説明

類似症例検索装置および読影知識抽出装置

【課題】類似画像検索に読影者の着目点を反映させる。
【解決手段】読影対象画像から複数の画像特徴量を抽出する画像特徴抽出部160と、対象読影レポートから対象疾病名を抽出するレポート解析部150と、画像特徴量の組合せごとに、読影項目を介した各画像特徴量と対象疾病名との間の関連性を示す二項間関係情報を用い、画像特徴抽出部160が抽出した画像特徴量ごとに、当該画像特徴量と対象疾病名との間の関連性が高いほど大きな値の重みを決定する重み決定部170と、画像特徴抽出部160で抽出された複数の画像特徴量と、症例データベースに登録されている症例データに含まれる医用画像から抽出される複数の画像特徴量とを、重み決定部170で決定された画像特徴量毎の重みで重み付けして比較することにより、読影対象画像に類似する医用画像を含む症例データを症例データベースより検索する類似症例検索部180とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像の読影に参考となる類似症例を検索するための類似症例検索装置および類似症例の検索時に用いられる読影知識を抽出するための読影知識抽出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CT(Computed Tomography)、MRI(Magnetic Resonance Imaging)等の医用画像装置の発達および普及によりデジタル化された高精細医用画像が大容量で取得可能になっている。また、医師により読影済の医用画像は読影レポートと共にPACS(Picture Archiving and Communication Systems)に順次蓄積されつつある。ここで、新たな読影の参考とするため、読影対象の医用画像と類似した過去の医用画像を、蓄積済の過去症例から検索する技術が開発され始めている。
【0003】
類似画像検索には画像間の類似度を決定する画像特徴量の選択が重要であるが、従来の画像検索装置として次のような技術が開示されている。
【0004】
医用画像間の類似度を決定するための画像特徴量は疾病の種類、疾病の進行度、または疾病の重症度、等により異なるべきであるが、従来の医用画像類似検索ではそれらの状況に関わらず同じ画像特徴量を使用していることが課題として存在していた。非特許文献1は、解決手段として、“customized−queries” approach(CQA)という2ステップの検索法を提案している。これは、第一ステップにて、疾病の種類、疾病の進行度または疾病の重症度、等のクラスを最も良好に分類できる画像特徴量を用いて、クエリ画像を分類する。第二ステップにて、分類結果となったクラスに含まれる症例をさらに細分類するために最適化された画像特徴量を用いて、類似画像を検索する。このとき、クラス毎に最適な画像特徴量は教師なし学習(unsupervised learning)により事前に求めておく。また、同文献では、CQAを肺CT画像に対して適用し、従来の1種類の画像特徴量を用いた類似画像検索よりも、検索再現率を向上させている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Jennifer G.Dy et al. “Unsupervised Feature Selection Applied to Content−based Retrieval of Lung Images”, IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence, vol.25, no.3, March 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の構成では、識別された疾病の種類、疾病の進行度または疾病の重症度、等により画像特徴量(即ち、類似基準)が決定され、決定された画像特徴量を用いて類似画像が検索されるだけであり、読影対象の医用画像に対する読影者の着目点を反映した類似画像検索にはなっていない。即ち、読影者が下した診断の裏づけや読影者が迷っている診断への補助にはなりにくいという課題を有している。
【0007】
本発明は前記課題を解決するもので、読影者の着目点を類似画像検索に反映させた類似症例検索装置を提供することを目的とする。
【0008】
また、読影者の着目点を類似画像検索に反映させた類似症例検索において用いられる読影知識を抽出するための読影知識抽出装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明のある局面に係る類似症例検索装置は、医用画像と当該医用画像を読影した結果が記載された文書データである読影レポートとを含む症例データに類似する症例データを症例データベースより検索する類似症例検索装置であって、前記読影レポートは、(a)医用画像の特徴を示す文字列である読影項目および(b)医用画像に基づく読影者の診断結果である疾病名のうち少なくとも疾病名を含み、前記類似症例検索装置は、読影対象の医用画像である読影対象画像から複数の画像特徴量を抽出する画像特徴抽出部と、前記読影対象画像に対する読影レポートである対象読影レポートから疾病名を抽出するレポート解析部と、読影知識データベースに基づいて、画像特徴量毎の重みを決定する重み決定部と、前記画像特徴抽出部で抽出された前記複数の画像特徴量と、症例データベースに登録されている症例データに含まれる医用画像から抽出される複数の画像特徴量とを、前記重み決定部で決定された画像特徴量毎の重みで重み付けして比較することにより、前記読影対象画像に類似する医用画像を含む症例データを前記症例データベースより検索する類似症例検索部とを備え、前記読影知識データベースは、医用画像から抽出される各画像特徴量と各読影項目との間の関連性を予め定めた第1の二項間関係情報と、各読影項目と各疾病名との間の関連性を予め定めた第2の二項間関係情報と、各画像特徴量と各疾病名との間の関連性を予め定めた第3の二項間関係情報と、疾病名ごとに、疾病名と関連性が高い画像特徴量の組合せが複数存在するか否かを示す存否情報とを含み、前記重み決定部は、前記読影知識データベースに含まれる前記存否情報に基づいて前記レポート解析部が抽出した疾病名である対象疾病名と関連性が高い画像特徴量の組合せが複数存在すると判断できる場合に、画像特徴量の組合せごとに、前記知識データベースに含まれる前記第1の二項間関係情報および前記第2の二項間関係情報から算出される、読影項目を介した各画像特徴量と前記対象疾病名との間の関連性を示す第4の二項間関係情報を、前記第3の二項間関係情報に代えて用い、前記画像特徴抽出部が抽出した画像特徴量ごとに、当該画像特徴量と前記対象疾病名との間の関連性が高いほど大きな値の重みを決定する。
【0010】
この構成によると、医用画像または読影対象画像から抽出される各画像特徴量について、対象読影レポートに記載されている対象疾病名との間の関連性が高いものほど大きな重みで重み付けを行った上で、重み付けされた画像特徴量同士を比較することにより類似症例を検索している。これにより、対象読影レポートに記入された読影者の着目点を反映した上で、類似症例検索を行うことができる。このとき、対象疾病名と関連性が高い画像特徴量の組合せが複数存在する場合には、画像特徴量の組合せごとに、読影項目を介した画像特徴量と対象疾病名との間の関連性を示す第4の二項間関係情報を用いて、重み付けを行っている。このため、対象疾病名に対して複数種類の画像パターンが存在する場合であっても、それらを区別して類似症例検索を行うことができる。
【0011】
本発明の他の局面に係る読影知識抽出装置は、医用画像と当該医用画像を読影した結果が記載された文書データである読影レポートとを含む複数の症例データから、読影知識を抽出する読影知識抽出装置であって、前記読影レポートは、(a)医用画像の特徴を示す文字列である読影項目または(b)医用画像に基づく読影者の診断結果である疾病名を含み、前記読影知識抽出装置は、前記各症例データに含まれる医用画像から複数の画像特徴量を抽出する画像特徴抽出部と、前記各症例データに含まれる読影レポートから疾病名および読影項目を抽出するレポート解析部と、前記画像特徴抽出部が抽出した各画像特徴量と前記レポート解析部が抽出した各読影項目との間の関連性を定める第1の二項間関係情報と、前記レポート解析部が抽出した各読影項目と前記レポート解析部が抽出した各疾病名との間の関連性を定める第2の二項間関係情報と、前記画像特徴抽出部が抽出した各画像特徴量と前記レポート解析部が抽出した各疾病名との間の関連性を定める第3の二項間関係情報とを、読影知識として抽出する読影知識抽出部と、前記第1の二項間関係情報と、前記第2の二項間関係情報と、前記第3の二項間関係情報とに基づいて、疾病名ごとに疾病名と関連性が高い画像特徴量の組合せが複数存在するか否かを判定する読影知識判定部と、前記第2の二項間関係情報に基づいて、前記読影知識判定部が関連性が高い画像特徴量の組合せが複数存在すると判定した疾病名ごとに、当該疾病名と画像特徴量の組合せとを関連付ける読影項目の組を、画像特徴量の組合せごとに抽出する読影項目抽出部と、を備え、前記読影知識抽出部は、さらに、前記読影項目抽出部が抽出した読影項目の組ごとに、当該読影項目の組と前記画像特徴抽出部が抽出した各画像特徴量との間の関連性を定める二項間関係情報を、前記読影知識判定部が関連性が高いと判定した疾病名と画像特徴量の組合せに含まれる各画像特徴量との間の関連性を示す読影知識である第4の二項間関係情報として抽出する。
【0012】
この構成によると、1つの疾病名に対して複数種類の画像パターンが存在する場合であっても、第4の二項間関係情報として、画像パターン毎の疾病名と各画像特徴量との間の関連性を抽出することができる。このため、読影者の着目点を類似画像検索に反映させた類似症例検索において用いられる読影知識を抽出することができる。
【0013】
なお、本発明は、このような特徴的な処理部を備える装置として実現することができるだけでなく、装置に含まれる特徴的な処理部が実行する処理をステップとする方法として実現することができる。また、装置に含まれる特徴的な処理部としてコンピュータを機能させるためのプログラムまたは方法に含まれる特徴的なステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現することもできる。そして、そのようなプログラムを、CD−ROM(Compact Disc−Read Only Memory)等のコンピュータ読取可能な非一時的な記録媒体やインターネット等の通信ネットワークを介して流通させることができるのは、言うまでもない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、読影者の着目点を類似画像検索に反映させた類似症例検索装置を提供することができる。また、読影者の着目点を類似画像検索に反映させた類似症例検索において用いられる読影知識を抽出するための読影知識抽出装置を提供するもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態における類似症例検索装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態における読影知識抽出装置の構成を示すブロック図
【図3】本発明の実施の形態における読影知識作成の手順を示すフローチャート
【図4】本発明の実施の形態における画像特徴量抽出の手順を示すフローチャート
【図5】本発明の実施の形態における腹部CT検査の読影レポートの例を示す図
【図6】本発明の実施の形態における読影レポートから抽出された読影項目および疾病名を示す図
【図7】本発明の実施の形態における読影レポートから抽出された読影項目および疾病名、および、読影項目と同時に抽出された位置と時相の情報を示す図
【図8】本発明の実施の形態における読影レポートから抽出された読影項目および疾病名、および、文脈解釈を行って読影項目と同時に抽出された位置と時相の情報を示す図
【図9】本発明の実施の形態における、読影知識抽出のために取得したデータ一式を示す図
【図10】本発明の実施の形態における、読影項目と画像特徴量との間の相関関係(二値)の概念図
【図11】本発明の実施の形態における、読影項目と画像特徴量との間の相関関係(多値)の概念図
【図12】本発明の実施の形態における、疾病名と画像特徴量との間の相関関係(二値)の概念図
【図13】本発明の実施の形態における、読影項目と疾病名との間の相関関係(二値)の概念図
【図14】本発明の実施の形態における、読影知識として抽出した(画像特徴量−読影項目)間の相関関係の格納形式を示す図
【図15】本発明の実施の形態における、読影知識として抽出した(画像特徴量−疾病名)間の相関関係の格納形式を示す図
【図16】本発明の実施の形態における、読影知識として抽出した(読影項目−疾病名)間の相関関係の格納形式を示す図
【図17】疾病名「肝細胞がん」の早期病変領域における画像パターンの違いを示す概念図
【図18】テキスト特徴量(疾病名「肝細胞がん」)の有無による画像特徴量「早期相における腫瘤内部の輝度平均値」の分布の違いを示す概念図
【図19】本発明の実施の形態における、画像パターンが複数存在する場合の三項間の相対関係の概念図
【図20】本発明の実施の形態における、読影知識を追加した場合の(画像特徴量−疾病名)間の相関関係の概念図
【図21】本発明の実施の形態における読影知識の追加手順を示すフローチャート
【図22】本発明の実施の形態における読影知識判定処理(図21のステップS31)の詳細を示すフローチャート
【図23】本発明の実施の形態における、読影知識の追加後の(画像特徴量−疾病名)間の相関関係の格納形式を示す図
【図24】本発明の実施の形態における読影項目抽出処理(図21のステップS32)の詳細を示すフローチャート
【図25】本発明の実施の形態における、疾病名と相関の高い読影項目の組により事前に抽出された(画像特徴量−疾病名)間の相関関係の格納形式を示す図
【図26】本発明の実施の形態における、読影項目の抽出のみ行う場合の読影知識の追加手順を示すフローチャート
【図27】本発明の実施の形態における、疾病名と相関の高い読影項目の組の格納形式を示す図
【図28】本発明の実施の形態における、疾病名と相関の高い読影項目の組により事前に抽出された(画像特徴量−疾病名)間の相関関係の格納形式を示す図
【図29】本発明の実施の形態における類似症例検索の手順を示すフローチャート
【図30】本発明の実施の形態における類似症例検索時の重み付け方法を示す図
【図31】本発明の実施の形態における類似症例検索時の重み付け方法を示す図
【図32】本発明の実施の形態における類似症例検索時の重み付け方法を示す図
【図33】本発明の実施の形態における、(画像特徴量−疾病名)間の相関関係が追加されている場合の重み付け方法を示す図
【図34】本発明の実施の形態における、(画像特徴量−疾病名)間の相関関係が追加されている場合の重み付け方法を示す図
【図35】本発明の実施の形態における、(画像特徴量−疾病名)間の相関関係が追加されている場合の重み付け方法を示す図
【図36】本発明の実施の形態における、(画像特徴量−疾病名)間の相関関係が追加されている場合の重み付け方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、構成要素、構成要素の接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。本発明は、特許請求の範囲だけによって限定される。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、本発明の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。
【0017】
本発明のある実施態様に係る類似症例検索装置は、医用画像と当該医用画像を読影した結果が記載された文書データである読影レポートとを含む症例データに類似する症例データを症例データベースより検索する類似症例検索装置であって、前記読影レポートは、(a)医用画像の特徴を示す文字列である読影項目および(b)医用画像に基づく読影者の診断結果である疾病名のうち少なくとも疾病名を含み、前記類似症例検索装置は、読影対象の医用画像である読影対象画像から複数の画像特徴量を抽出する画像特徴抽出部と、前記読影対象画像に対する読影レポートである対象読影レポートから疾病名を抽出するレポート解析部と、読影知識データベースに基づいて、画像特徴量毎の重みを決定する重み決定部と、前記画像特徴抽出部で抽出された前記複数の画像特徴量と、症例データベースに登録されている症例データに含まれる医用画像から抽出される複数の画像特徴量とを、前記重み決定部で決定された画像特徴量毎の重みで重み付けして比較することにより、前記読影対象画像に類似する医用画像を含む症例データを前記症例データベースより検索する類似症例検索部とを備え、前記読影知識データベースは、医用画像から抽出される各画像特徴量と各読影項目との間の関連性を予め定めた第1の二項間関係情報と、各読影項目と各疾病名との間の関連性を予め定めた第2の二項間関係情報と、各画像特徴量と各疾病名との間の関連性を予め定めた第3の二項間関係情報と、疾病名ごとに、疾病名と関連性が高い画像特徴量の組合せが複数存在するか否かを示す存否情報とを含み、前記重み決定部は、前記読影知識データベースに含まれる前記存否情報に基づいて前記レポート解析部が抽出した疾病名である対象疾病名と関連性が高い画像特徴量の組合せが複数存在すると判断できる場合に、画像特徴量の組合せごとに、前記知識データベースに含まれる前記第1の二項間関係情報および前記第2の二項間関係情報から算出される、読影項目を介した各画像特徴量と前記対象疾病名との間の関連性を示す第4の二項間関係情報を、前記第3の二項間関係情報に代えて用い、前記画像特徴抽出部が抽出した画像特徴量ごとに、当該画像特徴量と前記対象疾病名との間の関連性が高いほど大きな値の重みを決定する。
【0018】
この構成によると、医用画像または読影対象画像から抽出される各画像特徴量について、対象読影レポートに記載されている対象疾病名との間の関連性が高いものほど大きな重みで重み付けを行った上で、重み付けされた画像特徴量同士を比較することにより類似症例を検索している。これにより、対象読影レポートに記入された読影者の着目点を反映した上で、類似症例検索を行うことができる。このとき、対象疾病名と関連性が高い画像特徴量の組合せが複数存在する場合には、画像特徴量の組合せごとに、読影項目を介した画像特徴量と対象疾病名との間の関連性を示す第4の二項間関係情報を用いて、重み付けを行っている。このため、対象疾病名に対して複数種類の画像パターンが存在する場合であっても、それらを区別して類似症例検索を行うことができる。
【0019】
好ましくは、前記重み決定部は、前記読影知識データベースに含まれる前記存否情報に基づいて前記対象疾病名と関連性が高い画像特徴量の組合せが1種類しか存在しないと判断できる場合に前記第3の二項間関係情報を用い、前記画像特徴抽出部が抽出した画像特徴量ごとに、当該画像特徴量と前記対象疾病名との間の関連性が高いほど大きな値の重みを決定する。
【0020】
本発明の他の実施態様に係る読影知識抽出装置は、医用画像と当該医用画像を読影した結果が記載された文書データである読影レポートとを含む複数の症例データから、読影知識を抽出する読影知識抽出装置であって、前記読影レポートは、(a)医用画像の特徴を示す文字列である読影項目または(b)医用画像に基づく読影者の診断結果である疾病名を含み、前記読影知識抽出装置は、前記各症例データに含まれる医用画像から複数の画像特徴量を抽出する画像特徴抽出部と、前記各症例データに含まれる読影レポートから疾病名および読影項目を抽出するレポート解析部と、前記画像特徴抽出部が抽出した各画像特徴量と前記レポート解析部が抽出した各読影項目との間の関連性を定める第1の二項間関係情報と、前記レポート解析部が抽出した各読影項目と前記レポート解析部が抽出した各疾病名との間の関連性を定める第2の二項間関係情報と、前記画像特徴抽出部が抽出した各画像特徴量と前記レポート解析部が抽出した各疾病名との間の関連性を定める第3の二項間関係情報とを、読影知識として抽出する読影知識抽出部と、前記第1の二項間関係情報と、前記第2の二項間関係情報と、前記第3の二項間関係情報とに基づいて、疾病名ごとに疾病名と関連性が高い画像特徴量の組合せが複数存在するか否かを判定する読影知識判定部と、前記第2の二項間関係情報に基づいて、前記読影知識判定部が関連性が高い画像特徴量の組合せが複数存在すると判定した疾病名ごとに、当該疾病名と画像特徴量の組合せとを関連付ける読影項目の組を、画像特徴量の組合せごとに抽出する読影項目抽出部と、を備え、前記読影知識抽出部は、さらに、前記読影項目抽出部が抽出した読影項目の組ごとに、当該読影項目の組と前記画像特徴抽出部が抽出した各画像特徴量との間の関連性を定める二項間関係情報を、前記読影知識判定部が関連性が高いと判定した疾病名と画像特徴量の組合せに含まれる各画像特徴量との間の関連性を示す読影知識である第4の二項間関係情報として抽出する。
【0021】
この構成によると、1つの疾病名に対して複数種類の画像パターンが存在する場合であっても、第4の二項間関係情報として、画像パターン毎の疾病名と各画像特徴量との間の関連性を抽出することができる。このため、読影者の着目点を類似画像検索に反映させた類似症例検索において用いられる読影知識を抽出することができる。
【0022】
好ましくは、前記読影知識判定部は、(a)前記第3の二項間関係情報から選択される第1の画像特徴量と第1の疾病名との間の関連性を定める第1の相関値と、(b)前記第2の二項間関係情報から選択される前記第1の疾病名と第1の読影項目との間の関連性を定める相関値が相関値閾値以上の前記第1の読影項目について、前記第1の二項間関係情報から選択される前記第1の読影項目と前記第1の画像特徴量との間の関連性を定める第2の相関値との間の差分値を計算し、計算した前記差分値が差分閾値よりも大きい場合に、前記第1の疾病名と関連性が高い画像特徴量の組合せが複数存在すると判定する。
【0023】
さらに好ましくは、前記読影項目抽出部は、前記読影知識判定部が関連性が高い画像特徴量の組合せが複数存在すると判定した疾病名ごとに、前記第2の二項間関係情報が示す当該疾病名との間の相関値が第1閾値よりも大きい読影項目から作成される全ての読影項目の組のうち、当該疾病名との間の相関値が第2の閾値以上となる読影項目の組を、当該疾病名と前記画像特徴量の組合せとを関連付ける読影項目の組として抽出する。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態における類似症例検索装置の構成を示すブロック図である。
【0025】
類似症例検索装置は、症例データベース100と、読影知識データベース110と、読影対象画像読込部120と、読影対象画像表示部130と、レポート入出力部140と、レポート解析部150と、画像特徴抽出部160と、重み決定部170と、類似症例検索部180と、類似症例表示部190とを含む。
【0026】
症例データベース100は、CT(Computed Tomography)またはMRI(Magnetic Resonance Imaging)等の医用画像(本明細書中では「画像データ」のことを単に「画像」と言う)と、その医用画像を読影した結果である読影レポートとの対から構成される症例データ(以下、単に「症例」と言う。)を複数格納したデータベースである。読影知識データベース110は、複数の症例を解析することにより得た読影知識を格納したデータベースである。詳細については後述する。症例データベース100および読影知識データベース110は、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置に記憶される。
【0027】
読影対象画像読込部120は、CTやMRI等の医用画像撮影装置で撮影された画像を、医用画像撮影装置または外部接続された記憶装置などから読み込む。
【0028】
読影対象画像表示部130は、医療用の高精細モニタ等で構成され、読影対象画像読込部120で読み込んだ読影対象画像を表示する。
【0029】
レポート入出力部140は、キーボードやマウスなどの入力装置と、そのような入力装置を用いて入力されたレポートを表示することにより、入力者に確認させるための表示装置とで構成されている。読影者は読影対象画像表示部130に表示された読影対象画像を参照しながら、レポート入出力部140を通して読影レポートを入力する。
【0030】
読影対象画像表示部130、レポート入出力部140、および、後述する類似症例表示部190は、読影端末200を構成する。
【0031】
レポート解析部150は、レポート入出力部140で入力された読影レポートを解析し、テキスト特徴量(読影項目および疾病名)を抽出する。
【0032】
画像特徴抽出部160は、読影対象画像読込部120で読み込まれた読影対象画像から複数種類の画像特徴量を抽出する。
【0033】
重み決定部170は、レポート解析部150で抽出されたテキスト特徴量、画像特徴抽出部160で抽出された画像特徴量、および、読影知識データベース110に格納された読影知識から、画像検索で使用する複数の画像特徴量に対する重みをそれぞれ決定する。
【0034】
類似症例検索部180は、画像特徴抽出部160で抽出された画像特徴量、および、重み決定部170で決定された重みを利用して、症例データベース100から読影対象画像と類似した医用画像を含む症例を検索する。
【0035】
類似症例表示部190は、類似症例検索部180で検索された類似症例を表示する。類似症例表示部190は、読影対象画像表示部130を構成する高精細モニタと同じ機種で別途構成されていてもよく、読影対象画像表示部130を構成する高精細モニタに読影対象画像と類似症例を同時に表示してもよい。なお、類似症例表示部190と読影対象画像表示部130との機種は異なっていても良い。
【0036】
図2は、本発明の実施の形態における読影知識抽出装置の構成を示すブロック図である。
【0037】
読影知識抽出装置は、レポート解析部250と、画像特徴抽出部260と、読影知識抽出部210と、読影知識判定部220と、読影項目抽出部230と、症例データベース100と、読影知識データベース110とを備える。
【0038】
症例データベース100および読影知識データベース110は、図1に示したものと同様の構成を有する。
【0039】
レポート解析部250は、症例データベース100から読み込まれた読影レポートを解析し、テキスト特徴量を抽出する。レポート解析部250は、読影レポートを読み込む先が異なる以外はレポート解析部150と同じである。
【0040】
画像特徴抽出部260は、症例データベース100から読み込まれた読影対象画像から複数種類の画像特徴量を抽出する。画像特徴抽出部260は、読影対象画像を読み込む先が異なる以外は、画像特徴抽出部160と同じである。
【0041】
読影知識抽出部210、読影知識判定部220、読影項目抽出部230は読影知識の抽出および読影知識の追加のための処理部である。
【0042】
読影知識抽出部210は、症例データベース100に格納された複数の症例を解析することにより得られる読影知識を、読影知識データベース110に格納する。
【0043】
読影知識判定部220は、読影知識データベース110に格納された読影知識を読み込み、読影知識の中で、読影知識を追加する対象(疾病名)を決定する。
【0044】
読影項目抽出部230は、読影知識を追加する対象(疾病名)について相関関係を解析し、読影知識の追加に使用する読影項目の組を抽出する。読影知識追加時には、読影知識抽出部210は、読影項目抽出部230で抽出された読影項目の組を用いて複数の症例を解析することにより、新たな読影知識を獲得し、読影知識データベース110に格納する。これら読影知識の抽出と追加については詳細については後述する。
【0045】
以後、本発明の各部の動作について詳細に説明する。
【0046】
<読影知識データベースの事前作成>
類似症例検索を行うに当たり、事前に読影知識を得て、読影知識データベース110に格納しておく。読影知識は、医用画像とその医用画像を読影した結果である読影レポートとの対から構成される“症例”を複数集めたものから得られる。症例として、類似症例検索時にその中から類似症例を検索するための症例データベース100に格納されたものを用いてもよいし、他のデータベースに格納されたものを用いてもよい。図2には、症例データベース100に格納された症例から読影知識を抽出する場合の構成について示す。このとき、読影知識抽出部210は、レポート解析部250で各症例から抽出されたテキスト特徴量と、画像特徴抽出部260で各症例から抽出された画像特徴量とを解析し、読影知識を抽出する。ここで、必要な症例数は、種種のデータマイニングアルゴリズムを用いて何らかの法則性および知識を得るために十分となる数である。通常は数百〜数万個のデータが用いられる。本実施の形態では、読影知識として、(1)画像特徴量、(2)読影項目、(3)疾病名の三項のうちの各二項間の相関関係を用いる。
【0047】
(1)画像特徴量
「画像特徴量」としては、医用画像における臓器もしくは病変部分の形状に関するもの、または輝度分布に関するものなどがある。画像特徴量として、例えば、非特許文献:「根本,清水,萩原,小畑,縄野,“多数の特徴量からの特徴選択による乳房X線像上の腫瘤影判別精度の改善と高速な特徴選択法の提案”,電子情報通信学会論文誌D−II,Vol.J88−D−II,No.2,pp.416−426,2005年2月」に490種類の特徴量を用いることが記載されている。本実施の形態においても、医用画像の撮像に使用した医用画像撮影装置(モダリティ)または読影の対象臓器ごとに予め定めた数十〜数百種の画像特徴量を用いる。
【0048】
(2)読影項目
「読影項目」とは、「読影医が、読影対象の画像の特徴を言語化した文字列」と定義する。使用する医用画像撮影装置または対象臓器等により、読影項目として使用される用語はほぼ限定される。例えば、分葉状、棘状、不整形、境界明瞭、輪郭不明瞭、低濃度、高濃度、低吸収、高吸収、スリガラス状、石灰化、モザイク状、早期濃染、低エコー、高エコー、毛羽立ち、等がある。
【0049】
(3)疾病名
「疾病名」とは、医師(読影者)が医用画像やその他の検査を基に診断した疾病名のことである。読影時の診断疾病名とその他の検査を経て確定診断した疾病名とは異なることがあるが、読影知識データベースを作成する際は、確定診断の結果を用いる。
【0050】
以下、図3のフローチャートを用いて読影知識作成の手順を説明する。本実施の形態で対象とする、つまり使用する医用画像撮影装置はマルチスライスCTとし、対象臓器および疾病は、それぞれ肝臓および肝腫瘤とする。
【0051】
ステップS10では、読影知識を得るための症例が格納されたデータベースから症例を1つ取得する。ここで読影知識を得るための症例の総数をC個とする。1つの症例は、医用画像とその医用画像を読影した結果である読影レポートとの対で構成されている。医用画像がマルチスライスCT装置により取得された場合、1つの症例は多数枚のスライス画像を含むことになる。また、通常、マルチスライスCT画像を医師が読影する場合、重要なスライス画像1〜数枚を、キー画像として読影レポートに添付する。以後、多数枚のスライス画像集合、あるいは、数枚のキー画像を単に「医用画像」、「画像」と呼ぶこともある。
【0052】
ステップS11では、医用画像から画像特徴量を抽出する。ステップS11の処理を、図4のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0053】
ステップS111では、対象臓器の領域を抽出する。本実施の形態では肝臓領域を抽出する。肝臓領域抽出法として、例えば、非特許文献:「田中,清水,小畑,“異常部位の濃度パターンを考慮した肝臓領域抽出手法の改良<第二報>”,電子情報通信学会技術研究報告,医用画像,104(580),pp.7−12,2005年1月」等の手法を用いることができる。
【0054】
ステップS112では、ステップS111で抽出された臓器領域から病変領域を抽出する。本実施の形態では肝臓領域から腫瘤領域を抽出する。肝腫瘤領域抽出法として、例えば、非特許文献:「中川、清水,一杉,小畑,“3次元腹部CT像からの肝腫瘤影の自動抽出手法の開発<第二報>”,医用画像,102(575),pp.89−94,2003年1月」等の手法を用いることができる。ここで、i番目の症例における画像から抽出した腫瘤の数をMとすると、腫瘤は(症例番号,腫瘤番号)の組(i,j)で特定できる。ここで、1≦i≦C,1≦j≦Mである。また本実施の形態では病変として肝腫瘤を対象としているため、“腫瘤番号”と呼んだが、本発明で共通の表現を用いて“病変番号”と呼ぶこともできる。
【0055】
ステップS113では、ステップS112で抽出された病変領域のうち、1つの領域を選択する。
【0056】
ステップS114では、ステップS113で選択された病変領域から画像特徴量を抽出する。本実施の形態では、画像特徴量として、非特許文献:「根本,清水,萩原,小畑,縄野,“多数の特徴量からの特徴選択による乳房X線像上の腫瘤影判別精度の改善と高速な特徴選択法の提案”,電子情報通信学会論文誌D−II,Vol.J88−D−II,No.2,pp.416−426,2005年2月」に記載された490種類の特徴量のうち、肝腫瘤にも適用可能な特徴量をいくつか選択して用いる。この特徴量数をN個とする。本ステップで抽出された特徴量は、(症例番号,この症例(医用画像)から抽出された腫瘤番号,特徴量番号)の組(i,j,k)で特定できる。ここで、1≦i≦C,1≦j≦M,1≦k≦Nである。
【0057】
ステップS115では、ステップS112で抽出された病変領域のうち未選択の病変があるかどうかをチェックし、未選択の病変がある場合は、ステップS113に戻り未選択の病変領域を選択した後、ステップS114を再実行する。未選択の病変がない場合、すなわち、ステップS112で抽出された全ての病変領域に対し、ステップS114の特徴量選択を行った場合は図4のフローチャートの処理を終了し、図3のフローチャートに戻る。
【0058】
図3のステップS12では、読影レポートの解析処理を行う。具体的には読影レポートから読影項目および疾病名を抽出する。本実施の形態では読影項目が格納された読影項目単語辞書、および疾病名が格納された疾病名単語辞書を用いた、形態素解析および構文解析を行う。これらの処理により、各単語辞書に格納された単語と一致する単語を抽出する。形態素解析技術としては、例えば、MeCab(http://mecab.sourceforge.net)やChaSen(http://chasen−legacy.sourceforge.jp)等が、構文解析技術としては、KNP(http://nlp.kuee.kyoto−u.ac.jp/nl−resource/knp.html)、CaboCha(http://chasen.org/〜taku/software/cabocha/)等が存在する。読影レポートは医師により読影レポート独特の表現で記述されることが多いので、読影レポートに特化した形態素解析技術、構文解析技術、各単語辞書を開発することが望ましい。
【0059】
図5は腹部CT検査の読影レポートの例であり、図6は図5の読影レポートから抽出された読影項目および疾病名を示す。読影項目は通常複数個、疾病名は1個抽出される。i番目の症例における読影レポートから抽出した読影項目の数をNとすると、読影項目は(症例番号,読影項目番号)の組(i,j)で特定できる。ここで、1≦i≦C,1≦j≦Nである。
【0060】
また、図6では、読影項目および疾病名の単語のみを抽出しているが、読影レポートにおける病変の位置を表す文字列、時相を表す文字列を同時に抽出してもよい。ここで、時相について補足する。肝臓の病変の鑑別には、造影剤を急速静注して経時的に撮像する造影検査が有用とされている。肝臓の造影検査では一般に、肝動脈に造影剤が流入し多血性の腫瘍が濃染する動脈相、腸管や脾臓に分布した造影剤が門脈から肝臓に流入し肝実質が最も造影される門脈相、肝の血管内外の造影剤が平衡に達する平衡相、肝の間質に造影剤が貯留する晩期相などにおいて、肝臓が撮像される。読影レポートには病変の臓器における位置や、造影検査であれば着目した時相の情報が記述されていることが多い。このため、読影項目だけでなく位置や時相の情報も合わせて抽出することで、後で説明する読影知識の抽出に有効となる。図7に、読影項目と同時に位置と時相の情報を抽出した例を示す。例えば、図5の読影レポートを解析し、「肝S3区域に早期濃染を認め」という文節から「早期濃染」の位置属性として「肝S3区域」が抽出される。同様に、「後期相でwashoutされており」という文節から「washout」の時相属性として「後期相」が抽出される。
【0061】
図5の読影レポートを、単純に解釈すると、図7のように「早期濃染」に関する時相、washoutに関する位置の部分が空白になる。これに対し、読影項目「早期濃染」は早期相に対応した単語であるという事前知識を利用したり、「早期濃染」の状態を示す腫瘤と「後期相でwashout」される腫瘤が同一の腫瘤を指すという高度な文脈解釈を行ったりすることができれば、抽出される位置と時相の情報は図8のようになる。
【0062】
ステップS13では、読影知識を得るための症例が格納されたデータベースにおいて未取得の症例があるかどうかをチェックし、未取得の症例がある場合は、ステップS10に戻り未取得の症例を取得した後、ステップS11およびS12を実行する。未取得の症例がない場合、すなわち、全ての症例に対し、ステップS11の画像特徴抽出およびステップS12のレポート解析を実施済の場合は、ステップS14に進む。
【0063】
ステップS11とステップS12の結果は相互に依存しないため、実行順は逆でも構わない。
【0064】
ステップS14に到達した時点で、図9で表されるデータ一式が取得できたことになる。つまり、症例ごとに画像特徴量と読影項目と疾病名とが取得される。症例番号1の症例については、医用画像中にM1個の病変が含まれており、各病変から抽出される画像特徴量の個数はNF個である。また、読影レポート中の読影項目の数はN1個である。例えば、病変番号(1,1)で示される1つ目の病変のうち、1つ目の画像特徴量の値は0.851である。また、読影項目番号(1,1)で示される1つ目の読影項目の値は「早期濃染」である。図9の例では、各画像特徴量は0以上1以下の数値であり、読影項目および疾病名は文字列である。画像特徴量として負の値または1より大きな値をとるものを用いても良い。また、読影項目および疾病名として、予め定めた単語IDの形式にてデータを格納してもよい。
【0065】
ステップS14では、ステップS11で得られた画像特徴量、ステップS12で得られた読影項目および疾病名から、読影知識を抽出する。本実施の形態では、画像特徴量、読影項目、疾病名という三項のうちの二項の相関関係を、読影知識とする。
【0066】
(1)(画像特徴量−読影項目)間の相関関係
一対の(画像特徴量−読影項目)間の相関関係の求め方について説明する。相関関係の表現形態は複数あるが、ここでは相関比を用いる。相関比は、質的データと量的データとの間の相関関係を表す指標であり、式1で表される。
【0067】
【数1】

【0068】
読影レポート中に、ある読影項目を含む場合および含まない場合の2カテゴリを考え、これを質的データとする。医用画像から抽出した、ある画像特徴量の値そのものを量的データとする。例えば、読影知識を抽出するための症例データベースに含まれる全症例に対し、読影レポートを、ある読影項目を含むものまたは含まないものに区分する。ここでは、読影項目「早期濃染」と画像特徴量「早期相における腫瘤内部の輝度平均値」との相関比を求める方法について説明する。式1においては、カテゴリi=1を「早期濃染」を含むもの、カテゴリi=2を「早期濃染」を含まないものとする。読影レポートに「早期濃染」を含む症例から抽出した腫瘤画像の「早期相における腫瘤内部の輝度平均値」であるj番目の観測値をx1jとする。また、読影レポートに「早期濃染」を含まない症例から抽出した腫瘤画像の「早期相における腫瘤内部の輝度平均値」であるj番目の観測値をx2jとする。「早期濃染」とは造影早期相にてCT値が上昇することを表すため、この場合、相関比が大きく(1に近く)なることが予想される。また、早期濃染は腫瘤の種類に依存し、腫瘤の大きさには依存しないため、読影項目「早期濃染」と画像特徴量「腫瘤面積」との相関比は小さく(0に近く)なることが予想される。このようにして、全ての読影項目と全ての画像特徴量との間の相関比を計算する。
【0069】
図10に、読影項目と画像特徴量との間の相関関係(ここでは、相関比)の概念図を示す。左側には複数の読影項目、右側には複数の画像特徴量の名称が列挙されている。そして、相関比が閾値以上の読影項目と画像特徴量の間が実線で結ばれている。相関比は0以上1以下の値をとるため、閾値として0.3〜0.7程度の値を用いることができる。計算した相関比を最終的に閾値で二値化すると、図10のような情報が求められることになる。その一例について補足する。肝腫瘤の造影CT検査においては、殆どの腫瘤は造影剤使用前のCT画像(単純、単純CT、単純相などと呼ぶ)で低濃度に描出され、多くの場合、読影レポートに「低濃度」、「LDA(Low Density Area)あり」などと記述される。そのため、「低輝度」や「LDA」といった読影項目と、造影剤使用前のCT画像における腫瘤内部の輝度平均(図10では「単純相 輝度平均」と略記載)との相関が大きくなる。
【0070】
また、図11に、読影項目と画像特徴量との間の相関関係(例えば、相関比)の別の概念図を示す。この図では、相関比を多値表現しており、読影項目と画像特徴量の間の実線の太さが相関比の大きさに相当している。例えば、造影早期相にてCT値が上昇する「早期濃染」と、早期動脈相(早期相、動脈相とも略される)における腫瘤内部の輝度平均(図11では「動脈相 輝度平均」と略記載)との相関が大きくなっている。
【0071】
相関比の値に着目することで、ある読影項目と相関の高い画像特徴量を特定することができる。実際には1つの症例には、複数の画像や複数の病変(腫瘤)を含む場合が多く、その場合は読影レポートには複数の病変に関する記載が含まれることになる。例えば、造影CT検査では、造影剤使用前や使用後の複数時刻におけるタイミングでCT撮影を行う。そのため、スライス画像の集合が複数得られ、スライス画像の1つの集合には複数の病変(腫瘤)が含まれ、1つの病変からは複数の画像特徴量が抽出される。そのため、(スライス画像集合数)×(1人の患者から検出された病変数)×(画像特徴量の種類数)の個数だけ画像特徴量が得られ、これら複数の画像特徴量と、1つの読影レポートから抽出された複数の読影項目や疾病名との相関関係を求める必要がある。もちろん大量の症例を用いることにより、対応が正しく得られる可能性があるが、図8のように病変位置と時相を用いる等して、読影レポートの記載と、対応する画像特徴量とをある程度事前に対応づけることができれば、より正確に相関関係を求めることができる。
【0072】
先の説明では、質的データが、ある読影項目を含むものおよび含まないものの2カテゴリである場合について説明したが、ある読影項目(例えば、「境界明瞭」)と、その対義語となる読影項目(例えば、「境界不明瞭」)との2カテゴリであってもよい。また、読影項目が「低濃度」、「中濃度」、「高濃度」などの序数尺度の場合は、それらの各々をカテゴリとして(この例では3カテゴリ)、相関比を計算してもよい。
【0073】
また、「低濃度」、「低輝度」、「低吸収」などの同義語については、予め同義語辞書を作成しておき、それらを同一の読影項目として扱う。
【0074】
(2)(画像特徴量−疾病名)間の相関関係
一対の(画像特徴量−疾病名)間の相関関係については、(画像特徴量−読影項目)間の場合と同じく相関比を用いることができる。図12に、疾病名と画像特徴量との間の相関関係(例えば、相関比)の概念図を示す。この図では図10と同じく相関関係を二値表現しているが、もちろん図11のような多値表現を行うことも可能である。
【0075】
(3)(読影項目−疾病名)間の相関関係
一対の(読影項目−疾病名)間の相関関係の求め方について説明する。相関関係の表現形態は複数あるが、ここでは支持度を用いる。支持度は、質的データ間の相関ルールを表す指標であり、式2で表される。
【0076】
【数2】

【0077】
この支持度は、全症例において読影項目Xと疾病名Yとが同時に出現する確率(共起確率)を意味する。支持度を用いることで、関連性(相関性)の強い読影項目と疾病名との組合せを特定することができる。
【0078】
なお、支持度の代わりに、式3で示される確信度や、式4で示されるリフト値を用いても良い。
【0079】
【数3】

【0080】
【数4】

【0081】
確信度とは、条件部X(読影項目X)のアイテムの出現を条件としたときの結論部Y(疾病名Y)のアイテムが出現する確率である。リフト値とは、X(読影項目X)の出現を条件としないときのY(疾病名Y)の出現確率に対して、X(読影項目X)の出現を条件としたときのY(疾病名Y)の出現確率がどの程度上昇したかを示す指標である。その他、conviction,φ係数を用いても良い。conviction,φ係数については相関ルール分析に関する文献(例えば、非特許文献:「データマイニングとその応用」、加藤/羽室/矢田 共著、朝倉書店)に記載されている。
【0082】
図13に、読影項目と疾病名との間の相関関係(例えば、支持度)の概念図を示す。この図では図10と同じく相関関係を二値表現しているが、もちろん図11のような多値表現を行うことも可能である。
【0083】
以上の方法にて、ステップS14の処理を行うと、図14、図15、図16のような、(画像特徴量−読影項目)間の相関関係、(画像特徴量−疾病名)間の相関関係、(読影項目−疾病名)間の相関関係が、それぞれ得られる。相関比は0以上1以下の値をとる。支持度は0以上の値をとる。また、得られた相関関係は、図14、図15、図16の形式にて読影知識データベース110に格納される。
【0084】
<読影知識データベースの事前追加>
次に、本発明の中心となる読影知識の追加方法について詳細を説明する。図2の読影知識作成時と同じく、本実施の形態で対象とする医用画像撮影装置はマルチスライスCTとし、対象臓器および疾病は、それぞれ肝臓および肝腫瘤とする。
【0085】
前述のように、本実施の形態では、画像特徴量、読影項目および疾病名から、読影知識として相関関係を抽出する。このとき、ひとつのテキストに対して、複数種類の画像パターンが存在する場合がある。このため、テキスト特徴量と画像特徴量との間の相関関係が正しく求まらず、読影者の着目点を類似画像検索に反映させられない状況が想定される。この課題の例として、肝細胞がんの画像パターンについて、図17、図18を用いて、詳細に説明する。
【0086】
肝細胞がんの病変領域の画像には、図17(a)に示すような腫瘤内の血流が多い多血性肝細胞がんのように造影動脈相にて強く造影される(CT値が上昇する)画像パターン(画像パターン1)と、図17(b)に示すような腫瘤内の血流が少ない乏血性肝細胞がんのように造影動脈相にて強く造影されない(CT値が上昇しない)画像パターン(画像パターン2)とが存在する。図18は、テキスト特徴量(疾病名「肝細胞がん」)の有無による画像特徴量「早期相における腫瘤内部の輝度平均値」の分布の違いを示す概念図である。実線がテキスト特徴量(疾病名「肝細胞がん」)がある場合の画像特徴量「早期相における腫瘤内部の輝度平均値」の分布を示し、破線がテキスト特徴量(疾病名「肝細胞がん」)がない場合の画像特徴量「早期相における腫瘤内部の輝度平均値」の分布を示す。ここで、疾病名「肝細胞がん」の画像パターンが画像パターン1のみであれば、読影レポートに「肝細胞がん」と記載されている症例においては、画像特徴慮野分布は、画像特徴量「早期相における腫瘤内部の輝度平均値」が高い、図18(a)のような偏りのある分布になる。しかしながら、実際には読影レポートに「肝細胞がん」と記載されている症例の画像パターンには、画像パターン1および2の両方が存在する。このため、読影レポートに「肝細胞がん」と記載されている症例には画像パターン2のような画像特徴量「早期相における腫瘤内部の輝度平均値」が低い症例も含まれる。このため、画像特徴量の分布は、図18(b)のような偏りの少ない分布になる。このように、あるテキスト特徴量に対して複数の画像パターンが存在すると、複数の分布が混合された状態で相関関係(例えば相関比)が抽出される。そのため、テキスト特徴量と画像特徴量の間で相関関係の値が低下し、本当は重視したい画像特徴量が検索時に重視されなくなる。この結果、読影者の着目点を類似画像検索に反映させられない問題が発生する。
【0087】
このような課題に対して、本願発明者らは、(画像特徴量−読影項目)間の相関関係と、疾病名、読影項目および画像特徴量の三項間の相対関係に着目した。ここで、医用画像と読影レポートの組から読影知識である(画像特徴量−読影項目)間の相関関係、(画像特徴量−疾病名)間の相関関係、(読影項目−疾病名)間の相関関係はそれぞれ計算済みであるとする。
【0088】
本願発明者らは、医用画像と医師が記入する読影レポートの関係を分析した結果、読影項目は画像内容を直接反映したものが多いことに着目した。例えば、医師によって医用画像に対する記入内容に違いはあるものの、図17(a)に対しては、読影レポートにはCT値が高いことを示す「早期濃染」や模様がないことを示す「均一」と記入され、CT値が低いことを示す「LDA(Low Density Area)」や模様があることを示す「不均一」とは記入されない。一方、図17(b)に対しては、読影レポートに「LDA」、「不均一」と記入され、「早期濃染」とは記入されない。
【0089】
また、本願発明者らは、(画像特徴量−読影項目)間の相関関係、(画像特徴量−疾病名)間の相関関係、(読影項目−疾病名)間の相関関係を分析した。この結果、疾病名に対応する画像パターンが1つのみである場合には、全ての二項間関係の値が大きくなる三項が存在し、一方、疾病名に対して複数種類の画像パターンが存在する場合には、図19に示すように、対応する全ての二項間関係(三項間関係)のうち、(画像特徴量−疾病名)間の相関関係のみ低くなる点に着目した。この原因としては、以下が考えられる。つまり、ひとつの疾病名に対して病状がひとつだけ(画像パターンがひとつ)の場合には、画像特徴量の分布が、図18(a)のように偏りのある分布になるため(画像特徴量−疾病名)間の相関が高くなる。これに対して、ひとつの疾病名に対して複数の病状(画像パターン)が存在する場合には、画像特徴量の分布が、図18(b)のように偏りの少ない分布になるため(画像特徴量−疾病名)間の相関が低くなる。一方で、読影項目は画像内容を直接反映したものが多いため(画像特徴量−読影項目)間の相関が高く、同様に疾病名は読影項目の総合値であるため(読影項目−疾病名)間の相関も高くなるためであると考えられる。
【0090】
このように、ひとつの疾病名に対して複数の病状(画像パターン)が存在する場合の三項間関係においては、(画像特徴量−疾病名)間の相関関係よりも、(画像特徴量−読影項目)間の相関関係と(読影項目−疾病名)間の相関関係の方が、対応関係が明確であり、その相関関係の値も信頼性が高いと考えられる。
【0091】
これらのことから、疾病名に対して複数の画像パターンが存在する場合に(画像特徴量−疾病名)間の相関関係の値が低下し、本当は重視したい画像特徴量が検索時に重視されなくなる課題に対して、(画像特徴量−読影項目)間の相関関係と(読影項目−疾病名)間の相関関係を使用することで、読影項目を介して(画像特徴量−疾病名)間の相関関係を抽出できることを見出した。
【0092】
図20を用いて説明すると、例えば、複数の画像パターンが存在する疾病名「肝細胞がん」に対して(画像特徴量−疾病名)間の相関関係を抽出したい場合に、(読影項目−疾病名)間の相関関係が高い「早期濃染」、「LDA」、「均一」、「不均一」を介して、(画像特徴量−読影項目)間の相関関係を抽出することで「肝細胞がん」と相関の高い画像特徴量を正しく抽出することができると考えられる。このうち、実線で示した相関関係が、ある1つの画像パターンの相関関係を示し、破線で示した相関関係が、他の1つの画像パターンの相関関係を示している。
【0093】
以下、この着想に基づき構成した読影知識追加手順の詳細について、図2の読影知識抽出装置を参照して説明する。本実施の形態では、事前に獲得した読影知識の値(各二項間関係の相関関係)を参照し、後述の条件を満たさない場合には、読影知識データベース110に読影知識を追加登録する。
【0094】
図2において、読影知識抽出部210、読影知識判定部220、読影項目抽出部230は読影知識の抽出および読影知識の追加のための処理部である。
【0095】
読影知識抽出部210は、症例データベース100に格納された複数の症例を解析し、解析の結果得られた読影知識を読影知識データベース110に格納する。
【0096】
読影知識判定部220は、読影知識データベース110に格納された読影知識を読み込み、読影知識の中で、新たな読影知識を追加する対象(疾病名)を決定する。
【0097】
読影項目抽出部230は、読影知識を追加する対象(疾病名)について相関関係を解析し、読影知識の追加に使用する読影項目の組を抽出する。
【0098】
読影知識追加時には、読影知識抽出部210は、読影項目抽出部230で抽出された読影項目の組を用いて複数の症例を解析することにより、新たな読影知識を獲得し、読影知識データベース110に格納する。
【0099】
以下、図21のフローチャートを用いて読影知識追加の手順を説明する。
【0100】
ステップS30において、読影知識判定部220は、読影知識データベース110に格納された読影知識を1つ取得する。
【0101】
例えば、読影知識が(画像特徴量−疾病名)間の相関関係(図15参照)である場合、ステップS30で取得される読影知識は、図15の表の1行分(相関関係の数値(以下、相関値という。)NIF個)である。
【0102】
ステップS31において、読影知識判定部220は、ステップS30で取得した読影知識に加えて、読影知識データベース110に新たな読影知識を追加するか否かを判定する。このとき、読影知識判定部220は、三項間の相対関係において、(画像特徴量−読影項目)間の相関と、(読影項目−疾病名)間の相関が大きく、(画像特徴量−疾病名)間の相関が小さくなる組合せが存在するか否かを判定することで、新たな読影知識を追加するか否かを決定する。
【0103】
ステップS31の処理を、図22のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0104】
ステップS310において、読影知識判定部220は、ステップS30で取得した読影知識が(画像特徴量−疾病名)間の相関関係か否かを判定する。ステップS30で取得した読影知識が(画像特徴量−疾病名)間の相関関係である場合には、ステップS311へ進み、そうでない場合には、ステップS316に進む。
【0105】
ステップS311において、読影知識判定部220は、ステップS30で取得した読影知識の疾病名に対応する(読影項目−疾病名)間の相関関係を読影知識データベース110から読み込む。つまり、読影知識判定部220は、ステップS30で取得した読影知識の疾病名と同じ疾病名についての(読影項目−疾病名)間の相関関係を読影知識データベース110から読み込む。
【0106】
ステップS312において、読影知識判定部220は、ステップS311で取得した(読影項目−疾病名)間の相関関係において、相関値が相関値閾値以上の読影項目を抽出する。
【0107】
ステップS313において、読影知識判定部220は、ステップS312で抽出した(読影項目−疾病名)間の相関値が相関値閾値以上の読影項目に関して、(読影項目−画像特徴量)間の相関関係を読み込む。つまり、読影知識判定部220は、ステップS312で抽出した(読影項目−疾病名)間の相関値が相関値閾値以上の読影項目と同じ読影項目についての(読影項目−画像特徴量)間の相関関係を読み込む。
【0108】
ステップS314において、読影知識判定部220は、(a)ステップS30で取得した(画像特徴量−疾病名)間の相関関係が示す相関値と、(b)S311で読み込んだ(読影項目−疾病名)間の相関関係およびS313で読み込んだ(読影項目−画像特徴量)間の相関関係を介した(画像特徴量−疾病名)間の相関関係が示す相関値の差分値を計算する。
【0109】
ここで、(読影項目−疾病名)間の相関値をwx,j、(読影項目−画像特徴量)間の相関値をwa,i、(画像特徴量−疾病名)間の相関値をwと表す。また、iは画像特徴量の種類を表す添字、jはステップS312抽出された読影項目の種類を表す添字、NはステップS312抽出された読影項目の個数である。これらの相関関係を用いて差分値dを式5のように計算する。
【0110】
【数5】

【0111】
例えば、疾病名が「肝細胞がん」の場合について考えると、ステップS311で(画像特徴量−疾病名)間の相関関係を取得し、取得した相関関係が示す相関値をwとする。ここで、ステップS312で抽出された読影項目が「早期濃染」、「LDA」、「不均一」であった場合には、読影知識判定部220は、読影知識データベース110に図16の形式で格納された(読影項目−疾病名)間の相関関係テーブルを参照し、(早期濃染−肝細胞がん)間の相関値、(LDA−肝細胞がん)間の相関値、(不均一−肝細胞がん)間の相関値を取得し、wx,jとする。一方で、読影知識判定部220は、(早期濃染−画像特徴量)間の相関値(例えば、(早期濃染−輝度平均値)間の相関値など)を取得し、wa,iとする。このような三項間関係を用いて、式5により差分値dを計算すればよい。
【0112】
ステップS315において、読影知識判定部220は、ステップS314で計算した差分値dが差分閾値より大きいか否かを判定する。
【0113】
ステップS314で計算した差分値dが差分閾値より大きい場合には、ステップS318へ進み、差分値dが差分閾値以下場合には、ステップS317に進む。
【0114】
ステップS316において、読影知識判定部220は、ステップS310での判定結果に従い、読影知識を追加しないと決定する。このとき、ステップS316において疾病名以外の読影知識が読み込まれているため、読影知識の追加に関する情報(以下では「追加情報」と記載)に0を付加し、ステップS31の分岐においては「No」に進む。
【0115】
ステップS317において、読影知識判定部220は、ステップS315での判定結果に従い、読影知識を追加しないと決定する。つまり、ステップS315での判定結果は、ステップS30で取得した(画像特徴量−疾病名)間の相関関係と、(読影項目−疾病名)間の相関関係および(読影項目−画像特徴量)間の相関関係を介した(画像特徴量−疾病名)間の相関関係との間に相違が見られないことを示している。このため、着目している疾病名に対する画像パターンは1種類しか存在しないと判断し、読影知識を追加しないと決定する。このとき、読影知識の追加情報に0を付加し、ステップS31の分岐においては「No」に進む。本実施の形態において、読影知識を追加する場合には、追加情報に1、追加しない場合には追加情報に0を付与する。
【0116】
ステップS318において、読影知識判定部220は、ステップS315での判定結果に従い、読影知識を追加すると決定する。つまり、ステップS315での判定結果は、ステップS30で取得した(画像特徴量−疾病名)間の相関関係と、(読影項目−疾病名)間の相関関係および(読影項目−画像特徴量)間の相関関係を介した(画像特徴量−疾病名)間の相関関係とが異なっていることを示している。このため、着目している疾病名に対する画像パターンが複数種類存在すると判断し、読影知識を追加すると決定する。このとき、読影知識の追加情報に1を付加し、ステップS31の分岐においては「Yes」に進む。
【0117】
ステップS317、S318において付与した追加情報は、図15の(画像特徴量−疾病名)間の相関関係の各行に追加され、図23に示すような形式で読影知識データベース110に格納される。例えば、読影レポートに疾病名1が記入されている場合には、類似症例検索時には、図23の追加情報(ここでは、「1」:相関関係の追加あり)が読み込まれ、(読影項目−疾病名)間の相関関係が追加されたと判定され、後述する追加された相関関係のテーブル(読影知識)が参照される。
【0118】
図21のステップS32において、読影項目抽出部230は、ステップS31で読影知識を追加すると判定された対象の疾病名に対して相関関係の高い読影項目の組を抽出する。
【0119】
ステップS32の処理を、図24のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0120】
ステップS320において、読影項目抽出部230は、ステップS30で取得した読影知識の疾病名に対応する(読影項目−疾病名)間の相関関係を1つ読影知識データベース110から読み込む。例えば上記疾病名が疾病名1の場合、図16において、疾病名1に関する読影項目の相関関係(ここでは、疾病名1の列の全相関関係)を読影知識データベース110から読み込む。以下、疾病名「肝細胞がん」の場合を例に説明する。
【0121】
ステップS321において、読影項目抽出部230は、ステップS320で取得した(読影項目−疾病名)間の相関関係の中から相関値を一つ取り出し、その相関値が第1閾値より大きいか否かを判定する。取り出した(読影項目−疾病名)間の相関値が第1閾値より大きい場合には、ステップS322に進み、第1閾値以下場合にはステップS323に進む。
【0122】
ステップS322において、読影項目抽出部230は、ステップS320で取得した(読影項目−疾病名)間の相関関係の情報から読影項目を取得し、読影知識を追加する際の読影項目候補に追加する。例えば図16において、相関値が第1閾値より大きい読影項目が「早期濃染」、「LDA」、「不均一」であった場合には、これら全てを読影項目候補として記憶する。
【0123】
ステップS323において、読影項目抽出部230は、(読影項目−疾病名)間の全ての相関値を第1閾値と比較し終えたか否かを判定する。全ての相関値を第1閾値と比較し終えた場合には、ステップS324に進み、そうでない場合には、ステップS321に戻る。
【0124】
ステップS324において、読影項目抽出部230は、ステップS322で抽出した読影項目候補の全組合せを作成する。
【0125】
例えば、抽出された読影項目が「早期濃染」、「LDA」、「不均一」の3つであった場合には、「早期濃染、LDA、不均一」、「早期濃染、LDA」、「LDA、不均一」、「早期濃染、不均一」、「早期濃染」、「LDA」、「不均一」の6つ組合せを作成する。
【0126】
ステップS325において、読影項目抽出部230は、ステップS324で作成した読影項目の組ごとに、当該組と、ステップS30で取得した読影知識に含まれる疾病名の間の相関値を抽出する。例えば、疾病名が「肝細胞がん」、読影項目の組が「早期濃染、LDA、不均一」の場合には、疾病名「肝細胞がん」−読影項目「早期濃染」、「LDA」、「不均一」(読影項目の組「早期濃染、LDA、不均一」)の間の相関値を抽出する。この相関値の抽出には、先に述べた(読影項目−疾病名)間の相関値の求め方を使用すればよい。
【0127】
ステップS326において、読影項目抽出部230は、ステップS325で抽出した相関値が第2閾値より大きいか否かを判定する。ステップS325で抽出した相関値が第2閾値より大きい場合にはステップS327に進み、第2閾値以下の場合には読影項目の抽出を終了する。例えば、疾病名「肝細胞がん」−読影項目「早期濃染」、「LDA」(読影項目の組「早期濃染、LDA」)の相関値を抽出すると、造影されていること(CTが高いこと)を示す「早期濃染」と、造影されていないこと(CTが低いこと)を示す「LDA」とは、相関性が低いため、疾病名「肝細胞がん」−読影項目「早期濃染」、「LDA」の相関値は第2閾値以下となる。このため、読影項目の組として「早期濃染、LDA」は不適切であると判定される。
【0128】
ステップS327において、読影項目抽出部230は、相関値が第2閾値より大きい読影項目の組を、読影知識の追加に使用する読影項目の組として抽出する。例えば、疾病名「肝細胞がん」に対しては、病変領域の画像パターンに対応する「早期濃染」、「LDA、不均一」という2つの読影項目の組が抽出される。
【0129】
図21のステップS33において、読影知識抽出部210は、ステップS32で抽出した読影項目の組を用いて、読影知識を抽出する。
【0130】
例えば、疾病名「肝細胞がん」に対して、2つの読影項目の組「早期濃染」、「LDA、不均一」が抽出された場合には、読影知識抽出部210は、読影項目「早期濃染」について(画像特徴量−読影項目)間の相関関係を抽出し、疾病名「肝細胞がん」に対する(画像特徴量−疾病名)間の相関関係として保存する。ここで、読影知識の抽出方法は先に述べた(画像特徴量−読影項目)間の相関関係の求め方と同様である。同様に、読影知識抽出部210は、読影項目の組「LDA、不均一」についても(画像特徴量−読影項目)間の相関関係を抽出し、疾病名「肝細胞がん」に対する(画像特徴量−疾病名)間の相関関係として保存する。
【0131】
図25に、ステップS33において抽出され、読影知識データベース110に格納される読影知識の格納形式を示す。疾病名1のように読影項目の組が2組存在する場合には、それぞれに対して読影知識が抽出され、その値が全て格納される。例えば、読影レポートに疾病名1が記入されている場合には、類似症例検索時には、図23の追加情報(ここでは、「1」:相関関係の追加あり)が読み込まれ、(読影項目−疾病名)間の相関関係が追加されたと判定され、図25の相関関係のテーブル(読影知識)が参照される。
【0132】
ステップS34において、読影知識判定部220は、読影知識データベース110において、読影知識を追加するか否かを未判定の読影知識があるかどうかをチェックする。未判定の読影知識がある場合は、ステップS30に戻り未判定の読影知識が取得された後、ステップS31が実行される。未判定の読影知識がない場合、すなわち、全ての読影知識に対し、ステップS31の読影知識の追加判定、ステップS32の読影項目抽出およびS33の読影知識抽出を実施済の場合は、読影知識の追加を終了する。
【0133】
以上の方法により、図23に示す各疾病名に対する読影知識の追加情報と、図25に示す追加情報に対応する(画像特徴量−疾病名)間の相関関係がそれぞれ得られる。また、得られた追加情報および相関関係は、図23および図25の形式にて読影知識データベース110に格納される。一方、図3のステップS14の処理により得られた、図14に示す(画像特徴量−読影項目)間の相関関係と、図16に示す(読影項目−疾病名)間の相関関係とには、新たな相関関係が追加されることなく、図14および図16の形式にて読影知識データベース110に格納される。以下で説明する類似症例検索では、この読影知識データベース110を使用する。
【0134】
なお、ステップS32で抽出した読影項目の組の情報のみを用いても、類似症例検索には有効である。図26に読影項目の抽出のみを行う読影知識追加処理のフローチャートを示す。図26に示すフローチャートでは、図21に示すフローチャートに示したステップS33の処理(読影知識抽出処理)が無い。つまり、図2の読影知識判定部220において読影知識を追加すると判定された場合に(S31でYes)、読影知識抽出部210は、図27に示す読影項目の組の情報を読影知識として新たに格納する(S32)。例えば、疾病名1に対応する読影項目の組が2組存在する場合には、これら2組の各読影項目について「1」、「0」の情報を格納する。本実施の形態においては、相関の高い読影項目(S32で抽出された読影項目)には「1」を付与し、相関の低い読影項目((S32で抽出されなかった読影項目)には「0」を付与する。例えば、図27の疾病名1の組番号1は、読影項目1と読影項目NIIが相関の高い読影項目であることを示す。類似症例検索時の読影知識の組の使用法については、後で詳細を説明する。
【0135】
なお、抽出した読影知識は図28のように、追加した読影知識と追加していない読影知識を同じテーブルに格納してもよい。例えば、読影レポートに疾病名1が記入されている場合には、類似症例検索時には、追加情報を読み込むことなく、直接、疾病名1の相関関係テーブルから、疾病名1に対する複数の相関関係を取得することができる。
【0136】
<類似症例検索>
以下、図1に示す類似症例検索装置の構成を示すブロック図および図29に示す類似症例検索処理のフローチャートを用いて、類似症例検索の手順について説明する。
【0137】
まず、はじめに読影知識が追加されていない相関関係(疾病名の追加情報が「0」)を用いた類似症例検索手順について説明する。
【0138】
ステップS20において、読影対象画像読込部120が、医用画像撮影装置から読影対象画像を取得する。図3に示した読影知識作成時と同じく、本実施の形態で対象とする医用画像撮影装置はマルチスライスCTとし、対象臓器および疾病は、それぞれ肝臓および肝腫瘤とする。読み込まれた画像は、読影対象画像表示部130に表示される。
【0139】
ステップS21において、読影者は、読影対象画像表示部130に表示された読影対象画像を参照しながら、レポート入出力部140を通して読影レポートを入力する。マルチスライスCT装置の場合、再構成により通常、体軸に対して垂直な面(axial view)のスライス画像が複数枚得られる。読影者は、これら複数のスライス画像に対し、スライス位置を変えながら病変(本実施の形態では肝腫瘤)の有無を確認し、読影レポートを入力する。読影レポートを入力する際、読影対象画像にて検出した病変の位置(スライス番号、および、スライス画像上における座標や領域情報)を、読影者がマウスなどの入力機器により指定してもよい。座標を指定する場合は、例えば、腫瘤の中心位置をマウスでクリックする。領域を指定する場合は、矩形、円または楕円等で囲む方法や、病変部と正常組織間との境界を自由曲線で囲む方法がある。中心座標のみを指定する場合や、矩形、円または楕円等で囲むことにより領域を指定する場合は、読影者の負担が小さいという利点があるが、画像特徴量抽出のために、別途、前記領域から腫瘤のみの領域を画像処理アルゴリズムにより自動抽出する必要がある。腫瘤領域抽出については、図4のステップS112と同じ手法を用いることができる。読影者により、病変の位置、領域の指定を行わない場合は、ステップS111の対象臓器領域抽出、および、ステップS112の病変領域抽出を行えばよい。
【0140】
ステップS22において、読影者からの類似症例検索の要求を受け付ける。
【0141】
典型的な症状を有する腫瘤の場合や読影者が熟練者の場合、通常は迷うことなく読影レポートの記入が完了する。非典型な症状を有する腫瘤の場合や読影者の熟練度が低い場合などは、読影者が読影端末200において類似症例検索要求を行う。読影対象画像に複数の病変が存在する場合は、診断に迷っている病変を指定した後、類似症例検索要求を行う。
【0142】
この病変の指定について説明する。ステップS21の読影レポート記入時に、診断に迷っている病変を含めて既に病変の位置や領域が複数指定されていれば、そのうちのどれかを選択するだけでよい。ステップS21にて、診断に迷っている病変を指定していなければ、ここで新たに病変を指定する。指定の方法として、病変の中心付近の1点を指定してもよいし、病変領域を指定してもよい。中心付近の1点が指定された場合は、指定された点を基準として予め定めたサイズの領域が設定され、この領域の中からステップS112と同じ方法を用いて詳細な病変領域が設定される。病変領域を大まかに指定した場合は、この領域の中からステップS112と同じ方法を用いて詳細な病変領域が設定される。
【0143】
そして、読影者からの類似症例検索要求があった場合は、ステップS23に進む。この時、読影レポートは記入完了の状態であってもよく、記入途中であってもよい。全く未記入の状態でも後のステップS25での類似症例検索は実行可能であるが、その場合は、本実施の形態の特徴である読影者の着目点に応じた類似症例検索は実行されず、予め設定された標準的な画像特徴量集合で類似症例検索を実行することになる。
【0144】
また、読影レポート記入時間が一定以上経過した場合、もしくは、読影者から読影終了に関する入力があった場合は、図29の処理を終了する。類似症例検索要求、読影終了入力を受理するための処理部は図1には図示していないが、読影端末200のキーボード内等に内蔵された物理的なスイッチでもよいし、医療用の高精細モニタ等で構成される読影対象画像表示部130に表示されたGUIメニュー等でもよい。
【0145】
ステップS23において、画像特徴抽出部160は、読影対象画像に対して、ステップS22にて指定または抽出された病変領域から画像特徴量を抽出する。指定または抽出された病変領域が複数あればその全てに対して、予め定めているN個の特徴量を抽出する。画像特徴量の抽出方法は、ステップS114と同じである。
【0146】
ステップS24において、レポート解析部150は、ステップS21にて記入された読影レポートの解析を行う。ここでは、読影知識データベースの作成時におけるステップS12の、読影項目および疾病名の抽出と同じ処理を実行する。
【0147】
ステップS25において、重み決定部170および類似症例検索部180は、読影対象画像および読影者が記入した読影レポートを基にして、症例データベース100から類似症例を検索する。ここでは、ステップS21にて読影者が図5の読影レポートを記入済、ステップS24にて図6の読影項目および疾病名が抽出済、ステップS23で読影対象画像から画像特徴量が抽出済の状況を考える。また、読影知識データベース110には、図14、図16、図23のような画像特徴量、読影項目、疾病名の三項のうち二項間の相関関係が格納済であるとする。さらに、ステップS24において抽出した疾病名については、読影知識が追加されていない(疾病名の追加情報が「0」)とする。本実施の形態では、読影レポートから抽出された読影項目および疾病名の少なくとも1つを基に、類似症例検索にて重み付け距離計算を行う。即ち、抽出された読影項目および疾病名の少なくとも1つと関連する画像特徴量に関しては重みを相対的に大きくし、関連しない画像特徴量に関しては重みを相対的に小さくする。これにより、読影レポートに記入された医師の着目点を反映した類似症例検索が可能となる。つまり、類似症例検索部180は、症例データベース100に記憶されている症例に含まれる医用画像と読影対象画像との間で重み付け距離を算出する。類似症例検索部180は、所定の閾値よりも小さい重み付け距離の算出の元となった医用画像を含む症例を類似症例として、症例データベース100から検索する。または、類似症例検索部180は、小さいものから所定個数の重み付け距離の算出の元となった医用画像を含む症例を類似症例として、症例データベース100から検索する。
【0148】
重み付け距離は、例えば式6にて計算できる。
【0149】
【数6】

【0150】
ここで、xは、読影対象画像から抽出された複数(N個)の画像特徴量を全て連結したベクトルである。uは、症例データベース100に格納された症例のうち、i番目の症例から抽出された画像特徴量である。異なる種類の画像特徴量を連結する際は、特徴量毎のスケールの違いに影響を受けないよう正準化(平均0、分散1に正規化)を行っておく。
【0151】
以下に重み付け方法の具体例を示す。
【0152】
(1)読影レポートから読影項目および疾病名の両方が抽出できた場合
このケースは、読影者が読影レポートをほぼ記入終了し、類似症例検索の結果で記入内容の確信を高めようとしている状況に相当する。
【0153】
ここでは、(読影項目−画像特徴量)間の相関関係と、(読影項目−疾病名)間の相関関係を用いて重み付けを行う例について説明する。(疾病名−画像特徴量)間の相関関係も使用できなくはないが、上記2つの相関関係のみを用いて重み付けを行う。読影者の思考プロセスは、医用画像に着目する読影項目を判定した後、読影項目の判定結果により疾病名を最終判定していると考えられるためである。
【0154】
この時点で、図5の読影レポートから図6のように読影項目として「早期濃染」、「washout」が、疾病名として「肝細胞がん」が抽出されている。重み決定部170は、読影知識データベース110に図16の形式で格納された(読影項目−疾病名)間の相関関係テーブルを参照し、(早期濃染−肝細胞がん)間の相関関係と(washout−肝細胞がん)間の相関関係を取得する。ここでは取得した相関関係を表す数値(相関値)をそのまま重みとして用い、それぞれw,wと表す。また、重み決定部170は、読影知識データベース110に図14の形式で格納された(画像特徴量−読影項目)間の相関関係テーブルを参照し、「早期濃染」と全ての画像特徴量間の相関関係と、「washout」と全ての画像特徴量間の相関関係を取得する。ここでは取得した相関関係を表す数値(相関値)をそのまま重みとして用い、それぞれwa,i,wb,iと表す。ここで、iは画像特徴量の種類を表す添字である。重み決定部170は、これらの重みを用いて、i番目の画像特徴量に対応する重みWを式7のように計算する。
【0155】
【数7】

【0156】
以上の重み付け方法について、図30に概要を示した。
【0157】
例えば、4番目の画像特徴量「エッジ強度」に対する重みは、wa,4と、wb,4との和として求められる。ここで、wa,4は、(早期濃染−エッジ強度)間の相関関係を表す値wa,4を、同じ読影項目を含む(早期濃染−肝細胞がん)間の相関関係を表す値wで重み付けした値である。wb,4は、(washout−エッジ強度)間の相関関係を表す値wb,4を、同じ読影項目を含む(washaout−肝細胞がん)間の相関関係を表す値wで重み付けした値である。
【0158】
読影項目の個数が2以外の場合でも、(読影項目−疾病名)間の相関関係で重み付けした後の(読影項目−画像特徴量)間の相関関係を加算することで対応可能である。この式により、読影者が着目した読影項目および疾病名、読影項目と疾病名との関連性、および、読影項目と画像特徴量との関連性、を同時に考慮した重みが計算でき、その結果、それらを重視した類似症例検索が可能となる。
【0159】
また、図29のフローチャートでは類似症例検索要求があった場合のみ類似症例検索を実行するが、読影レポート記入中の他のタイミングで類似症例検索を実行してもよい。他のタイミングとしては、少なくとも1個以上の読影項目または疾病名を記入後、一定時間以上、読影レポートの記入がされない場合などである。これは、読影者が読影に迷っていると解釈し、ヒントとなる類似症例を先回りして提示することにより読影を進展させることを意図した動作方法である。本実施の形態では、少なくとも1個以上の読影項目または疾病名が記入された場合、読影者のその着眼点を基に類似症例検索を実行することができる。以降に、読影レポートから読影項目のみが抽出できた場合、および、疾病名のみが抽出できた場合についても説明する。
【0160】
(2)読影レポートから読影項目のみが抽出できた場合
このケースは、読影者が着目すべき読影項目は判断できたものの、最終的な疾病名の診断に迷っており、類似症例検索の結果で疾病名診断のヒントを得ようとしている状況に相当する。ここでは、(読影項目−画像特徴量)間の相関関係のみを用いて重み付けを行う。
【0161】
この時点で、図示せぬ読影レポートから読影項目として「早期濃染」、「washout」が抽出されているとする。重み決定部170は、読影知識データベース110に図14の形式で格納された(画像特徴量−読影項目)間の相関関係テーブルを参照し、「早期濃染」と全ての画像特徴量間の相関関係と、「washout」と全ての画像特徴量間の相関関係を取得する。ここでは取得した相関関係を表す数値(相関値)をそのまま重みとして用い、それぞれwa,i,wb,iと表す。ここで、iは画像特徴量の種類を表す添字である。これらの重みを用い、i番目の画像特徴量に対応する重みWを、式8のように計算する。
【0162】
【数8】

【0163】
以上の重み付け方法について、図31に概要を示した。
【0164】
例えば、4番目の画像特徴量「エッジ強度」に対する重みは、(早期濃染−エッジ強度)間の相関関係を表す値wa,4と、(washout−エッジ強度)間の相関関係を表す値wb,4とを足した値である。
【0165】
読影項目の個数が2以外の場合も、(読影項目−画像特徴量)間の相関関係を加算することで対応可能である。この式により、読影者が着目した読影項目、および、読影項目と画像特徴量との関連性、を同時に考慮した重みを計算することができ、その結果、それらを重視した類似症例検索が可能となる。
【0166】
(3)読影レポートから疾病名のみが抽出できた場合
このケースは、読影者が直感等で疾病名を推定したがその根拠となる読影項目の判断に迷っており、類似症例検索の結果で診断根拠(読影項目)のヒントを得ようとしている状況に相当する。ここでは、(疾病名−画像特徴量)間の相関関係のみを用いて重み付けを行う。
【0167】
この時点で、読影レポートから疾病名として「肝細胞がん」が抽出されているとする。重み決定部170は、読影知識データベース110に図23の形式で格納された(画像特徴量−疾病名)間の相関関係テーブルを参照し、「肝細胞がん」と全ての画像特徴量間の相関関係を取得する。ここでは取得した相関関係を表す数値(相関値)をそのまま重みとして用い、wと表す。ここで、iは画像特徴量の種類を表す添字である。これらの重みを用い、i番目の画像特徴量に対応する重みWを、式9のように計算する。
【0168】
【数9】

【0169】
以上の重み付け方法について、図32に概要を示した。
【0170】
例えば、4番目の画像特徴量「エッジ強度」に対する重みは、(肝細胞がん−エッジ強度)間の相関関係を表す値wである。
【0171】
疾病名は通常1個であるため、上記の処理を行えばよいが、2個以上の疾病名が記入された場合などは、それらを加算することで対応可能である。加算することにより、2個以上の疾病に対し、平均的な画像特徴量で類似症例検索が可能となる。この式により、読影者が着目した疾病名、および、疾病名と画像特徴量との関連性、を同時に考慮した重みが計算でき、その結果、それらを重視した類似症例検索が可能となる。
【0172】
なお、本実施の形態では、式6の重み付け距離を用いて画像間の類似判定を行ったが、用いる特徴量の総次元数が大きくなってくると、計算された距離において、相関値(重み)が小さい(または中程度の)多数の特徴量のために相関値(重み)の大きい特徴量が埋没する可能性がある。その場合は、対応する相関値が所定の閾値以上の画像特徴量のみを距離計算に使用する、あるいは、相関値の上位数個の画像特徴量のみを距離計算に使用するなどの方法を採用してもよい。その場合の個数は事前に定めておけばよい。
【0173】
次に読影知識が追加された相関関係(疾病名の追加情報が「1」)を用いた類似症例検索手順について説明する。つまり、図29のステップS25において、ステップS24において抽出した疾病名について、読影知識が追加されている(疾病名の追加情報が「0」)と判断された場合の類似症例検索手順について説明する。
【0174】
読影知識が追加された相関関係(疾病名の追加情報が「1」)を用いた類似症例検索手順は、読影知識が追加されていない相関関係(疾病名の追加情報が「0」)を用いた類似症例検索手順と同様である。ただし、重み決定部170による画像特徴量の重み付けが異なる。このため、以下では、重み付け方法の具体例について説明する。
【0175】
(1)(画像特徴量−疾病名)間の相関関係が追加されている場合の重み付け方法その1
読影レポートから抽出された疾病名に対して読影知識が追加されている場合の画像特徴量の重み付け方法について、図33および図34を用いて説明する。
【0176】
ここでは特に、読影レポートから疾病名のみが抽出できた場合について説明する。
【0177】
このとき、先ほどと同様(疾病名−画像特徴量)間の相関関係のみを用いて重み付けを行う。
【0178】
図29のステップS24終了時点で、読影レポートから疾病名として「肝細胞がん」が抽出されているとする。
【0179】
ステップS25において、重み決定部170は、読影知識データベース110に図23の形式で格納された(画像特徴量−疾病名)間の相関関係テーブルにおいて追加情報を参照する。(画像特徴量−疾病名)間の相関関係が追加されている場合には、追加情報には「1」が格納されており、この場合には、図23(図33(a))の相関関係テーブルに含まれる「肝細胞がん」と全ての画像特徴量間の相関関係は取得せず、図25(図33(b))の形式で格納された(画像特徴量−疾病名)間の相関関係テーブルに含まれる「肝細胞がん」と全ての画像特徴量間の相関関係を、組番号ごとに取得する。ここでは取得した相関関係を表す数値(相関値)をそのまま重みとして用い、wと表す。ここで、iは画像特徴量の種類を表す添字である。これらの重みを用い、i番目の画像特徴量に対応する重みWを、式9のように計算する。
【0180】
以上の重み付け方法について、図33および図34に概要を示した。
【0181】
ここで、図33(a)の疾病名1のように(画像特徴量−疾病名)間の相関関係が追加されている場合には(追加情報が1の場合には)、疾病名に対して複数の画像パターンが存在する。このため、図33(b)に示すように相関関係も複数存在する。複数の相関関係が取得された場合には、相関関係ごとに、重みを計算し、類似症例検索に使用する。例えば、「肝細胞がん」に対して、相関関係が2組取得できた場合には、各相関関係について重みを決定し、これら両方について類似症例検索を実行する。
【0182】
各相関関係についての重み付け方法の概要は、図34に示される。例えば、3番目の画像特徴量「平衡相 輝度平均」に対する重みは、(肝細胞がん−平衡相 輝度平均)間の相関関係を表す値wである。
【0183】
このように、相関関係ごとに重みを決定し類似症例検索を実行することにより、着目点の異なる2通りの類似症例検索結果が得られる。
【0184】
(2)(画像特徴量−疾病名)間の相関関係が追加されている場合の重み付け方法その2
次に、図26に示す手順のように、図21のステップS33に示した読影知識を抽出する処理を行わずに、読影項目の組のみ抽出し、読影知識データベース110に格納した場合(図27参照)の画像特徴量の重み付け方法について、図35および図36を用いて説明する。先ほどと同様、読影レポートから疾病名のみが抽出できた場合について説明する。
【0185】
このとき、先ほどと異なり(読影項目−画像特徴量)間の相関関係を用いて重み付けを行う。
【0186】
図29のステップS24終了時点で、読影レポートから疾病名として「肝細胞がん」が抽出されているとする。
【0187】
ステップS25において、重み決定部170は、読影知識データベース110に図23の形式で格納された(画像特徴量−疾病名)間の相関関係テーブルにおいて追加情報を参照する。(画像特徴量−疾病名)間の相関関係が追加されている場合には、追加情報には「1」が格納されており、この場合には、図23(図35(a))の相関関係テーブルに含まれる「肝細胞がん」と全ての画像特徴量間の相関関係は取得せず、図27(図35(b))の形式で格納された読影項目の組に関する情報を、組番号ごとに取得する。組番号ごとに、取得した読影項目の組を用いて、読影レポートから複数の読影項目が抽出された場合と同様、図14(図35(c))の形式で格納された(読影項目−画像特徴量)間の相関関係テーブルを参照する。例えば、「肝細胞がん」と相関が高い読影項目として「早期濃染」と「washout」が抽出されたとする。このときには、「早期濃染」と全ての画像特徴量間の相関関係と、「washout」と全ての画像特徴量間の相関関係を取得する。ここでは取得した相関関係を表す数値(相関値)をそのまま重みとして用い、それぞれwa,i,wb,iと表す。ここで、iは画像特徴量の種類を表す添字である。これらの重みを用い、i番目の画像特徴量に対応する重みWを、式8のように計算する。
【0188】
以上の重み付け方法について、図35および図36に概要を示した。
【0189】
先ほどと同様、図35(a)の疾病名1のように(画像特徴量−疾病名)間の相関関係が追加されている場合には(追加情報が1の場合には)、疾病名に対して複数の画像パターンが存在する。このため、図35(b)および図35(c)に示すように相関関係も複数存在する。複数の相関関係が取得された場合には、先ほどと同様に取得した相関関係ごとに、重みを計算し、類似症例検索に使用する。
【0190】
各相関関係について重み付け方法の概要は図36に示される。
【0191】
例えば、3番目の画像特徴量「平衡相 輝度平均」に対する重みは、(早期濃染−平衡相 輝度平均)間の相関関係を表す値wa,3と、(washout−平衡相 輝度平均)間の相関関係を表す値wb,3とを足した値である。
【0192】
このように、相関関係ごとに重みを決定し類似症例検索を実行することにより、着目点の異なる2通りの類似症例検索結果が得られる。
【0193】
以上説明したように本実施の形態における類似症例の検索では、読影レポートから抽出された読影項目および疾病名の少なくとも1つを基に、類似症例検索にて重み付け距離計算を行う。即ち、抽出された読影項目および疾病名の少なくとも1つと関連する画像特徴量に関しては重みを相対的に大きく、関連しない画像特徴量に関しては重みを相対的に小さくする。このとき、疾病名に対応する画像パターンが複数存在する場合であっても、三項関係により相関関係が追加された重みを使用することができる。つまり、疾病名と関連性が高い画像特徴量の組合せが複数存在する場合には、画像特徴量の組合せごとに、読影項目を介した画像特徴量と対象疾病名との間の関連性を示す二項間関係情報を用いて、重み付けを行っている。このため、対象疾病名に対して複数種類の画像パターンが存在する場合であっても、それらを区別して類似症例検索を行うことができる。
【0194】
これにより、読影レポートに記入された医師の着目点を反映した類似症例検索が可能となる。
【0195】
なお、図1に示す類似症例検索装置は、症例データベース100および読影知識データベース110を備える構成としたが、読影知識データベース110および読影知識データベース110は、必ずしも類似症例検索装置に備えられていなくてもよく、類似症例検索装置が存在する場所とは異なる場所に備えられていても良い。この場合、類似症例検索装置の重み決定部170と類似症例検索部180が、それぞれ、ネットワークを介して読影知識データベース110と症例データベース100に接続されている。
【0196】
同様に、図2に示す読影知識抽出装置に、症例データベース100および読影知識データベース110は、必ずしも備えられていなくてもよく、読影知識抽出装置が存在する場所とは異なる場所に備えられていても良い。この場合、読影知識抽出部210、読影知識判定部220および読影項目抽出部230が、ネットワークを介して読影知識データベース110に接続されており、レポート解析部250および画像特徴抽出部260が、ネットワークを介して症例データベース100に接続されている。
【0197】
また、本実施の形態では、(画像特徴量−疾病名)間の相関関係が追加されている場合の重み付け方法について、読影レポートから疾病名のみが抽出できた場合を中心に説明したが、先に説明した読影レポートから読影項目および疾病名の両方が抽出できた場合、または読影レポートから読影項目のみが抽出できた場合においても同様に重み付けを行うことが可能である。
【0198】
また、(画像特徴量−疾病名)間の相関関係が追加されている場合において、相関関係が複数組取得できた場合には、類似症例検索結果としては着目点の異なる複数通りの類似症例検索結果が得られるが、これらは検索結果として全て表示してもよい。さらに、医用画像、読影レポートと同時に着眼点として採用した読影項目の組を表示してもよい。
【0199】
また、類似症例検索装置の本発明に必須の構成要素は、画像特徴抽出部160と、レポート解析部150と、重み決定部170と、類似症例検索部180とであり、その他の構成要素は、本発明の課題を達成するのに必ずしも必要ではない。
【0200】
また、読影知識抽出装置の本発明に必須の構成要素は、画像特徴抽出部260と、レポート解析部250と、読影知識抽出部210と、読影知識判定部220と、読影項目抽出部230とであり、その他の構成要素は、本発明の課題を達成するのに必ずしも必要ではない。
【0201】
また、上記の各装置は、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、ディスプレイユニット、キーボード、マウスなどから構成されるコンピュータシステムとして構成されても良い。RAMまたはハードディスクドライブには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、各装置は、その機能を達成する。ここでコンピュータプログラムは、所定の機能を達成するために、コンピュータに対する指令を示す命令コードが複数個組み合わされて構成されたものである。
【0202】
さらに、上記の各装置を構成する構成要素の一部または全部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしても良い。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどを含んで構成されるコンピュータシステムである。RAMには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0203】
さらにまた、上記の各装置を構成する構成要素の一部または全部は、各装置に脱着可能なICカードまたは単体のモジュールから構成されているとしても良い。ICカードまたはモジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどから構成されるコンピュータシステムである。ICカードまたはモジュールは、上記の超多機能LSIを含むとしても良い。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、ICカードまたはモジュールは、その機能を達成する。このICカードまたはこのモジュールは、耐タンパ性を有するとしても良い。
【0204】
また、本発明は、上記に示す方法であるとしても良い。また、これらの方法をコンピュータにより実現するコンピュータプログラムであるとしても良いし、前記コンピュータプログラムからなるデジタル信号であるとしても良い。
【0205】
さらに、本発明は、上記コンピュータプログラムまたは上記デジタル信号をコンピュータ読取可能な非一時的な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD−ROM、MO、DVD、DVD−ROM、DVD−RAM、BD(Blu−ray Disc(登録商標))、半導体メモリなどに記録したものとしても良い。また、これらの非一時的な記録媒体に記録されている上記デジタル信号であるとしても良い。
【0206】
また、本発明は、上記コンピュータプログラムまたは上記デジタル信号を、電気通信回線、無線または有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、データ放送等を経由して伝送するものとしても良い。
【0207】
また、本発明は、マイクロプロセッサとメモリを備えたコンピュータシステムであって、上記メモリは、上記コンピュータプログラムを記憶しており、上記マイクロプロセッサは、上記コンピュータプログラムに従って動作するとしても良い。
【0208】
また、上記プログラムまたは上記デジタル信号を上記非一時的な記録媒体に記録して移送することにより、または上記プログラムまたは上記デジタル信号を上記ネットワーク等を経由して移送することにより、独立した他のコンピュータシステムにより実施するとしても良い。
【0209】
さらに、上記実施の形態及び上記変形例をそれぞれ組み合わせるとしても良い。
【0210】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0211】
本発明は、読影者に参考となる類似症例を検索および提示する類似症例検索装置、類似症例検索装置で用いられる読影知識を抽出する読影知識抽出装置、および、研修読影医のための読影教育装置等に利用可能である。
【符号の説明】
【0212】
100 症例データベース
110 読影知識データベース
120 読影対象画像読込部
130 読影対象画像表示部
140 レポート入出力部
150、250 レポート解析部
160、260 画像特徴抽出部
170 重み決定部
180 類似症例検索部
190 類似症例表示部
200 読影端末
210 読影知識抽出部
220 読影知識判定部
230 読影項目抽出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像と当該医用画像を読影した結果が記載された文書データである読影レポートとを含む症例データに類似する症例データを症例データベースより検索する類似症例検索装置であって、
前記読影レポートは、(a)医用画像の特徴を示す文字列である読影項目および(b)医用画像に基づく読影者の診断結果である疾病名のうち少なくとも疾病名を含み、
前記類似症例検索装置は、
読影対象の医用画像である読影対象画像から複数の画像特徴量を抽出する画像特徴抽出部と、
前記読影対象画像に対する読影レポートである対象読影レポートから疾病名を抽出するレポート解析部と、
読影知識データベースに基づいて、画像特徴量毎の重みを決定する重み決定部と、
前記画像特徴抽出部で抽出された前記複数の画像特徴量と、症例データベースに登録されている症例データに含まれる医用画像から抽出される複数の画像特徴量とを、前記重み決定部で決定された画像特徴量毎の重みで重み付けして比較することにより、前記読影対象画像に類似する医用画像を含む症例データを前記症例データベースより検索する類似症例検索部と
を備え、
前記読影知識データベースは、
医用画像から抽出される各画像特徴量と各読影項目との間の関連性を予め定めた第1の二項間関係情報と、
各読影項目と各疾病名との間の関連性を予め定めた第2の二項間関係情報と、
各画像特徴量と各疾病名との間の関連性を予め定めた第3の二項間関係情報と、
疾病名ごとに、疾病名と関連性が高い画像特徴量の組合せが複数存在するか否かを示す存否情報とを含み、
前記重み決定部は、前記読影知識データベースに含まれる前記存否情報に基づいて前記レポート解析部が抽出した疾病名である対象疾病名と関連性が高い画像特徴量の組合せが複数存在すると判断できる場合に、画像特徴量の組合せごとに、前記知識データベースに含まれる前記第1の二項間関係情報および前記第2の二項間関係情報から算出される、読影項目を介した各画像特徴量と前記対象疾病名との間の関連性を示す第4の二項間関係情報を、前記第3の二項間関係情報に代えて用い、前記画像特徴抽出部が抽出した画像特徴量ごとに、当該画像特徴量と前記対象疾病名との間の関連性が高いほど大きな値の重みを決定する
類似症例検索装置。
【請求項2】
前記重み決定部は、前記読影知識データベースに含まれる前記存否情報に基づいて前記対象疾病名と関連性が高い画像特徴量の組合せが1種類しか存在しないと判断できる場合に前記第3の二項間関係情報を用い、前記画像特徴抽出部が抽出した画像特徴量ごとに、当該画像特徴量と前記対象疾病名との間の関連性が高いほど大きな値の重みを決定する
請求項1に記載の類似症例検索装置。
【請求項3】
医用画像と当該医用画像を読影した結果が記載された文書データである読影レポートとを含む複数の症例データから、読影知識を抽出する読影知識抽出装置であって、
前記読影レポートは、(a)医用画像の特徴を示す文字列である読影項目または(b)医用画像に基づく読影者の診断結果である疾病名を含み、
前記読影知識抽出装置は、
前記各症例データに含まれる医用画像から複数の画像特徴量を抽出する画像特徴抽出部と、
前記各症例データに含まれる読影レポートから疾病名および読影項目を抽出するレポート解析部と、
前記画像特徴抽出部が抽出した各画像特徴量と前記レポート解析部が抽出した各読影項目との間の関連性を定める第1の二項間関係情報と、前記レポート解析部が抽出した各読影項目と前記レポート解析部が抽出した各疾病名との間の関連性を定める第2の二項間関係情報と、前記画像特徴抽出部が抽出した各画像特徴量と前記レポート解析部が抽出した各疾病名との間の関連性を定める第3の二項間関係情報とを、読影知識として抽出する読影知識抽出部と、
前記第1の二項間関係情報と、前記第2の二項間関係情報と、前記第3の二項間関係情報とに基づいて、疾病名ごとに疾病名と関連性が高い画像特徴量の組合せが複数存在するか否かを判定する読影知識判定部と、
前記第2の二項間関係情報に基づいて、前記読影知識判定部が関連性が高い画像特徴量の組合せが複数存在すると判定した疾病名ごとに、当該疾病名と画像特徴量の組合せとを関連付ける読影項目の組を、画像特徴量の組合せごとに抽出する読影項目抽出部と、
を備え、
前記読影知識抽出部は、さらに、前記読影項目抽出部が抽出した読影項目の組ごとに、当該読影項目の組と前記画像特徴抽出部が抽出した各画像特徴量との間の関連性を定める二項間関係情報を、前記読影知識判定部が関連性が高いと判定した疾病名と画像特徴量の組合せに含まれる各画像特徴量との間の関連性を示す読影知識である第4の二項間関係情報として抽出する
読影知識抽出装置。
【請求項4】
前記読影知識判定部は、(a)前記第3の二項間関係情報から選択される第1の画像特徴量と第1の疾病名との間の関連性を定める第1の相関値と、(b)前記第2の二項間関係情報から選択される前記第1の疾病名と第1の読影項目との間の関連性を定める相関値が相関値閾値以上の前記第1の読影項目について、前記第1の二項間関係情報から選択される前記第1の読影項目と前記第1の画像特徴量との間の関連性を定める第2の相関値との間の差分値を計算し、計算した前記差分値が差分閾値よりも大きい場合に、前記第1の疾病名と関連性が高い画像特徴量の組合せが複数存在すると判定する
請求項3に記載の読影知識抽出装置。
【請求項5】
前記読影項目抽出部は、前記読影知識判定部が関連性が高い画像特徴量の組合せが複数存在すると判定した疾病名ごとに、前記第2の二項間関係情報が示す当該疾病名との間の相関値が第1閾値よりも大きい読影項目から作成される全ての読影項目の組のうち、当該疾病名との間の相関値が第2の閾値以上となる読影項目の組を、当該疾病名と前記画像特徴量の組合せとを関連付ける読影項目の組として抽出する
請求項3または4に記載の読影知識抽出装置。
【請求項6】
医用画像と当該医用画像を読影した結果が記載された文書データである読影レポートとを含む症例データに類似する症例データを症例データベースより検索する類似症例検索方法であって、
前記読影レポートは、(a)医用画像の特徴を示す文字列である読影項目および(b)医用画像に基づく読影者の診断結果である疾病名のうち少なくとも疾病名を含み、
前記類似症例検索方法は、
読影対象の医用画像である読影対象画像から複数の画像特徴量を抽出する画像特徴抽出ステップと、
前記読影対象画像に対する読影レポートである対象読影レポートから疾病名を抽出するレポート解析ステップと、
読影知識データベースに基づいて、画像特徴量毎の重みを決定する重み決定ステップと、
前記画像特徴抽出ステップで抽出された前記複数の画像特徴量と、症例データベースに登録されている症例データに含まれる医用画像から抽出される複数の画像特徴量とを、前記重み決定ステップで決定された画像特徴量毎の重みで重み付けして比較することにより、前記読影対象画像に類似する医用画像を含む症例データを前記症例データベースより検索する類似症例検索ステップと
を含み、
前記読影知識データベースは、
医用画像から抽出される各画像特徴量と各読影項目との間の関連性を予め定めた第1の二項間関係情報と、
各読影項目と各疾病名との間の関連性を予め定めた第2の二項間関係情報と、
各画像特徴量と各疾病名との間の関連性を予め定めた第3の二項間関係情報と、
疾病名ごとに、疾病名と関連性が高い画像特徴量の組合せが複数存在するか否かを示す存否情報とを含み、
前記重み決定ステップでは、前記読影知識データベースに含まれる前記存否情報に基づいて前記レポート解析ステップで抽出された疾病名である対象疾病名と関連性が高い画像特徴量の組合せが複数存在すると判断できる場合に、画像特徴量の組合せごとに、前記知識データベースに含まれる前記第1の二項間関係情報および前記第2の二項間関係情報から算出される、読影項目を介した各画像特徴量と前記対象疾病名との間の関連性を示す第4の二項間関係情報を、前記第3の二項間関係情報に代えて用い、前記画像特徴抽出ステップで抽出された画像特徴量ごとに、当該画像特徴量と前記対象疾病名との間の関連性が高いほど大きな値の重みを決定する
類似症例検索方法。
【請求項7】
請求項6に記載の類似症例検索方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項8】
医用画像と当該医用画像を読影した結果が記載された文書データである読影レポートとを含む複数の症例データから、読影知識を抽出する読影知識抽出方法であって、
前記読影レポートは、(a)医用画像の特徴を示す文字列である読影項目または(b)医用画像に基づく読影者の診断結果である疾病名を含み、
前記読影知識抽出方法は、
前記各症例データに含まれる医用画像から複数の画像特徴量を抽出する画像特徴抽出ステップと、
前記各症例データに含まれる読影レポートから疾病名および読影項目を抽出するレポート解析ステップと、
前記画像特徴抽出ステップで抽出された各画像特徴量と前記レポート解析ステップで抽出された各読影項目との間の関連性を定める第1の二項間関係情報と、前記レポート解析ステップで抽出された各読影項目と前記レポート解析ステップで抽出された各疾病名との間の関連性を定める第2の二項間関係情報と、前記画像特徴抽出ステップで抽出された各画像特徴量と前記レポート解析ステップで抽出された各疾病名との間の関連性を定める第3の二項間関係情報とを、読影知識として抽出する読影知識抽出ステップと、
前記第1の二項間関係情報と、前記第2の二項間関係情報と、前記第3の二項間関係情報とに基づいて、疾病名ごとに疾病名と関連性が高い画像特徴量の組合せが複数存在するか否かを判定する読影知識判定ステップと、
前記第2の二項間関係情報に基づいて、前記読影知識判定ステップで関連性が高い画像特徴量の組合せが複数存在すると判定された疾病名ごとに、当該疾病名と画像特徴量の組合せとを関連付ける読影項目の組を、画像特徴量の組合せごとに抽出する読影項目抽出ステップと、
を含み、
前記読影知識抽出ステップでは、さらに、前記読影項目抽出ステップで抽出された読影項目の組ごとに、当該読影項目の組と前記画像特徴抽出ステップで抽出された各画像特徴量との間の関連性を定める二項間関係情報を、前記読影知識判定ステップで関連性が高いと判定された疾病名と画像特徴量の組合せに含まれる各画像特徴量との間の関連性を示す読影知識である第4の二項間関係情報として抽出する
読影知識抽出方法。
【請求項9】
請求項8に記載の読影知識抽出方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図17】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−25723(P2013−25723A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162654(P2011−162654)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】