説明

顕微鏡装置

【課題】液浸対物レンズに必要最少量の液体を供給可能な顕微鏡装置を廉価に提供する。
【解決手段】
液浸対物レンズおよび標本を搭載するステージを備えた倒立型顕微鏡を用いた標本観察方法、倒立型顕微鏡システムに関する発明である。
液浸対物レンズに前回液体を供給した時からの経過時間、移動距離、観察点の変更の有無を監視し、その監視結果にもとづいて液浸対物レンズに液体を供給するタイミングを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液浸対物レンズを備えた顕微鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子の機能解析に培養細胞を用いた実験が広く行なわれている。実験手法として長時間の間欠撮影によるタイムラプス観察がある。一般に培養細胞つまり生きた細胞は光刺激によりダメージを受ける。ダメージを低減するために少ない励起光でより多くの蛍光を捕獲するために高NAの対物レンズが用いられる。
【0003】
好適な高NAの対物レンズは液浸対物レンズであり、対物レンズと標本の間は屈折率の高い液体で充填される。特表2004−531765号公報は、液浸対物レンズに液体を供給する液体供給装置を提案している。この液体供給装置では、液浸対物レンズの射出レンズの側方近傍に配置された供給器の吐出口から液体を液浸対物レンズに供給する。供給器の吐出口を液浸対物レンズの射出レンズの近くに配置することにより、供給器の移動機構を設けることなく簡易な構成で液体の供給が可能である。
【特許文献1】特表2004−531765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、供給器の吐出口は射出レンズの側方近傍に配置されているので、射出レンズと標本の間のギャップを液体で充填するには多くの液体を供給しなければならない。液浸対物レンズには、液体として水を用いる水浸対物レンズとオイルを用いる油浸対物レンズとがある。油浸対物レンズで使用されるオイルは高価であり、観察に必要な量のオイルより多量のオイルを供給する必要があるため、実験コストの上昇を招く。また水浸対物レンズに対しては、必要以上の液体をストックするための大きなタンクや、供給時間短縮のために能力の大きなポンプが必要となるため、実験コストの上昇を招く。
【0005】
必要最少量の液体を供給することは、一般に液体の定量供給に利用されるノズルとポンプを用いることにより可能であるが、その場合、必要個所つまり液浸対物レンズのほぼ真上から液体供給する必要がある。このため、観察の際には液浸対物レンズの移動範囲外にノズルを退避させる機構が必要である。この退避機構のために駆動部を設けることは装置コストを上昇させてしまう。
【0006】
本発明は、このような実状を考慮して成されたものであり、その目的は、液浸対物レンズに必要最少量の液体を供給可能な顕微鏡装置を廉価に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の顕微鏡装置は、標本を観察するための液浸対物レンズと、前記液浸対物レンズをその光軸方向に相対移動させる準焦部と、前記液浸対物レンズに液体を供給するノズルを有する液体供給部と、前記液浸対物レンズの光軸に直交する平面内で前記ノズルと前記液浸対物レンズとを相対的に移動させる水平移動手段とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液浸対物レンズに必要最少量の液体を供給可能な顕微鏡装置が廉価に提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
<第一実施形態>
本発明の第一実施形態の顕微鏡装置を図1に示す。顕微鏡装置は、環境を維持するために培養部101と、観察のための顕微鏡部102とから構成されている。培養部101と顕微鏡部102は共に、外部との熱の出入りを遮断する断熱層112と、断熱層112の内壁に接して設けられたヒーター103とを有し、温度を一定に保つことが可能である。培養部101と顕微鏡部102の接合部には、培養部101の気密性を確保するため、弾性を有するシール部材108が設けられている。
【0011】
培養部101はさらに、温度センサー104、加湿パッド105、CO2センサー10
6、電磁弁107とを備えている。顕微鏡部102に設けた制御器109は、温度センサー104の信号によりヒーター103を制御し、またCO2センサー106の信号により
電磁弁107を制御し、培養細胞110が設置される培養部101を一般に温度37℃、CO2濃度5%、相対湿度95%以上に維持し、培養細胞110の活性を維持する。また
培養部101は天面に透過光による観察を可能とするための透過光源111を備えている。
【0012】
顕微鏡部102はさらに、液浸対物レンズ113と、液浸対物レンズ113を上下動させる準焦部114、培養細胞110を入れた標本容器121が載せられるステージ115、液浸対物レンズ113による平行光線を結像させる結像レンズ116、液浸対物レンズ113を通して照明する落射光源117、蛍光フィルター118、CCDカメラ119とを備えている。ステージ115は直動部と回動部により液浸対物レンズ113に対して標本容器121を液浸対物レンズ113の光軸に直交する平面内で二次元的に移動させることができる。培養部101に装着された透過光源111は培養細胞110の全体像を捕らえるための形態観察に用いられ、落射光源117と蛍光フィルター118は蛍光色素や蛍光タンパクなどを用いた特定部位の蛍光観察に用いられる。
【0013】
顕微鏡部102から培養部101に突出したステージ115は、培養部101の底面との間に弾性を有するシール部材120が挿入されており、培養部101の湿気が顕微鏡部102に漏れることはない。シール部材120を設ける代わりに、ステージ115と培養部101の底面との間隙をサブmm程度に設定してもよい。制御器109は、透過光源111と準焦部114、ステージ115、落射光源117、CCDカメラ119とも接続されており、これらも管理する。
【0014】
液浸対物レンズ113と標本容器121の間には水や油などの液体が介在される。液体は特別な保持手段が用いられないため、複数の標本容器121を観察する場合などに標本容器121に液体が付着して液体が不足したり、また同一の標本容器121内での観察でも観察位置を変えることにより液体が広がって液体が不足したりする。そのため必要に応じて液体の補給が必要となる。
【0015】
液体供給装置は機構部と液送部に大別される。液送部は液体供給部と液体排出部とを有している。液体供給部は、液体を貯蔵する供給タンク122と、液体を送出する供給ポンプ123、液浸対物レンズ113の光軸に平行な軸周りに回動する回動アーム124と、回動アーム124に固定されたノズル125とを有している。ノズル125と回動アーム124は内部に細い孔を有し、回動アーム124と供給ポンプ123と供給タンク122はシリコンなどの材質からなるチューブ126で接続されている。液体排出部は、液浸対物レンズ113からこぼれ落ちた液体を溜めるための廃液皿127と、一定量溜まった液体を排出するための排出ポンプ128、液体を貯蔵する排出タンク129とを有し、それらは液体供給部と同様なチューブ126で接続されている。供給ポンプ123から回動アーム124までのチューブ126は、顕微鏡部102の内壁に沿って引き回されている。
【0016】
図2は液体供給装置の機構部の詳細図である。図2には、液浸対物レンズ113を下降させた液体供給状態が実線で示され、液浸対物レンズ113を上昇させた観察状態が二点鎖線で示されている。機構部は、準焦部114に設けられたカム部材130と、顕微鏡部102の上部に設置された回動アーム124とを有している。カム部材130は、液浸対物レンズ113の上下移動方向に対して傾斜したカム面を有している。カム部材130が動作のトリガーとなり回動アーム124を駆動する。回動アーム124は、顕微鏡部102の内側上面にベアリング131により回動可能に支持され、顕微鏡部102から培養部101に突出している。ノズル125は回動アーム124の回動軸に直交する状態で回動アーム124に固定されている。
【0017】
図1に示されるように、回動アーム124と顕微鏡部102との間には弾性を有するシール部材132が設置されている。図2において、回動アーム124には、準焦部114の移動範囲内でカム部材130と接触する回動ピン133が回動軸に対して垂直に設けられている。顕微鏡部102の内側には、回動ピン133に接して回動アーム124の回動を規制する規制ピン134が設置されている。回動ピン133を規制ピン134に当て付けるため、顕微鏡部102の内側上部に設けたフック135と回動ピン133が弾性を有するバネ部材136で接続されている。
【0018】
図1において、標本容器121はステージ115に設けた凹部115aに落とし込まれ、弾性を有する板状金属の固定部材137で固定される。培養細胞110を観察する状態では、液浸対物レンズ113は準焦部114の移動範囲の上方に位置している。この状態では図2の二点鎖線で示されるように、回動アーム124は、回動アーム124に接続したバネ部材136により規制ピン134に当て付けられている。つまり準焦部114に取り付けたカム部材130と回動アーム124の回動ピン133は接していない。
【0019】
ステージ115に設置した別の標本容器121の培養細胞110を観察する際は、ステージ115と液浸対物レンズ113の干渉を避けるために、準焦部114により液浸対物レンズ113を大きく下降させる。すると、カム部材130により回動ピン133が押され、バネ部材136の引っ張り力に反して回動アーム124が回動され、回動アーム124に取り付けたノズル125が液浸対物レンズ113の先玉の上方近傍に配置される。つまりノズル125は準焦部114による液浸対物レンズ113の移動に連動して移動される。
【0020】
対物レンズはサブμmの精度で位置決めされるため、小さな外力が作用するだけでも位置の再現が困難となりピントずれが容易に生じてしまう。しかし本実施形態では、準焦部114により回動アーム124を回動させるのは画像取得に必要なピント位置ではないため、外力が準焦部114に作用してもピントずれは生じない。また液体は、顕微鏡部102の内壁を引き回されたチューブ126を通る間に顕微鏡部102と同じ温度すなわち供給先の液浸対物レンズ113と同じ温度になるため、液浸対物レンズ113の温度変化によるピントずれも生じない。またノズル125が液浸対物レンズ113の先玉の上方近傍に配置されるため、ノズル125から観察に必要な最少量の液体を供給することが可能となる。またノズル125を回動するために専用の駆動手段が不要なため廉価に実現される。
【0021】
液体の供給タイミングを図3のフローチャートを用いて説明する。
【0022】
液体不足は、同じ標本容器121内での観察部位の変更や、観察点の変更、自然蒸発により生じる。
【0023】
[S1]供給器は、装置の電源投入により制御を開始する。
【0024】
[S2]移動距離、観察点の変更の有無、前回の供給時からの経過時間を監視する。経過時間<T1であるか、移動距離<Lであるか、観察点の変更があった場合、液体の供給を開始する。
【0025】
[S3]はじめに準焦部114を下降させ、ノズル125を液浸対物レンズ113の上方に配置する。
【0026】
[S4]供給ポンプ123と排出ポンプ128を所定時間動作させる。供給ポンプ123の動作時間は、供給不足を防ぐため、液体を若干多めに供給するように設定するほうがよい。例えば0.2ccの必要量に対して0.3ccを供給するように設定するとよい。
【0027】
[S5]観察点の変更が必要な場合はステージ115を移動させる。
【0028】
[S6]供給ポンプ123と排出ポンプ128の作動とステージ115の移動動作とが共に終了しているかを判断する。
【0029】
[S7]次に、準焦部114を所定の位置に移動させる。
【0030】
[S8]最後に、タイマーで待ち時間T2を設け、待ち時間T2が経過した後に供給動作を終了する。待ち時間T2は、液体と液浸対物レンズ113のわずかな温度差を解消するための時間であり、これにより温度差に起因する液浸対物レンズ113の材料の伸縮によりピントずれが生じることを防ぐ。
【0031】
この制御方式では、液浸対物レンズ113ヘの液体供給と同時に光軸に対する二次元方向の移動を行なうため、各工程を直列に接続した制御に比べて、次の観察までのインターバルを短縮することができる。またS8において観察前に待ち時間T2を設けることにより、液浸対物レンズ113の温度変化によるピントずれの発生が防止され、ボケのない画像取得が可能となる。
【0032】
第一実施形態では、培養部を備えた顕微鏡装置を用いて説明したが、本実施形態の液体供給装置は、一般的な手動の顕微鏡に適用されてもよい。
【0033】
<第二実施形態>
第二実施形態の顕微鏡装置において、第一実施形態と相違する液体供給に関する部位を図4に示す。つまり図4において図示が省略された部分は第一実施形態と同じである。本実施形態の顕微鏡装置は、培養部200と顕微鏡部201とを有している。顕微鏡部201の上面には一軸方向への移動が可能な直動ステージ202が設置され、直動ステージ202には回動可能な回動ステージ203が設置されている。直動ステージ202は、顕微鏡部201から培養部200に突出したシール部202aを有している。また回動ステージ203は、顕微鏡部201から培養部200に突出したトレー接続部203aを有している。
【0034】
トレー接続部203aはオスアリ203bを有しており、トレー205はオスアリ203bに対応する形状のメスアリ205aを有している。シール部202aは液浸対物レンズ204に液体を供給するためのノズル206を備えている。培養部200で生じた湿気が顕微鏡部201へ漏れるのを防止するため、シール部202aと顕微鏡部201の上面との間には弾性を有するシール部材207が挿入されている。シール部材207を設ける代わりに、シール部202aと顕微鏡部201の上面との間隙をサブmm程度に設定してもよい。
【0035】
標本容器208に用いる一般的なガラスボトムディッシュは35mm程度の外径と、直径10mm程度の観察範囲を有している。標本容器208はトレー205上で、回動ステージ203の回動軸Yを中心とする半径約70mmの円周上に設置される。また直動ステージ202の移動方向は、回動ステージ203の回動軸Yと液浸対物レンズ204の光軸Xに直交する直線と平行に設定される。直動ステージ202と回動ステージ203は共働して、トレー205に設置された標本容器121を液浸対物レンズ204の光軸に直交する平面内で二次元的に移動させることができる。標本容器208の観察範囲が直径10mmであることから、直動ステージ202の移動範囲は観察のために10mm程度が必要である。これにより標本容器208の観察範囲内のCCDカメラによる観察が可能となる。CCDカメラの撮像範囲に対する回動ステージ203の回転角が十分小さいため、作業者は直交する2方向への移動との認識で作業が可能である。
【0036】
本実施形態の直動ステージ202は、観察のために必要な10mmにさらに20mmを追加した移動範囲を有している。追加した20mmの移動範囲は、液浸対物レンズ204の最外径の直径30mmmの半値15mmを基に設定した値である。30mmの移動範囲により、標本容器208の観察範囲内では液浸対物レンズ204の外側に位置するノズル206を、液浸対物レンズ204の先玉の上方近傍に配置することが可能となる。
【0037】
図5に示されるように、シール部202aはノズル206の取り付け用の凹部202bを有している。シール部202aには、図4に示されるように、凹部202bと顕微鏡部201の内側に通じる細孔202cが設けられている。細孔202cにはチューブ209が接続され、チューブ209は図4には図示されていないが供給ポンプと供給タンクに接続されている。
【0038】
図5に示されるように、ノズル206はシール部202aの凹部202bに対応する凸部206aを有し、凸部206aとノズル先端近傍の底面を接続する細孔206bを備える。また凸部206aの円筒部に設けた溝206cには弾性を有するOリング210が挿入されている。またノズル206は凸部206aより一回り大きなフランジ部206dを有し、フランジ部206dはノズル206のシール部202aへの当て付け面として働く。ノズル206はOリング210の弾性によってシール部202aに固定される。そのため装置の制御器での処理エラーや、作業者による外力が働いた場合、洗浄の際などに、容易にノズルを外すことが可能であり、装置の損傷や装置内部の汚染を防止できる。
【0039】
制御フローについて説明する。はじめに液体供給の必要性を判断する。供給が必要な際は、はじめにトレー205と液浸対物レンズ204の干渉を防止するため、準焦部211を下降させる。その後、ふたつの動作を並行に実施する。ひとつは標本容器208の交換や観察部位の変更に伴う回動ステージ203の回動の動作であり、もうひとつは液体供給の動作である。回動動作では、液体供給動作の終了後に、液浸対物レンズ204の光軸X上に次の観察地点が位置するように回動ステージ203が回動される。また液体供給動作では、直動ステージ202によりノズル206を液浸対物レンズ204の先玉の上方近傍に配置し、液体を供給し、その後、直動ステージ202によりノズル206をほぼ元の位置に戻すが、その際に液浸対物レンズ204の光軸X上に次の観察地点が位置するように位置決めする。これらふたつの動作が終了した後、準焦部211を液浸対物レンズ204のピント位置に上昇させる。その後、温度差補正のための待ち時間を置いてから観察を開始する。
【0040】
この制御において、トレー205の形状を加味し、準焦部211の移動を直動ステージ

202の移動より遅くすることによって、トレー205と液浸対物レンズ204の干渉を防止し、かつ制御系での待ち時間を短縮することが可能となる。
【0041】
本実施形態では、直動ステージの移動範囲の拡大と直動ステージのシール部へのノズル付加により液体供給を可能としているため、新規に駆動部を設ける必要がなく、第一実施形態で追加した部品よりさらに少ない部品で必要最少量の液体供給を実現している。
【0042】
<第三実施形態>
第三実施形態の顕微鏡装置において、第一実施形態と相違する液体供給に関する部位を図6に示す。つまり図6において図示が省略された部分は第一実施形態と同じである。また本実施形態の顕微鏡装置は第二実施形態の顕微鏡装置と類似点が多く、図6において第二実施形態の顕微鏡装置の部材と同様の部材は同じ参照符号で示してある。また図6の対物レンズ周辺部を上方から見た図を図7に示す。
【0043】
図6に示されるように、準焦部300には、複数の対物レンズを切り換えるための回転式のレボルバー302が設けられている。レボルバー302には二個の液浸対物レンズ301aと301bが装着可能であり、レボルバー302は回転により液浸対物レンズ301aと301bを移動させ、90度ごとに位置決め可能に設計されている。図7において、観察に使用される対物レンズが配置される顕微鏡部102の光学系の光軸Xに直交する平面内においてレボルバー302の回転中心を中心として光軸X上を通る円周上に位置し光軸Xから90度ずれた点を通る光軸Xに平行な軸Z上にノズル303の先端が設置されている。
【0044】
レボルバー302は二個の対物レンズが装着可能であるが、n個の対物レンズが装着可能であってもよく、その場合には角度θ=360÷2nごとに位置決め可能に設計される。またノズル303は、レボルバー302の回転中心を中心として光軸X上を通る円周上であって、光軸Xから角度θ=360÷2nだけずれた位置に設置される。
【0045】
液浸対物レンズ301aと301bの一方が観察のために光軸X上に配置されたとき、他方は軸Z上に存在しない。光軸X上に配置された液浸対物レンズは観察の際に上昇され、標本容器208との間のWDは0.1mm程度となる。また、液浸対物レンズ301aと301bの一方が液体供給のために軸Z上に配置されたとき、他方は光軸X上に存在せず、準焦部300を上昇させる必要はない。このため、液浸対物レンズ301aと301bの一方の先玉をノズル303の下方近傍に配置し、ノズル303により液浸対物レンズに上方から液体を供給することができる。
【0046】
次に制御フローについて説明する。はじめに液体供給の必要性を判断する。供給が必要な際は、はじめにトレー205と液浸対物レンズ301aの干渉を防止するため、準焦部300を下降させる。その後、ふたつの動作を平行に実施する。ひとつは標本容器208の交換や観察部位の変更に伴う回動ステージ203と直動ステージ202の移動であり、もうひとつは液体供給の動作である。液体供給の動作では、まずレボルバー302の回転により液浸対物レンズ301aを軸Z上に配置する。これにより、液浸対物レンズ301aの先玉がノズル303の下方近傍に配置される。続いて、液体を供給した後、レボルバー302の回転により液浸対物レンズ301aを光軸X上に戻す。その後、準焦部300を観察位置に上昇させる。その後、温度差補正の待ち時間を置いてから観察を開始する。
【0047】
本実施形態では、液浸対物レンズ301aと301bの切り換え部であるレボルバー302を用いることにより、固定されたノズル303の下方に液浸対物レンズを配置している。これにより、第二実施形態よりさらに単純な構成で必要最少量の液体供給を実現している。
【0048】
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第一実施形態の顕微鏡装置を示している。
【図2】図1の顕微鏡装置における液体供給装置の機構部の詳細図である。
【図3】本発明の第一実施形態における液体供給のフローチャートである。
【図4】本発明の第二実施形態の顕微鏡装置における主要部分に示している。
【図5】図4のノズル周辺部を拡大して示している。
【図6】本発明の第三実施形態の顕微鏡装置における主要部分に示している。
【図7】図6の対物レンズ周辺部を上方から見た図である。
【符号の説明】
【0050】
101…培養部、102…顕微鏡部、103…ヒーター、104…温度センサー、105…加湿パッド、106…センサー、107…電磁弁、108…シール部材、109…制御器、110…培養細胞、111…透過光源、112…断熱層、113…液浸対物レンズ、114…準焦部、115…ステージ、115a…凹部、116…結像レンズ、117…落射光源、118…蛍光フィルター、119…CCDカメラ、120…シール部材、121…標本容器、122…供給タンク、123…供給ポンプ、124…回動アーム、125…ノズル、126…チューブ、127…廃液皿、128…排出ポンプ、129…排出タンク、130…カム部材、131…ベアリング、132…シール部材、133…回動ピン、134…規制ピン、135…フック、136…バネ部材、137…固定部材、200…培養部、201…顕微鏡部、202…直動ステージ、202a…シール部、202b…凹部、202c…細孔、203…回動ステージ、203a…トレー接続部、203b…オスアリ、204…液浸対物レンズ、205…トレー、205a…メスアリ、206…ノズル、206a…凸部、206b…細孔、206c…溝、206d…フランジ部、207…シール部材、208…標本容器、209…チューブ、210…Oリング、211…準焦部、300…準焦部、301a…液浸対物レンズ、301b…液浸対物レンズ、302…レボルバー、303…ノズル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液浸対物レンズおよび標本を搭載するステージを備えた倒立型顕微鏡を用いた標本観察方法であって、
前記液浸対物レンズに前回液体を供給した時からの経過時間、前記液浸対物レンズと前記ステージの相対的な移動距離、または、観察点の変更の有無、のうちの1つ以上を監視する監視ステップと、
前記監視ステップの監視結果にもとづいて、前記液浸対物レンズに液体の供給を行なう液体供給ステップと、
を含む標本観察方法。
【請求項2】
標本を観察するための液浸対物レンズと、
前記標本を搭載するステージと、
前記液浸対物レンズに液体を供給する供給器と、
を備えている倒立型顕微鏡システムであって、
前記供給器は、
前記液浸対物レンズに前回液体を供給した時からの経過時間、前記液浸対物レンズと前記ステージの相対的な移動距離、または、観察点の変更の有無、のうちの1つ以上を監視する監視ステップと、
前記監視ステップの監視結果にもとづいて、前記液浸対物レンズに液体の供給を行なう液体供給ステップと、
を含む方法により前記液浸対物レンズに液体を供給することを特徴とする倒立型顕微鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−221559(P2011−221559A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172507(P2011−172507)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【分割の表示】特願2005−128268(P2005−128268)の分割
【原出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】