説明

顕微鏡用の検査装置および顕微鏡による検査方法

【課題】誤検査を防止することができる顕微鏡用の検査装置および顕微鏡による検査方法を提供することである。
【解決手段】顕微鏡用の検査装置100においては、サンプルステージ232aによりサンプルPが保持され、気流F225aによりサンプルステージ232aの周囲に冷却雰囲気が形成され、気流F21および気流F245により冷却雰囲気の周囲に常温乾燥気流が形成される。また、孔211,221,251により顕微鏡の光学系が透過される。それにより、開放系の環境下であっても、サンプルPの正確な検査を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡用の検査装置および顕微鏡による検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、顕微鏡で被検査物を検査するために種々の研究および開発が行われている。特許文献1には、電子顕微鏡の装置外の大気中の水分が霜となって試料表面に付着するのを簡単な構造により防ぐ電子顕微鏡用試料冷却ホルダについて開示されている。
【0003】
特許文献1記載の電子顕微鏡用試料冷却ホルダは、試料ホルダと、試料表面への結露を低減させるための気体を噴出する手段とを有するものである。
【0004】
【特許文献1】特開2005−158288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の電子顕微鏡用試料冷却ホルダにおいては、試料表面への結露を防止することができるが、真の正確な検査を実施することはできない。すなわち、顕微鏡を用いた検査においては、被検査物への影響のみならず、顕微鏡のレンズへの温度影響をも考慮しなければならない。顕微鏡のレンズは、温度影響を受けやすく正確な検査を行うことができないからである。
【0006】
本発明の目的は、誤検査を防止することができる顕微鏡の検査装置および顕微鏡の検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)
一の局面に従う顕微鏡用の検査装置は、サンプル検査を行う顕微鏡の検査装置であって、サンプルを保持する保持部と、保持部の周囲に冷却雰囲気を形成する冷却雰囲気形成部と、冷却雰囲気の周囲に常温乾燥気流を形成する常温乾燥気流形成部と、顕微鏡の光学系を透過する連通部とを含むものである。
【0008】
顕微鏡用の検査装置においては、保持部によりサンプルが保持され、冷却雰囲気形成部により保持部の周囲に冷却雰囲気が形成され、常温乾燥気流形成部により冷却雰囲気の周囲に常温乾燥気流が形成される。また、連通部により顕微鏡の光学系が透過される。ここで、冷却雰囲気形成部は、冷却気流を形成するものであってもよく、冷却媒体による冷却雰囲気を形成するものであってもよい。
【0009】
この場合、冷却雰囲気形成部によりサンプルを冷却した状態でサンプル検査を行うことができ、開放系の環境下であっても、常温乾燥気流形成部によりサンプルに対する霜付着防止を実現することができる。例えば、サンプルはプラスチックフィルム等である。また、常温乾燥気流を形成することにより、顕微鏡のレンズの温度変化を防止することができるため、顕微鏡レンズの温度変化による誤検査を防止することができる。
【0010】
(2)
冷却雰囲気形成部は、第1筒部材を有し、常温乾燥気流形成部は、第1筒部材を外包する第2筒部材を有し、保持部材は、第1筒部材内に設けられてもよい。
【0011】
この場合、第2筒部材が第1筒部材を外包し、冷却雰囲気形成部は、冷却雰囲気を形成する第1筒部材を有し、常温乾燥気流形成部は、常温乾燥気流を形成する第2筒部材を有する。また、保持部が、第1筒部材内に設けられる。その結果、開放系の環境下であっても、第1筒部材におけるサンプルへの霜付着を確実に防止することができる。ここで、筒部材とは、丸筒部材、角筒部材その他任意の断面形状を有する筒部材を含む。
【0012】
(3)
冷却雰囲気形成部は、第1筒部材を有し、常温乾燥気流形成部は、第1筒部材を対峙する方向から挟持するように設けられた第3筒部材および第4筒部材を有し、保持部材は、第1筒部材内に設けられてもよい。
【0013】
この場合、第3筒部材および第4筒部材が第1筒部材を挟持し、冷却雰囲気形成部は、冷却雰囲気を形成する第1筒部材を有し、常温乾燥気流形成部は、常温乾燥気流を形成する第3および第4筒部材を有する。また、保持部が、第1筒部材内に設けられる。その結果、第3および第4筒部材により第1筒部材が挟持されているので、第1筒部材におけるサンプルへの霜の付着を確実に防止することができる。
【0014】
(4)
冷却雰囲気形成部は、第1筒部材の内部に気流分離部材をさらに含み、保持部は、気流分離部材からなってもよい。
【0015】
この場合、気流分離部材の一部により保持部が形成されるので、改めて保持部を形成する必要がなくなる。その結果、コスト削減を実現することができる。
【0016】
(5)
保持部は、加熱装置を有してもよい。
【0017】
この場合、保持部は、加熱部を有するので、保持部に保持されるサンプルを加熱処理することができる。したがって、サンプルを加熱した状態の検査を行うことができる。また、冷却雰囲気を徐々に減らし、同時に加熱装置によりサンプルを徐々に加熱することで、サンプルの温度を常温に調整することができる。その結果、サンプルを取り出した場合に、サンプルへの霜付着を確実に防止することができる。
【0018】
(6)
連通部は、顕微鏡の光学系を透過する部材からなってもよい。
【0019】
この場合、連通部は、顕微鏡の光学系を透過する部材からなるので、顕微鏡の検査結果への影響を低減することができる。例えば、当該部材とは、石英等である。
【0020】
(7)
連通部は、開口部からなってもよい。
【0021】
この場合、連通部は、開口部からなるので、顕微鏡の光学系が全く影響を受けず、サンプルにのみ顕微鏡の光学系が照射される。その結果、顕微鏡の光学系に関する影響を防止することができる。
【0022】
(8)
顕微鏡は、偏光顕微鏡であってもよい。
【0023】
この場合、顕微鏡は、偏光顕微鏡からなるので、偏光顕微鏡によりサンプルを適切に検査することができる。例えば、オルソスコープ観察、オープンニコル、クロスニコル、コノスコープ観察等を実施することができる。また、顕微鏡は、電子顕微鏡(走査型電子顕微鏡、その他の透過型電子顕微鏡)、走査型プローブ顕微鏡(原子間力顕微鏡、走査型トンネル顕微鏡、走査型近接場光顕微鏡)、X線顕微鏡、超音波顕微鏡、光学顕微鏡(実体顕微鏡、蛍光顕微鏡、レーザ走査顕微鏡、共焦点レーザ顕微鏡)等であってもよい。
【0024】
(9)
他の局面に係る検査方法は、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の検査装置を用いて当該サンプルを検査する検査方法であって、常温乾燥気流を形成する常温乾燥気流形成処理と、乾燥気流の気流内で、サンプルを保持する保持部の周囲に冷却雰囲気を形成する冷却雰囲気形成処理と、を含むものである。
【0025】
顕微鏡による検査方法においては、サンプルが保持され、次いで、常温乾燥気流形成処理により常温乾燥気流が形成され、冷却雰囲気形成処理によりサンプルの周囲に冷却雰囲気が形成される。
【0026】
この場合、サンプルを冷却した状態でサンプル検査を行うことができ、常温乾燥気流によりサンプルに対する霜付着防止を実現することができる。ここで、例えば、サンプルはプラスチックフィルム等である。また、常温乾燥気流を形成することにより、顕微鏡のレンズの温度変化を防止することができるため、顕微鏡レンズの温度変化による誤検査の影響を防止することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る顕微鏡用の検査装置および顕微鏡による検査方法によれば、誤検査を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る検査装置の一例を示す模式的説明図である。
【図2】図1のサンプルホルダの断面の一例を示す模式的断面図である。
【図3】第2の実施の形態に係るサンプルホルダの一例を示す模式的断面図である。
【図4】第3の実施の形態に係るサンプルホルダの一例を示す模式的断面図である。
【図5】第4の実施の形態に係る検査装置の一例を示す模式的説明図である。
【図6】サンプルホルダの他例の使用状態を示す模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を用いて説明する。以下、偏光顕微鏡を用いて被検査物の光抜けを検査する検査装置に本発明を適用した場合について具体例を挙げて説明を行う。
以下においては、まず、光学異方性光抜けに関して説明を行い、従来の装置によるデメリットについて説明を行い、その後、本発明に係る検査装置および検査方法について説明を行う。
【0030】
<光抜け>
一般に、液晶ディスプレイ等においては、軸が直交した偏光板に挟持された構造を有しており、光源からの光を透過させる、または透過させないという機能は、液晶層が担っている。したがって、液晶層以外の部材が偏光特性を有すると、液晶ディスプレイにおけるコントラスト(白黒)が小さくなり、当該材質を使用することができない。当該偏光特性は、一般に“光抜け”と呼ばれる。
【0031】
例えば、従前、当該液晶ディスプレイには、ガラス板が使用されていた。しかしながら、ガラス板は、割れ易い、曲げられない、軽量化に不向きである等特性の問題あり、近年、上記の特性を回避するため、プラスチック素材を含む透明複合シート、例えばガラスクロス複合基板等が使用されている。
【0032】
ここで、一般的なガラスクロス複合基板においては、当該構造の複合化により熱膨張係数のミスマッチ(以下、CTEミスマッチと呼ぶ。)が生じる場合がある。すなわち、ガラスの熱膨張係数は、数ppm/℃であるのに対し、樹脂の熱膨張係数は、数十ppm/℃であるためである。その結果、当該CTEミスマッチによる歪が界面近傍の樹脂側に集中し、樹脂が配向することで、複屈折が生じ、光抜けが生じる場合がある。
【0033】
<従来の装置のデメリット>
従来の装置においては、位相差測定装置または微小位相差測定装置等がある。
位相差測定装置においては、測定エリアが1mmφ〜20mmφであり、測定範囲は広いものの位相軸によって平均化されるため、位相差に配向パターンがあると正確な測定が出来ないという問題がある。
【0034】
一方、微小位相差測定装置においては、測定エリアが50μmφ〜100μmφであり、測定範囲が狭く、分解能が高いが、検査を行うのに、かなりの時間と労力とを費やす必要がある。
【0035】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明に係る検査装置100の一例を示す模式的説明図であり、図2は、図1のサンプルホルダ200の断面の一例を示す模式的断面図である。
【0036】
図1に示すように、検査装置100は、サンプルホルダ200、不活性ガスが充填された常温乾燥タンク300、冷却気流タンク400、第1バルブ310および第2バルブ410を含む。
【0037】
図1に示す検査装置100は、常温乾燥タンク300から第1バルブ310を介して後述するサンプルホルダ200に常温乾燥気流を供給できるように形成され、冷却気流タンク400から第2バルブ410を介して後述するサンプルホルダ200に冷却気流を供給できるように形成される。なお、当該冷却気流は、例えば窒素を乾燥フィルターに通して、さらに当該窒素を液体窒素中に通した冷却窒素を利用することができ、常温乾燥気流は、例えば窒素を乾燥フィルターに通した常温乾燥窒素を利用することができる。
【0038】
図1および図2に示すように、サンプルホルダ200は、主に内部に空間を有する筒部材からなる。図1に示すように、筒部材は、断面形状が矩形状の筒部材からなる。また、図2においては、筒部材の天面を形成する板部材210と、筒部材の底面を形成する板部材250とを有する。図2に示すように、当該矩形状の筒部材の内部空間を仕切るように、板部材220、板部材230、板部材240が設けられる。
【0039】
図1および図2に示すように、板部材210および板部材220との間には、空間215が形成され、板部材220および板部材230との間には、空間225が形成され、板部材230および板部材240との間には、空間235が形成され、板部材240および板部材250との間には、空間245が形成される。
【0040】
また、空間215の空間体積をV1とし、空間225の空間体積をV2とした場合、空間体積V2は、サンプルPを冷却可能な雰囲気を有すればよい。すなわち、本実施の形態においては、冷却気流の流量と空間225の体積との相互関係によりサンプルPを冷却する空間体積V2が規定される。また、空間体積V1については、孔221の口径および冷却気流および常温乾燥気流の流量と、空間215の体積との相互関係により空間体積V1が規定される。
【0041】
具体例として、例えば、空間215の空間体積をV1とし、空間225の空間体積をV2とした場合、体積比(V1/V2)が1/10から10までの範囲内であることが好ましい。すなわち、体積比(V1/V2)が1/10以下であると、乾燥効果が有効に生じ難くなり、体積比(V1/V2)が10以上であると、冷却効果が生じ難くなる。
【0042】
また、板部材210,〜,250には、それぞれ孔211,221,231,241,251が設けられる。当該孔211,〜,251は、偏光顕微鏡による光を通過できるサイズで形成されている。
【0043】
なお、図2においては、当該孔211,〜,251が、同じ孔サイズの場合について図示したが、これに限定されず、それぞれが任意のサイズで形成されていてもよい。すなわち、孔211側から孔251側まで偏光顕微鏡による光を通過できるサイズが維持されていれば、孔211,〜,251は、それぞれ任意のサイズの孔であってもよい。
【0044】
次に、実際にガラスクロス複合基板のサンプルPを検査する工程について説明を行う。図2に示すように、サンプルPは、検査装置100の板部材230の孔231を閉塞するように載置される。
【0045】
続いて、図1に示すように、第1バルブ310を開放することにより、常温乾燥タンク300から不活性ガスからなる常温の乾燥気体が、空間215に気流F215として供給され、空間245に気流F245として供給される。
【0046】
次に、第2バルブ410を開放することにより、冷却気流タンク400から冷却気体が、空間225に気流F225として供給され、空間235に気流F235として供給される。
【0047】
その結果、空間215および空間245に常温乾燥気流である気流F215および気流F245が形成され、その後、サンプルPの周囲である空間225および空間235に冷却気流である気流F225および気流F235が形成される。したがって、冷却気流である気流F225を空間225,235に充満させた場合であっても、周囲の空間215,245に常温乾燥気流が形成されているので、開放系の環境下であっても、空気中の水分が霜に変換せず、サンプルPに霜の付着が生じない。
【0048】
また、孔211,221,231,241,251を通して偏光顕微鏡によりサンプル検査を行った場合、孔211および孔251の周囲には、常温乾燥気流が流れることにより偏光顕微鏡のレンズへの温度影響を低減することができる。
【0049】
よって、サンプルPの環境変化を加えた状態において、内部応力を可視化し、正確に光抜けの検査を正確に実施することができる。
【0050】
<実施例>
次に、第1の実施の形態に係る検査装置100の効果を確認するため、ガラスクロス複合基板をサンプルPとして実験を行った。
【実施例1】
【0051】
実施例1においては、検査装置100を用いて開放系の環境下でサンプルPの検査を行った(表1参照)。
【0052】
(比較例1)
比較例1においては、サンプルPの周囲に冷却窒素のみによる冷却を実施し、顕微鏡のレンズを冷却窒素雰囲気内に配置して密閉系の環境下で、サンプルPの検査を行った(表1参照)。
【0053】
(比較例2)
比較例2においては、サンプルPの周囲に冷却窒素のみによる冷却を実施し、顕微鏡のレンズを冷却窒素雰囲気外に配置して開放系の環境下で、サンプルPの検査を行った(表1参照)。
【0054】
【表1】

結果A)顕微鏡レンズの温度(サンプルPを−20℃にした場合)
結果B)サンプルPへの霜付着
結果C)サンプルPの光抜けの検査(リタデーション換算、nm)
【0055】
ここで、結果Cにおける光抜けの検査の詳細について説明を行う。透明複合シートをクロスニコルにした偏光顕微鏡で観察した。偏光顕微鏡の光軸を固定し、光源の強さを一定にした状態でサンプルを回転させ、シートの一部分あるいは全体がもっとも明るくなる角度にセットした。2.4mm×1.8mmの観察部分を画像(画素数640x480)化してPCに取り込み、これを各画素が0〜255の階調を持つ白黒画像に変換した。この白黒画像中の各画素の階調を総和し、この総和値をリタデーション換算したものを光り抜けの値とした。
【0056】
以上のように、比較例1においては、サンプルPへの霜付着が生じないものの、顕微鏡レンズの温度が低下し、正確な検査を行うことができなかった。また、比較例2においては、サンプルPへの霜付着が生じ、正確な検査を行うことができなかった。
【0057】
一方、実施例1においては、サンプルPの霜付着が生じず、顕微鏡レンズの温度低下も生じず、正確な検査を行うことができた。
【0058】
<第2の実施の形態>
次に、本発明に係る第2の実施の形態について説明を行う。第2の実施の形態においては、第1の実施の形態に係る検査装置100と主に相違する点について説明を行う。第2の実施の形態に係る検査装置は、サンプルホルダ200の代わりにサンプルホルダ200aを有する。
【0059】
図3は、第2の実施の形態に係るサンプルホルダ200aの一例を示す模式的断面図である。
【0060】
図3に示すように、サンプルホルダ200aは、主に内部に空間を有する筒部材からなる。図1と同様に、図3においても、筒部材は、断面形状が矩形状の筒部材からなる。また、図3においても、筒部材の天面を形成する板部材210と、筒部材の底面を形成する板部材250とを有する。
図3に示すように、サンプルホルダ200aにおいては当該矩形状の内部空間を仕切るように、板部材220、板部材230aが設けられる。
【0061】
図3の板部材230aは、図2の板部材230と異なり、サンプルステージ232aを有する。サンプルステージ232aは、サンプルPを板部材230aから離間させた状態で保持できるよう複数の支持部材(後述する図5に示すサンプルステージ232cと同様の形状)からなる。
【0062】
また、板部材210および板部材220との間には、空間215が形成され、板部材220および板部材230aとの間には、空間225aが形成され、板部材230aおよび板部材250との間には、空間245が形成される。
【0063】
図3の検査装置200aにおいては、第1バルブ310を開放することにより、常温乾燥タンク300から不活性ガスからなる常温の乾燥気体が、空間215に気流F215として供給され、空間245に気流F245として供給される。
【0064】
次に、第2バルブ410を開放することにより、冷却気流タンク400から冷却気体が、空間225aに気流F225aとして供給される。この場合、サンプルPがサンプルステージ232aにより支持されているので、サンプルステージ232a部分、すなわち、サンプルPの裏面側にも、気流F225aが流れ、サンプルPの表裏を冷却することができる。
【0065】
その結果、冷却気流である気流F225aを空間に充満させた場合であっても、周囲の空間215,245に常温乾燥気流が形成されているので、開放系の環境下であっても、サンプルPに霜の付着が生じない。
【0066】
また、孔211,221,251を通して偏光顕微鏡により検査を行った場合、孔211および孔251の周囲には、常温乾燥気流を流すことにより偏光顕微鏡のレンズへの温度影響を低減することができる。よって、サンプルPの環境変化を加えた状態において、内部応力を可視化し、正確に光抜けの検査を実施することができる。
【0067】
また、第2の実施の形態においては、第1の実施の形態と比較して、板部材240を削減することができるので、低コストで検査装置200aを製造することができる。また、サンプルステージ232aの構成を簡易にすることで、検査装置200aの厚みを薄くすることができる
【0068】
<第3の実施の形態>
次に、本発明に係る第3の実施の形態について説明を行う。第3の実施の形態においては、第1の実施の形態に係る検査装置100と主に相違する点について説明を行う。第3の実施の形態に係る検査装置は、サンプルホルダ200の代わりにサンプルホルダ200bを有する。
【0069】
図4は、第3の実施の形態に係るサンプルホルダ200bの一例を示す模式的断面図である。
【0070】
図4に示すように、サンプルホルダ200bは、主に内部に空間を有する筒部材からなる。図1と同様に、図3においても、筒部材は、断面形状が矩形状の筒部材からなる。また、図4においても、筒部材の天面を形成する板部材210と、筒部材の底面を形成する板部材250とを有する。図4に示すように、当該矩形状の内部空間を仕切るように、板部材220、板部材230b、板部材240が設けられる。
【0071】
図4の板部材230bは、図2の板部材230と異なり、温度調整機能を有する温度調整板部材230bである。例えば、温度調整板部材230bは、サンプルPを保持しつつ、温度上昇または温度下降を行うことができる。
【0072】
このように、第4の実施の形態に係る検査装置においては、サンプルホルダ200bの温度調整板部材230bの働きにより、サンプルPの環境変化、具体的には、温度を上昇させたり、低下させたりして、内部応力を可視化し、正確に光抜けの検査を実施することができる。
【0073】
また、第4の実施の形態に係る検査装置においては、温度調整板部材230bの温度を低下させた状態で、冷却気流を減らし、徐々に温度調整板部材230bの温度を上昇させて、サンプルP自体の温度を常温に戻すこともできる。
【0074】
なお、温度調整板部材230bは、具体的にヒータであってもよく、または冷却媒体であってもよい。さらに、当該冷却媒体として、ペルチェ素子または温度調整板部材230b中に冷却液体を流す方法を有した媒体等であってもよい。
【0075】
<第4の実施の形態>
続いて、本発明に係る第4の実施の形態について説明を行う。第4の実施の形態においては、第1の実施の形態に係る検査装置100と主に相違する点について説明を行う。
【0076】
図5は、第4の実施の形態に係る検査装置100cの一例を示す模式的説明図である。
【0077】
図5に示すように、検査装置100cは、サンプルホルダ200c、不活性ガスが充填された常温乾燥タンク300、冷却気流タンク400、第1バルブ310および第2バルブ410を含む。
【0078】
図5に示す検査装置100cは、常温乾燥タンク300から第1バルブ310を介して後述するサンプルホルダ200cに常温乾燥気流を供給できるように形成され、冷却気流タンク400から第2バルブ410を介して後述するサンプルホルダ200cに冷却気流を供給できるように形成される。
【0079】
図5に示すように、サンプルホルダ200cは、主に内部に空間を有する2重の筒部材からなる。図5に示すように、2重の筒部材の外筒250cおよび内筒210cのいずれも、断面形状が矩形状の筒部材からなる。
外筒250cの内部空間で、かつ内筒210cの外部空間には、空間215cが設けられ、内筒210cの内部空間には、空間225cが設けられる。
【0080】
また、内筒210cの天面には、孔221cが設けられ、底面には図3と同じように、サンプルステージ232cおよび孔231cが設けられる。
同様に、外筒250cの天面には、孔211cが設けられ、底面には、孔251cが設けられる。
【0081】
次に、実際にガラスクロス複合基板のサンプルPを検査する工程について説明を行う。図5に示すように、サンプルPは、検査装置100cのサンプルステージ232cに載置される。
【0082】
続いて、図5に示すように、第1バルブ310を開放することにより、常温乾燥タンク300から不活性ガスからなる常温の乾燥気体が、空間215cに気流F215cとして供給される。そして、不活性ガスからなる常温の乾燥気体が、外筒250cの内部空間で、かつ、内筒210cの外部空間に充満される。
【0083】
次に、第2バルブ410を開放することにより、冷却気流タンク400から冷却気体が、内筒210cの内部空間225cに気流F225cとして供給される。その結果、冷却気体が、内部空間225cの内部に充満される。
【0084】
その結果、空間215cに常温乾燥気流である気流F215cが形成され、その後、サンプルPの周囲である内部空間225cに冷却気流である気流F225cが形成される。したがって、冷却気流である気流F225cを空間225に充満させた場合であっても、周囲の空間215cに常温乾燥気流が形成されているので、開放系の環境下であっても、サンプルPに霜の付着が生じない。さらに、二重筒部材からなるので、内筒210cの外面にも霜の付着が生じない。
【0085】
また、孔211c,221c,231c,251cを通して偏光顕微鏡により検査を行った場合、孔211cおよび孔251cの周囲には、常温乾燥気流が流れることにより偏光顕微鏡のレンズへの温度影響を低減することができる。
【0086】
よって、サンプルPの環境変化を加えた状態において、内部応力を可視化し、正確に光抜けの検査を実施することができる。
【0087】
以上のように、検査装置100,100cにおいては、気流F225,F235,F225a,F225cによりサンプルPを冷却した状態でサンプル検査を行うことができ、気流F215,F245,F215cによりサンプルPに対する霜付着防止を実現することができる。また、気流F215,F245,F215cを形成することにより、顕微鏡のレンズの温度変化を防止することができるため、顕微鏡レンズの温度変化による誤検査を防止することができる。
【0088】
また、内筒210cおよび外筒250cを形成することにより内筒210cの外周への霜付着を防止することができる。さらに温度調整板部材230bを使用することにより種々の環境下において検査を行うことができる。
【0089】
なお、上記の実施の形態においては、筒部材からなることとして説明を行ったが、これに限定されない。例えば、図6は、サンプルホルダ200eの使用状態を示す模式図である。
【0090】
図6に示すように、偏光顕微鏡800のレンズ810および光源820の間にサンプルホルダ200eを載置する。また、サンプルホルダ200eは、検査装置200eの孔211,〜孔251が、偏光顕微鏡800のレンズ810および光源820間を通過する光を遮蔽しない状態で載置される。
【0091】
また、図6に示すように、サンプルホルダ200eは、板部材210,〜,板部材250からなり、互いの板部材210,〜,板部材250の各間にゴム部材RBを設けている。それにより、空間領域が形成される。
【0092】
そして、サンプルPの周囲である板部材220および板部材230の空間領域と、板部材230および板部材240の空間領域とに、冷却気体である気流を形成し、板部材210および板部材220の空間領域と、板部材240および板部材250の空間領域とに、常温乾燥気流である気流を供給することで、サンプルPの検査を正確に行うことができる。
【0093】
また、上記の実施の形態において、気流の入口の形状と出口の断面積が変化していない場合について説明しているが、これに限定されず、気流の入口の形状と出口の断面積を変化させてもよい。
【0094】
また、サンプルステージ232a,232cは、3本の支持部材からなることとしているが、これに限定されず、他の任意の本数、形状からなる支持部材であってもよい。
【0095】
また、第4の実施の形態においては、矩形状の二重筒部材からなることとしているが、これに限定されず、断面形状が円形の二重筒部材からなってもよく、矩形状と円形との断面形状からなる二重筒部材であってもよく、気流の入口と出口において断面形状の異なる二重筒部材であってもよい。さらに、気流を進行方向に螺旋状に回転させ空間に当該気体を充満させてもよい。
【0096】
本実施の形態においては、サンプルホルダ200,200a,200b,200c,200eのみ、またはそれらを含む検査装置100,100cが顕微鏡用の検査装置に相当し、サンプルPがサンプルに相当し、サンプルステージ232a,232c、板部材230の孔231および板部材230bの孔231bの周辺が保持部に相当し、気流F225,F235,F225a,F225cが冷却雰囲気に相当し、冷却気流タンク400、第2バルブ410、板部材220および板部材230、板部材230および板部材240、板部材220および板部材230a、板部材220および板部材230b、板部材230bおよび板部材240、内筒210cが冷却雰囲気形成部に相当する。
【0097】
また、気流F215,F245,F215cが常温乾燥気流に相当し、常温乾燥タンク300、第1バルブ310、板部材210および板部材220、板部材240および板部材250、板部材230aおよび板部材250、外筒250cが常温乾燥気流形成部に相当し、孔211,221,231,241,251、231b,231cが連通部および開口部に相当し、温度調整板部材230bが加熱装置に相当し、石英等が顕微鏡の光学系を透過する部材に相当する。
【0098】
さらに、内筒210c、板部材220および板部材240と側壁とにより形成される部材が第1筒部材に相当し、外筒250cが第2筒部材に相当し、板部材210および板部材220と側壁、板部材240および板部材250と側壁、板部材230aおよび板部材250と側壁、とにより形成される部材が第3筒部材および第4筒部材に相当し、板部材230,230a,231bが気流分離部材に相当する。
【0099】
本発明の好ましい実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれらだけに制限されない。本発明の主旨と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0100】
100,100c 検査装置
210,220,230,230a,240,250 板部材
211,221,231,241,251,231b,231c 孔
210c 内筒
232a,232c サンプルステージ
230b 温度調整板部材
250c 外筒
300 常温乾燥タンク
310 第1バルブ
400 冷却気流タンク
410 第2バルブ
P サンプル
F215,F215c,F225,F225a 気流
F225c,F235,F245 気流


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル検査を行う顕微鏡用の検査装置であって、
前記サンプルを保持する保持部と、
前記保持部の周囲に冷却雰囲気を形成する冷却雰囲気形成部と、
前記冷却雰囲気の周囲に常温乾燥気流を形成する常温乾燥気流形成部と、
前記顕微鏡の光学系を透過する連通部と、を含むことを特徴とする顕微鏡用の検査装置。
【請求項2】
前記冷却雰囲気形成部は、第1筒部材を有し、
前記常温乾燥気流形成部は、前記第1筒部材を外包する第2筒部材を有し、
前記保持部材は、前記第1筒部材内に設けられたことを特徴とする請求項1記載の顕微鏡用の検査装置。
【請求項3】
前記冷却雰囲気形成部は、第1筒部材を有し、
前記常温乾燥気流形成部は、前記第1筒部材を対峙する方向から挟持するように設けられた第3筒部材および第4筒部材を有し、
前記保持部材は、前記第1筒部材内に設けられたことを特徴とする請求項1記載の顕微鏡用の検査装置。
【請求項4】
前記冷却雰囲気形成部は、前記第1筒部材の内部に気流分離部材をさらに含み、
前記保持部は、前記気流分離部材からなることを特徴とする請求項2または3に記載の顕微鏡用の検査装置。
【請求項5】
前記保持部は、加熱装置を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の顕微鏡用の検査装置。
【請求項6】
前記連通部は、前記顕微鏡の光学系を透過する部材からなることを特徴とすることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の顕微鏡用の検査装置。
【請求項7】
前記連通部は、開口部からなることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の顕微鏡用の検査装置。
【請求項8】
前記顕微鏡は、偏光顕微鏡であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の顕微鏡用の検査装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の検査装置を用いて当該サンプルを検査する検査方法であって、
前記常温乾燥気流を形成する常温乾燥気流形成処理と、
前記常温乾燥気流の気流内で当該サンプルの保持部の周囲に冷却雰囲気を形成する冷却雰囲気形成処理と、を含むことを特徴とする顕微鏡による検査方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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