説明

類似移動層キシレン混合物前処理工程および追加のキシレン異性質化工程を含む芳香族化合物の分離方法

本発明は、非芳香族除去工程であるスルホラン工程、ベンゼン/トルエン分画工程、芳香族分画工程、トルエンの選択的不均等化工程、トランスアルキル化工程、類似移動層パラ−キシレン分離工程およびキシレン異性質化工程を含む、類似移動層吸着クロマトグラフィーを利用した芳香族化合物分離方法において、類似移動層キシレン混合物前処理工程および追加のキシレン異性質化工程をさらに含むことを特徴とする芳香族化合物の分離方法に関するものである。本発明の芳香族化合物の分離方法は従来の芳香族化合物の分離工程に比べて全体工程の側面でパラ−キシレンおよびベンゼンの生産性を顕著に向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は類似移動層キシレン混合物前処理工程および追加のキシレン異性質化工程を含む芳香族化合物の分離方法に関するものであって、より詳しくは、非芳香族除去工程であるスルホラン工程、ベンゼン/トルエン分画工程、芳香族分画工程、トルエンの選択的不均等化工程、トランスアルキル化工程、類似移動層パラ−キシレン分離工程およびキシレン異性質化工程を含む、類似移動層吸着クロマトグラフィーを利用した芳香族化合物の分離方法において、類似移動層キシレン混合物前処理工程および追加のキシレン異性質化工程をさらに含むことを特徴とする芳香族化合物の分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族化合物の分離工程は、石油化学工場で原料であるナフサ(naphtha)を処理して、パラ−キシレン(para-xylene)とベンゼン(benzene)を主要な最終製品にする分離工程である。 芳香族化合物中主要な製品である上記パラ−キシレンの分離は、キシレン混合物から分離する工程が主に使用されている。このような工程の例としては、類似移動層(Simulated Moving Bed)吸着クロマトグラフィーを利用した分離工程、各成分間の氷点の差異による結晶化を利用した分離工程または上記二つの工程を直列に連結するハイブリッド工程等を挙げることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図1に示したような従来の類似移動層吸着クロマトグラフィーを利用した芳香族化合物の分離工程においては、パラ−キシレンの分離工程として類似移動層パラ−キシレン分離工程だけを使用しており、類似移動層パラ−キシレン分離工程上の処理限界に起因して、ナフサの追加投入によるリフォーメートの増産を消化することができなくなり、トルエンを追加に投入して、パラ−キシレンの生産性向上を図ることができないし、類似移動層パラ−キシレン分離工程で処理できない剰余キシレン混合物を排出させなければならないので、パラ−キシレン生産量の側面から見るとき、生産性をより提高させ得る改善の余地を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記のような従来技術の問題点を解決しようと案出されたものであって、本発明の目的は。類似移動層吸着クロマトグラフィーを利用した芳香族化合物の分離方法において、類似移動層キシレン混合物前処理工程および追加のキシレン異性質化工程を導入して、キシレン混合物を前処理することにより、キシレン混合物中の分離しようとするパラ−キシレン成分の濃度を増加させて、効率的にパラ−キシレンを分離させ、剰余のキシレン混合物を効果的にパラ−キシレンに転換することができ、別途のトルエンおよびキシレン混合物を工程に供給して、全体的にパラ−キシレンおよびトルエンの生産性が顕著に向上された芳香族化合物の分離方法を提供することである。
【0005】
上記のような目的を達成するために、本発明の芳香族化合物の分離方法は、非芳香族除去工程であるスルホラン工程、ベンゼン/トルエン分画工程、芳香族分画工程、トルエンの選択的不均等化工程、トランスアルキル化工程、類似移動層パラ−キシレン分離工程およびキシレン異性質化工程を含む、類似移動層吸着クロマトグラフィーを利用した芳香族化合物の分離方法において、類似移動層キシレン混合物前処理工程および追加のキシレン異性化工程をさらに含むことを特徴とする。
【0006】
上記キシレン混合物前処理工程および追加のキシレン異性質化工程は次の段階を含むことが好ましい:
(1)上記類似移動層パラ−キシレン分離工程に投入されるべきキシレン混合物の一部を上記類似移動層キシレン混合物前処理工程に投入する段階;
(2)上記類似移動層キシレン混合物前処理工程から得られた結果物中、パラ−キシレンを80重量%以上含有するキシレン混合物を上記類似移動層分離工程に投入し、残りのキシレン混合物を上記追加のキシレン異性質化工程に投入する段階;および
(3)上記追加のキシレン異性質化工程の結果物を上記芳香族分画工程に再投入する段階。
【0007】
上記段階(1)で、類似移動層キシレン混合物前処理工程に投入されるキシレン混合物の量は特別に制限されず、システムの状況によって適切に調節可能であるが、好ましくは50〜200トン/時間である。
【0008】
上記段階(3)において、芳香族分画工程に投入されるべき追加のキシレン異性質化工程の結果物中一部分はベンゼン/トルエン分画工程に投入され得る。
投入量は特別に制限されず、システムの状況によって適切に調節可能であるが、好ましくは1〜10トン/時間である。
【0009】
上記芳香族分離方法において、トルエンを選択的不均等化工程に追加に供給して、全体的にパラ−キシレンの生産性を向上させることができる。また、上記芳香族分離方法において、キシレン混合物を上記芳香族分画工程に追加に供給して、全体的にパラ−キシレンの生産性を向上させることができる。上記別途のトルエンおよび別途のキシレン混合物の供給量は特別に制限されず、システムの状況によって適切に調節可能であるが、好ましくはそれぞれ0〜60トン/時間および0〜30トン/時間である。
【0010】
以下においては、本発明の芳香族化合物の分離方法を図2を参照して、さらに詳しく説明する。
【0011】
リフオーマーからスプリッター(RS)に投入された原料芳香族化合物の混合物であるリフォーメート(Reformate)は、ベンゼンのような炭素数6の芳香族化合物とトルエンのような炭素数7の芳香族化合物を含む混合物および炭素数8のキシレンのようなより重い芳香族混合物に分離され、前者はライン4を通じて非芳香族除去工程であるスルホラン工程(Sulfolane)およびベンゼン/トルエン分画工程(B/T Frac)へ投入され、後者はライン24を通じて芳香族分画工程(Aro Frac)へ投入される。
【0012】
ベンゼン/トルエン分画工程において、ベンゼンとトルエンの混合物はベンゼンとトルエンにそれぞれ分離され、ベンゼンはライン12を通じて排出され、トルエンはライン14を通じてトルエンの選択的不均等化工程(STDP)およびトランスアルキル化工程(TAC9)へ投入される。トルエンの選択的不均等化工程における選択的不均等化反応の結果で生成された混合物には、ベンゼン(A6),トルエン(A7)、キシレン(A8)およびトリメチルベンゼン(A9)等が含まれ、その中でもパラ−キシレンが混合物中に約85〜95重量%の量で含まれる。上記混合物はライン19を通じてベンゼン/トルエン分画工程へ再投入され、ここで、炭素数8のキシレンおよびそれより重いトリメチルベンゼン等はより軽い成分等から分離された後、ライン13を通じて排出されライン2を経て芳香族分画工程へ投入される。
【0013】
芳香族分画工程において、炭素数10以上の芳香族化合物等はライン3を通じて排出され、キシレン混合物はライン6を通じて排出され類似移動層パラ−キシレン分離工程(Parex)へ投入され、上記キシレン混合物の一部分は類似移動層キシレン混合物前処理工程(New
SMB)に供給される。ライン35を通じて類似移動層キシレン混合物前処理工程へ投入されたキシレン混合物は、パラ−キシレンが80重量%以上である高濃度キシレン混合物および残りのキシレン混合物に分離され、前者はライン36および37を通じて類似移動層パラ−キシレン分離工程に送られ、後者はライン38を通じて排出され追加のキシレン異性質化工程(ISOMAR2)に投入される。追加のキシレン異性質化工程の結果物はライン39を経由して、一部分はライン39-1を通じて芳香族分画工程へ再投入され、残りはライン39-2を通じてベンゼン/トルエン分画工程へ投入される。
【0014】
ライン8を通じて類似移動層パラ−キシレン分離工程に投入されたキシレン混合物はパラ−キシレンおよび残りのキシレン混合物に分離され、前者はライン9を通じて排出され、後者はライン10を通じて排出されて、キシレン異性質化工程(ISOMAR)に投入される。キシレン異性質化工程の結果物はライン11通じて排出され芳香族分画工程へ再投入される。
【0015】
芳香族分画工程から排出される炭素数9の芳香族化合物(A9)はライン20を通じてトランスアルキル化工程(TAC9)へ投入される。トランスアルキル工程へ投入された炭素数9の芳香族化合物は、ベンゼン/トルエン分画工程からライン18を通じて投入されたトルエンとトランスアルキル化工程でトランスアルキル化反応して、パラ−キシレンを含む結果混合物を生成し、上記結果混合物はライン21を通じて芳香族分画工程へ再投入される。
【0016】
別途のトルエンはライン42を通じてライン14へ供給され、別途のトルエン混合物はライン43を通じてライン2へ供給される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来の類似移動層吸着クロマトグラフィーを利用した芳香族化合物分離工程の概略図である。
【図2】本発明によるキシレン混合物前処理工程および追加のキシレン異性質化工程を含む芳香族化合物分離工程の概略図である。
【図3】適切な運転条件の調整によって、抽出物中パラ−キシレンの濃度を80重量%以上に保持できる8個ベッド(Bed)の類似移動層キシレン混合物前処理工程の運転可能性を図示したグラフである。
【図4】パラ−キシレンの分離のための類似移動層パラ−キシレン分離工程に供給されるキシレン混合物中のパラ−キシレンの濃度変化による生産性の変化を換算収率の変化として図示したグラフである。換算収率は、キシレン混合物中パラ−キシレンの濃度が23%である場合を基準にしたため、100%を超える値もあり得る。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は下記の実施例によってより具体化され、下記実施例は本発明の具体的な例示に過ぎず、本発明の保護範囲を限定または制限するものではない。
【0019】
(実施例)
図2に示した芳香族化合物分離工程を使用して、ナフサからパラ−キシレンとベンゼンを連続生産する場合を電算模写した。
【0020】
(比較例)
図1に示した芳香族化合物分離工程を使用したことを除いては、実施例と同一に生産する場合を電算模写した。
【0021】
上記実施例における類似移動層パラ−キシレン分離工程への投入量は比較例の水準である262トン/時間以内に限定し、類似移動層キシレン混合物前処理工程への投入量を150トン/時間以内に限定した。しかし、このような範囲の限定は本発明の具体的な例示に過ぎず、本発明の保護範囲を限定または制限するものではない。
【0022】
表1は、別途のトルエンを追加に投入する場合の実施例および比較例に対し、生産期間中消費された原料ナフサの量、中間生成されたリフォーメートの量、生産されたパラ−キシレンおよびベンゼンの量および類似移動層パラ−キシレン分離工程への投入物中パラ−キシレンの濃度等を示した。
【0023】
【表1】

上記表1に示した結果をよく見ると、本発明の実施例において、類似移動層パラ−キシレン分離工程への投入物中、パラ−キシレンの濃度は比較例に比べて顕著に向上されており、生産されたパラ−キシレンおよびベンゼンの量は同じ期間中比較例の工程によって生産された量よりそれぞれ32.8トン/時間および24.5トン/時間が増加したことが分かるが、これを年間生産量で換算すると、それぞれ287,000トンおよび215,000トンの増産効果が得られことが分かった。
【0024】
表2は、別途のキシレン混合物を追加に投入する場合の実施例および比較例に対し、生産期間中消費された原料ナフサの量、中間生成されたリフォーメートの量、生産されたパラ−キシレンおよびベンゼンの量および類似移動層パラ−キシレン分離工程への投入物中パラ−キシレンの濃度等を表した。
【0025】
【表2】

上記表2に示した結果をよく見ると、本発明の実施例において、類似移動層パラ−キシレン分離工程への投入物中パラ−キシレンの濃度は、比較例に比べて顕著に向上されており、生産されたパラ−キシレンおよびベンゼンの量は、同じ期間中比較例の工程によって生産された量よりそれぞれ24.4トン/時間および6トン/時間が増加したことが分かるが、これを年間生産量で換算すると、それぞれ214,000トンおよび53,000トンの増産効果が得られることが分かった。
【0026】
表3は、別途のトルエンと別途のキシレン混合物を一緒に追加に投入する場合の実施例および比較礼に対し、生産期間中消費された原料ナフサの量、中間生成されたリフォーメートの量、生産されたパラ−キシレンおよびベンゼンの量および類似移動層パラ−キシレン分離工程への投入物中パラ−キシレンの濃度等を表した。
【0027】
【表3】

上記表3に示した結果をよく見ると、本発明の実施例において、類似移動層パラ−キシレン分離工程への投入物中パラ−キシレンの濃度は、比較例に比べて顕著に向上されており、生産されたパラ−キシレンおよびベンゼンの量は、同じ期間中比較例の工程によって生産された量よりそれぞれ28.1トン/時間および14.2トン/時間が増加したことが分かるが、これを年間生産量で換算すると、それぞれ246,000トンおよび124,000トンの増産効果が得られることが分かった。
【0028】
表4は、リフォーメートを増して投入する場合の実施例および比較例に対し、生産期間中消費された原料ナフサの量、中間生成されたリフォーメートの量、生産されたパラ−キシレンおよびベンゼンの量および類似移動層パラ−キシレン分離工程への投入物中パラ−キシレンの濃度等を表した。
【0029】
【表4】

上記表4に示した結果をよく見ると、本発明の実施例において、類似移動層パラ−キシレン分離工程への投入物中パラ−キシレンの濃度は、比較例に比べて顕著に向上されており、生産されたパラ−キシレンおよびベンゼンの量は、同じ期間中比較例の工程によって生産された量よりそれぞれ25.9トン/時間および14.9トン/時間が増加したことが分かるが、これを年間生産量で換算すると、それぞれ227,000トンおよび131,000トンの増産効果が得られることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上説明したとおり、本発明の芳香族化合物の分離方法は、従来の芳香族化合物の分離工程に比べて全体工程の側面からパラ−キシレンおよびベンゼンの生産性を顕著に向上させることができる。
【0031】
(用語の説明)
Sulfolane: ベンゼン/トルエン分画工程および非芳香族化合物除去工程
Parex: 類似移動層パラ−キシレン分離工程
ISOMAR: キシレン異性質化工程
ISOMAR2: 追加のキシレン異性質化工程
STDP: トルエンの選択的不均等化工程
TAC9: 炭素数9の芳香族化合物のトランスアルキル化工程
B/T Frac: ベンゼン/トルエン分画工程
Aro Frac: 芳香族分画工程
New SMB: 類似移動層キシレン混合物前処理工程
A6: 炭素数6の芳香族化合物
A7: 炭素数7の芳香族化合物
A8: 炭素数8の芳香族化合物
A9: 炭素数9の芳香族化合物
A10+: 炭素数10以上の芳香族化合物
BZ: ベンゼン
PX: パラ−キシレン
MX: キシレン混合物
TOL: トルエン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非芳香族除去工程であるスルホラン工程、ベンゼン/トルエン分画工程、芳香族分画工程、トルエンの選択的不均等化工程、トランスアルキル化工程、類似移動層パラ−キシレン分離工程およびキシレン異性質化工程を含む、類似移動層吸着クロマトグラフィーを利用した芳香族化合物の分離方法において、類似移動層キシレン混合物前処理工程および追加のキシレン異性質化工程をさらに含むことを特徴とする芳香族化合物の分離方法。
【請求項2】
上記キシレン混合物前処理工程および追加のキシレン異性質化工程は、次の段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の芳香族化合物の分離方法:
(1)上記類似移動層パラ−キシレン分離工程へ投入されるべきキシレン混合物の一部を上記類似移動層キシレン混合物前処理工程へ投入する段階;
(2)上記類似移動層キシレン混合物前処理工程から得られた結果物中、パラ−キシレンを80重量%以上含有するキシレン混合物を上記類似移動層分離工程へ投入し、残りのキシレン混合物を上記追加のキシレン異性質化工程へ投入する段階;および
(3)上記追加のキシレン異性質化工程の結果物を上記芳香族分画工程へ再投入する段階。
【請求項3】
上記段階(3)の芳香族分画工程へ投入されるべき追加のキシレン異性質化工程の結果物中一部分を上記ベンゼン/トルエン分画工程へ投入することを特徴とする請求項2に記載の芳香族化合物の分離方法。
【請求項4】
トルエンを上記トルエンの選択的不均等化工程へ追加に供給することを特徴とする請求項1,2または3に記載の芳香族化合物の分離方法。
【請求項5】
キシレン混合物を上記芳香族分画工程へ追加に供給することを特徴とする請求項1、2または3に記載の芳香族化合物の分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−500510(P2011−500510A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506022(P2010−506022)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【国際出願番号】PCT/KR2007/005470
【国際公開番号】WO2008/133384
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(507324740)サムスン トータル ペトロケミカルズ カンパニー リミテッド (16)
【Fターム(参考)】