説明

風味良好な発芽処理豆類及びそれを加工原料とした豆類加工食品並びにそれらを含有する食品

発芽率が10〜100%の発芽処理豆類を用いることで、豆類中のγ−アミノ酪酸含量とイソフラボン含量の質量比を一定範囲の値とし、場合によっては豆類固形分100g当たりのγ−アミノ酪酸含量を一定範囲の値とし、豆類の栄養価を高め、風味の改善を図る。また、この発芽処理豆類を豆類加工食品の加工原料として用いることにより、豆類加工食品の栄養価を高め、風味の改善を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、栄養価に富み、風味良好な発芽処理豆類及びそれを原料とした豆類加工食品並びにそれらを含有する食品に関わる、特に、豆類中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比及びγ−アミノ酪酸含量を特定の値とした栄養価に富み、風味良好な発芽処理豆類及びそれを用いた豆類加工食品並びにそれらを用いた食品に関わる。
【背景技術】
豆類は主に豆科植物の総称で、豆科植物は寒帯から熱帯まで広く世界中に分布していて、世界に600ほどの属と12000位の種類がある大きな科で草木から高木までいろいろであり、つる性のものも乏しくない。豆類のなかでも種子を利用する作物としては大豆、インゲン豆、アズキ、ナンキン豆、ソラ豆、エンドウ豆などがあり、主として利用される個所は子葉の部分であって、炭水化物、蛋白質、脂肪などの栄養価に富むので古くからの食用として利用されていた。
最近では、発芽玄米に代表されるように、発芽野菜(スプラウト)類には健康に良い成分が多く含まれているという事が分かってきており、健康志向の人たちを中心にして食品の新しいトレンドになってきている。中でも発芽玄米については広く知られており、発芽させることによりγ−アミノ酪酸が増え、糖化酵素の働きにより甘味成分が増すことが知られている(大海 淳著、「発芽玄米のすべて」、総合労働研究所、2001年4月、P119−127、P161−165)。
このγ−アミノ酪酸は、動植物界に広く分布しているアミノ酸の一種であり、動物の脳髄に存在し、神経の主要な抑制伝達物質として、脳の血流を活発にし、脳への酸素供給量を増加させ、脳細胞の代謝機能を促進させ、脳卒中後後遺症などによる頭痛などの症状の改善や,延髄の血管運動中枢に作用して血圧を低下させる作用などが認められる物質である。また、イソフラボンは主に大豆に含まれる女性ホルモンに似た働きをするフラボノイドで、骨粗鬆症、更年期障害等の予防効果について多く報告されている。
一方で、これらの栄養成分は豆類の風味にも影響している。γ−アミノ酪酸はアミノ酸の一種で呈味性があり、その含量により他のアミノ酸の旨味と関連して全体の旨味のバランスに影響を及ぼす。また、イソフラボンは苦味を有しており風味の点では好ましい成分ではない。そして、このイソフラボンの苦味による豆類の風味の低下を改善する検討はこれまでされていなかった。
とりわけ豆類の中でも特に大豆に関しては、畑の肉ともいわれ、たん白質が豊富であり、また必須脂肪酸を含む大豆油も多く含まれている。さらに最近では、大豆たん白の心臓病疾患のリスク低減作用、コレステロール低下作用等が科学的に立証され、その他の栄養素として、大豆イソフラボンが骨粗しょう症予防作用等も研究されている。そして、大豆を原料とした大豆加工食品は、味噌、納豆、豆腐、豆乳等のように伝統的食品として古くから日本の食生活のなかに存在していた。一方、豆乳においては、1980年代に豆乳ブームといわれるくらい消費量が伸びたが、その独特の臭い、渋味などが原因で消費量が減ってしまった。しかし最近では、食事と健康の意識の高まりに加えて、狂牛病の影響から再び豆乳飲料市場が拡大している。
これまで、ビタミンCを豊富にさせて消化吸収をよくした豆乳を得るために、発根した大豆を用いた豆乳の製造が開発され、また、グルタミン酸やショ糖を増やして呈味性を改善するために、特定条件下での発芽処理大豆を原料とした大豆加工食品の製造が開発されてきた(特開昭59−17947号公報、特開平11−123060号公報)。しかし、昨今では様々な栄養素の情報があり、人々の栄養素に対する期待が大きくなっている。また、人々のおいしさへの欲求は絶えることが無く、良い風味への追求には終わりがないと思われる。よって、従来の方法で栄養強化及び風味を改善したものにはさらなる改善を求める余地があり、我々は、ビタミンC、グルタミン酸、ショ糖以外の視点でさらなる栄養強化や風味改善を目指した。
また、豆の発芽処理を施してはいるが、豆類表皮から芽又は根が出ていない状態の豆を原料に用いることで発芽処理原料大豆の風味改善が図られている(特開平11−123060号公報)。しかし、豆類表皮から芽又は根が出ていない状態の豆を用いても渋味、苦味の改善はなされないことから、本発明では発芽率を一定範囲になるように発芽処理を施すことで栄養強化や風味改善を目指した。
また、大豆中のγ−アミノ酪酸含量を増加させる方法や(特開平11−151072号公報)、豆腐の湿重量100g当たりのγ−アミノ酪含量が10mg以上である豆腐も開示されているが(特開2002−45138号公報)、γ−アミノ酪酸含量を単に増加させるだけでは、一部の呈味成分が増すだけで全体の風味の改善にはならない。γ−アミノ酪酸含量と苦味成分であるイソフラボン含量とを調整することによる大豆の風味改善についてはまったく検討されていなかった。
本発明は、上記した従来技術の欠点を解消するためになされたものであって、その目的は、発芽処理をすることによって、豆類中のγ−アミノ酪酸含量とイソフラボン含量の質量比を一定範囲の値とし、場合によっては豆類中のγ−アミノ酪酸含量も一定範囲の値とすることで、豆類の栄養価を高め、風味の改善を図ることにある。
また、他の目的は、豆類中のγ−アミノ酪酸含量とイソフラボン含量の質量比を一定範囲の値とし、場合によっては豆類中のγ−アミノ酪酸含量も一定範囲の値とした豆類を豆類加工食品の加工原料として用いることにより、豆類加工食品の栄養価を高め、風味の改善を図ることにある。
【発明の開示】
本発明者らは、鋭意検討した結果、豆類を一定範囲の発芽率になるように発芽処理することで、豆類中に含まれている苦味成分であるイソフラボン含量と、呈味成分のアミノ酸であるγ−アミノ酪酸含量のバランスを一定の範囲になるようにコントロールでき、さらには豆類中のγ−アミノ酪酸含量を一定範囲の値にすることで、豆類栄養成分を強化しながら風味の改善された豆類を得ることが出来ることを見出した。
すなわち本発明は、発芽率が10〜100%であって、豆類中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比が10/100〜250/100である発芽処理豆類を提供する。また、本発明は、発芽率が10〜100%であって、豆類中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比が10/100〜250/100であり、かつ、芽又は根の長さが0.5〜20mmに発芽した豆類の数の割合が、発芽処理をして実際に発芽した豆類全体の70〜100%である発芽処理豆類を提供する。また、本発明は、発芽率が10〜100%であって、豆類中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比が10/100〜250/100であり、かつ、豆類固形分100g当たりのγ−アミノ酪酸含量が50〜500mgである発芽処理豆類を提供する。また、本発明は、発芽率が10〜100%であって、豆類中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比が10/100〜250/100であり、芽又は根の長さが0.5〜20mmに発芽した豆類の数の割合が、発芽処理をして実際に発芽した豆類全体の70〜100%であり、かつ、豆類固形分100g当たりのγ−アミノ酪酸含量が50〜500mgである発芽処理豆類を提供する。本発明は、かかる発芽処理豆類として、大豆、枝豆、インゲン豆、アズキ、ナンキン豆、ソラ豆、エンドウ豆、及び黒豆から選ばれる1種又は2種以上のものを提供する。さらに、本発明は、かかる発芽処理豆類を用いた食品を提供する。
また、本発明は、発芽率が10〜100%であって、豆類中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比が10/100〜250/100である発芽処理豆類、を加工原料とする豆類加工食品を提供する。また、本発明は、発芽率が10〜100%であって、豆類中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比が10/100〜250/100であり、かつ、芽又は根の長さが0.5〜20mmに発芽した豆類の数の割合が、発芽処理をして実際に発芽した豆類全体の70〜100%である発芽処理豆類、を加工原料とする豆類加工食品を提供する。また、本発明は、発芽率が10〜100%であって、豆類中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比が10/100〜250/100であり、かつ、豆類固形分100g当たりのγ−アミノ酪酸含量が50〜500mgである発芽処理豆類を加工原料とする豆類加工食品を提供する。また、本発明は、発芽率が10〜100%であって、豆類中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比が10/100〜250/100であり、芽又は根の長さが0.5〜20mmに発芽した豆類の数の割合が、発芽処理をして実際に発芽した豆類全体の70〜100%であり、かつ、豆類固形分100g当たりのγ−アミノ酪酸含量が50〜500mgである発芽処理豆類、を加工原料とする豆類加工食品を提供する。本発明は、大豆、枝豆、インゲン豆、アズキ、ナンキン豆、ソラ豆、エンドウ豆、及び黒豆から選ばれる1種又は2種以上の発芽処理豆類、を加工原料とする豆類加工食品を提供する。さらに、本発明は、かかる豆類加工食品を用いた食品を提供する。
また、本発明は、かかる発芽処理豆類を加工原料とする豆類加工食品中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比が10/100〜250/100である豆類加工食品を提供する。また、本発明は、かかる発芽処理豆類を加工原料とする豆類加工食品中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比が10/100〜250/100であって、かつ、豆類加工食品の固形分100g当たりのγ−アミノ酪酸含量が50〜500mgである豆類加工食品を提供する。本発明は、かかる豆類加工食品として、豆乳、豆腐、おから、みそ、納豆から選ばれる1種のものを提供する。また、本発明は、かかる豆類加工食品を用いた食品を提供する。
また、本発明は、豆類を10〜45℃の水又は温水に0.5〜36時間浸漬させる浸漬工程と、当該浸漬中又は浸漬後の豆類に対して、空気又は酸素への接触を19〜36時間行う気体接触工程と、を含む発芽処理豆類の製造方法を提供する。この場合、前記浸漬工程中に前記気体接触工程を行ない、該気体接触工程が、前記水又は温水中へ、前記空気又は酸素の吹き込みを行う工程であることが好ましい。また、前記浸漬工程後に前記気体接触工程を行ない、該気体接触工程において、更に、水又は温水への浸漬、又は、水又は温水の散布を所定の間隔で行うことも好ましい。更に、前記発芽処理豆類を、芽又は根の長さが0.5〜20mmに発芽した豆類の数の割合が、発芽処理をして実際に発芽した豆類全体の70〜100%となるように発芽させることが好ましい。また、前記豆類として、大豆、枝豆、インゲン豆、アズキ、ナンキン豆、ソラ豆、エンドウ豆、及び黒豆から選ばれる1種又は2種以上のものを用いることが好ましい。
本発明によると、γ−アミノ酪酸含量とイソフラボン含量のバランスを一定の範囲に保ち、さらには豆類固形分100g当たりのγ−アミノ酪酸含量を一定範囲にすることで風味の良い発芽処理豆類を得ることができる。また、得られた発芽処理豆類を用いて、栄養が豊富でかつ風味の良い豆類加工食品を得ることが出来る。さらに、風味の良い発芽処理豆類又は豆類加工食品を使用した食品を得ることができる。
発明を実施するための形態
まず、本発明の発芽処理豆類について説明する。本発明の発芽処理豆類は、その種類については特に制限はなく、例えば、大豆、枝豆、インゲン豆、アズキ、ナンキン豆、ソラ豆、エンドウ豆、黒豆等が挙げられる。その中でも栄養価、加工適正、入手の容易さ等の点から大豆を用いるのが最も好ましい。また、大豆は、国産大豆、IOMなどの米国産大豆、遺伝子組み替え大豆、又は非遺伝子組み替え大豆のいずれも用いることができる。
本発明に用いる発芽処理豆類の発芽率は、10%〜100%が好ましく、20%〜100%がより好ましく、30%〜95%が最も好ましい。発芽率が10%未満であると、豆類固形分100g当たりのγ−アミノ酪酸含量が50mg未満となり、豆類中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比も10/100〜250/100の範囲に保つことができないので、苦味、渋味の強い風味となってしまう。
本発明での発芽率とは、豆類100個中で実際に発芽した豆類の数の割合をいい、次の式で計算される。
発芽率(%)=発芽豆類数(個)/100(個)×100=発芽豆類数
ここで発芽というと、植物の芽・花粉・種子または胞子が生長・発生を開始すること(「大辞林」、第二版、三省堂)、種子中で分化した胚の各器官の成長(増田 芳雄 著、「植物船理学」、改定第14版、培風館、2001年10月,P51−57)等いろいろな定義がなされているが、本発明での「発芽」とは、「豆類において芽又は根が表皮を破って出た状態のこと」をいう。なお、式中の発芽豆類数とは、発芽処理をした豆類から任意に取り出した豆類100個のうち、実際に発芽している豆類の数をいう。
本発明の発芽処理豆類を得るための豆類の発芽処理方法については、特に限定はしないが、例えば、10〜45℃、好ましくは20〜45℃、より好ましくは30〜42℃の水又は温水に、0.5〜36時間、好ましくは1〜10時間、より好ましくは1〜5時間浸漬させる浸漬工程中、又は浸漬工程後に、豆類を空気又は酸素中に19〜36時間、好ましくは20〜30時間、より好ましくは20〜24時間さらす気体接触工程を行う方法を挙げることができる。
浸漬工程の処理温度が、10℃未満であると豆類が発芽しにくく、また、45℃より高いと発芽率が低下してしまう場合がある。また、水又は温水への浸漬時間が0.5時間未満であると豆類が発芽しにくく、36時間を越えると腐敗してしまったり、吸水しすぎて発芽しにくくなり、さらには栄養成分が溶出してしまう場合がある。
気体接触工程の時間が19時間未満であると発芽しにくく、36時間を超えると芽又は根が伸びすぎてしまい、旨味、甘味が減少しておいしさが損われてしまう場合がある。
前記浸漬工程後に前記気体接触工程を行なう場合には、気体接触工程において、更に、豆類表面が乾燥しないように適宜水又は温水を散布したり、短時間水又は温水に浸漬しても良い。この場合、散布又は浸漬の間隔は、2時間から12時間間隔で行うことが好ましく、2時間から7時間間隔で行うのがより好ましい。また、1回あたりの散布又は浸漬の時間は1分間から30分間行うことが好ましく、5分間から15分間行うことがより好ましい。
また、前記浸漬工程中に前記気体接触工程を行なう場合には、空気又は酸素を、水又は温水に吹き込むことが、発芽が促進されるので好ましい。この方法で発芽処理を行う場合は、先に説明したような浸漬後に豆類を空気又は酸素中にさらす処理を行わなくても、うまく発芽をさせることができる。この場合、空気又は酸素の吹き込み量は、浸漬工程前の豆類質量100gに対して50ml/分から3000ml/分であることが好ましく、吹き込みは連続的でもよく間欠的に行ってもよい。
本発明のγ−アミノ酪酸は、動植物界に広く分布しているアミノ酸の一種であり旨味性を有する。動物においては脳髄に存在し、神経の主要な抑制伝達物質として、脳の血流を活発にし、脳への酸素供給量を増加させ、脳細胞の代謝機能を促進させ、脳卒中後後遺症などによる頭痛などの症状の改善や,延髄の血管運動中枢に作用して血圧を低下させる作用などが認められる物質である。
本発明のイソフラボンとは、ダイジン、ダイゼイン、ゲニスチン、ゲニステイン、グリシチン、グリシテイン、アセチルダイジン、アセチルゲニスチン、アセチルグリシチン、マロニルダイジン、マロニルゲニスチン、マロニルグリシチンから選ばれる一種又は二種以上のものをいい、一般には骨粗鬆症、更年期障害等の予防効果を有することがわかっているが、苦味があるため風味の点においては好ましい成分とはいえない。
豆類の旨味と苦味のバランスをコントロールして豆類の風味を向上させるために、本発明の発芽処理豆類中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比を、好ましくは10/100〜250/100、より好ましくは15/100〜200/100、最も好ましくは20/100〜150/100に調整する。このγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比が、10/100より小さいと、豆類の渋味や苦味が強く、250/100より大きいとγ−アミノ酪酸の味が強すぎで全体の旨味バランスを崩してしまう。
発芽処理豆類中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比の調整は、豆類を発芽処理することにより行う。豆類中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比は、次の式から算出することができる。
豆類中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比
=豆類100g中のγ−アミノ酪酸含量(mg)/豆類100g中のイソフラボン含量(mg)
ここで、豆類100g中のγ−アミノ酪酸含量(mg)は、豆類約1〜10gを粉砕後、メタノール、エタノール、含水メタノール、含水エタノール等の極性溶媒に入れ、必要に応じてホモジナイズ後、必要に応じて約80℃に加熱してえられた液をろ過して得られたろ液を自動アミノ酸分析装置で分析することにより求めることができる。また、豆類約1〜10gを粉砕後、10W/V%スルホサリチル酸溶液などで除たん白後、pH調整を行った後、ろ過して得られたろ液を自動アミノ酸分析装置で分析することによっても求めることができる。また、豆類100g中のイソフラボン含量(mg)は、大豆イソフラボンとして1〜10mgに対応する豆類を粉砕後、メタノール、エタノール、含水メタノール、又は含水エタノール等の極性溶媒に入れ、必要に応じてホモジナイズや加熱還流抽出を行った後、ろ過して得られたろ液をHPLC法で分析することにより求めることができる。
本発明の発芽処理豆類のγ−アミノ酪酸含量とγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比を調整するために、発芽処理をして実際に発芽した豆類全体中の芽又は根の長さが0.5〜20mmである豆類の数の割合を70%〜100%とすることが好ましく、80%〜100%とすることがより好ましく、90%〜100%とすることが最も好ましい。芽又は根の長さが0.5〜20mmであるものの割合が、上記範囲内であると次の点で好ましい。すなわち、芽又は根の長さが0.5mm以上のものを多くすると豆類の渋味がほとんどなくなり、また、20mm以下のものを多くすると豆類の旨味及び甘味をほとんど減少させることなく、おいしい発芽処理豆類を得ることができる。
発芽処理をして実際に発芽した豆類全体中の芽又は根の長さが0.5〜20mmである豆類の数の割合は、次の式により求めることができる。
発芽処理をして実際に発芽した豆類全体中の芽又は根の長さが0.5〜20mmである豆類の数の割合(%)
=芽又は根の長さが0.5〜20mmである豆類の数(個)/発芽処理をした豆類から任意に取り出した豆類100個中で実際に発芽した豆類の数(個)×100
発芽した芽又は根の長さの調整は、豆類を水又は温水へ浸漬させた後、豆類を空気又は酸素中へさらす時間を管理することにより行うことができ、空気又は酸素中へさらす時間が長ければ長いほど、芽又は根の長さが長くなる。また、豆類の浸漬中に空気又は酸素を吹き込みながら発芽を促す場合には、空気又は酸素の吹き込み量でも調整が出来き、吹き込み量が多いほど芽又は根の長さを長くすることができる。例えば、大豆の場合、浸漬後、適宜水をかけながら約25℃の環境下で24時間発芽を促したときの発芽率は約65%であり、芽の長さは0.5mm〜20mmのものが約100%となる。
γ−アミノ酪酸含量を増加させ、栄養価を向上させるだけではなく、旨味バランスを適度に保って豆類の風味を向上させるために、本発明の発芽処理豆類は、豆類固形分100g当たりのγ−アミノ酪酸含量が、50〜500mであることが好ましく、75〜500mgであることがより好ましく、100〜500mgであることが最も好ましい。
ここで、「豆類固形分」とは、「豆類総質量から豆類中の水のみの質量を差し引いた固形分」をいい、「豆類固形分100g当たりの含量」とは、「豆類総質量から豆類中の水の質量を差し引いた固形分100g当たりの含量」をいう。豆類中の水の質量測定は、例えば常圧乾燥法(105℃、5時間)により行うことができる。従って「豆類固形分100g当たりのγ−アミノ酪酸含量」とは、「豆類総質量から豆類中の水の質量を差し引いた固形分(=豆類固形分)100g中に含まれるγ−アミノ酪酸含量」のことをいう。
豆類固形分100g当たりのγ−アミノ酪酸含量(mg)は、次の式で算出される。
豆類固形分100g中のγ−アミノ酪酸含量(mg)
=豆類100g中のγ−アミノ酪酸含量(mg)/豆類総質量中における豆類固形分の割合(質量%)×100
豆類100g中のγ−アミノ酪酸含量(mg)は、先に説明した方法により求めることができ、豆類総質量中における豆類固形分の割合(質量%)は、次の式より求めることができる。なお、式中における豆類中の水の質量(g)は、例えば常圧乾燥法(105℃、5時間)により測定することができる。
豆類総質量中における豆類固形分の割合(質量%)
=(豆類総質量(g)−豆類中の水の質量(g))/豆類総質量(g)×100
発芽処理豆類固形分100g中のγ−アミノ酪酸含量は、発芽率を好ましくは10%〜100%、より好ましくは20%〜100%、最も好ましくは30%〜95%の範囲にし、また、発芽処理をすることで芽又は根の長さが0.5〜20mmである豆類の数の割合を、実際に発芽した豆類全体中の好ましくは70%〜100%、より好ましくは80%〜100%、最も好ましくは90%〜100%の範囲にすることにより、先に述べた範囲内に調整することができる。
次に、先に説明した発芽処理豆類を加工原料とする本発明の豆類加工食品について説明する。
本発明の豆類加工食品の加工原料として使用する発芽処理豆類の発芽率は10%〜100%が好ましく、20%〜100%がより好ましく、30%〜95%が最も好ましく、発芽処理をして実際に発芽した豆類全体中の芽又は根の長さが0.5〜20mmである豆類の数の割合が70%〜100%であることが好ましく、80%〜100%であることがより好ましくは、90%〜100%であることが最も好ましい。これらの理由、数値の調整方法、数値の算出方法、発芽処理豆類の種類、及び発芽方法等については、先に本発明の発芽処理豆類で説明したことと同じである。
加工原料である発芽処理豆類の発芽率が10%未満であると、豆類固形分100g当たりのγ−アミノ酪酸含量が50mg未満となり、豆類中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比も10/100〜250/100の範囲に保つことができないので、加工原料である豆類の苦味、渋味の強い風味となってしまい、豆類加工食品の風味も苦味、渋味が強いものとなってしまう。加工原料である発芽処理豆類の芽又は根の長さが0.5〜20mmであるものの割合が、上記範囲内であると次の点で好ましい。すなわち、芽又は根の長さが0.5mm以上のものを多くすると加工原料である豆類の渋味がほとんどなくなるため、豆類加工食品の渋味もほとんどなく、また、20mm以下のものを多くすると加工原料である豆類の旨味及び甘味をほとんど減少させることないため、おいしい豆類加工食品を得ることができる。
また、本発明の豆類加工食品の加工原料として用いる発芽処理豆類中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比は10/100〜250/100であることが好ましく、15/100〜200/100であることがより好ましく、20/100〜150/100であることが最も好ましい。また、豆類固形分100g当たりのγ−アミノ酪酸含量が50〜500mgであることが好ましく、75〜500mgであることがより好ましく、100〜500mgであることが最も好ましい。これらの理由、数値の調整方法及び数値の算出方法等については、先に本発明の発芽処理豆類で説明したことと同じである。
加工原料である発芽処理豆類のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比が、10/100より小さいと、豆類の渋味や苦味が強くなるため豆類加工食品の渋味や苦味が強くなり、250/100より大きいとγ−アミノ酪酸の味が強くなるので豆類加工食品全体の旨味バランスを崩してしまう。加工原料である発芽処理豆類固形分100g当たりのγ−アミノ酪酸含量を上記範囲にすることにより、豆類加工食品中のγ−アミノ酪酸含量を増加させ、栄養価を向上させるだけではなく、旨味バランスを適度に保って豆類加工食品の風味を向上させることができる。
本発明の豆類加工食品は、発芽処理豆類を加工原料として用いる加工食品であって、例えば豆乳、豆腐、おから、納豆、味噌、茹で豆(例えば茹で大豆)などが挙げられる。その中でも、発酵工程などの風味の特徴を変える工程がないために大豆の風味が直接影響しやすい、豆乳、豆腐、おから、又は茹で豆(例えば茹で大豆)において、風味改善効果を得ることができる。この豆類加工食品である豆乳、豆腐、おから、納豆、味噌、茹で豆(例えば茹で大豆)等の製造方法は、原料として発芽処理豆類を使用する以外は公知の製法で製造することができる。
次に、γ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比、並びにγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比及びγ−アミノ酪酸含量を規定した本発明の豆類加工食品について説明する。
本発明の豆類加工食品に用いる加工原料の豆類の種類については特に制限はなく、例えば、大豆、枝豆、インゲン豆、アズキ、ナンキン豆、ソラ豆、エンドウ豆、黒豆等が挙げられる。その中でも栄養価、加工適正、入手の容易さ等の点から大豆を用いるのが最も好ましい。
豆類加工食品の旨味と苦味のバランスをコントロールして豆類加工食品の風味を向上させるために、豆類加工食品中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比を、好ましくは10/100〜250/100、より好ましくは15/100〜200/100、最も好ましくは20/100〜150/100に調整する。この豆類加工食品中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比が10/100より小さいと豆類加工食品の渋味や苦味が強くなり、250/100より大きいとγ−アミノ酪酸の味が強くなるので豆類加工食品全体の旨味バランスを崩してしまう。
この比率の調整するために、使用する加工原料の豆類として、発芽処理をすることによって豆類中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比を、好ましくは10/100〜250/100、さらに好ましくは15/100〜200/100、最も好ましくは20/100〜150/100に調整したものを用いることができる。このような発芽処理豆類として、先に説明した本発明の発芽処理豆類を挙げることができる。加工原料である発芽処理豆類のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比が、10/100より小さいと、豆類の渋味や苦味が強くなるため豆類加工食品の渋味や苦味が強くなり、250/100より大きいとγ−アミノ酪酸の味が強くなるので豆類加工食品全体の旨味バランスを崩してしまう。
豆類加工食品中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比は、次の式から算出することができる。
豆類加工食品中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比
=豆類加工食品100g中のγ−アミノ酪酸含量(mg)/豆類加工食品100g中のイソフラボン含量(mg)
ここで、豆類加工食品100g中のγ−アミノ酪酸含量(mg)は、豆類加工食品約1〜10gを必要に応じて粉砕後、メタノール、エタノール、含水メタノール、含水エタノール等の極性溶媒に入れ、必要に応じてホモジナイズ後、必要に応じて約80℃に加熱してえられた液をろ過して得られたろ液を自動アミノ酸分析装置で分析することにより求めることができる。また、豆類加工食品約1〜10gを必要に応じて粉砕後、10W/V%スルホサリチル酸溶液などで除たん白後、pH調整を行った後、ろ過して得られたろ液を自動アミノ酸分析装置で分析することによっても求めることができる。
また、豆類加工食品100g中のイソフラボン含量(mg)は、大豆イソフラボンとして1〜10mgに対応する豆類加工食品を粉砕後、メタノール、エタノール、含水メタノール、又は含水エタノール等の極性溶媒に入れ、必要に応じてホモジナイズや加熱還流抽出を行った後、ろ過して得られたろ液をHPLC法で分析することにより求めることができる。
豆類加工食品中のγ−アミノ酪酸含量を増加させ、栄養価を向上させるだけではなく、旨味バランスを適度に保って豆類加工食品の風味を向上させるために、本発明の豆類加工食品は、豆類加工食品の固形分100g当たりのγ−アミノ酪酸含量が50〜500mgであることが好ましく、75〜500mgであることがより好ましく、100〜500mgであることが最も好ましい。このような発芽処理豆類として、先に説明した本発明の発芽処理豆類を挙げることができる。加工原料である発芽処理豆類固形分100g当たりのγ−アミノ酪酸含量を上記範囲にすることにより、豆類加工食品中のγ−アミノ酪酸含量を増加させ、栄養価を向上させるだけではなく、旨味バランスを適度に保って豆類加工食品の風味を向上させることができる。
ここで「豆類加工食品の固形分」とは、「豆類加工食品の総質量から豆類加工食品中の水の質量を差し引いた固形分」をいい、「豆類加工食品の固形分100g当たり」とは、「豆類加工食品の総質量から豆類加工食品中の水の質量を差し引いた固形分100g当たり」のことをいう。豆類加工食品中の水の質量測定は、例えば常圧乾燥法(105℃、5時間)により行うことができる。従って「豆類加工食品の固形分100g当たりのγ−アミノ酪酸含量」とは、「豆類加工食品の総質量から豆類加工食品中の水の質量を差し引いた固形分(=豆類加工食品の固形分)100g中に含まれるγ−アミノ酪酸含量」のことをいう。
豆類加工食品の固形分100g当たりのγ−アミノ酪酸含量(mg)は、次の式で算出される。
豆類加工食品の固形分100g中のγ−アミノ酪酸含量(mg)
=豆類加工食品100g中のγ−アミノ酪酸含量(mg)/豆類加工食品総質量中における豆類加工食品の固形分の割合(質量%)×100
豆類加工食品100g中のγ−アミノ酪酸含量(mg)は、先に説明した方法により求めることができ、豆類加工食品総質量中における豆類加工食品の固形分の割合(質量%)は、次の式より求めることができる。なお、豆類加工食品中の水の質量測定は、例えば常圧乾燥法(105℃、5時間)により行うことができる。
豆類加工食品総質量中における豆類加工食品固形分の割合(質量%)
=(豆類加工食品総質量(g)−豆類加工食品中の水の質量(g))/豆類加工食品総質量(g)×100
豆類加工食品の固形分100g当たりのγ−アミノ酪酸含量は、発芽率を好ましくは10%〜100%、より好ましくは20%〜100%、最も好ましくは30%〜95%の範囲にし、また、発芽処理をすることで芽又は根の長さが0.5〜20mmである豆類の数の割合を、実際に発芽した豆類全体中の好ましくは70%〜100%、より好ましくは80%〜100%、最も好ましくは90%〜100%の範囲にした発芽処理豆類を加工原料として用いることにより、先に説明した範囲内に調整することができる。このような発芽処理豆類として、先に説明した本発明の発芽処理豆類を挙げることができる。
加工原料である発芽処理豆類の発芽率が10%未満であると、豆類固形分100g当たりのγ−アミノ酪酸含量が50mg未満となり、豆類中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比も10/100〜250/100の範囲に保つことができないので、加工原料である豆類の苦味、渋味の強い風味となってしまい、豆類加工食品の風味も苦味、渋味が強いものとなってしまう。
加工原料である発芽処理豆類の芽又は根の長さが0.5〜20mmであるものの割合が、上記範囲内であると次の点で好ましい。すなわち、芽又は根の長さが0.5mm以上のものを多くすると加工原料である豆類の渋味がほとんどなくなるため、豆類加工食品の渋味もほとんどなく、また、20mm以下のものを多くすると加工原料である豆類の旨味及び甘味をほとんど減少させることないため、おいしい豆類加工食品を得ることができる。
本発明の豆類加工食品は、発芽処理豆類を加工原料として用いる加工食品であって、例えば豆乳、豆腐、おから、納豆、味噌、茹で豆(例えば茹で大豆)等が挙げられる。その中でも、発酵工程などの風味の特徴を変える工程がないために大豆の風味が直接影響しやすい、豆乳、豆腐、おから、又は茹で豆(例えば茹で大豆)において風味改善効果を得ることができる。
豆類加工食品である豆乳、豆腐、おから、納豆、味噌、茹で豆(例えば茹で大豆)等の製造方法は、原料として発芽処理豆類を使用する以外は公知の製法で製造することができるが、この場合、豆類加工食品中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比や、豆類加工食品の固形分100g当たりのγ−アミノ酪酸含量を特定の値とするために、先にも説明したが、加工原料として用いる豆類中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比や豆類固形分100g当たりのγ−アミノ酪酸含量を考慮する必要がある。
以上説明した発芽処理豆類や豆類加工食品は、パン、ピザや、うどん、そば、そうめん等の麺類、アイスクリーム、プリン、ヨーグルト等の乳製品、クッキー、ビスケット、せんべい、おかき、あられ、プリン、和菓子等菓子類等の豆類を加工原料としない食品へ使用することができる。これにより、食品中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比を一定の範囲に保ち、発芽処理豆類を使用しても苦味、渋味がなく、旨味のバランスの整った風味の良い食品を得ることができる。
本発明の発芽処理豆類、又は豆類加工食品の上記食品への使用量については特に制限はない。また、本発明の発芽処理豆類、又は豆類加工食品を使用した食品は、食品原料に本発明の発芽処理豆類、又は豆類加工食品を添加すれば良く、食品自体は公知の製法により製造することができる。
【実施例】
次に、比較例及び実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
<茹で大豆、豆乳、豆腐の風味評価方法>
茹で大豆10g、豆乳30ml、又は豆腐20gを、10名のパネラーが食したときの風味について、次の基準に基づく点数で評価をしてもらった。パネラー全員の評価点数の平均値を算出し、算出値が4.0点以上を合格とした。
1:とても苦味、渋味が強くて好ましくない、又はとても一部の呈味成分が強すぎて旨味のバランスが悪く好ましくない
2:やや苦味、渋味が強くて好ましくない、又はやや呈味成分が強すぎて旨味のバランスが悪く好ましくない
3:通常の豆類と変わらない風味
4:苦味、渋味がほとんどなく、旨味のバランスも良い
5:苦味、渋味が全くなく、旨味のバランスも大変良い
比較例1 茹で大豆
<調製>
米国産IOM未発芽大豆300gを5℃の水900mlに18時間浸漬させた。水切りをした後、発芽状態を確認したが、発芽しているものは1個も無かった。得られた未発芽大豆200gを沸騰水で30分間茹でることで茹で大豆を得た。
<分析及び風味評価>
得られた茹で大豆3gをカッター(コクヨ社製)で細かく刻んだ後、105℃、5時間で乾燥して茹で大豆中の水の質量を測定した。測定値から、茹で大豆総質量中における茹で大豆固形分の割合を算出すると36質量%であった。
茹で大豆3gをカッターで細かく刻んだ後、10W/V%スルホサリチル酸溶液中で攪拌してpH調整し、ろ過後、得られたろ液を自動アミノ酸分析装置で分析を行った。その結果、茹で大豆100g中のγ−アミノ酪酸含量は、12.6mgであった。測定値から茹で大豆固形分100g中のγ−アミノ酪酸含量を算出すると35.0mgであった。
また、茹で大豆2gをカッターで細かく刻んだ後、メタノール:水(質量比)=8:2の含水メタノール中でホモジナイズして加熱還流抽出を1時間2回行い、ろ過後、得られたろ液についてHPLC分析を行った。その結果、茹で大豆100g中のイソフラボン含量は151.2mgであった。
これらの値から、茹で大豆中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比を求めると8.3/100であった。
得られた茹で大豆を、先に説明した風味評価方法により評価した。結果を表1に示す。
[実施例1] 茹で大豆
<調製>
米国産IOM未発芽大豆300gを10℃900mlの水中10時間浸漬後、20℃の環境下で、乾燥を防ぐために穴のあいたラップをかけ36時間放置し、発芽処理大豆690gを得た。このときの発芽率は20%で、根の長さは0.5mmから20mmのものが、発芽処理をして実際に発芽した大豆全体の100%であった。得られた発芽処理大豆200gを沸騰水で30分間茹で、茹で大豆を得た。
<分析及び風味評価>
得られた茹で大豆3gを、カッターで粉砕した後、105℃、5時間で乾燥して茹で大豆中の水の質量を測定した。測定値から、茹で大豆総質量中における茹で大豆固形分の割合を算出すると40質量%であった。
茹で大豆3gをカッターで細かく刻んだ後、10W/V%スルホサリチル酸溶液中で攪拌し、pH調整して、ろ過後、得られたろ液について自動アミノ酸分析装置で分析を行った。その結果、茹で大豆100g中のγ−アミノ酪酸含量は22.0mgであった。この分析値から茹で大豆固形分100g中のγ−アミノ酪酸含量を算出すると55.0mgであった。
また、茹で大豆2gをカッターで細かく刻んだ後、メタノール:水(質量比)=8:2の含水メタノール中でホモジナイズして加熱還流抽出を1時間2回行い、ろ過後、得られたろ液についてHPLC分析を行った。その結果、茹で大豆100g中のイソフラボン含量は152.0mgであった。
これらの値から、茹で大豆中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比を求めると、14.5/100であった。
得られた茹で大豆を、先に説明した風味評価方法により評価した。結果を表1に示す。
[実施例2] 豆乳
<調製>
米国産IOM未発芽大豆300gを25℃900mlの水中で1分間あたり1500mlの空気を大豆全体に当るようにしながら30時間浸漬させ、発芽処理大豆690gを得た。このときの発芽率は30%で、根の長さは0.5mmから20mmのものが、発芽処理をして実際に発芽した大豆全体の99%であった。得られた発芽処理大豆460gに水1リットル加えて磨砕した後、おからを分離し、得られた液を90℃5分間加熱後、5℃に冷却することで豆乳を得た。
<分析及び風味評価>
得られた豆乳3gを、105℃、5時間で乾燥して豆乳中の水の質量を測定した。測定値から、豆乳総質量中における豆乳固形分の割合を算出すると12質量%であった。
豆乳3gを10W/V%スルホサリチル酸溶液中で攪拌し、pH調整して、ろ過後、得られたろ液について自動アミノ酸分析装置で分析を行った。その結果、豆乳100g中のγ−アミノ酪酸含量は22.7mgであった。この分析値から豆乳固形分100g中のγ−アミノ酪酸含量を算出すると189.0mgであった。
また、豆乳2gを、メタノール:水(質量比)=8:2の含水メタノール中でホモジナイズして加熱還流抽出を1時間2回行い、ろ過後、得られたろ液についてHPLC分析を行った。その結果、豆乳100g中のイソフラボン含量は42.0mgであった。これらの値から、豆乳中γ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比を求めると54/100であった。
得られた豆乳を、先に説明した風味評価方法により評価した。結果を表1に示す。
[実施例3] 豆乳
<調製>
米国産IOM未発芽大豆30kgを40℃100リットルの温水で2時間浸漬させた後、24時間、25℃の水を6時間ごとに散布しながら空気中で発芽を促し、発芽処理大豆69kgを得た。このときの発芽率は80%で、根の長さは0.5mmから20mmのものが、発芽処理をして実際に発芽した大豆全体の89%であった。得られた発芽処理大豆60kgを、水を加えながら磨砕し、おからを分離して得られた液を、直接蒸気吹き込み式瞬間加熱装置で145℃5秒間加熱後、5℃に冷却し豆乳を得た。得られた豆乳の成分分析値を表2に示す。
<分析及び風味評価>
得られた豆乳3gを、105℃、5時間で乾燥して豆乳中の水の質量を測定した。測定値から、豆乳総質量中における豆乳固形分の割合を算出すると12質量%であった。
豆乳3gを10W/V%スルホサリチル酸溶液中で攪拌し、pH調整して、ろ過後、ろ液を自動アミノ酸分析装置で分析した。その結果、豆乳100g中のγ−アミノ酪酸含量は30.0mgであった。この分析値から豆乳固形分100g中のγ−アミノ酪酸含量を算出すると、250.0mgであった。
また、豆乳2gをメタノール:水(質量比)=8:2の含水メタノール中でホモジナイズして加熱還流抽出を1時間2回行い、ろ過後、得られたろ液についてHPLC分析を行った。その結果、豆乳100g中のイソフラボン含量は48.4mgであった。
これらの値から、豆乳中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比を求めると62/100であった。
得られた豆乳を、先に説明した風味評価方法により評価した。結果を表1に示す。
[実施例4] 豆腐
<調製>
実施例3で得られた豆乳300gにグルコノデルタラクトン1.2gを添加し、80℃に加熱後5℃に冷却することにより豆腐を得た。
<分析及び風味評価>
得られた豆腐3gを、105℃、5時間で乾燥して豆腐中の水の質量を測定した。測定値から、豆腐総質量中における豆腐固形分の割合を算出すると12質量%であった。
豆腐3gを10W/V%スルホサリチル酸溶液中で攪拌し、pH調整して、ろ過後、ろ液を自動アミノ酸分析装置で分析した。その結果、豆腐100g中のγ−アミノ酪酸含量は29.8mgであった。この分析値から豆腐固形分100g中のγ−アミノ酪酸含量を算出すると、248.3mgであった。
また、豆腐2gをメタノール:水(質量比)=8:2の含水メタノール中でホモジナイズして加熱還流抽出を1時間2回行い、ろ過後、得られたろ液についてHPLC分析を行った。その結果、豆腐100g中のイソフラボン含量は48.2mgであった。
これらの値から、豆腐中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比を求めると62/100であった。
得られた豆腐を、先に説明した風味評価方法により評価した。結果を表1に示す。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
発芽率が10〜100%であって、豆類中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比が10/100〜250/100である発芽処理豆類。
【請求項2】
前記発芽処理豆類において、芽又は根の長さが0.5〜20mmに発芽した豆類の数の割合が、発芽処理をして実際に発芽した豆類全体の70〜100%である請求項1に記載の発芽処理豆類。
【請求項3】
さらに、豆類固形分100g当たりのγ−アミノ酪酸含量が50〜500mgである請求項1又は2に記載の発芽処理豆類。
【請求項4】
前記発芽処理豆類が、大豆、枝豆、インゲン豆、アズキ、ナンキン豆、ソラ豆、エンドウ豆、及び黒豆から選ばれる1種又は2種以上のものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の発芽処理豆類。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の発芽処理豆類、を加工原料とする豆類加工食品。
【請求項6】
請求項5に記載の豆類加工食品であって、該豆類加工食品中のγ−アミノ酪酸/イソフラボンの質量比が10/100〜250/100である豆類加工食品。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の豆類加工食品であって、該豆類加工食品の固形分100g当たりのγ−アミノ酪酸含量が50〜500mgである豆類加工食品。
【請求項8】
前記豆類加工食品が、豆乳、豆腐、おから、みそ、納豆、及び茹で豆から選ばれる1種のものである請求項5〜7のいずれか1項に記載の豆類加工食品。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の発芽処理豆類、を用いた食品。
【請求項10】
請求項5〜8のいずれか1項に記載の豆類加工食品、を用いた食品。
【請求項11】
豆類を10〜45℃の水又は温水に0.5〜36時間浸漬させる浸漬工程と、当該浸漬中又は浸漬後の豆類に対して、空気又は酸素への接触を19〜36時間行う気体接触工程と、を含む発芽処理豆類の製造方法。
【請求項12】
前記浸漬工程中に前記気体接触工程を行ない、該気体接触工程が、前記水又は温水中へ、前記空気又は酸素の吹き込みを行う工程である請求項11に記載の発芽処理豆類の製造方法。
【請求項13】
前記浸漬工程後に前記気体接触工程を行ない、該気体接触工程において、更に、水又は温水への浸漬、又は、水又は温水の散布を所定の間隔で行う請求項11又は12に記載の発芽処理豆類の製造方法。
【請求項14】
前記発芽処理豆類を、芽又は根の長さが0.5〜20mmに発芽した豆類の数の割合が、発芽処理をして実際に発芽した豆類全体の70〜100%となるように発芽させる請求項11〜13のいずれか1項に記載の発芽処理豆類の製造方法。
【請求項15】
前記豆類として、大豆、枝豆、インゲン豆、アズキ、ナンキン豆、ソラ豆、エンドウ豆、及び黒豆から選ばれる1種又は2種以上のものを用いる請求項11〜14のいずれか1項に記載の発芽処理豆類の製造方法。

【国際公開番号】WO2005/004633
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【発行日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511582(P2005−511582)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010062
【国際出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000227009)日清オイリオグループ株式会社 (251)
【Fターム(参考)】