説明

食品の殺菌装置

【課題】殺菌を均一に行うことが可能な食品の殺菌装置を提供する。
【解決手段】野菜Aを過熱水蒸気により殺菌する殺菌装置1であって、過熱水蒸気が内部に供給される殺菌チャンバー20と、殺菌チャンバー20内に高さ位置を異ならせて設けられた食品搬送用の上部コンベア13と下部コンベア14とを備え、これら上部コンベア13と下部コンベア14は、互いに逆方向に回動し、かつ上部コンベア13の下流端13bの下方に下部コンベア14の途中が位置するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば野菜や果物などの食品の殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した食品の殺菌装置として、過熱水蒸気を噴射しているトンネル内に、食品をコンベアにより搬入して、トンネルを通過させることによって食品の殺菌を行うように構成されたものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−41098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献の技術にあっては、コンベアに載った状態のままで殺菌を行うため、コンベア上の食品の上部と下部とで過熱水蒸気と接触する状況が異なり、殺菌状態が不均一になる虞があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、殺菌を均一に行うことが可能な食品の殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る食品の殺菌装置は、食品を過熱水蒸気により殺菌する食品の殺菌装置であって、前記過熱水蒸気が内部に供給される殺菌チャンバーと、前記殺菌チャンバー内に高さ位置を異ならせて設けられた食品搬送用の複数のコンベアとを備え、前記複数のコンベアのうち、高さ方向で隣り合う2つのコンベアが、互いに逆方向に回動し、かつ高い方のコンベアの下流端の下方に低い方のコンベアの途中が位置するように配置されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2に係る食品の殺菌装置は、請求項1に記載の食品の殺菌装置において、前記複数のコンベアのうちの少なくとも1つに、回転軸の周りに食品攪拌用フィンを有する攪拌部材が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3に係る食品の殺菌装置は、請求項2に記載の食品の殺菌装置において、前記フィンは、前記回転軸の外周から外方に向けて突出した基端部を有し、その基端部の先に、コンベア上の食品を前記回転軸の回転に伴い掬い上げて攪拌する掬上げ部が、前記基端部から側方に突出するように設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4に係る食品の殺菌装置は、請求項3に記載の食品の殺菌装置において、前記掬上げ部は湾曲した状態に形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項5に係る食品の殺菌装置は、請求項1乃至4のいずれかに記載の食品の殺菌装置において、前記殺菌チャンバーとは別に設けられた、内部に食品搬送用コンベアを有し、そのコンベアで搬送される食品を冷却する冷却チャンバーを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明による場合には、高い方のコンベアの下流端から食品が落下すると、高い方のコンベアから低い方のコンベアへ食品が移動するとともに、食品が攪拌される。よって、殺菌を均一に行うことが可能となる。
【0012】
請求項2による場合には、更に加えて攪拌部材が食品を攪拌することとなり、殺菌をより均一に行うことが可能となる。特に、請求項3のように掬上げ部が回転軸の回転に伴いコンベア上の食品を攪拌する構成にすることで、殺菌の均一性を更に向上させることができる。このとき、請求項4のように掬上げ部を湾曲した状態に形成すると、攪拌される食品の移動方向を徐々に変えることができ、これにより食品が破損したり傷ついたりすることを抑制し得る。
【0013】
請求項5による場合には、殺菌チャンバーにより高温に加熱された食品を冷却チャンバーで冷却するので、殺菌した食品の後処理を迅速に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る食品の殺菌装置を示す正面図である。
【図2】図1の食品の殺菌装置を示す平面図である。
【図3】図1の食品の殺菌装置を示す左側面図である。
【図4】図1の食品の殺菌装置に備わった殺菌チャンバーを示す正面図である。
【図5】図4の殺菌チャンバーにおける過熱水蒸気の供給状態を説明するための図である。
【図6】図4の殺菌チャンバーにおける攪拌手段の説明図である。
【図7】本発明によりよもぎを殺菌したときの時間と一般性菌数と処理温度との関係を示すグラフである。
【図8】図1の食品の殺菌装置に備わった攪拌装置の一部を示す斜視図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る食品の殺菌装置に備えられる攪拌装置の他の例を示す斜視図であり、図8の箇所Cに対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態を具体的に説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施形態に係る食品の殺菌装置を示す正面図、図2はその殺菌装置を示す平面図、図3は同殺菌装置を示す左側面図、図4は同殺菌装置に備わった殺菌チャンバーを示す正面図、図5は図4の殺菌チャンバーにおける過熱水蒸気の供給状態を説明するための図、図6は図4の殺菌チャンバーにおける攪拌手段の説明図である。
【0017】
この食品の殺菌装置1は、過熱水蒸気・冷気発生チャンバー10と殺菌チャンバー20と冷却チャンバー30とを有する。殺菌チャンバー20と冷却チャンバー30は、殺菌チャンバー20を上側に、冷却チャンバー30を下側にそれぞれ配設されており、これら殺菌チャンバー20及び冷却チャンバー30の横側に過熱水蒸気・冷気発生チャンバー10が配設されている。
【0018】
過熱水蒸気・冷気発生チャンバー10は、軟水器2と電機ボイラー3と過熱水蒸気発生器4とを備え、これらにより過熱水蒸気を発生し、その発生した過熱水蒸気を、配管5を介して殺菌チャンバー20へ供給する。また、過熱水蒸気・冷気発生チャンバー10は、クーラーユニット6と冷却水タンク7と排気冷却ユニット8とを備え、これらにより冷気を発生し、その冷気を冷却チャンバー30に供給するように構成されている。
【0019】
殺菌チャンバー20は、内部に、ホッパー11と搬入コンベア12と上部コンベア13と下部コンベア14と殺菌容器16と噴霧装置17と攪拌装置18とを有し、殺菌チャンバー20と冷却チャンバー30とに亘ってシューター15を有する。
【0020】
ホッパー11に投入された食品としての野菜は、搬入コンベア12を介して上部コンベア13の上流側13aに与えられ、時計回りに回動する上部コンベア13の下流端13bから落下し、上部コンベア13の下方に設けられた下部コンベア14に受けられる。この下部コンベア14は、上部コンベア13とは逆向きの反時計回りに回動し、その下流端14bに達すると、下流端14bから落下してシューター15により冷却チャンバー30へ供給される。
【0021】
上部コンベア13の上側と下部コンベア14の上側には、それぞれ攪拌装置18が配設されている。これら攪拌装置18は同様のものを用いており、回転軸18aに沿った4箇所のそれぞれにおいて、回転軸18aの回りに複数、例えば図示例では4つのフィン18bが設けられた構成である。各フィン18bは、図8に示すように回転軸18aの外周から外方に向けて突出した基端部18cを有し、その基端部18cの先端側に掬上げ部18dが、基端部18cに対して折り曲げて、基端部18cから側方に突出するように設けられている。この掬上げ部18dは、回転軸18aの回転に伴い、コンベア13、14上の野菜Aを掬い上げて攪拌する。回転軸18aは、本実施形態では各コンベア13、14の幅方向に一致するように配置されている。但し、回転軸18aの配置方向は、各コンベア13、14の幅方向に一致しなくてもよい。
【0022】
上記ホッパー11に投入される野菜Aは、所定寸法に、例えば2mm角程度に荒破砕されたものを、予備乾燥して得たものである。なお、荒破砕の寸法としては、野菜の種類(野菜以外の食品の場合にはその食品の種類)に応じて適宜調整される。
【0023】
上部コンベア13と下部コンベア14とは、上部コンベア13の上流側13aの近傍と、下部コンベア14の下流端14bの近傍とを外部に出した状態で、殺菌容器16の内部に収納されている。殺菌容器16は、入口シャッター16aと出口シャッター16bとを有する。入口シャッター16aは上部コンベア13の上流側13aに対応して設けられており、出口シャッター16bは下部コンベア14の下流端14bに対応して設けられている。上部コンベア13の下流端13bから外側に離れた箇所には、下流端13bから落下する野菜を案内する案内板13cが設けられ、この案内板13cにより野菜が下部コンベア14の上部の所定箇所に案内される。
【0024】
下部コンベア14の下流端14bの下側には、前記シューター15が設けられている。このシューター15は、下部コンベア14の下流端14bから落下する野菜を冷却チャンバー30へ供給するものであり、この図示例では送り方向を逆にする上部シューター15aと下部シューター15bとを有する。
【0025】
上記噴霧装置17は、前記配管5と連通連結されていて、上下2段の水平部17a、17bと、上側の水平部17aから分岐した枝部17cと、下側の水平部17bから分岐した枝部17dとを有する。水平部17aは上部コンベア13に沿って延びていて、枝部17cは上部コンベア13の上方を幅方向に延びている。水平部17bは下部コンベア14に沿って延びていて、枝部17dは下部コンベア14の上方を幅方向に延びている。各枝部17c、17dは、下向きに過熱水蒸気Bを噴霧するノズルが設けられており、枝部17cからの過熱水蒸気Bは上部コンベア13に向けて噴霧され、枝部17dからの過熱水蒸気Bは下部コンベア14に向けて噴霧される。
【0026】
冷却チャンバー30は、内部に複数、図示例では3つの冷却ゾーン31、32、33が設けられていて、各冷却ゾーン31、32、33には前記過熱水蒸気・冷気発生チャンバー10から発生した冷気が供給される。また、これら各冷却ゾーン31、32、33の内部を通るように、野菜搬送用コンベア34が配設されている。このコンベア34の上流側34aには、前記下部シューター15bが配設されており、一方、コンベア34の下流端34bには排出用コンベア35が設けられ、この排出用コンベア35により冷却チャンバー30から排出された野菜Aは、排出用コンベア35の下流端35aの下側に配した貯留容器36に貯留され、所定のタイミングで貯留容器36から野菜を取り出して、例えば袋詰めして保管し、或いは後工程へ送って粉体に粉砕される等の処理が施される。
【0027】
このように構成された本実施形態に係る食品の殺菌装置1にあっては、上部コンベア13の下流端13bから野菜Aを落下させて下部コンベア14の上側に移動させる構成となっているので、その落下の際に野菜Aを攪拌することができ、よって殺菌を均一に行うことが可能となる。更に加えて、攪拌部材18が野菜Aを掬い上げて攪拌するので(図6参照)、殺菌をより均一に行うことが可能となる。更に、殺菌チャンバー20により高温に加熱された野菜を冷却チャンバー30で冷却するので、殺菌した野菜の後処理を迅速に行うことが可能になる。
【0028】
図7は、本実施形態に係る食品の殺菌装置によりよもぎを殺菌処理したときの時間と一般性菌数と処理温度との関係を示すグラフである。横軸に時間(秒)をとり、縦軸に一般性菌数(個/g)をとっていて、処理温度(℃)としては200℃、250℃、310℃、350℃、370℃の5つの温度で行った。
【0029】
この図より理解されるように、約40秒〜50秒の処理時間で一般性菌数(個/g)を150個/g 以下にまで低くすることができる。
【0030】
なお、上述した実施形態では殺菌チャンバー20に上部コンベア13と下部コンベア14の2つを配設した構成を採っているが、本発明はこれに限らず、殺菌チャンバー20に3つ以上のコンベアを配設し、上段のコンベアから落下した野菜を下段のコンベアで受けるような構成としてもよい。
【0031】
また、上述した実施形態では攪拌装置18は、回転軸18aに沿った4箇所に、各箇所ごとに4つのフィン18bを配した構成としているが、本発明はこれに限らない。例えば、回転軸18aに沿った1箇所または2以上(4を除く)の各箇所に、4つのフィン18bを配した構成としてもよい。また、各箇所ごとのフィン18bの数は、4つでなくてもよく、1つ又は2つ以上(4を除く)としてもよい。
【0032】
更に、上述した実施形態では基端部18cの先端側の掬上げ部18dを同じ方向に折り曲げているが、一部を反対側に折り曲げるようにしてもよい。
【0033】
更にまた、上述した実施形態では基端部18cの先の掬上げ部18dとして、基端部18cに対して折り曲げて、基端部18cから側方に突出するように設けているが、本発明はこれに限らない。例えば、図9に示すように掬上げ部18eは基端部18cから湾曲した状態に形成してもよい。なお、図9は、図8に示す4つのフィン18bのうちの1つにおける掬上げ部18dを含む箇所Cに対応する図であり、図8の掬上げ部18dとは異なる形態の掬上げ部18eを示している。
【0034】
この図9に示す掬上げ部18eを有するフィンによる場合には、掬上げ部18eが湾曲しているので、一点鎖線にて示すように攪拌される食品Aの移動方向を徐々に変えることができ、これにより食品Aが破損したり傷ついたりすることを抑制し得る。
【0035】
更にまた、上述した実施形態では回転軸の回りに所定幅のフィンを配した構成のものを例に挙げているが、本発明はこれに限らず、回転軸の外側にリング状のフィンを設け、そのフィンの片面または両面に、食品を掬い上げる掬上げ部を側方に突出するように設けた構成であってもよい。
【0036】
更にまた、上述した実施形態では攪拌装置18は上部コンベア13と下部コンベア14にそれぞれ1つずつ配設しているが、各コンベアに複数の攪拌装置を配置するようにしてもよい。
【0037】
更にまた、上述した実施形態では食品の一例として野菜を殺菌処理する場合につき説明しているが、本発明は野菜に限らず、他の食品の殺菌に関しても同様に処理できることは勿論である。
【符号の説明】
【0038】
1 食品の殺菌装置
13 上部コンベア
14 下部コンベア
18 攪拌装置
18a 回転軸
18b フィン
20 殺菌チャンバー
30 冷却チャンバー
A 野菜(食品の一例)
B 過熱水蒸気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を過熱水蒸気により殺菌する食品の殺菌装置であって、
前記過熱水蒸気が内部に供給される殺菌チャンバーと、
前記殺菌チャンバー内に高さ位置を異ならせて設けられた食品搬送用の複数のコンベアとを備え、
前記複数のコンベアのうち、高さ方向で隣り合う2つのコンベアが、互いに逆方向に回動し、かつ高い方のコンベアの下流端の下方に低い方のコンベアの途中が位置するように配置されていることを特徴とする食品の殺菌装置。
【請求項2】
請求項1に記載の食品の殺菌装置において、
前記複数のコンベアのうちの少なくとも1つに、回転軸の周りに食品攪拌用フィンを有する攪拌部材が設けられていることを特徴とする食品の殺菌装置。
【請求項3】
請求項2に記載の食品の殺菌装置において、
前記フィンは、前記回転軸の外周から外方に向けて突出した基端部を有し、その基端部の先に、コンベア上の食品を前記回転軸の回転に伴い掬い上げて攪拌する掬上げ部が、前記基端部から側方に突出するように設けられていることを特徴とする食品の殺菌装置。
【請求項4】
請求項3に記載の食品の殺菌装置において、
前記掬上げ部は前記基端部から湾曲した状態に形成されていることを特徴とする食品の殺菌装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の食品の殺菌装置において、
前記殺菌チャンバーとは別に設けられた、内部に食品搬送用コンベアを有し、そのコンベアで搬送される食品を冷却する冷却チャンバーを有することを特徴とする食品の殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−246494(P2010−246494A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101706(P2009−101706)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(509112811)サン化工販売株式会社 (2)
【出願人】(000140568)株式会社沖坤 (3)
【出願人】(596124221)
【出願人】(506029059)
【出願人】(396011288)株式会社タナカテック (3)
【Fターム(参考)】