説明

食品保存庫及び食品の保存方法

【課題】特に、油揚処理された食品を好適な状態で保存することを可能とする食品保存庫及び食品の保存方法を提供する。
【解決手段】貯蔵室20と、冷却装置Rと、加熱ヒーター31と、紫外線ランプ33、34と、タイマー機能を有する制御装置Cとを備えた食品保存庫1において、制御装置Cは、貯蔵室20より食品を出庫する時刻に向け、予め設定されたタイムスケジュールに基づき、紫外線ランプ33、34による貯蔵室20内の殺菌工程と、冷却装置R及び加熱ヒーター31による温度/湿度に制御する保冷工程と、加熱ヒーター31による貯蔵室20内の常温への昇温工程とを順次実行することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、特に、小麦粉等から成る生地を油脂にて揚処理を行ったドーナツなどの揚げ菓子の保存を行う食品保存庫及び食品の保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小麦粉等から成る生地を油脂にて揚処理を行ったドーナツなどの揚げ菓子は、先ず、生地を製造し、生地そのものやその後所定時間発酵させたものを、フライヤーにて油脂による揚処理により製造される。
【0003】
その後、粉糖やチョコレートなどによって表面に加工処理が施された後、商品として店頭に陳列される。昨今では、複数種類の揚げ菓子が製造され、所定数の商品がラインナップとして陳列され、販売に供されている。
【0004】
一方、これら揚げ菓子等の生地を発酵させる装置として例えば、特許文献1に示すような恒温恒湿装置が開発されている。しかしながら、当該恒温恒湿装置は、生地の発酵に適した恒温恒湿の環境を構成するものであって、揚処理された後の揚げ菓子の保存を行うものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−42777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、陳列のため室内環境、例えば温度25℃前後、湿度45%〜60%に置かれた揚げ菓子は、時間の経過によって生地に含まれる水分が抜け出て乾燥し、また、当該生地に含まれる油脂の酸化が促進されることで、品質の劣化を招来する。そのため、長時間、作り置きをすることができない。
【0007】
一方、揚げ菓子の材料となる生地は、工場等において予め調整されたミックスが所定の個数分毎に店舗に供給され、当該店舗にて係る個数単位で製造される。そのため、一度に一種類の揚げ菓子が所定個数、同時に製造される。
【0008】
従って、店舗では、陳列棚に複数種類の商品を陳列すべく、それぞれの種類毎に所定個数ずつ製造を行うこととなるが、店舗の閉店後は、次の販売機会(開店時)までに所定時間以上の時間が経過してしまうため、商品の品質を維持すべく、売れ残った商品の廃棄(ロス)が余儀なくされる。
【0009】
また、当該ロスを低減すべく、閉店間際における商品製造を調整することが考えられるが、上述したように、一回の製造工程にて製造される揚げ菓子の個数は決められており、この時期に製造された商品については廃棄ロスが多くなるため、この時間帯では、店頭に多くの種類の商品を陳列することができず、ラインナップの充実を図れないという問題があった。
【0010】
本発明は、従来の技術的課題を解決するためになされたものであり、特に、油揚処理された食品を好適な状態で保存することを可能とする食品保存庫及び食品の保存方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、常温にて販売される食品を収納して保存するための保存庫であって、食品を収納する貯蔵室と、この貯蔵室内を冷却するための冷却手段と、貯蔵室内を加熱するための加熱手段と、貯蔵室内を殺菌するための殺菌手段と、タイマー機能を有して冷却手段、加熱手段、及び、殺菌手段を制御する制御手段とを備え、この制御手段は、貯蔵室より食品を出庫する時刻に向け、予め設定されたタイムスケジュールに基づき、殺菌手段により貯蔵室内を殺菌する殺菌工程と、冷却手段及び加熱手段により貯蔵室内を予め設定された温度/湿度に制御する保冷工程と、加熱手段により貯蔵室内を加熱して貯蔵室内の温度を常温に上昇させる昇温工程とを順次実行することを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、上記において、食品は、ドーナツ等の揚げ菓子であることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、上記各発明において、制御手段は、保冷工程において、貯蔵室内の湿度を食品の平衡相対湿度に基づいて制御することを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、上記発明において、制御手段は、昇温工程において、貯蔵室内の湿度を食品の平衡相対湿度に基づいて制御することを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、貯蔵室内において空気を循環するための内部循環ファンを備え、制御手段は、保冷工程及び/又は昇温工程において、内部循環ファンの回転数を食品に応じて設定された回転数に制御することを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明は、上記各発明において、冷却手段は、貯蔵室内を間接的に冷却することを特徴とする。
【0017】
請求項7の発明は、上記各発明において、制御手段は、殺菌工程を実行する前に、所定時間待機して貯蔵室内の清掃を促す清掃工程を実行することを特徴とする。
【0018】
請求項8の発明は、上記各発明において、制御手段は、所定の操作手段を有し、この操作手段への操作に基づいて次の工程に移行することを特徴とする。
【0019】
請求項9の発明の食品の保存方法は、常温にて販売されるドーナツ等の揚げ菓子から成る食品を収納するための貯蔵室内を清掃する清掃工程と、この清掃工程の終了後、殺菌手段により貯蔵室内を殺菌する殺菌工程と、この殺菌工程の終了後、貯蔵室内に食品を収納し、冷却手段、及び、加熱手段により貯蔵室内を予め設定された温度/湿度に制御する保冷工程と、この保冷工程の終了後、加熱手段により貯蔵室内を加熱して貯蔵室内の温度を常温に上昇させる昇温工程とを、貯蔵室より食品を出庫する時刻に向け、予め設定されたタイムスケジュールに基づいて実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の食品保存庫は、常温にて販売される食品を収納して保存するための保存庫であって、食品を収納する貯蔵室と、この貯蔵室内を冷却するための冷却手段と、貯蔵室内を加熱するための加熱手段と、貯蔵室内を殺菌するための殺菌手段と、タイマー機能を有して冷却手段、加熱手段、及び、殺菌手段を制御する制御手段とを備え、この制御手段は、貯蔵室より食品を出庫する時刻に向け、予め設定されたタイムスケジュールに基づき、殺菌手段により貯蔵室内を殺菌する殺菌工程と、冷却手段及び加熱手段により貯蔵室内を予め設定された温度/湿度に制御する保冷工程と、加熱手段により貯蔵室内を加熱して貯蔵室内の温度を常温に上昇させる昇温工程とを順次実行することにより、殺菌工程において殺菌手段にて殺菌された貯蔵室内に収納された食品を、保冷工程において、所定の温度/湿度に制御された貯蔵室内にて適切に冷却保存することができる。
【0021】
その後、昇温工程において、食品の出庫時刻に向けて貯蔵室内に収納された食品を常温に昇温させることができる。これにより、請求項2の発明の如く、特にドーナツ等の揚げ菓子等の食品を衛生な環境において保存することができると共に、所定の温度/湿度にて保冷することができるため、食品の劣化を著しく抑制した状態で保管することができる。
【0022】
そして、出庫時には、昇温工程にて常温にまで食品を昇温させることから、出庫して直ぐに販売に供することができる。これにより、油脂の酸化等によって劣化しやすいドーナツ等であっても、食品の品質状態を比較的長い時間維持することができる。そのため、例えば、店舗においてドーナツを提供する際に、前日の閉店間際に製造されたドーナツを好適な状態で、翌日の開店時に店頭に陳列することが可能となり、一度に数多く製造されるドーナツ等の廃棄ロスを著しく低減することが可能となる。
【0023】
これにより、環境への寄与を図ることができると共に、ロス分を低減することができる。
【0024】
また、請求項3の発明によれば、制御手段は、保冷工程において、貯蔵室内の湿度を食品の平衡相対湿度に基づいて制御するので、貯蔵室内に収納される食品の表面から水分の吸湿や乾燥が生じることを抑制することができる。これにより、食品の保存状況をより好適なものとすることができ、品質の維持を図ることができる。
【0025】
また、請求項4の発明によれば、上記発明に加えて、制御手段は、昇温工程において、貯蔵室内の湿度を食品の平衡相対湿度に基づいて制御するので、当該昇温工程においても、貯蔵室内に収納される食品の表面から水分の吸湿や乾燥が生じることを抑制することができる。これにより、好適な環境にて食品温度を常温にまで上昇させることができる。
【0026】
請求項5の発明によれば、上記各発明において、貯蔵室内において空気を循環するための内部循環ファンを備え、制御手段は、保冷工程及び/又は昇温工程において、内部循環ファンの回転数を食品に応じて設定された回転数に制御するので、食品毎に設定される最適な回転数にて内部循環ファンを運転することができ、当該食品の表面を理想とする状態にすることができる。
【0027】
また、請求項6の発明によれば、上記各発明に加えて、冷却手段は、貯蔵室内を間接的に冷却するため、食品の周囲を冷気が循環することによる食品の乾燥を著しく抑制することができ、食品の質低下を効果的に抑制することが可能となる。
【0028】
また、請求項7の発明によれば、上記各発明に加えて、制御手段は、殺菌工程を実行する前に、所定時間待機して貯蔵室内の清掃を促す清掃工程を実行することにより、貯蔵室内をより一層衛生的に維持することが可能となる。これにより、貯蔵室内の食品を安全に保存することが可能となる。
【0029】
請求項8の発明によれば、上記各発明に加えて、制御手段は、所定の操作手段を有し、この操作手段への操作に基づいて次の工程に移行することにより、作業者は、各工程を確認しながら移行することができ、利便性の向上を図ることができる。
【0030】
請求項9の発明の食品の保存方法によれば、常温にて販売されるドーナツ等の揚げ菓子から成る食品を収納するための貯蔵室内を清掃する清掃工程と、この清掃工程の終了後、殺菌手段により貯蔵室内を殺菌する殺菌工程と、この殺菌工程の終了後、貯蔵室内に食品を収納し、冷却手段、及び、加熱手段により貯蔵室内を予め設定された温度/湿度に制御する保冷工程と、この保冷工程の終了後、加熱手段により貯蔵室内を加熱して貯蔵室内の温度を常温に上昇させる昇温工程とを、貯蔵室より食品を出庫する時刻に向け、予め設定されたタイムスケジュールに基づいて実行することにより、殺菌工程において殺菌手段にて殺菌された貯蔵室内に収納された食品を、保冷工程において、所定の温度/湿度に制御された貯蔵室内にて適切に冷却保存することができる。
【0031】
その後、昇温工程において、食品の出庫時刻に向けて貯蔵室内に収納された食品を常温に昇温させることができる。これにより、ドーナツ等の揚げ菓子等の食品を衛生な環境において保存することができると共に、所定の温度/湿度にて保冷することができるため、食品の劣化を著しく抑制した状態で保管することができる。
【0032】
そして、予め設定された出庫時刻には、貯蔵室内の食品は昇温工程にて常温にまで昇温されていることから、出庫して直ぐに販売に供することができる。これにより、油脂の酸化等によって劣化しやすいドーナツ等であっても、食品の品質状態を比較的長い時間維持することができる。そのため、例えば、店舗においてドーナツを提供する際に、前日の閉店間際に製造されたドーナツを好適な状態で、翌日の開店時に店頭に陳列することが可能となり、一度に数多く製造されるドーナツ等の廃棄ロスを著しく低減することが可能となる。これにより、環境への寄与を図ることができると共に、ロス分を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の食品保存庫の縦断正面図(図2のA−A断面図)である。
【図2】図1の食品保存庫の縦断側面図(図1のB−B断面図)である。
【図3】図1の食品保存庫の平断面図(図2のC−C断面図)である。
【図4】図1の食品保存庫の縦断正面図(図2のD−D断面図)である。
【図5】各容器を収納した状態の図1の食品保存庫の縦断側面図である。
【図6】内箱の概略側面図である。
【図7】容器の概略構成図である。
【図8】制御装置の電気ブロック図である。
【図9】コントロールパネルの正面図である。
【図10】各工程のタイミングチャートである。
【図11】保冷工程、昇温工程のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図1は本発明の食品保存庫1の縦断正面図(図2のA−A断面図)、図2は図1の食品保存庫1の縦断側面図(図1のB−B断面図)、図3は図1の食品保存庫1の平断面図(図2のC−C断面図)、図4は図1の食品保存庫1の縦断正面図(図2のD−D断面図)、図5は各容器50を収納した状態の図1の食品保存庫1の縦断側面図をそれぞれ示している。
【0035】
本発明の食品保存庫1は、常温にて販売される食品を収納して保存するための保存庫であり、本実施例では、当該食品の一例として、ドーナツ等の揚げ菓子(以下、ドーナツと称する)を採用する。一般に、ドーナツとは、小麦粉に水、砂糖、バターや卵などを混ぜ合わせた生地を油揚処理して生成される揚げ菓子をいう。本実施例における食品保存庫1は、ドーナツ等の揚げ菓子を販売提供する店舗の厨房等に設置されて後述するように油揚処理された後のドーナツ等の保存を行うものである。
【0036】
食品保存庫1は、発泡ポリウレタン等の断熱材によって構成された前面に開口する断熱箱体2にて本体3が構成されている。この本体3の一側下部の断熱箱体2外には、冷凍装置(冷却手段)Rを構成する圧縮機4や凝縮器(図示しない)、凝縮器用ファン5等が設置された機械室6が構成されており、この機械室6の前面はグリルにて開閉自在に閉塞されている。また、このグリルの上部には、詳細は後述するコントロールパネル7が配設されている。
【0037】
一方、本体3を構成する断熱箱体2の前面開口2Aは、把手を備えた断熱扉8により開閉自在に閉塞されている。この断熱扉8の内面周囲にはガスケット9が取り付けられており、このガスケット9が断熱箱体2の開口2A周縁に密接する。この断熱扉8の上方には、当該断熱扉8の開放を禁止するソレノイド式の施錠装置(施錠手段)30が設けられている。尚、当該施錠装置30は、詳細は後述する制御装置Cにより施錠又は解錠の制御が行われる。また、本体3の下面四隅部には下方に突出した脚部(台脚)11・・・が取り付けられている。尚、本体3の上面にトップテーブルを設け、このトップテーブル上面を作業台として使用可能としても良い。
【0038】
また、前記断熱箱体2の側部には、前記冷凍装置(圧縮機4、凝縮器)Rと共に冷凍サイクルを構成する冷却器13を備えると共に、クーリングファン14を備える冷却室15が構成されている。
【0039】
他方、断熱箱体2内には断熱箱体2内壁面(天壁、底壁、背壁、左右側壁)と間隔を存して前方に開放した熱良導性材料にて構成された内箱21が収納配設される。断熱箱体2の底壁2B上には、前後方向に延在する複数条(本実施例では2条)のレール29、29が配設されており、内箱21は、当該レール29、29上に載置されて、断熱箱体2の前面開口2Aより引出可能とされている。尚、当該レール29、29の側面には、冷気の流通を可能とする複数の連通孔29Aが形成されている。これにより、断熱箱体2と内箱21との間隔が断熱箱体側冷気通路12となり、前記冷却室15と連通している。
【0040】
また、このレール29、29は、後端と内箱21背壁内面との間に所定の間隔を存して内箱21の底壁に配設されている。当該レール29、29の後端と内箱21の背壁との間の間隔には、後述する背部ダクト板18が挟持可能とされている。
【0041】
この内箱21の前面開口21Aは、熱良導性材料にて構成された内扉22にて開閉自在に閉塞されている。この内扉22の内面周囲にはガスケット27が取り付けられており、このガスケット27が内箱21の開口21A周縁に密接する。この内扉22は、前記断熱扉8内壁面と間隔を存して配設されており、当該内扉22と断熱扉8との間隔が扉側冷気通路23となる。
【0042】
ここで、内箱21の前側縁部は、断熱箱体側冷気通路12の前端部を閉塞するフランジ24が形成されている。このフランジ24には、連通孔28が複数穿設されており、断熱箱体側冷気通路12と扉側冷気通路23とが連通されている。そして、一側のフランジ24にはヒンジ部材25にて内扉22が回動自在に枢支されていると共に、他側のフランジ24には、内扉22のラッチ機構26が設けられている。
【0043】
そのため、断熱箱体2の側部に配設された冷却器13と熱交換した冷気は、クーリングファン14が運転されることにより、クーリングファン14から吐出された冷気を風向板43によって断熱箱体2と内箱21上面との間に形成される断熱箱体側冷気通路12内に指向される。
【0044】
これにより、断熱箱体側冷気通路12内に吐出された冷気は、当該断熱箱体側冷気通路12及びこれと連通して設けられる扉側冷気通路23内を循環することにより、熱良導性材料にて構成された内箱21及び内扉22を冷却し、当該内箱21内の貯蔵室20を間接冷却する。これら冷気通路12、23を循環した冷気は、再び断熱箱体2の側部に配設された冷却器13に帰還する。
【0045】
一方、内箱21内上部及び背部にはこれらの内壁面と所定間隔を存して、上部ダクト板17及び背部ダクト板18が配設され、当該内箱21内上部及び背部と、これら上部ダクト板17及び背部ダクト板18との間には、内箱21内において背部から上部に渡る一連の暖気通路16が構成される。
【0046】
上部ダクト板17は、図2に示すように、内箱21の天壁内面と所定間隔を存して配設され、この内箱21の天壁内面と上部ダクト板17との間の暖気通路16内には、加熱ヒーター(加熱手段)31と、内部循環ファン32と、紫外線ランプ(殺菌手段)33、34と、庫内温度センサ(庫内温度検出手段)35と、庫内湿度センサ(庫内湿度検出手段)36とが配設されている。
【0047】
内部循環ファン32は、ファンケース32Aに配設されており、その前方及び後方に位置して左右方向に延在する紫外線ランプ33、34がそれぞれ配設されている。本実施例では、これら紫外線ランプ33、34と、内部循環ファン32、ファンケース32A、加熱ヒーター31は、単一の取付板37に配設されてユニット化されている。そのため、内箱21への取付時には、これら紫外線ランプ33、34、内部循環ファン32、加熱ヒーター31の各リード線を取付板37と内箱21の天面との間隔に形成されたリード線収容部37A内に引き出し、内箱21の背面上部に設けられる受け部材38に当該取付板37の後端を載置させ、取付板37の前端を図示しないネジによって内箱21の天面に固定する。
【0048】
これにより、紫外線ランプ33、34、内部循環ファン32、ファンケース32A、加熱ヒータ31は、別途取付板37に配設した後、ユニット化された状態で、内箱21内に配設することができ、固定作業は、内箱21の前部のみとすることが可能となって、これら機器の著しい取付作業性の向上を図ることができる。
【0049】
また、これら機器のリード線は、通常、樹脂にてモールドされているため、紫外線ランプ33、34から照射される紫外線によって損傷されやすいが、これらリード線は、金属板にて構成された取付板37と内箱21との間のリード線収容部37A内に収納されるため、係る不都合を回避することができる。
【0050】
これら機器のリード線は、当該リード線収容部37A内に引き出された後、上部ダクト板17の前部上側の暖気通路16内に配設される金属製の図示しない配線ボックスを介して、内箱21の壁面に形成される配線孔45から内箱21外に引き出される。
【0051】
ここで、内箱21の断熱箱体2側の側壁面には、図1や図6の内箱21の概略側面図に示すように、内箱21の冷却器13側の断熱箱体2側の側面には、奥行き方向に渡ってリード線の保持部材44が設けられている。
【0052】
この保持部材44は、板状部材を断面略クランク状に折曲形成して構成されており、当該保持部材44の上部は、内箱21側に開口しており、下部は、断熱箱体2(冷却器13)側に開口している。そのため、上述したように内箱21の配線孔45から断熱箱体2側に引き出されたリード線46は、保持部材44と内箱21間に形成される収容部内を内箱21の前部から後方に収容させた後、保持部材44の後端から当該保持部材44の下部内を前方に引き出す。その後、リード線46を冷却器13側であって断熱箱体2の前部に位置する図示しない引出孔から機械室6側に引き出す。
【0053】
これにより、内箱21内から引き出されたリード線46は、内箱21の外面に設けられた保持部材44によって内箱21前部から後方に迂回させた状態で保持される。そのため、断熱箱体2内のメンテナンス時などにおいて、内箱21をレール29、29上を摺動させて前方に引き出した際、内箱21から断熱箱体2に渡るリード線46に影響されることなく、断熱箱体2から内箱21を引き出すことが可能となる。これにより、断熱箱体2内の清掃性を向上させることができ、装置全体の衛生を維持することができる。
【0054】
他方、これら内箱21、上部ダクト板17及び背部ダクト板18にて囲繞される空間が前方に開口する貯蔵室20となる。また、この貯蔵室20の両側壁を構成する内箱21には、複数段のレール39A・・を構成するラック39、39が架設されており、対向する各レール39A・・に油揚処理された後のドーナツ等を収容した容器50が摺動自在に架設される。
【0055】
そして、背部ダクト板18には、各レール39A・・に架設される容器50の上方及び、最下段に架設される容器50の下方に対応して暖気通路16内の暖気を貯蔵室20内に吐出する複数の暖気吐出孔19・・・が穿設されている。
【0056】
また、上部ダクト板17の前端は、内扉22の内壁と所定間隔を存して起立した前壁17Aが形成されており、当該前壁17Aには、貯蔵室20内を循環した暖気を暖気通路16内に吸い込む複数の暖気吸込孔41・・・が穿設されている。また、この前壁17Aには、内扉22側に突出した把手部17Bが折曲形成されている。
【0057】
ここで、本実施例では、各上部ダクト板17と、背部ダクト板18と、ラック39、39は、着脱自在に内箱21(貯蔵室20)内に取り付けられ、当該内箱21(貯蔵室20)内より撤去可能な構成とされている。
【0058】
即ち、これら上部ダクト板17、背部ダクト板18、ラック39、39を内箱21に取り付ける際には、先ず、背部ダクト板18の下端を内箱21の底壁に設けられたレール29、29の後端と内箱21の背壁との間に挟持させる。そして、当該背部ダクト板18の前面側部を内箱21の背面側に押し付けるように両ラック39、39を内箱21の両側壁に沿って架設する。この際、背部ダクト板18は、両端部が後方に略直角に折曲されて当該後端部が内箱21の背面に当接するように構成されている。そのため、当該両端部の折曲寸法分だけ内箱21の背面と背部ダクト板18との間に間隔が形成され、この間隔内に暖気通路16が形成されることとなる。
【0059】
ここで、内箱21の両側面には、断面略L字状のラック架設部材40が複数設けられており、当該ラック架設部材40と内箱21内壁面との間に、線条にて構成されるラック39を挿入係合させることによって、ラック39、39が確実に内箱21に架設される。
【0060】
その後、上部ダクト板17をラック39、39の上縁部上を奥行き方向に向かってスライドさせ、上部ダクト板17の後端は、内箱21の背壁内面に設けられた受け部材42に支持させる。これにより、上部ダクト板17は、ラック39、39の上縁と受け部材42により支持される。
【0061】
これにより、貯蔵室20を構成する上部ダクト板17、背部ダクト板18、ラック39、39を格別に工具を必要とすることなく、容易に配設することができる。尚、これら貯蔵室20内に取り付けられた物品、即ち、上部ダクト板17、背部ダクト板18、ラック39、39を詳細は後述する如き清掃工程若しくは、殺菌工程時において、取り外す際には、逆の手順にて格別に工具を必要とすることなくこれらを撤去することが可能となる。そのため、貯蔵室20内に取り付けられた物品を直接洗浄することが可能となる。また、貯蔵室20内に取り付けられた物品を貯蔵室20内から撤去することで、紫外線ランプ33、34からの照射光を内箱21(貯蔵室20)内全体に行き渡らせることができ、効果的な殺菌処理を実現することができる。
【0062】
次に、図7の容器50の概略構成図を参照して、容器50の構成について説明する。この容器50は、上面に開口する容器本体51と、当該容器本体51の上面開口を開閉自在に閉塞する蓋部材52により構成されている。これら容器本体51及び蓋部材52は、熱良導性材料にて構成されている。蓋部材52には、複数の通気孔53・・・が形成されている。尚、当該通気孔53の大きさや個数は、容器本体51内に収容されるドーナツの種類などに応じて変更しても良い。そして、この容器本体51内の底部には、複数の線条によって構成された底敷き54が敷設されている。
【0063】
当該容器本体51内には、油揚処理された後の複数のドーナツが平らな状態で所定間隔を存して複数個収容される。
【0064】
係る構成の容器50は、上述した如き貯蔵室20内に架設されたラック39、39の各レール39A上に納出自在に挿入され、保持される。ここで、各ラック39に形成されるレール39Aは、図5に示すように、複数の容器50を複数段保持可能とされており、各容器50がそれぞれのレール39Aに保持された状態で、容器本体51の底面と隣接して対向する容器50の蓋部材52との間隔には、内部ダクト55がそれぞれ形成される。
【0065】
係る構成により、加熱ヒーター31により加熱された暖気は、内部循環ファン32の運転によって、上部ダクト板17と内箱21間に形成された暖気通路16から背部ダクト板18と内箱21間に形成された暖気通路16内に吐出され、当該背面ダクト18に形成された各暖気吐出孔19より貯蔵室20内に吐出される。
【0066】
ここで、各暖気吐出孔19は、ラック39に架設された各容器50の上方に対応する位置に形成されているため、各容器50、50間に形成された内部ダクト55内や、最下段の容器50の下方と内箱21の底壁との間に向けて吐出される。そして、内部ダクト55内を流通した暖気は、容器50の蓋部材52に複数形成された通気孔53を介して容器50内に侵入し、当該容器50内に収容されたドーナツを加熱する。そして、内部ダクト55の前端側、及び、最下段の容器50と内箱21の底壁間から前方に流出した暖気は、その後、内扉22に沿って上昇し、上部ダクト板17の前壁17Aに形成された暖気吸込孔41より暖気通路16内に帰還する。
【0067】
次に、図8の電気ブロック図を参照して本実施例の食品保存庫1の制御装置Cについて説明する。本実施例の制御装置Cは、汎用のマイクロコンピュータにより構成されており、時限手段としてのタイマー58が内蔵されている。また、この制御装置Cの入力側には、暖気通路16内に設けられて貯蔵室20内の温度を検出する庫内温度センサ35と、同じく暖気通路16内に設けられて貯蔵室20内の湿度を検出する庫内湿度センサ36と、断熱扉8の開閉を検出する扉スイッチ60と、各種設定や操作を入力するコントロールパネル7等が接続されている。
【0068】
また、制御装置Cの出力側には、冷却装置Rを構成する圧縮機4と、加熱ヒーター31と、紫外線ランプ33、34と、内部循環ファン32と、凝縮器用ファン5と、クーリングファン14と、施錠装置30、報知手段としてのブザー88等が接続されている。
【0069】
次に、図9を参照して本実施例の食品保存庫1の機械室6前面を覆うグリル上部に配設されたコントロールパネル7について説明する。図9はコントロールパネル7の正面図を示している。図9において61は食品保存庫1の電源スイッチ、62はブザー停止スイッチ、64乃至69はメニュー選択スイッチ、70は操作の送りスイッチ、71、72は設定時の+スイッチと−スイッチである。64A乃至69Aは、それぞれの対応するメニュー選択スイッチが操作された際に点灯するメニューランプである。また、87は隠しスイッチである。73は時刻表示部であり、並設される現在時刻ランプ74、出庫時刻ランプ75、残時間ランプ76の点灯によって、時刻表示部73に表示される時刻又は時間がいずれのものであるかを表示する。尚、ブザー停止スイッチ62は長押しすることで時計設定スイッチを兼ねている。
【0070】
このコントロールパネル7に並設されるランプ80乃至86は、各工程であることを表示するためのランプである。詳細は後述する各工程時にそれぞれ対応するランプを点灯する。尚、コントロールパネル7に設けられる単独殺菌スイッチ63は、後述する一連の食品保存工程とは別に単独で貯蔵室20内(内箱21内)の殺菌運転を支持する場合に操作するスイッチである。また、77乃至79は、各種点検ランプ、即ち、停電点検ランプ、湿度センサ交換ランプ、殺菌ランプ(紫外線ランプ33、34)の交換ランプである。
【0071】
以下、図10のタイミングチャートを参照して、店舗において常温にてドーナツの陳列販売が行われる場合を例に挙げて一連の動作について詳述する。店舗において、ドーナツの材料となる生地は、工場等において予め調整されたミックスが所定の個数分毎に供給され、当該店舗にて係る個数単位で製造する。そのため、一度に一種類のドーナツが所定個数、例えば40個、同時に製造される。閉店時刻が近づいても、店舗における陳列棚の商品の種類(ラインナップ)を充実させるため、在庫が不足してきた種類のドーナツを製造する。この際、製造されたドーナツは、全て店舗の陳列棚に陳列するのではなく、製造された一部、例えば10個を陳列し、残部、この場合30個を本発明の食品保存庫1にて開店時刻に応じた時刻にまで保存を行う。
【0072】
この場合、先ず、作業者は、メニュー選択スイッチ64乃至69の保存する種類のメニューに対応したメニュー選択スイッチ64乃至69を操作し、食品保存庫1の電源をONとする。この際、制御装置Cは、対応するメニューランプ64A乃至69Aを点灯する。尚、制御装置Cには、メニュー選択スイッチ64乃至69のそれぞれに割り付けられたメニューに応じて、設定湿度や設定温度、更には、内部循環ファン32の最適回転数が記憶されている。尚、当該設定湿度や設定温度、内部循環ファン32の最適回転数の変更は、当該食品保存庫1の電源ON時であって運転停止時に隠しスイッチ87と送りスイッチ70の長押し操作によって、メニュー毎の設定湿度、設定温度、内部循環ファン32の最適回転数の変更が可能とされている。そして、電源が投入された時点で、食品保存庫1は、清掃工程とされる。
【0073】
(1)清掃工程
当該清掃工程は、常温にて販売されるドーナツを収納するための貯蔵室20内の清掃を作業者に促す工程であり、制御装置Cは、コントロールパネル7の清掃中待機ランプ80を点灯する。そして、残時間ランプ76を点灯し、時刻表示部73には、清掃工程終了までの残時間を表示する。制御装置Cは、当該清掃工程開始から所定時間、例えば10分間が経過するまでは、当該清掃工程とし、次の殺菌工程への移行を禁止する。尚、当該清掃工程の所要時間は、任意に設定変更可能とされている。清掃工程において、送りスイッチ70を操作することにより、時刻表示部73には、現在時刻又は予め設定された清掃工程の終了までの残時間を切り替え表示可能とされている。
【0074】
この清掃工程において、作業者は、上述したように、貯蔵室20を構成する上部ダクト板17、ラック39、39、背部ダクト板18を貯蔵室20内(内箱21内)から撤去する。そして、内部の物品が撤去された内箱21内の清掃を行う。この清掃工程では、所定の設定時間が経過するまでの次の殺菌工程へは移行しない。そのため、当該清掃工程が所定期間経過するまでは、当該食品保存庫1は、次の殺菌工程に移行しないことから、作業者に、係る清掃工程において、有効に内箱21内の清掃を促すことができる。これにより、殺菌工程を実行する前に、所定時間待機して貯蔵室20内の清掃を促す清掃工程を実行することにより、紫外線ランプ33、34等では、殺菌しきれないような比較的大きな塊の滓等を除去でき、貯蔵室20内を衛生的に維持することが可能となる。これにより、貯蔵室内の食品を安全に保存することが可能となる。尚、貯蔵室20内から撤去した上部ダクト板17、ラック39、39、背部ダクト板18、これ以外にも、ドーナツを収容する容器50を別途洗浄する。そのため、貯蔵室内20に固定されている場合と異なり、細部にわたって清掃メンテナンスを実行することができる。
【0075】
制御装置Cは、所定の清掃工程時間が終了すると、ブザー88を鳴動させ、コントロールパネル7の清掃中待機ランプ80を消灯すると共に、清掃終了ランプ81を点滅させ、現在時刻ランプ74を点灯し、時刻表示部73には、現在の時刻を表示する。作業者は、内扉22、断熱扉8を閉鎖し、送りスイッチ70を操作することにより、鳴動されたブザー88は停止し、制御装置Cは、清掃工程から殺菌工程に移行する。尚、直ぐに殺菌工程に移行しない場合には、作業者は、ブザー停止スイッチ62を操作することでブザー88の鳴動を停止させても良い。
【0076】
(2)殺菌工程
制御装置Cは、殺菌工程を開始する際に、断熱扉8の扉スイッチ60の出力によって断熱扉8が閉鎖されていることを条件として、施錠装置30により施錠し、当該殺菌工程終了まで断熱扉8の開放を禁止する。そして、清掃終了ランプ81を消灯して、殺菌中ランプ82を点灯し、紫外線ランプ33、34を所定時間、例えば20分間点灯させる。そして、残時間ランプ76を点灯し、時刻表示部73には、殺菌工程終了までの残時間を表示する。尚、当該殺菌工程の所要時間は、任意に設定変更可能とされている。
【0077】
本実施例では、殺菌工程開始前の清掃工程において、上部ダクト板17、ラック39、39、背部ダクト板18は、貯蔵室20(内箱21)内から撤去されている。そのため、前側に配置される紫外線ランプ33とファンケース32Aの後方に配置される紫外線ランプ34から照射される紫外線は、内部に取り付けられる物品によって遮られることなく、当該内箱21に全体に行き渡らせて殺菌処理することが可能となる。これにより、紫外線が届かない場所において菌が繁殖する不都合を解消することができる。また、本実施例では、内箱21の天壁には、ファンケース32A(内部循環ファン32)が設けられているが、紫外線ランプは、この前側と後側とにそれぞれ設けられているため、支障なく内箱21内全体に紫外線を照射して殺菌処理することが可能となる。
【0078】
また、当該殺菌工程では、上述したように施錠装置30によって、断熱扉8が施錠され、この扉の開放が禁止されている。そのため、紫外線ランプ33、34の点灯中は施錠装置30により断熱扉8(その内側にある内扉22)の開放が禁止されることにより、作業者が誤って紫外線ランプ33、34の点灯中に内扉を開放してしまい、紫外線ランプ33、34を直視することで目を痛めてしまう不都合を回避することができる。
【0079】
尚、当該殺菌工程において、送りスイッチ70を操作することにより、時刻表示部73には、現在時刻又は予め設定された殺菌工程の終了までの残時間を切り替え表示可能とされている。
【0080】
殺菌工程を開始してから所定の殺菌工程時間が経過すると、制御装置30は、紫外線ランプ33、34を消灯し、施錠装置30を解錠して、断熱扉8の開放を可能とする。また、コントロールパネル7の殺菌中ランプ82を消灯して、殺菌終了ランプ83を点滅させ、ブザー88を鳴動させて、作業者に殺菌工程が終了したことを報知する。作業者が、送りスイッチ70を操作することにより、鳴動されたブザー88は停止し、制御装置Cは、冷却装置Rの圧縮機4、クーリングファン14、凝縮器用ファン5が運転開始する。また、コントロールパネル7の殺菌終了ランプ83を消灯して、入庫ランプ84を点滅させる。尚、ブザー停止スイッチ62を操作することでブザー88の鳴動を停止させても良い。
【0081】
これにより、断熱箱体2の側部に配設された冷却器13と熱交換した冷気は、クーリングファン14が運転されることで、風向板43によって断熱箱体2と内箱21上面との間に形成される断熱箱体側冷気通路12内に吐出される。そして、断熱箱体側冷気通路12内に吐出された冷気は、当該断熱箱体側冷気通路12及びこれと連通して設けられる扉側冷気通路23内を循環することにより、熱良導性材料にて構成された内箱21及び内扉22を冷却し、当該内箱21内の貯蔵室20を間接冷却する。係る冷却運転によって、貯蔵室20内は、間接冷却による予冷が行われる。
【0082】
殺菌工程終了後、作業者は、断熱扉8、内扉22を開放し、清掃工程において取り外し別途洗浄した後の背部ダクト板18、ラック39、39、上部ダクト板17を順次内箱21内に取り付ける。上述したように、これら背部ダクト板18、ラック39、39、上部ダクト板17は、工具を必要とすることなく容易に着脱可能とされているため、作業性の向上を図ることができる。
【0083】
そして、作業者は、当該殺菌工程の終了までに例えば、開店時刻まで保存を行うドーナツを容器50内に収納する。尚、本実施例では、少なくとも同一の容器50内、望ましくは、同一食品保存庫1には、同一の種類のドーナツを収納する。また、図7に示すように、ドーナツは、容器50の容器本体51の底敷き54上に所定間隔を存して平らな状態で収納する。そして、通気孔53が形成された蓋部材52にて容器本体51の開口を閉塞する。
【0084】
(3)入庫
そして、上述したように殺菌工程終了後、貯蔵室20内にラック39、39を架設した状態で、ドーナツが収納された容器50を貯蔵室20内に入庫する。各容器50は、貯蔵室20に架設されたラック39、39のレール39A、39A上に沿って奥行き方向に差し込む。これにより、各容器50の上方には、内部ダクト55が形成される。
【0085】
本実施例では、一つの容器50には、15個のドーナツが収納可能とされており、ラック39には、5段(複数段)のレール39Aが形成されている。そのため、15個×5段のドーナツを収納可能とされている。
【0086】
作業者は、内扉22、断熱扉8を閉鎖する。この際、コントロールパネル7の時刻表示部73には、出庫時刻ランプ75が点灯されて出庫設定時刻が表示されている。尚、制御装置Cは、前回設定された出庫設定時刻を記憶しており、出庫設定時刻として時刻表示部73に表示される。そのため、作業者は、+スイッチ71、−スイッチ72を操作することにより、出庫時刻の設定を行う。本実施例において出庫時刻は、店舗において出庫されたドーナツに粉糖やチョコレートなどの表面加工処理の時間を考慮し、開店時刻に陳列可能な時刻に設定する。
【0087】
出庫時刻が設定された後、コントロールパネル7の送りスイッチ70が操作されると、制御装置Cは、貯蔵室20よりドーナツを出庫する時刻に向けて、予め設定されたタイムスケジュールに基づき、保冷工程及び昇温工程を順次実行する。尚、本実施例では、入庫時において出庫時刻の設定を行うものとしているが、これに限定されるものではなく、前記殺菌工程、保冷工程、昇温工程とを貯蔵室20よりドーナツを出庫する時刻に向けて、予め設定されたタイムスケジュールに基づいて順次実行するものとしても良い。
【0088】
(4)保冷工程
上述したように出庫時刻の設定が行われてコントロールパネル7の送りスイッチ70が操作されると、制御装置Cは、施錠装置30により断熱扉8を施錠し、当該保冷工程、及びこれに続く昇温工程において断熱扉8及び内扉22が開放されることを禁止する。そして、コントロールパネル7の入庫ランプ84を消灯して貯蔵ランプ85を点灯する。
【0089】
本実施例では、保存するドーナツの乾燥、吸湿を回避して、品質の維持を測るべく、貯蔵室20内の設定湿度は、ドーナツが収容される容器50内の湿度が、各ドーナツの種類毎に予め測定により得られた平衡相対湿度(本実施例の如きドーナツでは75〜95%の何れか)となるような湿度、貯蔵室20内の設定温度は、油脂の酸化、独特の香りの減少を防止すると共に、0℃に近づくほど生地に含まれるデンプンが老化するため、5℃〜15℃とする。
【0090】
本実施例では、上述したように、殺菌工程が終了した際に、制御装置Cは、冷却装置Rの運転を開始して、貯蔵室20内の予冷を行っている。この際にも、制御装置Cは、庫内循環ファン32を運転し、貯蔵室20内の空気の均一化を図っている。この際、制御装置Cは、当該保冷工程における内部循環ファン32を上述した如く収納されたドーナツの種類毎に設定された最適回転数にて運転を行う。例えば、ドーナツの種類によって表面の状態がさっくりしたものである場合は、当該回転数をより高くし、ドーナツへの送風量を多くする。これにより、ドーナツの内部の水分含有量を低減させることなく表面をより乾燥させてさっくりした理想の状態とすることができる。また、ドーナツの種類によって表面の状態がしっとりしたものである場合は、当該回転数をより低くし、当該ドーナツへの送風量を少なくする。これにより、ドーナツの表面から水分が抜けてしまうことによる乾燥を抑制でき、しっとりした理想の状態とすることができる。
【0091】
そして、引き続き保冷工程において貯蔵室20内の温度/湿度の制御が行われる。図10及び図11のタイミングチャートに示すように、殺菌終了後、貯蔵室20内の温度は、室温、例えば25℃とされている。その状態から制御装置Cは、プルダウン運転として、冷却装置Rによる内箱21の冷却による貯蔵室20内の間接冷却によって、庫内温度センサ35が検出する貯蔵室20内の温度が冷却設定温度、例えば10℃にまで低下すると、圧縮機4の運転を停止する。
【0092】
当該予冷運転が行われている貯蔵室20内にドーナツを収容した容器50が入庫されると、断熱扉8、内扉22の開放により貯蔵室20内に常温の空気が侵入し、また、常温の容器50が入庫されることにより、貯蔵室20内の温度が上昇する。ここで、冷却装置Rの圧縮機4の運転によって、断熱箱体側冷気通路12を循環する冷気によって内箱21の両側面、天面、底面、背面が冷却され、扉側冷気通路23を循環する冷気によって内扉22の内面が冷却され、これによって、貯蔵室20内及び入庫された容器50内のドーナツが間接冷却される。
【0093】
ここで、内箱21及び内扉22によって略密閉とされた貯蔵室20内に、常温の空気及び常温の容器50に収容されたドーナツが収納されると、内部循環ファン32によって貯蔵室20内を循環する空気の湿度は、ドーナツに含まれていた水分の蒸散によって上昇していく。図11に示すように当初75%以下であった貯蔵室20内の湿度は、ドーナツに含まれていた水分の蒸散によって、貯蔵室20内の空気の均一化が図られるに従って通常、75%以上に上昇していく。
【0094】
そのため、上記プルダウン運転が終了した後は、制御装置Cは、圧縮機4のサイクル運転に移行するが、このサイクル運転では、制御装置Cは、貯蔵室20内の湿度を設定湿度に低下させるべく、庫内湿度センサ36の出力に基づき、貯蔵室20内の湿度が設定湿度、この場合85%となるように圧縮機4を運転制御する。実際には、設定湿度の上下に設けられた上限湿度以上では圧縮機4を運転し、下限湿度に達すると圧縮機4の運転を停止する。
【0095】
圧縮機4が運転されると、断熱箱体側冷気通路12及び扉側冷気通路23内を循環する冷気によって、内箱21壁面及び内扉22壁面が冷却される。これによって、貯蔵室20内の空気中に含まれる水分は、低温の内箱21の内壁面及び内扉22内壁面に結露を生じ、貯蔵室20内の空気の除湿が行われ、庫内湿度が85%に制御される。
【0096】
また、当該貯蔵室20内が内箱21及び内扉22にて略密閉されていることから、入庫時に導入された空気に含まれる水分及びドーナツに含まれた水分は、貯蔵室20から出ない。そのため、ドーナツから出る水分で貯蔵室20内に収納された容器50内の湿度がドーナツの種類毎に測定により得られた平衡相対湿度となるように維持することができる。容器50内の湿度が当該ドーナツの種類毎に測定により得られた平衡相対湿度に維持されることで、ドーナツへの水分の吸着や乾燥が見かけ上生じない状態とすることができる。この場合、格別に加湿手段を用いることなく、ドーナツの湿度を所定の適切な湿度に維持することができるため、例えば、加湿手段として貯蔵室内に導入される水にドーナツ独特の香りが吸着されてしまい、出庫されたドーナツの香りが低減されてしまう不都合を回避することができる。
【0097】
当該圧縮機4の運転によって、内箱21及び内扉22が冷却されるため、このままでは、貯蔵室20内の温度が設定温度、この場合10℃以下に低下していくこととなる。そのため、制御装置Cは、係る貯蔵室20内の温度は設定温度、この場合、10℃に維持するため、加熱ヒーター31を通電(運転)する。制御装置Cは、庫内温度センサ35が検出する温度が設定温度の上下に設けられる上限温度に達すると加熱ヒータ31を非通電(停止)し、下限温度に達すると加熱ヒータ31を通電(運転)する。
【0098】
これにより、加熱ヒーター31にて加熱された暖気通路16内の暖気は、内部循環ファン32の運転によって、背面ダクト板18に形成された暖気吐出孔19から貯蔵室20内に暖気が吹き出される。ここで、暖気吐出孔19は、各容器50の上部に対応する位置に形成されているため、各容器50の上方に形成される内部ダクト55に暖気を吐出することができる。
【0099】
そして、内部ダクト55に吐出された暖気は、容器50の上方を通過する過程において、容器50の蓋部材52に形成された通気孔53を介して食品周囲に循環させることができる。これにより、流通する暖気が直接、ドーナツに吹き付けられることなく、容器50内のドーナツを均一に加熱することが可能となる。
【0100】
従って、貯蔵室20内の湿度を設定湿度に低減するための冷却装置Rの運転による温度低下を加熱ヒーター31の運転によって補償することができ、適切にドーナツを設定温度に維持することが可能となる。
【0101】
尚、制御装置Cは、上記圧縮機4の庫内湿度センサ36の検出湿度に基づくサイクル運転を実行している場合において、貯蔵室20内の湿度が設定湿度(容器50内の湿度がドーナツの種類毎に測定により得られた平衡相対湿度となるような湿度)の所定湿度低く設定された下限湿度に低下している場合であっても、加熱ヒーター31の加熱運転によって、庫内温度センサ35が検出する貯蔵室20内の温度が所定の上限温度、この場合設定温度を10℃としているため、例えば、11℃となると、圧縮機4を運転し、下限温度に達した場合、圧縮機4の運転を停止する。
【0102】
このように、制御装置Cは、冷却装置Rの圧縮機4と加熱ヒーター31の運転を組み合わせて貯蔵室20内を予め設定された設定湿度、設定温度の恒温恒湿状態に維持するので、本実施例のように、油脂の酸化等によって劣化しやすいドーナツを好適な状態で、比較的長い時間品質を維持することができる。
【0103】
本実施例では、制御装置Cは、庫内湿度センサ36の出力に基づき、貯蔵室20内の湿度が設定湿度に低下するまで冷却装置Rを運転するので、貯蔵室20内の湿度を収容されたドーナツの種類毎に測定により得られた平衡相対湿度に基づいて好適に制御することができると共に、これに伴って、庫内温度センサ35の出力に基づき、貯蔵室20内の温度が設定温度に上昇するまで加熱ヒーター31を運転することにより、貯蔵室20内の温度を下げすぎることなく容器50内が当該ドーナツの種類毎に測定により得られた平衡相対湿度となるように制御することができる。これにより、貯蔵室20内をドーナツの保存に好適な湿度/温度に維持することができ、特に、ドーナツの表面において生じるドーナツへの水分の吸着やドーナツ表面の乾燥を効果的に阻止することができるため、収納される食品の品質を維持することが可能となる。
【0104】
また、制御装置Cは、庫内温度センサ35の出力に基づき、貯蔵室20内の温度が設定温度より高い所定の上限温度以上である場合には、冷却装置Rの圧縮機4を運転することにより、加熱ヒーター31による加熱運転によって、貯蔵室20内の温度が上昇した場合、好適に冷却装置Rの圧縮機4を運転することで、貯蔵室20内を設定温度に維持することが可能となる。
【0105】
特に、本実施例では、食品保存庫1に保存する食品としてドーナツ等の揚げ菓子を採用しており、貯蔵室20内の設定湿度は、ドーナツの種類毎に測定により得られ、これに基づき設定される平衡相対湿度(ドーナツの場合、通常、75%以上95%以下の何れかの値)とすることで、ドーナツの乾燥を抑制し、且つ、過剰に水分が含まれることを抑制することができ、好適な湿度環境にて保存することできる。また、貯蔵室20内の設定温度は、+5℃以上+15℃以下の何れかの値とすることで、高い温度で放置されることによる生地に含まれる油脂等の酸化を著しく抑制することができ、且つ、過剰に冷却されて、0℃に近づくことで生地に含まれるデンプンが老化してしまう不都合を抑制することができる。
【0106】
これにより、ドーナツ等の揚げ菓子を保存に好適な湿度/温度条件にて保存することが可能となり、保存期間中におけるドーナツの劣化を著しく抑制して、比較的長時間ドーナツの品質を維持することが可能となる。
【0107】
また、本実施例では、冷却装置Rは、内箱21と断熱箱体2の間に形成される断熱箱体側冷気通路12と、内扉22と断熱扉8との間に形成される扉側冷気通路23内を循環する冷気を冷却し、内箱21及び内扉22により構成された貯蔵室20内を間接冷却するため、ドーナツの周囲を冷気が循環することによるドーナツの乾燥を著しく抑制することができ、品質低下を効果的に抑制することが可能となる。
【0108】
また、本実施例では、貯蔵室20の開口側に内扉22が設けられ、この内扉22とその外側の断熱扉8との間に扉側冷気通路23を構成して内扉22側の面からも貯蔵室20を冷却することができるため、開口からの熱の侵入を効果的に抑制することができ、貯蔵室20内を均一に冷却することが可能となる。
【0109】
更に、本実施例では、ドーナツの保存を行う保冷工程の直前に貯蔵室20内を紫外線ランプ33、34にて殺菌処理する殺菌工程を行っているため、殺菌された貯蔵室20内にて衛生な環境においてドーナツを保存することができると共に、所定の温度/湿度にて保冷することができるため、当該ドーナツの劣化を著しく抑制した状態で保管することができる。
【0110】
上記冷却装置Rの運転により、ドーナツから蒸散された水分が容器50に付着した場合であっても、当該容器本体51の内底部には、底敷き54が設けられているため、ドーナツは底敷き54を介して収納することができ、水浸しとなり品質が劣化してしまう不都合を回避することが可能となる。
【0111】
そして、制御装置Cは、所定時間上記保冷工程を実行した後、常温によるドーナツの出庫を行うため、昇温工程を実行する。この場合、制御装置Cは、入庫時に設定した出庫設定時刻と現在時刻とを比較し、容器50内のドーナツが均一に常温(例えば25℃)にまで昇温するのに必要とする時間を逆算し、例えば、出庫設定時刻の2時間前(所定時間)となると、保冷工程から昇温工程に移行する。
【0112】
(5)昇温工程
制御装置Cは、加熱ヒーター31により貯蔵室20内を加熱して貯蔵室20内の温度を常温に上昇させる昇温工程に移行すると、貯蔵室20内の設定温度を上記保冷に適した温度、例えば10℃から常温、例えば25℃に変更する。これにより保冷に適した温度から常温とすべく、冷却装置Rの運転が停止し、加熱ヒーター31が通電(運転)される。これにより、庫内温度センサ35が検出する貯蔵室20内の温度が徐々に上昇していき、庫内湿度センサ36が検出する湿度が徐々に低下していく。
【0113】
そして、庫内温度センサ35が検出する温度が設定温度の常温に到達した後、制御装置Cは、冷却装置Rの圧縮機4及び加熱ヒーター31を組み合わせた運転制御を行うことにより、貯蔵室20内の設定湿度は、容器50内の湿度が各ドーナツの種類毎に測定により得られた平衡相対湿度となるような湿度、本実施例の如きドーナツでは75〜95%の何れかに維持する。これにより、当該昇温工程においても、貯蔵室20内の湿度を収容されたドーナツの周辺湿度を当該ドーナツの平衡相対湿度に好適に制御することができる。
【0114】
また、庫内温度センサ35の出力に基づき、貯蔵室20内の温度が設定温度(この場合、常温)に上昇するまで加熱ヒーター31を運転することにより、貯蔵室20内の温度を下げすぎることなく容器50内の湿度が当該ドーナツの種類毎に測定により得られた平衡相対湿度となるように制御することができる。これにより、貯蔵室20内及び当該貯蔵室20に収容されたドーナツを設定温度の常温に維持することができると共に、当該ドーナツの保存に好適なドーナツ固有の平衡相対湿度に維持することができる。これにより、ドーナツの表面において生じるドーナツへの水分の吸着やドーナツ表面の乾燥を効果的に阻止することができるため、収納される食品の品質を維持することが可能となる。
【0115】
この際、制御装置Cは、当該昇温工程における内部循環ファン32を上述した如く収納されたドーナツの種類毎に設定された最適回転数にて運転を行う。例えば、ドーナツの種類によって表面の状態がさっくりしたものである場合は、当該回転数をより高くし、ドーナツへの送風量を多くする。これにより、ドーナツの内部の水分含有量を低減させることなく表面をより乾燥させてさっくりした理想の状態とすることができる。また、ドーナツの種類によって表面の状態がしっとりしたものである場合は、当該回転数をより低くし、当該ドーナツへの送風量を少なくする。これにより、ドーナツの表面から水分が抜けてしまうことによる乾燥を抑制でき、しっとりした理想の状態とすることができる。
【0116】
尚、係る保冷工程及び昇温工程では、制御装置Cは、施錠装置30を施錠することにより、断熱扉8の開放を禁止する。これにより、ドーナツの保存中に不用意に断熱扉8が開放され、貯蔵室20内の湿度や温度が変動してしまう不都合を回避でき、好適なドーナツの保存を実現することが可能となる。
【0117】
そして、制御装置Cは、現在時刻が出庫時刻となると、ブザー88を鳴動させ、施錠装置30を解錠し、貯蔵ランプ85を消灯して、出庫ランプ86を点滅する。また、時刻表示部73には、残時間ランプ76と共に、出庫時刻からの経過時間を表示する。
【0118】
作業者による送りスイッチ70の操作によりブザー88を停止し、冷却装置R、加熱ヒーター31、庫内循環ファン32、クーリングファン14等の運転を停止する。そして、作業者は、断熱扉8及び内扉22を開放して、貯蔵室20内に収容された容器50を取り出し、容器50内のドーナツを取り出す。
【0119】
そして、出庫されたドーナツは、既に常温にまで昇温されているため、そのままの状態で店頭に陳列、若しくは、粉糖、チョコレートなどによる表面加工処理を施した後、店頭に陳列する。
【0120】
尚、出庫後は、作業者が送りスイッチ70を操作することにより、時刻表示部73は、現在時刻表示に切り替わる。
【0121】
このように、本実施例では、制御装置Cは、貯蔵室20よりドーナツを出庫する時刻に向け、予め設定されたタイムスケジュールに基づき、殺菌工程と、保冷工程と、昇温工程とを順次実行することにより、殺菌工程において紫外線ランプ33、34にて殺菌された貯蔵室20内に収納されたドーナツを、保冷工程において、所定の温度/湿度に制御された貯蔵室20内にて適切に冷却保存することができる。
【0122】
その後、昇温工程において、ドーナツの出庫時刻に向けて貯蔵室20内に収納されたドーナツを常温に昇温させることができる。これにより、出庫時には、昇温工程にて常温にまでドーナツを昇温させることから、出庫して直ぐに販売に供することができる。
【0123】
そのため、例えば、前日の閉店間際に製造されたドーナツを好適な状態で保存し、翌日の開店時に店頭に陳列することが可能となり、一度に数多く製造されるドーナツ等の廃棄ロスを著しく低減することが可能となる。また、係る食品保存庫1を用いることによって、閉店間際であっても、予め決められた所定個数のドーナツを製造し、一部を店頭に陳列することができ、また、その残部、当該食品保存庫1にて適切に保存し、翌日の開店時に店頭に陳列することが可能となるため、閉店間際及び開店時の商品が不足しがちな時間帯であってもラインナップの充実を図ることが可能となる。
【0124】
これにより、環境への寄与を図ることができると共に、ロス分を低減することができる。
【0125】
また、本実施例では、制御装置Cは、送りスイッチ70の操作に基づいて次の工程に移行することにより、作業者は、各工程を確認しながら移行することができ、利便性の向上を図ることができる。
【0126】
尚、本実施例では、庫内湿度センサ36により検出される貯蔵室20内の湿度に基づき貯蔵室20内の湿度制御を行っているが、これに限定されるものではなく、当該庫内湿度センサ36に代えて内箱21の壁面温度を検出する壁面温度センサ(壁面温度検出手段)59を設け、当該壁面温度センサ59が検出する内箱21の壁面温度が、貯蔵室20内の設定湿度と設定温度より算出される露点温度に低下するまで圧縮機(冷却装置R)4を運転し、庫内温度センサ35の出力に基づき、貯蔵室20内の温度が設定温度に上昇するまで加熱ヒーター31を運転してもよい。
【0127】
例えば、貯蔵室20の設定温度が10℃である場合、内箱21の壁面温度が7℃に制御すると貯蔵室20内の湿度は約85%となる。そのため、制御装置Cは、壁面温度センサ59が検出する内箱21の壁面温度が、貯蔵室20内の設定湿度(この場合85%)と設定温度(この場合10℃)より算出される露点温度(この場合7℃)に低下するまで圧縮機(冷却装置R)4を運転し、貯蔵室20内の湿度を設定湿度に維持する。
【0128】
尚、本実施例では、当該食品保存庫1に保存される食品の一例としてドーナツなどの揚げ菓子を採用しているが、これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0129】
R 冷凍装置(冷却手段)
C 制御装置
1 食品保存庫
2 断熱箱体
2A 前面開口
4 圧縮機
7 コントロールパネル
8 断熱扉
12 断熱箱体側冷気通路
13 冷却器
14 クーリングファン
17 上部ダクト板
18 背部ダクト板
19 暖気吐出孔
20 貯蔵室
21 内箱
22 内扉
23 扉側冷気通路
28、29A 連通孔
29 レール
30 施錠装置(施錠手段)
31 加熱ヒーター(加熱手段)
32 内部循環ファン
33、34 紫外線ランプ(殺菌手段)
35 庫内温度センサ(庫内温度検出手段)
36 庫内湿度センサ(庫内湿度検出手段)
37 取付板
37A リード線収容部
38、42 受け部材
39 ラック
39A レール
40 ラック架設部材
41 暖気吸込孔
44 保持部材
45 配線孔
50 容器
51 容器本体
52 蓋部材
53 通気孔
54 底敷き
55 内部ダクト
58 タイマー(時限手段)
59 壁面温度センサ(壁面温度検出手段)
62 ブザー停止スイッチ(時計設定スイッチ)
64〜69 メニュー選択スイッチ
70 送りスイッチ
73 時刻表示部
74 現在時刻ランプ
75 出庫時刻ランプ
76 残時間ランプ
80〜86 工程表示ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温にて販売される食品を収納して保存するための保存庫であって、
前記食品を収納する貯蔵室と、
該貯蔵室内を冷却するための冷却手段と、
前記貯蔵室内を加熱するための加熱手段と、
前記貯蔵室内を殺菌するための殺菌手段と、
タイマー機能を有して前記冷却手段、加熱手段、及び、殺菌手段を制御する制御手段とを備え、
該制御手段は、前記貯蔵室より前記食品を出庫する時刻に向け、予め設定されたタイムスケジュールに基づき、前記殺菌手段により前記貯蔵室内を殺菌する殺菌工程と、前記冷却手段及び加熱手段により前記貯蔵室内を予め設定された温度/湿度に制御する保冷工程と、前記加熱手段により前記貯蔵室内を加熱して前記貯蔵室内の温度を常温に上昇させる昇温工程とを順次実行することを特徴とする食品保存庫。
【請求項2】
前記食品は、ドーナツ等の揚げ菓子であることを特徴とする請求項1に記載の食品保存庫。
【請求項3】
前記制御手段は、前記保冷工程において、前記貯蔵室内の湿度を前記食品の平衡相対湿度に基づいて制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の食品保存庫。
【請求項4】
前記制御手段は、前記昇温工程において、前記貯蔵室内の湿度を前記食品の平衡相対湿度に基づいて制御することを特徴とする請求項3に記載の食品保存庫。
【請求項5】
前記貯蔵室内において空気を循環するための内部循環ファンを備え、
前記制御手段は、前記保冷工程及び/又は昇温工程において、前記内部循環ファンの回転数を前記食品に応じて設定された回転数に制御することを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちの何れかに記載の食品保存庫。
【請求項6】
前記冷却手段は、前記貯蔵室内を間接的に冷却することを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちの何れかに記載の食品保存庫。
【請求項7】
前記制御手段は、前記殺菌工程を実行する前に、所定時間待機して前記貯蔵室内の清掃を促す清掃工程を実行することを特徴とする請求項1乃至請求項6のうちの何れかに記載の食品保存庫。
【請求項8】
前記制御手段は、所定の操作手段を有し、該操作手段への操作に基づいて次の工程に移行することを特徴とする請求項1乃至請求項7のうちの何れかに記載の食品保存庫。
【請求項9】
常温にて販売されるドーナツ等の揚げ菓子から成る食品を収納するための貯蔵室内を清掃する清掃工程と、
該清掃工程の終了後、殺菌手段により前記貯蔵室内を殺菌する殺菌工程と、
該殺菌工程の終了後、前記貯蔵室内に前記食品を収納し、冷却手段、及び、加熱手段により前記貯蔵室内を予め設定された温度/湿度に制御する保冷工程と、
該保冷工程の終了後、前記加熱手段により前記貯蔵室内を加熱して前記貯蔵室内の温度を常温に上昇させる昇温工程とを、前記貯蔵室より前記食品を出庫する時刻に向け、予め設定されたタイムスケジュールに基づいて実行することを特徴とする食品の保存方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−50436(P2011−50436A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199940(P2009−199940)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000133445)株式会社ダスキン (119)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】