説明

顕在捲縮糸

【課題】高次加工して、衣服などに使用する際、フラットな表面感、ストレッチ性に優れた布帛を得られる顕在捲縮糸を提供する。
【解決手段】構成成分の一方がポリエチレンテレフタレートを主成分とし、他方の構成成分がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするサイドバイサイド型または偏心芯鞘型であるポリエステル系複合繊維からなる顕在捲縮糸であって、以下の(1)から(4)を満足することを特徴とする顕在捲縮糸。
(1)伸縮伸長率が100%以上
(2)残留トルク数が10T/m以下
(3)単フィラメントの捲縮数が25山/25mm以上
(4)熱水収縮率が10%以下

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小さい曲率半径からなるヘリカルクリンプ構造を有する顕在捲縮糸であり、フラットな表面感、ストレッチ性に優れた布帛を得られる顕在捲縮糸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、2種の異成分または異特性ポリマーを同一ノズル孔から紡糸し、それらがサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に貼り合わされたポリエステル系複合繊維が多数提案されている(特許文献1、2参照)。近年では、特にストレッチ性の優れたものを得るために、ポリマーのうち少なくとも1成分がポリトリメチレンテレフタレートであるポリエステル系複合繊維についても多数提案されている(特許文献3、4参照)。
【0003】
これらは熱処理を施すことにより2種のポリマの熱収縮差による不均一構造が強調され、高収縮ポリマが内側、低収縮ポリマが外側になる定曲率のヘリカルクリンプが生じ捲縮が発現する。しかし、これら発明では、布帛にストレッチ性を付与することはできるが、単フィラメントのヘリカルクリンプが重なり合った部分が布帛化したときにイラツキ感として生じ、外観品位を著しく悪化させることがしばしば指摘されてきた。イラツキ感を改善する方法として、ポリエステル系複合繊維を撚糸しヘリカルクリンプの重なり合いによる糸長手方向の太さ斑を改善する方法も提案されている(特許文献5参照)。この方法であれば、工業的にコストがかかるほか、糸にビリやスナールが発生し高次通過性や布帛化した時の斜向などが問題となりやすい。これら問題を解決すべく、弛緩熱処理により実質的に残留トルクがゼロであり、ヘリカルクリンプの重なりを分散させた捲縮糸についても提案されている(特許文献6参照)。しかし、このような方法であると弛緩熱処理の際、繊維の内部的な歪みが緩和され、伸縮伸長率が大幅に低減し、布帛化した時に所望のストレッチ感が得られないという課題が残った。
【特許文献1】特開昭52−128420号公報
【特許文献2】特開昭51−116220号公報
【特許文献3】特開平11−81048号公報
【特許文献4】特開2001−40588号公報
【特許文献5】特開2005−105497号公報
【特許文献6】特開2006−052493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、高次加工して衣服などに使用すると、フラットな表面感、ストレッチ性に優れた布帛が得られる顕在捲縮糸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の顕在捲縮糸は、次の構成を有する。
すなわち、構成成分の一方がポリエチレンテレフタレートを主成分とし、他方の構成成分がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするサイドバイサイド型または偏心芯鞘型であるポリエステル系複合繊維からなる顕在捲縮糸であって、以下の(1)から(4)を満足することを特徴とする顕在捲縮糸である。
(1)伸縮伸長率が100%以上
(2)残留トルク数が10T/m以下
(3)単フィラメントの捲縮数が25山/25mm以上
(4)熱水収縮率が10%以下
【発明の効果】
【0006】
本発明の顕在捲縮糸は、高次加工して衣服などに使用すると、フラットな表面感、ストレッチ性に優れた布帛が得られる顕在捲縮糸を提供することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の顕在捲縮糸は、構成成分の一方がポリエチレンテレフタレートを主成分とし、他方の構成成分がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするサイドバイサイド型または偏心芯鞘型であるポリエステル系複合繊維からなる顕在捲縮糸であって、以下の(1)から(4)を満足することを特徴とする顕在捲縮糸である。
(1) 伸縮伸長率が100%以上
(2)残留トルク数が10T/m以下
(3)単フィラメントの捲縮数が25山/25mm以上
(4)熱水収縮率が10%以下
以下、図面を参照しながら本発明の顕在捲縮糸を説明する。
【0008】
図1は、本発明の顕在捲縮糸の一例を示す概略側面図である。
【0009】
本来、少なくとも2種のポリエステル成分がサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に貼り合わされたポリエステル系複合繊維は潜在捲縮糸もしくは半顕在捲縮糸などと呼ばれ、熱処理を施すことにより、高収縮成分と低収縮成分の熱収縮差が発生し、高粘度側が大きく収縮するために単繊維内で歪みが生じて3次元コイル状のヘリカルクリンプ(イ)が発現する。本発明の顕在捲縮糸(ロ)はポリエステル系複合繊維に緊張熱処理を施し、ヘリカルクリンプ(イ)を発現させ、顕在化したものである。緊張熱処理の手段としては、ポリエステル系複合繊維を常法によりホットピンもしくは熱板などのヒーターを用いてガラス転移点以上で熱脆化しない75〜190℃程度の温度で緊張熱処理を施せばよい。
【0010】
本発明の顕在捲縮糸の伸縮伸長率は100%以上である。伸縮伸長率が100%未満であると布帛化したときに所望のストレッチ感が得られない。一方、伸縮伸長率の上限は、特に制限されるものでないが、一般的には230%程度となる。
本発明の顕在捲縮糸の残留トルクは10T/m以下である。このため、伸縮性を向上するために実ヨリもしくは仮ヨリなど、糸にトルクが生じるような加工は施してはならない。糸がトルクを持たないためビリを発生することもなく編織後の生地はトルクを持たず、斜向などの問題も発生しない。
【0011】
本発明の顕在捲縮糸の単フィラメントの捲縮数が25山/25mm以上である。顕在捲縮糸において、良好な伸縮性および布帛化した時、美しい表面感を得るには、微細なヘリカルクリンプが発現することが不可欠である。すなわち、単フィラメントの捲縮数が25山/25mm以上であることが必要である。一方、単フィラメントの捲縮数の上限は、特に制限されるものでないが、一般的には80山/25mm程度となる。
【0012】
本発明の顕在捲縮糸は熱水収縮率が10%以下である。熱水収縮率が10%より大きくなると、編織後の精錬、染色などの工程で生地の収縮量が大きくなり、布帛表面にシボが発生し外観品位が悪くなったり、生地厚な布帛となる。
【0013】
本発明で用いるポリエステル系複合繊維は構成成分の一方がポリエチレンテレフタレートを主成分とし、他方の構成成分がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするサイドバイサイド型または偏心芯鞘型であるポリエステル系複合繊維である。
【0014】
適度なキックバック性、ストレッチ性を得るために、それぞれの成分の極限粘度が異なり、低粘度側のポリエステルの極限粘度[ηb]と高粘度側のポリエステル極限粘度[ηa]の極限粘度比([ηb]/[ηa])は0.3〜0.8であることが好ましい。
【0015】
このように極限粘度の異なる二つの重合体が貼り合わされることによって、紡糸・延伸時に高粘度側に応力が集中するため、二成分間で内部歪みが異なる。そのため、延伸後の弾性回復率差および布帛の熱処理工程での熱収縮差により高粘度側が大きく収縮するために単繊維内で歪みが生じて3次元コイル状のヘリカルクリンプが発現する。このヘリカルクリンプの径および単フィラメントの捲縮数は、高収縮成分と低収縮成分との収縮差(弾性回復率差を含む)によって決まるといってもよく、収縮差が大きいほどヘリカルクリンプの径が小さく、単フィラメントの捲縮数が多くなる。ストレッチ素材としてコイル捲縮は、ヘリカルクリンプの径が小さいこと、単フィラメントの捲縮数が多いこと(すなわち、伸長特性に優れ、見映えがよいこと)、ヘリカルクリンプの耐へたり性がよいこと(伸縮回数に応じたヘリカルクリンプのへたり量が小さく、ストレッチ保持性に優れること)が好ましい。さらに、ヘリカルクリンプの伸縮特性は、低収縮成分を支点とした高収縮成分の伸縮特性が支配的となるため、高収縮成分に用いる重合体には高い伸長性と回復性を有することが好ましく、低収縮成分としてポリエチレンテレフタレート、高収縮成分としてポリトリメチレンテレフタレートを配すると良い。
【0016】
ポリエステル系複合繊維に用いられるポリエチレンテレフタレートとしては、エチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とする重合体成分からなるものである。すなわち、テレフタル酸を主たる酸成分とし、エチレングリコールを主たるグリコ−ル成分として得られるポリエステルが好ましい。他のエステル結合を形成可能な共重合成分が20モル%以下の割合で含まれていてもよく、好ましくは10モル%以下の割合で含まれる。共重合可能な化合物としては、イソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸類、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ハイドロキノン、ビスフェノールAなどのジオール類を用いることができる。また、必要に応じて、艶消し剤となる二酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤としてヒンダードフェノール誘導体、着色顔料などを添加してもよい。
【0017】
ポリエステル系複合繊維に用いられるポリトリメチレンテレフタレートとしては、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とする重合体成分からなるものである。すなわち、テレフタル酸を主たる酸成分とし、1,3−プロパンジオールを主たるグリコ−ル成分として得られるポリエステルが好ましい。他のエステル結合を形成可能な共重合成分が20モル%以下の割合で含まれていてもよく、好ましくは10モル%以下の割合で含まれる。共重合可能な化合物として、イソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオール類を用いることができる。また、必要に応じて、艶消し剤となる二酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤としてヒンダードフェノール誘導体、着色顔料などを添加してもよい。
【0018】
ポリトリメチレンテレフタレートは、代表的なポリエステル長繊維であるポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートと同等の力学的特性や化学的特性を有しつつ、伸長回復性がきわめて優れている。これは、ポリトリメチレンテレフタレートの結晶構造においてアルキレングリコール部のメチレン鎖がゴーシュ−ゴーシュ構造(分子鎖が90度に屈曲)であること、さらにはベンゼン環同士の相互作用(スタッキング、並列)による拘束点密度が低く、フレキシビリティーが高いことから、メチレン基の回転により分子鎖が容易に伸長・回復するためと考えている。
【0019】
本発明において、コイル状捲縮を発現させ、編織物を形成した際に所望の伸縮性を得る観点から、ポリトリメチレンテレフタレートの極限粘度は1.0以上であるのが好ましく、1.2以上であるのがより好ましい。
【0020】
本発明で使用されるポリエステル系複合繊維の単繊維断面形状はサイドバイサイド型または偏心芯鞘型とするものである。断面形状がサイドバイサイド型または偏心芯鞘型でないと、糸条に熱が付与された際に、コイル状のヘリカルクリンプが発現せず、糸条に伸縮性を付与することができない。
【0021】
また、ポリエステル系複合繊維におけるポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレートの重量比率は、製糸性および繊維長さ方向のコイルの寸法均質性の観点から30/70以上70/30以下の範囲である。好ましくは35/65以上65/35以下、より好ましくは40/60以上60/40以下の範囲である。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明がこれら実施例により限定されるものではない。
【0023】
なお、実施例中の極限粘度[η]、伸縮伸長率(%)、残留トルク数(T/m)、単フィラメントの捲縮数(山/25mm)、熱水収縮率(%)は次の方法で求めた。
【0024】
極限粘度[η]
オルソクロロフェノール10mlに対し試料0.10gを溶解し、温度25℃においてオストワルド粘度計を用いて測定した。
【0025】
伸縮伸長率(%)
1.8×10−3cN/デシテックス荷重下で、 周長1mの手回し検尺器にて10回巻のカセを作り、これを1.8×10-3cN/デシテックスの荷重をかけた状態で、90℃、20分間の熱水処理をする。次いで、荷重を外し、1昼夜風乾する。
【0026】
1.8×10−3cN/デシテックス荷重下での試料の長さを測定する(L0)。その後、88.3×10−3cN/デシテックスの荷重を加え、2分後に試料の長さを測定する(L1)。そして下記式にて伸縮伸長率を算出する。
【0027】
伸縮伸長率(%)=[(L1−L0)/L0]×100
残留トルク数(T/m)
1mの長さにサンプリングした捲縮糸の両端を横方向に固定し、捲縮糸の中央に4.4×10−3cN/デシテックスの荷重を吊した後、加工糸の両端を徐々に近づけ、両端を完全に一致させる。一致させたときに、加工糸どうしが撚合った数を50cmあたりのトルク撚数として測定し、1m当たりのトルク撚数に換算し、残留トルク撚数(T/m)とする。
【0028】
単フィラメントの捲縮数(山/mm)
サンプリングした捲縮糸より単糸を取り出し、1.8×10−3cN/デシテックスの荷重下、25mm間の捲縮数を測定した。20本の単糸の平均値を捲縮数 とした。
【0029】
熱水収縮率(%)
JIS−L−1013 8.18.1 熱水収縮率 a)かせ収縮率(A法)に準じて測定を行う。
[実施例1]
極限粘度が1.31のポリトリメチレンテレフタレートと極限粘度が0.52のポリエチレンテレフタレートをそれぞれ別々に溶融し、紡糸温度260℃で24孔の複合紡糸口金よりポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレートの重量比率が50/50となるように吐出し、紡糸速度1400m/分で引き取り、165デシテックス24フィラメントの未延伸糸を得た。さらに、ホットロール−熱板系延伸機を用い、ホットロール温度70℃、熱板温度145℃、延伸倍率3.0で延伸して、56デシテックス24フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維(潜在捲縮糸)を得た。
【0030】
得られたポリエステル系複合繊維を熱板上に接触させながら走行させ、下記条件にて緊張熱処理を施し、顕在捲縮糸を得た。得られた顕在捲縮糸の伸縮伸長率(%)、残留トルク数(T/m)、単フィラメントの捲縮数(山/mm)、熱水収縮率(%)は表1に示す。
[緊張熱処理条件]
糸加工速度 :600m/min
熱板の温度 :130℃
延伸倍率 :1.03
永田精機製の4口靴下編み機KT−C4で、この顕在捲縮糸を4本用いて、レッグ部、パンツ部に配置し、タイツを製編した。得られた生地を常法通りポリエステル用分散染料にて130℃で60分、染色し、仕上げ、型板セットを実施してタイツを得た。
【0031】
得られたタイツは、フラットな美しい表面感を有し、ストレッチ性に優れたものであった。
[実施例2]
極限粘度が1.31のポリトリメチレンテレフタレートと極限粘度が0.52のポリエチレンテレフタレートをそれぞれ別々に溶融し、紡糸温度260℃で48孔の複合紡糸口金よりポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレートの重量比率が50/50となるように吐出し、紡糸速度1400m/分で引き取り、165デシテックス48フィラメントの未延伸糸を得た。さらに、ホットロール−熱板系延伸機を用い、ホットロール温度70℃、熱板温度145℃、延伸倍率3.0で延伸して、56デシテックス48フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維(潜在捲縮糸)を得た。
【0032】
得られたポリエステル系複合繊維を熱板上に接触させながら走行させ、下記条件にて緊張熱処理を施し、顕在捲縮糸を得た。得られた顕在捲縮糸の伸縮伸長率(%)、残留トルク数(T/m)、単フィラメントの捲縮数(山/mm)、熱水収縮率(%)は表1に示す。
【0033】
[緊張熱処理条件]
糸加工速度 :600m/min
熱板の温度 :130℃
延伸倍率 :1.03
この顕在捲縮糸を28ゲージ、1口編機で編成し、常法によりポリエステル用分散染料にて130℃で60分、染色し、仕上げ加工した。得られた編地は、フラットな外観で、ソフトな風合いを併せ持ちストレッチ性に優れていた。
[実施例3]
実施例1で得られた56デシテックス24フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維(潜在捲縮糸)をホットピン上に1回転巻き付け、走行させ、下記条件にて緊張熱処理を施し、顕在捲縮糸を得た。得られた顕在捲縮糸の伸縮伸長率(%)、残留トルク数(T/m)、単フィラメントの捲縮数(山/mm)、熱水収縮率(%)は表1に示す。
【0034】
[緊張熱処理条件]
糸加工速度 :600m/min
ホットピンの温度:100℃
延伸倍率 :1.02
この顕在捲縮糸を用いて、実施例2と同様に編地を得た。得られた編地は、フラットな外観で、ソフトな風合いを併せ持ちストレッチ性に優れていた。
[比較例1]
極限粘度が0.78と0.47のポリエチレンテレフタレートを用いて溶融紡糸した以外は実施例1と同様にして、顕在捲縮糸を得た。得られた顕在捲縮糸の伸縮伸長率(%)、残留トルク数(T/m)、単フィラメントの捲縮数(山/mm)、熱水収縮率(%)は表1に示す。
【0035】
この顕在捲縮糸を用いて、実施例1と同様にタイツを得た。得られたタイツは、表面感にシボが発生し、ストレッチ性に乏しいものであった。
[比較例2]
実施例1で得られた56デシテックス24フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維(潜在捲縮糸)を緊張熱処理を施さず、潜在捲縮糸のまま使用した。ポリエステル系複合繊維(潜在捲縮糸)の伸縮伸長率(%)、残留トルク数(T/m)、単フィラメントの捲縮数(山/mm)、熱水収縮率(%)は表1に示す。
【0036】
この潜在捲縮糸を用いて、実施例1と同様にタイツを得た。得られたタイツは、表面感に凹凸状のシボが発生し、ストレッチも十分なものが得られなかった。
[比較例3]
実施例1で得られた56デシテックス24フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維(潜在捲縮糸)を下記条件にて仮ヨリを施し、顕在捲縮糸を得た。得られた顕在捲縮糸の伸縮伸長率(%)、残留トルク数(T/m)、単フィラメントの捲縮数(山/mm)、熱水収縮率(%)は表1に示す。
【0037】
[仮ヨリ加工条件]
仮ヨリ数 :4200T/m
スピンドル回転数:500000rpm
延伸倍率 :1.02
熱板の温度 :180℃
この顕在捲縮糸を用いて、実施例2と同様に編地を得た。得られた編地は、ソフトでストレッチを有するが、トルクが発現し、斜向した生地となった。
[比較例4]
実施例1で得られた56デシテックス24フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維(潜在捲縮糸)を用い、熱板上に接触させながら走行させ、下記条件にて緊張熱処理を施し、顕在捲縮糸を得た。得られた顕在捲縮糸の伸縮伸長率(%)、残留トルク数(T/m)、単フィラメントの捲縮数(山/mm)、熱水収縮率(%)は表1に示す。
【0038】
[緊張熱処理条件]
糸加工速度 :700m/min
熱板の温度 :90℃
延伸倍率 :1.02
この顕在捲縮糸を用いて、実施例2と同様に編地を得た。得られた編地は、ソフトで斜向もないがストレッチ性が不十分な生地となった。
【0039】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の顕在捲縮糸は、衣服などに使用する際、フラットな表面感、ストレッチ性に優れた布帛を得られることができる。衣料用として、特に、インナー、ストッキングなどのストレッチ素材を提供することができるが、その応用範囲はこれらに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の複合糸の一例を示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0042】
(イ):ヘリカルクリンプ
(ロ):顕在捲縮糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成成分の一方がポリエチレンテレフタレートを主成分とし、他方の構成成分がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするサイドバイサイド型または偏心芯鞘型であるポリエステル系複合繊維からなる顕在捲縮糸であって、以下の(1)から(4)を満足することを特徴とする顕在捲縮糸。
(1)伸縮伸長率が100%以上
(2)残留トルク数が10T/m以下
(3)単フィラメントの捲縮数が25山/25mm以上
(4)熱水収縮率が10%以下
【請求項2】
該ポリエステル系複合繊維の構成成分の極限粘度が異なり、低粘度側のポリエステルの極限粘度[ηb]と高粘度側のポリエステル極限粘度[ηa]の極限粘度比([ηb]/[ηa])は0.3〜0.8であることを特徴とする請求項1に記載の顕在捲縮糸。
【請求項3】
該ポリエステル系複合繊維の構成成分の複合比(重量比率)がポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレート=30/70〜70/30の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の顕在捲縮糸。

【図1】
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【公開番号】特開2008−308798(P2008−308798A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159782(P2007−159782)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(502179282)オペロンテックス株式会社 (100)
【Fターム(参考)】