説明

食品保管施設及び食品保管方法

【課題】 食品の長期保存においては、冷凍機と静電場発生装置の双方の消費電力がコストに大きな影響を及ぼす。また、冷蔵庫による個別の冷蔵保存では、扉の開閉による温度変化や、冷蔵庫の本質的な問題である乾燥による劣化も長期保存を妨げる大きな要因となっている。
【解決手段】 静電場雰囲気で食品を冷蔵保存する方法において、食品を冷蔵保管する施設空間に雪を堆積させると共に、静電場発生電源に接続したもので該施設空間の周壁に沿って配した通電レールに、食品を収納した食品収納具に設けた通電チェーンを、直接若しくは間接的に接続して設置する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大量の食品を雪と共に収容して冷蔵すると共に、各食品収納具に静電場を形成させることで、長期保存に適用した保管施設及びその方法に関する。

【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、冷蔵庫内において静電場を形成し、この雰囲気内で生鮮食料品を長期冷蔵保存する方法が広く知られている。静電場形成手段としては、高圧静電トランスを使用し、2次高圧側の1極を絶縁し、他の1極を導電性金属材料の棚やケースなどに接続する。これによって、静電誘導による陰電子が印加され、該棚に載置した生鮮食料品を静電場雰囲気内で冷蔵保存することができる。この場合の陰電子発生条件としては、高圧静電トランス100V1次側の電流値が電極1m当たり0.02A〜0.3Aであり、1次側電流値を満足させる2次側電圧は5000V〜20000Vである。
【0003】
冷蔵庫内に形成した静電場雰囲気内においては、通常3°〜−3°の温度域で保存するが、−5°C程度の低温でも凍結することがない。このため、凍結時における細胞破壊が生じることなく新鮮な状態で長期間保存することができ、生鮮食料品の保存にはまさに好適な保存方法である。
【特許文献1】特願2001−215074
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷蔵庫内を静電場雰囲気に形成する構造においては、冷蔵庫の大きさや保存物の数、大きさ、形状にもよるが、収穫した野菜や果物などの大量の食品を保存するには構造的に難しい問題がある。例えば、食品の長期保存を目的とする場合、冷凍機と静電場発生装置の双方の消費電力がコストに大きな影響を及ぼす。また、冷蔵庫による個別の冷蔵保存では、扉の開閉による温度変化や、冷蔵庫の本質的な問題である乾燥による劣化も長期保存を妨げる大きな要因となっている。
【0005】
さらに、従来の静電場処理装置においては、冷蔵庫内の内壁全体をポリ塩化ビニルなどのプラスチック製絶縁体を介して金属板で覆った構造とし、庫内全体に静電場雰囲気を形成させている。このため、食品の置き場所によっては静電場の条件にバラツキが生じ、保存状態が異なって品質が一定しない問題がある。特に、装置が大型化するにつれてこのことが顕著となり、大量の食品をまとめて保存する場合の大きなネックとなっていた。

【課題を解決するための手段】
【0006】
以上のような状況に鑑み、本発明者は鋭意研究の結果遂に本発明を完成したものであり、その特徴とするところは、内部に設けた雪設置ゾーンに雪を堆積させることにより食品を冷蔵保管する施設空間において、静電場発生電源に接続した通電レールを該施設空間の周壁に沿って配し、複数の食品収納具を相互に間隔を開けて設置する構造であって、該食品収納具は、導電体で形成し絶縁体を介して設置すると共に、該通電レールに直接若しくは間接的に接続する通電チェーンを設けたことにある。
【0007】
また、方法の発明にあっては、静電場雰囲気で食品を冷蔵保存する方法において、食品を冷蔵保管する施設空間に雪を堆積させると共に、静電場発生電源に接続したもので該施設空間の周壁に沿って配した通電レールに、食品を収納した食品収納具に設けた通電チェーンを、直接若しくは間接的に接続して設置することにある。
【0008】
本明細書中でいう「施設空間」とは、食品を保管する建屋の内部空間であり、内部に設けた雪設置ゾーンに雪を堆積させて、収納した食品を冷蔵保存する。本発明においては、さらに食品を静電場雰囲気におくことで長期保存することを目的としている。雪設置ゾーンは、建屋の床面に設けてもよく、地中に形成してその上に食品を置くようにしてもよい。
【0009】
「食品収納具」とは、食品を収納する容器状の保管具であり、本体を導電体で形成して内部に静電場雰囲気を形成させる。大量の食品を保存するため、多数の食品収納具を施設空間に設置する。これは、食品を小分けすることで静電場の条件をできるだけ均等にするためである。食品収納具の大きさとしては、縦、横、高さが約1000mm〜2000mmである。
【0010】
本発明においては、それぞれの食品収納具に静電場雰囲気を形成させるため、静電場発生電源に接続した通電レールを建屋の周壁に沿って設け、該通電レールと食品収納具を電気的に接続する。接続具としては、チェーンなどの導電性及び可撓性を有するものであればよい。また、食品収納具は平面状に並べる他、電気的に接続した状態で積み重ねることも可能である。

【発明の効果】
【0011】
本発明に係る食品保管施設及び食品保管方法は、大量の食品を簡単確実に静電場雰囲気で冷蔵保存することができ、長期に渡って鮮度を保持させることが可能となる。食品は複数の食品収納具に個別に収納することと、各食品収納具に設けた通電チェーンで静電場発生電源と接続することにより、各食品収納具に確実に静電場雰囲気を形成することができ、しかも食品収納具毎の搬入・搬出を容易にすることができる。また、冷蔵手段として雪を利用するためランニングコストがほとんどかからないなど、実用上極めて有益な効果を有するものである。

【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、食品を冷蔵保管する施設空間に雪を堆積させると共に、静電場発生電源に接続した通電レールを設け、食品収納具に設けた通電チェーンで該通電レールに直接若しくは間接的に接続することにより、上記課題を解決した。

【実施例1】
【0013】
図1は、本発明に係る食品保管施設1の一実施例を示すもので、その施設空間内に静電場発生電源として高電位発生トランスを内蔵した高電位発生制御装置2、該高電位発生制御装置2に接続した通電レール3、そして雪を堆積させる雪設置ゾーン4を配している。この食品保管施設1に食品を収納した複数の食品収納具5を設置することで、静電場雰囲気で冷蔵保存する。食品収納具5には通電チェーン51を設けており、これを通電レール3や食品収納具5同士に架け渡し電気的に接続して、各食品収納具5に静電場雰囲気を形成している。各食品収納具5及び通電レール3は碍子6を介して設置して絶縁する。
【0014】
食品保管施設1は、図2に示すように開閉扉8にその開閉を検知する安全スイッチ9を設け、食品収納具5の搬入・搬出などに際して開閉扉8を開けたときに高圧電源を遮断するようにしている。また、施設1の内外に動作表示用タワー灯7を設け、食品収納具5等への通電状態を表示して安全性を高めている。

【実施例2】
【0015】
図3(a)(b)は、食品収納具5の一実施例を示すもので、パレット52上に金属製網状体53で四方を囲んだ容器状であり、該金属製網状体53の各面に通電チェーン51を設けている。パレット52の下面には絶縁用の碍子6を四隅に配している。
【0016】
食品収納具5は食品保管施設1に設置した後、図4に示すように通電チェーン51を通電レール3や隣接する食品収納具5に相互に架け渡し、高電位発生制御装置2と間接的に接続する。各食品収納具5は、静電場発生電源との接続を通電チェーン51を介するため、搬入・搬出や施設1内での移動も任意に行うことができる。

【実施例3】
【0017】
食品収納具5は平面状に並べる他、図5のように積み重ねて設置することもできる。この場合、下の食品収納具5から通電させるために、導電性の脚54を設けて電気的に接続する。

【実施例4】
【0018】
雪Sは、食品保管施設1の床面上に堆積させる他、図6のように食品保管施設1の地中に埋設し、グレーチングなどの区画部材10で覆って、その上に食品収納具5を設置するようにしてもよい。通常、雪Sの埋設部分には排水管などの排水設備を設ける。

【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る食品保管施設の一実施例を示す平面図である。(実施例1)
【図2】本発明に係る食品保管施設の外観の一例を示す斜視図である。
【図3】食品収納具の一例を示すもので、(a)は正面図、(b)は側面図である。(実施例2)
【図4】食品収納具の設置状態の一例を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る食品保管施設の他の実施例を示す部分正面図である。(実施例3)
【図6】本発明に係る食品保管施設のさらに他の実施例を示す部分正面図である。(実施例4)
【符号の説明】
【0020】
1 食品保管施設
2 高電位発生制御装置
3 通電レール
4 雪設置ゾーン
5 食品収納具
51 通電チェーン
52 パレット
53 金属製網状体
54 脚
6 碍子
7 動作表示用タワー灯
8 開閉扉
9 安全スイッチ
10 区画部材
S 雪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に設けた雪設置ゾーンに雪を堆積させることにより食品を冷蔵保管する施設空間において、静電場発生電源に接続した通電レールを該施設空間の周壁に沿って配し、複数の食品収納具を相互に間隔を開けて設置する構造であって、該食品収納具は、導電体で形成し絶縁体を介して設置すると共に、該通電レールに直接若しくは間接的に接続する通電チェーンを設けたことを特徴とする食品保管施設。
【請求項2】
雪は施設空間を形成する地中に埋設し、その上に区画部材を介して食品収納具を設置する請求項1記載の食品保管施設。
【請求項3】
施設の開閉扉は、その開閉を通電レールへの通電を遮断するスイッチに連動させた請求項1記載の食品保管施設。
【請求項4】
静電場雰囲気で食品を冷蔵保存する方法において、食品を冷蔵保管する施設空間に雪を堆積させると共に、静電場発生電源に接続したもので該施設空間の周壁に沿って配した通電レールに、食品を収納した食品収納具に設けた通電チェーンを、直接若しくは間接的に接続して設置することを特徴とする食品保管方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−111011(P2007−111011A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308360(P2005−308360)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(503311298)株式会社フィールテクノロジー (6)
【Fターム(参考)】