説明

飛行時間型質量分析計

【課題】 らせん軌道を描くイオンの周回数を変更することができる飛行時間型質量分析計を実現する。
【解決手段】 検出器移動手段である支持アーム42、支持台座44、ねじ切り棒45、ハンドル47、ガイドレール43および筐体46により、整合回路を含む検出器41を、周回数に応じたイオンビーム22の周回軌道上に位置させることとしているので、検出されるイオンビーム22の総飛行距離を可変にすることができ、ひいては質量分解能あるいは感度等を、オペレータが望むものとすることを実現させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、イオン源から射出されたイオンが、扇形電場の作用により周回軌道を描きつつ、前記周回軌道の軌道面と直交する直交方向に軌道面をずらし、らせん軌道を描いて飛行する飛行時間型質量分析計に関する。
【背景技術】
【0002】
飛行時間型質量分析計(Time Of Flight Mass Spectrometer、以下TOFMSと略称する)は、微量化合物の定量分析、定性一斉分析あるいは試料イオンの構造解析等に用いられる。TOFMSでは、イオンの質量が計測されるが、この質量の分解能は、
(質量分解能)=(T/2)×ΔT
の式で表される。ここで、Tはイオンの総飛行時間、ΔTは計測される電気波形の時間幅である。この式によれば、時間幅ΔTを一定として、総飛行時間Tを長いものとすることにより高い質量分解能を得ることができる。そして、TOFMSでは、総飛行時間Tを長いものとするために総飛行距離が長くされる。しかし、総飛行距離を長くするためには、直線型、反射型のTOFMSでは装置を大型化する必要があった。
【0003】
ここで、装置の大型化を避けかつ高い質量分解能を実現するために、多重周回型TOFMSが用いられる。この多重周回型TOFMSでは、マツダプレートが組み合わされた円筒状の4つの扇形電極によりトロイダル電場を発生させ、イオンを8の字型の同一の周回軌道上を繰り返し飛行させ、イオンの多重周回を行う。これにより、装置を大型化することなく、イオンの総飛行距離を長いものとし、ひいては総飛行時間Tを伸ばすことができる。なお、この多重周回型TOFMSでは、初期位置、初期速度、初期運動エネルギーによる検出面での空間的な広がりと時間的な広がりを1次の項まで収束することができる。
【0004】
しかし、この多重周回型TOFMSでは、イオンの追い越しと言う問題が生じる。すなわち、同一の周回軌道上を複数種類のイオンが繰り返し飛行する場合には、速度の速い軽いイオンが周回遅れの速度の遅い重いイオンを追い越す。この追い越しにより、検出器に入力するイオンの順序は、質量が軽いものから重いものの順ではなくなり、この結果として時間的な入力順序からイオンの種類を特定することが困難となる。
【0005】
この困難は、らせん軌道型TOFMSを用いて解決される。らせん軌道型TOFMSは、周回軌道の始点と終点とを周回軌道面と直交する方向にずらし、イオンをらせん軌道を描いて飛行させる。これにより、イオンが多重周回を行う際にも、速度の速いイオンが速度の遅いイオンを追い越すことはなくなり、検出器へのイオンの入力順序からイオンの種類を確定することができる。
【0006】
ここで、イオンのらせん軌道を実現するために、
(1)イオンをらせん軌道型TOFMSに入射する際に、斜めから入射する(例え ば、特許文献1参照)、
(2)デフレクタにより周回軌道上のイオンを周回軌道面と直交する方向にずらす (例えば、特許文献2参照)、
ことが行われる。
【特許文献1】特開2000―243345号公報、(第1頁、図1)
【特許文献2】特開2003―86129号公報、(第1頁、図1)
【非特許文献1】ジャーナルオブマススペクトロメトリー(J.Mass Spectrom.)、38巻(Vol.38)、2003年、p.1125〜1142
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記背景技術によれば、イオンの周回数を変更することは容易でない。すなわち、上述した(1)のイオンを斜めから入射する方法では、入射角度を変更することで周回数を変更することができる。しかし、イオンを斜めから入射する場合には、軌道面と直交する方向の空間的、時間的収束性がなく、直交する方向の速度分布が大きいと周回数の異なるイオンが同一の検出器に入射する可能性がある。
【0008】
また、上述した(2)のデフレクタにより周回軌道上のイオンを周回軌道面と直交する方向にずらす場合には、らせん軌道がデフレクタにより固定となるために、検出器位置が固定のままでは周回数の変更を行うことができない。
【0009】
なお、らせん軌道型TOFMSにおいては、イオンの周回数を変更することは有用である。周回数を変更することは、総飛行距離を変更することである。一方で、総飛行距離は感度および質量分解能に影響を与え、総飛行距離が長いほど感度が低下し質量分解能は向上する。従って、周回数を変更することで、相反する感度および質量分解能を調節し、イオンの分析に最適なものとすることができる。
【0010】
これらのことから、らせん軌道を描くイオンの周回数を変更することができる飛行時間型質量分析計をいかに実現するかが重要となる。
この発明は、上述した背景技術による課題を解決するためになされたものであり、らせん軌道を描くイオンの周回数を変更することができる飛行時間型質量分析計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の発明にかかる飛行時間型質量分析計は、イオン源から射出されたイオンが、扇形電場の作用により周回軌道を飛行しつつ、前記周回軌道の一部で、前記周回軌道の軌道面と直交する直交方向に軌道面をずらしたらせん軌道を描く飛行時間型質量分析計であって、前記周回軌道上に位置し、前記イオンを検出する検出器と、前記軌道面上の前記位置を保ちつつ、前記直交方向に前記検出器を移動させる検出器移動手段と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
この請求項1に記載の発明では、検出器移動手段により、周回軌道上に位置するイオンの検出器を、周回軌道面の位置を保ちつつ、直交方向に移動させる。
また、請求項2に記載の発明にかかる飛行時間型質量分析計は、請求項1に記載の発明において、前記検出器が、電気インピーダンスの整合回路を備えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に記載の発明にかかる飛行時間型質量分析計は、請求項1または2に記載の発明において、前記検出器移動手段が、前記検出器を、前記軌道面と直交する面内で支持する支持アームを備えることを特徴とする。
【0014】
この請求項3に記載の発明では、支持アームにより、検出器を支持する。
また、請求項4に記載の発明にかかる飛行時間型質量分析計は、請求項3に記載の発明において、前記検出器移動手段が、前記支持アームを前記直交方向に移動させる駆動手段を備えることを特徴とする。
【0015】
この請求項4に記載の発明では、駆動手段により、支持アームを移動させる。
また、請求項5に記載の発明にかかる飛行時間型質量分析計は、請求項4に記載の発明において、前記駆動手段が、前記支持アームを支持し、ねじ穴を有する支持台座および前記支持台座を前記直交方向に移動させる前記ねじ穴に貫通されたねじ切り棒を備えることを特徴とする。
【0016】
この請求項5に記載の発明では、駆動手段は、ねじ穴を有する支持台座により、支持アームを支持し、ねじ切り棒を、このねじ穴に貫通させて支持台座を移動させる。
また、請求項6に記載の発明にかかる飛行時間型質量分析計は、請求項5に記載の発明において、前記ねじ切り棒が、ねじ溝を手動で回転させるハンドルを備えることを特徴とする。
【0017】
この請求項6に記載の発明では、ハンドルにより、ねじ切り棒を回転させる。
また、請求項7に記載の発明にかかる飛行時間型質量分析計は、請求項4に記載の発明において、前記駆動手段が、前記支持アームを前記直交方向に自動で移動させる自動移動手段を備えることを特徴とする。
【0018】
この請求項7に記載の発明では、駆動手段は、自動移動手段により、支持アームを移動させる。
また、請求項8に記載の発明にかかる飛行時間型質量分析計は、請求項5および7に記載の発明において、前記自動移動手段が、前記ねじ切り棒に機械的に接続され、前記ねじ切り棒のねじ溝を回転させるモータであることを特徴とする。
【0019】
この請求項8に記載の発明では、自動移動手段は、ねじ切り棒に機械的に接続されるモータとする。
また、請求項9に記載の発明にかかる飛行時間型質量分析計は、請求項7あるいは8に記載の発明において、前記飛行時間型質量分析計が、前記検出器の直交方向の位置を、前記自動移動手段により前記イオンが前記周回軌道を繰り返し飛行する周回数情報に基づいて自動制御する制御部をさらに備えることを特徴とする。
【0020】
この請求項9に記載の発明では、飛行時間型質量分析計は、制御部により、検出器の直交方向の位置をイオンの周回数情報に基づいて自動制御する。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、請求項1に記載の発明によれば、検出器移動手段により、周回軌道上に位置するイオンの検出器を、周回軌道面の位置を保ちつつ、直交方向に移動させることとしているので、イオンが飛行する周回軌道の周回数に応じた直交方向の位置に検出器を配置しイオンの総飛行距離を可変とし、ひいては飛行時間型質量分析計の質量分解能を可変とし最適なものとすることができる。
【0022】
請求項2に記載の発明によれば、検出器が電気インピーダンスの整合回路を備えることとしているので、電気信号の反射を抑え、ひいては擬イオンピークの発生を防止することができる。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、支持アームにより、検出器を支持することとしているので、らせん軌道を飛行するイオンの軌道を妨害することなく検出器移動手段を配設することができる。
【0024】
請求項4に記載の発明によれば、駆動手段により、支持アームを移動させることとしているので、検出器も直交方向に移動させることができる。
請求項5に記載の発明によれば、駆動手段は、ねじ穴を有する支持台座により、支持アームを支持し、ねじ切り棒を、このねじ穴に貫通させて支持台座を移動させることとしているので、簡易な構成で精度の高い移動を行うことができる。
【0025】
請求項6に記載の発明によれば、ハンドルにより、ねじ切り棒を回転させることとしているので、手動で支持台座、ひいては検出器の位置を変更することができる。
請求項7に記載の発明によれば、駆動手段は、自動移動手段により、支持アームを移動させることとしているので、人手を介することなく検出器の位置を変更することができる。
【0026】
請求項8に記載の発明によれば、自動移動手段は、ねじ切り棒に機械的に接続されるモータとすることとしているので、ねじ切り棒の回転を電気信号を用いて行うことができる。
【0027】
請求項9に記載の発明によれば、飛行時間型質量分析計は、制御部により、検出器の直交方向の位置をイオンの周回数情報に基づいて自動制御することとしているので、オペレータが容易に周回数の変更、ひいては質量分解能の変更を行うことできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる飛行時間型質量分析計(TOFMSと略称する)を実施するための最良の形態について説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【0029】
まず、本実施の形態にかかるTOFMSの全体構成について、図2を用いて説明する。図2は、本実施の形態にかかるTOFMSの外観を示す図である。TOFMSは、イオン光学系10およびイオン源20を含む。ここで、イオン光学系10およびイオン源20は、真空容器をなし、内部は高真空状態とされる。イオン源20は、試料をイオン化された気体とし、この気体が収束および加速されたイオンビームを形成し、イオン光学系10に注入する。イオン光学系10は、イオンビームを周回軌道上で飛行させ、イオンビームに含まれる異なる質量の元素を分離検出する。なお、図2に描かれているxyz座標軸は、後述する図に示されるxyz座標軸と同一のものであり、各図で共通する方向を指し示している。
【0030】
図3は、イオン光学系10のxz軸方向の断面を示す図である。イオン源20は、イオンビーム22を射出する。イオン光学系10は、マツダプレートが被せられた扇形の円筒電極11〜14、デフレクタ15〜16および検出部17を含む。円筒電極11〜14は、内部に円筒電場を発生し、イオンビーム22の進行方向を曲げる。ここで、円筒電極11〜14は、矩形状のイオン光学系10の四隅に配設され、イオンビーム22の飛行経路が8の字型の周回軌道を描くようにされる。
【0031】
デフレクタ15および16は、円筒電極12および13の間の飛行経路上に配設され、イオンビーム22を図3に示されるxz軸断面と直交するy軸方向に移動させる。図4は、円筒電極12および13、並びに、デフレクタ15および16の、図3に示すxz軸断面と直交するxy軸断面の構造を示す断面図である。デフレクタ15および16は、対をなす電極板がy軸方向に複数個並んでおり、対をなす電極板にはデフレクタ15および16で異なる極性の電圧が印加されている。そして、円筒電極12を通過したイオンビーム22は、デフレクタ15でy軸の正方向に曲げられ周回軌道面を移動し、その後、デフレクタ16でy軸の負方向に曲げられて円筒電極13に入射し、y軸方向に移動した新たな周回軌道面の飛行を続ける。
【0032】
この様にイオンビーム22は、8の字型の周回軌道を飛行しつつ、y軸方向へ周回軌道面を移動させるらせん軌道を描く。そして、イオンビーム22は、周回軌道の周回数に応じて周回軌道面をy軸方向に逐次移動し、長い総飛行距離を確保しつつ異なる飛行経路を維持する。これにより、速度が異なるイオンが、周回遅れで同一飛行経路を飛行することを防止し、速度すなわち質量が異なるイオンを、質量に比例する時間的な順序で計測する。
【0033】
検出部17は、円筒電極11および円筒電極14の間の飛行経路上に配設され、周回軌道上を飛行するイオンを検出する。図1は、検出部17の構成を示す外観図である。検出部17は、筐体46、検出器41および検出器移動手段を有し、この検出器移動手段は、支持アーム42および駆動手段を有し、この駆動手段は、支持台座44、ガイドレール43およびねじ切り棒45を含む。なお、駆動手段には、後述する、図示されないハンドル47が含まれる。
【0034】
検出器41は、イオンビーム22の検出器で、マイクロチャンネルプレート等が用いられる。支持アーム42は、検出器41および支持台座44を固定接続するアームで、支持台座44を含む検出器移動手段が、周回軌道上に位置するイオンビーム22の飛行を妨げることのないz軸方向に張り出している。
【0035】
支持台座44は、支持アーム42および検出器41を支持し、ガイドレール43およびねじ切り棒45に沿ったy軸方向に移動可能となっている。ここで、ガイドレール43は、支持台座44がxz軸面内で回転することを防止し、ひいては検出器41のイオンビーム検出面を、常にイオンビーム入射方向と直交させる。
【0036】
ねじ切り棒45は、オペレータによるねじ溝の回転動作により、支持台座44をy軸方向に移動させる。なお、支持台座44には、ねじ切り棒45に対応するねじ穴が形成されている。筐体46は、上述した検出器移動手段を固定し、かつイオンビーム22の飛行を妨害することのないコの字型の形状とされる。なお、ねじ切り棒45は、図示されない筐体46背面のハンドル47により回転される。
【0037】
図5は、検出器41のxy軸断面を示す断面図である。検出器41は、マイクロチャネルプレート51、整合回路52およびシールド53を含む。マイクロチャネルプレート51は、イオンを検出する電子増倍管である。マイクロチャネルプレート51の検出面には、ガラス電極が多数配置されており、入射したイオンビーム22を検出し電子増幅を行う。
【0038】
整合回路52は、後段に電気ケーブルを介して電気接続される増幅器等の電子機器の入力インピーダンスと、マイクロチャネルプレート51の出力インピーダンスとの電気的なインピーダンスマッチングを行う整合回路である。増幅器等の電子機器の入力インピーダンスは50Ω程度であるのに比較して、マイクロチャネルプレート51から出力される電子流は電流源としての特性を有し、高い出力インピーダンスを有する。従って、整合回路52を介することなくマイクロチャネルプレート51および後段の電子機器が電気接続される際には、電気信号の反射が生じる。
【0039】
図6は、整合回路52が存在しない場合に、後段の電子機器で検出される電気信号の一例を示す図である。縦軸は電気信号の信号強度、横軸は電気信号の検出時間を示している。ここで、マイクロチャネルプレート51で検出されたイオンビーム22の電気信号は、イオンピーク62として示されている。一方、マイクロチャネルプレート51および後段の電子機器の電気的なインピーダンスの不一致により接続の両端で電気信号の反射波が生じる。そして、この反射波は、両者を接続する電気ケーブルの長さに比例する概ね数十nsec程度にイオンピーク62から遅れた時間軸上の位置に、反射擬イオンピーク63を生じる。ここで、反射擬イオンピーク63は、異なる質量のイオンを、時間軸上のイオンピークの位置により分離検出するTOFMSの場合には、誤検出にもつながり好ましいものではない。
【0040】
図5に戻り、シールド53は、マイクロチャネルプレート51および整合回路52を包含する、金属性のケースである。なお、シールド53は、筐体46ひいてはイオン光学系10のシャーシに電気接続されており、シールド53の近傍空間に不要な電界が発生することを防止している。これにより、検出器41の近傍を通過するイオンビーム22は、周回軌道に影響を受けることなく、安定した飛行を行う。
【0041】
つづいて、検出器移動手段の動作について図7を用いて説明する。図7は、検出部17のyz軸断面を示す断面図である。なお、図7の筐体46に接続されたハンドル47は、ねじ切り棒45に接続されており、ハンドル47を手動で回転させることにより、支持台座44ひいては検出器41がy軸方向に移動する。
【0042】
また、図7に示す複数のイオンビーム22は、らせん軌道を描きつつ、周回軌道面をy軸方向に移動するイオンビーム22の周回ごとのビーム位置である。従って、上部に位置するイオンビーム22から順に周回数1〜5のイオンビーム22の位置を示している。
【0043】
まず、オペレータは、分析を行う試料の質量分解能および感度等を勘案し、イオンビーム22の周回数を決定する。その後、オペレータは、ハンドル47を回転し、支持台座44の固定される検出器41を、y軸方向の目的とする周回数のイオンビーム位置に設定する。図7は、一例として、周回数が1であるイオンビーム位置に検出器41を設定した場合を図示している。その後、オペレータは、TOFMSの動作を開始し、試料の分析を行う。
【0044】
上述してきたように、本実施の形態では、検出器移動手段である支持アーム42、支持台座44、ねじ切り棒45、ハンドル47、ガイドレール43および筐体46により、整合回路52を含む検出器41を、周回数に応じたイオンビーム22の周回軌道上に位置させることとしているので、検出されるイオンビーム22の総飛行距離を可変にすることができ、ひいては質量分解能あるいは感度等を、オペレータが望むものとすることができる。
【0045】
また、本実施の形態では、ねじ切り棒45は、ハンドル47により手動により回転させることとしたが、ハンドル47をモータに置き換え、検出器41の位置を自動制御することもできる。この場合には、このモータを自動制御する制御部に設定された周回軌道の周回数情報等に基づいて、検出器41のy軸方向の位置が自動で位置設定される。さらに、オペレータにより制御部に設定される質量分解能あるいは感度等の設定情報から周回数を決定し、自動で検出器41の位置設定を行うようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施の形態の検出部を示す構成図である。
【図2】飛行時間型質量分析計(TOFMS)の外観を示す外観図である。
【図3】TOFMSのイオンが飛行する周回軌道面の断面を示す断面図である。
【図4】TOFMSのデフレクタの断面を示す断面図である。
【図5】実施の形態の検出器の断面を示す断面図である。
【図6】整合回路が存在しない場合に受信される、電気信号の一例を示す説明図である。
【図7】実施の形態の検出器の移動を示す説明図である。
【符号の説明】
【0047】
10 イオン光学系
11〜14 円筒電極
15、16 デフレクタ
17 検出部
20 イオン源
22 イオンビーム
41 検出器
42 支持アーム
43 ガイドレール
44 支持台座
45 ねじ切り棒
46 筐体
47 ハンドル
51 マイクロチャネルプレート
52 整合回路
53 シールド
62 イオンピーク
63 反射擬イオンピーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン源から射出されたイオンが、扇形電場の作用により周回軌道を飛行しつつ、前記周回軌道の一部で、前記周回軌道の軌道面と直交する直交方向に軌道面をずらしたらせん軌道を描く飛行時間型質量分析計であって、
前記周回軌道上に位置し、前記イオンを検出する検出器と、
前記軌道面上の前記位置を保ちつつ、前記直交方向に前記検出器を移動させる検出器移動手段と、
を備えることを特徴とする飛行時間型質量分析計。
【請求項2】
前記検出器は、電気インピーダンスの整合回路を備えることを特徴とする請求項1に記載の飛行時間型質量分析計。
【請求項3】
前記検出器移動手段は、前記検出器を、前記軌道面と直交する面内で支持する支持アームを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の飛行時間型質量分析計。
【請求項4】
前記検出器移動手段は、前記支持アームを前記直交方向に移動させる駆動手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の飛行時間型質量分析計。
【請求項5】
前記駆動手段は、前記支持アームを支持し、ねじ穴を有する支持台座および前記支持台座を前記直交方向に移動させる前記ねじ穴に貫通されたねじ切り棒を備えることを特徴とする請求項4に記載の飛行時間型質量分析計。
【請求項6】
前記ねじ切り棒は、ねじ溝を手動で回転させるハンドルを備えることを特徴とする請求項5に記載の飛行時間型質量分析計。
【請求項7】
前記駆動手段は、前記支持アームを前記直交方向に自動で移動させる自動移動手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の飛行時間型質量分析計。
【請求項8】
前記自動移動手段は、前記ねじ切り棒に機械的に接続され、前記ねじ切り棒のねじ溝を回転させるモータであることを特徴とする請求項5および7に記載の飛行時間型質量分析計。
【請求項9】
前記飛行時間型質量分析計は、前記検出器の直交方向の位置を、前記自動移動手段により前記イオンが前記周回軌道を繰り返し飛行する周回数情報に基づいて自動制御する制御部をさらに備えることを特徴とする請求項7あるいは8に記載の飛行時間型質量分析計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−294451(P2006−294451A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−114276(P2005−114276)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】