説明

顕微鏡用照明装置

【課題】 拡散入射照明を作り出し、異なる作動距離に対し容易に適用可能であって、使用者がケガをする危険性及び装置に対する損傷の危険性を減少させ、且つ試料に容易に接近可能であって操作が簡単である、顕微鏡用照明装置をもたらすことである。
【解決手段】 少なくとも一つの光源と、拡散照明をもたらすためのリフレクターとを備えて構成され、前記リフレクターが少なくとも部分的に、顕微鏡対物鏡と観察されるべき対象物との間の観察ビーム路を取り囲んでいる、顕微鏡用照明装置において、リフレクターは少なくとも部分的に弾性があって、且つ少なくとも第一空間的形態から少なくとも第二空間的形態へ可逆的に変形可能である、照明装置によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプレアンブル部(おいて部)に定義した顕微鏡用照明装置に関連している。
【背景技術】
【0002】
反射性の対象物、特に金属性対象物を観察するには、光源からのハイライト部なく影のない画像を得るために、拡散入射照明を用いることが一般的に知られている。そのような拡散照明をもたらすための様々な装置が、従来技術において記載されてきた。
【0003】
国際特許刊行物である特許文献1は、拡散入射照明をもたらすための照明装置を記載しており、半球状の半透明ドームがその内部において拡散照明を作り出すように外側から照らされる。国際特許刊行物である特許文献2では、拡散照明を作り出すように、ここでも半球状のリフレクターが下から照らされる。最後に日本の特許刊行物である特許文献3では、分散入射照明を作り出すように、半球状ドーム内に回転鏡が備えられる。これら全てのアプローチは、異なる対象物に対して必要な異なる作動距離に、前記ドームを全く適用することができないという特有の短所を有している。
【0004】
この問題を解決するために、ドイツの刊行物である特許文献4はリフレクターに可動カバーを取り付けることを教示している。このアプローチでは、リフレクターは円柱形をしており、その円柱形の壁に光源が備えられている。この光源は、内側の円柱形の壁を照らし、それによって光が反射されて対象物の拡散照明をもたらす。リフレクターには、異なる対象物に関連した異なる作動距離を考慮に入れるために可動カバーが備えられる。このアプローチは、前記カバーが、対象物の焦点合わせ及び操作を阻害するかもしれない、作業距離に従う所定の場所に固定されなければならないという短所を有している。その上、リフレクターとカバーとの間の固定したクランプ接続は、例えば対象物の焦点合わせ中に使用者がケガをする、及び/又はリフレクター、対象物、又は対物鏡(対物レンズ)を損傷する結果となるかもしれない。さらに、リフレクターは寸法が大きく、取り扱いが厄介である。試料への近づきやすさは大いに減少している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO 94/19908
【特許文献2】WO 01/16585 A1
【特許文献3】JP 56126705 A
【特許文献4】DE 20 2007 0212 281 U1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この先行技術を出発点として、本発明の課題は、拡散入射照明を作り出し、異なる作動距離に対し容易に適用可能であって、使用者がケガをする危険性及び装置に対する損傷の危険性を減少させ、且つ試料に容易に接近可能であって操作が簡単である、顕微鏡用照明装置をもたらすことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にしたがい、請求項1の特徴構成部分を有する顕微鏡用照明装置がもたらされる。有利な実施形態は、従属請求項のサブジェクトマターであり、以下の記載にある。
【0008】
(本発明の利点)
本発明の教示にしたがうと、顕微鏡用照明装置のリフレクターは、可逆的な変形を可能にするような少なくとも部分的に弾性となるように設計され、それによって先行技術の短所をもたないのである。少なくとも部分的に弾性のリフレクターは、例えば焦点合わせ中に顕微鏡ステージ、使用者の手、又は指等に衝突する場合に利点を生じる。これは、使用者のケガ、及びリフレクター又は顕微鏡への損傷を回避する。リフレクターが変形して成る二つの空間的形態が、一つの空間的形態が対象物をできるだけ完全に覆うことができるように、同時に対象物をできるだけ均一に拡散照射できるように、一方でもう一つの空間的形態が対象物への接近をもたらすように選択されることが特に有利である。例えば、リフレクターが変形、例えば折りたたまれた、転倒した等であってもよく、第一の閉じた空間的形態から第二の開いた空間的形態に変形してもよい。よってリフレクター、すなわち照明装置は操作が容易で、その上対象物を覆うことができ且つ異なる作業距離にも適用することが可能であり、一方でケガ及び損傷を回避することを助けることができるのである。特に試料又は標本(プレパラート)に、例えば焦点合わせを変更する必要なくその処置又は取替えのために容易に接近することが可能である。これは取り扱いを非常に容易にする。特に、多くの試料が観察される連続的な試験が特に迅速に実施され得る。
【0009】
リフレクターをプラスチックで製造することは、操作の容易性と重量の減少を促進する。しかしながらリフレクターは、ゴム、金属、織物生地、又は他の材料又はその組み合わせ等の他の材料から作られてもよい。例えばリフレクターは、その外側に高いレベルの拡散と組み合わせてハイライト効率を達成するような拡散性コーティングを有する「ミルキー(乳白色の)」透明材料で作られてもよい。同様に、リフレクターの内側表面に取り付けられた鮮やかで中間色のつや消しラッカーも拡散を促進し得る。拡散照明を作り出すことができる他の実施形態も可能である。
【0010】
有利には、リフレクターは回転対称、表面対称、又は対物鏡の軸の周りにおいて、つまり顕微鏡の光学軸の周りにおいて軸対称である。さらに又は代替として、リフレクターは、対物鏡端部側において小さな開口部を有し、且つ対象物端部側で大きな開口部を有してもよい。これは、対象物を例えば対物鏡によって観察することを可能にしながら、対象物の均一な拡散照射を同時にもたらす。対物鏡端部側と対象物端部側の開口部は類似の又は同一の寸法であってもよい。その場合、リフレクターは、対象物端部側の開口部と対物鏡端部側の開口部との間の領域内においてその最大延長部を有しており、それによってその空間的形態は、少なくとも概ね球体又は回転楕円体の形態に相応する。
【0011】
実用的な実施形態において、リフレクターは基本的に球体、回転楕円体、半球体、ドーム、ベル、楕円形の放物面、回転放物面、又は回転双曲面の空間的形態を有している、又は、少なくとも部分的にそのような空間的形態の表面要素で構成される。これら空間的形態は一方では好ましい拡散照射を作り出すための均一な拡散表面をもたらし、他方では比較的に容易に、例えば射出成型部品として製造することが可能である。
【0012】
有利には、少なくとも一つの光源は環状であり、リフレクターの内側表面に配置される。特に光源は、LEDリング又は個々のLEDによって均等に、又はリフレクターの内側表面の周縁に沿って不規則に間隔をあけて形成されてもよい。蛍光、又は(冷)陰極ランプ又は陰極管も適している。光源は、リフレクターの内側表面の少なくとも一部を照らすように配置され、反射されるべき光に対象物の拡散照射を生じさせる。特に好ましい実施形態では、二つの環状光源がリフレクターの内側表面に設けられる。特に光源は、リフレクターの全内側表面の均一な照射をできるようにするように、対物鏡端部側の開口部及び対象物端部側の開口部に隣接して配置されてもよい。光源の輝度が制御可能又は調節可能である場合には、それによって照射を観察されるべき対象物に適合させるように、照射の重心を内側表面全体にわたって動かすことが可能となる。このようにして均一で影のない照射が成し遂げられ得る。
【0013】
リフレクターが少なくとも二つの部分を有しており、当該二つの部分は継ぎ手によって連結され、継ぎ手に対して互いに相対的に位置決め可能であれば有利である。特に互いに相対的な前記部分の位置決めは、次にリフレクターの空間的形態を定義してもよい。
【0014】
適宜、継ぎ手は弾性的に変形可能な材料によって作られてもよい。特に適切な厚みのプラスチック材料がこのために有利に用いられ得る。リフレクターの他の部分を同一材料でしかしより大きな厚みで作ることが可能であるが、前記部分を特に射出成型のような単純な方法で製造することができる。
【0015】
前記部分の少なくとも一つが少なくとも部分的に柔軟であると有利である。しかしそのような部分の柔軟性は、継ぎ手までは達しないのが適切である。一つの部分が剛直でもう一つの部分が柔軟である、又は部分のうち大部分又は全ての部分が柔軟であるという実施形態が存在する。最初に述べた実施形態では、適切に光源を配置することによって、一つ以上の柔軟な部分が変形する際に対象物を均等に照らすことが可能となり、特に対象物への接近ができる。後に述べた実施形態では、全ての柔軟な部分を変形することによって、一方では対象物への接近が改善され、他方ではリフレクターをスペース効率良く追い出して保存することが可能となる。
【0016】
対象物を観察するための本発明に係る顕微鏡は、本発明に係る照明装置を含んでいる。前記顕微鏡は、特に実体顕微鏡、又は通常の光学顕微鏡(落射顕微鏡)又は複合顕微鏡として設計される。
【0017】
本発明のさらなる利点及び実施形態は、以下の記載及び付随的な図面から明らかとなるだろう。
【0018】
前記特徴及びいかに記載の特徴は、明記した組み合わせだけでなく、本発明の範囲を逸脱することなく他の組み合わせ又は単独でも使用され得ることが理解されるだろう。
【0019】
本発明のサブジェクトマターは、例示的実施形態を用いることによって図面中に概略的に描かれており、図面を参照しながら以下に詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第一空間的形態及び第二空間的形態で示された本発明の照明装置の、第一の好ましい実施形態の模式的断面図である。
【図2】第一空間的形態及び第二空間的形態で示された本発明の照明装置の、第二の好ましい実施形態の模式的断面図である。
【図3】第一空間的形態及び第二空間的形態で示された本発明の照明装置の、第三の好ましい実施形態の模式的断面図である。
【図4】第一空間的形態及び第二空間的形態で示された本発明の照明装置の、第四の好ましい実施形態の模式的断面図である。
【図5】三つの空間的形態に示された本発明の照明装置の、第五の好ましい実施形態の断面図である。
【図6】入射照明装置を有する本発明に係る顕微鏡の好ましい実施形態の模式的側面図である。
【図7】入射照明装置を有する本発明に係る実体顕微鏡の好ましい実施形態の模式的側面図である。
【図8】第一空間的形態及び第二空間的形態で示された本発明の照明装置の、第六の好ましい実施形態の模式的断面図である。
【図9】球体対象物照明の原理を模式的に表したものの断面図である。
【図10】図1及び図2に係る照明装置の可能な実施形態を示す模式的上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1〜図10中において、類似の要素には同一参照符号がつけられている。断りのない限り、これら要素の記載は示した全ての実施形態に当てはまる。示された光源の照射円錐は、点線で部分的に表示した。
【0022】
図1中には、本発明の照明装置の、第一の好ましい実施形態が模式的断面図で示されており、全体として100で表示される。照明装置100は、顕微鏡ステージ30上の対象物20を観察するために顕微鏡対物鏡10に取り付けられる。前記取り付けは、例えばクランプネジを用いることによって成し遂げられ得る。照明装置を対物鏡に及び/又は顕微鏡の他の構成要素に取り付け可能にする、ネジ等を備えることも可能である。これは全ての実施形態に当てはまる。
【0023】
図の実施形態では、照明装置100は、本質的には全体的に柔軟であるリフレクター110を含んでいる。リフレクターの第一空間的形態は実線で示されており、一方でその第二空間的形態は破線でしめされている。図の実施形態では、リフレクター110を第一空間的形態から第二空間的形態へ転換することによって変形が成し遂げられる。前記リフレクターは単一部品であるか、又は多くの構成要素、特に、例えば図10中に示したような球状クアドラングルの形状の構成要素で形成されてもよい。
【0024】
リフレクター110はその内側表面において二つの光源120、130が備えられる。光源120及び130は、ここでは個々のLED光源であって環状列に均一に間隔をあけられており、光源120及び130は独立して輝度を調節可能である。光源120及び130の全ての輝度と、各LEDの個々の輝度の両方を調節することが可能であってもよい。光源の電気的接続及び光源への動力供給は当業者によって難なく成し遂げられ得るので、ここではこれ以上詳細には記載しない。
【0025】
リフレクター110したがって照明装置が第一空間的形態(以後「閉じた空間的形態」ともいう)である場合、対象物20は周辺光から陰にされ、リフレクターの内側表面によって作り出された拡散光によってのみ照らされる。
【0026】
図2はさらなる実施形態200を表しており、多数の柔軟要素211、212によって半球状リフレクター210が形成されている。前記柔軟要素は半球状の表面要素として、特に球状クアドラングルの形状に形作られる。個々の部分211、212を折り返すことによって変形が成し遂げられる。リフレクター210の上面図は図10中に示されている。
【0027】
図3及び図4は本発明に係る照明装置の二つの実施形態300、400を表しており、そのリフレクター310、410は実質的にベル形状をしている。リフレクター310、410は、それぞれ継ぎ手313又は413によって連結された第一部分311又は411及び第二部分312又は412をそれぞれ有している。部分311、312及び412は柔軟であるが、部分411は剛性である。照明装置300は、リフレクター310を固定手段、例えばクランプリングへ結合する継ぎ手314を対物鏡10上に更に有している。
【0028】
その第一の閉じた空間的形態である場合、図3の実施形態300は対象物20の拡散照明を作り出す。第二の開いた空間的形態は、対象物への接近を目的として対象物と対物鏡との間の距離を変更する必要なく、対象物20への最大可能な接近をもたらす。そのうえ、第二の開いた空間的形態にある場合、照明装置300は特に保存目的のために有利である、殆んどスペースを占領しないのである。
【0029】
図4は照明装置400を表しており、第一の閉じた空間的形態は、図3に係る照明装置300に等しい。しかしながら第二の開いた空間的形態である場合、照明装置400は署名装置300とは異なっている。部分411が剛直であるので、対象物20の拡散照明は第二空間的形態で維持され、それによって対象物の観察と操作を同時に可能にする。
【0030】
図5中には、第一、第二、及び第三空間的形態にある、本発明照明装置の第五の好ましい実施形態が模式的断面図で示されており、全体として500で表示されている。第一空間的形態は実線で表示され、第二空間的形態は短い破線で表現され、且つ第三空間的形態は長い破線で表示されている。照明装置500のリフレクター510は基本的に、全体的に柔軟であり且つ非常に高い弾性度を有している。このことは、異なる作業距離を有する対物鏡10、11、及び12の取り付けを可能にし、その上対象物が実質的に周辺環境から完全に遮蔽されることを可能にする。図示された実施形態500の場合、第一、第二、及び第三位置は全て閉じた位置である。例えば使用者がリフレクター510の下側縁を持ち上げることによって開いた位置が達成され得る。
【0031】
図6において、試料又は対象物20を検査するための顕微鏡が、模式的に断面図で示されており、全体として600で表示されている。前記顕微鏡は顕微鏡本体4を有しており、それに顕微鏡ステージ30が支持部材3によって取り付けられている。試料20が顕微鏡ステージ30上に置かれ、回転式輪3aの形態をした調節手段を用いることによって垂直に動かすことが可能である。対物鏡10は、対物鏡ホルダー6に接した状態で設けられる。試料20の照明は、とりわけここではさらに記載しない入射照明装置5によって成し遂げられる。そのうえ顕微鏡600には、本発明に係る照明装置の実施形態400が備えられる。照明装置400は、対物鏡端部側で小さな開口部140を有し、対象物端部側で大きな開口部150を有する。
【0032】
照明装置400は、例えばクランプネジによって対物鏡10に取り付けられる。ベル形状をした、特に弾性のあるリフレクター140には、二つの光源120及び130がその内側表面において設けられる。光源120及び130はここでは、均一にスペースをあけて環状に配列している個々のLED光源の形態であり、互いに独立して明るさを調節可能である。光源120及び130の全体的明るさと、各LED個々の明るさの両方の調節が可能であってもよい。光源120及び130は、基本的に全方向から均質に対象物20を実質的に照らすために拡散して分散されるところの、リフレクター410の内側表面を照らす。試料20から反射されて出た照明光は、観察ビーム路に沿って管8をとおり接眼鏡9まで進む。観察ビーム路の光学軸はOA1で表示される。
【0033】
図7では、試料20を検査するための実体顕微鏡が模式的に断面図で表されて、全体として700で表示されている。実体顕微鏡700の要素の機能は、図6中に記載した顕微鏡600の要素のものと実質的に同一であるので、そのような要素には同一の参照符号が与えられ、再度記載はしない。このため図6の記載を援用する。
【0034】
本発明の入射照明装置は、図8に図示したように、対象物の実質的に球状の照明にも適している。所望の拡散照明は、実質的に全空間方向(360°)からもたらされる。前に述べたように、実質的にシェル様、又はドーム様の実施形態は、0°から90°、又は270°から360°を越えない範囲内で、それぞれ試料の明視野照明を可能にする。しかしながら、球状試料のような特定の試料幾何学形状に対しては、光が試料上に入射できる範囲内である角度範囲を増加することが有利である。明視野照明の角度範囲を増加するためには、図8中に示したような実施形態の提案がある。結果として得られる利点は、明視野照明のための立体角が増加され、一方で試料は顕微鏡の焦点はずれを起こさせることなく接近可能のままである。立体角増加の原理は、図9を参照しながら後に述べる。
【0035】
図8に示した照明装置800は、実質的に上部側と底部側とで同一寸法の開口部を有する、実質的に球状のリフレクター810を有している。リフレクター810は、第一空間的形態から第二空間的形態へ転換されるように継ぎ手813によって連結された、剛直部分811と柔軟部分821とを有している。前記球状形態は照明角度を増加することを可能にし、その原理はリフレクター900と球状試料20に関する図9中に記載している。試料の空間的形態と組み合わせたリフレクターの空間的形態によって、光軸に対して90°よりも大きな又は270°よりも小さな立体角からの光線901、902でさえも、対物鏡に到達することが可能となる。
【0036】
本発明に係る照明装置を用いることによってのみ、このような照明が実際に実行可能となる。剛直なリフレクターを有する従来の照明装置では、上昇した支持体30上に置かれた試料20はリフレクターから除去することが困難である、というのはしばしば支持体を十分に下降させることができないから、又は対物鏡をこのために十分に上昇させることができないからである。これは特に本発明が特別な利点をもたらすところである、というのは従来技術では見ることのなかった特別な照明方法を実現させたからである。リフレクターが第二の開いた空間的形態に転換されると、上昇した支持体30上の試料20は容易に操作、特に支持体と対物鏡との間の既に合わせられた距離を変更する必要なく取り替えられ得るのである。一旦試料の操作が完了すると、リフレクターは第一の閉じた空間的形態に転換して戻されて、拡散照明をもたらすのである。
【0037】
図10では、図1に係る照明装置100の可能な実施形態、及び図2に係る照明装置200の可能な実施形態が第一空間的形態で、光軸に沿った上面図によって表されている。図1及び図2でも表したように、照明装置100の第一空間的形態は照明装置200の第一空間的形態に等しい。図10中に示したリフレクター110及び210はそれぞれ、多数の境界を接している表面要素1001〜1004によって形成され、図の実施例では球状クアドラングルの形態である。要素1001〜1004は互いに重なっていてもよいし、又は互いに直接的に隣接していてもよい。照明装置100及び200は、例えばこれらを対物鏡に取り付け可能とするクランプ輪1100及びクランプネジ1200を有している。
【0038】
図10中に示した実施形態100では、個々の要素1001〜1004は、リフレクター110を第一空間的形態から第二空間的形態に転換するためにひっくり返される。図10中に示した実施形態200では、個々の要素1001〜1004は、それらの上部縁上の点によって関節様にクランプ輪1100に適切に柔軟に接合され、前記点は図10中では1005〜1008で表示される。
【0039】
リフレクターは少なくとも部分的に柔軟であるので、本発明の照明装置は多くの作動距離に適用され得る。その上、使用者のケガ及び顕微鏡又は照明装置の損傷を回避することを可能にする。特に、標本(プレパラート)には焦点を変える必要なく容易に接近可能である。
【0040】
図中に示された実施形態は単に本発明の図示であって、本発明はその範囲から逸脱することなく他のいかなる形態をも実施することが可能である。このことはとりわけ、剛直な又は柔軟な部分、開口部の数と寸法、光源の数と配置等に該当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡(600、700)用照明装置(100、200、300、400、500、800)であって、
少なくとも一つの光源(120、130)と、及び、
拡散照明をもたらすためのリフレクター(110、210、310、410、510、810)とを備えて構成され、
前記リフレクターが少なくとも部分的に、顕微鏡対物鏡(10、11、12)と観察されるべき対象物(20)との間の観察ビーム路(OA1)を取り囲んでいる、照明装置において、
リフレクター(110、210、310、410、510、810)は少なくとも部分的に弾性があって、且つ少なくとも第一空間的形態から少なくとも第二空間的形態へ可逆的に変形可能である、照明装置。
【請求項2】
リフレクター(110、210、310、410、510、810)が回転対称、表面対称、又は軸対称である、請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
リフレクターが、基本的に回転楕円体(810)、球体(810)、半球体(110、210)、ベル(310、410)、ドーム、楕円形の放物面、回転放物面(510)、又は回転双曲面の空間的形態を有している、又は、少なくとも部分的にそのような空間的形態の表面要素で構成される、請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
少なくとも一つの光源(120、130)は、環状であって且つリフレクター(110、210、310、410、510、810)の内側表面に配置される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項5】
二つの環状の光源(120、130)がリフレクター(110、210、310、410、510、810)の内側表面に設けられる、請求項4に記載の照明装置。
【請求項6】
リフレクター(110、210、310、410、510、810)が少なくとも二つの部分(311、312、411、412、811、812)を有しており、当該部分は継ぎ手(313、314、413、813)によって連結され、且つ前記継ぎ手(313、314、413、813)に関して互いに相対的に位置決め可能である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項7】
継ぎ手(313、314、413、813)が弾性変形可能な材料によって定義される、請求項6に記載の照明装置。
【請求項8】
部分(311、312、412、812)の少なくとも一つが、少なくとも部分的に柔軟である、請求項6又は7に記載の照明装置。
【請求項9】
対物鏡端部側に小さな開口部(140)を有しており、対象物端部側に大きな開口部(150)を有している、請求項1〜8のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項10】
対物鏡(10)と、請求項1〜9のいずれか一項に記載の照明装置(100、200、300、400、500、800)とを備えて構成される、対象物(20)を観察するための顕微鏡。
【請求項11】
複合顕微鏡(600)又は光学顕微鏡(700)として設計された、請求項10に記載の顕微鏡。
【請求項12】
リフレクター(110、210、310、410、510、810)が第二空間的形態である場合に、顕微鏡ステージ(30)上に置かれた対象物(20)が、対物鏡(10)と、対象物(20)を支持する支持体(30)との間の距離を変化することなく使用者によって操作され得る、請求項10又は11に記載の顕微鏡。
【請求項13】
対物鏡(10)と、対象物(20)を支持する支持体(30)との間の既に合わせられた距離を維持しながら、照明装置(100、200、300、400、500、800)のリフレクター(110、210、310、410、510)が、第一空間的形態から第二空間的形態へ転換され、且つ試料(20)が操作される、特に使用者によって取り替えられる、請求項10〜12のいずれか一項に記載の顕微鏡(600、700)内の対象物(20)を操作する方法。
【請求項14】
一旦試料(20)の操作が完了すると、照明装置(100、200、300、400、500、800)のリフレクター(110、210、310、410、510)が、第二空間的形態から第一空間的形態へ変形して戻される、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−34074(P2011−34074A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154662(P2010−154662)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(503078863)ライカ マイクロシステムス (シュヴァイツ) アクチエンゲゼルシャフト (13)
【Fターム(参考)】