説明

風力発電装置の状態監視システム

【課題】簡易な低周波振動センサを用い風力発電装置の状態を監視するシステムを提供する。
【解決手段】風力発電装置の状態を監視する状態監視システムであって、風力発電装置のナセル内に設置され、ナセルの振動を測定するための振動センサ70と、振動センサ70からナセルの振動の状態を診断するための監視装置とを備え、振動センサ70は、ナセル内に固設する支柱101と、支柱101と回動可能に接続されたアーム104と、支柱101とアーム104との回転角を測定する測定部103とを含み、監視装置は、測定部103の出力に基づき、風力発電装置の状態を監視する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、風力発電装置の状態監視システムに関し、特に、簡易な低周波振動センサを用い風力発電装置の状態を監視する状態監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、風力発電装置の状態を監視する状態監視システムにおいて、被監視対象は、この風力発電装置の内部や上部(ナセル部分)に設置された機器のみならず、このナセルの振動も被監視対象となる場合がある。
【0003】
このナセルの振動は、1Hz程度の非常に遅い周波数の振動であるため、一般的には、高感度の圧電素子を用いて低周波用の振動センサが用いられていることが多い。
【0004】
この安価な低周波振動感知する技術として、特開2007−139485号公報(特許文献1)が開示されている。
【0005】
特開2007−139485号公報(特許文献1)は、振り子体の固有振動数を数0.数Hzから十数Hz範囲で、特に1Hz〜12Hz範囲で任意に設定でき、かつ振り子型センサの小型軽量化を実現し、実用性の高い振り子型センサを供給する。
【0006】
この振り子型センサは、少なくとも、筐体内に質量分布を有する錘体と、前記錘体の重心位置と回転軸中心とが設定された距離に設けられた振り子体と、この振り子体の回転位置あるいは角度を検知する手段とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−139485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の圧電素子は、他の振動センサに比較して、コストが高くなる。また、高感度であるために外部からの加えられる衝撃に対しての許容値が低く、設置の際にセンサが破損する可能性がある。
【0009】
さらに、上記の特開2007−139485号公報(特許文献1)において、風力発電装置のナセルの振動の状態を監視するシステムについて具体的に議論されていない。
【0010】
そこで、この発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、その目的は、簡易な低周波振動センサを用い風力発電装置の状態を監視するシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明によれば、風力発電装置の状態を監視する状態監視システムであって、風力発電装置のナセル内に設置され、ナセルの振動を測定するための振動センサと、振動センサからナセルの振動の状態を診断するための処理部とを備え、振動センサは、ナセル内に固設する支持部と、支持部と回動可能に接続されたアーム部と、支持部とアーム部との回転角を測定する測定部とを含み、処理部は、測定部の出力に基づき、風力発電装置の状態を監視する。
【0012】
好ましくは、処理部は、測定部の出力の時間変化によりナセルの加速度を算出し、ナセルの状態が正常か否かを判定する。
【0013】
さらに好ましくは、測定部は、エンコーダまたはポテンショメータを含む。
好ましくは、支持部は、液体が注入された容器に固設され、アーム部の一端には、液体の表面上に浮くフロートが固設される。
【0014】
さらに好ましくは、液体は、粘性の高い液体を含む。
さらに好ましくは、振動センサは、支持部とアーム部とを接続する回転ヒンジをさらに含み、回転ヒンジは、水面の微小な揺れによる計測ノイズ防止のための振動減衰部を有する。
【0015】
また好ましくは、支持部は、ナセル内部に固設され、アーム部の一端には、重りが固設される。
【0016】
好ましくは、振動センサは、支持部とアーム部とを接続する回転ヒンジをさらに含み、回転ヒンジは、振り子動作による計測ノイズ防止のための振動減衰部を有する。
【0017】
さらに好ましくは、振動減衰部は、スプリングまたはダンパーを有する。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、振動センサを用いて測定された結果に基づいて、ナセルの振動の状態を診断するので、従来の振動センサによる手法に比べてより簡易かつ安価に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】風力発電装置の全体を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1によるナセル振動用の振動センサが適用された風力発電装置の構成を概略的に示した図である。
【図3】実施の形態1の振動センサ70(振動が無し)の動作を説明するための図である。
【図4】実施の形態1の振動センサ70(振動が有り)の動作を説明するための図である。
【図5】実施の形態2の振動センサ70A(振動が無し)の動作を説明するための図である。
【図6】実施の形態2の振動センサ70A(振動が有り)の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0021】
図1は、風力発電装置の全体を示す図である。図1を参照して、風力発電装置10は、ブレード30と、ナセル90と、タワー100とを備える。ブレード30の中心でナセル90によって支持され、ナセル90は、タワー100によって支持される。風力発電装置のナセル90が振動していないときを実線で示し、振動しているときを破線で示す。風力発電装置のナセル90が振動する理由としては、タワー100のたわみによる。なお、この振動の周波数は非常に低く約数Hz程度である。
【0022】
図2は、この発明の実施の形態1によるナセル振動用の振動センサが適用された風力発電装置の構成を概略的に示した図である。図2を参照して、風力発電装置10は、主軸20と、ブレード30と、増速機40と、発電機50と、主軸用軸受(以下、単に「軸受」と称する。)60と、振動センサ70と、監視装置80とを備える。増速機40、発電機50、軸受60、振動センサ70および監視装置80は、ナセル90に格納され、ナセル90は、タワー100によって支持される。
【0023】
主軸20は、ナセル90内に進入して増速機40の入力軸に接続され、軸受60によって回転自在に支持される。そして、主軸20は、風力を受けたブレード30により発生する回転トルクを増速機40の入力軸へ伝達する。ブレード30は、主軸20の先端に設けられ、風力を回転トルクに変換して主軸20に伝達する。
【0024】
軸受60は、ナセル90内において固設され、主軸20を回転自在に支持する。軸受60は、転がり軸受によって構成され、たとえば、自動調芯ころ軸受や円すいころ軸受、円筒ころ軸受、玉軸受等によって構成される。なお、これらの軸受は、単列のものでも複列のものでもよい。
【0025】
振動センサ70は、ナセル90の内部の底面に固設される。そして、振動センサ70は、ナセル90の振動を検出し、その検出値を監視装置80へ出力する。
【0026】
増速機40は、主軸20と発電機50との間に設けられ、主軸20の回転速度を増速して発電機50へ出力する。一例として、増速機40は、遊星ギヤや中間軸、高速軸等を含む歯車増速機構によって構成される。なお、特に図示しないが、この増速機40内にも、複数の軸を回転自在に支持する複数の軸受が設けられている。発電機50は、増速機40の出力軸に接続され、増速機40から受ける回転トルクによって発電する。発電機50は、たとえば、誘導発電機によって構成される。なお、この発電機50内にも、ロータを回転自在に支持する軸受が設けられている。監視装置80は、ナセル90の内部に設けられ、ナセル90の振動の検出値を振動センサ70から受ける。
【0027】
[実施の形態1]
図3は、実施の形態1の振動センサ70(振動が無し)の動作を説明するための図である。図4は、実施の形態1の振動センサ70(振動が有り)の動作を説明するための図である。図3、図4を参照して、振動センサ70は、容器70aと、容器70a内に注入された水110と、ナセル内の容器70aの底面に固設する支柱101と、支柱101と回動可能に接続されたアーム104と、支柱101とアーム104との回転角を測定する測定部103と、アーム104の一端に固設され、水の表面上に浮くフロート105とを含む。
【0028】
振動センサ70は、支柱101とアーム104とが接続される回転ヒンジ102をさらに含む。回転ヒンジ102は、図示していないが、水面の微小な揺れによる計測ノイズ防止のための振動減衰部(たとえばスプリングやダンパーなど)を含む。
【0029】
ナセルの振動が無い状態(水平時)のときは、図3の示すように、アーム104と支柱101とのなす角度は90度となる。一方、ナセルの振動が生じている状態(傾斜時)のときは、図4に示すように、アーム104と支柱101とのなす角度は鋭角(または鈍角)となる。
【0030】
振動センサ70は、測定部103が測定した回転角を監視装置80に出力し、監視装置80は、この出力結果を用いて回転角の加速度を計算し、ナセル90の状態を判断する。
【0031】
なお、ここでは容器70aに注入された液体として水を用いて説明したが、水よりも粘性の高い液体(たとえば、油)を注入することにより、外部の高周波ノイズに対しての応答性を減少させることができる。
【0032】
また、測定部103として、回転角をデジタル出力できるエンコーダやアナログ出力できるポテンショメータなどを利用することができる。特に、ポテンショメータを使用することにより、エンコーダより高分解能な出力を得ることができる。
【0033】
実施の形態1で支柱101を容器の底面に固設したが、これに限らず、上面および側面に固設してもよい。この場合でも、アーム104と支柱101とのなす角度を測定部103によって測定することで、ナセル90の振動の状態を判断できる。
【0034】
このような構成をとることにより、ナセル90の振動を簡易にかつ安価で計測できる。また、この振動センサ70は、外部から加えられる衝撃にも強く、破損リスクも減少させることができる。
【0035】
[実施の形態2]
図5は、実施の形態2の振動センサ70A(振動が無し)の動作を説明するための図である。図6は、実施の形態2の振動センサ70A(振動が有り)の動作を説明するための図である。図5、図6を参照して、振動センサ70Aは、上述した振動センサ70の代わりに、ナセル90内部に固設される。振動センサ70Aは、振動センサ70と同様に、ナセル90の振動を検出し、その検出値を監視装置80へ出力する。
【0036】
振動センサ70Aは、ナセル90内に固設する支柱201と、支柱201と回動可能に接続されたアーム204と、支柱とアーム204との回転角を測定する測定部203と、アーム204の一端に固設されるウエイト(重り)205とを含む。
【0037】
振動センサ70Aは、支柱201とアーム204とが接続される回転ヒンジ202をさらに含む。回転ヒンジ202は、図示していないが、振り子動作による計測ノイズ防止のための振動減衰部(たとえばスプリングやダンパーなど)を含む。
【0038】
ナセル90の振動が無い状態(水平時)のときは、図5の示すように、アーム204と支柱201とのなす角度は90度となる。一方、ナセルの振動が生じている状態(傾斜時)のときは、図6に示すように、アーム204と支柱201とのなす角度は鋭角(または鈍角)となる。
【0039】
振動センサ70Aは、測定部203が測定した回転角を監視装置80に出力し、監視装置80は、この出力結果を用いて回転角の加速度を計算し、ナセル90の状態を判断する。
【0040】
ここで、測定部203として、回転角をデジタル出力できるエンコーダやアナログ出力できるポテンショメータなどを利用することができる。特に、ポテンショメータを使用することにより、エンコーダより高分解能な出力を得ることができる。
【0041】
実施の形態2で支柱201をナセル90内部の側面に固設したが、これに限らず、上面に固設してもよい。この場合でも、アーム204と支柱201とのなす角度を測定部203によって測定することで、ナセル90の振動の状態を判断できる。
【0042】
このような構成をとることにより、ナセル90の振動を簡易にかつ安価で計測できる。また、この振動センサ70Aは、外部から加えられる衝撃にも強く、破損リスクも減少させることができる。
【0043】
最後に、図等を用いて、実施の形態1,2を総括する。
本発明の実施の形態1、2の共通構成として、図2〜図6に示すように、風力発電装置の状態を監視する状態監視システムであって、風力発電装置10のナセル90内に設置され、ナセル90の振動を測定するための振動センサ70,70Aと、振動センサ70,70Aからナセル90の振動の状態を診断するための監視装置80(処理部)とを備え、振動センサ70,70Aは、ナセル90内に固設する支柱101,201(支持部)と、支柱101,201(支持部)と回動可能に接続されたアーム104,204(アーム部)と、支柱101,201(支持部)とアーム104,204(アーム部)との回転角を測定する測定部103,203とを含み、監視装置80(処理部)は、測定部103,203の出力に基づき、風力発電装置10の状態を監視する。
【0044】
好ましくは、監視装置80(処理部)は、測定部103,203の出力の時間変化によりナセル90の加速度を算出し、ナセル90の状態が正常か否かを判定する。
【0045】
さらに好ましくは、測定部103,203は、エンコーダまたはポテンショメータを含む。
【0046】
特に、本実施の形態1は、上述した共通構成に加え、図2〜図4に示すように、好ましくは、支柱101(支持部)は、水110(液体)が注入された容器に固設され、アーム104(アーム部)の一端には、水110(液体)の表面上に浮くフロート105が固設される。
【0047】
さらに好ましくは、水110(液体)は、粘性の高い水110(液体)を含む。
さらに好ましくは、振動センサ70は、支柱101(支持部)とアーム104(アーム部)とを接続する回転ヒンジ102をさらに含み、回転ヒンジ102は、水面の微小な揺れによる計測ノイズ防止のための振動減衰部を有する。
【0048】
次に、本実施の形態2は、上述した共通構成に加え、図2、図5、図6に示すように、支柱201(支持部)は、ナセル90内部に固設され、アーム204(アーム部)の一端には、ウエイト205(重り)が固設される。
【0049】
好ましくは、振動センサ70Aは、支柱201(支持部)とアーム204(アーム部)とを接続する回転ヒンジ202をさらに含み、回転ヒンジ202は、振り子動作による計測ノイズ防止のための振動減衰部を有する。
【0050】
さらに好ましくは、振動減衰部は、スプリングまたはダンパーを有する。
実施の形態1および実施の形態2の振動センサ70,70Aのような構成をとることにより、簡易かつ安価に風力発電装置10のナセル90の振動の状態を運用者は把握することができ、適切な対応をすることができる。
【0051】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
10 風力発電装置、20 主軸、30 ブレード、40 増速機、50 発電機、60 軸受、70,70A 振動センサ、70a 容器、80 監視装置、90 ナセル、100 タワー、101,201 支柱、102,202 回転ヒンジ、103,203 測定部、104,204 アーム、105 フロート、110 水、205 重り。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電装置の状態を監視する状態監視システムであって、
前記風力発電装置のナセル内に設置され、前記ナセルの振動を測定するための振動センサと、
前記振動センサから前記ナセルの振動の状態を診断するための処理部とを備え、
前記振動センサは、
前記ナセル内に固設する支持部と、
前記支持部と回動可能に接続されたアーム部と、
前記支持部と前記アーム部との回転角を測定する測定部とを含み、
前記処理部は、前記測定部の出力に基づき、前記風力発電装置の状態を監視する、状態監視システム。
【請求項2】
前記処理部は、前記測定部の出力の時間変化により前記ナセルの加速度を算出し、前記ナセルの状態が正常か否かを判定する、請求項1に記載の状態監視システム。
【請求項3】
前記測定部は、エンコーダまたはポテンショメータを含む、請求項1または請求項2に記載の状態監視システム。
【請求項4】
前記支持部は、液体が注入された容器に固設され、前記アーム部の一端には、前記液体の表面上に浮くフロートが固設される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の状態監視システム。
【請求項5】
前記液体は、粘性の高い液体を含む、請求項4に記載の状態監視システム。
【請求項6】
前記振動センサは、前記支持部と前記アーム部とを接続する回転ヒンジをさらに含み、
前記回転ヒンジは、水面の微小な揺れによる計測ノイズ防止のための振動減衰部を有する、請求項4または請求項5に記載の状態監視システム。
【請求項7】
前記支持部は、前記ナセル内部に固設され、前記アーム部の一端には、重りが固設される、請求項1または請求項2に記載の状態監視システム。
【請求項8】
前記振動センサは、前記支持部と前記アーム部とを接続する回転ヒンジをさらに含み、
前記回転ヒンジは、振り子動作による計測ノイズ防止のための振動減衰部を有する、請求項7に記載の状態監視システム。
【請求項9】
前記振動減衰部は、スプリングまたはダンパーを有する、請求項8に記載の状態監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−87732(P2013−87732A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230946(P2011−230946)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】