説明

風綿対策装置および自動ワインダー

【課題】 テンション装置等の各種の糸処理装置を介して糸を巻き取る際に、装置本体の主要部分への風綿の侵入や堆積を防止すると共に、装置本体内部への侵入も防止する構成とする風綿対策装置を提供し、該風綿対策装置を備え、少ない空気消費量で風綿の影響を抑制しながら巻取可能な自動ワインダーを提供することである。
【解決手段】 構成部品を内蔵するボックス状の本体ケーシング2から、糸を挟持するクランプ部材や糸をガイドするガイド部材を突設し、前記本体ケーシングにエア配管部材9を接続してケーシング内部に圧縮空気を供給してケーシング内部を昇圧すると共に、前記本体ケーシングの外側の所定位置に圧縮空気を吹き付けるノズル部材Nを複数設ける構成のテンション装置1とした。また、糸継ぎ動作のタイミングに同期して圧縮空気を供給する構成の前記テンション装置1を備える自動ワインダーとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸道に沿って、走行する糸に適宜処理を付与する糸処理装置を備える繊維機械の風綿対策装置に関し、さらに、風綿対策装置を備える自動ワインダーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の給糸ボビンを大径の巻取パッケージに巻き取る巻取ユニットU(図4参照)を並列してなる自動ワインダーにあっては、一般に、綿等の短繊維からなる紡績糸である糸Yを給糸ボビンBから解舒し、テンション装置1により所定糸張力を付与すると共にトラバースしながら巻取ボビンBf上に巻き付けて、大径の所定形状の巻取パッケージPを巻成している。
【0003】
それぞれの巻取ユニットUは、それぞれサイドフレーム18を備えており、巻取ボビンBfを保持するクレードル17および綾振りドラム16や後述する上糸捕捉案内手段15や中継ぎパイプ12等の装置がこのサイドフレーム18に装着されている。また、該サイドフレーム18には、前記綾振りドラム16の駆動モータや上糸捕捉案内手段15等の駆動手段が配設されていると共に、巻取運転の制御を行うための電装部19が備えられている。
【0004】
それぞれの巻取ユニット本体の下部側に配置される給糸ボビンBから解舒される糸Yを、上部側に配置する綾振りドラム16により接触回転駆動される巻取パッケージPに巻き取るまでの糸走行経路中には、給糸側から巻取側へ向かって、解舒補助装置11、テンション装置1、ヤーンクランプ12Aとサクションパイプ12Bを備える中継ぎパイプ12、糸継ぎ装置13、クリアラー(糸太さ検出器)14等の各種の糸処理装置が配設されている。
【0005】
解舒補助装置11は、給糸ボビンBの解舒と共に芯管に被さる筒体を下げることにより、給糸ボビンBからの糸Yの解舒を補助するものである。糸継ぎ装置13は、糸欠陥を検出して行う糸切断時、又は解舒中の糸切れ時に、給糸ボビンB側の下糸と、巻取パッケージP側の上糸とを糸継ぎするものである。クリアラー14は、Yの太さ欠陥を検出するためのものである。さらに、このクリアラー14には、糸欠陥を検出した時の糸切断用のカッター14aが付設されている。
【0006】
また、巻取部WAは、巻取ボビンBfを把持するクレードル17と糸Yをトラバースさせる綾振りドラム(巻取ドラム)16とを備えている。クレードル17は、綾振りドラム16に向けて揺動自在であり、それによって巻取ボビンBfに巻き形成された巻取パッケージPが綾振りドラム16に対して接触又は離反される。また、クレードル17には、糸切れ時にクレードル17を上げて、巻取パッケージPを綾振りドラム16から離反させるリフトアップ機構17aと、クレードル17を上げると同時に、クレードル17に把持された巻取パッケージPの回転を停止させるパッケージブレーキ機構17bが取り付けられている。
【0007】
糸継ぎ装置13の上下には、給糸ボビンB側の下糸を捕捉して案内する下糸捕捉案内手段である中継ぎパイプ12と、巻取パッケージP側の上糸を捕捉して案内する上糸捕捉案内手段15が設けられている。
【0008】
中継ぎパイプ12はサクションパイプ12Bと該サクションパイプ12Bの先端に装着されるヤーンクランプ12Aとを備えている。糸切断時又は糸切れ時には、中継ぎパイプ12のヤーンクランプ12Aが図示の位置で、クリアラーのカッター14aと給糸ボビンBに連なる下糸を捕捉し下から上へと旋回して、糸継ぎ装置13に下糸を案内する。同時に、上糸捕捉案内手段15のサクションマウス15aが図示の位置から軸15bを中心にして下から上へと旋回し、逆転させられる巻取パッケージPから上糸を捕捉し、更に軸15bを中心にして上から下へと旋回し、糸継ぎ装置13に上糸を案内する。糸継ぎ装置13は、例えば旋回空気流を用いて糸継ぎするエアースプライサーであって、前記糸継ぎ装置13により、引き揃えられた下糸と上糸とが糸継ぎされる。
【0009】
上記のようにして、給糸ボビンBから解舒される下糸と、巻取パッケージP側の上糸とを糸継ぎしながら巻上げていって、所定長で所定形状の巻取パッケージPを巻成するものである。
【0010】
ところが、前記従来の自動ワインダーによる巻取工程中においては、綿等の短繊維からなる紡績糸が高速走行しながら巻き取られていくので、走行路の周囲に風綿と称する細かい繊維屑を撒き散らすことになる。そのために、各糸処理装置、特に、糸に所定の糸張力を付与するために、例えば糸Yを挟持する2枚のディスクを有するテンション装置や糸Yをジグザグに走行させてテンションを付与するゲートテンサーを有するテンション装置付近には、大量の風綿が発生して堆積する虞が生ずる。
【0011】
また、風綿が発生してテンション装置付近、例えば前記2枚のディスク間に詰まると、糸Yに付与するテンションが変動することになり、糸のテンションが不安定となって、巻取異常の原因となり巻取パッケージPの形が崩れたり、巻径異常が生じたりする問題が発生する。
【0012】
そのために、ゲートテンサー方式のテンション装置を備える自動ワインダーにおいて、ゲートテンサーに直接清掃用空気を吹き付けて風綿を除去するとした糸巻取装置のテンション装置が既に本出願人から出願されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−278542号公報(第1−5頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
巻取工程中に発生する風綿は、前述したように非常に細かい繊維屑であるので、ゲートテンサーやディスク部だけでなく、軸部やネジ部などの装置のあらゆる部分に侵入し堆積する問題を生じる。
【0014】
また、装置本体から突出する軸部から装置内部に侵入する虞もあり、特に回転軸が装置内部から突出した構成では、軸と装置本体壁面との僅かな隙間に風綿が侵入することになる。隙間に風綿が堆積すると、軸の回転に悪影響を及ぼすことになり、装置に障害が発生し、問題となる。
【0015】
そのために、モータやソレノイドなどの駆動源を内蔵するテンション装置の場合では、ケーシングの外部に設けるテンサー部材のみを清掃するだけでは不十分であり、テンション装置の風綿の侵入し易い部分や堆積し易い部分の全てを清掃する必要がある。
【0016】
本発明の目的は、上記問題を解決するために、テンション装置等の各種の糸処理装置を介して糸を巻き取る際に、装置本体の主要部分への風綿の侵入や堆積を防止すると共に、装置本体内部への侵入も防止する構成とする風綿対策装置を提供し、該風綿対策装置を備え、少ない空気消費量で風綿の影響を抑制しながら巻取可能な自動ワインダーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために請求項1に係る発明は、糸道に沿って、走行する糸に適宜処理を付与する糸処理装置を配設した繊維機械において、前記糸処理装置の全体または部分をケーシングで覆い、該ケーシング内部に圧縮空気を供給してケーシング内部を昇圧すると共に、前記ケーシングから出ている部材に対して圧縮空気を吹き付けるノズル部材を前記ケーシングに設けたことを特徴としている。
【0018】
上記の構成を有する請求項1に係る発明によれば、糸に常時接している部材を有する糸処理装置であっても、各装置の本体ケーシング内を昇圧するので、外部から風綿や塵埃等が侵入してこない。また、ノズル部材を設けて、ケーシングから出ている部材に圧縮空気を吹き付けているので、それらの部材に、風綿が付着したり、堆積したりしない。
【0019】
請求項2に係る発明は、前記ケーシング内には、主として前記糸処理装置の駆動源を構成する部材が設けられ、前記ケーシングの外部には、糸に直接作用する作用部材が設けられ、前記駆動源と前記作用部材とをつなぐ軸やボス等がケーシングの壁を貫通しており、前記ケーシング内の高圧空気が前記軸やボスと前記壁との間から外部へ押し出されるようにしたことを特徴としている。
【0020】
上記の構成を有する請求項2に係る発明によれば、各装置のケーシング内を昇圧するので、各部材が出ている隙間から風綿や塵埃等が侵入してこない。また、たとえケーシング内部に侵入しても、ただちに外部に排出することができる。
【0021】
請求項3に係る発明は、前記糸処理装置が、糸に所定の張力を付与するテンション装置であって、前記本体ケーシングの外側に、糸を挟持するクランプ部材や糸をガイドするガイド部材を突設したことを特徴としている。
【0022】
上記の構成を有する請求項3に係る発明によれば、テンション装置のケーシング内を昇圧するので、外部から風綿や塵埃等が侵入してこない。また、たとえケーシング内部に侵入しても、ただちに外部に排出することができる。
【0023】
請求項4に係る発明は、前記ノズル部材が、前記クランプ部材や前記ガイド部材の所定位置に向けて、前記ケーシングに供給される圧縮空気を吹き付けていることを特徴としている。
【0024】
上記の構成を有する請求項4に係る発明によれば、ケーシング内部への風綿等の侵入を抑制するだけでなく、本体ケーシングから吹き出る圧縮空気を利用して、風綿等を除去する清掃手段を構成することができる。
【0025】
請求項5に係る発明は、糸継ぎ装置を有し、複数の小径の給糸ボビンの糸を糸継ぎしながら一個の大径の巻取パッケージに巻き取る自動ワインダーであって、請求項1から3のいずれかに記載の風綿対策装置を備えていることを特徴としている。
【0026】
上記の構成を有する請求項5に係る発明によれば、糸の巻取工程中に風綿を大量に発生する場合でも、風綿の影響を抑制可能な風綿対策装置を備える自動ワインダーを得ることができる。
【0027】
請求項6に係る発明は、前記糸継ぎ装置が糸継ぎする毎に、前記風綿対策装置に圧縮空気を所定時間供給する構成としたことを特徴としている。
【0028】
上記の構成を有する請求項6に係る発明によれば、断続的な空気供給となり、空気消費量を節約することができる。
【0029】
請求項7に係る発明は、前記糸継ぎ装置が圧縮空気を噴射してスプライスを行うスプライサーであって、糸継ぎ動作のタイミングに同期して前記風綿対策装置に圧縮空気を瞬間供給する構成としたことを特徴としている。
【0030】
上記の構成を有する請求項7に係る発明によれば、糸継ぎタイミングに同期して瞬間的に圧縮空気を吹き付けるので、さらに空気消費量を節減することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、糸処理装置の全体または部分をケーシングで覆い、該ケーシング内部に圧縮空気を供給してケーシング内部を昇圧すると共に、前記ケーシングから出ている部材に対して圧縮空気を吹き付けるノズル部材を前記ケーシングに設けた構成の風綿対策装置としたので、綿等の短繊維からなる紡績糸を巻き取る場合であっても、各糸処理装置の糸と接する主要部分への風綿の侵入や堆積を防止すると共に、装置本体内部への侵入も防止可能となる。また、本発明に係る風綿対策装置を備える自動ワインダーであれば、風綿を発生し易い糸の巻取工程中であっても、風綿の影響を抑制しながら巻取可能となる。さらに、糸継ぎ動作のタイミングに同期してそれぞれのユニット毎の各装置に圧縮空気を短時間供給して、風綿を吹き飛ばす構成としたので、少ない空気消費量で良好な清掃効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明に係る風綿対策装置および自動ワインダーの実施の形態について、図1から図4に基づいて説明する。
【0033】
図1は本発明に係る風綿対策装置となるテンション装置を示しており、(a)は装置全体の第一姿勢の斜視図であり、(b)は装置全体の第二姿勢の斜視図であり、(c)は装置底面部から見た斜視図である。図2は、前記テンション装置の平面断面図である。図3にはノズル部材を示しており、(a)は側面図であり、(b)断面図である。図4は、自動ワインダーの巻取ユニットの一例を示す全体構成図である。
【0034】
図4に示すように、本発明に係る自動ワインダーは、それぞれの巻取ユニットU本体の下部側に給糸ボビンBが配置され、該給糸ボビンBから解舒した糸Yを、テンション装置1を介して所定のテンションを付与しながら、上部側の巻取部WAに配設される綾振りドラム16により接触回転駆動される大径の巻取パッケージPに巻き取っている。
【0035】
そのために、多数の小径の給糸ボビンBから引き出した糸Yを、糸道に沿って、走行する糸Yに適宜処理を付与する糸処理装置を介して、大径の一個の巻取パッケージPに巻き取る構成である。また、小径の前記給糸ボビンBを順次交換するので、そのたび毎に糸処理装置の一つである糸継ぎ装置13が糸継ぎして、連続した一本の糸Yとして巻き取る構成としている。
【0036】
また前述した通り、糸Yの不良部分をクリアラー14が検知するたびに、糸Yを切断し、再度糸継ぎして巻取するので、糸継ぎ回数はさらに増加することになる。
【0037】
そのために、糸Yの巻取工程中には、糸Yの走行が頻繁に停止され、停止、糸継ぎ、走行再開、高速走行、停止を繰り返していくことになって、糸Yの走行する範囲に風綿を撒き散らしている。そのために、糸道に沿って、走行する糸に適宜処理を付与する糸処理装置の周辺には大量の風綿が存在することになる。また、特に、糸Yを挟持する2枚のディスクを備えて糸Yにテンションを付与するテンション装置1近辺には、大量の風綿が堆積することになる。
【0038】
次に図1および図2より本発明に係る風綿対策装置の一つであるテンション装置1について詳細に説明する。
【0039】
糸Yに所定のテンションを付与する糸処理装置であるテンション装置1は、図1(a)に示すように、本体ケーシング2と上ガイド板3と下ガイド板4を備えてボックス状のケーシング構成とされている。また、クランプ6と該クランプ6の開閉を駆動するモータ5と、第一ディスク部材7と第二ディスク部材8とを備えている。
【0040】
さらに、前記第一ディスク部材7と前記第二ディスク部材8のそれぞれの軸部に向けて圧縮空気を吹き付けるノズル部材N1、N2を、側面20側に設けている。
【0041】
また、図1(b)に示すように、側面21側には、それぞれのディスク部材の糸挟持部に向けて圧縮空気を吹き付けるノズル部材N3、N4を設けている。
【0042】
さらに、図1(c)に示すように、クランプ6近辺に向けて圧縮空気を吹き付けるノズル部材N5を下ガイド板4側に設けている。
【0043】
いずれのノズル部材から吹き出される圧縮空気は、側板22に設けるエア配管部材9から供給されている。エア配管部材9からボックス状の本体ケーシング2の内部に圧縮空気を供給しているので、ケーシング内部を昇圧することになり、前記ノズル部材N1〜N5から吹き出されるだけでなく、その他の隙間等からも吹き出されていく構成となる。つまり、糸Yが走行する際に風綿が生じ易い位置だけでなく、風綿が侵入する虞のある隙間からも、圧縮空気を吹き出す構成となり、本体ケーシング内への風綿の侵入を効果的に防止することができる。
【0044】
上記したようにケーシング内には、主として糸処理装置としての駆動源を構成する部材が設けられており、ケーシングの外部には、糸に直接作用する作用部材が設けられており、前記駆動源と前記作用部材とをつなぐ軸・ボス等がケーシングの壁を貫通している。そのために、ケーシング内に圧縮空気を供給すると、その高圧空気が前記軸やボスとケーシング壁との間から外部へ押し出されることになり、ケーシング内に内蔵しているソレノイド等の駆動源の作動が阻害されることはなく、糸処理装置としての機能に障害が発生しない構成となる。
【0045】
ケーシング内部には、図2に示すように、例えば、第一ディスク部材7を構成する従動ディスク7Aを回転ディスク7Bに接離する移動手段23や、前記回転ディスク7Bを回転駆動する駆動手段25等が内蔵されている。前記移動手段23はソレノイドを利用して従動ディスク7Aの軸基部24を摺動移動する装置である。
【0046】
また、本体ケーシング2は前記移動手段23を収容する第一室2Aと、前記駆動手段25を収容する第二室2Bを備えており、その内部が互いに連通する構成とされている。そのために、いずれか一方、例えば第一室2A側にエア配管部材9から圧縮空気を供給すると、その圧縮空気は第二室2Bまで充填されることになる。このように、第一室2Aと第二室2Bとの複数のケーシングを一体的にボックス状とする本体ケーシング2の構成とされているので、いずれか一方に圧縮空気を供給するだけで、本体ケーシング2内部を一体的に昇圧することができる。
【0047】
そのために、例えば、従動ディスク7Aの軸71と側板壁面との隙間や、回転ディスク7Bの回転軸72と側板壁面との隙間等の他は略密閉状態とすることが可能である。このように、テンション装置の主要な構成部品を備える本体ケーシング2を密閉状態とし、その内部を昇圧することで、本体内部への風綿等の侵入を完全に防止することができる。
【0048】
また、本体ケーシング2の所定箇所に、本体内部に充填される圧縮空気を外部に吹き出すノズル部材Nを複数配設して、任意の所定位置の風綿の堆積を防止可能な構成とすることができる。
【0049】
そのために、従動ディスクの軸付近に圧縮空気を吹き付けるノズル部材N(N1、N2)や、ディスク部材の糸挿通部分に圧縮空気を吹き付けるノズル部材N(N3、N4)や、下ガイド板側のクランプ付近に圧縮空気を吹き付けるノズル部材N(N5)を必要に応じて任意に配設することができる。
【0050】
もちろん、これ以外の位置にも設置可能であり、所定の位置に噴射孔を向けた任意のノズル部材Nを設置することで、任意の領域の風綿の堆積を防止することができる。
【0051】
ノズル部材Nは図3(a)に示すように、紡錘状の外形をしており、図3(b)に示すように、内部に設ける中空部から複数の噴射孔n1、n2が設けられている。
【0052】
また、取付座となる段部30を有しており、本体ケーシング2を密閉している側板やガイド板の所定位置に取付用孔を設けて接着等により接合することで、任意の位置にノズル部材Nを設置可能となる。
【0053】
本体ケーシング2への圧縮空気の供給は、常時供給でもよいが、必要に応じて供給する断続供給でも十分であり、空気消費量の観点からも、断続供給が好ましい。
【0054】
前述した通り、糸を巻き取る繊維機械である自動ワインダーは、糸に所定の張力を付与するテンション装置や、糸にワックスを含有させるワキシング装置や、糸継ぎ装置などの、糸を巻き取る際に、走行する糸に接する部材を備える各種の糸処理装置を備えている。そのために、それぞれの糸処理装置の全体または部分をケーシングで覆い、該ケーシング内部に圧縮空気を供給してケーシング内部を昇圧すると共に、前記ケーシングから出ている部材に対して圧縮空気を吹き付けるノズル部材を前記ケーシングに設けることで、風綿から各装置を防御可能であり、各装置を風綿対策装置とすることができる。
【0055】
また、自動ワインダーにおける巻取工程中では、糸Yの糸継ぎが頻繁に繰り返されるので、この糸継ぎが行われる毎に、前記風綿対策装置の各装置の各ボックス内に圧縮空気を瞬間的にもしくは短時間供給する構成とすることが容易に可能となる。
【0056】
また、糸継ぎ装置が圧縮空気を噴射してスプライスを行うスプライサーであれば、糸継ぎ動作のタイミングに同期して前記風綿対策装置に圧縮空気を供給する構成とすることができる。
【0057】
上記の構成であれば、既に自動ワインダーに標準装備されているエア配管部に、前記エア配管部材9に至る配管経路を設けるだけでよく、噴射タイミングを制御するバルブ制御も、糸継ぎ用バルブの制御タイミングを利用して行うことができ容易となる。
【0058】
実際には、風綿吹き飛ばしのための圧縮空気噴射時間は1秒以下でよく、また、毎分数十回糸継ぎされる自動ワインダーの巻取ユニットにおいては、その噴射時間はさらに短くてもよい。
【0059】
上記の構成であれば、糸継ぎする毎に短時間圧縮空気吹き付けを行うことになるので、糸巻取工程中には圧縮空気を噴射せず、風綿を撒き散らすこともないので、巻成される巻取パッケージPへの風綿の混入を抑制することができ好適である。
【0060】
上記したように、各糸処理装置を備え綿等の短繊維からなる紡績糸を巻き取る繊維機械であっても、各糸処理装置を本発明に係る風綿対策装置とすることで、本体の主要部分への風綿の侵入や堆積を防止すると共に、糸処理装置本体内部への侵入も防止可能となる。そのために、本発明に係る風綿対策装置を備える自動ワインダーであれば、風綿を発生し易い糸の巻取工程中であっても、風綿の影響を抑制しながら巻取可能となる。
【0061】
また、種々の糸種の巻き返しを行うと共に、多数の巻取ユニットを有する自動ワインダーにおいて、それぞれの巻取ユニット毎にそれぞれ糸継ぎ動作のタイミングに同期してそれぞれのユニット毎の風綿対策装置に圧縮空気を短時間供給して、風綿を吹き飛ばす構成としたので、少ない空気消費量で良好な清掃効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係る風綿対策装置となるテンション装置を示しており、(a)は装置全体の第一姿勢の斜視図であり、(b)は装置全体の第二姿勢の斜視図であり、(c)は装置底面部から見た斜視図である。
【図2】前記テンション装置の平面断面図である。
【図3】ノズル部材を示しており、(a)は側面図であり、(b)断面図である。
【図4】自動ワインダーの巻取ユニットの一例を示す全体構成図である。
【符号の説明】
【0063】
1 テンション装置(風綿対策装置)
2 本体ケーシング
9 エア配管部材
N ノズル部材
n 噴射孔
U 巻取ユニット
Y 糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸道に沿って、走行する糸に適宜処理を付与する糸処理装置を配設した繊維機械において、前記糸処理装置の全体または部分をケーシングで覆い、該ケーシング内部に圧縮空気を供給してケーシング内部を昇圧すると共に、前記ケーシングから出ている部材に対して圧縮空気を吹き付けるノズル部材を前記ケーシングに設けたことを特徴とする風綿対策装置。
【請求項2】
前記ケーシング内には、主として前記糸処理装置の駆動源を構成する部材が設けられ、前記ケーシングの外部には、糸に直接作用する作用部材が設けられ、前記駆動源と前記作用部材とをつなぐ軸やボス等がケーシングの壁を貫通しており、前記ケーシング内の高圧空気が前記軸やボスと前記壁との間から外部へ押し出されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の風綿対策装置。
【請求項3】
前記糸処理装置が、糸に所定の張力を付与するテンション装置であって、前記ケーシングの外側に、糸を挟持するクランプ部材や糸をガイドするガイド部材を突設したことを特徴とする請求項1または2に記載の風綿対策装置。
【請求項4】
前記ノズル部材が、前記クランプ部材や前記ガイド部材の所定位置に向けて、前記ケーシングに供給される圧縮空気を吹き付けていることを特徴とする請求項3に記載の風綿対策装置。
【請求項5】
糸継ぎ装置を有し、複数の小径の給糸ボビンの糸を糸継ぎしながら一個の大径の巻取パッケージに巻き取る自動ワインダーであって、請求項1から4のいずれかに記載の風綿対策装置を備えていることを特徴とする自動ワインダー。
【請求項6】
前記糸継ぎ装置が糸継ぎする毎に、前記風綿対策装置に圧縮空気を所定時間供給する構成としたことを特徴とする請求項5に記載の自動ワインダー。
【請求項7】
前記糸継ぎ装置が圧縮空気を噴射してスプライスを行うスプライサーであって、糸継ぎ動作のタイミングに同期して前記風綿対策装置に圧縮空気を瞬間供給する構成としたことを特徴とする請求項5または6に記載の自動ワインダー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−210746(P2007−210746A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32550(P2006−32550)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】