説明

風力発電デバイス、及び風力発電装置

【課題】発電効率の高い風力発電デバイス、及び風力発電装置を提供する。
【解決手段】風力発電デバイス120は、風力エネルギーを電気エネルギーに変換する風力発電デバイスであって、風によって高次モードで振動する柔軟性素材から構成される柔軟性シート121と、柔軟性シート121を挟持する一対の圧電フィルム122と、を備え、圧電フィルム122それぞれが風力発電デバイス120の中立軸から離間しており、風力発電デバイス120が風により撓んだ際に、圧電フィルム122それぞれが中立軸から離間して撓み発電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は風力発電デバイス、及び風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自然エネルギーの有効活用が望まれている。特許文献1には、風力によって振動する振動板と、その振動板に取り付けられ振動によって発電する圧電素子と、を備える風力発電機が開示されている。
【0003】
また、非特許文献1には、木の葉を模した三角形のプレートを振動板の先端にヒンジを介して連結することで振動板の振動を促進する発電デバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−303726号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Li S., Lipson H., (2009) "Vertical-Stalk Flapping-Leaf Generator For Parallel Wind Energy Harvesting", Proceedings of the ASME/AIAA 2009 Conference on Smart Materials, Adaptive Structures and Intelligent Systems, SMASIS2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や非特許文献1に示すデバイスは、硬い素材の振動板を使用している。そのため、振動板が微小にしか変形せず、効率のよい発電ができない。
【0007】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、発電効率の高い風力発電デバイス、及び風力発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点に係る風力発電デバイスは、
風力エネルギーを電気エネルギーに変換する風力発電デバイスであって、
風によって高次モードで振動する柔軟性素材から構成される柔軟性シートと、
前記柔軟性シートを挟持する一対の圧電フィルムと、を備え、
前記圧電フィルムそれぞれが前記風力発電デバイスの中立軸から離間しており、前記風力発電デバイスが風により撓んだ際に、前記圧電フィルムそれぞれが前記中立軸から離間して撓み発電する、
ことを特徴とする。
【0009】
前記柔軟性シートは伸縮性素材から構成されてもよい。
【0010】
前記柔軟性シートの長手方向の長さは前記圧電フィルムの長手方向の長さより長く、
前記柔軟性シートは、一端に前記圧電フィルムによって挟持されていない突出領域を有し、
前記突出領域は、風によりはためいて前記風力発電デバイスの振動を促進してもよい。
【0011】
前記圧電フィルムの表面に積層される積層圧電フィルム、を備え、
前記積層圧電フィルムは、
前記圧電フィルムよりも長手方向の長さが短く、前記積層圧電フィルムの長手方向の中心は前記圧電フィルムの長手方向の中心から一方に偏った位置にあり、前記風力発電デバイスが風により撓んだ際に撓んで発電してもよい。
【0012】
前記圧電フィルムは、前記柔軟性シートに対向する内面に設置される内側電極と、その反対側の外面に設置される外側電極と、を備え、
前記積層圧電フィルムは、前記圧電フィルムに対向する内面の反対側の外面に設置される外側電極、を備え、
前記圧電フィルムの外側電極とその圧電フィルムに積層される前記積層圧電フィルムの外側電極とは導線で接続されていてもよい。
【0013】
前記風力発電デバイスの一端に柔軟性素材で構成される薄膜状の連結シートを介して接続される板状の板状付加物、を備えていてもよい。
【0014】
前記風力発電デバイスの一端に紐を介して接続される立体付加物、を備えていてもよい。
【0015】
前記風力発電デバイスの表面には、複数の柔毛が設置されていてもよい。
【0016】
本発明の第2の観点にかかる風力発電装置は、
本発明の第1の観点にかかる風力発電デバイスを複数備え、
複数の前記風力発電デバイスは平面を平行に一列に配置されており、風上にある前記風力発電デバイスによって気流が乱されることによって風下にある前記風力発電デバイスの振動が促進される、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
発電効率の高い風力発電デバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る風力発電装置の斜視図である。
【図2】風力発電デバイスを説明するための図であり、(A)は発電デバイスの分解斜視図、(B)は発電デバイスの縦断面図である。
【図3】風力発電デバイスの固定端部分を拡大した分解断面図である。
【図4】風力発電デバイスが風によって高次モード(2次モード以上)で振動することを説明するための図である。
【図5】発電デバイスが風で変形したときの部分断面部であり、(A)は圧電フィルムが分極した様子を示す図、(B)は積層圧電フィルムが分極した様子を示す図である。
【図6】蓄電装置の内部構成を説明するための図である。
【図7】風力発電デバイスが風によって振動する様子を示す図である。
【図8】板状付加物を付加した風力発電デバイスを示す図であり、(A)は風力発電デバイスの斜視図、(B)は風力発電デバイスの断面図である。
【図9】立体付加物を付加した風力発電デバイスを示す図である。
【図10】表面に柔毛を設置した風力発電デバイスを示す図であり、(A)は風力発電デバイスの斜視図、(B)は風力発電デバイスの断面図である。
【図11】風力発電デバイスの構成の一例を示す図であり、(A)は圧電フィルムの両面に積層圧電フィルムを設置した風力発電デバイスの分解断面図、(B)は積層圧電フィルムにさらに積層圧電フィルムを積層した風力発電デバイスの断面図である。
【図12】風力発電装置の構造様式を説明するための図であり、(A)は稲穂を模した構造様式を示す図、(B)は柳を模した構造様式を示す図、(C)は大型膜体構造様式を示す図である。
【図13】実施例で使用した風力発電デバイスの構成を説明するための図である。
【図14】実施例1の実験結果を説明するための図である。
【図15】実施例2の実験結果を説明するための図あり、(A)は一方向伸縮性素材を使用した風力発電デバイスの実験結果を示す図、(B)は双方向伸縮性素材を使用した風力発電デバイスの実験結果を示す図である。
【図16】実施例3の実験結果を説明するための図である。
【図17】実施例4で使用した風力発電デバイスの構成を示す図であり、(A)は一様な厚さの矢印形の樹脂に圧電フィルムを設置した風力発電デバイスを示す図、(B)は発電デバイスの先端にヒンジを使って三角形の板状付加物を設置した風力発電デバイスを示す図、(C)は発電デバイスの先端に薄型樹脂を使って三角形の板状付加物を設置した風力発電デバイスを示す図である。
【図18】実施例4の実験結果を説明するための図である。
【図19】実施例5の実験条件を説明するための図であり、(A)は風の向きに対して平行配置した風力発電デバイスを示す図、(B)は風の向きに対して直交配置した風力発電デバイスを示す図である。
【図20】実施例5の実験結果を説明するための図であり、(A)は風の向きに対して平行配置した風力発電デバイスの実験結果を示す図、(B)は風の向きに対して直交配置した風力発電デバイスの実験結果を示す図である。
【図21】実施例6の実験条件を説明するための図であり、(A)は実施例6で使用した風力発電デバイスの構成を示す図、(B)は風力発電デバイスを支持棒に固定した様子を示す図である。
【図22】実施例6の実験結果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に係る風力発電デバイスを用いた風力発電装置について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
風力発電装置100は、風力により発電する装置であり、図1に示すように、フレーム110と、風力発電デバイス120と、配線ケーブル130と、蓄電装置140とから構成される。
【0021】
フレーム110は、風力発電デバイス120を設置するための構造物である。フレーム110は2本の縦棒111の中間に横棒112を設置したハシゴ状をしており、横棒112にはそれぞれ風力発電デバイス120の長手方向の一端が連結されている。フレーム110は風力発電デバイスを下側に向けて設置される。
【0022】
風力発電デバイス120は、振動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電シートであり、図2(A)に示すように、柔軟性シート121と、圧電フィルム122と、積層圧電フィルム123等から構成される。なお、以下の説明では、風力発電デバイス120のフレーム110に固定される側を固定端、他端を開放端と呼ぶ。
【0023】
柔軟性シート121は、風力発電デバイス120の基体となる部分である。柔軟性シート121は、例えば、テント素材に使用される化学繊維の織布や、ビニール袋に使用される薄膜状樹脂等の柔性の高い柔軟性素材から構成される。柔軟性素材は、例えば、ヤング率が1.5GPa以下、好ましくは0.1GPa以下の素材である。柔軟性素材は、例えば、質量742g/m、厚さ1.20mm、剥離強度(JISL1096)55×56N/3cm、引裂強度(JISL1096)128×101N、切断強度(JISL1096)619.0×107.5N/cm、切断伸度(JISL1096)88.3×468.7%のウレタンケブラー(登録商標)であってもよい。
【0024】
風力発電デバイス120は柔性の高い柔軟性シート121を基体としているため、硬い振動板を使用した従来の発電デバイスとは異なり、高次モード(例えば、図4に示すような2次・3次モード等)での振動が可能となっている。柔軟性シート121は、図2(B)に示すように、2枚の圧電フィルム122によって挟持されている。
【0025】
圧電フィルム122は、PVDF(PolyVinylidene DiFluoride:ポリフッ化ビニリデン)などの圧電材料によって構成される圧電シートの両面に電極膜を形成したフィルム状の圧電素子から構成される。圧電フィルム122は、図5(A)に示すように、伸張したとき、一方の面の電位が高くなり(例えば、図中上面が+極、下面が−極となり)、収縮したとき、他方の面の電位が高くなる(例えば、図中上面が−極、下面が+極となる)分極特性を有している。なお、以下の説明では、柔軟性シート121に対向する側を内面、他方を外面と呼ぶ。
【0026】
圧電フィルム122の両面には、図2(B)に示すように、それぞれ外側電極122aと内側電極122bとが形成されている。外側電極122aと内側電極122bには、それぞれ配線124aと配線124bとが接続されている。分極によって発生した電荷は、配線124aおよび配線124bを通じて外部に出力される。
【0027】
圧電フィルム122の長手方向の長さL2は、柔軟性シート121の長手方向の長さL1より短くなっている。また、2枚の圧電フィルム122は、それぞれ柔軟性シート121の固定端側に寄って配置されている。そのため、柔軟性シート121の開放端側には、図2(B)に示すように、圧電フィルム122によって挟持されていない突出領域が形成されている。突出領域は圧電フィルム122によって挟持されていない分、圧電フィルム122によって挟持されている本体領域よりも柔性が高くなっている。
【0028】
積層圧電フィルム123は、PVDF等の圧電シートの両面に電極膜を形成したフィルム状の圧電素子から構成される。圧電フィルム122は、図5(B)に示すように、伸張したとき、一方の面の電位が高くなり、収縮したとき、他方の面の電位が高くなる分極特性を有している。積層圧電フィルム123は、圧電フィルム122の外面に積層しており、積層圧電フィルム123と圧電フィルム122の間は樹脂126で絶縁されている。なお、以下の説明では、圧電フィルム122に対向する側を内面、他方を外面と呼ぶ。
【0029】
積層圧電フィルム123の長手方向の長さL3は、圧電フィルム122の長手方向の長さL2の例えば50%以下であり、好ましくは10%程度である。
【0030】
積層圧電フィルム123は圧電フィルム122の固定端側に寄せて配置されている。例えば、積層圧電フィルム123の長手方向の中心(図2(B)に示す(b))が、圧電フィルム122の長手方向の中心(図2(B)に示す(a))に対して固定端側に位置するように配置されている。
【0031】
積層圧電フィルム123の外面には、図2(B)に示すように、外側電極123aが形成されている。外側電極123aは、図3に示すように、配線125によって圧電フィルム122の外面および外側電極122aと連結されている。なお、配線125は配線124aと一本の導線となっている(すなわち、配線125は配線124aを延長した部分である)。配線125は、外側電極122aの内部を貫通し、さらに、外側電極122aと圧電フィルム122の間を通って、圧電フィルム122に接した状態で外側電極123aに伸びている。分極によって圧電フィルム122と積層圧電フィルム123から生じた電荷は、配線125および配線124aを通じて外部に出力される。
【0032】
配線ケーブル130は、配線124aと配線124bを束ねたものであり、フレーム110の脇を通って蓄電装置140に接続されている。
【0033】
蓄電装置140は、風力発電デバイス120が生成した電荷を蓄えるための装置であり、図6に示すように、整流回路141と、蓄電媒体142とから構成される。
【0034】
整流回路141は、ダイオードブリッジ回路等の整流回路から構成される。整流回路141は、一対の入力端子を有しており、その入力端子は、それぞれ、配線124aと配線124bに接続されている。また、整流回路141は、正極端子、負極端子から構成される1対の出力端子を有しており、正極端子は蓄電媒体142の正極端子に、負極端子は蓄電媒体142の負極端子に接続されている。
【0035】
蓄電媒体142は、大容量コンデンサや二次電池等から構成され、整流回路141により整流された電流を蓄える。
【0036】
次に、このような構成を有する風力発電装置100の発電動作について説明する。
【0037】
風力発電デバイス120は、図7に示すように、フレーム110に吊るされた状態で設置されている。風力発電装置100に風が当たると、風上にある風力発電デバイス120は風を遮って風下に気流の渦を発生させる。風力発電デバイス120は柔らかい素材の柔軟性シート121を基体としているため、風下の風力発電デバイス120は気流の渦によって高次モードで振動する。高次モードで振動することによって圧電フィルム122は効率よく分極し、両面に大きな電荷を発生させる。
【0038】
また、風力発電デバイス120の先端には柔性の極めて高い突出領域が形成されている。風力発電デバイス120に風があたると、突出領域は旗がはためくように揺れ、本体領域の振動を促進する。そうすると、本体領域に設置された圧電フィルム122は振動して両面に電荷を発生させる。
【0039】
また、風力発電デバイス120は、固定端側に積層圧電フィルム123を有している。図7に示すように、固定端部分は他の部分と比べ相対的に変曲量が大きい。そのため、積層圧電フィルム123は風力発電デバイス120の振動に伴って大きく変曲し、両面に大きな電荷を発生させる。
【0040】
圧電フィルム122および積層圧電フィルム123の外側に発生した電荷は、配線125および配線124aを介して、他方、圧電フィルム122の内側に発生した電荷は、配線124bを介して、蓄電装置140に伝達される。蓄電装置140に伝達された電荷は整流回路141によって一定方向の電流に変換され、蓄電媒体142に蓄積される。
【0041】
本実施形態によれば、風力発電デバイス120は、柔軟性シート121を基体としているため、高次モードでの振動が可能となっている。そのため、従来の硬い振動板を使用し、一次モードでしか振動しない発電デバイスと比較して効率のよい発電を実現できる。
【0042】
また、突出領域がはためくことによって本体領域の振動が促進されるので、風力発電デバイス120はさらに効率のよい発電を実現できる。
【0043】
また、積層圧電フィルム123は変曲量が大きい固定端部分に配置されているので、極めて効率のよい発電を実現できる。
【0044】
また、風力発電においてデバイス重量・剛性の増加は発電効率の低下の要因となるが、積層圧電フィルム123は発電効率の高い固定端部分にのみ配置されているので、デバイス重量の増加を抑えつつ、高い発電効率を実現できる。
【0045】
なお、風力発電デバイス120には付加物が付加されていてもよい。例えば、図8に示すように、柔軟性素材の連結シート152によって、例えば、円形、楕円形、多角形(例えば三角形や四角形)等の形状をした板状の板状付加物151が連結されていてもよいし、図9に示すように、風力発電デバイス120の開放端に連結された紐154の一端に、例えば、球体、楕円体、多面体(例えば、立方体、直方体、角柱など)、又は円柱などの形状をした立体付加物153が連結されていてもよい。また、板状付加物151や立体付加物153は突出領域に直接連結されていてもよい。
付加物は柔軟性素材や紐を介して発電デバイスに連結されているので風によって大きくばたつくことができる。その結果、風力発電デバイス120の振動が促進され、さらに効率のよい発電が可能になる。
【0046】
また、風力発電デバイス120の表面は粗くなっていてもよい。例えば、図10に示すように、風力発電デバイス120の表面に毛糸等の柔毛160が設置されていてもよい。風を効率よく受け止めることができるようになり、風力発電デバイス120の振動をさらに促進することができる。
【0047】
また、積層圧電フィルム123の積層構造は図2に示す構造に限られない。例えば、図11(A)に示すように、圧電フィルム122の外面と内面の双方に積層圧電フィルム123が積層されていてもよいし、図11(B)に示すように、積層圧電フィルム123の外面に、さらに積層圧電フィルム123が積層されていてもよい。変曲の大きい固定端部分を無駄なく使用できるので、さらに効率のよい発電が可能になる。
【0048】
なお、積層圧電フィルム123に設置された外側電極・内側電極は、それぞれ、図11に示すように、配線125によって一段内層のフィルムの電極にそれぞれ連結されていてもよい。配線124a、124bに配線を集約できるので、風力発電デバイス120から出る配線の数を少なくできる。
【0049】
柔軟性シート121に使用される柔軟性素材は、伸縮性のある伸縮性素材であってもよい。伸縮性素材としては、例えば、トリコット等のメリヤス編みされた織布であってもよいし、ゴム等の伸縮性のある薄膜状樹脂であってもよい。風によって柔軟性シート121が伸び縮みするので、圧電フィルム122の変形が促進され、さらに効率のよい発電が可能になる。
【0050】
また、上記伸縮性素材は、一方向にだけ高い伸縮性を有しそれと直交する方向にはほとんど伸縮性を示さない一方向伸縮性素材であってもよい。一方向伸縮性素材は、例えば、伸縮性のある縦糸と伸縮性のない横糸とを使用した織布であってもよい。この場合、柔軟性シート121は長手方向にのみ伸縮性を示すように配置されてもよい。変形させたい方向に圧電フィルム122を効率よく変形させることができるので、さらに効率のよい発電が可能になる。
【0051】
風力発電装置100は「植生を模した構造様式」であってもよい。例えば、図12(A)に示すように、風力発電デバイス120を稲穂を模した色・形状にし、それらを人工地盤に配置してもよいし、図12(B)に示すように、風力発電デバイス120を枝垂れ柳の下垂した枝を模した色・形状にし、それらを木の枝に設置してもよい。一般家庭でも風力発電装置の設置が可能になる。また、風がないときはオブジェとして使用できるため景観問題も発生しない。また、風車等で問題となっているバードストライクの問題も発生しない。
【0052】
風力発電装置100は「大型膜体構造様式」であってもよい。例えば、図12(C)に示すように、洋上に大きなテントをはり、そのテント素材に複数の圧電フィルムを貼付してもよい。膨大なエネルギー資源である洋上風力を活用することが可能になる。また、設置コストが安価であり、海洋環境に与える影響も少なく、騒音問題も発生しない。
【実施例1】
【0053】
風力発電デバイスを1次モード、2次モード、3次モードで振動させてデバイス単位面積あたりの発電量を比較した。
【0054】
風力発電デバイスを3つ作成した。風力発電デバイスは、それぞれ、図13に示すように、柔軟性シートを2枚の圧電フィルム(PVDF)で挟持した構成をしている。これら風力発電デバイスのサイズはそれぞれ以下の通りである。
【0055】
風力発電デバイス1(Type1)
PVDF :B=20mm、L=360mm
柔軟性シート :b=30mm、l=380mm
PVDF間厚さ:δ=0.55mm
【0056】
風力発電デバイス2(Type2)
PVDF :B=20mm、L=240mm
柔軟性シート :b=30mm、l=260mm
PVDF間厚さ:δ=0.55mm
【0057】
風力発電デバイス3(Type3)
PVDF :B=30mm、L=240mm
柔軟性シート :b=40mm、l=260mm
PVDF間厚さ:δ=0.55mm
【0058】
これら3つの風力発電デバイスの一端を自由端とし、他端を所定の周波数で強制振動させた。図14は、その結果をグラフにしたものである。どの風力発電デバイスも、1次モードと比較して2次・3次モードでの発電量が増加することが分かる。
【実施例2】
【0059】
風力発電デバイスの基体に、伸縮性のない通常素材を使用する場合と、長手方向にのみ伸縮性を示す一方向伸縮性素材を使用する場合と、長手方向と直交する方向にも伸縮性を示す双方向伸縮性素材を使用する場合と、でどのように発電量が変わるか検討した。
【0060】
風力発電デバイスを4つ作成した。風力発電デバイスは、実施例1と同様に、図13に示す構成をしている。これら風力発電デバイスのサイズはそれぞれ以下の通りである。
【0061】
風力発電デバイス1(一方向伸縮性素材)
PVDF :B=20mm、L=200mm
柔軟性シート :b=30mm、l=220mm、素材:ケブラー(登録商標)
PVDF間厚さ:δ=1.8mm
【0062】
風力発電デバイス2(双方向伸縮性素材)
PVDF :B=15mm、L=150mm
柔軟性シート :b=25mm、l=160mm、素材:トリコット
PVDF間厚さ:δ=0.9mm
【0063】
風力発電デバイス3(通常素材)
PVDF :B=20mm、L=200mm
柔軟性シート :b=30mm、l=220mm、
PVDF間厚さ:δ=1.8mm
【0064】
風力発電デバイス4(通常素材)
PVDF :B=15mm、L=150mm
柔軟性シート :b=25mm、l=160mm、
PVDF間厚さ:δ=0.9mm
【0065】
これら3つの風力発電デバイスの一端を自由端とし、他端を所定の周波数で強制振動させた。図15(A)に示す(a)は風力発電デバイス1(一方向伸縮性素材)の実験結果であり、図15(B)に示す(b)は風力発電デバイス2(双方向伸縮性素材)の実験結果であり、図15(A)に示す(c)は風力発電デバイス3(通常素材)の実験結果であり、図15(B)に示す(d)は風力発電デバイス4(通常素材)の実験結果である。一方向伸縮性素材を使用した風力発電デバイスは通常素材を使用した風力発電デバイスの3.9倍、双方向伸縮性素材を使用した風力発電デバイスは通常素材を使用した風力発電デバイスの1.7倍の発電量を示すことが分かる。
【実施例3】
【0066】
圧電フィルムを積層する場合と積層しない場合とでどのように発電量が変わるか検討した。
【0067】
風力発電デバイスを2つ作成した。作成した風力発電デバイスは、図13に示すように、柔軟性シートを2枚の圧電フィルム(PVDF)で挟持した風力発電デバイス1と、図11(A)に示すように、圧電フィルム(PVDF)の両面にさらに積層圧電フィルム(追加PVDF)を積層させた風力発電デバイス2の2つである。これら風力発電デバイスのサイズはそれぞれ以下の通りである。
【0068】
風力発電デバイス1(積層圧電フィルムなし)
PVDF :B=15mm、L=150mm
柔軟性シート :b=25mm、l=160mm、素材:トリコット
PVDF間厚さ:δ=0.9mm
【0069】
風力発電デバイス2(積層圧電フィルムあり)
PVDF :B=15mm、L=150mm
追加PVDF :B=15mm、L=15mm
柔軟性シート :b=25mm、l=160mm、素材:トリコット
PVDF間厚さ:δ=0.9mm
【0070】
これら2つの風力発電デバイスの一端を自由端とし、他端を所定の周波数で強制振動させた。図16に示す(a)は風力発電デバイス1(積層圧電フィルムなし)の実験結果であり、図16に示す(b)は風力発電デバイス2(積層圧電フィルムあり)の実験結果である。もとの長さに対して10%のPVDF追加でも十分に発電性能が向上することが分かる。
【実施例4】
【0071】
板状付加物の追加による風力発電デバイスの発電量の変化を検討した。使用した風力発電デバイスは以下の3つである。
【0072】
風力発電デバイス1(一様樹脂タイプ)
風力発電デバイス1は、矢印の形をした一様な厚さの樹脂(例えばポリマー)の長方形部分(矢印の根元部分)の両面に圧電フィルム(PVDF)を設置した図17(A)に示す構成の発電デバイスである。なお、この発電デバイスのサイズは以下のとおりである。
PVDF :B=20mm、L=240mm
PVDF間厚さ:δ=0.55mm
矢印の根元(長方形部分):b=30mm、l=260mm
矢印の頭部(三角形部分):底辺a=160mm、高さh=160mmの二等辺三角形
【0073】
風力発電デバイス2(ヒンジタイプ)
風力発電デバイス2は、風力発電デバイス1(一様樹脂タイプ)の長方形部分と同じ構成の発電デバイスの先端にヒンジを使って三角形の板状付加物を設置した図17(B)に示す構成の発電デバイスである。なお、板状付加物は風力発電デバイス1(一様樹脂タイプ)の三角形部分と同じサイズである。
【0074】
風力発電デバイス3(薄型樹脂タイプ)
風力発電デバイス3は、風力発電デバイス1(一様樹脂タイプ)の長方形部分と同じ構成の発電デバイスの先端に柔性の高い連結シート(図17(C)に示す「薄型樹脂」)を使って三角形の板状付加物を設置した図17(C)に示す構成の風力発電デバイスである。なお、板状付加物は風力発電デバイス1(一様樹脂タイプ)の三角形部分と同じサイズである。
【0075】
これら3つの風力発電デバイスの一端を構造物に固定し、所定の風速の風を加えた。図18は、その結果をグラフにしたものである。薄型樹脂タイプはヒンジタイプの60%超の発電量を示すことが分かる。
【実施例5】
【0076】
付加物の追加による風力発電デバイスの発電量の変化を検討した。使用した風力発電デバイスは以下の2つである。
【0077】
風力発電デバイス1(付加物なし)
柔軟性シートを2枚の圧電フィルム(PVDF)で挟持した図13に示す構成の発電デバイスである。なお、この発電デバイスのサイズは以下のとおりである。
PVDF :B=20mm、L=240mm
柔軟性シート :b=30mm、l=260mm
PVDF間厚さ:δ=0.55mm
【0078】
風力発電デバイス2(付加物あり)
風力発電デバイス2は、風力発電デバイス1(付加物なし)の先端に紐を介して球状の立体付加物を設置した図9に示す構成の発電デバイスである。なお、立体付加物および紐のサイズは以下のとおりである。
立体付加物 :直径約40mmの球体
紐 :長さ約5cmの紐
【0079】
これら2つの風力発電デバイスの一端を、図19(A)に示すように、風力発電デバイスの平面が風の向きと平行になるように支持棒に固定した。また、これら2つの風力発電デバイスの一端を、図19(B)に示すように、風力発電デバイスの平面が風の向きと直交するように支持棒に固定した。そして、それぞれに所定の風速の風を加え、発電量を計測した。図20は、その結果をグラフにしたものである。付加物を追加した風力発電デバイスは、付加物を追加していない風力発電デバイスより高い発電量を示すことが分かる。
【実施例6】
【0080】
柔毛の追加による風力発電デバイスの発電量の変化を検討した。使用した風力発電デバイスは以下の2つである。
【0081】
風力発電デバイス1(柔毛なし)
柔軟性シートを2枚の圧電フィルム(PVDF)で挟持した図13に示す構成の発電デバイスである。なお、この発電デバイスのサイズは以下のとおりである。
PVDF :B=20mm、L=240mm
柔軟性シート :b=30mm、l=260mm
PVDF間厚さ:δ=0.55mm
【0082】
風力発電デバイス2(柔毛あり)
風力発電デバイス2は、風力発電デバイス1(柔毛なし)の片面に柔毛を設置した図21(A)に示す構成の発電デバイスである。
【0083】
これら2つの風力発電デバイスの一端を、図21(B)に示すように、支持棒に固定した。なお、風力発電デバイス2は、図21(B)に示すように、柔毛が風下側に位置するよう固定した。そして、それぞれに所定の風速の風を加え、発電量を計測した。図22は、その結果をグラフにしたものである。風下側に柔毛を向けた風力発電デバイスは、柔毛を設置していない風力発電デバイスより高い発電量を示すことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
大型膜体構造様式による洋上風力発電や植生を模した構造様式による陸上風力発電等、風力エネルギーを利用する種々の発電システムで利用可能である。
【符号の説明】
【0085】
100 風力発電装置
110 フレーム
111 縦棒
112 横棒
120 風力発電デバイス
121 柔軟性シート
122 圧電フィルム
122a、123a 外側電極
122b、123b 内側電極
123 積層圧電フィルム
124a、124b 配線
125 配線
126 樹脂
130 配線ケーブル
140 蓄電装置
141 整流回路
142 蓄電媒体
151 板状付加物
152 連結シート
153 立体付加物
154 紐
160 柔毛

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力エネルギーを電気エネルギーに変換する風力発電デバイスであって、
風によって高次モードで振動する柔軟性素材から構成される柔軟性シートと、
前記柔軟性シートを挟持する一対の圧電フィルムと、を備え、
前記圧電フィルムそれぞれが前記風力発電デバイスの中立軸から離間しており、前記風力発電デバイスが風により撓んだ際に、前記圧電フィルムそれぞれが前記中立軸から離間して撓み発電する、
ことを特徴とする風力発電デバイス。
【請求項2】
前記柔軟性シートは伸縮性素材から構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の風力発電デバイス。
【請求項3】
前記柔軟性シートの長手方向の長さは前記圧電フィルムの長手方向の長さより長く、
前記柔軟性シートは、一端に前記圧電フィルムによって挟持されていない突出領域を有し、
前記突出領域は、風によりはためいて前記風力発電デバイスの振動を促進する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の風力発電デバイス。
【請求項4】
前記圧電フィルムの表面に積層される積層圧電フィルム、を備え、
前記積層圧電フィルムは、
前記圧電フィルムよりも長手方向の長さが短く、前記積層圧電フィルムの長手方向の中心は前記圧電フィルムの長手方向の中心から一方に偏った位置にあり、前記風力発電デバイスが風により撓んだ際に撓んで発電する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の風力発電デバイス。
【請求項5】
前記圧電フィルムは、前記柔軟性シートに対向する内面に設置される内側電極と、その反対側の外面に設置される外側電極と、を備え、
前記積層圧電フィルムは、前記圧電フィルムに対向する内面の反対側の外面に設置される外側電極、を備え、
前記圧電フィルムの外側電極とその圧電フィルムに積層される前記積層圧電フィルムの外側電極とは導線で接続されている、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の風力発電デバイス。
【請求項6】
前記風力発電デバイスの一端に柔軟性素材で構成される薄膜状の連結シートを介して接続される板状の板状付加物、を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の風力発電デバイス。
【請求項7】
前記風力発電デバイスの一端に紐を介して接続される立体付加物、を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の風力発電デバイス。
【請求項8】
前記風力発電デバイスの表面には、複数の柔毛が設置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の風力発電デバイス。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項の風力発電デバイスを複数備え、
複数の前記風力発電デバイスは平面を平行に一列に配置されており、風上にある前記風力発電デバイスによって気流が乱されることによって風下にある前記風力発電デバイスの振動が促進される、
ことを特徴とする風力発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図18】
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【図20】
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【図22】
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【図3】
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【図4】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図21】
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