説明

風合いの優れたティシュペーパー

【課題】
嵩高感があり、強度的にも優れ、かつ柔軟な風合いを有し、しかも地合に優れ紙粉の少ないクレープ紙を提供することにある。
【解決手段】
一定範囲の繊維長及び繊維粗度を有する針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプを特定の範囲で配合し、この紙料に柔軟剤を添加した後、分散剤を添加することによって湿紙を形成しその後クレープ処理をすることを特徴とする嵩高で柔軟なクレープ紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフェイシャルティシュ、トイレットティシュー、ペーパータオル、ペーパーナプキン等のクレープ紙及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりティシュペーパーなどの嵩や柔軟性を高める方法としては、カチオン系界面活性剤をパルプスラリーに添加する方法が知られていた。代表的なものとしては四級アンモニウム塩、アミン塩などがあげられる。しかしながら、これらの薬品は界面活性剤固有の問題として、添加量が少ないとその効果が得がたく、また添加量が高すぎると親水基であるカチオン基がパルプ繊維表面に吸着し親油基が外側に向って配列するため、この親油基が繊維間の水素結合を阻害して著しい強度低下を惹起したり、ティシュペーパーにとって非常に重要な特性である吸水性を損なうという問題があった。また、カチオン系界面活性剤やアニオン性界面活性剤若しくはノニオン系界面活性剤をクレープ前の湿紙またはクレープ処理後の乾燥シートにスプレー塗布ないしは印刷方式による塗工方法もすでに知られているが、前述の方法と同じく界面活性剤の親水基・親油基に起因する固有の問題がある。
また、薬品を使用しないで柔軟性を高める方法としては小さな繊度を有する化学繊維を用いたり、同様の特性を有する非木材繊維を用いるやり方が知られているが、前者においては水素結合能力が無い為バインダーの添加が必要であったり、後者においては繊維自身が非常に高価という問題点があった。
さらに、一定範囲の繊維長や繊維粗度を有する木材パルプを厳選配合する方法も公知であるが十分な崇高さと柔軟性を得るには至っていない。
【0003】
【特許文献1】特開2004−44058
【特許文献2】特開2004−124314
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
嵩高感があり、強度的にも優れ、かつ柔軟な風合いを有し、しかも地合に優れ紙粉の少ないクレープ紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は針葉樹および広葉樹パルプからなる配合紙料に柔軟剤を内添し、抄紙時に分散剤を添加することにより作製された紙匹にクレープ処理を施してなることを特徴とする嵩高で柔軟なクレープ紙に係わる。
【0006】
また本発明は一定範囲の繊維長及び繊維粗度を有する針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプを特定の範囲で配合し、この紙料に柔軟剤を添加した後、分散剤を添加することによって湿紙を形成しその後クレープ処理をすることを特徴とする嵩高で柔軟なクレープ紙に係わる。
上記において針葉樹パルプは、重量平均繊維長が2.20mm〜3.50mmの範囲にあり、繊維100mあたりのmg数で示される繊維粗度が11.0〜20.0mg/100mの範囲にあり、300メッシュ以下の微細繊維量が10%以下のものであり、また広葉樹パルプは重量平均繊維長が0.70mm〜0.90mmの範囲にあり、繊維粗度が7.0〜13.0mg/100mの範囲にあり、300メッシュ以下の微細繊維量が10%以下のものであるものおよび針葉樹パルプと広葉樹パルプの配合率を80/20〜20/80の比に混合するものを含んでいる。
【0007】
上記において柔軟剤および分散剤以外に、湿潤紙力増強剤が添加されるもの、クレープ紙がフェイシャルティシュ、トイレットティシュー、ペーパータオル、ペーパーナプキン等のクレープ処理された嵩高感があり、かつ柔軟な風合いを有し、しかも地合に優れ紙粉の少ないクレープ紙であるものを含んでいる。
【0008】
また本発明は上記のクレープ紙の製造方法に係わる。
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討の結果、ある限定された材種からなる針葉樹並びに広葉樹パルプを配合し、これに柔軟剤及び分散剤を添加することで上記の目的のクレープ紙を得る事ができた。
本発明に用いられる針葉樹パルプは下記の特性を有するものである。
即ち、重量平均繊維長が2.20mm〜3.50mm、より好ましくは2.80mm〜3.30mmの範囲にあり、繊維100mあたりのmg数で示される繊維粗度が11.0〜20.0mg/100m、より好ましくは11.0〜17.0mg/100mの範囲にあり、300メッシュ以下の微細繊維量が10%以下のものである。これらの特性を有する代表的な針葉樹パルプとしてはブラックスプルース、ホワイトスプルースに代表されるトウヒ属(学名:Picea)カラマツ属(学名:Larix属)および一部のマツ属(学名:Pinus属)のいずれかを少なくとも50%以上原料として使用するものがある。針葉樹パルプにおいて繊維長及び繊維粗度が重要な理由としては、これらの値が大きすぎると紙層形成工程で繊維の分散が十分に行われ難くいわゆる地合形成がわるくなり紙匹に厚薄ムラが生じ外観上非常に不均一なものとなってしまう。
また、逆に値が小さすぎると繊維間の結合が難しくなり針葉樹パルプの重要な機能である強度発現に支障をきたす。300メッシュ以下の微細繊維は紙粉の発生要因となるためできる限り少ないことが好ましい。
同様に本発明で用いられる広葉樹パルプは重量平均繊維長が0.70mm〜0.90mm、より好ましくは0.75mm〜0.85mmの範囲にあり、繊維粗度が7.0〜13.0mg/100m、より好ましくは7.5〜11.0mg/100mの範囲にあり、300メッシュ以下の微細繊維量が10%以下のものである。これらの特性を有する代表的な広葉樹パルプとしてはEucalyptus grandis,E.macarthurii,E.fastigata,E.nites,E.globules,Acacia mangiumなどを少なくとも50%以上含むものがある。広葉樹パルプにおいても必要とされる特性は針葉樹とほぼ同じであるが、とりわけ繊維粗度が最終製品の表面性に大きく影響することからできる限り小さい値になることが望ましい。
これらの特性を有する針葉樹パルプと広葉樹パルプの配合率を80/20〜20/80、より好ましくは55/45〜30/70の比に混合する。
【0010】
この混合紙料にカチオン系柔軟剤を添加する。代表的なものとしては四級アンモニウム塩、アミン塩などがあげられる。添加量は有効成分として0.02〜2.0%、より好ましくは0.05〜1.0%の範囲である。柔軟剤はパルプ繊維同士の繊維間結合を阻害することでシートの嵩のアップや風合いの向上に寄与するのみならず、柔軟剤はその有するイオン性により特に表面積の大きい微細繊維に吸着しやすく、この微細繊維が比較的長い繊維に固着することで紙粉発生を抑えることが可能となる。
柔軟剤の添加量が少なすぎるとこれらの効果を得る事が難しく、また添加量が過剰になると著しい強度低下を惹起したり、繊維同士のイオン性に基因する反発が生じ微細繊維がシートから脱落し易くなり紙粉発生の原因となる。
また、できる限りヘッドボックスに近いところで、繊維の分散を良くする為の分散剤を0.05〜0.3%、より好ましくは0.075〜0.2%添加する。代表的なものとしてポリエチレンオキサイド(PEO)やポリアクリルアミド(PAM)などが上げられる。和紙の製造に用いられる粘材たとえばトロオアオイなどもかかる目的に使用することは可能である。これら薬品の作用としては水の粘度を上げることで分散した繊維が凝集することを抑制し良好な地合を得ることである。
これらの薬品を添加した紙料を長網式や丸網式やツインワイヤーあるいはクレセントフォーマー等の抄紙機にて紙匹を作成し、ヤンキードライヤーにてクレープ処理を施した後リールにて巻き取る。必要によっては、その後の工程で2〜4枚に重ねることもしばしば行われる。
フェイシャルティシュ、ペーパータオル、ペーパーナプキンにおいては上記の添加剤以外にも、ポリアミドエピクロロヒドリンに代表される湿潤紙力増強剤が添加されるのが一般的である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば嵩高感があり、かつ柔軟な風合いを有し、しかも紙粉の少ないクレープ紙を提供することができる。
しかもこれらのクレープ紙特性は針葉樹クラフトパルプおよび広葉樹クラフトパルプの配合率、各クラフトパルプの材種、繊維長、繊維粗度、微細繊維量を選択し、柔軟剤及び分散剤を添加することによって常法のクレープ紙製造方法によって得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の実施例および比較例を示すが、これは例示の目的で掲げたものでこれによって本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0013】
表1に示す一定範囲の繊維長及び繊維粗度を有する針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプを特定の範囲で配合し、この配合紙料に柔軟剤(四級アンモニウム塩、カチオン系柔軟剤)を添加した後、抄紙時に分散剤(ポリエチレンオキサイド(PEO))を添加することによって湿紙を形成し、その後常法に従ってクレープ処理をした。その結果を表1に示した。
また比較例として柔軟剤および分散剤を添加しないもの、繊維長および繊維粗度、微細繊維量が規定範囲外のものについても同様に実施しその結果を表1中に比較例1〜3として併記した。
【0014】
【表1】

【0015】
*1 5人のパネラーによる触感評価。評価は3段階(良い=3、普通=2、悪い=1)で行い、平均点で表示する。
*2 5人のパネラーによる目視評価。評価は3段階(良い=3、普通=2、悪い=1)で行い、平均点で表示する。
*3 1組のシートを黒い紙の上で10回振ったときに、紙の上に落下した紙粉量を目視にて判定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
針葉樹および広葉樹パルプからなる配合紙料に柔軟剤を内添し、抄紙時に分散剤を添加することにより作製された紙匹にクレープ処理を施してなることを特徴とする嵩高で柔軟なクレープ紙。
【請求項2】
一定範囲の繊維長及び繊維粗度を有する針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプを特定の範囲で配合し、この紙料に柔軟剤を添加した後、分散剤を添加することによって湿紙を形成しその後クレープ処理をすることを特徴とする嵩高で柔軟なクレープ紙。
【請求項3】
針葉樹パルプは、重量平均繊維長が2.20mm〜3.50mmの範囲にあり、繊維100mあたりのmg数で示される繊維粗度が11.0〜20.0mg/100mの範囲にあり、300メッシュ以下の微細繊維量が10%以下のものであり、また広葉樹パルプは重量平均繊維長が0.70mm〜0.90mmの範囲にあり、繊維粗度が7.0〜13.0mg/100mの範囲にあり、300メッシュ以下の微細繊維量が10%以下のものである請求項2記載のクレープ紙。
【請求項4】
針葉樹パルプと広葉樹パルプの配合率を80/20〜20/80の比に混合する請求項2または3記載のクレープ紙。
【請求項5】
柔軟剤および分散剤以外に、湿潤紙力増強剤が添加される請求項1から4までのいずれか1項記載のクレープ紙。
【請求項6】
クレープ紙がフェイシャルティシュ、トイレットティシュー、ペーパータオル、ペーパーナプキン等のクレープ処理された請求項1から5までのいずれか1項記載のクレープ紙。
【請求項7】
嵩高感があり、かつ柔軟な風合いを有し、しかも地合に優れ紙粉の少ないクレープ紙である請求項1から6までのいずれか1項記載のクレープ紙。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載のクレープ紙の製造方法。

【公開番号】特開2006−97191(P2006−97191A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−285833(P2004−285833)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000183462)株式会社クレシア (112)
【Fターム(参考)】