説明

顕微鏡用カバーフイルム及びその製造方法

【課題】焦点ボケをなくし、スライドガラスと密着させることが可能なカバーフイルムを提供する。
【解決手段】カバーフイルム10をTACフイルム11と接着剤層12とから構成する。TACフイルムの厚みT1を110μm以上130μm以下とする。TACフイルム11には可塑剤を14重量%以上16重量%以下添加する。TACフイルム11と接着剤層12との総合厚みT3を130μm以上170μm以下とする。接着剤層12の乾燥時の収縮によってトイ状カールをTACフイルム11に付与する。スライドガラスにカバーフイルム10が固着される際に、封入液による接着剤層12の膨潤または溶解により発生するマイナスカールを超えるカール量とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動封入に適した顕微鏡用カバーフイルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透過型照明光学顕微鏡(以下「顕微鏡」という)は様々な分野において用いられている。例えば、医療業における細胞診や組織診等の場合には、試料である細胞を試料保持部材であるスライドガラス上に載せ、その上を保護用透明部材であるカバーガラスで覆い、それらスライドガラスとカバーガラスとを重ね合わせたものを標本として顕微鏡により観察する。近年は、細胞診等の高速処理化に応えるために、標本作製の自動化がなされている。標本作製の自動化は、接着剤を塗布したカバーガラスと、その接着剤を膨潤あるいは溶解させる有機溶剤が数滴滴下され、試料が載せられているスライドガラスと重ね合わせることによって実現されている。なお、この重ね合わせについては、「封入」と呼ばれている。
【0003】
さらには、保護用透明部材として、前述のカバーガラスに代えてセルローストリアセテートのようなポリマーフイルムが用いられるようになってきた。このポリマーフイルムに接着剤が塗布されたものは、カバーフイルムと呼ばれている。ポリマーフイルムは、カバーガラスと比べて可撓性に富んでおり、塗布する接着剤の収縮力を利用してポリマーフイルムをその接着剤が塗布された側にカールさせている。封入時には、このポリマーフイルムのカールを利用してスライドガラスと密着させる。これにより、カバーフイルムとスライドガラスとの間に、気泡が混入することを防止できる。
【0004】
しかしながら、ポリマー製のカバーフイルムについては多くの利点がある一方、幾つかの問題も浮上してきた。例えば、通常のポリマーフイルムの厚みは0.1mmであり、その厚みに接着剤の厚みを加えても実質上0.12mm程度の厚みにしかならず、カバーガラスの標準の厚みである0.17mmよりも小さくなってしまう。そのため、顕微鏡の対物レンズによる球面収差を十分に補正することができず、焦点ボケが生じてしまうことになる。なお、ここに言う球面収差とは、対物レンズの球面中心付近を通る光とその周縁部を通る光とが光軸上の一点に集まらない現象をいう。
【0005】
この課題に対して、特許文献1記載の発明は、対物レンズの開口数と倍率とを調節することによって、焦点ボケを解消している。なお、特許文献2ないし4の発明は、カバーフイルムをロール状に保存した際に、接着剤によりフイルム同士がくっついてしまうブロッキング等のカバーフイルムの接着剤が引き起こす問題の解決を図っている。
【特許文献1】特開2001−242384号公報
【特許文献2】特開昭62−38408号公報
【特許文献3】特開平1−203940号公報
【特許文献4】特開平11−101943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の発明は、顕微鏡使用時に補正用対物レンズを用いる必要がある。この種の補正用対物レンズは高価であり、かつ補正操作も必要となって改善が望まれていた。
【0007】
また、焦点ボケの問題は、ポリマーフイルムの厚みをカバーガラスの厚みに近づけることにより解消されるが、ポリマーフイルムの厚みを上げると、その剛性が向上し、接着剤側にポリマーフイルムがカールしにくくなる。カールしにくくなることで、カバーフイルムとスライドガラスとの密着性が弱くなり、気泡が混入しやすくなる。気泡が入ってしまうと、この気泡成分から膜剥がれが発生し、標本の保存に問題が生じる。
【0008】
本発明は、顕微鏡の光学系の設定を変更することなく焦点ボケを解消するとともに、スライドガラスと密着させることが可能な顕微鏡用カバーフイルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、透明支持体とこの透明支持体上に形成される接着剤層とからなり、スライドガラス上の被検体を覆うように載せられて、封入液により前記接着剤層を膨潤または溶解させて前記スライドガラスに固着される顕微鏡用カバーフイルムにおいて、前記透明支持体は、厚みが110μm以上130μm以下であるセルロースアシレートであり、このセルロースアシレートには可塑剤が14重量%以上16重量%以下添加され、前記接着剤層は、前記透明支持体を加えた乾燥後の総合厚みが130μm以上170μm以下となるように形成され、前記接着剤層の乾燥時の収縮によってトイ状カールが付与されており、前記トイ状カールは、前記スライドガラスに固着される際に、前記封入液による前記接着剤層の膨潤または溶解により発生する逆カール量を超えるカール量であることを特徴とする。
【0010】
前記逆カール量を超えたカール量は、45mm×300mmの矩形状サンプルを平坦面に載せたときに最大高さが1mm以上10mm以下となるカール量であることが好ましい。前記透明支持体に前記接着剤層を塗布して形成する際の接着剤の粘度が85cp以上115cp以下であり、前記接着剤層の塗布後に、乾燥温度を100℃以上150℃以下として5秒以内に前記接着剤層を乾燥させることが好ましい。
【0011】
本発明の顕微鏡用カバーフイルムの製造方法は、可塑剤が14重量%以上16重量%以下添加され、厚みが110μm以上130μm以下であるセルロースアシレートを前記透明支持体として用い、前記透明支持体を加えた乾燥後の総合厚みが130μm以上170μm以下となるように前記透明支持体の一方の面に前記接着剤層を塗布形成する工程と、前記接着剤層を塗布後に乾燥温度を100℃以上150℃以下として5秒以内に前記接着剤層を乾燥させて、前記接着剤層によってトイ状カールを付与する乾燥工程とを有し、前記トイ状カールは、前記スライドガラスに固着される際に、前記封入液により前記接着剤層の膨潤または溶解により発生する逆カール量を超えたカール量であることを特徴とする。
【0012】
前記トイ状カールは、45mm×300mmの矩形状サンプルを平坦面に載せたときの最大高さが1mm以上10mm以下となるカール量を有することが好ましい。前記接着剤層を塗布形成する工程での接着剤の粘度が85cp以上115cp以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、透明支持体とこの透明支持体上に形成される接着剤層とからなり、スライドガラス上の被検体を覆うように載せられて、封入液により前記接着剤層を膨潤または溶解させて前記スライドガラスに固着される顕微鏡用カバーフイルムにおいて、前記透明支持体は、厚みが110μm以上130μm以下であるセルロースアシレートであり、このセルロースアシレートには可塑剤が14重量%以上16重量%以下添加され、前記接着剤層は、前記透明支持体を加えた乾燥後の総合厚みが130μm以上170μm以下となるように形成され、前記接着剤層の乾燥時の収縮によってトイ状カールが付与されており、前記トイ状カールは、前記スライドガラスに固着される際に、前記封入液による前記接着剤層の膨潤または溶解により発生する逆カール量を超えるカール量であることにより、焦点ボケを解消するとともに、封入する際に気泡を混入させることなくスライドガラスと密着させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に示すように、本発明の顕微鏡用カバーフイルム10(以下単に「カバーフイルム」という)は、透明支持体であるトリアセチルセルロースフイルム11(以下「TACフイルム」という)と、このTACフイルム11上に形成される接着剤層12とからなる。なお、透明支持体については、TACフイルムのみに限定する必要はなく、透明で可撓性のあるポリマーフイルムが用いられる。特にセルロースアセテートフイルムが好ましく用いられる。
【0015】
TACフイルム11は、周知の溶液製膜方法により製造される。溶液製膜方法はドープ調製工程とフイルム製造工程からなる。ドープ調製工程において、ポリマーであるトリアセチルセルロースを溶媒に溶解させ、可塑剤等を添加してドープを調製し、フイルム製造工程において、走行する無端の支持体にドープを流延して流延膜を形成し、支持体から流延膜を剥ぎ取って湿潤フイルムとし、この湿潤フイルムを延伸及び乾燥させて、TACフイルム11を得る。
【0016】
図2に示すように、製造後のTACフイルム11の厚さT1は、110μm以上130μm以下であることが好ましい。110μm未満であると、前述のように、球面収差を十分に補正することができず、焦点ボケが生じてしまうことになる。一方、厚みT1を110μm以上にすることで、焦点ボケを解消することはできるが、TACフイルム11の剛性が向上し、カールしにくくなる。そこで、ドープ調製工程内でドープに添加される可塑剤の量を、通常の14重量%から15重量%に引き上げて、カールがつきやすいようにしている。ここに言う重量%は、TACに対する重量パーセントをいう。なお、可塑剤の添加量は、14重量%以上16重量%以下であることが好ましく、14.5重量%以上15.5重量%以下であることがより好ましい。また、可塑剤としては、トリフェニルフォスフェートやジフェニルフォスフェートなどが挙げられる。
【0017】
接着剤層12の接着剤は、ガラス転移温度が50℃のポリマー接着剤であることが好ましい。ポリマー接着剤としては、例えばアクリル系接着剤やポリエステル系接着剤が挙げられる。アクリル系接着剤であればアロンS−1017、アロンS−1030C(いずれも東亞合成化学工業(株)製)を、ポリエステル系接着剤であればバイロン200(東洋紡績(株)製)を用いることが好ましい。接着剤層12の厚みT2は10μm以上30μm以下であることが好ましい。そして、この接着剤層12の厚みT2にTACフイルム11の厚みT1を加えた総合厚みT3、すなわちカバーフイルムの厚みT3は130μm以上170μm以下であることが好ましい。
【0018】
接着剤の粘度は、85cp以上115cp以下であることが好ましく、100cp以上115cp以下であることがより好ましい。85cp未満であると、封入時において、後述する封入液に接着剤が膨潤または溶解したときに、その接着剤に起因するTACフイルム11の収縮力が低下して、カバーフイルム10がカールしにくくなり、カバーフイルム10とスライドガラス13(図3参照)との密着性が弱くなる。そのため、カバーフイルム10の側縁部とスライドガラス13との間に隙間ができてしまい、気泡が混入してしまう。
【0019】
図3に示すように、カバーフイルム10は、被検体(図示省略)が載せられ、かつ接着剤を膨潤または溶解させる封入液が数滴滴下されたスライドガラス13に自動封入機(図示省略)によって、自動的に重ね合わされる。封入液は有機溶剤が好ましく、例えばキシレンが用いられる。
【0020】
図4に示すように、カバーフイルム10のカールの程度は、平坦面からのカバーフイルム10のサンプル14の高さHにより表される。このカールの程度のことを、トイ状カール量という。サンプル14は、TACフイルム11に接着剤層12を塗布した原反フイルムを、その流延方向に長さLを300mm、幅を45mmとして裁断したものである。接着剤層12側にカールすることをプラスカールといい、接着剤層12側と反対側にカールすることをマイナスカールという。以下、図5及び図6を用いて、カバーフイルム10をカールさせた場合とカールさせない場合の相異について、説明する。
【0021】
図5(A)は、被検体が載せられ、かつ封入液15が滴下されたスライドガラス13に、ある程度プラスカールさせたカバーフイルム16を重ね合わせる前の状態を示しており、(B)はそのカバーフイルム16がスライドガラス13に重ね合わされた状態を示している。一方、図6(A)は、被検体が載せられ、かつ封入液15が滴下されたスライドガラス13に、カールさせていないカバーフイルム17を重ね合わせる前の状態を示しており、(B)はそのカバーフイルム17がスライドガラスに重ね合わされた状態を示している。
【0022】
図5(B)に示すように、ある程度プラスカールさせたカバーフイルム16はスライドガラス13と密着するが、図6(B)に示すように、カールさせていないカバーフイルム17は、封入液15により接着剤が膨潤または溶解した際の収縮力により、マイナスカールしてしまう。そのため、カバーフイルム16の側縁部が浮いてしまい、その側縁部とスライドガラス13との間に気泡が混入してしまう。したがって、カバーフイルム10とスライドガラス13とを密着させるために、封入液15による収縮力が発生したときに、カバーフイルム10がマイナスカールしないように、このマイナスカールを見越して、予めカバーフイルム10に多めのプラスカールさせておく。このときのトイ状カール量は、1mm以上10mm以下であることが好ましい。この範囲のトイ状カール量を有するカバーフイルム10を用いることで、封入時に接着剤の膨潤または溶解によってマイナスカールしても、カバーフイルム全体としてプラスカールに保持しておくことができ、気泡の混入を防ぐことができる。
【0023】
図7に示すように、カバーフイルム10を製造するカバーフイルム製造ライン20は、塗布装置21、送風装置22、巻取装置23を備えている。ロール状のTACフイルム11は塗布装置21に送られ、その塗布装置21によりTACフイルム11の一方の表面に接着剤が塗布されて、接着剤層12が形成される。TACフイルムの厚みは110μm以上130μm以下であることが好ましい。また、接着剤の粘度は85cp以上115cp以下であることが好ましい。また、接着剤層の厚みは、TACフイルムの厚みを加えた総合厚みが130μm以上170μm以下となるように、することが好ましい。接着剤層12が形成されたカバーフイルム10は塗布装置21を出てから、パスローラ25により巻取装置23まで搬送される。
【0024】
パスローラ25による搬送中には、カバーフイルム10に対して、送風装置22から乾燥風27が送られる。この乾燥風27により、カバーフイルム10を乾燥させる温度を100℃以上150℃以下にすることが好ましく、105℃以上130℃以下にすることがより好ましい。この温度は従来における乾燥温度よりも高く設定しており、温度を上げることで、接着剤中の溶媒分の蒸発を活性化させて、カバーフイルム10をプラスカールさせている。カバーフイルム10のトイ状カール量は1mm以上10mm以下であることが好ましい。また、乾燥風27による乾燥時間は、カバーフイルム10が塗布装置21を出てから1秒以上10秒以下であることが好ましく、5秒以上8秒以下であることがより好ましい。なお、塗布後の乾燥を送風装置22からの乾燥風により行ったが、これに限る必要はない。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0026】
実施例1〜3及び比較例1〜3において、以下の5つの条件を変えて実施した。
T1;TACフイルム11の厚み(μm)
P1:可塑剤添加量(TACフイルムに対する重量パーセント)
D1:接着剤塗布後の乾燥温度(℃)
DT1:乾燥風27による塗布を出てからの乾燥時間(秒)
V1:接着剤塗布時の接着剤の粘度(cp)
各実施例において、封入した後にカバーフイルム10の側縁部とスライドガラス13との間に気泡が混入しているか否か(下記表1中「気泡」)、焦点ボケが発生するか否か(下記表1中「焦点」)について評価を行った。なお、接着剤層の厚みは19μmとした。接着剤はアロンS−1030Cを酢酸エチルとトルエンとが4:6(容積比)の混合溶媒に溶かした溶液とした。この接着剤をTACフイルム11に190g/mで塗布した。このときのトルエンの塗布量は86g/m、酢酸エチルの塗布量は58g/mであった。封入液としてキシレンを用いた。接着剤の粘度は、ブルックフィールド社製のブルックフィールドアナログ粘土計を用いて測定した。
【0027】
各実施例における条件とその実施例の結果を表1に示す。「気泡」の欄については、○が気泡が混入しなかったことを、×は気泡が混入したことを示している。「焦点」の欄については、○が焦点ボケが生じなかったことを、×が焦点ボケが生じたことを示している。
【0028】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】カバーフイルムの斜視図である。
【図2】カバーフイルムの断面図である。
【図3】カバーフイルムがスライドガラスに重ね合わされた状態を示す斜視図である。
【図4】カバーフイルムのサンプルを示す斜視図である。
【図5】(A)ある程度プラスカールさせたカバーフイルムをスライドガラスに重ね合わせる前の状態を、(B)はそれらが重ね合わされた状態を示す説明図である。
【図6】(A)カールさせていないカバーフイルムをスライドガラスに重ね合わせる前の状態を、(B)はそれらが重ね合わされた状態を示す説明図である。
【図7】カバーフイルム製造ラインを示す概略図である。
【符号の説明】
【0030】
10 カバーフイルム
11 TACフイルム
12 接着剤層
13 スライドガラス
14 サンプル
15 封入液
16 カバーフイルム
17 カバーフイルム
20 カバーフイルム製造ライン
21 塗布装置
22 送風装置
27 乾燥風

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体とこの透明支持体上に形成される接着剤層とからなり、スライドガラス上の被検体を覆うように載せられて、封入液により前記接着剤層を膨潤または溶解させて前記スライドガラスに固着される顕微鏡用カバーフイルムにおいて、
前記透明支持体は、厚みが110μm以上130μm以下であるセルロースアシレートであり、このセルロースアシレートには可塑剤が14重量%以上16重量%以下添加され、
前記接着剤層は、前記透明支持体を加えた乾燥後の総合厚みが130μm以上170μm以下となるように形成され、
前記接着剤層の乾燥時の収縮によってトイ状カールが付与されており、前記トイ状カールは、前記スライドガラスに固着される際に、前記封入液による前記接着剤層の膨潤または溶解により発生する逆カール量を超えるカール量であることを特徴とする顕微鏡用カバーフイルム。
【請求項2】
前記逆カール量を超えたカール量は、45mm×300mmの矩形状サンプルを平坦面に載せたときに最大高さが1mm以上10mm以下となるカール量であることを特徴とする請求項1記載の顕微鏡用カバーフイルム。
【請求項3】
前記透明支持体に前記接着剤層を塗布して形成する際の接着剤の粘度が85cp以上115cp以下であり、前記接着剤層の塗布後に、乾燥温度を100℃以上150℃以下として5秒以内に前記接着剤層を乾燥させることを特徴とする請求項1または2記載の顕微鏡用カバーフイルム。
【請求項4】
透明支持体とこの透明支持体上に形成される接着剤層とからなり、スライドガラス上の被検体を覆うように載せられて、封入液により前記接着剤層を膨潤または溶解させて前記スライドガラスに固着される顕微鏡用カバーフイルムの製造方法において、
可塑剤が14重量%以上16重量%以下添加され、厚みが110μm以上130μm以下であるセルロースアシレートを前記透明支持体として用い、前記透明支持体を加えた乾燥後の総合厚みが130μm以上170μm以下となるように前記透明支持体の一方の面に前記接着剤層を塗布形成する工程と、
前記接着剤層を塗布後に乾燥温度を100℃以上150℃以下として5秒以内に前記接着剤層を乾燥させて、前記接着剤層によってトイ状カールを付与する乾燥工程とを有し、
前記トイ状カールは、前記スライドガラスに固着される際に、前記封入液により前記接着剤層の膨潤または溶解により発生する逆カール量を超えたカール量であることを特徴とする顕微鏡用カバーフイルムの製造方法。
【請求項5】
前記トイ状カールは、45mm×300mmの矩形状サンプルを平坦面に載せたときの最大高さが1mm以上10mm以下となるカール量を有することを特徴とする請求項4記載の顕微鏡用カバーフイルムの製造方法。
【請求項6】
前記接着剤層を塗布形成する工程での接着剤の粘度が85cp以上115cp以下であることを特徴とする請求項4または5記載の顕微鏡用カバーフイルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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