説明

顕微鏡画像の導入された「ブラインド・デコンボリューション」方法及びソフトウエア

【課題】 顕微鏡観察対象物の周囲を適切に考慮し、短時間で結果を提供可能な、顕微鏡画像のブラインド・デコンボリューション方法及びソフトウェアを提供すること。
【解決手段】 顕微鏡画像のブラインド・デコンボリューション方法において、a)少なくとも1つの顕微鏡対象物(40)の対象物データを撮像ないし生成するステップ、b)ただ1つのパラメータに依存する評価された(1つの)PSFの影響の下で、見込まれた(1つの)画像を求めるステップ、c)前記撮像ないし生成された画像データと、前記評価されたPSFにより計算された画像データとを比較するステップ、d)比較の結果が悪い場合、同様に1つの実験的パラメータにおいてのみ変化される(1つの)新たなPSFを求めるステップ、e)前記計算された対象物データと前記撮像ないし生成された対象物データとの間で十分な一致が達成されるまで前記ステップb〜dを繰返し実行するステップを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡画像の導入されたブラインド・デコンボリューション方法に関する。
【0002】
更に、本発明は、顕微鏡画像のブラインド・デコンボリューション方法を計算機に実行させるデータ記録媒体上のソフトウエアに関する。
【背景技術】
【0003】
対象物の画像は対象物自体と結像システムの装置関数に依存する。局所的空間内の装置関数は、点像(強度分布)関数(Punktbildfunktion)と呼ばれるが、これは英語では“Point Spread Function”といい、“PSF”と略称される。局所的周波数空間では、PSFをフーリエ変換した関数は、“Optical Transfer Function(光学的伝達関数)”と呼ばれ、“OTF”と略称される。本書においては、以下、専ら略称PSF及びOTFを用いる。
【0004】
厳密にいえば、対象物も像空間も(x−、y−、及びz−座標による)3次元と考えれば、定置の結像システムにおけるPSFは、6座標の関数である。
【0005】
しかしながら、一般的には、PSFは(例えば最良フォーカスの点(複数)及び面(複数)に対する)相対座標のみに依存し、従って対象物ないし画像野内のすべての点に対して同じ経過を有すると考えられる。これにより、OTFによって問題を数値的に処理するためにより効果的に機能する可能性が開かれる。
【0006】
ここで考察する3次元対象物の高分解能顕微鏡検査の場合、結像を行う対物レンズの(像面に関する)対象物側焦点深度は非常に小さいため、3次元構造を完全に検出するためには、対象物及び対物レンズをz方向に互いに対し相対的に移動しなければならず、多数の水平「断面」において相応の数の画像を撮像し(1つの「画像積層体(スタック画像)」を生成し)なければならない。
【0007】
尤も、(1つの)完全な画像積層体が存在する場合は、種々の数学的方法によって、各層間の「クロストーク(Uebersprechen)」を検出し、続いてそのデータから「減算」し、これによりx方向及びy方向における理論的に可能な解像度を再び得ることも、z方向の解像度も格段に改善することも可能となる。この方法は、通常、デコンボリューションと称される。
【0008】
【非特許文献1】M.J. Booth, M.A.A. Neil and T. Wilson,“Aberration correction for confocal imaging in refractive-index-mismatched media”, Journal of Microscopy, 192(2), 90-8, (1998)
【非特許文献2】C.J.R. Sheppard and P. Toeroek,“Effects of the specimen refractive index on confocal imaging”, Journal of Microscopy, 185(3), 366-74, (1997)
【非特許文献3】D. Kundur and D. Hatzinakos,“Blind Image Deconvolution: An Algorithmic Approach to Practical Image Restoration”, IEEE Signal Processing Magazine, 43-64, (1996)
【非特許文献4】Thiebaut and J.M. Conan,“Strict a priori constraints for maximum-likelihood blind deconvolution”, J. Opt. Soc. Am. A, 12(3), 485-92, (1995)
【非特許文献5】J. A. Conchello and Q. Yu,“Parametric blind deconvolution of fluorescence microscope images: Preliminary results” in Three-Dimensional microscopy: image acquisition and processing, C. J. Cogswell, G. S. Kino, and T. Wilson, editors, Proceedings of the SPIE 2655, 164-74, (1996)
【非特許文献6】J. Markham and J. A. Conchello,“Parametric blind deconvolution of microscopic images: Further results”, in Three-dimensional and multidimensional microscopy: Image Acquisition and Processing V, C. J. Cogswell, J. A. Conchello, J. M. Lerner, T. Lu, and T. Wilson, chairs/editors, Proc. SPIE; volume 3261, 38-49, (1998)
【非特許文献7】S. F. Gibson and F. Lanni,“Experimental test of an analytical model of aberration in an oil-immersion objective lens used in three-dimensional light microscopy”, J. Opt. Soc. Am. A, 8(10), 1601-13, (1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、デコンボリューションを行うためには、特に高性能というわけではないが非常に単純な幾つかの方法を除いて、「クロストーク」と「汚れ(Verschmierung)」の程度をそれぞれ表わすPSFの正確な知識が通常必要である。残念なことに、PSFは、実際上、しばしば不完全にしか知ることができない幾つかの実験(的)パラメータに敏感に(大きく)依存する。これらのパラメータは、とりわけ液浸媒体の光学的特性であり、例えば温度及び濃度と共に変化する液浸媒体の屈折率nや、液浸媒体の光学的厚さdである。このため、試料に対する焦点深度への妨害的な依存関係もまた生じ得る(非特許文献1、非特許文献2参照)。
【0010】
デコンボリューションのためPSFを求めるために、従来技術では、種々の方法が使用される。その一例として理論的PSFがあるが、これは、PSFが、対物レンズないし顕微鏡全体の(場合により極度に単純化された)モデルから計算されるものである。理論的PSFを使用する場合の問題点は、多くの場合、基礎となるモデルが過度に単純であること、即ち対物レンズ及び/又は対象物包埋部のパラメータないし対象物周囲環境は、そのすべてが考慮されるわけではないということである。実際上、対物レンズ自体は一応良好であって単純に記述することができる(現代の対物レンズは十分に理想的である)ことがわかっているが、これに対して対象物包埋部のパラメータないし対象物周囲を十分に良好に定義することないし一定に維持することは比較的困難である。問題となるのは、試料が厚い場合、部分的に未知の特性を有する溶液内の生細胞の場合等である。
【0011】
従来技術の別の一手段は、現実の(できるだけ代表的な)包埋部及び周囲の、点として理想化された微視的(顕微鏡的)パーティクル(微粒子)(いわゆる「ビーズ」)の画像積層体からPSFを導出することである。PSFの測定は、大掛かりなものとなるにもかかわらず、前記の問題を不完全にしか解決しない。この場合、互いに相反する種々の要求間で妥協点を見出さなければならない:(系統誤差を含まない)真のPSFをできるだけ正確に求めるためには微小な大きさのビーズが必要となるが、このため測定信号もまた微小なものとなり、更に取り扱いも困難となる。また、x、y、z方向に広がるPSFの領域に第2のビーズ又は他の異物が存在しないことを保証しなければならない。このようにして測定されたPSFが複数の画像積層体のデコンボリューションに使用される場合、測定中のノイズ又は更には振動によるPSFの誤差が系統的態様ですべての画像積層体に影響を及ぼすことが考慮されなければならない。同様のことが、PSFを記録する際の諸条件が個々の画像積層体(スタック画像)に対する諸条件と十分に対応するか否かが不確実であることに対しても当てはまる。
【0012】
更なる一手段は、画像積層体の「冗長性」を利用して未知のPSFと対象物とを同時に復元(再構成)することである(いわゆる「ブラインド・デコンボリューション」)。一義的な結果を得るためには、勿論、対象物及びPSFに対する種々の予情報及び制限ないし条件(「アプリオリないし事前(予)情報」及び「制約(constraints)」)が有効であると仮定しなければならない。これには、例えば、対象物強度値が負ではあり得ないこと、PSFが光学系の開口数に相応して「帯域制限」されていなければならないことが含まれ、さらにPSFと場合により対象物の両方が有限の広がりを有し、所定の対称性を有するという(単純な)仮定も含まれる(これについては非特許文献3、非特許文献4参照)。市販のコンピュータプログラム(例えばAutoquant社USAの“Autodeblur”)は、画像材料が適切である場合、部分的にはもっともらしい結果を達成する。非専門家には分かり難いアルゴリズム、大きな計算コスト(時間コスト)、及びその際あり得るアーチファクトのため、とくにこのアプローチが広く受け入れられることがこれまで妨げられてきた。使用されるアルゴリズムは、原理的にも光学的意味で「ブラインド」である。即ち、このアルゴリズムは、原理的に、正の(ポジティブな)信号と帯域制限された更なる正の「応答関数」との畳み込みに関する任意の問題に適用され得るが、このアルゴリズムは、結像システムの幾何光学的特性(特異性)について付加的仮定を行わず、従って顕微鏡結像に関する特別な「知見」を備えていない。
【0013】
「ブラインド・デコンボリューション」の一特殊形態として、パラメトリックに導入されたブラインド・デコンボリューションがある(非特許文献5、非特許文献6参照)。デコンボリューションのこの形式は、完全にパラメトリックなデコンボリューションと純粋なブラインド・デコンボリューションとの組合せと考えることができる。これにはPSFの物理的モデルが含まれる(非特許文献7参照)。この問題は、PSFのパラメータ化によって原理的に処理される。というのは、これにより簡単に、上述の予情報及び条件を(いわば「自動的に」)考慮することができるからである。そのため、理論的PSFを特徴付けるために、例えば全部で約14のパラメータが使用されるが、そのうちの7つのパラメータは、対象物に対する周囲条件を記述すべき実験(的)パラメータである。これに加えて、種々異なる次数(Ordnung)の開口収差(誤差)(Oeffnungsfehlern)に応じたパラメータ化も使用可能となる。しかしながら、この場合、低次の項(Terme)のみへ制限されるためPSFのシミュレーション(Nachbildung)がとりわけアパーチャが大きい場合には不正確になり得るか、或いは高次に至るまで多数の独立項が使用できるが、これら項同士の実際には生起する結合(Verkopplung)は認識されない。
【0014】
それゆえ、本発明の第1の課題は、対象物の周囲を適切に考慮し、短時間で結果を提供するような、顕微鏡画像の導入されたブラインド・デコンボリューション方法を提供することである。
【0015】
本発明の第2の課題は、対象物の周囲を考慮し、短時間で結果を提供し、及び種々異なる顕微鏡システムにおいて迅速に使用可能であるような、顕微鏡画像の導入されたブラインド・デコンボリューションのためのソフトウエア(プログラム)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記第1の課題は、請求項1に記載の各ステップを有する方法によって解決される。即ち、本発明の第1の視点の顕微鏡画像のブラインド・デコンボリューション方法において、a)少なくとも1つの顕微鏡対象物の対象物データを撮像ないし生成するステップ、b)ただ1つのパラメータに依存する評価(推定)された(1つの)PSFの影響の下で、見込まれた(期待された)(1つの)画像を求めるステップ、c)前記撮像ないし生成された画像データと、前記評価(推定)されたPSFにより計算された画像データとを比較するステップ、d)比較の結果が悪い場合、同様に1つの実験(的)パラメータにおいてのみ変化される(1つの)新たなPSFを求めるステップ、e)前記計算された対象物データと前記撮像ないし生成された対象物データとの間で十分な一致が達成されるまで前記ステップb〜dを繰返し実行するステップを有することを特徴とする(形態1・基本構成1)。
【0017】
上記第2の課題は、請求項11の特徴を含むソフトウエア(プログラム)により解決される。即ち、本発明の第2の視点の、顕微鏡画像のブラインド・デコンボリューション方法を計算機に実行させるデータ記録媒体上のソフトウエアにおいて、a)(複数の)顕微鏡対象物の対象物データを撮像ないし生成するステップ、b)ただ1つのパラメータに依存する評価(推定)された(1つの)PSFの影響の下で、見込まれた(予期された)(1つの)画像を求めるステップ、c)前記撮像ないし生成された画像データと、前記推定されたPSFにより計算された画像データとを比較するステップ、d)比較の結果が悪い場合、同様に1つの実験的パラメータにおいてのみ変化される(1つの)新たなPSFを求めるステップ、e)前記計算された対象物データと前記撮像ないし生成された対象物データとの間で十分な一致が達成されるまで前記ステップb〜dを繰返し実行するステップを有することを特徴とする(形態11・基本構成2)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の方法及びソフトウエア(プログラム)の利点は、デコンボリューションが高速であること、及びアーチファクトのないことである。対物レンズのデータ、ないし対物レンズ及びビーム路に存在する光学要素のデータは、十分良好に既知である。従って、許容されるべきPSFを求めるためのこれらパラメータは一定である。その結果、光学的に可能なPSFは1次元のみの小さな下位空間(Unterraum)に限定される。この方策により、計算時間もアーチファクトも大幅な減少が期待できる。PSFを求める際には、対象物と対物レンズとの間の周囲を考慮したただ1つのパラメータだけが変化される。この場合、このパラメータは、当該周囲に配される媒体の既存(既知)の屈折率を含み、更に温度変化もまた同時に取り入れることができる。
【0019】
本発明の対象を概略的に図示したが、以下図面を用いて説明する。
【実施例】
【0020】
ブラインド・デコンボリューションのためには、とりわけ異なる屈折率nを有する複数の平行層による波面収差を考慮しなければならない。ここで、例えば異なる複数の液浸媒体及びカバーガラス(複数)から構成され、種々異なる屈折率nと、1種類の厚さdとを有する、顕微鏡対物レンズ20(図12参照)の光軸21に対して垂直なN個の平行層からなるシステムを仮定する。平行ないし垂直に配されていない層は、コマ収差を引き起こすが、ここでは検討しない。というのは、これにより実際に見込まれるべき収差が十分に障害となることは確かに予想はされるが、上述の「指数不整合(index mismatch)」による収差と比べると数オーダー小さいと予想されるからである。
【0021】
更に、出発点として、設計(ないし設定)条件(Designfall)、即ちn(複数)とd(複数)の完全に特定の組合せに対して(近似的に)理想的結像を達成する理想光学系(対物レンズ+鏡筒レンズ等)を仮定する。ここで、厚さがdで設計指数がnの所定の複数の層の1つ(又は当該層の一部分のみ)を指数がnの1つの層によって置換する場合を考察する。そのような変化を「総和」することにより、任意の特性を有する複数の平行層の考え得るすべての場合を導き出すことができる。従って、例えばカバーガラスの純粋な厚さの変化は、カバーガラスの指数nを有する1つの層によって指数がnの液浸媒体の一部を置換することに相当する。
【0022】
これにより引き起こされる波面変化wについては、以下に掲げる単純ではあるが正確な式が文献中に見出される(例えばToeroek et al.参照):
w=d(cos(α)n−cos(α)n 式1
ここに、w及びdは(真空中における)λで規定され、n及びnは何れも屈折率であり、α及びαは2つの媒体における光軸21に対する光線の角度(なす角)である。これらの角度は、一定の「幾何学的」アパーチャGA、即ち
GA=sin(α)=NA/n 式2
の光線を前提にすれば(実用上はこれの方が寧ろ重要である)、より簡単に規定できる。というのは、この値は、複数の平行層を通過する際に変化しないからである。
【0023】
そして、
sin(α)=GA×sin(α)=GA×(n/n)=sin(α)×(n/n) 式3
及び
cos(α)=(1−sin(α))1/2 式4
である。
【0024】
ここで注意すべきことは、上記の式は厚さdに線形的に依存することである。即ち、引き起こされる収差は、それぞれの(各層の)絶対的厚さに依存せず、常に同じ(相対的)「経過」ないし同じ「ゾーン特性(Zonenverhalten)」を示す。或いは換言すると、当該引き起こされる収差は、所定のアパーチャに対しては、低次及び高次の球面収差の完全に特定の組合せから形成される。勿論、n及びn相互の任意の各組合せに対してとりわけ当てはまる。
【0025】
種々異なる光学厚さによる一定の位相シフトは通常は重要ではない。従って波面変形が微小のアパーチャに対してゼロであるように、即ち、
w=d×((cos(α)−1)×n−cos(α)×n) 式5
となるように、波面変形を定義するとより適切である。
【0026】
例えば、実用上重要なグリセリン液浸におけるDINカバーガラス(n=1.460、n=1.524)の場合に対して、λでの波面収差wの後続の経過が、50λのカバーガラス厚さd(ないしは厚さ誤差Δd!)に対して見られる。これはほぼ、63x/1.30 Glyc Corr対物レンズの最大予定調節範囲±30μmに相当する:
【0027】
図1は、63x/1.30 Glyc Corr対物レンズにおけるカバーガラスの厚さ誤差50λに対する「真の」波面収差を示す。尤も、この曲線100は、「半分の真実(halbe Wahrheit)」しか示していない。上記の収差は、一定の位相収差(誤差)に加えてデフォーカス項、即ち最も鮮鋭な画像の位置の付加的ないし変化層の導入によりさらに変化する。古典的には、フォーカス位置は、しばしばいわゆる近軸焦点により定義され、この位置では、2次収差項はすべて、微小な(verschwindende)アパーチャに対してゼロである。この場合、デフォーカス自体の作用は、波面の2次変化としてのみ近似される。上記の場合に対して、以下の近似が得られる:
w=d×((cos(α)−1)×n−(cos(α)−1)×n
−d(n−n)×sin(α/2)
【0028】
この式から、比較的簡単に、より高次のデフォーカスも正しく考慮されたより良好な補正を導出することができる。(これについての詳細は以下を参照)。
【0029】
w=d×((cos(α)−1)×n−(cos(α)−1)×n
−d(n−n)×(1−cos(α))
【0030】
これにより、63x/1.30 Glyc、近軸焦点におけるカバーガラス厚の誤差50λに対する波面収差の上記例に対する、図2に示した収差経過(曲線)200が得られる。このグラフ(曲線)は、「指数不整合」補正はそもそもGA凡そ0.4から漸く作用し始めること、及び主として高次の収差が作用することを明確に示している。
【0031】
アパーチャが大きい場合、瞳中心の周りでの2次及びより高次の項の最小化もまた最早意味を持たない。最良の結像は、残留デフォーカス項が瞳全体にわたって「伝達(媒介)される(vermittelt)」場合にのみ達成される。尤も、このため、「最良フォーカス」で生じた収差は、(+,−)符号の値を有するだけでなく、ゼロを中心に発振するようになる。以下参照。
【0032】
微小な指数差Δnに対する「汎用式」(Universelle Formel)が存在する。小さな(正確には無限小の)指数差Δnに対しては、波面収差についての近似式が得られる。この近似式は厚さdに比例するだけでなく、指数差Δnにも比例する。境界移行(屈折率の異なる2つの物質間の境界)(Grenzuebergang)では再び一定の位相の減算後に次式が得られる。
w=(d×Δn)×(cos(α)−1+sin(α)/cos(α))
【0033】
この近似式は厚さと指数誤差の積(及び間接的には屈折率n)にだけ依存し、最早他のパラメータには依存しない。この積を以下、Corr値(補正値)Crと称し、
Cr=d×Δn
又は、場合により
Cr=Δd×Δn
とする。
【0034】
従って、前記グリセリンにおける可変カバーガラス補正の場合は、Corr値は、凡そ Cr=50×(1.524−1.460)=3.2(λ)
に相当する。
【0035】
ここで、(近似的に)1つのパラメータのみによって、例えばカバーガラスの厚さ誤差も液浸媒体の温度又は濃度も記述・補正できることが明確となる。
【0036】
上述の近似式に対してのみ初めて当てはまる重要なポイントは、この近似式によって、任意の複雑な層シーケンスも、単に個々のCorr値の和Crtot=ΣCrに相当するただ1つの等価層ないし1つの収差により記述可能となるということである。
【0037】
図3に、「汎用」式とデフォーカスを含む「正確な」式との間におけるAPO63x/1.30 Glyc Corrに対する計算例の比較を示す。上記の式により、上述の実際的な例における「汎用」近似解の質を検査することができる。正確な結果(曲線300)をCr=3.2に対する近似解(曲線301)と比較すると、焦点位置のズレがすでに補償されているとしても、一見したところ、一致は十分なものではなく、瞳縁部では最大凡そλ/2の偏差がある。Cr=3.2に対する波面近似(曲線301)とCr=2.4に対する波面近似(曲線302)とは、ほぼ完全に等しい曲線である。
【0038】
しかしながら、上記の近似式は、達成可能な最良のものではない。上記の例で近似式は原理的に過大な収差を予測するということがまず認識されるべきである。実用上、結像が最良となるよう対物レンズをCorr(補正)リングで手動調整する場合であっても、計画的に導入される「ブラインド・デコンボリューション」の場合であっても、試料包埋部の正確な光学的パラメータは未知であり、従って最適のCr値は「試行」によってのみ見出される。数値としてのCr値はまったく意味がない。ここでもまた、まさにCr=2.4というややより小さな値が、その他の点では変化されていないモデルにおいて、正確な解に対しほぼ完全な一致をつくりだしていることが明白となる。
【0039】
図4に、「最良フォーカス」における残留収差の比較を示す。この図から、ズレ(偏差)がさらにやや改善されていることを見出すことができる。これは、上記の波面収差と同じように63x/1.30 Glycにおける「最良フォーカス」で計算され、曲線400で描かれている。Cr=3.2に対する波面近似解は曲線401で、Cr=2.4に対する波面近似解は曲線402で描かれている。後者の2つの曲線はほぼ完全に重なっている。Cr=3.2による近似解を直接適用すると(すでに伝達(媒介)された)波面収差>0.2λが生じるが、残留収差(誤差)は最適Corr値によってこの値の1/20に低減され得るため、実用上は無視し得る。近軸焦点におけるストレール値(強度)(Strehl-Wert)は、依然として大きい非対称のz応答における最大74%から、十分に対称的な応答における実用上完全といえる99.6%に改善される。
【0040】
この場合も、この近似は実用上任意の複層システムに適用することができるが、その際1より多い(2以上の)パラメータの変化は必要ないということを最後に再度強調しておく。この変化されるべき1つのパラメータは、1つの層システムを構成する複数の層の個々(個別)のパラメータの関数的(機能的)代表(funktionelle Repraesentanz)である。(複数の)部分層の各々がCrの適切な値によって十分に良好に近似できる場合、システム全体もCrs(複数)の(総)和に等しい(1つの)Crにより十分に良好に記述することができる。というのは、個々の近似(解)は、上記「汎用関数」の種々のスケーリングされた結像に過ぎないからである。
【0041】
従って、ここで考察するPSF(図5から図11)は、(x、y、z)の関数である。本発明の目的の観点では、PSFは(x、y)について対称であると仮定され、とりわけzの依存性が考察される。すなわち顕微鏡システムにより規定される光軸の方向で考察される。
【0042】
図5に、例として「理想」PSFを示す。強度Iは、顕微鏡システムのzにおける(光軸に沿った)推移に対してプロットされている。この図では、フォーカス(点ないし面)において大きな強度が得られるが、この強度はPSFの顕著な対称的ピーク2として現れている。フォーカスから離れるように(両方の方向に)推移すると、小さな副(2次)極大値2aが発生するが、最終的にはノイズに埋もれる。
【0043】
図6に、対象物を包囲する媒体の屈折率が小さく変化する(ズレる)ことにより発生したPSFを示す。この撹乱によって、乱されたPSFのピーク3ははっきりと非対称になっていることを明確に見出すことができる。同様に、副ピーク3aもよりシャープに現れている。
【0044】
図6に示したPSFの変化は、本発明の補正によって除去される。補正されたPSFのピーク4(図7参照)には乱れはなく、再び対称形を示している。本発明の補正は、対象物包埋部の光学的作用がただ1つのパラメータにより記述されるように行われる。一般的には、対象物包埋部は、多数のパラメータにより記述される。これらのパラメータは:対象物支持体の屈折率、カバーガラスの屈折率、試料を包囲する媒体の屈折率、使用される液浸流体(媒体)の屈折率、温度等であり得る。本発明の技術的思想は、これら種々異なるパラメータを1つのパラメータに統合して、対象物の「仮想包埋(部)」を記述することである。結像への影響は、図7から分るように、図6のPSFに対して非常に良好な近似(接近)である。
【0045】
図8に、屈折率の小さなズレ(変化)によりPSFにより大きな影響が生じている様子を示す。ピーク5の非対称は一層甚だしい。この非対称性は、本発明の方法により、簡単かつ迅速に除去される(図9)。1つのパラメータによる補正によって、PSFのピーク6は再び対称的形態となり、強度の(理想強度への)等化(Angleichung)も示すようになる。
【0046】
対象物の周囲にある1つの薄層の屈折率が大きく変化した(ズレた)場合についての様子を図10に示す。ピーク7は、大きな撹乱とはっきりとした非対称化を被る。この撹乱も、図11に示すように、本発明の方法によって除去することができる。ピーク8は、ほぼ対称的な形態を有する。
【0047】
PSFを逆算(Rueckrechnung)するのに1つのパラメータのみを変化させるという本発明の方法による上記のような結果に基づき、顕微鏡対物レンズには「補正フレーム(Korrektionsfassung)」が設けられる。これにより、所定の限界内で、ガラス厚、媒体の温度及び屈折率の変動もまた「同時」に「補正」ないし補償することができる。この単純かつただ1つの光学要素をビーム路中で変化する装置によって、いわゆる仮想包埋(部)を機械的方法で補正することができる。これは、光学用語でいうところの「開口収差(誤差)」又は「球面収差」の補正に該当するが、これらの収差では、対物レンズの「瞳」での位相波面が、4次及びそれより高次の回転対称関数により撹乱される(「収差が生じる」)。
【0048】
大きいアパーチャ(ないしは大きい開口角)を利用する顕微鏡検査では、一般的な光学に関する文献で行われる近似とは異なり、4次よりも高次の収差項もまたPSFの補正のために考慮しなければならない。このズレ(偏差)の種々異なる値に対し、瞳における位相収差に、それぞれ1つの、完全に特定の一義的な経過が生じる。換言すれば、(アパーチャが既知の対物レンズに対し)4次及びそれより高次の項の全く特定の組合せ(複数)のみがこの問題に関して重要であるということを意味する。
【0049】
ただ1つの自由パラメータのみが生じるという上述の関係からありふれた(trivial)PSFが得られるのでは断じてないことを図5〜図11は示している。図5〜図11は、シミュレーション計算の結果である。即ち、図5〜図11は、夫々3つの異なる状況(図6、図8、及び図10参照)における光学的誤差(収差)の適正化を示している。この誤差適正化から生じるPSFにより、PSFの復元(再構成)後、1つのパラメータの変化によってほぼ理想的な関係が得られる。
【0050】
図12に、本発明の方法を実施するための顕微鏡システム1の概略図を示す。顕微鏡システム1は、顕微鏡テーブルないしステージ(載物台)12を備える顕微鏡10を含む。顕微鏡テーブル12は、観察ないし検査されるべき試料14が載置される対象物支持体13を受容するために用いられる。対象物支持体13としては、例えばガラス製対象物支持体又はペトリシャーレを使用することができる。
【0051】
図示の顕微鏡10は、顕微鏡テーブル12及び試料14の下方に照明装置が配置される透過光型顕微鏡である。照明システムは、ランプハウジング16内に光源15を有し、この光源15から光軸17を備える照明ビーム路が発する。照明ビーム路は、照明光学系18及びコンデンサレンズ19を介し、顕微鏡台12に配置された試料14を伴う対象物支持体13に下方から向けられる。
【0052】
試料14を通過する光は、顕微鏡テーブル12及び試料14の上方に配置される顕微鏡10の対物レンズ20に達する。対物レンズ20は、照明システムの光軸17とアライメント(整列)される光軸21を規定する。顕微鏡10は、複数の対物レンズ20並びに対物レンズ交換装置(レボルバないしターレット)を有し得るが、これらについては簡略化のため図示していない。図示の実施例では位置固定の顕微鏡ステージ12が使用される(英語ではfixed stage microscopeという)ので、試料14に対する照明光のフォーカシングは、対物レンズ20の高さ調節によって行われる。顕微鏡10内部では、光は、図示しないレンズ(複数)及びミラーを介して顕微鏡10の少なくとも1つの接眼レンズ22に導かれ、操作者は、接眼レンズ22を介して顕微鏡テーブル12に載置された試料14を観察することができる。
【0053】
更に、顕微鏡10には、試料14の画像を撮像するカメラ23が設けられる。その都度調節された照明の光は、光学要素31を介して少なくとも1つの接眼レンズ22に到達する。即ち図示の実施例では任意の種類の照明を利用することができる。
【0054】
カメラ23によって撮像された画像は、計算機(コンピュータ)26と接続されたモニタ25に表示される。計算機26、カメラ23及びモニタ25から構成されるシステムは、例えばフィルタ(位置)調節装置又は顕微鏡10のためのオートフォーカス装置(不図示)のような動力駆動型顕微鏡機能を制御するために使用することも可能である。更に、計算機は、撮像された画像データに基づいて、当該撮像された画像データのパラメータのデコンボリューションを相応に行う本発明の方法を実行するのに利用される。
【0055】
図13に、顕微鏡対物レンズの模式図と、対象物40を包囲する周囲、とりわけ試料42と対物レンズ20との間で種々異なる屈折率を有する複数の平坦な光学(的)層の典型的な構造を示す。試料42自体は、この実施例では、所定の底部46を備える対象物支持体13、培養液44、及びカバーガラス43から構成される。底部46及びカバーガラス43の層の厚さは縮尺通りには記載していないが、典型的な厚さは200μmである。対象物の典型的な大きさは10μmである。顕微鏡検査で生理学的溶液が使用される場合、当該溶液は、通常、ペトリシャーレに入れられる。ペトリシャーレの底部は、対象物支持体13の底部46をなす。底部46及びカバーガラス43の全作用厚ではなく、対象物40とカバーガラス43との間の距離のみが生理学的媒体内の光学的作用層として作用する。従って、この層の厚さは試料内における対象物40の正確な位置に依存し、対象物40内ではこれは一定と見なすことができる。対物レンズ20とカバーガラス43との間には、屈折率nを有する液浸媒体47が配される。同様に、カバーガラス43の屈折率はn、培養液又は生理学的媒体の屈折率はn、及び対象物支持体13の屈折率はnである。
【0056】
種々異なる複数の層のこれら特徴的パラメータは、実験(的)パラメータと称される。というのは、これらは特別の実験に依存するからである。これとは反対に、対物レンズ20及び顕微鏡のビーム路にある付加的光学要素の特徴は固定的なパラメータ、いわゆる設計(ないし設定)パラメータである。設計パラメータは利用者には十分既知であり、例えば固定的パラメータとして顕微鏡システム1の計算機26に記憶することができる。図9に示したモデルは、(光軸を中心とした対称性を仮定した場合)6つのパラメータを有する。所与の複数の層から対物レンズ20の正確なPSFをこの特別な状況で計算するためには、複数の層すべてを高精度で計算に使用しなければならないであろう。しかしながら、そのようなことは目的ではない。本発明では、設計パラメータ(複数)によって定められる理想PSFからの可能なズレ(偏差)を記述することが重要なのである。非常に良好な近似には、1つのパラメータを計算的に変化させることで十分である。付加情報として、結像ビーム円錐体の最大開口角が必要である。理想的な場合では、この角度も設計パラメータであり、sin(開口角)=NA/nが成り立つ。ここに、NAは対物レンズ20の開口数であり、液浸媒体の公称(nominal)屈折率nも設定パラメータである。実用上n<nであることがよくあるが、この場合、最大開口角はn/nだけ減じられる。しかしながら、この値は、上記のビーム全体計算とは異なり、あまり影響を及ぼさないので、この場合使用される層(オイル、ガラス、水等)に対する公称値を採用することができる。
【0057】
図14に、本発明の方法のブロック図を示す。「ブラインド・デコンボリューション」アルゴリズム(プログラム)の原理的機能は、予情報の枠内で可能なすべてのPSF(複数)及び対象物(複数)を、これにより計算された断層画像(複数)と測定された画像積層体との最良の一致が見出されるまで変化させることであると理解されるべきである。この場合、このために必要な計算時間と場合によってあり得るアーチファクトの強度が、パラメータの数及び変動幅によって大きく増大することは明らかである。
【0058】
本発明によれば、第1のステップ50において、対象物40の画像が撮像される。第1のステップでは、必ずしも対象物の撮像された画像を問題とする必要はない。利用者が見込む(予期する)ものが、利用者によって採用されることも可能である。第2のステップ52において、1次元空間内のPSFの評価(推定:Schaetzung)54の影響の下で、対象物の見込まれるべき(予期されるべき)画像が計算される。これに続いて、第3のステップ56において、対象物の計算された画像と対象物の撮像された画像との比較が実行される。このステップでは、イテレーションの中断ないし続行を可能にする種々異なるアルゴリズムが影響する。所定の基準(複数)に従い評価されるべき一致が不十分であることが確認された場合、第4のステップ58で、対象物の新たな評価(推定)が行われ、1パラメータのPSFが求められる。そして、対象物のこの新たな評価(推定)及び1パラメータのPSFは、再び見込まれる(予期される)画像の計算に影響を及ぼす(ステップ52)。そして、所定時点において又は所定回数のイテレーション後に比較がポジティブとされると、計算された画像はモニタ25において表示可能となる。アルゴリズムの実行は、観察された画像のノイズをどのように評価するか、及び新たな評価(推定)をどのように実行するかという観点から種々異なる。
【0059】
一般的な数学的及び物理的制限を対象物関数(Objektfunktion)ないし中断基準(Abbruchkriterium)に適用することは、使用される対物レンズ20(設計パラメータは既知)のPSFにより求められる。装置内部において可能なPSFの1パラメータの記述及び変化(最適化)により、高速で信頼性のあるデコンボリューションが可能となる。
【0060】
従って、デコンボリューションの際に、いくつかのパラメータが未知であるためPSFを不正確にしか既知ではないものとして仮定しなければならない場合、任意のないし一般的にのみ制限された(正の(ポジティブな)及び帯域制限された)PSF(複数)を許容することは、対物レンズの品質が良好で、光学的に可能なPSFが1つの小さな1次元だけの下位空間に制限されていれば、意味のあることではない(問題はない;nicht
sinnvoll)。このようにして、計算時間の大幅な縮減もアーチファクトの大幅な減少も見込む(予期する)ことができる。
【0061】
とりわけ前記の下位空間は、対物レンズ20に配設可能な補正フレームの回転に相応して生ずるPSF(複数)の下位空間と全く同一である。このため、所与の対物レンズの補正領域をコンピュータでの「画像処理」により擬似的に「拡大」すること、又は更には補正機能を有しない対物レンズを追加的にこの特性について「拡張」することも可能となる。反対に、利用者により機械的補正フレームが正常に調節されている場合の探査空間(Suchraum)を、モニタ25上での最良の画像印象又はコントラストに対する視覚的制御の下で更に制限することも勿論可能である。
【0062】
1パラメータのデコンボリューションの結果は、生理学的媒体に包埋された3次元顕微鏡検査対象物の画像を生成するために、計算機26によりモニタ25に表示される。
【0063】
本発明は、特別な一実施例に関して説明した。しかしながら、特許請求の範囲の保護範囲を逸脱しない範囲において変更及び変形することは勿論可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】63x/1.30 Glyc Corr.対物レンズの場合のカバーガラスの厚さ誤差50λについての「真の」波面収差。
【図2】63x/1.30 Glycの場合のカバーガラスの厚さ誤差50λについてのある波面収差に関する収差経過。
【図3】「汎用」公式と、デフォーカスを含む「厳密」公式との間で、APO 63x/1.30 Glyc Corr.に関する計算例の比較。
【図4】「最良焦点」における残留収差の比較。
【図5】理想PSFの一例。
【図6】対象物を包囲する媒体の屈折率の小さなズレに影響を受けたPSFの一例。
【図7】図2のPSFに対し実行された補償後のPSFの一例。
【図8】対象物を包囲する媒体の屈折率の小さなズレにより図2の場合よりも大きく影響を受けたPSFの一例。
【図9】図4からのPSFに対し実行された補償後のPSFの一例。
【図10】対象物の周囲の1つの薄層に生じた屈折率の大きなズレにより大きな撹乱が引き起こされた場合のPSFの一例。
【図11】図4からのPSFに対し実行された補償後のPSFの一例。
【図12】本発明の方法を実施するための顕微鏡システムの概略図。
【図13】顕微鏡対物レンズ、及び対象物を包囲する周囲、とりわけ試料と対物レンズとの間において種々異なる屈折率を有する複数の平坦な光学層の典型的構造の模式図。
【図14】本発明の方法のブロック図の一例。
【符号の説明】
【0065】
1 顕微鏡
13 対象物支持体
20 対物レンズ
21 対物レンズ20の光軸
26 計算機
40 対象物
42 試料
43 カバーガラス
44 培養液
46 底部(支持体13の)
47 液浸媒体



【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡画像のブラインド・デコンボリューション方法において、
a)少なくとも1つの顕微鏡対象物(40)の対象物データを撮像ないし生成するステップ、
b)ただ1つのパラメータに依存する評価された(1つの)PSFの影響の下で、見込まれた(1つの)画像を求めるステップ、
c)前記撮像ないし生成された画像データと、前記評価されたPSFにより計算された画像データとを比較するステップ、
d)比較の結果が悪い場合、同様に1つの実験的パラメータにおいてのみ変化される(1つの)新たなPSFを求めるステップ、
e)前記計算された対象物データと前記撮像ないし生成された対象物データとの間で十分な一致が達成されるまで前記ステップb〜dを繰返し実行するステップ
を有すること
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記ただ1つのパラメータは、顕微鏡(1)の対物レンズ(20)と前記対象物(40)の上方の領域との間における該対象物(40)の周囲の光学的特性が考慮されること
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象物(40)を包囲する前記周囲は、前記対物レンズ(20)の光軸(21)に対し垂直に配される複数の層を有する層システムから構成されること
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の層は、対象物支持体(13)の厚さ、前記対象物(40)の大きさ又は厚さ、カバーガラス(43)の厚さ、液浸媒体(47)の層厚、及び前記対象物(40)と該カバーガラス(43)との間隔を含むこと
を特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の層の各々は、個別のパラメータとして、当該層の厚さと屈折率とを有すること
を特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
ただ1つの可変パラメータが、1つの層システムの複数の層の個別のパラメータを関数的に代表すること
を特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記層システムの複数の層の各々が、適切な値の補正値Crによって十分良好に近似されること、及び
次いで、前記層システムの全体が、個々の前記Crの和に等しい1つの補正値Crによって十分良好に記述可能であること
を特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
Cr=d×Δn又はCr=Δd×Δnであり、dは1つの層の厚さ、nは当該1つの層の屈折率であること
を特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記パラメータにより、前記対象物支持体(13)の厚さの変動、前記液浸媒体の温度及び屈折率の変動又は生理学的溶液の温度及び屈折率の変動、及び前記カバーガラスの厚さが補償されること
を特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項10】
顕微鏡画像のブラインド・デコンボリューション方法を計算機(26)に実行させるデータ記録媒体上のソフトウエアにおいて、
a)(複数の)顕微鏡対象物の対象物データを撮像ないし生成するステップ、
b)ただ1つのパラメータに依存する評価された(1つの)PSFの影響の下で、予想される(1つの)画像を求めるステップ、
c)前記撮像ないし生成された画像データと、前記推定されたPSFにより計算された画像データとを比較するステップ、
d)比較の結果が悪い場合、同様に1つの実験的パラメータにおいてのみ変化される(1つの)新たなPSFを求めるステップ、
e)前記計算された対象物データと前記撮像ないし生成された対象物データとの間で十分な一致が達成されるまで前記ステップb〜dを繰返し実行するステップ
を有すること
を特徴とするソフトウエア。
【請求項11】
前記ただ1つのパラメータは、顕微鏡(1)の対物レンズ(20)と前記対象物(40)の上方の領域との間の該対象物(40)の周囲の光学的特性が考慮されること、及び
前記光学的特性は、前記計算機(26)に入力されること
を特徴とする請求項10に記載のソフトウエア。
【請求項12】
前記パラメータによって、対象物支持体(13)の厚さ、液浸媒体の温度及び屈折率又は生理的溶液の温度及び屈折率、及びカバーガラスの厚さに依存する層システムの複数の層の変動が補償されること
を特徴とする請求項11に記載のソフトウエア。
【請求項13】
前記層システム中の複数の層の各々が、適切な値の補正値Crによって十分良好に近似されること、及び
次いで、前記層システムの全体が、個々の前記Crの和に等しい1つの補正値Crによって十分良好に記述可能であること
を特徴とする請求項11に記載のソフトウエア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2006−504114(P2006−504114A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−548116(P2003−548116)
【出願日】平成14年11月28日(2002.11.28)
【国際出願番号】PCT/EP2002/013406
【国際公開番号】WO2003/046753
【国際公開日】平成15年6月5日(2003.6.5)
【出願人】(500127900)ライカ ミクロジュステムス ヴェツラー ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】