者が存在しない側)には、その縁部に沿ってパネル部材33により開口12と同等形状のハーフミラー34が開口32を閉塞するように保持されている。図10に示すように、このパネル部材33は、箱状の中央部40と両側に設けられた支持フランジ部41とを有する水平方向の断面形状が、上下方向に同形状で連続した構造のパネル体である。前記ハーフミラー34は支持フランジ部41の段部にその左右両縁を支持されており、該支持フランジ部41が壁パネル20aの開口32の周縁裏側に固定手段で固定されることにより、ハーフミラー34が壁パネル20aの開口32に嵌まっている。
【0047】
ハーフミラー34の背面側と前記箱状の中央部40との間には間隙があり、前記箱状の中央部40にカメラ16の本体が取り付けられ、このカメラ16の本体から前方に突出したレンズがハーフミラー34の背面側に概ね接した状態となっている。すなわち、パネル部材の中央部40には、縦方向に所定の間隔をおいてレンズの挿入孔42が3箇所に形成されており、各カメラ16は、レンズを挿入孔42から中央部40の内部に挿入してハーフミラー34の背面側に対面させた状態で本体を中央部40の外面に当接させており、該本体は留め具43によって上下方向に支持された状態で中央部40に取り付けられている。挿入孔を縦長とし、留め具43を中央部40に対して横方向に取り付けることとすれば、カメラ16の取付け位置を縦方向について調整する構造とすることもできる。
【0048】
図9に示すようにカメラ16は3台(A〜C)であり、上下方向について写野が重なるように配置されている点は第1の実施形態と同様であり、本例では特に各部の寸法等は示さないが、使用が予定される被認証者の身長の範囲に応じて適宜に設定される。
【0049】
図8及び図9において、壁パネル20aに設けられたハーフミラー34の下方には、被認証者が自己所有のカードを読み取らせるためのカードリーダ38が設けられており、その下方にはカードリーダ38によるカードの読み取りを開始させる等のためのタッチスイッチ39が設けられている。
【0050】
本例によれば、特にカメラ16のレンズ及びハーフミラー34の背面側の全体がパネル部材33の中央部40で覆われており、このパネル部材33が遮光部材として働くので、ハーフミラー34の背面側から光が入ってレンズに入射することがなく、背面側からの光で被認証者の撮影が妨げられるおそれが少ない。
なお、本例における制御手段の構成及び制御手段における認証の手順等は第1の例と同様であるので、第1の例における記載を援用してその詳細な説明を省略する。
【0051】
(4)各実施形態の効果等
以上説明した本発明の各実施形態によれば、次のような効果が得られる。
1)ハーフミラー34の背後に縦方向に所定間隔をおいて配置した複数台(各例では3台)のカメラ16により、身長の低い者から高い者まで、又は子供から大人までを被認証者としてカバーすることができる。
【0052】
2)複数のカメラ16で同時又は略同時に撮影して得た複数の画像の中から、認証に必要な顔の主要部分が写っており、かつなるべく正面を向いている最も画質の良い顔画像を制御手段が自動的に選定することができるので、認証の精度が高く、信頼性が高い。
【0053】
3)複数台のカメラ16を縦方向に所定間隔をおいて配置したので、カメラ16には広角レンズを使用する必要がなく、被認証者の身長に係わらず、被認証者の顔に対するカメラ16のアングルが直角に近くなり、得られる顔画像の歪みが小さくなって画質が向上し、認証精度が高くなる。
【0054】
4)カメラ16はハーフミラー34の背後に配置され、被認証者からは見えないので、機械部分が露出しない簡素な外観となり、デザイン的にも優れた製品となった。
【0055】
5)被認証者が自己の顔画像の写り具合を確認するための手段として、従来の技術で必要とされていた高価な液晶表示モニターを使用しないので、大幅なコストダウンが実現できた。
【0056】
6)前記セキュリティーゲート1のようなコンパクトな構成の設置領域においても、カメラ16の焦点距離に合わせてハーフミラー34とカメラ16との間隔を適宜に広く設定することで、ハーフミラー34と被認証者の間隔が狭くても顔全体を撮影できるように構成できる。
【0057】
なお、以上説明した各実施形態では、本発明に係る顔認証装置及び顔認証端末を、前記セキュリティーゲート1のようなコンパクトな構成の出入退管理装置の認証装置及びその端末として適用する例を示したが、もちろん本発明の適用範囲はこれに限定されるものではなく、建物の出入り口や建物内の扉における出入退管理に広く適用できる他、あらゆる用途における本人確認手段として広く応用可能であることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、本発明が適用されるセキュリティーゲートの正面図である。
【図2】図2は、本発明が適用されるセキュリティーゲートの平面図である。
【図3】図3は、本発明が適用されるセキュリティーゲートの右側面図である。
【図4】図4は、本発明が適用されるセキュリティーゲートの扉が閉止された状態での斜視図である。
【図5】図5は、本発明が適用されるセキュリティーゲートの扉が開放された状態での斜視図である。
【図6】図6は、本発明の第1実施形態の顔認証装置乃至顔認証端末の構成を示す(a)断面図及び(b)正面図である。
【図7】図7は、本発明の第1実施形態の顔認証装置における制御手順を示す流れ図である。
【図8】図8は、本発明の第2実施形態の顔認証装置乃至顔認証端末の正面図である。
【図9】図9は、本発明の第2実施形態の顔認証装置乃至顔認証端末の縦断面図である。
【図10】図10は、図8のI−I切断線における第2実施形態の顔認証装置乃至顔認証端末の拡大横断面図である。
【図11】図11は、第2実施形態の顔認証装置乃至顔認証端末におけるカメラ部分の拡大背面図である。
【符号の説明】
【0059】
1…セキュリティーゲート1
10,30…顔認証装置
11,31…顔認証端末
12,32…開口
13…取付け具
14,34…ハーフミラー
16…撮像手段としてのカメラ
17…被認証者の顔
33…パネル部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段で被認証者の顔を撮像して顔画像を取得し、記憶手段に予め蓄積した複数の登録顔画像と前記顔画像とを比較し、両者が一致したと判断した場合に前記被認証者が前記登録顔画像を登録した所定の人物の一人であると認定して認証信号を出力する顔認証装置において、
前記被認証者が対面する表面側が鏡面であるハーフミラーと、
前記ハーフミラーの裏面側に上下に間隔をおいて撮像範囲が上下で重なるように配置され、前記ハーフミラーを介して前記被認証者の顔を撮像する複数の撮像手段と、
前記複数の撮像手段に前記被認証者の顔を撮像させるとともに、前記複数の撮像手段によって得られた複数の顔画像の中から前記登録顔画像と比較するのに適した顔画像を選択して前記登録顔画像との比較を行う制御手段と、
を具備することを特徴とする顔認証装置。
【請求項2】
前記撮像手段が、前記ハーフミラーの裏面に接して設けられたことを特徴とする請求項1記載の顔認証装置。
【請求項3】
設置スペースによって定まる前記被認証者と前記ハーフミラーの表面との間隔に応じ、前記撮像手段の焦点距離に合せて、前記撮像手段を前記ハーフミラーの裏面から所望の間隔だけ離して設けたことを特徴とする請求項1記載の顔認証装置。
【請求項4】
前記ハーフミラーの裏面側の全体を遮光するとともに、前記ハーフミラーを保持するとともに前記撮像手段を取り付けるパネル部材を有することを特徴とする請求項1記載の顔認証装置。
【請求項5】
前記撮像手段の上下方向の位置を調節自在としたことを特徴とする請求項1記載の顔認証装置。
【請求項6】
互いに区画されるべき第1のエリアと第2のエリアとの境界に設置されて両エリア間の入退出を管理するセキュリティーゲートに近接して前記第1又は第2のエリアに設けられ、前記認証信号が出力された場合に前記セキュリティーゲートを通過可能とするように構成されたことを特徴とする請求項1記載の顔認証装置。
【請求項7】
撮像手段で被認証者の顔を撮像して顔画像を取得し、記憶手段に予め蓄積した複数の登録顔画像と前記顔画像とを比較し、両者が一致したと判断した場合に前記被認証者が前記登録顔画像を登録した所定の人物の一人であると認定して認証信号を出力する顔認証装置に用いられる顔認証端末において、
前記被認証者が対面する表面側が鏡面であるハーフミラーと、
前記ハーフミラーの裏面側に上下に間隔をおいて撮像範囲が上下で重なるように配置され、前記ハーフミラーを介して前記被認証者の顔を撮像する複数の撮像手段と、
を具備することを特徴とする顔認証端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−79791(P2007−79791A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−265330(P2005−265330)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(594128832)日本原子力防護システム株式会社 (7)
【Fターム(参考)】