説明

食品保存用ガラス容器

【課題】ガラス基材に添加する添加素材の入手が容易であって、安価に入手でき、漬物等の食品の保存用に用いると、食品の変色変化や食味が損なわれずに長持ちする食品保存用ガラス容器を提供することにある。
【解決手段】ソーダ石灰ガラスの主成分である二酸化ケイ素(SiO2)、酸化ナトリウム(Na2O)及び酸化カルシウム(CaO)を主成分とするガラス基材に、添加物素材として、花崗岩を主体とした岩石類を混合して溶融することにより製造され、常温で遠赤外線とマイナスイオンとを放射するガラス材よりなるガラス容器本体を有する。ガラス容器本体2は、その内面に微細凹凸部4が均一に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、漬物等の食品の保存用に用いて好適な食品保存用ガラス容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス材は、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化ナトリウム(Na2O)及び酸化カルシウム(CaO)を主成分とするソーダ石灰ガラス、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化カリウム(K2O)及び酸化鉛(PbO)を主成分とする鉛ガラス、二酸化ケイ素(SiO2)、ホウ酸(B2O)及び酸化カリウム(K2O)を主成分とするホウケイ酸ガラスの3種類にほぼ分類され、従来からこれらの主成分に他の物質を溶融又は付着させることで、様々な性質を有するガラス材の製造が行われている。
【0003】
例えば、特開2004−203635号公報に記載されているガラス材は、上述のガラス基材にボナライト鉱石を混合し、これらを溶融することで、遠赤外線を放射し、マイナスイオンを発散し、脱臭効果を有するガラス材が製造されている(例えば、特許文献1参照)。但し、特開2004−203635号公報には、「ボナライト鉱石」とは如何なる鉱石であるか並びにその産出場所等については開示されていない。
【0004】
上記特許文献1には、放射線、特に、α線が放出されると雰囲気中のマイナスの電荷を有する自由電子を引き寄せるため、α線を放出する元素の回りではマイナスイオンが検出されること、放射線を放出する元素としては、ルビジウム(Rb)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、パラジウム(Pd)、タングステン(W)等があることが記載されている。
【0005】
また、マイナスイオンを発生し得る放射線放出性鉱物粉末がガラス中に均一に分散されてなるマイナスイオン発生ガラスピースがネックレス状に繋がれたアクセサリーが提案されている(特許文献2参照)。このものは、人体への悪影響のない範囲内で放射線を放出し得る放射性物質を含有した天然鉱石(トリウム鉱石)を微粉砕して一定粒径(一般的には約1〜5μm程度)の微粉末を製造し、これを1200〜1500℃の温度に加熱溶融したガラス中に所定量添加・混合した後、任意の形状に成形することで、ガラスピースとしている。なお、ガラスピース中の天然鉱石粉末によって生じるマイナスイオンの働きにより、血液の浄化、全身低抗力の強化及び自律神経の改善を図る。
【0006】
また、遠赤外線により対象流体の分子構造を変化させて対象流体を活性化させる点並びに遠赤外線を作用させることにより流体のクラスタ(分子集合単位)を細分化する点(特許文献3参照)、遠赤外線が大腸菌や黄色ブドウ球菌に対して抗菌力効果を発揮する点(特許文献4参照)、遠赤外線を漬物に作用させることにより、漬物の品質の向上を図れる点(特許文献5参照)等が公知である。
【0007】
また、花崗岩は、オゾン層が存在しなかった時代に太陽からの遠赤外線を吸収し、形成された鉱石であり、現在でも遠赤外線を外界に向けて放出し続けていることが知られている。
【0008】
【特許文献1】特開2004−203635号公報
【特許文献2】特開2003−225106号公報
【特許文献3】特開2006−130481号公報
【特許文献4】特開平9−226844号公報
【特許文献5】特開平6−14703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ガラス基材に添加する添加素材の入手が容易であって、安価に入手でき、漬物等の食品の保存用に用いると、食品の変色変化や食味が損なわれずに長持ちする食品保存用ガラス容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る食品保存用ガラス容器は、ソーダ石灰ガラスの主成分である二酸化ケイ素(SiO2)、酸化ナトリウム(Na2O)及び酸化カルシウム(CaO)を主成分とするガラス基材に、添加物素材として、花崗岩を主体とした岩石類を混合して溶融することにより製造され、常温で遠赤外線とマイナスイオンとを放射するガラス材よりなるガラス容器本体を有するものであって、上記課題を解決するために、前記ガラス容器本体は、その内面に微細凹凸部が均一に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る食品保存用ガラス容器は、請求項1に係る食品保存用ガラス容器において、前記ガラス容器本体と前記ガラス容器本体の内部を外部に対して密閉する蓋体よりなり、前記蓋体はその裏面に、前記蓋体が前記ガラス容器本体の内部を外部に対して密閉した状態において、前記ガラス容器本体の内部に配置される下部環状周壁が設けられ、前記下部環状周壁の外周面に前記ガラス容器本体の前記微細凹凸部に当接するパッキンが設けられ、前記下部環状周壁及び前記パッキンに、前記ガラス容器本体に対して前記蓋体を開け閉めする際に空気を流通させる通気孔がそれぞれ設けられたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る食品保存用ガラス容器よれば、ガラス基材に添加する添加素材として花崗岩を用いているので、添加素材の入手が容易であって、しかも安価に入手できる。ガラス基材にこの添加素材を混合して溶融することにより製造されたガラス容器本体は、常温で遠赤外線とマイナスイオンとを放射するため、ガラス容器本体を漬物等の食品の保存用に用いると、遠赤外線の作用により漬物の水分のクラスタが細分化し、また、遠赤外線が大腸菌や黄色ブドウ球菌に対して抗菌カ効果を発揮し、マイナスイオンの働きにより、漬物等の食品の鮮度が保持される。そして、ガラス容器本体の内面に形成した微細凹凸部は、発酵に関与する菌が付着しやすい構造であるため、水分のクラスタの細分化及び微細凹凸部を活動場とした乳酸菌により、漬物の乳酸菌の活動が助長されてキムチ等の漬物の乳酸菌が長持ちし、このため美味しく保存できる。
【0013】
請求項2に係るに食品保存用ガラス容器よれば、ガラス容器本体に対して蓋体を開け閉めする際に、通気孔を通じて空気が流通することになるので、蓋体の開け閉めが楽に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る食品保存用ガラス容器を示す斜視図である。また、図2は食品保存用ガラス容器の縦方向に破断して示す断面図であり、図3は図2の要部拡大断面図である。食品保存用ガラス容器1は、例えば、漬物等の食品保存用に用いて好適なものであり、ガラス製のガラス容器本体2とガラス容器本体2の内部を外部に対して密閉する蓋体3よりなる。
【0015】
ガラス容器本体2を構成するガラス材は、ソーダ石灰ガラスの主成分である二酸化ケイ素(SiO2)、酸化ナトリウム(Na2O)及び酸化カルシウム(CaO)を主成分とするガラス基材に、添加物素材として、花崗岩(窯土類)を主体とした岩石類(石、砂利又は砂)を混合し、これらを溶融することにより製造されている。なお、ガラス材の色は、淡いグリーン色を呈する。このガラス材の組成は、図4の蛍光X線定性分析による分析結果に示されている。
【0016】
図4に示されているように、ガラス材は、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化カリウム(K2O)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化鉄(Fe23)、酸化ナトリウム(Na2O)及び酸化カルシウム(CaO)を主成分としているガラスであることがわかる。図4に表されている元素にて組成されているガラス材は、常温で、波長4〜14マイクロメートルの遠赤外線を放射し、放射線を放出する元素として、ルビジウム(Rb)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)が含まれるため、マイナスイオンを発散させる。
【0017】
また、図5は、ガラス容器本体2を構成するガラス材の組成の具体例(第1のガラス材、第2のガラス材、第3のガラス材)を表形式で表す図である。なお、表中の各数値は、全体の量に対する各成分の重量%を表す。
【0018】
ガラス容器本体2は、円筒形状をなし、底部2a及び底部2aの周縁から立ち上がる周側壁2b(側部に相当)を備え、底部2aに対向する上面が上方に向けて開口されてなる。また、周側壁2bの上端面が、密閉時に前記蓋体3の円形凹部(後述)の裏面に当接する開口端面となる。図2に示すように、ガラス容器本体2は、底部2aの内面及び周側壁2bの内周面に、サンドブラスト処理により微細な凹凸が均一に形成されている(以下、微細凹凸部4という)。なお、微細凹凸部4の表面粗さは、250メッシュ〜350メッシュとなっている。また、ガラス容器本体2の外周面は、サンドブラスト処理が施されていない通常のガラス面(滑面)である。
【0019】
図2に示すように、蓋体3は、合成樹脂製(例えば、ポリカーボネート製)で、その上面に周縁に沿って一様に円形で凹に形成された円形凹部5と、該円形凹部5を取り巻くと共に上方に起立する上部環状周壁6とを一体に備えている。円形凹部5の裏面の周縁寄りには、下部環状周壁7が下方に向けて突設され、下部環状周壁7の下端部分の外周面には、互いに対向するフランジ部8,8が形成され、2つのフランジ部8,8の間には、径方向外方に開放した嵌合周溝9が形成されている。嵌合周溝9には、リング状で薄肉のシリコンゴム製のパッキン10が嵌合され、パッキン10の外周端部分が嵌合周溝9より外部に露出されている(図3参照)。また、下部環状周壁7の1箇所には、該下部環状周壁7を径方向に貫通する通気孔11が穿設され、パッキン10の外周端部分の1箇所に通気孔12が穿設されている(図3参照)。これらの通気孔11,12は、ガラス容器本体2に対して蓋体3を開け閉めする際に空気を流通させ、開け閉めが楽に行える。
【0020】
蓋体3でガラス容器本体2を閉じる時は、蓋体3のパッキン10をガラス容器本体2の開口に嵌め込んで押し込む。蓋体3の円形凹部5の裏面にガラス容器本体2の開口端面が当接すると共に、蓋体3の裏面に設けられた下部環状周壁7がガラス容器本体2の内部に配置され、かつパッキン10の外周端縁がガラス容器本体2の内周面(微細凹凸部4)に当接した状態となり、密閉性を維持する。蓋体3を開ける時は、ガラス容器本体2を一方の手で支持すると共に他方の手で蓋体3の上部環状周壁6をつまんで上方に向けて引っ張ることで、蓋体3をガラス容器本体2から簡単に外すことができる。
【0021】
ガラス容器本体2の作用・効果について説明する。例えば、キムチのような漬物等の食品を保存する時は、保存する食品をガラス容器本体2の内部に入れ、蓋体3でガラス容器本体2を閉じて保存する。
【0022】
外光としての太陽光線に含まれる紫外線は、ガラス容器本体2がガラス製のためほとんどがその外面で反射されることになり、内部の食品に対してカットされる。このため、紫外線による食品の変色変化を防止することができる。また、太陽光線に含まれる遠赤外線はガラス容器本体2に吸収されるが、前述のようにガラス容器本体2のガラス材は、波長4〜14マイクロメートルの遠赤外線が再放射される。また、ガラス容器本体2のガラス材は、マイナスイオンを発散させる。
【0023】
ガラス容器本体2の内面に形成した微細凹凸部4は、サンドブラスト処理を施さないガラス面(滑面)に比べ、表面積が増大すること、及び光学的に多様な(色々な向きの)出射面を持つことにより、再放射された波長4〜14マイクロメートルの遠赤外線は乱放射する。そして、その一部は後方反射するため再度吸収され、さらに再放射するといったことが繰り返される。このため、吸収された波長4〜14マイクロメートルの遠赤外線が再放射される際、より均一に遠赤外線が放射される。
【0024】
また、キムチ等の漬物では、乳酸菌の働きにより食味がよくなり、長持ちすることが知られている。ガラス容器本体2の内面に形成した微細凹凸部4は、凹凸部分であるため通常のガラス面(滑面)に比べてはるかに発酵に関与する菌が付着しやすい構造であり、微細凹凸部4を活動場とした乳酸菌により均一に波長4〜14マイクロメートルの遠赤外線が放射されることにより、水分のクラスタの細分化及び微細凹凸部を活動場とした乳酸菌により、漬物の乳酸菌の活動が助長されてキムチ等の漬物が長持ちし、このため美味しく保存できる。また、間接的であるが、漬物の乳酸菌の活動が活性化しているので、例えば、大腸菌やカビ等の活動が抑制されることになり、食品が腐り難い。
【0025】
本発明の食品保存用ガラス容器は、ガラス基材に添加する添加素材として花崗岩を用いているので、添加素材の入手が容易であって、しかも安価に入手できる。本発明の食品保存用ガラス容器は、上述したキムチ等の漬物の他に、液体食品の保存用容器やクリーム状食品の保存用容器として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る食品保存用ガラス容器を示す斜視図である。
【図2】食品保存用ガラス容器の縦方向に破断して示す断面図である。
【図3】図3は図2の要部拡大断面図である。
【図4】ガラス材の蛍光X線定性分析による分析結果を示す図である。
【図5】ガラス容器本体を構成するガラス材の組成の具体例(第1のガラス材、第2のガラス材、第3のガラス材)を表形式で表す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 食品保存用ガラス容器
2 ガラス容器本体
2a 底部
2b 周側壁
3 蓋体
4 微細凹凸部
5 円形凹部
6 上部環状周壁
7 下部環状周壁
8 フランジ部
9 嵌合周溝
10 パッキン
11 通気孔
12 通気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソーダ石灰ガラスの主成分である二酸化ケイ素(SiO2)、酸化ナトリウム(Na2O)及び酸化カルシウム(CaO)を主成分とするガラス基材に、添加物素材として、花崗岩を主体とした岩石類を混合して溶融することにより製造され、常温で遠赤外線とマイナスイオンとを放射するガラス材よりなるガラス容器本体を有する食品保存用ガラス容器において、前記ガラス容器本体は、その内面に微細凹凸部が均一に形成されていることを特徴とする食品保存用ガラス容器。
【請求項2】
前記ガラス容器本体と前記ガラス容器本体の内部を外部に対して密閉する蓋体よりなり、前記蓋体はその裏面に、前記蓋体が前記ガラス容器本体の内部を外部に対して密閉した状態において、前記ガラス容器本体の内部に配置される下部環状周壁が設けられ、前記下部環状周壁の外周面に前記ガラス容器本体の前記微細凹凸部に当接するパッキンが設けられ、前記下部環状周壁及び前記パッキンに、前記ガラス容器本体に対して前記蓋体を開け閉めする際に空気を流通させる通気孔がそれぞれ設けられたことを特徴とする請求項1に記載の食晶保存用ガラス容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−36979(P2010−36979A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205439(P2008−205439)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(508242458)
【Fターム(参考)】