説明

顕微鏡用撮像装置および顕微鏡観察方法

【課題】撮像素子を切り替えても短時間で適正露出を得る。
【解決手段】被写体からの光を2つの光路に分岐する光路分岐部5と、該光路分岐部5により分岐された2つの光路上にそれぞれ配置され、被写体からの光を異なる撮像条件で撮影する2つの撮像素子6,7と、一方の撮像素子6の露出時間と2つの撮像素子6,7による撮像条件の比とに基づいて他方の撮像素子7の露出時間を算出する露出時間算出部18とを備える顕微鏡用撮像装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡用撮像装置および顕微鏡観察方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、昼間と夜間でカラーとモノクロの撮影モードを切り替える監視カメラが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この監視カメラでは、昼間はカラー撮影モードとしてIRフィルタを挿入することにより赤外光を遮断し、夜間はモノクロ撮影モードとしてIRフィルタを抜き取ることにより、感度優先で撮影するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−135788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、顕微鏡において同一被写体について異なる撮像条件下で観察を行う場合においては、観察条件毎に適正な露出条件が相違するので、単にIRフィルタを抜き差しするだけの特許文献1の技術は、顕微鏡観察に適用することができないという不都合がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、撮像素子を切り替えても短時間で適正露出を得ることができる顕微鏡用撮像装置および顕微鏡観察方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、被写体からの光を2つの光路に分岐する光路分岐部と、該光路分岐部により分岐された2つの光路上にそれぞれ配置され、前記被写体からの光を異なる撮像条件で撮影する2つの撮像素子と、一方の前記撮像素子の露出時間と2つの撮像素子による撮像条件の比とに基づいて他方の前記撮像素子の露出時間を算出する露出時間算出部とを備える顕微鏡用撮像装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、被写体からの光が光路分岐部により2つの光路に分岐され、各光路上に配置された2つの撮像素子によりそれぞれ撮影される。一方の撮像素子により適正な露出時間が得られた場合には、露出時間算出部が、その一方の撮像素子について得られた露出時間と2つの撮像条件の比とに基づいて他方の撮像素子の露出時間を算出する。これにより、2つの撮像素子による撮像条件が異なっていても、他方の撮像素子についても適正に近い露出時間を得ることができ、短時間に適正露出による観察を行うことができる。
【0008】
上記発明においては、前記撮像条件の比に関するデータを予め格納しておく管理部を備え、前記露出時間算出部が、一方の前記撮像素子の露出時間と前記管理部に格納された前記データとに基づいて他方の前記撮像素子の露出時間を算出してもよい。
また、上記発明においては、前記撮像条件の比が、2つの前記撮像素子の感度の比を含んでいてもよい。
このようにすることで、感度の異なる2つの撮像素子を用いた観察を行う場合においても、一方の撮像素子の適正露出時間から他方の撮像素子の適正露出時間を短時間で得ることができる。
【0009】
また、上記発明においては、前記撮像条件の比が、2つの前記撮像素子の読み出し方式で決定する画素加算設定(ビニング設定)の比を含んでいてもよい。
このようにすることで、画素加算設定の異なる2つの撮像素子を用いた観察を行う場合においても、一方の撮像素子の適正露出時間から他方の撮像素子の適正露出時間を短時間で得ることができる。
【0010】
また、上記発明においては、2つの前記撮像素子の出力の階調特性を補正する階調補正手段を有し、前記撮像条件の比が、前記階調補正手段による2つの前記撮像素子の補正量の比を含んでいてもよい。
このようにすることで、画像取得後に階調補正が行われることを予め見込んで適正露出の画像が得られるような露出時間を短時間で得ることができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記撮像素子により取得された画像に基づいて露出時間を自動的に調節する自動露出調節部を備え、該自動露出調節部が、前記露出時間算出部により算出された露出時間を初期値として露出時間を自動的に調節してもよい。
このようにすることで、自動露出調節部による露出時間の調節に際し、適正に近い露出時間を初期値として与えることにより、適正露出に到達するまでの時間を大幅に短縮することができる。
【0012】
また、本発明は、被写体からの光を2つの光路に分岐して、2つの異なる撮像素子により異なる撮像条件で撮影する顕微鏡観察方法であって、一方の前記撮像素子により、第1の撮像条件および第1の露出時間で撮影する第1のステップと、前記第1の露出時間と2つの撮像素子による撮像条件の比とに基づいて他方の前記撮像素子の第2の露出時間を算出する第2のステップと、該第2のステップにより算出された第2の露出時間および第2の撮像条件で、他方の前記撮像素子により撮影する第3のステップとを含む顕微鏡観察方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、撮像素子を切り替えても短時間で適正露出を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る顕微鏡用撮像装置を示す全体構成図である。
【図2】図1の顕微鏡用撮像装置に備えられる表示部における撮像条件の設定の際の表示例を示す図である。
【図3】図1の顕微鏡用撮像装置の演算処理部におけるコントラスト調節のルックアップテーブルを示す図である。
【図4】図1の顕微鏡用撮像装置に備えられる表示部における観察方法の設定の祭の表示例を示す図である。
【図5】図1の顕微鏡用撮像装置が取り付けられる落射蛍光顕微鏡の光学部品の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る顕微鏡用撮像装置1および顕微鏡観察方法について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る顕微鏡用撮像装置1は、図1に示されるように、顕微鏡2に取り付けられて使用されるカメラ3と、該カメラ3による撮像条件を設定する演算部4とを備えている。
【0016】
カメラ3は、顕微鏡2により集光された被写体からの光を2つの光路に分岐するプリズム(光路分岐部)5と、分岐された2つの光路上にそれぞれ配置されたカラー撮像素子(第1の撮像素子)6およびモノクロ撮像素子(第2の撮像素子)7と、各撮像素子6,7により取得された画像信号に、前処理を施すカラー用AFE(アナログフロントエンド)8およびモノクロ用AFE9と、水平同期信号および垂直同期信号を生成する同期信号生成部10と、生成された同期信号に同期したタイミングで撮像素子6,7およびAFE8,9を駆動するための駆動信号を生成するTG(タイミングジェネレータ)11と、カラー用AFE8およびモノクロ用AFE9から出力された画像信号を処理する画像処理部12と、これらを制御するシステム制御部13と、演算部4との間でデータの送受信を行うデータ転送部14と、バス15とを備えている。
本実施形態では、カラー撮像素子6としてカラーCCDを用い、モノクロ撮像素子7としてモノクロCCDを用いた。
【0017】
プリズム5は、システム制御部13により制御され、移動あるいは変更されることにより、被写体からの光路の分岐比率を変更することができるようになっている。このプリズム5による光路の分岐比率は、撮像条件の一つである。
カラー撮像素子6およびモノクロ撮像素子7は、プリズム5により分岐された2つの光路上にそれぞれ配置され、撮像面に結像させた顕微鏡2での観察像を電気的な画像信号に変換するようになっている。
【0018】
カラー用AFE8およびモノクロ用AFE9は、カラー撮像素子6およびモノクロ撮像素子7からそれぞれ受け取った画像信号に対し、相関二重サンプリングによるノイズ成分除去やレベル調整を施した後に、A/D変換して得られたディジタル画像信号を画像処理部12に対してそれぞれ出力するようになっている。
【0019】
同期信号生成部10は、生成した水平同期信号および垂直同期信号をTG11、カラー用AFE8、モノクロ用AFE9、システム制御部13および画像処理部12に出力するようになっている。垂直同期信号の周期は、システム制御部13から出力される周期設定値および撮像素子6,7における蓄積電荷の読み出し方式に応じて設定されるようになっている。
【0020】
TG11は、撮像素子6,7の垂直方向の電荷転送路を駆動する垂直転送クロック、水平方向の電荷転送路を駆動する水平転送クロック、撮像素子6,7の出力アンプをリセットするリセットゲート信号等を撮像素子6,7の駆動信号として出力するようになっている。また、TG11は、撮像素子6,7の撮像面上に並ぶ受光素子が蓄積した電荷を半導体基板に強制排出するとともに、その電荷蓄積を停止させる電子シャッタパルスを生成するようになっている。
【0021】
さらに、TG11は、この電子シャッタパルスの出力期間によって撮像素子6,7での撮像における露出時間の制御を行うようになっている。また、TG11は撮像素子6,7における蓄積電荷の読み出し方式(全画素読み出し、部分読み出し、画素加算(ビニング)等)の選択を指示する制御信号をシステム制御部13から受け取ると、指示された読み出し方式に応じた駆動信号を出力するようになっている。さらに、TG11はAFE8,9の駆動信号として相関二重サンプリング用クロックやA/D変換用クロックなどを出力するようになっている。
【0022】
画像処理部12は、カラー用AFE8およびモノクロ用AFE9から出力されたディジタルの画像信号で表される画像に対し、ノイズリダクションや階調補正、ディジタルゲイン、コントラスト調整等の画像処理を施した上で、画像をバス15を介してデータ転送部14に出力するようになっている。
【0023】
システム制御部13は、演算部4からデータ転送部14およびバス15を介して送られてくる撮像条件(読み出し方式、垂直同期信号周期設定値、露出時間、感度および画素加算等)の指示を受けると、その指示通りの読み出し方式をTG11および同期信号生成部10に通知するようになっている。システム制御部13は、垂直同期信号周期設定値と撮像条件の指示に係る露出時間とにより、電子シャッタパルスの出力期間を導出してTG11に設定するとともに、感度に対応するCDSゲイン値をそれぞれのAFE8,9に設定するようになっている。
【0024】
データ転送部14は、演算部4から出力される撮像条件をシステム制御部13に転送するようになっている。また、画像処理部12において処理された画像を演算部4に転送するようになっている。
演算部4は、例えばパーソナルコンピュータであり、ユーザが入力を行う入力部(例えばマウスやキーボード)16と、画像を表示する表示部(例えば液晶ディスプレイ装置)17と、これらに接続された演算処理部18とを備えている。演算処理部18は、入力部16から入力された各種指示や撮像条件をデータ転送部14およびバス15を介してシステム制御部13に出力するとともに、データ転送部14およびバス15を介してシステム制御部13から送られてきた画像を表示部17に表示させるようになっている。また、演算処理部18は、一方の撮像素子6(7)において適正露出となるように設定された露出時間と、撮像素子6と撮像素子7との撮像条件の比とに基づいて他方の撮像素子7(6)の露出時間を算出するようになっている。すなわち、演算処理部18は、露出時間算出部を備えている。
【0025】
表示部17は、演算処理部18により処理された画像を表示するとともに、図2に示されるように、入力部16とともにGUI(グラフィカル・ユーザ・インタフェース)を構成している。図2はGUIの表示例であり、入力欄、ボタン、トラックバー等の各GUI部品の配置、形状、サイズ、配色等はこれに限定されるものではない。
【0026】
図2の表示例では、観察像の画像を表示する表示ウインドウ21と、カメラ3の制御を行うカメラ制御タブ22とを備えている。
カメラ制御タブ22内には、ライブ撮影ボタン23、スナップ撮影ボタン24、CCD選択ボタン25、カラーモード用の撮像条件設定タブ26、モノクロモード用の撮像条件設定タブ27とが備えられている。
【0027】
ライブ撮影ボタン23は、ライブ撮影を行う際に選択されるようになっている。スナップ撮影ボタン24は静止画を撮影する際に選択され、ボタン24の押下と同時に静止画が取得されるようになっている。
【0028】
CCD選択ボタン25は、撮影に使用する撮像素子6,7を選択するボタンであり、カラーを選択すると、カラー撮像素子6が作動させられて、プリズム5を介してカラー撮像素子6に分岐され、その撮像面に投影された観察像の画像が表示ウインドウ21に表示されるようになっている。一方、モノクロを選択すると、モノクロ撮像素子7が作動させられて、プリズム5を介してモノクロ撮像素子7に分岐され、その撮像面に投影された観察像の画像が表示ウインドウ21に表示されるようになっている。
【0029】
カラーモード用の撮像条件設定タブ26には、露出モード選択ボタン28、露出時間設定トラックバー29、感度選択コンボボックス30、解像度選択コンボボックス31およびコントラスト選択コンボボックス32が備えられている。これらはCCD選択ボタン25にてカラーが選択されている場合の撮像条件を設定するためのものである。
【0030】
モノクロモード用の撮像条件設定タブ27にも、カラーモード用の撮像条件設定タブ26と同様のGUI部品が備えられている。これらはCCD選択ボタン25にてモノクロが選択されている場合の撮像条件を設定するためのものである。
【0031】
露出モード選択ボタン28は、マニュアル露出とオート露出とを選択するためのものである。オート露出を選択すると、演算処理部18において、画像から適正露出となる露出時間が自動で算出されるようになっている。すなわち、演算処理部18は、自動露出調節部を備えている。
露出時間設定トラックバー29は、露出モード選択ボタン28にてマニュアル露出が選択されている場合にのみ操作可能であり、露出時間を設定するために使用されるようになっている。
【0032】
感度選択コンボボックス30は、撮像素子6,7のISO感度を設定するために使用されるようになっている。ISO感度は、200,400,800,1600の4種類から選択することができ、カラーモードおよびモノクロモードとも、ISO200がデフォルトの撮像条件として設定されている。
【0033】
解像度選択コンボボックス31は、観察像の解像度の選択に使用される。例えば、全画素、ビニング等の撮像素子6,7における蓄積電荷読み出し方式に応じて決定されるようになっている。カラーモードおよびモノクロモードとも、全画素がデフォルトの撮像条件として設定されている。
【0034】
コントラスト選択コンボボックス32は、観察像のコントラストの選択に使用される。コントラストは、ハイ、ノーマル、ローの3種類から選ぶことができる。カラーモードおよびモノクロモードとも、ノーマルがデフォルトの撮像条件として設定されている。
【0035】
次に、演算部4の演算処理部18による、撮像素子6,7の切替時の露出時間算出処理について説明する。
演算処理部18は、切替前の撮像素子6(7)の露出時間と撮像素子6と撮像素子7との撮像条件とから、切替後の撮像素子7(6)の露出時間を算出してデータ転送部14およびバス15を介してシステム制御部13に送信するようになっている。
【0036】
演算処理部18は、予め測定した参照露出時間を記憶していて、該参照露出時間を用いて露出時間の算出を行うようになっている。参照露出時間は、顕微鏡2に標本を載置しない状態でデフォルトの撮像条件(感度:ISO200,解像度:全画素、コントラスト:ノーマル)下で適正露出が得られる露出時間である。適正露出は、撮影された観察像内の背景部分の空間平均輝度値が、所定の目標値(例えば、階調数が256階調の場合に200)になるような露出と定義する。演算処理部18は、画像処理部12によって画像に対して階調補正する際の階調特性を補正する階調補正手段を備えている。
【0037】
例えば、カラーモードでの撮影からモノクロモードでの撮影に切り替える場合について説明する。カラーモードにおいて、露出時間設定トラックバー29により設定された露出時間をexp_colorとすると、モノクロモードにおいて設定される露出時間exp_monoは以下の式(1)により算出される。
【0038】
exp_mono=A×exp_color×Kcam (1)
ここで、
A=exp_ref_mono/exp_ref_color、
exp_ref_monoはモノクロモードでの参照露出時間、
exp_ref_colorはカラーモードでの参照露出時間、
Kcamはカラーモードとモノクロモードの撮像条件の比により定まる補正係数
である。
【0039】
補正係数Kcamは、以下の式(2)により算出される。
Kcam=Ksens×Kreso×Kcont (2)
ここで、
Ksensは2つの撮像素子6,7の感度(撮像条件)の比であり、表1により求めることができる。また、Kresoは2つの撮像素子6,7の解像度(読み出し方式で決定する画素加算設定、撮像条件)の比であり、表2により求めることができる。さらに、Kcontは2つの撮像素子6,7による撮像条件としてのコントラストの比であり、表3により求めることができる。
【0040】
【表1】

【表2】

【表3】

【0041】
例えば、モノクロモードの感度がデフォルトのISO200であるのに対し、カラーモードの感度がISO400に設定され、モノクロモードの解像度がビニング2であるのに対し、カラーモードの解像度がデフォルトの全画素に設定され、モノクロモードのコントラストがハイであるのに対し、カラーモードのコントラストがデフォルトのノーマルに設定されている場合には、
Ksens=2/1=2、
Kreso=1/2、
Kcont=Vno/Vhi
となる。
【0042】
ここで、Vnoは、図3に示すルックアップテーブルにおいて、コントラストモードがデフォルト、つまりノーマル設定時に参照露出時間を測定する際に使用した輝度の目標値である。また、Vhi,Vloは、図3に示すルックアップテーブルにおいて、出力画素値がVnoとなる入力画素値のそれぞれコントラストモードがハイ、ローのときの出力画素値である。なお、演算処理部18は、表1、表2、表3および図3に示す撮像条件の比に関するデータを予め格納しておく管理部を備えている。
【0043】
その結果、この場合の補正係数Kcamは、
Kcam=2×1/2×Vno/Vhi=Vno/Vhi
となる。この値を式(1)に代入することにより、モノクロモードに切り替えたときの適正露出となる露出時間を算出することができる。
【0044】
すなわち、本実施形態に係る顕微鏡観察方法は、一方の撮像素子6(7)、例えば、カラー撮像素子6により第1の撮像条件および第1の露出時間で撮影する第1のステップと、該第1の露出時間と2つの撮像素子6,7による撮像条件の比とに基づいて、式(1)により第2の露出時間を算出する第2のステップと、該第2のステップにより算出された第2の露出時間および第2の撮像条件で、他方の撮像素子7(6)、例えば、モノクロ撮像素子7により撮影する第3のステップとを含んでいる。
【0045】
このように、本実施形態に係る顕微鏡用撮像装置1および顕微鏡観察方法によれば、撮影を行う撮像素子6,7を切り替える際に、切替後の撮影が適正露出となる露出時間が自動的に算出して設定されるので、撮像素子6,7の切替前後で、撮影された観察像の明るさを一定に保つことができるという利点がある。その結果、適正露出となる露出時間を短時間で設定することができ、ユーザが手動で露出時間を設定し直す手間を省くことができる。
【0046】
なお、本実施形態においては、カラーモードからモノクロモードに切り替える場合を例に挙げて説明したが、逆の場合にも同様の処理で露出時間を簡易に算出し、短時間で設定することができるという利点がある。
【0047】
また、撮像素子6,7の感度としてISO感度を使用した場合について説明したが、これに代えて、AFE8,9のCDSゲインと画像処理部12のディジタルゲインとで決まるゲイン設定値を使用してもよい。
この場合には、デフォルトのゲイン設定値をゲイン1倍と定義し、設定可能なカラーモードのISO感度とモノクロモードのゲインの組み合わせとで決まる補正係数Ksensを表にして表1の代わりに用いればよい。
【0048】
また、本実施形態においては、露出時間を手動により設定する手動露出モードを例に挙げて説明したが、これに代えて、露出時間が自動的に算出されるオート露出モードが選択されている場合に適用してもよい。この場合には、式(1)により算出されたexp_monoをカラーモードからモノクロモードに切り替えた後の自動露出調節の初期値として使用することが好ましい。このようにすることで、自動露出調節が、ほぼ適正露出となる露出時間から開始されるので、適正露出が得られるまでの時間を短縮することができるという利点がある。
【0049】
また、本実施形態においては、カラーモードとモノクロモードで観察方法を同じくする場合について説明したが、カラーモードでは明視野観察、モノクロモードでは微分干渉観察というように使用する撮像素子6,7ごとに観察方法を異ならせてもよい。
この場合には、図4に示されるように、顕微鏡設定タブ41が選択されるようになっている。
【0050】
顕微鏡設定タブ41には、観察方法選択コンボボックス42が備えられている。観察方法選択コンボボックス42において透過微分干渉を選択した場合には、顕微鏡光学部品を設定するGUIとして、アナライザ選択コンボボックス43、プリズムスライダ選択コンボボックス44、コンデンサ選択コンボボックス45、光学素子選択コンボボックス46および対物レンズ選択コンボボックス47が表示されるようになっている。
これらのコンボボックス43〜47は、顕微鏡2を構成している顕微鏡光学部品をユーザが入力するためのものである。
【0051】
そして、設定された顕微鏡光学部品は以下のようにして露出時間算出処理に反映されるようになっている。
例えば、明視野観察を行うカラーモードから透過微分干渉観察を行うモノクロモードへ切り替える場合には、以下の式(3)によりモノクロモードでの露出時間を算出する。
【0052】
exp_mono=A×exp_color×Kcam×Kopt (3)
ここで、Koptは顕微鏡2の光学部品の設定により定まる補正係数である。
【0053】
例えば、モノクロモードにおける対物レンズ以外の光学部品としてデフォルトの光学部品が設定されている場合において、モノクロモードにおける対物レンズがデフォルトの対物レンズと比較してN倍の明るさの光を透過するものが設定された場合には、デフォルトの対物レンズが設定された場合と比較して取得画像の明るさがN倍になる。そこで、補正係数Kopt=1/Nを設定することにより、撮像素子6,7の切替前後における取得画像の明るさを同等に設定することができる。
【0054】
なお、対物レンズ以外の光学部品についても、デフォルトの光学部品との明るさの比を測定しておくことにより、同様の方法で、補正係数Koptを求めることができる。
このようにすることで、撮像素子6,7毎に異なる観察手法を使用する場合においても、適正露出を達成する露出時間を短時間で算出し、設定することができるという利点がある。
【0055】
また、上記においては透過微分干渉観察を例示して説明したが、これに代えて、落射蛍光観察を行う場合においても同様に適用することができる。
落射蛍光観察においては、図5に示されるように、光源51から照射される照明光が集光レンズ52および照明レンズ53を介して励起フィルタ54に入射する。励起フィルタ54を透過した励起光はダイクロイックミラー55で反射され対物レンズ56で集光されて蛍光試薬により染色された標本57に照射される。励起光が照射された標本57からは蛍光が発せられ、その一部が対物レンズ56に入射し、ダイクロイックミラー55および吸収フィルタ58を介して顕微鏡用撮像装置1に入射する。ここで、励起フィルタ54、ダイクロイックミラー55および吸収フィルタ58は、蛍光キューブ59として一つの光学部品として一体化されている。
【0056】
このような落射蛍光観察においても、予めデフォルトの光学部品(光源51、対物レンズ56および蛍光キューブ59)とその他の光学部品との明るさの比を補正値として測定しておき、この補正値に基づいて算出した露出時間を自動露出調節の初期値に使用することにより、自動露出が短時間で収束し、適正露出が得られるまでの時間を短縮することができる。
【0057】
また、本実施形態においては、プリズム5によって光路を分岐する場合について説明したが、これに代えて、プリズムを抜き差しすることにより、光路を切り替えることにしてもよい。これにより、カラー撮像素子6とモノクロ撮像素子7のどちらか一方のみを使用することが可能になる。
また、本実施形態においては、撮像素子としてCCDを用いたが、これに限らず、CMOS撮像素子を用いてもよい。さらに、撮像素子は、2つに限らず、3つ以上用いてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 顕微鏡用撮像装置
5 プリズム(光路分岐部)
6 カラー撮像素子(撮像素子)
7 モノクロ撮像素子(撮像素子)
18 演算処理部(露出時間算出部、階調補正手段、自動露出調節部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体からの光を2つの光路に分岐する光路分岐部と、
該光路分岐部により分岐された2つの光路上にそれぞれ配置され、前記被写体からの光を異なる撮像条件で撮影する2つの撮像素子と、
一方の前記撮像素子の露出時間と2つの撮像素子による撮像条件の比とに基づいて他方の前記撮像素子の露出時間を算出する露出時間算出部とを備える顕微鏡用撮像装置。
【請求項2】
前記撮像条件の比に関するデータを予め格納しておく管理部を備え、
前記露出時間算出部が、一方の前記撮像素子の露出時間と前記管理部に格納された前記データとに基づいて他方の前記撮像素子の露出時間を算出する請求項1に記載の顕微鏡用撮像装置。
【請求項3】
前記撮像条件の比が、2つの前記撮像素子の感度の比を含む請求項1または請求項2に記載の顕微鏡用撮像装置。
【請求項4】
前記撮像条件の比が、2つの前記撮像素子の読み出し方式で決定する画素加算設定の比を含む請求項1から請求項3のいずれかに記載の顕微鏡用撮像装置。
【請求項5】
2つの前記撮像素子の出力の階調特性を補正する階調補正手段を有し、前記撮像条件の比が、前記階調補正手段による2つの前記撮像素子の補正量の比を含む請求項1から請求項4のいずれかに記載の顕微鏡用撮像装置。
【請求項6】
前記撮像素子により取得された画像に基づいて露出時間を自動的に調節する自動露出調節部を備え、
該自動露出調節部が、前記露出時間算出部により算出された露出時間を初期値として露出時間を自動的に調節する請求項1から請求項5のいずれかに記載の顕微鏡用撮像装置。
【請求項7】
被写体からの光を2つの光路に分岐して、2つの異なる撮像素子により異なる撮像条件で撮影する顕微鏡観察方法であって、
一方の前記撮像素子により、第1の撮像条件および第1の露出時間で撮影する第1のステップと、
前記第1の露出時間と2つの撮像素子による撮像条件の比とに基づいて他方の前記撮像素子の第2の露出時間を算出する第2のステップと、
該第2のステップにより算出された第2の露出時間および第2の撮像条件で、他方の前記撮像素子により撮影する第3のステップとを含む顕微鏡観察方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−150179(P2012−150179A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7221(P2011−7221)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】