説明

顕微鏡システム

【課題】光学ヘッドを傾斜させる場合においても、煩雑な操作を行うことなく、観察ポイントの位置ずれや焦点のずれの発生を抑制することができる顕微鏡システムを提供する。
【解決手段】標本ステージ上に載置された標本に対応する光が入射する観察光学系と、該観察光学系に入射した光を受光して画像信号を生成する撮像部124と、観察光学系及び撮像部124を含む光学ヘッド120を光軸に沿って移動させることにより、フォーカスを行う電動ヘッド操作部131と、光学ヘッド120を光軸と直交する軸を中心に回転させることにより、XYステージ110と直交する軸に対して傾斜させる回転軸101及び軸受け102と、観察光学系の焦点と、観察光学系の回転軸とが一致した状態に関する情報を記憶する記憶部153と、該情報に基づき、観察光学系の焦点と回転軸とを一致させる制御を行う制御部154とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像部を備えた顕微鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顕微鏡の分野においては、複数の観察者が同時に試料を観察する用途や、レポートドキュメントなどの業務資料に試料の拡大像を載せる用途などのために、観察光学系にCCDカメラ等の撮像部が取り付けられた装置がよく用いられている。このような顕微鏡システムとしては、観察光学系及びその端部に設けられたCCDカメラを一体化した光学ヘッドをステージ上方に配置し、CCDカメラによる撮影画像をパソコン上のアプリケーションソフトウェアに表示する一方、ピント合わせのために光学ヘッドを駆動する電動焦準部などをパソコン上のアプリケーションソフトウェアで遠隔操作するようにしたものが主流となっている。
【0003】
また、近年では、ステージ上の点を中心として光学ヘッドを回転させることにより、光学ヘッドを傾けて、ステージの真上以外の様々な角度から標本を観察できるようにした顕微鏡システムも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−102344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような光学ヘッドの傾斜(ティルト)が可能な顕微鏡の場合、光学ヘッドを傾けた際に、観察ポイントや、一旦合わせた焦点位置がずれてしまうという問題がある。例えば、図20に示すように、光学ヘッド90の回転中心Oが、ステージ91上の所定の高さに設定されている場合、光学ヘッド90の光軸Rをステージ91表面と直交させた状態で標本92の表面に合焦した後、光学ヘッド90を傾斜させると、観察ポイントが位置P1から位置P2に、距離dXだけずれてしまう。また、焦点についても、位置P1から位置P3に距離dZだけずれてしまう。
【0006】
また、図21に示すように、標本92表面の観察ポイント(位置P4)を斜めから観察するために、光学ヘッド90の光軸Rをステージ91表面と直交する軸Z0に対して傾斜させた後、光学ヘッド90を標本92の表面に合焦しようとすると、やはり観察ポイントが位置P4から位置P5にずれてしまう。
【0007】
このような問題に対して、特許文献1においては、光学ヘッドの回転中心の高さにステージの標本載置面の高さを合わせた状態で、光学ヘッドの焦点を標本載置面に合わせることにより、光学ヘッドの焦点位置と回転中心とを一致させた後で、標本をステージに載置し、ステージの高さを調節して標本に焦点を合わせることとしている。
【0008】
しかしながら、この場合、光学ヘッドの焦点を標本載置面に一旦合わせるといったステップを実行しなければならず、操作が煩雑である。特に、厚さの異なる標本や、内部に段差がある標本を観察する場合、標本の高さが変化する毎にこのようなステップを実行しなくてはならないため、観察に時間がかかってしまう。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、光学ヘッドを傾斜可能な顕微鏡システムにおいて、光学ヘッドを傾斜させる場合においても、煩雑な操作を行うことなく、観察ポイントの位置ずれや焦点のずれの発生を抑制することができる顕微鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る顕微鏡システムは、標本ステージ上に載置された標本に対応する光が入射する観察光学系と、前記観察光学系から出射した光を受光して画像信号を生成する画像信号生成手段と、前記観察光学系を該観察光学系の光軸に沿って移動させることにより、合焦操作を行う電動ヘッド操作手段と、前記観察光学系及び前記画像信号生成手段を、前記光軸と直交する軸を中心に回転させることにより、前記光軸を前記標本ステージと直交する軸に対して傾斜させる回転手段と、前記観察光学系の焦点と、前記観察光学系の回転軸とが一致した状態に関する情報を記憶する記憶手段と、前記情報に基づき、電動ヘッド操作手段に前記焦点を前記回転軸に一致させる制御を行う制御手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
上記顕微鏡システムにおいて、前記観察光学系は、対物レンズを含み、前記対物レンズは、該対物レンズとは同焦点距離が異なる第2の対物レンズと交換可能であることを特徴とする。
【0012】
上記顕微鏡システムにおいて、前記制御手段は、前記光軸上に設置されている対物レンズ毎に、前記制御を行うことを特徴とする。
【0013】
上記顕微鏡システムは、前記光軸上に設置されている対物レンズを判別する対物レンズ判別手段をさらに備え、前記制御手段は、前記対物レンズ判別手段による判別結果に従って、前記焦点を前記回転軸に一致させる制御を行うことを特徴とする。
【0014】
上記顕微鏡システムにおいて、前記対物レンズ判別手段は、識別情報を有する識別子と、前記識別情報を検出可能な検出手段とを含み、前記識別子は、前記対物レンズに設けられていることを特徴とする。
【0015】
上記顕微鏡システムは、同焦点距離が互いに異なる複数の対物レンズをそれぞれ保持可能な複数の保持部を有し、前記複数の対物レンズの内の1つを前記光軸上に設置する対物レンズ交換手段をさらに備え、前記対物レンズ判別手段は、識別情報を有する識別子と、前記識別情報を検出可能な検出手段とを含み、前記識別子は、前記複数の保持部の各々に設けられていることを特徴とする。
【0016】
上記顕微鏡システムにおいて、前記記憶手段は、前記識別子と前記対物レンズとの対応関係をさらに記憶することを特徴とする。
【0017】
上記顕微鏡システムにおいて、前記情報は、前記対物レンズに対応する同焦点距離の基準値に基づいて生成され、前記対物レンズの同焦点距離と前記基準値との差に関する情報の入力を受け付ける入力手段をさらに備え、前記制御手段は、前記差に応じて前記情報を補正することを特徴とする。
【0018】
上記顕微鏡システムにおいて、前記観察光学系は、焦点距離を変更可能なズーム手段を含み、前記情報は、前記ズーム手段が変更可能な各焦点距離の基準値に応じて生成され、前記ズーム手段の各焦点距離と前記基準値との差に関する情報の入力を受け付ける入力手段をさらに備え、前記制御手段は、前記差に応じて前記情報を補正することを特徴とする。
【0019】
上記顕微鏡システムは、前記観察光学系と前記画像信号生成手段と前記電動ヘッド操作手段とを、前記光軸に沿って一体的に移動させる上下操作手段をさらに備え、前記制御手段は、前記上下操作手段を制御することにより、前記焦点を前記回転軸に一致させることを特徴とする。
【0020】
上記顕微鏡システムは、前記標本ステージを該標本ステージの主面と直交する方向に移動可能に保持するステージ操作手段をさらに備えることを特徴とする。
【0021】
上記顕微鏡システムは、前記電動ヘッド操作手段により前記観察光学系を移動させる操作を有効状態と無効状態とで切り替える指示の入力を受け付ける入力手段をさらに備え、前記制御手段は、前記指示に応じて、前記有効状態と前記無効状態を切り替える制御を行うことを特徴とする。
【0022】
上記顕微鏡システムにおいて、前記画像信号生成手段は、CCDを含むことを特徴とする。
【0023】
上記顕微鏡システムにおいて、前記回転手段を前記標本ステージの主面と直交する方向に移動させる第2の上下操作手段をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、観察光学系の焦点と観察光学系の回転軸とが一致した状態に関する情報を記憶手段に記憶させ、この情報に基づいて、制御手段が観察光学系の焦点と回転軸とを一致させる制御を行うので、光学ヘッドを傾斜させる場合においても、煩雑な操作を行うことなく、観察ポイントの位置ずれや焦点のずれの発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る顕微鏡システムの構成例を示す図である。
【図2】図2は、図1に示す位置検出部を拡大して示す模式図である。
【図3】図3は、図1に示す顕微鏡システムの動作を示すフローチャートである。
【図4A】図4Aは、顕微鏡装置がユーセントリック状態になった状態を示す模式図である。
【図4B】図4Bは、顕微鏡装置をユーセントリック状態にした後で標本の表面に光学ヘッドの焦点を合わせた状態を示す模式図である。
【図4C】図4Cは、光学ヘッドをティルトさせた状態を示す模式図である。
【図5A】図5Aは、本発明の実施の形態2に係る顕微鏡システムが備える顕微鏡装置の一部の構成を示す模式図である。
【図5B】図5Bは、本発明の実施の形態2に係る顕微鏡システムが備える顕微鏡装置の一部の構成を示す模式図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態3−1に係る顕微鏡システムが備える顕微鏡装置の一部の構成を示す模式図である。
【図7】図7は、図6に示す位置検出部を拡大して示す模式図である。
【図8】図8は、実施の形態3−1に係る顕微鏡システムの動作を示すフローチャートである。
【図9】図9は、表示部に表示される画面の例を示す模式図である。
【図10】図10は、実施の形態3−2に係る顕微鏡システムが備える顕微鏡装置の一部の構成を示す模式図である。
【図11】図11は、実施の形態3−2に係る顕微鏡システムの動作を示すフローチャートである。
【図12】図12は、表示部に表示される画面の例を示す模式図である。
【図13】図13は、実施の形態3−3に係る顕微鏡システムが備える顕微鏡装置の一部の構成を示す模式図である。
【図14】図14は、図13に示すレボルバ及びその近傍を拡大して示す模式図である。
【図15】図15は、実施の形態4に係る顕微鏡システムが備える顕微鏡装置の一部の構成を示す模式図である。
【図16】図16は、同焦点距離の補正動作の際に表示部に表示される画面の例を示す模式図である。
【図17】図17は、実施の形態5に係る顕微鏡システムの表示部に表示される画面の例を示す模式図である。
【図18】図18は、実施の形態6に係る顕微鏡システムが備える顕微鏡装置の一部の構成を示す模式図である。
【図19】図19は、図18に示す顕微鏡装置に標本を配置した状態を示す模式図である。
【図20】図20は、従来の顕微鏡装置において光学ヘッドをティルトさせた状態を示す図である。
【図21】図21は、従来の顕微鏡装置において光学ヘッドをティルトさせた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、これらの実施の形態により本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る顕微鏡システムの構成例を示す図である。図1に示すように、実施の形態1に係る顕微鏡システム1は、標本の観察画像を生成する顕微鏡装置10と、顕微鏡装置10が生成した観察画像を表示すると共に、顕微鏡装置10の動作を制御する制御装置15とを備える。
【0027】
顕微鏡装置10は、ベース100と、回転軸101及び軸受け102を介してベース100に設置された支柱103と、標本Sが載置されるXYステージ110と、XYステージ110を図の上下方向に移動可能に保持するステージホルダ111と、ベース100に対するステージホルダ111の高さを変化させるステージ操作部112と、XYステージ110上に設けられた観察光学系である光学ヘッド120と、支柱103に対して光学ヘッド120を移動可能に保持する光学ヘッド保持部130とを備える。また、顕微鏡装置10は、この他、標本Sを照明する照明光学系を備えても良い。照明光学系の構成としては、XYステージ110の下側に設けられる透過照明光学系であっても良いし、XYステージ110の上側に設けられる落射照明光学系であっても良い。或いは、標本Sに対して光を斜めから(即ち、標本Sの載置面と直交する軸と交差する方向から)照射する斜照明光学系であっても良い。なお、以下の説明においては、図の左右方向をX軸方向、図の奥行き方向をY軸方向、図の上下方向をZ軸方向とし、顕微鏡装置10は、XYステージ110がX軸及びY軸からなる面に平行となるように設置されているものとする。
【0028】
回転軸101は、ベース100に対して固定して設けられている。また、軸受け102は、回転軸101と共通の軸R1が支柱103の軸R2と直交するように、支柱103の端部に固定されている。この軸受け102を回転軸101に嵌合させることにより、支柱103の軸R2が軸R1と直交し、支柱103が軸R1を中心として回転可能な状態となる。即ち、軸受け102及び回転軸101は、光学ヘッド保持部130を介して支柱103と連結された光学ヘッド120の軸R1を回転軸とする回転手段を構成する。これにより、光学ヘッドがYZ面内において傾斜(ティルト)可能となる。なお、図1に示す構成において、光学ヘッド120のティルト操作は手動で行われるが、モータ等用いて光学ヘッド120を電動でティルトさせることとしても良い。なお、ティルト可能な角度は特に限定されない。
【0029】
ステージ操作部112は、例えば、ユーザが手動で回転操作可能なハンドル112aとリニアガイド112bとによって実現される。ユーザがハンドル112aを回転させると、その回転方向及び回転量に応じて、ステージホルダ111が、標本ステージ110の主面と直交する方向(図1においては上下方向)に移動する。
【0030】
光学ヘッド120は、鏡筒121と、鏡筒121のXYステージ110側の端部に設けられた対物レンズ122と、鏡筒121の内部に設けられたズームレンズ群123a及び該ズームレンズ群123aを駆動するモータ123bを含み、焦点距離を変更可能な電動ズーム123と、鏡筒121の対物レンズ122とは反対側の端部に設けられた撮像部124とを有する。これらの内、対物レンズ122及びズームレンズ群123aは、標本ステージ110上に載置された標本Sに対応する観察光が入射する観察光学系を構成する。また、撮像部124は、例えばCCD等の撮像素子を含み、観察光学系を通過した観察光を受光し、該観察光に対応する電気信号(撮像信号)を出力する画像信号生成手段である。
【0031】
光学ヘッド保持部130は、光学ヘッド120側に固定された電動ヘッド操作部131と、支柱103側に固定された支持具132とを有する。
支持具132は、固定ハンドル133によって支柱103に締結されている。また、支柱103には下側ストッパ134が設けられており、これにより支持具132のずり落ちが防止される。なお、支柱103に対する支持具132の位置は、例えば固定ハンドル133を一旦緩めるなどして、ユーザが手動で調節することもできる。
【0032】
電動ヘッド操作部131は、例えば、軸R2及び光学ヘッド120の光軸L1の双方に平行となるよう設けられたリニアガイド131aと、モータ131bとを有する。電動ヘッド操作部131は、リニアガイド131aを介して支持具132と連結しており、モータ131bの動作により、支持具132に対する軸R2方向における位置を変化させる。それにより、光学ヘッド120が、軸R2に沿って移動可能になる。
【0033】
電動ヘッド操作部131には、支持具132に対する電動ヘッド操作部131の位置、言い換えると、所定の基準位置に対する光学ヘッド120の位置を検出する位置検出部135が設けられている。
【0034】
図2は、位置検出部135を拡大して示す模式図である。図2に示すように、位置検出部135は、電動ヘッド操作部131側に設けられた枠体136と、該枠体136に設けられた接触センサ137と、支持具132側に設けられた旗(マーク部材)138とを含む。接触センサ137は、旗138が接触した際に検出信号を出力する。この検出信号は、後述する制御部154に入力される。
【0035】
一方、制御装置15は、パーソナルコンピュータやワークステーション等によって実現される制御装置本体150と、液晶パネル又は有機ELパネル等のモニタ装置によって実現される表示部160とを備える。
【0036】
制御装置本体150は、外部からの種々の情報や命令の入力を受け付ける操作入力部151と、撮像部124が生成した画像信号に対して所定の画像処理を施すことにより、表示用の画像信号を生成する画像処理部152と、記憶部153と、これらの各部及び顕微鏡装置10の動作を制御する制御部154とを有する。
【0037】
操作入力部151は、キーボード、各種入力ボタンやスイッチ、表示部160の画面に対するポイント操作に応じて信号が入力されるマウス等のポインティングデバイス等を含み、これらの入力デバイスを介して入力された信号を受け付け、制御部154に入力する。
【0038】
記憶部153は、フラッシュメモリ、RAM、ROM等の半導体メモリや、HDD、MO、CD−R、DVD−R等の記録媒体及び該記録媒体を駆動する駆動装置等によって実現され、制御装置本体150に各種動作を実行させるプログラムや、プログラムの実行中に用いられる各種情報や、撮像部124から入力された画像信号等を記憶する。また、記憶部153は、光学ヘッド(観察光学系)120の焦点FPと、光学ヘッド120の回転中心軸R1とが重なった状態に関する情報を記憶する。なお、以下において、光学ヘッド120の焦点FPと、回転中心軸R1とが重なった状態のことをユーセントリック状態と呼ぶ。また、このユーセントリック状態に関する情報を、ユーセントリック情報と呼ぶ。
【0039】
ユーセントリック情報には、例えば、対物レンズ122の同焦点距離、ユーセントリック状態にあるときの顕微鏡装置10の各部の状態(モータ131bがステッピングモータである場合、ステッピングモータの原点位置からのパルス数、位置検出部135の出力値等)といった情報が含まれる。
【0040】
制御部154は、顕微鏡装置10におけるオートフォーカス動作を制御する。その際、制御部154は、操作入力部151から入力された信号に従い、記憶部153に記憶された情報に基づいて、ユーセントリック状態に遷移する動作を各部に実行させる。例えば、モータ131bがステッピングモータであり、ユーセントリック情報として、ステッピングモータの原点位置からのパルス数が記憶されている場合、制御部154は、このパルス数に従ってモータ131bを動作させる。
【0041】
表示部160は、撮像部124によって撮像された観察画像の他、制御部154の制御に基づいて種々の情報を画面表示する。なお、表示部160を、画面に対するタッチ操作により信号が入力されるタッチパネルが重畳されたモニタ装置によって実現し、表示部160と操作入力部151とを一体化させても良い。
【0042】
次に、図3を参照しながら、顕微鏡システム1の動作について説明する。図3は、顕微鏡システム1の動作を示すフローチャートである。
まず、ステップS100において、顕微鏡システム1が起動する。続くステップS101において、制御部154は、表示部160に撮像部124から入力された画像信号に基づく観察画像161を表示させると共に、ホームポジションボタン162を表示させる。ここで、ホームポジションボタン162は、顕微鏡装置10をユーセントリック状態に遷移させる指示をユーザが入力する際に用いるボタン(アイコン)である。
【0043】
ステップS102において、操作入力部151は、ホームポジションボタン162へのタッチ(又はクリック)を検出すると(ステップS102:Yes)、ユーセントリック状態に遷移する指示を制御部154に入力する(ステップS103)。
【0044】
ステップS104において、制御部154は、記憶部153からユーセントリック情報を読み出す。
ステップS105において、制御部154は、ユーセントリック情報に基づいて顕微鏡装置10の各部を制御することにより、図4Aに示すように、光学ヘッド120の焦点FPが回転中心軸R1と一致したユーセントリック状態を実現する。
【0045】
この後、ユーザは、図4Bに示すように、ステージ操作部112をZ軸方向に操作して、XYステージ110上に載置した標本Sの表面に焦点を合わせる。そして、図4Cに示すように、その状態で光学ヘッド120をティルトさせるなどして、所望の観察を行う。この間も、焦点FPと回転中心軸R1とが一致した状態が維持されているので、光学ヘッド120をティルトさせても、観察ポイントのずれや焦点FPのずれが生じることはない。
【0046】
顕微鏡システム1は、電源をオフ(OFF)する信号が入力された場合(ステップS106:Yes)、各部の動作を終了させる。一方、電源をオフする信号が入力されない場合(ステップS106:No)、顕微鏡システム1の動作はステップS101に戻る。なお、ステップS102において、ホームポジションボタン162へのタッチを検出しない場合(ステップS102:No)、顕微鏡システム1の動作は、ステップS106に移行する。
【0047】
以上説明したように、実施の形態1によれば、記憶部153にユーセントリック情報を予め記憶させておくので、ユーザは、所望のタイミングで、顕微鏡装置10をユーセントリック状態に素早く遷移させることができる。従って、ユーザは、XYステージ110の表面に一旦ピントを合わせるといった煩わしい操作を行うことなく、所望の角度から標本Sを撮影した観察画像を簡単且つ短時間に観察することが可能となる。
【0048】
なお、実施の形態1においては、XYステージ110をZ軸方向に移動させることにより標本Sの表面に焦点を合わせたが、光学ヘッド120の焦点FPと回転中心軸R1とが一致した状態を維持できれば、その他の方法で標本Sに対する合焦操作を行っても良い。例えば、鏡筒121に対して撮像部124が移動可能である場合には、撮像部124を光軸L1に沿って移動させることにより、合焦を行っても良い。また、鏡筒121に対して対物レンズ122が移動可能である場合には、対物レンズ122を光軸L1に沿って移動させることにより、合焦を行っても良い。
【0049】
なお、実施の形態1においては、ステージ操作部112による操作が可能なXYステージ110上に標本Sを載置したが、単なるプレーンステージに標本Sを載置しても良い。この場合、ユーザは、標本S上の所望の観察領域を探索するときには、標本Sを自身の手で直接移動させれば良い。
【0050】
(変形例1)
次に、実施の形態1の変形例について説明する。
図3に示すステップS105において、制御部154は、位置検出部135からの出力信号に基づいて、ユーセントリック状態に遷移する動作を各部に実行させても良い。この場合、位置検出部135の旗138を、ユーセントリック状態に至ったときに接触センサ137と接触する位置に設けておく。そして、制御部154は、ユーセントリック状態に遷移する指示が入力されると、位置検出部135から旗138の検出信号が出力されるまで、モータ131bを動作させる。
【0051】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
図5A及び図5Bは、実施の形態2に係る顕微鏡システムが備える顕微鏡装置の一部の構成を示す模式図である。図5A及び図5Bに示すように、実施の形態2における顕微鏡装置20は、互いに同焦点距離が異なる複数の対物レンズ201、202を交換可能な構成を有する。図5Aは、同焦点距離D1を有する(例えば、倍率が3倍の)対物レンズ201が光学ヘッド120にセットされた状態を示している。また、図5Bは、同焦点距離D2を有する(D2>D1。例えば、倍率が1倍の)対物レンズ202が光学ヘッド120にセットされた状態を示している。
【0052】
また、支柱103には、支持具132の抜けを防止する上側ストッパ203が設けられている。この上側ストッパ203及び対物レンズが交換可能な点以外の顕微鏡装置20の構成については、図1に示すものと同様である。
【0053】
このように、複数種類の対物レンズを交換可能に備えた顕微鏡システムにおいて、いずれか一方の対物レンズ(例えば、対物レンズ201)に対応するユーセントリック情報しか記憶部153に記憶されていない場合の動作について説明する。
【0054】
ユーセントリック情報が記憶部153に記憶されている方の対物レンズ201を用いて観察を行う場合、制御部154は、実施の形態1と同様の動作(図3参照)により、顕微鏡装置20をユーセントリック状態に遷移させる。
【0055】
また、もう一方の対物レンズ202を用いて観察を行う場合、制御部154は、まず、対物レンズ201に対応するユーセントリック情報に基づいてユーセントリック状態に遷移する動作を、顕微鏡装置20に実行させる。その後、支柱103に対して支持具132を軸R2方向、即ち光軸L1に沿って同焦点距離の差(D2−D1)の分だけ移動させ、ユーセントリック状態を補正する。支持具132の高さの調節は、ユーザが手動で行っても良いし、支持具132を電動モータによって駆動可能な構成にして、制御部154が自動制御を行うこととしても良い。この場合、支持具132及び電動モータは、光学ヘッド120及び電動ヘッド操作部131を光軸L1に沿って一体的に移動させる上下操作手段を構成する。
【0056】
以上説明した実施の形態2によれば、対物レンズの交換が可能な顕微鏡装置20においても、各対物レンズの同焦点距離に応じたユーセントリック状態を実現することができる。また、実施の形態2の場合、同焦点距離が短い方の対物レンズに対応するユーセントリック情報を用いることにすれば、光学ヘッド120の上下方向におけるストロークを小さくすることができるので、顕微鏡装置20を小型化することが可能となる。
【0057】
(実施の形態3−1)
次に、本発明の実施の形態3−1について説明する。
図6は、実施の形態3−1に係る顕微鏡システムが備える顕微鏡装置の一部の構成を示す模式図である。図6に示すように、実施の形態3−1における顕微鏡装置30−1は、図5Aに示す顕微鏡装置20と同様、互いに同焦点距離が異なる複数の対物レンズ(第1対物レンズ301、第2対物レンズ302)を交換可能な構成を有しており、位置検出部135の代わりに、位置検出部303を備える点が異なっている。なお、図6は、第1対物レンズ301が取り付けられた状態を実線で示し、第2対物レンズ302が取り付けられた状態を一点鎖線で示している。また、交換可能な対物レンズの種類は3つ以上であっても良い。
【0058】
図7は、位置検出部303を拡大して示す模式図である。図7に示すように、位置検出部303には、電動ヘッド操作部131側に設けられた枠体304と、該枠体304に設けられた接触センサ305と、支持具132側の互いに異なる位置に設けられた第1の旗306及び第2の旗307とを有する。第1の旗306は、例えば倍率が1倍である第1対物レンズ301が光学ヘッド120にセットされた場合に、ユーセントリック状態で接触センサ305が検出可能な位置に設けられている。一方、第2の旗307は、例えば倍率が3倍である第2対物レンズ302が光学ヘッド120にセットされた場合に、ユーセントリック状態で接触センサ305が検出可能な位置に設けられている。
また、記憶部153には、第1の旗306と第1対物レンズ301、及び、第2の旗307と第2対物レンズ302の対応関係が記憶される。
【0059】
次に、実施の形態3−1に係る顕微鏡システムの動作について説明する。図8は、実施の形態3−1に係る顕微鏡システムの動作を示すフローチャートである。なお、図8に示すステップS100及びS106の動作は、図3に示すこれらの各ステップと対応している。
【0060】
ステップS310において、制御部154は、図9に示すように、撮像部124から入力された画像信号に基づき、観察画像161を表示部160に表示させる。また、制御部154は、同じ画面に、ユーザが選択可能なホームポジション1ボタン311及びホームポジション2ボタン312を表示部160に表示させる。ホームポジション1ボタン311は、顕微鏡装置30−1を第1対物レンズ301に対応するユーセントリック状態に遷移させる指示を入力するためのボタン(アイコン)である。一方、ホームポジション2ボタン312は、顕微鏡装置30−1を第2対物レンズ302に対応するユーセントリック状態に遷移させる指示を入力するためのボタン(アイコン)である。
【0061】
続くステップS311において、操作入力部151は、ホームポジション1ボタン311へのタッチ(又はクリック)を検出すると(ステップS311:Yes)、第1対物レンズ301に対応するユーセントリック状態に遷移する指示を制御部154に入力する(ステップS312)。
【0062】
ステップS313において、制御部154は、位置検出部303に対し、第1の旗306の検出を開始させる。
また、ステップS314において、制御部154は、モータ131bの動作を開始させる。
【0063】
ステップS315において、制御部154は、位置検出部303からの検出信号を検出すると(ステップS315:Yes)、モータ131bの動作を停止させる(ステップS316)。一方、制御部154は、位置検出部303からの検出信号を検出しない場合(ステップS315:No)、検出信号が検出されるまで待機する(ステップS315)。
【0064】
また、ステップS311において、操作入力部151は、ホームポジション1ボタン311へのタッチを検出しない場合(ステップS311:No)、ホームポジション2ボタン312へのタッチ(又はクリック)を検出したか否かを確認する(ステップS317)。操作入力部151は、ホームポジションボタン312へのタッチを検出した場合(ステップS317:Yes)、第2対物レンズ302に対応するユーセントリック状態に遷移する指示を制御部154に入力する(ステップS318)。
【0065】
ステップS319において、制御部154は、位置検出部303に対し、第2の旗307の検出を開始させる。その後、顕微鏡システムの動作はステップS314に移行する。
【0066】
なお、ステップS317において、ホームポジションボタン312へのタッチが検出されない場合(ステップS317:No)、顕微鏡システムの動作はステップS106に移行する。
【0067】
以上説明したように、実施の形態3−1によれば、互いに同焦点距離が異なる複数の対物レンズを備える場合においても、各対物レンズに対応するユーセントリック状態を簡単に実現することが可能となる。
【0068】
(実施の形態3−2)
次に、本発明の実施の形態3−2について説明する。
図10は、実施の形態3−2に係る顕微鏡システムが備える顕微鏡装置の一部の構成を示す模式図である。図10に示すように、実施の形態3−2における顕微鏡装置30−2は、図6に示す顕微鏡30−1に対し、互いに同焦点距離が異なる交換可能な複数の対物レンズ(第1対物レンズ321、第2対物レンズ322)を判別する対物レンズ判別手段が設けられていることを特徴とする。なお、図10は、第1対物レンズ321が取り付けられた状態を実線で示し、第2対物レンズ322が取り付けられた状態を一点鎖線で示している。
【0069】
対物レンズ321、322には、自身の識別情報(例えば、識別フラグ)を有する識別子として、ICチップ321a、322aがそれぞれ設けられている。
一方、光学ヘッド120の下方(対物レンズ321、322近傍)には、ICチップ321a、322aの識別情報を検出可能な検出手段として、ICチップセンサ323が設けられている。ICチップセンサ323は、第1対物レンズ321が光学ヘッド120に取り付けられた際、ICチップ321aが発信した識別情報を検出し、当該識別情報の検出信号を出力する。一方、ICチップセンサ323は、第2対物レンズ322が光学ヘッド120に取り付けられた際には、ICチップ322aが発信した識別情報を検出し、当該識別情報の検出信号を出力する。これらのICチップ321a、322a及びICチップセンサ323の組み合わせにより、対物レンズ判別手段が実現される。
【0070】
また、この場合、記憶部153には、ICチップ321aの識別情報と第1対物レンズ321との対応関係、及び、ICチップ322aの識別情報と第2対物レンズ322との対応関係が記憶される。
【0071】
次に、実施の形態3−2に係る顕微鏡システムの動作について説明する。図11は、実施の形態3−2に係る顕微鏡システムの動作を示すフローチャートである。なお、図11に示すステップS100、ステップS314〜S316、及びステップS106の動作は、図8に示すこれらの各ステップと対応している。
【0072】
ステップS320において、制御部154は、図12に示すように、観察画像161及びホームポジションボタン162を表示部160に表示させる。
続くステップS321において、操作入力部151は、ホームポジションボタン162へのタッチ(又はクリック)を検出すると(ステップS321:Yes)、ユーセントリック状態に遷移する指示を制御部154に入力する(ステップS322)。
【0073】
ステップS323において、制御部154は、ICチップセンサ323が出力した検出信号に基づいて、現在光学ヘッド120に取り付けられている対物レンズの種類(倍率又は同焦点距離)を検知する。このとき、検出信号がICチップ321aの識別情報に対応するものであった場合(ステップS323:第1チップ)、制御部154は、位置検出部303に第1の旗306の検出を開始させる(ステップS324)。一方、検出信号がICチップ322aの識別情報に対応するものであった場合(ステップS323:第2チップ)、制御部154は、位置検出部303に第2の旗307の検出を開始させる(ステップS325)。
【0074】
この際、制御部154は、ICチップセンサ323が検出した識別情報に基づき、現在光学ヘッド120に取り付けられている対物レンズに関する情報を記憶部153から読み出し、表示部160に表示させても良い。例えば、図12には、対物レンズの倍率を示す倍率表示欄324が設けられている。図10の実線で示すように、光学ヘッド120に対物レンズ321が取り付けられている場合、倍率表示欄324には、対物レンズ321の倍率(倍)を示す数値「1」が表示される。
【0075】
なお、ステップS321において、ホームポジションボタン162へのタッチが検出されない場合(ステップS321:No)、顕微鏡システムの動作はステップS106に移行する。
【0076】
以上説明したように、実施の形態3−2によれば、光学ヘッド120に取り付けられている対物レンズを顕微鏡システムが自動認識するので、ユーザは、対物レンズの同焦差分を意識することなく、観察を行うことができる。
【0077】
(変形例3−2)
対物レンズ判別手段としては、ICチップ及びICチップセンサの組み合わせの他にも様々な構成を用いることができる。例えば、識別子として識別情報に対応する磁界を生成する磁石を用い、検出手段としてホールセンサを用いても良い。或いは、識別子としてバーコードを用い、検出手段としてバーコードリーダを用いても良い。
【0078】
(実施の形態3−3)
次に、本発明の実施の形態3−3について説明する。
図13は、実施の形態3−3に係る顕微鏡システムが備える顕微鏡装置の一部の構成を示す模式図である。図13に示すように、実施の形態3−3における顕微鏡装置30−3は、図10に示す顕微鏡装置30−2に対して、互いに同焦点距離が異なる複数の対物レンズ331、332を切換可能に保持するレボルバ330をさらに備える。
【0079】
図14は、レボルバ330及びその近傍を拡大して示す模式図である。図14に示すように、レボルバ330は、対物レンズ331、332をそれぞれ保持する保持部333、334を有する。また、保持部333には、対物レンズ331用の識別子であるICチップ335が取り付けられており、保持部334には、対物レンズ332用の識別子であるICチップ336が取り付けられている。
【0080】
実施の形態3−3においては、このようなレボルバ330を設ける場合、ユーザは対物レンズの切換を素早く行うことができるので、顕微鏡システムの操作性をさらに向上させることが可能となる。
【0081】
また、実施の形態3−3によれば、対物レンズ331、332の識別子であるICチップ335、336をレボルバ330(保持部333、334)側に設けるため、対物レンズ331、332として、ICチップ等を内蔵した専用品ではなく、汎用の対物レンズを用いることが可能となる。この場合、各保持部333、334に取り付ける対物レンズの種類(倍率、同焦点距離等)を予め登録(記憶部153に記憶)しておくことにより、ICチップ335、336の検出による対物レンズの自動認識が可能となる。
【0082】
なお、ICチップ335、336の取り付け位置は、保持部333、334ではなく、実施の形態3−2と同様に、対物レンズ331、332側にしても良い。
また、対物レンズ判別手段として、ICチップ及びICチップセンサの組み合わせに限定されず、磁石及びホールセンサ等、他の構成を用いても良い。
【0083】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4について説明する。
図15は、実施の形態4に係る顕微鏡システムが備える顕微鏡装置の一部の構成を示す模式図である。図15に示すように、実施の形態4における顕微鏡装置40は、図13に示す電動ヘッド操作部131の代わりに電動ヘッド操作部400を備えると共に、位置検出部303の代わりに位置検出部410を備える。電動ヘッド操作部400及び位置検出部410以外の顕微鏡装置40の構成については、図13に及び図14に示すものと同様である。
【0084】
電動ヘッド操作部400は、リニアガイド401及びステッピングモータ402を有する。電動ヘッド操作部400は、リニアガイド401を介して支持具132と連結しており、ステッピングモータ402の動作により、支持具132に対する電動ヘッド操作部400の軸R2方向における位置を変化させる。
【0085】
位置検出部410は、図2に示す位置検出部135と同様の構成を有しており、電動ヘッド操作部400側に設けられた枠体411と、該枠体411に設けられた接触センサ412と、支持具132側に設けられた旗413とを含む。旗413は、電動ヘッド操作部400が一点鎖線で示す原点の位置に配置されたときに接触センサ412が検出可能となる位置に設置されている。
【0086】
ここで、記憶部153に記憶されているユーセントリック情報は、通常、対物レンズ331、332に対応する同焦点距離の基準値(設計値)に基づき、電動ズーム123において変更可能な各焦点距離の基準値(設計値)に応じて生成されている。一方、顕微鏡装置40に取り付けられる対物レンズ331、332には個体差があるため、対物レンズ331、332の実際の同焦点距離と基準値との間に差が生じることがある。また、電動ズーム123においても、内蔵するズームレンズ群123aの個体差に起因して、実際の焦点距離と基準値との間に差が生じることがある。このため、顕微鏡装置40を記憶部153に記憶されたままのユーセントリック情報に基づいてユーセントリック状態に遷移させた場合、光学ヘッド120の焦点FPと回転中心軸R1とに微小なずれが生じてしまうことがある。本実施の形態4に係る顕微鏡システムは、このようなずれを補正することを特徴とする。
【0087】
この補正は、次のようにして行われる。
ユーザは、対物レンズ321又は322をセットした状態で、光学ヘッド120をティルトさせるなどして、視野のずれや焦点位置のずれが生じない光学ヘッド120の位置を探索する。この際、ユーザは、電動ヘッド操作部400の原点の位置から補正前のユーセントリック状態における位置までのステッピングモータ402のパルス数に、ずれ量が生じているときの同パルス数を加算又は減算するなどしてオフセットを算出すると、ずれの生じない光学ヘッド120の位置を効率的に探索することができる。そして、各対物レンズ321、322について、探索した位置における同焦距離を求め、補正量を算出する。なお、ユーザがティルト等して探索した位置における同焦距離を制御部が自動測定して、補正量を自動算出することとしてもよい。
【0088】
図16は、この補正動作の際に表示部160に表示される画面の例を示す模式図である。図16に示すように、この画面には、観察画像161及びホームポジションボタン162に加えて、第1同焦補正量記入欄421、第2同焦補正量記入欄422、ズーム補正量記入欄423、及び補正記録ボタン424が表示されている。第1同焦補正量記入欄421は、保持部333に保持されている対物レンズ(例えば、対物レンズ331)の同焦距離の補正量(以下、同焦補正量という)が入力される欄である。第2同焦補正量記入欄422は、保持部334に保持されている対物レンズ(例えば、対物レンズ332)の同焦補正量が入力される欄である。ズーム補正量記入欄423は、電動ズーム123の焦点距離の補正量が入力される欄である。ユーザが、上記探索により求めた補正量を各記入欄421〜423に入力して補正記録ボタン424にタッチ(又はクリック)すると、制御部154は、入力された補正量に基づいてユーセントリック情報を補正し、記憶部153に記憶させる。
【0089】
また、別の補正動作として、対物レンズ321又は322、及び光学ヘッド120の実際の同焦点距離と基準値(設計値)との間の差(補正量)といった情報を当該顕微鏡システムの取り扱い説明書等に予め記録しておき、ユーザは、この取扱い説明書等を参照して、図16に示す画面に第1同焦補正量、第2同焦補正量、及びズーム補正量を入力することとしても良い。この場合、制御部154は、入力された情報に基づき、組み合わせるズーム倍率と、対物レンズの種類(図15の場合、対物レンズ321又は322)とに応じて、最適なユーセントリック位置を自動計算して、元のユーセントリック情報を補正し、記憶部153に記憶させる。
【0090】
なお、顕微鏡システムに入力された同焦補正量は、書き換え可能で記憶保持可能なフラッシュメモリ等に記録しても良いし、アプリケーションソフトウェアにより、制御装置本体150に登録しても良い。
【0091】
以上説明した実施の形態4によれば、電動ズーム123と互換性のない、同焦補正量の大きい対物レンズ等を用いる場合においても、ユーセントリック状態に遷移することが可能となる。
【0092】
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5について説明する。
図17は、実施の形態5に係る顕微鏡システムの表示部160に表示される画面の例を示す模式図である。この画面は、図16に示す画面に対し、ユーセントリック状態を維持するか否かの入力に用いられるオンボタン501及びオフボタン502がさらに表示されている。なお、このオンボタン501及びオフボタン502は、顕微鏡装置がユーセントリック状態になった後で、画面表示される。
【0093】
操作入力部151は、オンボタン501へのタッチ(又はクリック)を検出すると、制御部154に、ユーセントリック状態の維持を指示する信号を入力する。これに応じて、制御部154は、光学ヘッド120のZ軸方向における移動をロックする。反対に、操作入力部151は、オフボタン502へのタッチ(又はクリック)を検出すると、制御部154に、ユーセントリック状態維持の解除を指示する信号を入力する。これに応じて、制御部154は、光学ヘッド120のZ軸方向における移動のロックを解除する。
【0094】
ここで、ユーザは、顕微鏡装置(例えば図15に示す顕微鏡装置40)を一旦ユーセントリック状態に遷移させた後であっても、段差(高さの変化)のある標本を観察していると、意識せずに光学ヘッド120を上下方向に移動させて合焦操作を行ってしまうことがある。この場合、ユーセントリック状態が崩れてしまうことになる。
【0095】
そこで、実施の形態5においては、ユーザが意識しないユーセントリック状態の崩れを防ぐために、ユーザの操作により、光学ヘッド120の上下方向への移動をロックできるようにしている。
【0096】
一方、ユーザは、光学ヘッド120を上下に移動させ、微細なフォーカス操作を行ったり、3D構築操作(Z軸上の位置が異なる複数の画像を撮像して合成することにより、3次元的な画像を構成する操作)を行ったりしたい場合もある。このような場合のために、実施の形態5においては、光学ヘッド120のロックを、ユーザ操作により解除できることとしている。
【0097】
以上説明した実施の形態5によれば、ユーザは、光学ヘッド120の上下方向への移動をロックするか否かを容易に設定し、意識しないユーセントリック状態の崩れを防ぐことができる。
【0098】
(実施の形態6)
次に、本発明の実施の形態6について説明する。
図18は、実施の形態6に係る顕微鏡システムが備える顕微鏡装置の一部の構成を示す模式図である。
図18に示すように、実施の形態6における顕微鏡装置60は、図1に示すベース100、XYステージ110、ステージホルダ111、及びステージ操作部112の代わりに、ベース601と、自身の軸がベース601の主面と直交するようにベース601に固定して設置された第2支柱602と、第2支柱602に設けられた上下操作部603と、上下操作部603を第2支柱602に対して固定する固定ハンドル604とを備える。軸受け102を回転可能に保持する回転軸101は、上下操作部603に取り付けられている。また、顕微鏡装置60は、図1に示すXYステージ110の代わりに、ベース601上固定されたプレーンステージ610を備える。プレーンステージ610は、その上面(標本載置面)がベース601の主面と平行になるように設置されている。
【0099】
図18において、顕微鏡装置60はユーセントリック状態となっている。この顕微鏡装置60において標本を観察する際には、図19に示すように、プレーンステージ610上に標本Sを配置し、第2支柱602に沿って上下操作部603を移動させて、光学ヘッド120の焦点FPを標本Sの表面に合わせる。そして、第2支柱602に対する上下操作部603の位置を固定ハンドル604によって固定する。なお、この場合、標本SのXY方向における位置は、ユーザが標本Sをプレーンステージ610上で直接移動させることにより行う。
【0100】
このように顕微鏡装置60を構成することにより、ステージを移動させる機構(例えば、図1に示すステージ操作部111)を設ける必要がなくなるので、顕微鏡装置60を安価に作製することができる。また、このような構成によれば、厚さの厚い標本Sや、厚さの異なる標本Sを観察する場合においても、光学ヘッド120の上下方向におけるストロークを増加させることなく、ユーセントリック状態を実現することができる。
【0101】
なお、顕微鏡装置60において、標本S側の焦点深度が深く、視野が十分に広く、倍率の低い対物レンズを用いる場合には、合焦操作の際に若干ユーセントリック状態が崩れたとしても、XY方向における視野のずれや焦点位置のずれはそれほど大きくならないので、上下操作部603及び固定ハンドル604による操作に高度な正確性は要求されない。従って、このような場合には、上下操作部603及び固定ハンドル604を操作するユーザの負担を抑制することができる。
【0102】
なお、本発明は、上述した実施の形態1〜6及びこれらの変形例に限定されるものではなく、各実施の形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明を形成できる。例えば、各実施の形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を除外して形成しても良いし、異なる実施の形態や変形例に示した構成要素を適宜組み合わせて形成しても良い。
【符号の説明】
【0103】
1 顕微鏡システム
10、20、30−1、30−2、30−3、40、60 顕微鏡装置
100 ベース
101 回転軸
102 軸受け
103 支柱
110 XYステージ
111 ステージホルダ
112 ステージ操作部
112a ハンドル
112b リニアガイド
120 光学ヘッド(観察光学系)
121 鏡筒
122、201、202、301、302、321、322、331、332
対物レンズ
123 電動ズーム
123a ズームレンズ群
123b モータ
124 撮像部
130 光学ヘッド保持部
131 電動ヘッド操作部
131a リニアガイド
131b モータ
132 支持具
133 固定ハンドル
134 下側ストッパ
135、303、410 位置検出部
136、304、411 枠体
137、305、412 接触センサ
138、306、307、413 旗
15 制御装置
150 制御装置本体
151 操作入力部
152 画像処理部
153 記憶部
154 制御部
160 表示部
161 観察画像
162、311、312 ホームポジションボタン
203 上側ストッパ
321a、322a ICチップ
323 ICチップセンサ
324 倍率表示欄
330 レボルバ
333、334 保持部
335、336 ICチップ
400 電動ヘッド操作部
401 リニアガイド
402 ステッピングモータ
421 第1同焦補正量記入欄
422 第2同焦補正量記入欄
423 ズーム補正量記入欄
424 補正記録ボタン
501 オンボタン
502 オフボタン
601 ベース
602 第2支柱
603 上下操作部
604 固定ハンドル
610 プレーンステージ
90 光学ヘッド
91 ステージ
92 標本

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標本ステージ上に載置された標本に対応する光が入射する観察光学系と、
前記観察光学系から出射した光を受光して画像信号を生成する画像信号生成手段と、
前記観察光学系を該観察光学系の光軸に沿って移動させることにより、合焦操作を行う電動ヘッド操作手段と、
前記観察光学系及び前記画像信号生成手段を、前記光軸と直交する軸を中心に回転させることにより、前記光軸を前記標本ステージと直交する軸に対して傾斜させる回転手段と、
前記観察光学系の焦点と、前記観察光学系の回転軸とが一致した状態に関する情報を記憶する記憶手段と、
前記情報に基づき、電動ヘッド操作手段に前記焦点を前記回転軸に一致させる制御を行う制御手段と、
を備えることを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項2】
前記観察光学系は、対物レンズを含み、
前記対物レンズは、該対物レンズとは同焦点距離が異なる第2の対物レンズと交換可能であることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記光軸上に設置されている対物レンズ毎に、前記制御を行うことを特徴とする請求項2に記載の顕微鏡システム。
【請求項4】
前記光軸上に設置されている対物レンズを判別する対物レンズ判別手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記対物レンズ判別手段による判別結果に従って、前記焦点を前記回転軸に一致させる制御を行うことを特徴とする請求項3に記載の顕微鏡システム。
【請求項5】
前記対物レンズ判別手段は、識別情報を有する識別子と、前記識別情報を検出可能な検出手段とを含み、
前記識別子は、前記対物レンズに設けられていることを特徴とする請求項4に記載の顕微鏡システム。
【請求項6】
同焦点距離が互いに異なる複数の対物レンズをそれぞれ保持可能な複数の保持部を有し、前記複数の対物レンズの内の1つを前記光軸上に設置する対物レンズ交換手段をさらに備え、
前記対物レンズ判別手段は、識別情報を有する識別子と、前記識別情報を検出可能な検出手段とを含み、
前記識別子は、前記複数の保持部の各々に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の顕微鏡システム。
【請求項7】
前記記憶手段は、前記識別子と前記対物レンズとの対応関係をさらに記憶することを特徴とする請求項5又は6に記載の顕微鏡システム。
【請求項8】
前記情報は、前記対物レンズに対応する同焦点距離の基準値に基づいて生成され、
前記対物レンズの同焦点距離と前記基準値との差に関する情報の入力を受け付ける入力手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記差に応じて前記情報を補正することを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
【請求項9】
前記観察光学系は、焦点距離を変更可能なズーム手段を含み、
前記情報は、前記ズーム手段が変更可能な各焦点距離の基準値に応じて生成され、
前記ズーム手段の各焦点距離と前記基準値との差に関する情報の入力を受け付ける入力手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記差に応じて前記情報を補正することを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
【請求項10】
前記観察光学系と前記画像信号生成手段と前記電動ヘッド操作手段とを、前記光軸に沿って一体的に移動させる上下操作手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記上下操作手段を制御することにより、前記焦点を前記回転軸に一致させることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
【請求項11】
前記標本ステージを該標本ステージの主面と直交する方向に移動可能に保持するステージ操作手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
【請求項12】
前記電動ヘッド操作手段により前記観察光学系を移動させる操作を有効状態と無効状態とで切り替える指示の入力を受け付ける入力手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記指示に応じて、前記有効状態と前記無効状態を切り替える制御を行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
【請求項13】
前記画像信号生成手段は、CCDを含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
【請求項14】
前記回転手段を前記標本ステージの主面と直交する方向に移動させる第2の上下操作手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−72996(P2013−72996A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211626(P2011−211626)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】