説明

風車

【課題】風車の耐雷設備において、高い安全性を保ちつつメンテナンスを容易化する。
【解決手段】翼のレセプタが受けた雷電流を翼内のアース線に導く。アース線は、翼のピッチ角を変化させるための軸受の内周側の空間を通ってロータヘッド内に導かれる。軸受を経路とせずに、且つブラシ等の摺動・摩耗する部材を用いずにロータヘッド側に雷電流を導くことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風車の耐雷に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、風車の翼には落雷対策が施される。図9は、風車の一例を示す側面図である。風車101のタワー102が基礎106の上に建てられる。タワー102の上にヨー軸受109を介してナセル103が取り付けられる。ヨー軸受109によって、ナセル103は概ね鉛直方向の回転軸であるヨー軸を中心に回転可能である。ナセル103の一端に主軸受108を介してロータヘッド104が取り付けられる。主軸受108によって、ロータヘッド104は概ね水平方向の回転軸である主軸を中心にナセル103に対して回転可能である。ロータヘッド104に、翼軸受107を介して、主軸の周方向に並ぶ複数の翼105が取り付けられる。翼105は、翼軸受107の回転軸であるピッチ軸のまわりに回転して制御されたピッチ角度に向くことができる。
【0003】
翼105が受けた風力によってロータヘッド104が回転することにより、主軸受108に支持される主軸が回転する。主軸の回転は、ナセル103の内部に配置された増速機によって増速され、発電機を駆動して電力を生成する。
【0004】
耐雷のために、各翼105の表面に、雷放電を受電するための複数個のレセプタ110(金属製受雷部)が取り付けられる。レセプタ110は、翼内部を通るダウンコンダクタ111(引き下げ導線)に接続される。ダウンコンダクタ111によって翼根に導かれた雷電流は、アース線に電気的に接続される。アース線は、ロータヘッド104、ナセル103、及びタワー102に設けられた雷電流の経路を通って接地される。
【0005】
このような風車101の耐雷構造においては、雷電流の経路を何らかの手段で翼軸受107、主軸受108、ヨー軸受109などの回動部を通して接地する必要がある。これらの軸受を雷電流の導線の一部として用いることにより、ダウンコンダクタ111を接地し、翼105のレセプタ110からの雷電流を逃がすことが可能である。
【0006】
より安全性や耐久性を向上するために、軸受の箇所をバイパスするように雷電流を導く構造が考えられる。具体的には、アースブラシやスライディングコンタクト(すべり接点)をバイパス手段として用いることにより、軸受を流れる雷電流の一部をバイパスさせることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7390169号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のバイパス手段は、軸受の回転によって摺動・摩耗する消耗品を用いるため、定期メンテナンスが必要である。よりメンテナンスの容易な耐雷技術が望まれる。
【0009】
軸受との間に隙間を介して電流経路を形成し、スパークによって隙間に電流を流すスパークギャップの手段も採用することができる。しかしこの手段においては、以下のような問題点を克服するための工夫が必要となる。
(1)場合によってはバイパスが不十分となり、軸受部もしくはその他の想定外の部位に電流が流れる可能性がある。
(2)スパークによって発生する電磁波が制御機器等に悪影響を与える可能性がある。
(3)スパークによりギャップ構成部材自体及びその周辺部材に物理的な損傷を与える可能性がある。
(4)経年劣化によりギャップ長が変化し、スパーク特性が変化する。
【0010】
上記の問題点に鑑みて、スパークギャップを必要としない電流経路を用いた、よりメンテナンスの容易な耐雷技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下に、[発明を実施するための形態]で使用される番号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための形態]との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0012】
本発明の一側面において、風車の翼のレセプタが受けた雷電流が翼内のアース線に導かれる。アース線は、翼のピッチ角を変化させるための軸受の内周側の空間を通ってロータヘッド内に導かれる。軸受を経路とせずに、且つブラシ等の摺動・摩耗する部材を用いずにロータヘッド側に雷電流を導くことができる。
【0013】
本発明の一側面において、風車はロータヘッド(1)と、雷放電を受電するレセプタが取り付けられた翼(2)と、ロータヘッドと翼とを接続し、翼のピッチ角を可変とする軸受(3)と、翼と軸受の内周側の空間とを通って雷放電をロータヘッド側に導くアース線(7a)とを備える。
【0014】
本発明の他の側面において、風車は更に、翼の翼根の端面と、翼の翼根の内周面と、翼の翼根の内周面に設けられた段とのうちの少なくとも一つに、結合手段を用いて固定される翼取付板(4、4a、4b、4c)を備える。翼取付板は、アース線を通す貫通孔(6a)を有する。
【0015】
本発明の更に他の側面において、風車は更に、貫通孔(6a)の内周側に取り付けられる絶縁性の部材(14)を備える。
【0016】
本発明の更に他の側面において、風車は更に、軸受(3)の翼取付板(4)と対向する側に取り付けられる板状部材(5)を備える。貫通孔(6a)から翼(2)の反対側に引き込まれたアース線(7a)は、翼取付板(4)の軸受(3)側の面に沿って配線され、更に、板状部材(5)の翼(2)の反対側の面に沿って配線される。
【0017】
本発明の更に他の側面において、風車は更に、軸受(3)の翼取付板(4)と対向する側に取り付けられる板状部材(5)を備える。アース線の一部(7b)は、翼取付板(4)の翼(2)側の面に取り付けられる。アース線の他の一部(7c)は、板状部材(5)の翼(2)の反対側に、アース線(7a)の一部に対して延長方向が90度以下であるように取り付けられる。
【0018】
本発明の更に他の側面において、風車の翼(2)がフェザー位置であるとき、アース線の一部(7b)とアース線の他の一部(7c)とがなす角度は30度以下である。
【0019】
本発明の更に他の側面において、風車のアース線(7a)は、軸受(3)の部分においてたるみを有する。
【0020】
本発明の更に他の側面において、風車は更に、ロータヘッド(1)の内部に固定され、アース線(7a)を覆う導電性の部材であるシールド部材(18)を備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、風車の耐雷設備において、メンテナンスを容易化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態における風車のロータヘッド及び翼根を示す。
【図2】図2は、本発明の第2実施形態における風車のロータヘッドと翼根を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の第3実施形態が解決しようとする課題を説明するための翼軸受付近の断面図である。
【図4】図4は、本発明の第3実施形態におけるアース線の配置を示す。
【図5】図5は、本発明の第4実施形態の風車について説明するための翼軸受付近の断面図である。
【図6】図6は、本発明の第4実施形態において、翼がフェザー状態のときのアース線の経路を示す。
【図7】図7は、本発明の第4実施形態において、翼がファイン状態のときのアース線の経路を示す。
【図8A】図8Aは、翼取付板の取付手段の一例を示す。
【図8B】図8Bは、翼取付板の取付手段の一例を示す。
【図8C】図8Cは、翼取付板の取付手段の一例を示す。
【図9】図9は、風車の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の第1実施形態における風車は、図9を参照して説明した風車と同じ全体構成を有する。図1は、第1実施形態におけるその風車のロータヘッド及び翼根を示す。図1におけるロータヘッド1、翼2、及び翼軸受3は、図9で説明したロータヘッド104、翼105、及び翼軸受107にそれぞれ対応する。図1は、ロータヘッド1の輪郭を点線で描き、その内部を透視した図である。3本の翼2のうち2本の翼根のみが描かれている。
【0024】
翼軸受3は、翼2をロータヘッド1に対してピッチ角方向に回転可能に支持する環状の軸受である。翼軸受3の翼2側の面に翼取付板4が取り付けられる。翼取付板4は貫通孔を有する。その孔は、例えば翼取付板4の中心部に形成される。翼取付板4は翼2の翼根に対応する形状を有する。翼2の翼根部にはフランジが形成され、そのフランジがボルトによって翼取付板4に固定されることによって翼2が翼取付板4に固定される。
【0025】
翼取付板4の翼2に対する固定手段は、上記の手段に限られない。図8A〜図8Cは、翼取付板4の翼2に対する取付手段の例を示す断面図である。図8Aの例では、翼2の翼端の端面に固定される。図8Bの例では、翼2の翼端近くの内周面に翼取付板4bが固定される。この場合、例えば翼取付板4bの外周に円周状のフランジなどの取付部23が形成され、取付部23を翼2の内周面に取り付けることによって翼取付板4bを固定することができる。図8Cの例では、翼2の翼根の近くの内周面に、取付部24として内側に向かって突出する段差が形成される。この取付部24に対して翼根側から、翼2の内周面よりもやや小さい輪郭を有する円盤状の翼取付板4cが翼2内部に固定される。このような様々な手段によって翼取付板4a、4b、4cを翼2に固定することができる。固定するために、溶接やボルト締結などの結合手段を採用することができる。
【0026】
翼軸受3の翼2と対向する側の面に、板状部材である連結軸取付板5が取り付けられる。連結軸取付板5は、孔を有する。孔は、例えば連結軸取付板5の中心部に形成される。連結軸取付板5には連結軸11が取り付けられる。連結軸11は、ピッチ角駆動手段12に取り付けられる。ピッチ角駆動手段12は、連結軸11をアクチュエータによって押し引きすることによって、制御信号に従ったピッチ角に翼2を駆動する。
【0027】
翼2の内部の空間に、雷電流を導く導線であるダウンコンダクタ7が配置される。ダウンコンダクタ7の端部は、図9のレセプタ110に相当するレセプタに接続される。翼2の内壁面に、接続金具8が取り付けられる。翼取付板4の翼側(翼軸受3と反対側)の面に、固定金具9が取り付けられる。ダウンコンダクタ7の翼根側の端部は、接続金具8によってアース線7aと電気的に接続される。アース線7aの一部は、固定金具9によって翼2の内部の決められた経路に沿って配線される。アース線7aの他の一部は更に、翼取付板4の孔と、翼軸受3の内周側の空間と、連結軸取付板5の孔とによって形成される孔6を通ってロータヘッド1の内部に導かれて、連結軸取付板5の翼2と反対側の面に取り付けられる。
【0028】
アース線7aは、絶縁性の部材で被覆された絶縁ケーブルであることが望ましい。雷電流が連続的に印加されることによる形状の変化を抑制する観点から、絶縁被覆にはEPR(エチレンプロピレンゴム)もしくはXLPE(架橋ポリエチレン)を用いることが望ましい。これらの材料は、電気的な絶縁性能、耐候性、難燃性、耐捻回性(ねじれや屈曲に強い)の特性において、本実施形態におけるアース線7aに適している。更に、軸受周辺は潤滑油が使用されているため、アース線7aには耐油性も求められるが、これらの材料は耐油性においてもすぐれている。
【0029】
翼2はロータヘッド1に対し旋回する。そのためアース線7aには翼の旋回に伴うねじれが生じる。このねじれを許容できるよう、アース線7aは、翼軸受3の部分において、たるみを持つ(張られた状態よりも長くなる)ように固定される。またはアース線7aとして、翼2内のアース線とロータヘッド1内のアース線とをスリップリングや回転コネクタ装置等によって互いに回転できるように接続した導線を用いる。
【0030】
図1の例では、連結軸取付板5の翼軸受3と反対側の面に、固定金具10が取り付けられる。孔6からロータヘッド1内部に引き出されたアース線7aは、固定金具10によってロータヘッド1内の決められた経路に沿って配線される。
【0031】
このような構成を備えた風車が落雷を受けると、レセプタから侵入した雷電流がダウンコンダクタ7に沿って翼2の内部を翼根方向に導かれ、アース線7aに渡される。アース線7aを流れる雷電流は、孔6を通ってロータヘッド1の内部の経路に導かれる。雷電流は更に、図示しない経路を通ってナセル、タワー内の導線を通って接地電極に導かれる。このような構成においては、翼2のレセプタが受雷した雷電流を翼軸受3に流すことなくロータヘッド1の内部に導くことができる。
【0032】
図2は、本発明の第2実施形態における風車のロータヘッド1と一本の翼2の翼根とを示した断面図である。第1実施形態との相違点のみを説明する。翼取付板4の孔6a、翼軸受3、及び連結軸取付板5の穴6bを通してロータヘッド1内部に引き込まれたアース線7aに雷電流が通過する時、強い電磁波が発生する。その電磁波のロータヘッド1の内部に配置された制御機器類に対する影響を抑制するために、ロータヘッド内部20に金属製のシールド部材18が取り付けられる。図2の例では、ロータヘッド内部20の金属部材17(何らかの機器を接地するための構造梁など)にシールド部材18が取付金具19により取り付けられる。シールド部材18は、アース線7aをその延長方向に少なくとも一部の範囲で覆う。シールド部材18に替えて、金属製のダクトをロータヘッド内部20に設置してもよい。ロータヘッド内部20に引き込まれたアース線7aは、シールド部材18の内部を通って、ロータヘッド1の外部に導かれる。アース線7aを流れる雷電流によって発生する電磁波はシールド部材18によってブロックされる。そのためロータヘッド内部20の制御機器類に対する影響が低減する。
【0033】
雷電流通過時、アース線7aとそれを支える金属部材間には大きな電位差が発生する。アース線7aの絶縁被覆による絶縁耐力の余裕幅が大きくない場合には、より安全性を向上するために、金属部材のアース線7a側の面を絶縁部材で覆うことが望ましい。図2の例では、翼取付板4のアース線7aの配線経路に沿う箇所の表面上が絶縁部材13で覆われる。更に、孔6aと孔6bのそれぞれの内周面も絶縁部材14、15で覆われる。更に、上述したシールド部材18も、絶縁部材16を介して金属部材17に対して固定される。このような構成により、高い安全性及び信頼性を保って翼軸受3の内周側を通して雷電流の経路を通すことが可能となる。
【0034】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。第1、第2実施形態と異なる箇所についてのみ説明する。図3は、第3実施形態が解決しようとする課題を説明するための翼軸受3付近の断面図である。この図の例では、アース線7aは、翼取付板4の翼2側の箇所と、連結軸取付板5の翼2と反対側の箇所とで互いに平行(電流の流れ方向は反平行)に配置されている。このようにアース線7aを平行に配置すると、フレミングの左手の法則により、アース線間に反発力が働く。図3のような配置の場合、アース線7aによって固定金具9に対して翼取付板4から引き剥がす方向に力が働く。そのため固定金具9には、その力に耐えられる強度が求められる。
【0035】
図4に、本発明の第3実施形態におけるアース線7aの配置を示す。この図の例では、孔6cが翼取付板4aの中心から外れた周縁部に形成されることによって、孔6cと、連結軸取付板5の孔6bの位置がずれている。アース線7aは、翼2内から孔6cを通って翼軸受3の内周側の空間に導かれる。翼取付板4aの翼2と反対側の面、すなわち翼取付板4a、翼軸受3の内周部、及び連結軸取付板5によって形成される空間側の面に、取付金具22が取り付けられる。アース線7aは取付金具22によって翼取付板4a上の所定の経路に沿って配置される。アース線7aは更に、孔6bを通ってロータヘッド1の内部に導かれる。図4の例では、アース線7aは、翼取付板4a上の経路と、ロータヘッド1内の経路で平行である。アース線7aを流れる電流の向きは翼取付板4a上の経路と、ロータヘッド1内の経路で反平行である。このような構成に図2で説明した絶縁部材を適用する場合、孔6cの内周側と、アース線7aが配置される経路上の翼取付板4aの面に絶縁性の部材が取り付けられる。
【0036】
このような構成を有する風車が落雷を受けた場合、アース線7aに雷電流21が流れる。アース線7aの翼取付板4a上の経路とロータヘッド1内の経路とは平行である。そのためローレンツ力によって、翼取付板4a上のアース線7aは、翼取付板4aに押し付けられる。翼取付板4aは翼2を固定するために強度が高く、且つ翼軸受3に対して強固に固定される。そのためアース線7aに掛るローレンツ力を高い強度で受け止めることができる。取付金具22に掛かる力が低減するため、図3の例に比べて取付金具22の強度は小さくてよい。このような構成により、アース線7aに大きなローレンツ力が掛かる場合でも、その力を確実に受け止めることができる。
【0037】
図5は、本発明の第4実施形態の風車について説明するための翼軸受3付近の断面図である。第3実施形態と異なる箇所についてのみ説明する。本実施形態においては、翼取付板4の孔6aと連結軸取付板5の孔6bとは、第1実施形態と同様に、平面方向に対応する同じ位置、例えばそれぞれの中心部に形成されていてよい。翼取付板4の翼2側の面には、図示しない固定金具によってアース線7aが所定の経路に固定される。アース線7aは孔6a及び孔6bを通ってロータヘッド1の内部に導かれる。ロータヘッド1内部において、アース線7aは、図示しない固定金具によって、連結軸取付板5上に所定の経路に沿って配置される。
【0038】
垂直方向(連結軸取付板5の主面に垂直な方向)に見て、すなわち翼軸受3の回転軸の方向から見た平面配置において、翼取付板4上のアース線7aの経路と、連結軸取付板5上のアース線7aの経路とは一直線である。このような構成において雷電流21がアース線7aを流れると、垂直方向から見たときに翼取付板4側のアース線7aと連結軸取付板5側のアース線7aとが重なっておらず離れているため、互いの間に働くローレンツ力は小さい。従って、固定金具に掛かる力を小さくすることができる。
【0039】
翼取付板4側のアース線7aと連結軸取付板5側のアース線7aとは、正確に一直線である必要は無い。連結軸取付板5側のアース線7aは、翼取付板4側のアース線の少なくとも一部に対して、概ね延長方向(電流が流れる向き)が90度以下であるように取り付けられればよい。更に、垂直方向に見て図5に示したアース線7aの平面配置を有し、且つ翼取付板4に沿った経路が図4のように翼取付板4の翼2と反対側の面となるようにアース線7aを配置することも可能である。
【0040】
図6と図7を参照して、第4実施形態におけるアース線7aの配置についてより詳細に説明する。図6は、風車が停止し、翼2のピッチ角がフェザー状態に制御されたときのアース線7aの配置を連結軸取付板5の側から見た図である。図7は、通常運転時に翼2のピッチ角がファインに制御された場合を示す。アース線7b、7cは、図5のアース線7aの二つの箇所を示す。翼取付板4側(翼2の翼根部)のアース線7bが点線で描かれ、連結軸取付板5側(ロータヘッド内部)のアース線7cが実線で描かれている。
【0041】
落雷の可能性がある場合、風車は通常運転を停止する。ピッチ角駆動手段12が連結軸11を駆動することによって、翼2のピッチ角がフェザー状態に制御される。このとき、ローレンツ力によってアース線7aに掛かる力を抑制するために、アース線7bの経路とアース線7cの経路がなす角度が90度以下であることが望ましく、概ね平行(平面配置が概ね一直線)であることが更に望ましい。アース線7aの全体ではなくても、孔6a及び孔6bから所定の長さの範囲内でこうした角度の条件が満たされると、アース線7bとアース線7cとの間に働くローレンツ力の大きさを抑えることができる。具体的には、アース線7bとアース線7cのなす角度が、雷電流通過時に発生する電磁力の影響が無視できるレベルとなる±30度以内の範囲とすることが望ましい。
【0042】
風車の通常運転時には、ピッチ角駆動手段12がロータヘッド1(連結軸取付板5)に対して翼2(翼取付板4)を回転させ、翼2をファインとする。この場合、翼取付板4に対して決められた経路を通るアース線7bは、図7に示すようにロータヘッド1内のアース線7cに対して回転する。通常運転時には落雷を受ける恐れが無いため、アース線7bとアース線7cの電流の流れ方向が0度から大きくずれても問題は発生しない。
【0043】
以上に説明した本発明の幾つかの実施形態は、図9の風車101のタワー102とナセル103との間のヨー軸受109に対しても適用することができる。その場合、ナセル103の内部のアース線が、ヨー軸受109を通ってタワー102の側に導かれる。この構成により、ヨー軸受109に雷電流を流さずにアース線を接地することができる。
【0044】
以上に説明した本発明の幾つかの実施形態は、互いに矛盾しない範囲で任意に組み合わせが可能であることは当業者には明らかである。
【符号の説明】
【0045】
1 ロータヘッド
2 翼
3 翼軸受
4、4a、4b、4c 翼取付板
5 連結軸取付板
6 貫通孔
6a 貫通孔
6b 貫通孔
7 ダウンコンダクタ
7a アース線
8 接続金具
9 固定金具
10 固定金具
11 連結軸
12 ピッチ角駆動手段
13 絶縁部材
14 絶縁部材
15 絶縁部材
16 絶縁部材
17 金属部材
18 シールド部材
19 取付金具
20 ロータヘッド内部
21 雷電流
22 取付金具
23 取付部
24 取付部
101 風車
102 タワー
103 ナセル
104 ロータヘッド
105 翼
106 基礎
107 翼軸受
108 主軸受
109 ヨー軸受
110 レセプタ
111 ダウンコンダクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータヘッドと、
雷放電を受電するレセプタが取り付けられた翼と、
前記ロータヘッドと前記翼とを接続し、前記翼のピッチ角を可変とする軸受と、
前記翼と前記軸受の内周側の空間とを通って前記雷放電を前記ロータヘッド側に導くアース線
とを具備する風車。
【請求項2】
請求項1に記載された風車であって、
更に、前記翼の翼根の端面と、前記翼の翼根の内周面と、前記翼の翼根の内周面に設けられた段とのうちの少なくとも一つに、結合手段を用いて固定される翼取付板を具備し、
前記翼取付板は、前記アース線を通す貫通孔を有する
風車。
【請求項3】
請求項2に記載された風車であって、
更に、前記貫通孔の内周側に取り付けられる絶縁性の部材を具備する
風車。
【請求項4】
請求項2又は3に記載された風車であって、
更に、前記軸受の前記翼取付板と対向する側に取り付けられる板状部材を具備し、
前記貫通孔から前記翼の反対側に引き込まれた前記アース線は、前記翼取付板の前記軸受側の面に沿って配線され、更に、前記板状部材の前記翼の反対側の面に沿って配線される
風車。
【請求項5】
請求項2又は3に記載された風車であって、
更に、前記軸受の前記翼取付板と対向する側に取り付けられる板状部材を具備し、
前記アース線の一部は、前記翼取付板の前記翼側の面に取り付けられ、
前記アース線の他の一部は、前記板状部材の前記翼の反対側に、前記アース線の一部に対して延長方向が90度以下であるように取り付けられる
風車。
【請求項6】
請求項5に記載された風車であって、
前記翼がフェザー位置であるとき、前記アース線の一部と前記アース線の他の一部とがなす角度は30度以下である
風車。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載された風車であって、
前記アース線は、前記軸受の部分においてたるみを有する
風車。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載された風車であって、
更に、前記ロータヘッドの内部に固定され、前記アース線を覆う導電性の部材であるシールド部材
を具備する風車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−237208(P2012−237208A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105629(P2011−105629)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】