説明

食品トレー用ラミネート装置

【課題】サーマルラミネート製法においても、食品トレーの基材となる合成樹脂シートとラミネートフィルムとの位置合わせを正確に行なうことができる食品トレー用ラミネート装置を提供する。
【解決手段】ボビンに巻かれたフィルムを繰り出して、ライン上を所定の速度で搬送される食品トレー用合成樹脂シートの表面に、該フィルムを連続的に熱融着させる食品トレー用ラミネート装置において、ボビンからフィルムを繰り出すフィルム繰出し手段と、シートの搬送速度を検出する第1のセンサー手段と、ボビンに巻かれたフィルムの減少値を検出する第2のセンサー手段と、フィルムの繰出し速度制御に必要とされる所定の制御パラメータを入力する制御パラメータ入力手段19と、第1、第2のセンサー手段の検出値、ならびに制御パラメータの入力値に応じて、フィルムの繰出し速度を所定の値に制御する繰出し速度制御手段17と、を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の食材や弁当などを収納する食品トレー用の合成樹脂シートに対し、模様・図柄などが印刷されたラミネートフィルムを熱融着させる食品トレー用ラミネート装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スーパー・マーケットやコンビニエンス・ストア等の店舗において、各種の惣菜や弁当などの食品類を収納する容器として、ポリプロピレンやポリスチレン等の合成樹脂素材を用いた食品トレーが多用されている。これらの食品トレーは、その色彩・模様も美麗で任意の形に成型可能であり、かつ、その製造コストも低廉であるため広く世の中に普及している。
【0003】
一般に、幕の内弁当のように複数の異なる食材が一つの食品トレー内に詰め合わされる場合、これに用いられる食品トレーには、各々が分離された複数の凹部がプレス成形によって設けられており、凹部毎に、例えば、米飯、魚惣菜、肉惣菜、漬物等のそれぞれ異なる食材が盛られることになる。昨今、高級感を醸し出し消費者の購買意欲をそそるべく、例えば、図3に示されるようなトレー内の凹部毎に異なる図柄或いは模様を付して、あたかも異なる食材毎に異なった複数の食器を詰め合わせたような絵付けの食品トレーが製造されている(特許文献1参照)。
【0004】
このような食品トレーは、トレー内の凹部毎に異なる図柄或いは模様が印刷されたラミネートフィルムを、食品トレーを形成する合成樹脂シートに接着剤を用いて接着し、その後、所定の金型によって食品トレーの各凹部をプレス成形することにより大量生産することができる。なお、係るラミネート製法は、一般に「ドライラミネート製法」と呼称されており、食品トレー以外の分野においても、合成樹脂素材への印刷フィルムのラミネート方法として広く用いられている。
【0005】
しかながら、昨今の環境破壊や食品添加物に対する問題意識の高揚から、ドライラミネートによる接着剤の使用が問題視されるようになった。すなわち、食品トレーの製造工程において接着剤に用いられる有機溶剤の処理方法や、食品トレー中における接着剤や溶剤等の残留成分による人体への影響などが厳しく取り沙汰されるようになったのである。
【0006】
このため、近年においては、接着剤を使用せず熱融着によってラミネートフィルムと合成樹脂シートとを融着させる、いわゆる「サーマルラミネート製法」によるフィルムラミネートの手法が広く用いられるようになった(特許文献2参照)。ここで、従来のサーマルラミネートによる食品トレー用合成樹脂シートへのラミネートフィルムの融着処理方法を、図4に基づいて説明する。
【0007】
図4において、カレンダー装置200は、熱可塑性の合成樹脂原料を加熱・混捏した後に、これを圧延して薄膜状の合成樹脂シートを生成する装置である。すなわち、摂氏二百数十度程度に加熱融解された合成樹脂原料は、複数の圧延ロール201を経て薄膜のフィルム状に引き伸ばされ同図の右手方向(シート搬送方向)に連続して繰り出される。なお、このような合成樹脂原料から合成樹脂シートの薄膜を圧延生成する機器としては、この他にも、例えばT型ダイス装置などを用いることもできる。
【0008】
複数の圧延ロール201を経ることによって所定の幅ならびに厚さに引き伸ばされた合成樹脂シートは、複数のガイドロール202に沿って搬送され、該シート搬送方向の下流に設置されたサーマルラミネート装置100に連続的に供給される。因みに、係る合成樹脂シートは食品用トレーの基材となるものであり、通常、ポリスチレンやポリプロピレン等の合成樹脂原料が用いられることが多い。
【0009】
カレンダー装置200から繰り出された合成樹脂シートは、続いてサーマルラミネート装置100の入口において、上下に設けられたラミネートロール101の上下ローラー間に引き込まれる。一方、サーマルラミネート装置100の内部には、フィルムボビン102にロール状に巻かれたラミネートフィルムが準備されている。この場合のラミネートフィルムとしては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂薄膜に、予め図柄や色彩等が印刷されているものが用いられる。
【0010】
フィルムボビン102に巻かれているラミネートフィルムは、フィルムボビン102から順次繰り出されエキスパンダーロール103等を経て、図5に示すラミネート処理の模式図に表されるように、上記の合成樹脂シートと共にラミネートロール101の上下ローラー間に引き込まれる。
【0011】
カレンダー装置200から押出された合成樹脂シートは、ラミネートロール101に引き込まれる時点においても未だ摂氏百数十度の高温に保たれているので、上下のラミネートロール101によってラミネートフィルムがシートの表面に圧接されると、合成樹脂シートの表面にラミネートフィルムが熱融着される。これによって合成樹脂シートとラミネートフィルムが一体化され、サーマルラミネート処理が完了するのである。
【0012】
サーマルラミネート処理が施された合成樹脂シートは、複数の冷却ロール104を経由して搬送され所定温度まで冷却された後、巻取りボビン105に順次巻き取られて行く。その後、巻取りボビン105に巻き取られたラミネート済みの合成樹脂シートは、巻取りボビン105から再度繰り出され、金型による熱成形加工ならびに裁断の工程(図示せず)を経ることによって所定の食品用トレーが量産されることになる。
【0013】
【特許文献1】登録実用新案公報3056541号
【特許文献2】特開平7−2244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来のサーマルラミネート製法では、ドライラミネート製法のように合成樹脂シートの表面に接着剤を用いてラミネートフィルムを固定・接着しないので、合成樹脂シートとラミネートフィルムとの正確な位置合わせ、すなわち、合成樹脂シートとこれに熱融着されるラミネートフィルムとの同期関係を維持することが困難であった。このため、前述の図3のように、食品トレーの凹部毎にそれぞれ異なる図柄の食器模様を施す場合、これをサーマルラミネート製法で行うと食器の模様と食品トレーの凹部との位置ずれが頻繁に生じ、完成品の歩留まりが低いものとなってしまうという欠点があった。
【0015】
それ故、従来サーマルラミネート製法による食品トレーについては、食品トレーの基材となる合成樹脂シートとラミネートフィルムとの位置ずれが生じても問題がないように、例えば、上述の図5に示されるような単純な繰り返し模様などの、いわゆるエンドレス図柄が印刷されたラミネートフィルムを使用することが一般的であり、図3の食品トレーに示されるような複雑な図柄のラミネートフィルムを使用することが困難であった。
【0016】
本発明は、このような従来からの課題を解決することを目的とするものであって、より具体的には、サーマルラミネート製法においても、食品トレーの基材となる合成樹脂シートとラミネートフィルムとの位置合わせを正確に行なうことができる食品トレー用ラミネート装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第一の観点による食品トレー用ラミネート装置は、前述の目的を達成するため、
フィルムボビンにロール状に巻かれたラミネートフィルムを繰り出して、ライン上を所定の速度で搬送される食品トレー用合成樹脂シートの表面に、該ラミネートフィルムを連続的に熱融着させる食品トレー用ラミネート装置であって、
前記フィルムボビンからラミネートフィルムを順次繰り出すフィルム繰出し手段と
前記合成樹脂シートの搬送速度を検出する第1のセンサー手段と、
前記フィルムボビンに巻かれているラミネートフィルムの減少値を検出する第2のセンサー手段と
前記フィルム繰出し手段によるラミネートフィルムの繰出し速度の制御に必要とされる所定の制御パラメータを入力する制御パラメータ入力手段と、
前記第1および第2のセンサー手段の検出値、ならびに前記制御パラメータの入力値に応じて、前記フィルム繰出し手段におけるラミネートフィルムの繰出し速度を所定の値に制御する繰出し速度制御手段と、を含むことを特徴とする。
【0018】
したがって、このような構成によれば、フィルムボビンにロール状に巻かれたラミネートフィルムの繰り出し速度を各種センサー手段における検出値、ならびに各種制御パラメータの入力値によって所定の値に制御することが可能であり、合成樹脂シートの搬送速度に対するラミネートフィルムの繰り出し速度を自在に調整することができる。
【0019】
また、本発明の第二の観点による食品トレー用ラミネート装置に含まれる繰出し速度制御手段は、前記第1のセンサー手段の検出値と前記制御パラメータの入力値に基づいて、前記フィルムボビンからのラミネートフィルムの繰出し速度を前記合成樹脂シートの搬送速度に対し所定の割合に保ち、前記合成樹脂シートと該シートに熱融着されるラミネートフィルムとの位置関係の同期維持を図ることを特徴とする。
【0020】
したがって、このような発明の構成によれば、ライン上を搬送される合成樹脂シートの搬送速度とラミネートフィルムの繰出し速度とを所定の割合で同期させることができるので、サーマルラミネート製法によって熱融着される合成樹脂シートとラミネートフィルムとの正確な位置合わせが可能となる。
【0021】
また、本発明の第一または第二の観点による食品トレー用ラミネート装置に含まれる繰出し速度制御手段は、前記第2のセンサー手段の検出値と前記制御パラメータの入力値に基づいて、前記フィルムボビンに巻かれたラミネートフィルムの減少に拘らず、前記フィルムボビンからのラミネートフィルムの繰出し速度を一定に保ち、前記合成樹脂シートと該シートに熱融着されるラミネートフィルムとの位置関係の同期維持を図ることを特徴とする。
【0022】
したがって、このような発明の構成によれば、前記フィルムボビンからラミネートフィルムが順次繰り出され、該ボビンに巻かれたラミネートフィルムのロール径が減少した場合であっても、該ボビンから繰り出されるラミネートフィルムの繰出し速度を、常に一定値に保ち、合成樹脂シートと該シートに熱融着されるラミネートフィルムとの位置関係の同期維持を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明による食品トレー用ラミネート装置によれば、サーマルラミネート製法において、食品トレー用合成樹脂シートの搬送速度と、該シートに熱融着されるラミネートフィルムの繰出し速度を常に同期させることができるので、両者の正確な位置合わせが可能となる。これによって、単純なエンドレス図柄のラミネートフィルムではなく、トレー内の凹部毎に異なる食器模様を付した複雑な図柄のラミネートフィルムを用いた食品トレーを、サーマルラミネート製法により低コストで量産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明を実施するための最良の形態である実施例について、本願の明細書に添付した各図面を参照しつつ以下に説明を行う。
【0025】
先ず、本実施例による食品トレー用のサーマルラミネート装置1(以下、単に「ラミネート装置1」という)の概略構成を図1に示す。同図に示されるようにラミネート装置1は、主に、ラミネートフィルム供給部10と、ラミネート処理部20から構成されている。
【0026】
ラミネートフィルム供給部10は、主に、ラミネートフィルムがロール状に巻かれたラミネートフィルムボビン11、該ボビンからラミネートフィルムを繰り出すインフィードロール13、インフィードロール13を回転駆動する電動機14、該電動機の回転速度を制御する繰出し速度制御手段17、ラミネートフィルムボビン11の回転数を検出する回転センサー18、および速度制御手段17に各種の制御パラメータを入力する制御パラメータ入力手段19等から構成されている。
【0027】
なお、ラミネートフィルムボビン11に巻かれたラミネートフィルムは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂フィルムであり、その表面には、予めオフセット印刷やグラビア印刷によって、食品トレーの凹部ごとに、例えば、有田焼や伊万里焼、或いはその他の陶磁器特有の異なった地肌文様などが印刷されているものとする。
【0028】
一方、ラミネート処理部20は、主に、食品トレー用合成樹脂シートとラミネートフィルムとの圧接・融着を担うラミネートロール21a・21b、サーマルラミネート処理が完了したシートの冷却を担う冷却ロール22、ラミネートされたシートを巻き取る巻取りロール25、ライン上における合成樹脂シートの搬送速度を検出する搬送速度センサー26、およびサーマルラミネート処理が完了したシートのシートピッチを検出するピッチ測定センサー27等から構成されている。
【0029】
ラミネート処理部20への食品トレー用合成樹脂シートの供給は、ラミネート装置1の上流側に設置されたカレンダー装置(図示せず)から行われるが、カレンダー装置に関しては、前述の従来技術において説明したものと同様であるためその説明を省略する。なお、食品トレー用合成樹脂シートの供給源としては、上記のカレンダー装置の他にT型ダイス装置などを用いることも可能である。しかしながら、シートの厚さや温度などが均一な薄膜シートを得るためにはカレンダー装置を用いることが好ましい。
【0030】
なお、カレンダー装置に供給される合成樹脂材料としては、ポリエチレンやポリスチレン、或いはポリプロピレン等の高分子材料を用いることが一般的であるが、その他の塩化ビニール系の高分子材料を用いることも可能である。また、必要に応じて、タルク素材やパルプ素材等の無機・有機素材を合成樹脂材料に混入させるようにしても良い。
【0031】
次に、ラミネート装置1の動作について説明を行なう、先ず、食品トレーの基材となる合成樹脂シートは、上記のようにラミネート装置1の上流側に設置されたカレンダー装置(図示せず)から、ラミネート処理部20の入り口に設けられたラミネートロール21a、21bに所定の搬送速度を保ちつつ連続的に供給される。
【0032】
一方、ラミネートフィルムは、インフィードロール13を反時計方向に回転させることによって、ラミネートフィルムボビン11から順次繰り出され、ガイドロール12、16により担持されつつ、ラミネートフィルム供給部10の外部に繰り出される。因みに、インフィードロール13の回転数は繰出し速度制御手段17によって所定の値に制御される仕組みとなっており、係る制御動作の詳細については後述する。
【0033】
なお、インフィードロール13の回転数の制御については、インフィードロール13を回転駆動する電動機14の回転数を直接的に制御するようにしても良いし、或いはインフィードロール13にパウダーブレーキ等の回転抑制手段(図示せず)を設けて、係る回転抑制手段の制動力を電子的に制御する方式としても良い。
【0034】
また、本実施例においては、図1に示すようにインフィードロール13に当接されたタッチロール15を設け、ラミネートフィルムをタッチロール15によってインフィードロール13に押圧することにより、ラミネートフィルム供給部10の内部におけるラミネートフィルムの張緩変化に伴うフィルムの振動が外部に伝播され難い構造となっている。
【0035】
ラミネートフィルム供給部10から繰り出されたラミネートフィルムは、ガイドロール31、エキスパンダーロール32等を介して、ラミネート処理部20の入り口に設けられたラミネートロール21a、21bに供給される。なお、図1に示される実施例は、あくまでも本発明の一事例に過ぎず、図中に示されるガイドロール等の各種ロールの個数や位置は、同図の記載事例に限定されるものでないことはいうまでもない。
【0036】
ラミネート処理部20において、ラミネートフィルムは、ラミネートロール21a、21bの上下ローラーによって合成樹脂シートに圧接されつつ該ローラー間を通過する。前述のように、カレンダー装置(図示せず)から供給された合成樹脂シートは、摂氏百数十度程度の高温を保っているため、係る圧接工程を経ることによって、合成樹脂シートとラミネートフィルムとは容易に熱融着されサーマルラミネート処理が完了する。
【0037】
ラミネートロール21bは鋼管製のロールであり、加熱された樹脂等の癒着を避けるべく、その表面が、例えば、シリコンゴム等の離型材によってライニングされたいわゆるシリコンロールなどを使用することが好ましい。一方、ラミネートロール21aは水冷式の金属ロールであり、合成樹脂シートとラミネートフィルムとの圧接効果を高めるべく、例えば、ロールの表面に梨地模様を付したいわゆるエンボス・ロールを用いるようにしても良い。
【0038】
サーマルラミネート処理が終了し、その表面にラミネートフィルムが熱融着された合成樹脂シートは、続いて複数の冷却ロール22を介して搬送される間にほぼ室温程度まで冷却され、ガイドロール23、24等を経て、巻取りボビン25に巻き取られる。因みに、冷却ロール22は、搬送シートに対する冷却効果を高めるべく金属性であることが好ましく、また、その設置数も多いことが好ましい。言うまでもないが、図1に示されたラミネートロールや冷却ロール等の数や配置は、本発明実施の一事例に過ぎず、本発明の実施は係る事例に限定されるものではない。
【0039】
巻取りボビン25に巻き取られたラミネート済みの合成樹脂シートは、その後、巻取りボビン105から再度繰り出され、金型による熱成形加工ならびに裁断の工程(図示せず)を経ることによって、トレー内の凹部毎に異なる模様・図柄が正確に印刷された食品用トレーが量産されることになる。
【0040】
次に、本発明の骨子であるラミネートフィルム供給部10から繰り出されるラミネートフィルムの速度制御動作について説明を行なう。図1に示されるように、ラミネート処理部20のライン上を搬送される合成樹脂シートの搬送速度は、搬送速度センサー26によって検出され、その検出値は、ラミネートフィルム供給部10の繰出し速度制御手段17に送信される(図中の矢印A)。なお、搬送速度センサー26は、シートの搬送速度を検出し得るものであるならば、電磁的構成或いは光電的構成等を問わず種々の構成による速度センサーを用いることが可能である。
【0041】
また、ラミネートフィルムの繰り出し速度の制御に必要とされる各種の制御パラメータは、予め、ラミネート装置1を運用操作するオペレータによって、制御パラメータ入力手段19から入力されているものとする。因みに、係る制御パラメータとしては、例えば、標準とされる設定ライン速度や、ラミネートフィルムボビン11に対するブレーキ圧力などの種々の数値が挙げられるが、本制御動作において重要な制御パラメータは速度比率αである。
【0042】
一般に、ラミネートフィルムは、その厚さが0.02mm乃至0.03mm程度のものが使用されることが多く、これはラミネート処理が施される合成樹脂シートの1/10以下の厚さである。それ故、ラミネートフィルムは、ラミネートフィルムボビン11から繰り出されラミネートロール21a、21bに引き込まれるまでの過程において、通常、フィルムの搬送方向に対し数%から十数%の割合で伸張されることになる。もっとも、係る伸張率は、フィルムの材質や、搬送速度、或いはラミネートフィルムボビン11に加えられるブレーキ圧力等の各種の制御パラメータによって変化することはいうまでもない。
【0043】
本実施例では、上記のラミネートフィルムの伸張率を勘案しつつ、ラミネートフィルム供給部10からのラミネートフィルムの繰り出し速度を、ラミネート処理部20のライン上を流れる合成樹脂シートの搬送速度に対し所定の比率に設定することによって両者の動きを同期させ、ラミネート処理の熱融着時における両者の位置ズレを防止している。
【0044】
すなわち、図2の説明図に示すように、速度制御手段17は、制御パラメータ入力手段19から入力された各種のパラメータを定数とし、さらに合成樹脂シートの搬送速度vと速度比率αを基に、所定の演算処理f(α,v)を行って速度制御信号Fを生成する。係る速度制御信号Fによって、電動機14を制御することによりインフィードロール13から繰り出されるラミネートフィルムの搬送速度は、合成樹脂シートの搬送速度に対して所定の比率に保たれ、ラミネートフィルムと合成樹脂シートとの位置合わせを正確に行うことができる。
【0045】
演算処理f(α,v)に関しては、本発明の実際の実施態様に応じて種々の演算処理方式を適用することが可能である。例えば、合成樹脂シートの搬送速度vに対し速度比率αを乗じてラミネートフィルムの搬送速度とするような速度制御信号Fを生成する単純な演算処理であっても良い。この場合、速度制御信号Fの実際の値(例えば、その電流値や電圧値或いは周波数等)を決定するに際し、制御パラメータ入力手段19から入力された種々のパラメータによって、その値に各種の重み付けがなされる事はいうまでもない。
【0046】
実際の具体的な数値設定例を示せば、例えば、ラミネートフィルムの厚さ0.025mm、ラミネートフィルムボビン11のブレーキ圧2.6kg、タッチロールのタッチ圧3.5kg、合成樹脂シートが流れる標準ラインスピードを21m/分と入力し、速度比率をα=92.7に設定すれば、合成樹脂シートの搬送速度を100とすると、ラミネートフィルムの搬送速度は約92.7の比率となり、合成樹脂シートの搬送速度とラミネートフィルムの搬送速度との同期を取ることができる。なお、入力される制御パラメータの種類は、上記に挙げた事例に限定されるものでない事はいうまでもない。
【0047】
また、各種の制御パラメータや標準ラインスピード等の値、或いはラミネートフィルムの材質等の条件に応じた速度比率αを実験的に求め、これを速度制御手段17内部のメモリー回路(図示せず)に予め記憶させておき、オペレータにより入力された設定条件に応じて所定の速度比率αが自動的に選択される構成としても良い。これによって、ラミネート装置1のオペレータが、制御パラメータ入力手段19から所定の条件を入力するだけで、それぞれの条件に最適な速度比率αが自動的に選択・設定され、サーマルラミネート処理の自動化ならびに効率化を図ることができる。
【0048】
一方、ラミネートフィルムがラミネートフィルムボビン11から繰り出されるにつれてラミネートフィルムボビン11に巻かれたラミネートフィルムのロール径が逐次減少し、ラミネートフィルムボビン11から一回の回転で繰り出されるラミネートフィルムの長さは徐々に変化する。
【0049】
このため、本実施例においては、ラミネートフィルムボビン11の回転数を、例えば、ロータリー・エンコーダを利用した回転センサー18によって検出し、これを速度制御手段17に送信している。速度制御手段17では、図2に示すように、回転センサー18から送られてきた回転数nを用い、ラミネートフィルムボビン11に巻かれたフィルムの初期ロール径、ラミネートフィルムの厚さ等の諸パラメータを定数として所定の演算処理f(n)を行う。係る演算処理によって生成された速度制御補正信号は、前述した速度制御信号Fに重畳されて電動機14に印加される。
【0050】
これによって、ラミネートフィルムボビン11からラミネートフィルムが繰り出され、それに応じてボビン11に巻かれたフィルムのロール径が減少した場合でも、合成樹脂シートに対するラミネートフィルムの搬送速度は常に一定の比率に保たれ、ラミネート処理時における両者の同期関係が担保される。なお、上記の諸パラメータは、制御パラメータ入力手段19からオペレータによって予め入力されていることはいうまでもない。
【0051】
図1或いは2に示した事例では、ラミネートフィルムボビン11の回転数を回転センサー18により検出し、係る検出値とフィルムの初期ロール径、フィルム厚などのパラメータを用い、所定の演算処理f(n)を行うことによりボビン11に巻かれたフィルムのロール径の減少率、或いはそれに伴うラミネートフィルムの速度制御補正信号の生成を行ったが、本発明の実施は係る事例に限定されるものではない。
【0052】
例えば、回転センサー18の替わりに、フォトトランジスタなどの光電センサー、或いはセラミック素子を用いた超音波センサー等を利用して、ラミネートフィルムボビン11に巻かれているラミネートフィルムのロール径を瞬時かつ連続的に測定し、係る測定値を速度制御手段17に送信するようにしても良い。これによって、フィルムロール径の実際の瞬時値が直接的にラミネートフィルムの速度制御補正信号の生成に反映されるため、速度制御信号Fの補正がより一層正確となる。
【0053】
さらに、サーマルラミネート処理における合成樹脂シートとラミネートフィルムとの位置合わせを完璧に行なうため、ラミネート処理が完了したシートの図柄ピッチを検出してこれによって速度制御信号Fを補正するようにしても良い(図1のB)。すなわち、図1および2に示すように、ピッチ測定センサー27によってラミネート処理終了後のシートの図柄ピッチを検出し、速度制御手段17において係る検出結果βを基にして所定の演算処理f(β)を行って速度制御補正信号を生成し、これを速度制御信号Fに重畳して電動機14の速度制御を行うようにしても良い。
【0054】
なお、以上の説明では、速度制御手段17にて生成された速度制御信号Fによって電動機14を制御する事例を示したが、前述のように、電動機14に、例えば、パウダーブレーキやエアーブレーキ等の回転抑制手段を設け、係る回転抑制手段の制動力を速度制御信号Fによって電気的に制御する方式としても良い。
【0055】
以上に説明したように本発明の実施例によれば、食品トレーをサーマルラミネート製法によって製造する際に、食品トレーの基材となる合成樹脂シートと、これに熱融着させるラミネートフィルムとの位置合わせを極めて正確に行なう事ができる。このため、食品トレーに設けた凹部毎に、例えば、青花龍紋様や青花鳥紋様等の景徳鎮青磁特有の紋様を印刷したラミネート用フィルムや、有田焼や伊万里焼独特の色絵付け文様を印刷したラミネート用フィルムを使用することができ、高級感溢れる豪華・華麗な食品用トレーを低コストで製造することが可能となる。
【0056】
なお、本発明の実施形態は、以上に説明した実施例に限定されるものではなく、例えば、各々の実施例を構成する各部位の形状や配置、或いはその素材などは、本発明の趣旨を逸脱することなく、現実の実施態様に即して適宜変更ができるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上に説明した本発明の構成は、サーマルラミネート製法を利用した食品トレーや、食品・食材の収納容器、或いは弁当箱においてその利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施例による食品トレー用サーマルラミネート装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示す食品トレー用サーマルラミネート装置における速度制御手段17の構成を示すブロック図である。
【図3】凹部毎に異なる模様・図柄を付した食品トレーの事例を示す説明図である。
【図4】従来の食品トレー用サーマルラミネート装置の構成を示す図である。
【図5】サーマルラミネート処理の概要を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0059】
1、100 … サーマルラミネート装置
10 … ラミネートフィルム供給部
11、102 … ラミネートフィルムボビン
12、16 … ガイドロール
13 … インフィードロール
14 … 電動機
15 … タッチロール
17 … 繰出し速度制御手段
18 … 回転センサー
19 … 制御パラメータ入力手段
20 … ラミネート処理部
21ab、101 … ラミネートロール
22、104 … 冷却ロール
23、24、31 … ガイドロール
25、105 … 巻取りボビン
26 … 搬送速度センサー
27 … ピッチ測定センサー
32、103 … エキスパンダーロール
200 … カレンダー装置
201 … 圧延ロール
202 … ガイドロール



【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムボビンにロール状に巻かれたラミネートフィルムを繰り出して、ライン上を所定の速度で搬送される食品トレー用合成樹脂シートの表面に、該ラミネートフィルムを連続的に熱融着させる食品トレー用ラミネート装置であって、
前記フィルムボビンからラミネートフィルムを順次繰り出すフィルム繰出し手段と、
前記合成樹脂シートの搬送速度を検出する第1のセンサー手段と、
前記フィルムボビンに巻かれているラミネートフィルムの減少値を検出する第2のセンサー手段と
前記フィルム繰出し手段によるラミネートフィルムの繰出し速度制御に必要とされる所定の制御パラメータを入力する制御パラメータ入力手段と、
前記第1および第2のセンサー手段の検出値、ならびに前記制御パラメータの入力値に応じて、前記フィルム繰出し手段におけるラミネートフィルムの繰出し速度を所定の値に制御する繰出し速度制御手段と、を含むことを特徴とする食品トレー用ラミネート装置。
【請求項2】
前記繰出し速度制御手段は、
前記第1のセンサー手段の検出値と前記制御パラメータの入力値に基づいて、前記フィルムボビンからのラミネートフィルムの繰出し速度を前記合成樹脂シートの搬送速度に対し所定の割合に保ち、前記合成樹脂シートと該シートに熱融着されるラミネートフィルムとの位置関係の同期維持を図ることを特徴とする請求項1に記載の食品トレー用ラミネート装置。
【請求項3】
前記繰出し速度制御手段は、
前記第2のセンサー手段の検出値と前記制御パラメータの入力値に基づいて、前記フィルムボビンに巻かれたラミネートフィルムの減少に拘らず、前記フィルムボビンからのラミネートフィルムの繰出し速度を一定に保ち、前記合成樹脂シートと該シートに熱融着されるラミネートフィルムとの位置関係の同期維持を図ることを特徴とする請求項1または2に記載の食品トレー用ラミネート装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−230378(P2011−230378A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102785(P2010−102785)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(596170044)アヅミ産業株式会社 (3)
【出願人】(510119429)朝山化成株式会社 (1)
【Fターム(参考)】