説明

食品の褐変防止方法

【課題】従来の防止剤とは異なる組み合わせを用いる方法であって、褐変を十分に防止し、安全であり、しかも添加する食品の風味や匂いを劣化させることがない方法の提供。
【解決手段】1つ以上の糖成分および1つ以上の酸化防止剤を用いる食品の褐変防止方法。糖成分は、単糖および二糖から選ばれる。本発明で、食品を浸漬した場合、浸漬時間は、約3分以上、好ましくは約5分以上である。浸漬時間の上限は、約40分、好ましくは約30分である。浸漬する温度は、室温より低いことが望ましく、好ましくは約15℃以下そしてさらに好ましくは約15℃以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の褐変防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品例えば野菜、果物および魚介類を貯蔵する場合、時間とともに食品の色調が変化し、それとともに風味も劣化することは、褐変として良く知られている現象である。褐変それ自体を漂白剤例えば次亜塩素酸ナトリウムを用いて漂白する方法があるが、この方法では、食品に塩素の匂いがついたり、食品の組織が変化するなどの欠点がある。
【0003】
褐変の現象が生ずる原因として、種々のものが考えられている。例えば、食品に含まれる酵素によるもの、酵素によらないもの例えばポリフェノール物質の酸化、糖のカラメル化、ビタミンCの酸化、還元糖またはカルボニル化合物とアミノ酸との反応などが知られている。そのため、これらの原因を防止するために、従来から種々の方法が検討され、用いられてきている。検討され、一部用いられている方法は、多岐にわたるが、いくつかの例を示すと、以下のようになる。
【0004】
酵素によるものに対しては、食品特に野菜を熱湯に浸漬するブランチングがあるが、可溶性成分の溶出や品質の変化などを招く欠点がある。
【0005】
酵素によらないものに対しては、酸化防止剤を使用する方法などがある。安全性などの見地から食品に使用できる酸化防止剤としては、ビタミンC、ビタミンE、ジブチルヒドロキシドルエン(BHT),ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、エリソルビン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄などが挙げられる。また、最近では、一般の天然物志向などから、合成品よりも天然物由来のものも検討されており、例えばコーヒー豆抽出物(クロロゲン酸)、緑茶抽出物(カテキン)、ローズマリー抽出物が挙げられており、さらに特許文献1−3には、クロレラ抽出物、魚類白子の抽出物、エノキタケ抽出物、パパイヤなどからのプロテアーゼ、菌体由来のサイトカイン、ヒノキチオール、ベタイン、タマネギの抽出物が示されている。また特許文献4には、酸性キシロオリゴ糖が示され、特許文献5には、フェルラ酸が示され、特許文献6には、トレハロースの誘導体が示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−139434
【特許文献2】特開平3−228641
【特許文献3】特開平11−243853
【特許文献4】特開2008−5724
【特許文献5】特開2007−222125
【特許文献6】特開2006−188672
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、これら従来の方法とは異なり、従来の防止剤とは異なる組み合わせからなる防止剤を用いる方法に関するものであって、褐変を十分に防止し、安全であり、しかも添加する食品の風味や匂いを劣化させることがない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明方法では、1つ以上の糖成分および1つ以上の酸化防止剤を用いる。
【0009】
本発明で使用される糖成分としては、単糖、二糖、糖アルコールおよびオリゴ糖がある。単糖としては、例えばグルコース、フルクトースなどがあり、二糖としては、例えばスクロース、マルトース、ラクトース、パラチノースなどがあり、糖アルコールとしては、例えばエリトリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトールなどがあり、オリゴ糖としては、例えばイソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、乳果オリゴ糖、フラクトオリゴ糖などがあるが、これらに限定されない。そして、これら糖成分の組み合わせも使用できる。これらのなかで、糖成分として、特にグルコース、スクロースが好ましい。
【0010】
本発明で使用される糖成分の量は、0.1重量%から3重量%、好ましくは0.2重量%から2重量%である。
【0011】
本発明で使用される酸化防止剤としては、食品に使用可能な酸化防止剤を用いることができる。例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、トコフェロール、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、二酸化硫黄およびこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。好ましい酸化防止剤は、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸である。
【0012】
本発明で使用される酸化防止剤の量は、0.1重量%から2重量%、好ましくは0.2重量%から0.5重量%である。
【0013】
本発明の方法では、これら糖成分および酸化防止剤を用いるが、これら成分を媒体に例えば溶解、懸濁、分散させる。取り扱いの容易さを考えると、溶解するのが好ましい。媒体としては、人体に害を及ぼさないものが好ましいが、その点で水が最適である。
【0014】
本発明では、本発明の糖成分および酸化防止剤を含む溶液、懸濁液または分散液に褐変を防止しようとする食品を浸漬したり、または噴霧または塗布したりする。
【0015】
浸漬した場合、浸漬時間は、浸漬する温度にもよるが、約3分以上、好ましくは約5分以上そしてさらに好ましくは約10分以上である。浸漬時間を長くすると、褐変防止の効果を得ることができるが、処理した食品が水ぽっくなり、風味が劣ることになる。良好な結果を得るには、浸漬時間の上限は、約40分、好ましくは約30分、より好ましくは約20分そして最も好ましくは約15分である。浸漬する温度は、低いほど良い結果を得ることができるが、室温より低いことが望ましく、好ましくは約15℃以下そしてさらに好ましくは約15℃以下である。
【0016】
本発明を使用できる食品としては、野菜類、果実類、魚介類などの生鮮食品、缶詰またはレトルト食品などの加工食品、または飲料がある。
【0017】
野菜類としては、例えばトマト、ナス、レタス、キャベツ、ジャガイモ、サツマイモ、ダイコン、ゴボウ、エノキダケ、シイタケなどが挙げられ、果実類としては、例えばアボカド、ナシ、リンゴ、モモ、バナナ、パパイヤなどが挙げられる。魚介類では、例えばアジ、イワシ、サンマ、カニ、エビ、ハマグリなどが挙げられる。飲料としては、例えば緑茶、ウーロン茶、果汁飲料などが挙げられる。
【0018】
本発明を使用することにより、従来の褐変防止のやり方では得ることのできなかった効果を得ることができる。そして、その最も強調されるべき点は、本発明で使用される成分のそれぞれが、既に十分に知られたものであり、安全性の点から全く問題がないことである。このような問題のない成分を組み合わせることにより、従来では得ることのできなかった褐変防止の目的を安全に達成できることは、驚くべきことである。
【0019】
次に、実施例を示す。
【実施例1】
【0020】
対象物として、5個のアボカドを用いた。それぞれのアボカドに包丁を入れて2つに分け、種を取り出し、2つの果肉のそれぞれを4等分にした。
【0021】
スクロース0.5重量%および亜硫酸ナトリウム0.5重量%を含む水溶液2L中に、5℃または10℃で前記のアボカドの果肉を浸漬した。8分間または18分間浸漬した後、液から取り出し、冷凍した。解凍後、4℃で24時間置いた。得られたものは、全く褐変することがなく、また風味も極めて良好で、浸漬前のものと全く同じであった。
【実施例2】
【0022】
実施例1の方法を繰り返したが、ただし、浸漬時間を5分にし、浸漬温度を5℃または10℃にした。得られたものは、褐変がなく、また風味は極めて良好で、浸漬前のものと全く同じであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の糖成分および1つ以上の食品に使用可能な酸化防止剤を用いることを特徴とする食品の褐変防止方法。
【請求項2】
糖成分が、単糖および二糖から選ばれる請求項1の食品の褐変防止方法。
【請求項3】
食品を浸漬する場合、浸漬時間は、約3分以上であり、浸漬温度は、室温より低い温度である請求項1または2の褐変防止方法。
【請求項4】
食品がアボカドである請求項1−3の何れか1つの褐変防止方法。

【公開番号】特開2010−124824(P2010−124824A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328685(P2008−328685)
【出願日】平成20年11月29日(2008.11.29)
【出願人】(508376694)
【Fターム(参考)】