説明

風呂給湯装置

【課題】浴槽に注湯を行なっているときに湯の流量が変動しても浴槽内における銀イオン濃度の変化を小さくできる。
【解決手段】銀イオン発生装置は、浴槽へ湯を落とし込むための注湯路に設けられている。給湯経路に流れる湯量は注湯流量センサによって計測されている。定電流電源装置63は、銀電極に電流を流している電流オン状態と銀電極で電流を停止させている電流オフ状態とを交互に切替えると共に電流オン状態の時間T1を一定に保ち、注湯流量センサによって計測された湯の流量に応じて電流オフ状態の時間Tsを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀イオンを浴槽内の湯に溶出させて浴槽内の殺菌を行うための、銀イオン発生装置を備えた風呂給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
銀電極から銀イオンを溶出させて浴槽内の湯を殺菌し、浴槽内を清浄に保つ殺菌機能付きの風呂給湯装置が従来より提案されている(特許文献1)。このような風呂給湯装置においては、浴槽へ湯を落とし込む際に湯が通過する配管経路に銀イオン発生装置を設けておき、銀イオン発生装置内に銀イオンを溶出させながら銀イオン発生装置を通過させて浴槽に湯を落とし込む際に、銀イオンと共に湯を浴槽に落とし込んで浴槽内の湯に銀イオンを溶け込ませるようにしている。
【0003】
このような風呂給湯装置に用いられている銀イオン発生装置においては、銀電極間に直流電流を流して銀イオンを溶出させていると、銀イオンが溶出するだけでなく、銀電極の表面に塩素イオンや金属イオンが析出して銀電極の表面を覆ってしまう。銀電極の表面がこれらの不純物で覆われると、電解効率が低下して銀イオンの溶出が妨げられるという問題がある。
【0004】
このような問題を解消するためには、銀電極間に印加する電圧の極性を数秒〜数十秒の周期で連続的に反転させて銀電極間に交流電流を流すことにより、不純物が銀電極の表面に析出しにくくしている。この場合、一般に通水時間(浴槽への湯の落とし込み時間)αに比べて銀イオン発生装置の通電時間(銀イオン発生装置の運転時間)βの方が短いので、図1(a)に示すように、通水時間の始まりに合わせて通電を開始するか、図1(b)に示すように、通電時間の終わりに通電が終了するように調整して通電を行なっている。
【0005】
しかしながら、このような通電方法では、例えば給湯栓が開かれたときに高温の湯が吐出されるのを防ぐために通水と通電が中断されると、浴槽に溜まった湯の銀イオン濃度が目標値から大きくずれてしまうという問題があった。例えば、図1(a)に示すような通水及び通電方法であると、通水期間の初期に通水及び通電が中断した場合には、中断期間の割合は通電時間の方が大きくなるので、銀イオン濃度が低くなる。さらに、通水量については注湯流量センサで計測しておき不足水量を通水期間を延長して注水するようになっているので、銀イオン濃度はかなり低くなる。また、図1(b)に示すような通水及び通電方法であると、通水期間の終期に通水及び通電が中断したとすると、中断期間の割合は通電時間の方が大きくなるので、銀イオン濃度が低くなる。さらに、この場合も通水量については注湯流量センサで計測しておき不足水量を通水期間を延長して注水するようになっているので、銀イオン濃度はかなり低くなる。
【0006】
また、従来の風呂給湯装置では、始めに流量に応じて通電時間を演算し、通電時間中は連続的に電流を流していたので、通電時間中に流量が変動すると、銀イオン濃度が目標値から大きくずれることがあった。
【0007】
【特許文献1】特公平6−40859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記のような技術的課題に鑑みてなされたものであり、その第1の目的とするところは、銀電極に通電して銀イオンを溶出させながら注湯して銀イオンを含んだ湯を浴槽に溜めることのできる風呂給湯装置において、浴槽に注湯を行なっているときに通水及び通電が中断しても浴槽内における銀イオン濃度の変化を小さくできる風呂給湯装置を提供することにある。また、本発明の第2の目的とするところは、浴槽に落とし込まれる湯の流量や通水時間が変動しても浴槽内における銀イオン濃度の変化を小さくできる風呂給湯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の風呂給湯装置は、浴槽へ湯を落とし込むための給湯経路に、銀イオン発生装置と、当該給湯経路を流れる湯の流量を計測するための流量計測手段とを備えた風呂給湯装置であって、前記銀イオン発生装置は、銀イオンを水中に溶出させるための一対の電極を有する銀イオン電解槽と、前記電極間に電流を流すための電流供給源と、前記電流供給源の通電期間中において前記電流供給源を前記電極に電流を流している電流オン状態と前記電極で電流を停止している電流オフ状態とを交互に切替えると共に前記流量計測手段によって計測された湯の流量に応じて前記電流供給源の電流オン状態の時間と電流オフ状態の時間とのデューティー比を調整することのできる電流制御部とを有することを特徴としている。
【0010】
本発明の風呂給湯装置にあっては、電流供給源の通電期間中において電極に電流を流している電流オン状態と電極で電流を停止している電流オフ状態とを交互に切替えると共に流量計測手段によって計測された湯の流量に応じて電流供給源の電流オン状態の時間長さと電流オフ状態の時間長さとのデューティー比を調整することができるので、通電及び通水を行なっているときに給湯経路の流量が大きく変動した場合でも、浴槽内の湯の銀イオン濃度が目標値から大きくずれることがなくなる。
【0011】
本発明の実施態様においては、前記電流制御部が、通電期間中においては、前記電流供給源を電流を停止している電流オフ時間を間に挟んで一方の向きに電流を流す電流オン状態と反対向きに電流を流す電流オン状態とを交互に繰り返している。かかる実施態様によれば、電極の表面に不純物等が析出して銀イオン発生装置の電解効率が低下するのを防止する効果がある。
【0012】
また、本発明の風呂給湯装置では、電流供給源の通電期間中において電極に電流を流している電流オン状態と電極で電流を停止している電流オフ状態とを交互に切り替えて断続的に電流を流しているので、浴槽に湯を落とし込むための通水時間と、銀イオン発生装置により銀イオンを溶出させている通電時間とを等しくすることができる。従って、銀イオンを含んだ湯を浴槽に落とし込んでいるときに通電及び通水が停止したとしても、浴槽内の湯の銀イオン濃度が目標値から大きく変化しにくくなる。また、通水及び通電が一時中断された場合に、通水時間が延長されて不足水量が浴槽内に供給された場合でも、それに伴って通電時間も延長されるので、浴槽内の湯の銀イオン濃度が目標値から大きく変化しにくくなる。なお、通水時間と通電時間は実質的に同じになればよいので、必ずしも時間で通水時間と通電時間とを管理しなければならないということはなく、通水終了と同時に通電も終了するようになっていればよい。
【0013】
また、本発明の別な実施態様においては、前記電流供給源から供給される電流は、いずれの電流オン状態においても同じ大きさとなっているので、電流供給源の構成を簡略にすることができる。
【0014】
電流オン状態の時間と電流オフ状態の時間とのデューティー比を調整する方法としては、電流オン状態の時間を一定に保って電流オフ状態の時間を調整してもよく、電流オフ状態の時間を一定に保って電流オン状態に時間を調整してもよい、電流オン状態の時間と電流オフ状態の時間とを調整してもよい。特に、電流オフ時間長さを変化させる場合には、通電時間中における電流オン状態の時間をT1、Kを目標とする銀イオン濃度Coに対する銀イオン濃度の最大値Cmaxの比(つまり、K=Cmax/Co)、Qmaxを機器において可能な最大流量、Qを調整時のリアルタイムの流量としたとき、前記電流オン状態の後の電流オフ状態の時間Tsを、
Ts=T1×[K×(Qmax/Q)−1]
により定めて調整すればよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施例を図面に従って詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図2は、本発明の実施例1による風呂給湯装置101を示す全体構成図である。この風呂給湯装置101は、新設若しくは既設の浴槽201のバスアダプター202に接続されている。この風呂給湯装置101は、1缶2水路方式となっており、一つの缶体14内に給湯回路11の熱交換器22、追い焚き回路13の追い焚き用熱交換器41、燃焼バーナ23が納められている。そして、1台の燃焼バーナ23の燃焼熱で熱交換器22に流れる水と追い焚き用熱交換器41に流れる水を同時に加熱できるようになっている。
【0017】
さらに、風呂給湯装置101は、給湯回路11と追い焚き回路13を連結する注湯回路12を備えており、注湯回路12を介して給湯回路11から追い焚き回路13へ湯を送り込み、追い焚き回路13から浴槽201内へ注湯を行えるようになっている。銀イオン発生装置61は、この注湯回路12に設けられている。
【0018】
給湯回路11においては、熱交換器22の入水側に給水路21が接続され、熱交換器22の出湯側に出湯路24が接続されている。給水路21と出湯路24の間には、熱交換器23をバイパスするようにしてバイパス路26が接続されており、バイパス路26にはバイパス制御弁27が設けられている。水道から給水路21に入水し給水路21を流れる水は、図2に破線矢印で示すように、その一部がバイパス路26に流れ、残りの水が熱交換器22へ送られる。熱交換器22へ送られた水は、熱交換器22を通過する際に燃焼バーナ23で加熱され、加熱された湯は熱交換器22から出湯路24へ送り出される。熱交換器22で加熱された湯とバイパス路26を通過した水は、出湯路24で混合された後、出湯路24を流れて下流側管端に設けられた給湯栓25から出湯される。バイパス制御弁27は、その開度を調節することにより、熱交換器22で加熱された湯とバイパス路26を通過した水との混合比を調整し、給湯栓25から出湯される湯の温度(ミキシング温度)を調整する。
【0019】
上記給水路21には、上流側から順に、熱交換器22を通過する水の流量を計測するための流量センサ28と、熱交換器22への入水温度を計測するための入水温度センサ29が設けられている。出湯路24における熱交換器22の出湯口近傍には、熱交換器22から出湯される湯の温度を計測するための出湯温度センサ30(缶体温度センサ)が設けられ、出湯路24のバイパス路26接続位置よりも下流側には、熱交換器22で加熱された湯とバイパス路26を通過した水とのミキシング温度を計測するためのミキシング温度センサ31が設けられている。そして、コントローラ33は、これらのセンサの計測値を読み込み、出湯路24へ目的とする湯温の湯が供給されるように燃焼バーナ23の燃焼号数やバイパス制御弁27の開度を制御する。
【0020】
追い焚き回路13は、追い焚き用熱交換器41を備えており、追い焚き用熱交換器41の出湯口と浴槽201のバスアダプター202の吐出口とは追い焚き用往き路42で接続され、追い焚き用熱交換器41の入水口と浴槽201のバスアダプター202の吸込口とは追い焚き用戻り路43で接続されている。なお、追い焚き用往き路42及び追い焚き用戻り路43は、風呂給湯装置101内に予め配設されて収容された配管部分と、風呂給湯装置101と浴槽201との間において現場で施工された配管部分とからなっている。さらに、循環ポンプ44の吐出側と追い焚き用熱交換器41との間には、追い焚き用戻り路43内の湯温度を計測するための風呂戻り温度センサ45と、追い焚き用戻り路43内における流水の有無を検知するための水流スイッチ46とが設けられている。
【0021】
浴槽201の湯を追い焚きする場合には、循環ポンプ44を作動させると、図2に1点鎖線の矢印で示すように浴槽201内の湯がバスアダプター202の吸込口から追い焚き用戻り路43内に吸引され、追い焚き用熱交換器41で加熱されて追い焚き用往き路42へ送り出され、バスアダプター202の吐出口から浴槽201へ吐出される。よって、浴槽201内の湯が追い焚き回路13内を循環することで加熱され、浴槽201内の湯が所定温度に達するまで追い焚きされて湯温が上昇させられる。
【0022】
上記燃焼バーナ23、送風ファン32、元ガス電磁弁及び電磁比例弁等は、燃焼系を構成している。すなわち、給湯回路11における給湯動作時や追い焚き回路13における追い焚き運転時において燃焼バーナ23が燃焼しているときには、燃焼バーナ23には送風ファン32からの燃焼用空気が供給される一方、元ガス電磁弁や電磁弁を備えたガス供給管から燃料ガスが供給されるようになっている。そして、コントローラ33は、この燃焼系を流量センサ28、入水温度センサ29、出湯温度センサ30、あるいは風呂戻り温度センサ45等の各検出値に基づいて制御することにより、燃焼作動制御を行なう。
【0023】
注湯回路12は、給湯回路11の出湯路24から分岐して給湯回路11で加熱された湯を追い焚き回路13の追い焚き用戻り路43に注湯して湯張りするための注湯路51と、給湯回路11側が停電等に起因する断水等の発生により負圧状態に陥るときに注湯路51を大気開放する負圧破壊弁52とを備えている。注湯路51は、その上流端が出湯路24のバイパス路26との接続部分よりも下流側から分岐し、下流端が追い焚き用戻り路43の循環ポンプ44吸込み側に位置する合流点53で追い焚き用戻り路43に接続されている。注湯路51には、注湯流量を検出する注湯流量センサ55と、開閉制御により注湯実行又は停止の切換を行なう注湯弁54と、給湯回路11側への逆流を防止するための2段配置の逆止弁56、57とが設けられている。しかして、注湯弁54が開かれると、図2において実線矢印で示すように、出湯路24内の湯が水道圧に基づき注湯路51を通して合流点53から追い焚き回路13の追い焚き用戻り路43に流入し、以後、合流点53から追い焚き用戻り路43内を追い焚き循環動作時の循環流の流れ方向とは逆向きに流れて、バスアダプター202から浴槽201内に注湯され、浴槽201に湯が溜められる。
【0024】
銀イオン発生装置61は、注湯路51における逆止弁56、57よりも下流側に設けられている。銀イオン発生装置61は、銀イオンを発生させるための銀イオン電解槽62と、銀イオン電解槽62に直流電圧を印加するための定電流電源装置63とを備えている。銀イオン発生装置61においては、定電流電源装置63によって銀イオン電解槽62の銀電極間に電流を流すことにより、銀イオン電解槽62内に銀イオンを発生させることができる。
【0025】
この銀イオン発生装置61の構成を図3により詳述する。銀イオン電解槽62は、例えばフロートタンクに銀電解による銀イオン発生手段を組み込んだものであって、内部には一対の銀電極64、65が対向配置されている。銀イオン電解槽62の側面においては、上端部に流入口66が設けられ、流入口66の直下において下端部に流出口67が設けられている。流入口66には給湯回路11につながった注湯路51が接続され、流出口67には追い焚き回路13につながった注湯路51が接続されている。従って、流入口66から流入した湯は銀イオン電解槽62内でUターンするようにして流出口67から流出する。銀イオン電解槽62内に流入した湯は銀イオン電解槽62内でスムーズに流れないために、銀イオン電解槽62内で滞留しながら通過する。そのため注湯路51に湯が流れている場合には、電極64、65は銀イオン電解槽62内に滞留した湯に浸かることになる。一方、注湯弁54を閉じて注湯路51に湯が流れなくなると、銀イオン電解槽62内の銀イオンを含んだ湯は銀イオン電解槽62内に残ることなくすべて排出される。
【0026】
定電流電源装置63は、交流電源68(商用交流電源)、漏電ブレーカ69、開閉スイッチ70、電圧変換用のトランス71、トランス71からの交流出力を整流する整流回路72、整流回路72からの直流出力を平滑化すると共に出力電流値を制御する定電流制御部73、出力の極性(正負)を切替えるための極性切換回路74によって構成されている。この定電流電源装置63においては、通電制御部77によって定められた一定値の電流が、極性切換回路74によって順方向と逆方向に選択的に流される。その電流値は、印加する電圧が一定値以上になるように定められる。また、通電時間は、注湯流量センサ55から得られた水量と、実際に銀電極64、65間を流れている電流値から計算される。定電流電源装置63の一対の出力は、それぞれ銀電極64、65に接続されている。定電流電源装置63の出力間には電圧計測回路75(電圧計)が接続されており、電極64、65間に印加されている電圧Vの値を計測できるようになっている。また、定電流電源装置63の一方の出力と銀電極65との間には直列に電流計測回路76(直流計)が挿入されており、電極64、65間に流れる電流Iの値を計測できるようになっている。
【0027】
この銀イオン発生装置61は、コントローラ33及び通電制御部77によって運転制御されている。図2に示すように、コントローラ33にはリモコン34がつながっている。リモコン34には、運転スイッチ35、湯落とし込みスイッチ36、追い焚き運転スイッチ37や表示部38などが設けられており、リモコン34を操作することによって風呂給湯装置101を運転状態にしたり、湯落とし込み運転や追い焚き運転を開始させることができる。
【0028】
図4は通電制御部77の構成と通電制御部77に関連した構成を示すブロック図である。通電制御部77は、CPUにより構成されていて通電制御部77全体と定電流電源装置63を制御する制御部78、電解電流値設定部79、電流オン時間設定部80、電流オフ時間設定部81、記憶部82によって構成されている。
【0029】
電解電流値設定部79は、図5に示すフローに従って銀電極64、65間に通電させる電解電流値I1(ピーク値)を算出する働きをする。電解電流値設定部79により行なわれる処理を図5に従って説明すれば、以下の通りである。まず、電解電流値I1を求めるための処理が開始すると、注湯弁54をいっぱいに開いて注湯路51に最大流量Qmaxの湯を通水させる(ステップS101)。最大流量Qmaxの湯が流れたら、定電流電源装置63により出力可能な最大電圧を銀電極64、65間に印加して銀イオン発生装置61に通電を開始する(ステップS102)。最大電圧で通電したら、電圧計測回路75及び電流計測回路76によって電圧と電流の値を読み取る(ステップS103、S104)。そして、この電圧と電流の値が定電流電源装置63の定格や銀イオン電解槽62の使用制限値内であるかどうか判定する(ステップS105)。判定の結果、電圧も電流も制限内であれば、そのときの電電流値を電解電流値I1として決定する(ステップS107)。いずれか一方でも制限を超えている場合には、定電流電源装置63から出力されている電圧を一定値だけ下げた(ステップS106)後、再び電圧と電流を計測して制限内かどうか判定し(ステップS103〜105)、制限内になったときの電流値を電解電流値I1として決定する(ステップS107)。電解電流値I1が決定したら、定電流電源装置63をオフにして通電を停止し、注湯弁54を閉じて通水を停止させる。こうして電解電流値設定部79によって決定された電解電流値I1は、記憶部82に記憶される。
【0030】
電流オン時間設定部80は、通電期間中において定電流電源装置63における電流オン状態の時間(以下、電流オン時間という。)T1と効率Kを算出する。ここで、電流オン時間とは、通電時間中において、連続して銀電極64、65間に一方方向の電流が流れている時間の長さである。また、効率Kとは、浴槽内の湯の銀イオン濃度の目標値COと最大濃度Cmaxとの比Cmax/Coのことをいう。電流オン時間設定部80は、最大流量Qmaxすなわち銀イオン電解槽62に流入する可能な限り最も大きな流量の湯が注湯路51に流れている状態で、通水時間αと通電時間βとを等しくして(通電時間100%、デューティー比100%)、上記のようにして電解電流値設定部79で決定され記憶部82に記憶されている電解電流値I1で矩形波状の交流電流を銀電極64、65間に連続的に流し、浴槽201内に溜められている湯の銀イオン濃度を計測する。このとき、図6(a)(b)(c)に示すように、通水時間α及び通電時間を一定に保ったままで、電流の周期2×T(正の電流オン時間=負の電流オン時間=T)を徐々に変化させて各銀イオン濃度を計測する。この計測結果より得られた最大銀イオン濃度をCmaxとすれば、効率Kは目的とする最適な銀イオン濃度Coとの比として、K=Cmax/Coとして求められる。また、最大銀イオン濃度が得られたときの周期2×T1より、銀イオン電解槽62に通電する際に用いられる電流オン時間T1が決定され、この電流オン時間T1は記憶部82に記憶される。なお、目的とする銀イオン濃度Coは、予め決められていて記憶部82に記憶されていてもよく、ユーザーによりリモコン34で設定されていてもよい。
【0031】
図7は、電流オン時間設定部80により効率Kと電流オン時間T1を決定する処理を具体的に表わしたフロー図である。電流オン時間T1と効率Kを決定するための処理が開始すると、電流オン時間設定部80は、調整可能な範囲内で最も短い電流の周期を電流周期2×Tの初期値に設定する(ステップS201)。最短の電流周期2×Tを初期値に設定した後、注湯弁54をいっぱいに開いて最大流量Qmaxの湯を注湯路51に通水開始するとともに(ステップS202)、記憶部82に記憶されている電解電流値I1と周期2×Tの初期値を用いて、デューティー比100%の矩形波状交流電流を銀電極64、65間に銀イオンの電解を開始する(ステップS203)。
【0032】
ついで、注湯流量センサ55で監視している落とし込み湯量が所定値に達すると、あるいは落とし込み時間が所定値に達すると(ステップS204)、定電流電源装置63をオフにして通電を停止し(ステップS205)、注湯弁54を閉じて通水を停止し(ステップS206)、濃度測定手段83によって銀イオン電解槽62を通過する湯の銀イオン濃度を測定する(ステップS207)。銀イオン濃度の測定が1回目であれば(ステップS208でYesの場合)、電流周期2×Tを所定時間ΔTだけ増加させて(ステップS209)、再度ステップS202〜S207の処理を行って銀イオン濃度を測定する。こうして、銀イオン濃度の測定値が前回よりも減少するまで、ステップS202〜S209の処理を複数回繰り返す(ステップS210)。
【0033】
銀イオン濃度が前回よりも増加しているうちはステップS202〜S10の処理を繰り返し、銀イオン濃度が前回よりも減少したら当該処理を終了するので、処理終了時の1回前の処理時の銀イオン濃度が最大銀イオン濃度Cmaxとなる。よって、電流オン時間設定部80は、記憶部82に記憶されている銀イオン濃度の目標値Coを用いて効率K=Cmax/Coを求める(ステップS211)。また、銀イオン濃度が最大となったときの周期(最後から2番目の周期)2×T1から銀イオン発生装置運転用の電流オン時間T1を求め(ステップS212)、この効率Kと電流オン時間T1を記憶部82に記憶させる。
【0034】
電解電流値I1、効率K、電流オン時間T1の値は、風呂給湯装置101の工場出荷時に予め記憶部82に記憶させられていてもよく、あるいは風呂給湯装置101を現場に設置する際に試験運転を行なって記憶部82に記憶させるようにしてもよい。
【0035】
風呂給湯装置101は、設置後の湯落とし込み時には、上記のようにして予め設定され記憶部82に記憶された電解電流値I1、効率K及び電流オン時間T1の値を用いて銀イオンを溶出させる。すなわち、通電制御部77の電流オフ時間設定部81は、記憶部82から電解電流値I1、効率K及び電流オン時間T1の値と、予め設定されている銀イオン濃度の目標値Coを読み出す。また、注湯流量センサ55によって測定されている流量Q(リアルタイムの流量でQ<Qmax)を読み取り、次式によって電流オフ時間Tsを決定する。
Ts=T1×[K×(Qmax/Q)−1]
【0036】
そして、浴槽201への湯の落とし込み運転時には、定電流電源装置63から電解電流値I1の電流を出力させるようにしておき、図8に示すように、湯落とし込み運転開始の始めの一定時間(例えば、T1)の間は高い濃度の銀が溶出するのを避けるため、通電しないでおく。この一定時間が経過すると、制御部78及び電流オフ時間設定部81は、所定の電流オン時間T1のあいだ銀電極64、65間に正方向に電解電流値I1の電流を流して銀イオンを溶出させ、電流オフ時間Tsを演算してそのあいだ電流を停止させて銀の溶出を止め、次の電流オン時間T1のあいだ銀電極64、65間に負方向に電解電流値I1の電流を流して銀イオンを溶出させ、電流オフ時間Tsを演算してそのあいだ電流を停止させて銀の溶出を止めるというサイクルを通電時間(=通水時間)が終了するまで繰り返して浴槽201内に銀イオンを溶出させる。図9は流量Q=Qmax、効率K=2とした場合の銀イオン電解槽62を通過する湯の銀イオン濃度の変化を表わしており、次第に銀イオン濃度が目標値に近づいていって安定する様子が分かる。
【0037】
このようにして湯落とし込み運転時における電流量を制御すれば、注湯路51に流れている流量Qに応じて銀イオン濃度Coが得られるように電流オフ時間Tsが調整され、電流量のデューティー比が変化するので、流量が変動しても銀イオン濃度が目標値Coから大きくずれることがない。
【0038】
また、このような方法によれば、電解電流値I1を変更することなく、電流オン時間T1を
Ts=T1×[K×(Co/C)×(Qmax/Q)−1]
に変更することで、簡単に銀イオン濃度の目標値をCに変更することができる。
【0039】
また、このような方法によれば、通電時間を通水期間と等しくすることができる。よって、図10(a)(b)に示すように、通電及び通水を行なっているときに通水及び通電が中断しても銀イオン濃度が目標値から大きくずれることがない。さらに、注水が中断した後不足水量を補給するために通水時間が延長されてもそれに伴って通電時間も延長するので、この場合にも、銀イオン濃度が目標値から大きくずれることがない。
【0040】
よって、本発明の風呂給湯装置101によれば、浴槽201に落とし込まれる湯の銀イオン濃度を精度良くコントロールすることが可能になる。
【0041】
つぎに図11及び図12のフロー図にしたがって、風呂給湯装置101の湯落とし込み運転(浴槽201内への湯張り運転)の動作について説明する(中断や延長の動作は省略している。)。
【0042】
リモコン34の湯落とし込みスイッチ36を押して湯落とし込み運転を開始すると、注湯弁54が所定流量に開かれて熱交換器22で加熱された湯が注湯路51に通水開始される(ステップS301)。通水が開始すると同時に制御部78内のタイマーによって通水時間αのカウントが開始される(ステップS302)。また、運転初期には電流オフのまま待機させるため、定電流電源装置63をオフにして電流を停止させておき(ステップS303)、初期待機時間のカウントを開始する(ステップS304)。初期待機時間(例えば、電流オン時間T1と等しい時間)が経過したら(ステップS305でYes)、定電流電源装置63をオンにして銀イオン電解槽62の銀電極64、65に電解電流値I1の電流を流し(ステップS306)、同時に電流オン時間T1のカウントを開始し(ステップS307)、電流オン時間T1が経過するまで電解電流値I1の電流を流し続ける(ステップS308)。
【0043】
電流オン時間T1が経過したら(ステップS308でYes)、注湯流量センサ55によって注湯路51に流れている流量Qを測定して測定値を読み込む(ステップS309)。また、記憶部82から銀イオン濃度の目標値Co、効率K、最大流量Qmaxなどを読み出し、電流オフ時間設定部81により電流オフ時間Tsを演算する(ステップS310)。電流オフ時間Tsが演算されたら、定電流電源装置63をオフにして銀電極64、65間に流れる電流を停止させ(ステップS311)、電流オフ時間Tsのカウントを開始し(ステップS312)、電流オフ時間Tsが経過するまで待機する(ステップS313)。
【0044】
つぎに、通水時間αが経過したかどうか判定し(ステップS314)、通水時間αが経過していない場合には、定電流電源装置63の出力の極性を切替える(ステップS315)。そして、ステップS306に戻って再び電流オン時間T1のあいだ電流を流し(ステップS306〜S308)、電流オフ時間Tsを演算して電流オフ時間Tsのあいだ電流を停止させる(ステップS309〜S313)。こうして、ステップS315で極性を切り換えながら、電流のオン、オフを繰り返すことにより、図8に示した電流波形のようにして通電が行なわれ、銀イオン電解槽62を通過する湯に銀イオンが溶出させられる。
【0045】
そして、ステップS314において通水時間αが経過したと判断されると、湯張り運転を終了する(ステップS316)。なお、ステップS302、S314では、通水時間をタイマーにより時間管理したが、流量管理してもよい。すなわち、注湯流量センサ55で計測している流量の積算値が、所定値に達したときに通水時間が終了したと判断するようにしてもよい。また、上記のフロー図では、通電時間は管理されていないが、通水時間が経過したときに湯張り運転が終了するので、実質的に通電時間は通水時間と等しくなる。
【0046】
なお、図示しないが、定電流電源装置63から出力される電流は、図8のように電流オン時の電流方向を交互に切替える必要はなく、一定方向にだけ流れる(直流電流)ようになっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1(a)(b)はいずれも、従来例の銀イオン発生装置における通電方式を説明する図である。
【図2】図2は、本発明の実施例1による風呂給湯装置の構成を示す図である。
【図3】図3は、実施例1の風呂給湯装置に用いられている銀イオン発生装置の構成を示す概略図である。
【図4】図4は、実施例1の通電制御部及びそれに関連する部分の構成を示す機能ブロック図である。
【図5】図5は、電解電流値設定部による電解電流I1の値を設定するための処理を説明するフロー図である。
【図6】図6(a)(b)及び(c)は、電流オン時間設定部による効率Kと電流オン時間T1を設定する方法を説明する図である。
【図7】図7は、電流オン時間設定部による効率Kと電流オン時間T1の値を設定するための処理を説明するフロー図である。
【図8】図8は、湯落とし込み時(銀イオン溶解時)において銀イオン発生装置に通電されている電流の波形を表わした図である。
【図9】図9は、図8に表わされた電流が銀イオン発生装置に流れているときの銀イオン電解槽内における銀イオン濃度の時間変化を示す図である。
【図10】図10(a)(b)は、本発明の風呂給湯装置の作用効果を説明するための図である。
【図11】図11は、湯落とし込み時の動作を表わしたフロー図である。
【図12】図12は、図11の続図である。
【符号の説明】
【0048】
11 給湯回路
12 注湯回路
13 追い焚き回路
22 熱交換器
23 燃焼バーナ
33 コントローラ
34 リモコン
42 追い焚き用往き路
43 追い焚き用戻り路
44 循環ポンプ
51 注湯路
54 注湯弁
55 注湯流量センサ
61 銀イオン発生装置
62 銀イオン電解槽
63 定電流電源装置
64、65 銀電極
75 電圧計測回路
76 電流計測回路
77 通電制御部
78 制御部
79 電解電流値設定部
80 電流オン時間設定部
81 電流オフ時間設定部
82 記憶部
83 濃度測定手段
101 風呂給湯装置
201 浴槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽へ湯を落とし込むための給湯経路に、銀イオン発生装置と、当該給湯経路を流れる湯の流量を計測するための流量計測手段とを備えた風呂給湯装置であって、
前記銀イオン発生装置は、銀イオンを水中に溶出させるための一対の電極を有する銀イオン電解槽と、前記電極間に電流を流すための電流供給源と、前記電流供給源の通電期間中において前記電流供給源を前記電極に電流を流している電流オン状態と前記電極で電流を停止させている電流オフ状態とを交互に切替えると共に前記流量計測手段によって計測された湯の流量に応じて前記電流供給源の電流オン状態の時間と電流オフ状態の時間とのデューティー比を調整することのできる電流制御部とを有することを特徴とする風呂給湯装置。
【請求項2】
前記電流制御部は、通電期間中においては、前記電流供給源を電流を停止させている電流オフ時間を間に挟んで一方の向きに電流を流す電流オン状態と反対向きに電流を流す電流オン状態とを交互に繰り返すことを特徴とする、請求項1に記載の風呂給湯装置。
【請求項3】
浴槽に湯を落とし込むための通水時間と、前記銀イオン発生装置により銀イオンを溶出させている通電時間とを等しくしたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の風呂給湯装置。
【請求項4】
前記電流供給源から供給される電流は、いずれの電流オン状態においても同じ大きさであることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載の風呂給湯装置。
【請求項5】
通電時間中における電流オン状態の時間をT1、Kを目標とする銀イオン濃度Coに対する銀イオン濃度の最大値Cmaxの比、Qmaxを可能な最大流量、Qをリアルタイムの流量としたとき、前記電流オン状態の後の電流オフ状態の時間Tsを、
Ts=T1×[K×(Qmax/Q)−1]
により定めるようにしたことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の風呂給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−185419(P2007−185419A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7233(P2006−7233)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】