説明

顕微鏡

【課題】利便性を向上させる。
【解決手段】本体21は、試料13からの観察光を結像する結像光学系35と、結像光学系35からの観察光を受光して、試料13の観察画像を撮像するCCD36とを備えており、画像処理部42が、CCD36により撮像された観察画像を画像処理し、制御基板43が、その画像処理結果に基づいて、試料13の種類を判別し、試料13の種類に応じた観察条件を設定する。本発明は、例えば、スタンドとスタンドに着脱可能な本体とからなる顕微鏡に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルマイクロスコープと呼ばれる顕微鏡が知られている。デジタルマイクロスコープは、筒形状の本体と、本体を機械的に保持するスタンドとからなる顕微鏡であり、本体には対物レンズ等からなる光学系と、光学系により導かれた、試料からの観察光を撮像するCCD(Charge Coupled Devices)とが設けられている。
【0003】
このようなデジタルマイクロスコープにおいて、例えば、特許文献1に開示されているように、各種の照明条件の調整または変更を行うことができる。
【0004】
一般的な顕微鏡やデジタルマイクロスコープで観察の対象となる試料を変更する際、試料に応じた観察条件を設定するのに時間を要したり、試料に応じた最適な観察条件を決定するのには検鏡者の経験も必要となったりするため、利便性が低かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−98246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、顕微鏡観察における観察条件を最適な条件に設定し、利便性を向上させることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の顕微鏡は、撮像手段により撮像された観察画像を画像処理する画像処理手段と、前記画像処理手段による画像処理結果に基づいて、観察する試料の種類を判別し、判別された試料の種類に応じた観察条件を設定する設定手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の顕微鏡においては、撮像手段により撮像された観察画像が画像処理され、その画像処理結果に基づいて、観察する試料の種類が判別されて、判別された試料の種類に応じた観察条件が設定される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の顕微鏡によれば、顕微鏡観察における観察条件を最適な条件に設定し、利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本願発明を適用した顕微鏡観察システムの一実施の形態の構成例を示す図である。
【図2】本体を先端側から見た図である。
【図3】観察処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明を適用した顕微鏡観察システムの一実施の形態の構成例を示す図である。
【0013】
この顕微鏡観察システムは、顕微鏡11と、顕微鏡11に接続されたモニタ12とからなり、顕微鏡観察システムにより観察対象の試料13が観察される。
【0014】
顕微鏡11は、試料13を観察するための光学系、撮像素子、各部を制御する電気系等が設けられた本体21と、本体21が固定されるスタンド22とからなり、本体21はスタンド22に対して着脱可能となっている。図1の例では、本体21とスタンド22とは、機械的にかつ電気的に接続された状態となっており、スタンド22に設けられたステージ31上に試料13が載置されている。なお、本体21は、スタンド22から取り外された状態であっても、本体21単体で1つの顕微鏡として機能するようになされている。
【0015】
本体21におけるステージ31側の端の対物レンズ33に隣接する位置には、本体21の筐体内壁に沿って複数のLED(Light Emitting Diode)32が輪帯状に並べられて固定されており、LED32は試料13に照明光を照射することで、試料13を照明する。図2を参照して後述するように、本体21では、複数のLED32の全部を一度に点灯させたり、一部のLED32のみを点灯させて試料13を偏斜照明したりすることが可能とされている。
【0016】
また、本体21内部のステージ31側の端には、LED32に囲まれるように対物レンズ33が設けられ、本体21内部の中央には、試料13からの観察光の像の倍率を変化させるズーム光学系34と、観察光の像を形成する結像光学系35とが設けられている。
【0017】
試料13の像は、ズーム光学系34を通過することで、ズーム光学系34が備えるレンズ群(図示せず)により任意の倍率に変更される。また、ズーム光学系34の途中にある瞳の位置には、絞り34aが設けられており、ズーム光学系34を通過する光量を絞り34aにより調節することで、試料13の像のコントラストや焦点深度などが変更される。ズーム光学系34のレンズ群は、図示しないガイド、カム、モータなどからなる駆動機構により電動駆動可能とされている。
【0018】
さらに、本体21内部の対物レンズ33が設けられた端と反対側の端には、結像光学系35により形成された観察光の像を撮像することで、試料13の観察画像、より詳細には観察画像の画像データを得るCCD36と、CCD36により撮像された観察画像の画像データを画像処理する画像処理部42とが設けられている。
【0019】
本体21には、液晶モニタなどからなり、CCD36により撮像された観察画像を表示する小型モニタ37と、本体21に対して着脱自在であり、観察画像を記録するメモリ38とが設けられている。この小型モニタ37は、図1のように本体21の側面に設けてもよいが、好ましくはモニタを保持する保持部材(不図示)が、本体21に対して開閉可能なようにヒンジ構造等により配置される。このようなヒンジ構造を利用することにより、モニタを使用者側に向けて位置決めすることが可能となり、より使い勝手が向上する。
【0020】
なお、小型モニタ37は、観察画像の他、例えば、観察状態を示す状態情報を表示することができ、図1の例では、ズーム光学系34のズーム倍率を示す文字「zoom 8.5×」と、照明光の明るさを示す文字「Light 70%」が表示されている。
【0021】
また、本体21には、ズーム光学系34のズーム倍率を変化させるときに操作されるズームスイッチ39が設けられており、ズームスイッチ39の操作に応じてズーム光学系34が電動駆動される。また、本体21には、LED32からの照明光の光量等を調整するときに操作される調光スイッチ40aと、LED32による照明光の照射方向などを切り替えるときに操作される切り替えスイッチ40bと、観察画像のキャプチャを指示するときに操作されるキャプチャボタン41とが設けられている。
【0022】
また、本体21内部には、本体21全体の動作を制御する制御基板43と、本体21の各部、例えばLED32、小型モニタ37、CCD36、制御基板43、画像処理部42等に電力を供給するバッテリ44とが設けられている。バッテリ44は本体21に対して着脱可能であり、バッテリ44を本体21から外して、図示せぬ専用の充電器により充電することができるようになされている。
【0023】
さらに、本体21およびスタンド22には、それぞれ本体21とスタンド22とを接続するための一対のコネクタ45−1およびコネクタ45−2が設けられている。これらのコネクタ45−1とコネクタ45−2とが接続されると、本体21とスタンド22とが機械的に接続され、かつ電気的にも接続される。なお、以下、コネクタ45−1およびコネクタ45−2を個々に区別する必要のない場合、単にコネクタ45とも称する。
【0024】
また、本体21には、本体21がスタンド22に接続されたときに、本体21をスタンド22に対して固定するためのクランプ46が設けられている。
【0025】
さらに、スタンド22には、ステージ31を図中、スタンド22の長手方向(以下、上下方向)に移動させるときに操作される上下動ハンドル47が設けられている。上下動ハンドル47が操作されると、ステージ31が駆動され、移動する。これにより、本体21をスタンド22に装置した状態でステージ31上の試料13への焦準を行うことができる。
【0026】
なお、ステージ31は、図示せぬハンドル等により、図中、横方向および奥行き方向にも移動可能とされている。また、ステージ31は機械的な機構により、手動で駆動されてもよく、電動駆動されてもよい。さらに、ステージ31が回転したり、傾斜したりするような機構が設けられてもよい。
【0027】
また、スタンド22には、本体21が接続されるアーム48が設けられており、アーム48は、スタンド22に設けられた上下動ハンドル49が操作されると、スタンド22の長手方向(以下、上下方向)に移動する。検鏡者は、上下動ハンドル47や上下動ハンドル49を操作することで、ステージ31や本体21を上下方向に移動させ、ピント調整を行うことができる。なお、アーム48も手動または電動の何れにより駆動されてもよい。
【0028】
なお、アーム48は、スタンド22から突出して設けられているが、例えば、スタンド
22の長手方向に沿ってスタンド22にアリを設け、これに沿って移動可能なように本体
21を設置してもよい。このとき、アリはコネクタ45の機能を備え、電気的な接続も達
成するようにしてもよい。
【0029】
さらに、顕微鏡11では、本体21をスタンド22に取り付ける場合に、本体21が、アーム48のコネクタ45−2が設けられている当接面48aで係止されるようになっている。そのため、本体21を当接面48aに押し当てて、クランプ46により本体21をアーム48に固定すれば、本体21の安定性を向上させることができる。
【0030】
スタンド22には、本体21をスタンド22に装着して使用するときに用いられ、ズーム光学系34のズーム倍率を変化させるときに操作されるズームスイッチ50、LED32からの照明光の光量等を調整するときに操作される調光スイッチ51a、およびLED32による照明光の照射方向などを切り替えるときに操作される切り替えスイッチ51bが設けられている。
【0031】
また、スタンド22には、本体21をスタンド22に装着して使用するときに用いられ、スタンド22に接続された図示せぬ電源からの電力を、コネクタ45を介して本体21の各部、例えばLED32、小型モニタ37、CCD36、制御基板43等に供給する給電部52が設けられている。給電部52は、充電ユニット53を備えており、充電ユニット53は図示せぬ電源から給電部52に供給された電力を、コネクタ45を介してバッテリ44に供給することで、バッテリ44を充電することも可能である。
【0032】
さらに、スタンド22には、スタンド22全体の動作を制御する制御基板54が設けられており、制御基板54は、コネクタ45を介して制御基板43と電気的に接続される。
【0033】
例えば、制御基板54は、コネクタ45を介して制御基板43から観察画像が供給されると、供給された観察画像を、スタンド22に接続された外部のモニタ12に表示させる。なお、本体21をスタンド22に装着した際に画像を表示するモニタは、外部のモニタ
12とすることが好ましい。これは、外部モニタ12の方が、大きなモニタである場合に
有効で、取得した画像をより大画面で観察可能となるからである。
【0034】
また、制御基板54は、ズームスイッチ50や調光スイッチ51aが操作されると、ズームスイッチ50や調光スイッチ51aから供給される信号に応じて、コネクタ45を介して制御基板43にズーム倍率の変更や、LED32の光量の変更を指示する。
【0035】
モニタ12の表示部には、図示せぬタッチパネルが重畳されて設けられており、検鏡者はタッチパネルを操作することで、観察画像のキャプチャ等、試料13の観察時に行われる顕微鏡11の各種の動作を指示することができる。検鏡者によりタッチパネルが操作されると、その操作に応じた信号がモニタ12から制御基板54に供給される。
【0036】
また、検鏡者は、モニタ12のタッチパネルを操作することで、メモリ38に記録されている観察画像を示す情報、例えばファイル名やサムネイル画像、観察画像自体をモニタ12に表示させることもできる。
【0037】
このように構成されている顕微鏡11では、CCD36により撮像された試料13の観察画像に対して画像処理部42が画像処理を施した画像処理結果に基づいて、制御基板43が、試料13の種類を判別し、試料13の種類に応じて最適な観察条件で観察が行われるように、顕微鏡11の各部を制御する。
【0038】
例えば、制御基板43は、試料13の種類に基づいて、図2に示すように、LED32の点灯/消灯を制御する。
【0039】
図2は、図1の矢印A方向から本体21の先端側を見た図であり、図2Aに示すように、本体21は、対物レンズ33を囲うように、8個のLED32a乃至32hが配設されている。
【0040】
例えば、試料13の全体を均一に照明するときには、図2Bに示すように、LED32a乃至32hの全てが点灯される。
【0041】
また、試料13を特定の一方向から照明するとき、いわゆる偏斜照明を行うときには、図2Cに示すように、片側のLED32a乃至32dが点灯され、LED32e乃至32hが消灯される。例えば、輪郭や微小な凹凸を表現したい試料13に対して、偏斜照明が行われる。
【0042】
そして、LED32a乃至32hの8個のLEDを、上側、下側、右側、左側、全灯、および全消灯の6段階の切り替えを行うことが可能である。この切り替えは、本体21の切り替えスイッチ40b、およびスタンド22の切り替えスイッチ51bにより行うことができる。例えば、切り替えスイッチ40bおよび切り替えスイッチ51bのいずれかを、1回押すたびに、全灯、上側、右側、下側、左側、および全消灯という順番に、照明光の照射方向および点灯/消灯が切り替えられるように設定することができる。
【0043】
ところで、図2Aに示すように、本体21とスタンド22とは、本体21に設けられたメスアリ81と、アーム48に設けられたオスアリ82により、機械的に接続される。
【0044】
すなわち、本体21のアーム48と当接する面には、図1のスタンド21の長手方向(以下、Z方向とも称する)に長い溝が設けられてメスアリ81とされている。また、アーム48の本体21と当接する面には、メスアリ81と嵌合するZ方向に長い突出部が形成され、オスアリ82とされている。
【0045】
そして、本体21とスタンド22とを機械的に接続させる場合には、検鏡者は、本体21が所望の位置となるように、メスアリ81とオスアリ82とが嵌合された状態で、本体21をスタンド22に対してZ方向にスライドさせて位置合わせを行う。さらに、本体21が所望の位置となると、検鏡者は、棒状のクランプ46(図1)により本体21のメスアリ81の部分をアーム48のオスアリ82の部分に押し付けて、本体21をアーム48に固定する。このようにして、本体21はスタンド22に機械的に接続される。クランプ46はセットビスのようなねじ構造のものでもよい。但し、このクランプ46は、必須ではなく、本体21が適度な嵌合力でスタンド22に設置されてもよい。
【0046】
さらに、顕微鏡11では、本体21がスタンド22に機械的に接続(固定)されると同時に、本体21とスタンド22とが電気的にも接続されるようになされている。
【0047】
即ち、コネクタ45は、本体21とアーム48が機械的に接続された状態となったときに、コネクタ45−1とコネクタ45−2も機械的に接続された状態となるように、顕微鏡11に設けられている。コネクタ45同士が機械的に接続されると、本体21およびスタンド22のそれぞれに設けられた、給電用の線や、制御基板43と制御基板54を接続する線等が相互に接続され、本体21とスタンド22とが電気的にも接続される。つまり、本体21とスタンド22とは、いわゆるワンアクションで機械的にも電気的にも接続される。
【0048】
したがって、検鏡者は、本体21をアーム48に固定するだけで、機械的、電気的な接続を特に意識することなく、簡単に本体21とスタンド22とを機械的にも電気的にも接続することができる。
【0049】
また、本体21をアーム48に固定するときに、何らかの理由により、本体21のコネクタ45−1が、スタンド22のコネクタ45−2に対してZ方向と垂直な方向(以下、XY方向とも称する)にずれてしまう可能性がある。
【0050】
したがって、本体21のZ方向の位置調整と、本体21のXY方向へのずれを考慮すると、例えば、ばね等を利用して、コネクタ45がZ方向およびXY方向に多少のずれを許容できる機能を有するようにすることが望ましい。また、コネクタ45が機械部品により保持されるようにし、その機械部品に、コネクタ45のずれを許容する機構が設けられるようにしてもよい。
【0051】
なお、本体21とアーム48とは、アリ形状を利用してメスアリ81およびオスアリ82により接続されると説明したが、アーム48に対する本体21の位置をZ方向およびXY方向に調整可能であり、本体21およびスタンド22を機械的、電気的に同時に接続可能であれば、どのように接続されてもよい。例えば、丸棒などの嵌合や、矩形のガイド形状などが利用されて、本体21とスタンド22とが接続されるようにしてもよい。
【0052】
また、本体21には、光源としてのLED32、試料13の像を結像するための対物レンズ33乃至結像光学系35、観察画像を撮像するCCD36、観察画像を表示する小型モニタ37、および本体21の各部に電力を供給するバッテリ44が設けられている。そのため検鏡者は、本体21をスタンド22から取り外し、本体21を単体の顕微鏡として用いて試料13を観察することができる。
【0053】
本体21がスタンド22から分離された状態となると、制御基板43は、本体21への電力の供給元をスタンド22(給電部52)からバッテリ44に切り替えるとともに、観察画像の供給先もスタンド22から小型モニタ37に切り替える。これにより、本体21が単体で顕微鏡として機能し、観察画像が小型モニタ37に表示される。
【0054】
検鏡者は本体21を手で持ち、試料13の所望の部位を観察できるように、本体21の対物レンズ33を試料13に向ける。すると、小型モニタ37には、本体21を近づけた試料13の部位の観察画像が表示されるので、検鏡者は、表示された観察画像を見たり、キャプチャボタン41を操作して観察画像をキャプチャさせたりして、試料13を観察する。図示しないが本体21に、本体21に対して突出して設けられた把持部を形成してもよい。また、この把持部にキャプチャボタン41を配置すれば、より操作性を向上させることが可能となる。
【0055】
このように顕微鏡11においては、本体21をスタンド22から取り外した場合には、本体21が単体で顕微鏡として機能するので、ケーブル等により本体21にモニタやコントローラを接続することなく、簡単に試料13を観察することができる。これにより、顕微鏡11の利便性を向上させることができる。
【0056】
ここで、上述したように、顕微鏡11では、CCD36により撮像された試料13の観察画像に対して画像処理部42が画像処理を施した画像処理結果に基づいて、制御基板43により試料13の種類が判別され、試料13の種類に応じた最適な観察条件となるような設定が自動的に行われる。
【0057】
制御基板43が設定する観察条件としては、例えば、図2を参照して説明したようなLED32a乃至32hごとの点灯/消灯の他、試料13を観察する際の観察条件としては、LED32a乃至32hによる照明光の光量や、絞り34aによる絞り値などの照明条件と、CCD36の感度や、ゲイン、コントラストなどの撮像条件とがある。
【0058】
顕微鏡11では、試料13として、例えば、ICチップや、ウエハ、金属組織、実装基板など、あるいは、これら以外の多数の種類のものが観察の対象とされる。また、試料13としては、全面の反射率が高いものまたは一部だけの反射率が高いものや、平坦なものまたは凹凸(高さの違い)があるもの、様々な色のものなどがある。
【0059】
画像処理部42は、CCD36により撮像された試料13の観察画像の画像データを画像処理した結果として、試料13の反射率または形状や、コントラストの高い範囲、色などの情報を含む画像処理結果データを制御基板43に供給する。
【0060】
例えば、ICチップは、反射率が高く、平坦で、微細な構造物であるため、高倍率でなければくっきりとした線が現れないといった特徴があり、そのような特徴を含む画像処理結果データに基づいて、制御基板43は、現在観察している試料13がICチップであると判別する。なお、試料が平坦であるか否かは、視野全体にわたるコントラストが所定の範囲内の値であるか否か(ピントが合っているか否か)で判断することができる。
【0061】
また、実装基板は、リードやハンダ部などのように部分的に反射率が高く、凹凸(即ち、高さ方向に差)があり、低倍率であってもコントラストの高い像が得られるといった特徴があり、そのような特徴を含む画像処理結果データに基づいて、制御基板43は、現在観察している試料13が実装基板であると判別する。なお、凹凸があるか否かは、視野内でコントラストが異なるエリアが複数存在するか否かで判断することができる。
【0062】
また、ICチップや実装基板など以外に、アスベストや生物サンプルなどの様々な試料が顕微鏡11による観察の対象となり、画像処理部42が、それぞれの試料の特徴を含む画像処理結果データを制御基板43に供給し、制御基板43が、試料の種類を判別する。そして、制御基板43は、判別した試料の種類に応じて、その試料での最適な観察条件となるように、絞り34a、LED32、およびCCD36を制御する。
【0063】
例えば、試料13がICチップであると判別された場合、制御基板43は、反射率が高く平坦であるため、LED32の明るさを抑え目(例えば、全灯の50%)にし、図2Bに示すように、LED32a乃至32hの全てを点灯させる。さらに、制御基板43は、CCD36が光量超過でさちらないように感度を低下させ、コントラストをより強調するように、CCD36を設定する。また、制御基板43は、ICチップが微細な構造であるため、絞り34aを全開に設定することで、より解像度良く観察することができるようにする。
【0064】
また、例えば、試料13が実装基板であると判別された場合、制御基板43は、凹凸があるために焦点深度深く観察することが有効であることから、絞り34aを半分程度まで絞り、その分の光量低下を補うために、LED32の光量を高く設定するとともに、CCD36の感度を高く設定する。さらに、制御基板43は、実装基板ではコントラストが強く現れるため、CCD36のコントラストの設定をやや控えめに設定する。また、実装基板のリード部分やハンダ部の輝度が高い部分の白飛びを押さえるような設定を行うことで、良好に観察することができる観察画像を得ることができる。
【0065】
このように、制御基板43が、画像処理部42からの画像処理結果データに基づいて判別した試料に応じて最適な観察条件となるように各部を設定することができるように、制御基板43には、例えば、既知の試料を用いて予め取得された情報を登録したテーブルが記憶されており、制御基板43は、そのテーブルを参照して観察処理を行う。
【0066】
即ち、制御基板43に記憶されているテーブルには、予め取得された画像処理結果データと、試料の種類とが対応付けられており、制御基板43は、画像処理部42から供給される画像処理結果データに基づいて、現在観察されている試料13の種類を判別する。また、制御基板43に記憶されているテーブルには、試料13の種類に応じた最適な観察条件(上述のICチップおよび実装基板を例に説明した観察条件)が対応付けられており、制御基板43は、判別した試料13の種類に対応付けられている観察条件に従って、CCD36、LED32、および絞り34aの設定を調整する。
【0067】
また、顕微鏡11では、本体21がスタンド22に接続されているときに観察の対象となる試料(例えば、ICチップや実装基板など)と、本体21がスタンド22に接続されていないときに観察の対象となる試料(例えば、車両の塗装など)とが異なる傾向があり、制御基板43に記憶されているテーブルは、本体21がスタンド22に接続されているときに観察の対象となる試料と、本体21がスタンド22に接続されていないときに観察の対象となる試料とで分類されて構成されている。
【0068】
なお、制御基板43は、試料13の判別結果を小型モニタ37またはモニタ12に表示させることができ、観察者が、その判別結果と、実際に観察している試料13とが一致しているか否かを確認することができる。例えば、制御基板43の判別結果と、試料13とが一致していない場合には、観察者が、図示しない入力手段を操作して、試料13の種類を入力して制御基板43に設定することができる。このような設定は、カメラなどにおける、いわゆるシーンモードの設定と同様のものである。
【0069】
次に、図3のフローチャートを参照して、図1の顕微鏡11により試料13を観察する観察処理を説明する。
【0070】
例えば、顕微鏡11の電源がオンされて、顕微鏡11の各部に電力が供給されると、観察処理が開始され、ステップS11において、顕微鏡11では、観察条件が基本設定に設定されて試料13の撮像が行われる。
【0071】
即ち、制御基板43は、観察条件の基本設定に従って、ズーム光学系34を通過する光量を絞り34aにより調節し、LED32を点灯させ、CCD36の感度、ゲイン、およびコントラストを設定して、CCD36により試料13を撮像させる。そして、CCD36は、基本設定で試料13を撮像した結果得られる観察画像の画像データを画像処理部42に供給する。なお、基本設定としては、様々な試料における最適な観察条件の平均値が用いられる。
【0072】
ステップS11の処理後、処理はステップS12に進み、画像処理部42は、CCD36から供給される画像データに対して画像処理を施し、画像処理結果データを制御基板43に供給して、処理はステップS13に進む。
【0073】
ステップS13において、制御基板43は、本体21がスタンド22に、電気的に接続されているか否かを判定する。
【0074】
例えば、本体21がスタンド22に接続されているか否かの検出は、コネクタ45に設けられた、不図示の機械的なスイッチやセンサなどにより行われる。また、例えば、本体21とスタンド22が電気的に接続されている状態のときに、制御基板54から制御基板43に、接続されている旨の信号が供給される機構などを顕微鏡11に設け、その機構によりスタンド22との接続が検出されるようにしてもよい。
【0075】
ステップS13において、制御基板43が、本体21がスタンド22に接続されていると判定した場合、処理はステップS14に進む。ステップS14において、制御基板43は、本体21がスタンド22に接続されているときに観察の対象となる試料が登録されたテーブルを参照し、ステップS12で画像処理部42から供給された画像処理結果データに基づいて、現在観察されている試料13の種類を判別する。そして、制御基板43は、現在観察されている試料13の種類に対応付けられている観察条件に基づいて、CCD36、LED32、および絞り34aの設定を調整する。
【0076】
ステップS14の処理後、処理はステップS15に進み、CCD36は、ステップS14で設定された観察条件の感度、ゲイン、およびコントラストで試料13を撮像する。このとき、LED32および絞り34aも、ステップS14で設定された観察条件となっている。即ち、現在観察されている試料13に最適な観察条件で試料13が撮像される。
【0077】
ステップS15の処理後、処理はステップS16に進み、制御基板43は、ステップS15で撮像されCCD36から供給される観察画像の画像データを、コネクタ45を介してスタンド22の制御基板54に供給する。すると制御基板54は、制御基板43からの観察画像をモニタ12に供給し、表示させる。これにより、検鏡者は、モニタ12に表示される観察画像を見て、試料13を観察することができるようになる。例えば、スタンド22に、小型モニタ37よりも表示部の大きい(解像度の高い)モニタ12を接続すれば、観察画像をより大きく鮮明に表示させて観察することができるようになる。
【0078】
一方、ステップS13において、制御基板43が、本体21がスタンド22に接続されていないと判定した場合、処理はステップS17に進む。ステップS17において、制御基板43は、本体21がスタンド22に接続されていないときに観察の対象となる試料が登録されたテーブルを参照し、ステップS12で画像処理部42から供給された画像処理結果データから判別される試料13の種類に応じた観察条件に基づいて、CCD36、LED32、および絞り34aの設定を調整し、処理はステップS18に進む。
【0079】
ステップS18において、CCD36は、現在観察されている試料13に最適な観察条件で試料13を撮像し、ステップS19において、制御基板43は、ステップS18で撮像されCCD36から供給される画像データを小型モニタ37に表示させる。
【0080】
ステップS16またはS19の処理後、処理はステップS20に進み、制御基板43は、観察画像のキャプチャが指示されたか否かを判定する。
【0081】
例えば、制御基板43は、キャプチャボタン41から供給された信号、または検鏡者によるモニタ12のタッチパネルへの操作に応じて、制御基板54から供給された信号に基づいて、観察画像のキャプチャが指示されたか否かを判定する。
【0082】
ステップS20においてキャプチャが指示されたと判定された場合、ステップS21において、制御基板43は、CCD36から供給された観察画像をキャプチャする。そして、制御基板43は、キャプチャにより得られた静止画像としての観察画像を、メモリ38に供給して記録させ、処理はステップS22に進む。なお、キャプチャされた観察画像がメモリ38に記録されるだけでなく、モニタ12に表示されるようにしてもよい。さらに、例えば、スタンド22側にハードディスク等の大容量のメモリ手段を設け、優先的にこのハードディスクに記憶するようにしてもよい。
【0083】
一方、ステップS20においてキャプチャが指示されなかったと判定された場合、ステップS21の処理をスキップして、処理はステップS22に進む。
【0084】
ステップS22において、制御基板43は、顕微鏡11の電源をオフするか否かを判定する。例えば、検鏡者により図示せぬ電源スイッチが操作され、顕微鏡11の電源のオフが指示されると、電源をオフすると判定される。
【0085】
ステップS22において、電源をオフしないと判定された場合、継続して試料13の観察を行うので、処理はステップS12に戻り、上述した処理が繰り返される。なお、この場合、ステップS12では、上述のステップS15またはS18で撮像された画像に対して画像処理が施される。
【0086】
一方、ステップS22において、電源をオフすると判定された場合、制御基板43および制御基板54は顕微鏡11の電源をオフし、観察処理は終了する。
【0087】
以上のように、顕微鏡11では、画像処理部42による画像処理結果に基づいて、試料13の種類が判別され、試料13の種類に応じた最適な観察条件に自動的に設定されて観察が行われるので、検鏡者が試料13に応じて観察条件を設定(変更)する必要がなく、利便性を向上させることができる。
【0088】
また、制御基板43が参照するテーブルは、本体21がスタンド22に接続されているときに観察の対象となる試料と、本体21がスタンド22に接続されていないときに観察の対象となる試料とで分類されて構成されており、本体21がスタンド22に接続さているか否かに基づいて、それぞれのテーブルを参照するので、試料13の種類を判別する精度を向上させることができる。即ち、例えば、本体21がスタンド22に接続されているときには、試料13の種類として、本体21がスタンド22に接続されていないときに観察の対象となる試料が選択されず、本体21がスタンド22に接続されているときに観察の対象となる試料のみが選択され、これにより、試料13の種類を判別する精度が向上する。
【0089】
さらに、例えば、本体21がスタンド22に取り付けられている場合には、外部から本体21に電力を供給することにより、本体21側のバッテリ44の消耗を抑制することができる。したがって、検鏡者は、本体21をスタンド22から取り外したときに、より長い時間、本体21を使用することができる。
【0090】
また、本体21がスタンド22に取り付けられている場合には、モニタ12に観察画像を表示させるとともに、小型モニタ37に状態情報を表示させることで、観察画像および状態情報を、より見やすく表示することができる。
【0091】
さらに、顕微鏡11では、本体21がスタンド22から取り外された場合には、本体21が単体で顕微鏡として機能するようにし、かつ本体21がスタンド22に機械的に接続されたときには、同時に電気的にも接続されるようにしたので、利便性と試料13の観察環境とを向上させることができる。
【0092】
例えば、本体21がスタンド22から取り外された場合には、本体21を単体で顕微鏡として機能させることで、ケーブル等により本体21にモニタやコントローラを接続する必要がなくなり、利便性が向上する。つまり、検鏡者は、いちいちコントローラやモニタを持ち運ぶことなく、本体21をスタンド22から取り外すだけで、簡単かつ迅速に観察を開始することができる。
【0093】
また、本体21をスタンド22に取り付けて試料13を観察する場合、本体21とスタンド22とが機械的に接続されると、同時に本体21およびスタンド22が電気的にも接続されるので、本体21とスタンド22とをいちいちケーブルにより接続しなくてもよい。しかも、本体21にはモニタ等の機器を接続する必要はないので、面倒なケーブルの引き回しにより作業性が低下してしまうこともない。
【0094】
さらに、顕微鏡11においては、本体21にケーブル等で他の機器を接続する必要がないので、ケーブルの揺れなどにより、スタンド22に固定された本体21が振動してしまうこともなく、試料13をより良好な環境で観察することができる。すなわち、試料13の観察環境を向上させることができる。
【0095】
なお、本実施の形態では、本体21に内蔵されている画像処理部42および制御基板43により、画像処理および試料13の種類の判別が行われているが、例えば、CCD36により撮像された観察画像をスタンド22に供給し、スタンド22側で画像処理および試料13の種類の判別を行うようにしてもよい。
【0096】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0097】
11 顕微鏡, 12 モニタ, 13 試料, 21 本体, 22 スタンド, LED32a乃至32h,32 LED, 33 対物レンズ, 34 ズーム光学系, 34a 絞り, 35 結像光学系, 36 CCD, 37 小型モニタ, 38 メモリ, 39 ズームスイッチ, 40a 調光スイッチ, 40b 切り替えスイッチ, 41 キャプチャボタン, 42 画像処理部, 43 制御基板, 44 バッテリ, 45−1,45−2,45 コネクタ, 48 アーム, 50 ズームスイッチ, 51a 調光スイッチ, 51b 切り替えスイッチ, 53 充電ユニット, 54 制御基板, 81 メスアリ, 82 オスアリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段により撮像された観察画像を画像処理する画像処理手段と、
前記画像処理手段による画像処理結果に基づいて、観察する試料の種類を判別し、判別された前記試料の種類に応じた観察条件を設定する設定手段と
を備えることを特徴とする顕微鏡。
【請求項2】
前記撮像手段と、前記試料からの観察光を結像する光学系とを備える本体と、
前記本体を着脱可能に固定するスタンドと
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項3】
前記設定手段は、前記画像処理手段による画像処理結果と、前記本体が前記スタンドに装着されているか否かの情報とに基づいて、前記試料の種類を判別する
ことを特徴とする請求項2に記載の顕微鏡。
【請求項4】
前記撮像手段が受光する観察光の光量を調節する絞り手段をさらに備え、
前記設定手段は、前記観察条件として、前記絞り手段による絞り値を設定する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の顕微鏡。
【請求項5】
前記試料を照明する複数の照明手段をさらに備え、
前記設定手段は、前記観察条件として、前記照明手段の光量、および、前記照明手段ごとの点灯/消灯の少なくともいずれかを設定する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の顕微鏡。
【請求項6】
前記設定手段は、前記観察条件として、前記撮像手段の感度、ゲイン、およびコントラストの少なくともいずれかを設定する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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