説明

食品原木スライス装置

【課題】ハムホルダーの着脱作業を丸刃の公転移行路外から安全に行うことができる食品原木スライス装置を提供する。
【解決手段】回転自在な丸刃取付用回転体6上の偏芯位置に設けられた第2回転軸7を中心に自転しかつ丸刃取付用回転体6の回転により公転する丸刃3を備え、この丸刃3の公転移行路8に送り込み台31より断続的に送り込まれるベーコン原木を丸刃3によってスライスする。送り込み台31の公転移行路8側端に、当該送り込み台31から丸刃3の公転移行路8に対し送り込まれるベーコン原木を保持するハムホルダー32を着脱自在に取り付ける。ハムホルダー32に、このハムホルダー32を丸刃3の公転移行路8外から操作可能とする操作手段33を設け、この操作手段33を、送り込み台31の公転移行路8側端の取付位置と丸刃3のほぼ公転移行路8外の公転移行路外位置との間でハムホルダー32を変換させるように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハムやチーズ又はベーコン等の食品原木をスライスしてスライス食品とするための食品原木スライス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スライスハムやチーズ又はベーコン等のスライス食品を製造するに当たっては、柱状の食品原木(ハム原木、チーズ原木、ベーコン原木等)を食品原木スライス装置で所定の厚さにスライスしている。
【0003】
このような食品原木スライス装置としては、下記の特許文献1に示すように、回転自在な回転円盤上の偏芯位置に設けられた丸刃軸を中心に自転しかつ前記回転円盤の回転により公転する丸刃を備え、この丸刃の公転移行路に、送り込み台より断続的に送り込まれる食品原木を前記丸刃によってスライスするようにしたものが知られている。
【0004】
また、送り込み台の公転移行路側端に、当該送り込み台から丸刃の公転移行路に対し送り込まれる食品原木を案内するホルダーが着脱自在に取り付けられているものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−290157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、送り込み台の公転移行路側端にホルダーを取り付けたものでは、丸刃によって食品原木をスライスした際に飛散する微小片や汁状物がホルダーに付着し易いものとなる。そのため、種類の異なる食品原木をスライスするに当たり、ホルダーの付着物が新たな種類の食品原木に付着しないようにホルダーを取り外して洗浄又は交換する必要がある。
【0007】
その場合、ホルダーを取り外す際には丸刃をホルダーから離反した公転移行路上の位置で停止させる必要がある。しかし、丸刃をホルダーから離反させた位置で停止させていても、ホルダー自体が丸刃の公転移行路上に位置しているため、ホルダーの着脱作業に万一の危険が伴う。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ホルダーの着脱作業を丸刃の公転移行路外から安全に行うことができる食品原木スライス装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明では、回転自在な回転円盤上の偏芯位置に設けられた丸刃軸を中心に自転しかつ前記回転円盤の回転により公転する丸刃を備え、この丸刃の公転移行路に対し送り込み台より断続的に送り込まれる食品原木を前記丸刃によってスライスするようにした食品原木スライス装置を前提とする。更に、前記送り込み台の公転移行路側端に、当該送り込み台から前記丸刃の公転移行路に対し送り込まれる食品原木を保持するホルダーを着脱自在に取り付けている。そして、前記ホルダーに、当該ホルダーを前記丸刃の公転移行路外から操作可能とする操作手段を設け、この操作手段を、前記送り込み台の公転移行路側端の取付位置と前記丸刃のほぼ公転移行路外の公転移行路外位置との間で前記ホルダーを変換させるように構成することを特徴としている。
【0010】
この特定事項により、送り込み台の公転移行路側端の取付位置に取り付けられたホルダーは、丸刃の公転移行路外からの操作手段の操作によって、取付位置から公転移行路外位置に変換されてから、当該公転移行路外位置にて着脱される。これにより、ホルダーの着脱作業を安全に行うことが可能となる。
【0011】
また、前記操作手段に、前記ホルダーの取付位置と公転移行路外位置との間を延びるレールと、一端が前記ホルダーに固定されて他端が前記丸刃の公転移行路外に延び、前記レールに支持されて前記ホルダーを前記取付位置と前記公転移行路外位置とに変換する操作部材と、を設けていてもよい。
【0012】
この場合、ホルダーは、取付位置と公転移行路外位置との間を延びるレールに支持された操作部材の一端に固定されているので、ホルダーがレールに沿って取付位置と公転移行路外位置とに容易に変換され、ホルダーの着脱作業をスムーズに行うことができる。
【0013】
更に、前記レールを前記丸刃の刃面と略平行に延ばしていてもよい。
【0014】
この場合、ホルダーは、取付位置と公転移行路外位置とに丸刃の刃面に沿って変換されるので、ホルダーの変換に要するスペースが丸刃の刃面に沿った非常にコンパクトなものとなる。このため、丸刃によりスライスされたスライス食品を受け取る受け取りコンベアなどが送り込み台の公転移行路側端に連設されていても、この受け取りコンベアをホルダーの着脱作業時に移動させて退かす必要がない。これにより、ホルダーの着脱作業に付随する受け取りコンベアの退去作業などを不要にして、ホルダーの着脱作業の簡単化を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
丸刃の公転移行路外からの操作手段の操作によりホルダーを取付位置から公転移行路外位置に変換してから着脱することで、ホルダーの着脱作業を安全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る食品原木スライス装置の側面図である。
【図2】フロントパネルを取り外した状態で図1の食品原木スライス装置を丸刃の回転 軸方向から見た正面図である。
【図3】図1の食品原木スライス装置の受け台及び送給機構の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る食品原木スライス装置を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、食品原木スライス装置1は、基台2と、この基台2上に設けられた円盤状の丸刃3とを備えている。また、符号4は丸刃3を回転駆動するためのモータ、5は第1回転軸、6は第1回転軸5により回転自在に支持された回転円盤としての丸刃取付用回転体、7は第1回転軸5から所定距離離れた丸刃取付用回転体6上の半径方向外側に設けられた丸刃軸としての第2回転軸を示している。丸刃3は、第2回転軸7に回転自在に支持されていて、図2に示すように第2回転軸7を中心として刃物自転モータ4Aの回転により自転しながら、第1回転軸5を中心として刃物公転モータ4Bの回転により公転するように構成されている。図2中の矢印R1は丸刃3の自転方向、矢印R2は丸刃3の公転方向を示している。なお、このように丸刃3を自転させながら公転させる機構は、この種のスライス装置に一般的に採用されている公知の構成であるので、詳細な説明を省略する。
【0018】
また、符号8は、前記のように自転しながら公転駆動される丸刃3の公転移行路(すなわち丸刃3の外周縁の軌跡)を示している。更に、符号9は、丸刃3を前方から遮蔽するフロントパネルである。
【0019】
基台2の上面には、略長方形の枠体状のフレーム体11が支持されている。このフレーム体11の内側には、食品原木としてのベーコン原木Fを上面に載置可能とする受け台12が設けられている。受け台12の前端側は、フレーム体11の前端部に上下回動自在に枢支されている。また、受け台12は、その後端部が図示しないリンク機構を介して基台2に連結され、上面が水平に近づく原木供給位置(図1に二点鎖線で示す位置)と、上面が丸刃3の回転軸(第1回転軸5及び第2回転軸7)の軸方向とほぼ平行となるように傾斜する作業位置(図1に破線で示す位置)との間で起伏揺動するように構成されている。この場合、リンク機構は、エアシリンダ等の駆動手段により駆動するようになっているが、その駆動手段と共に具体的な構成は特に限定されず、この種のスライス装置における公知の機構を採用できるため、図示及び詳細な説明は省略する。
【0020】
受け台12の前端には、支軸13回りに回転自在に支持されたシャッタ14が設けられている。このシャッタ14は、図示しない伸縮シリンダの伸縮軸に連結され、その伸縮シリンダの伸縮により支軸13回りに開閉可能である。そして、シャッタ14は、図1に二点鎖線で示す閉塞位置では受け台12に載せられたベーコン原木Fの送給経路上に支軸13回りに起立し、ベーコン原木Fの前端部に当接して、ベーコン原木Fが丸刃3側へ移動するのを防止し、他方、図1に破線で示す開放位置ではベーコン原木Fの送給経路上に支軸13回りに倒伏して当該送給経路の下面を構成することで、ベーコン原木Fの丸刃3側への移動を許容するようになっている。
【0021】
フレーム体11には、送給機構21が設けられている。この送給機構21は、フレーム体11の一方の側板15(図3では下側の側板)の外面に沿って延設されたねじ軸22と、このねじ軸22を回転駆動するモータ23と、ねじ軸22と螺合した雌ねじ体を有する送り台24と、この送り台24に取り付けられたグリッパ25とを備えている。グリッパ25は、開閉してベーコン原木Fの端部を把持する爪25aを備えている。また、図示を省略するが、側板15の外面にはねじ軸22と平行なガイド杆が固設されるとともに、このガイド杆と摺動自在に係合する係合部材が送り台24に設けられている。以上のような構成により、モータ23でねじ軸22を正逆方向に回転させると、送り台24及びグリッパ25は、作業位置にある受け台12の上面に沿って前進(下降)もしくは後退(上昇)するようになっている。
【0022】
基台2の上面の前端位置には、受け台12の前方に連続する送り込み台31が設けられている。この送り込み台31には、受け台12上を移動してきたベーコン原木Fが送り込まれる。そして、送り込み台31の公転移行路8側端には、当該送り込み台31から丸刃3の公転移行路8に対し送り込まれるベーコン原木Fを保持するハムホルダー32(ホルダー)が着脱自在に取り付けられている。このハムホルダー32は、ポリオキシメチレン(POM)又はポリアセタールなどの樹脂材よりなり、中央部にベーコン原木Fの下部の断面形状に則した略コの字状の凹部32a(図2に表れる)を有している。
【0023】
ハムホルダー32には、このハムホルダー32を丸刃3の公転移行路8外から操作可能とする操作手段33を備えている。この操作手段33は、送り込み台31の公転移行路8側端の取付位置(図2に実線及び破線で示す位置)と丸刃3のほぼ公転移行路8外の公転移行路外位置(図2に二点鎖線で示す位置)との間でハムホルダー32を変換させるように構成されている。この場合、ハムホルダー32を公転移行路外位置に変換した際にハムホルダー32の一部が公転移行路8内に位置しているが、ハムホルダー32の大部分は公転移行路8外に位置しており、後述するハムホルダー32の取り外し作業に影響を与えるものではない。
【0024】
ここで、操作手段33の構成を具体的に説明する。
操作手段33は、ハムホルダー32の取付位置と公転移行路外位置との間を前記回転刃3の刃面と略平行に延びる一対のレール34と、一端(図2では左端)がハムホルダー32に固定されて他端(図2では右端)が丸刃3の公転移行路8外に延び、レール34にスライド自在に支持されてハムホルダー32を取付位置と公転移行路外位置とに変換する操作部材35とを備えている。ハムホルダー32は、操作部材35の一端に設けられた凹部35bに挿通され、この状態で2本のボルト36により締結されている。また、操作部材35は、送り込み台31の他側面にボルト固定されてハムホルダー32の不慮の移動を防止している。この操作部材35の他端(延出端)には、公転移行路8外からの操作を可能とする操作部としての把持部35aが設けられている。
【0025】
また、丸刃3の下方には、丸刃3によりスライスされて落下するスライス食品を受け取る受け取りコンベヤ41が設けられている。この受け取りコンベア41は、送り込み台31の公転移行路8側端に連設されている。また、受け取りコンベア41の他側(図1では紙面手前側)には、基台2に軸42を介して枢支されたサイドパネル43が設けられ、このサイドパネル43を軸42回りに外方へ回転させることで、操作部材35の把持部35aが露呈するようになっている。更に、送り込み台31の他側面には、ハムホルダー32を取付位置と公転移行路外位置とに変換する際に送り込み台31との干渉を回避する切欠部31a(図2に表れる)が設けられ、操作部材35によるハムホルダー32のスムーズな移動を可能にしている。なお、符号45は、食品原木スライス装置1の作動を指示する指示部である。
【0026】
次に、ハムホルダー32を取り外す場合の手順について説明する。
先ず、サイドパネル43を軸42回りに外方へ回転させ、操作部材35の把持部35aを露呈させる。それから、操作部材35を送り込み台31の他側面に固定しているボルトを外してハムホルダー32を移動可能な状態とする。このとき、フロントパネル9を取り外して丸刃3を前方に露呈させることで、丸刃3がハムホルダー3から離反した公転移行路8上の位置で停止していることを確認してもよい。
その後、把持部35aを引張って操作部材35をレールに沿って引き出し、ハムホルダー32を取付位置から公転移行路外位置に変換する。このとき、ハムホルダー32は、送り込み台31の他側面の切欠部31aを介して公転移行路外位置までスムーズに移動する。
それから、ハムホルダー32を操作部材35に締結しているボルト36を緩め、凹部35bからハムホルダー32を取り出す。
一方、ハムホルダー32を送り込み台31の公転移行路8側端に取り付ける場合には、上記の手順とは逆の手順で取り付けられる。
【0027】
したがって、本実施の形態では、送り込み台31の公転移行路側端の取付位置に取り付けられたハムホルダー32は、丸刃3の公転移行路8外からの操作部材35の操作によって、取付位置から公転移行路外位置に変換されてから、当該公転移行路外位置にて着脱される。これにより、ハムホルダー32の着脱作業を安全に行うことができる。
【0028】
しかも、ハムホルダー32は、取付位置と公転移行路外位置との間を丸刃3の刃面と平行に延びる一対のレール34に支持された操作部材35の一端に固定されているので、ハムホルダー32が丸刃3の刃面と平行に取付位置と公転移行路外位置とに容易に変換され、ハムホルダー2の変換に要するスペースが丸刃3の刃面に沿った非常にコンパクトなものとなる。このため、丸刃3によりスライスされたスライス食品を受け取る受け取りコンベヤ41が送り込み台31の公転移行路8側端に連設されていても、この受け取りコンベア41をハムホルダー32の着脱作業時に移動させて退かす必要がない。これにより、ハムホルダー32の着脱作業に付随する受け取りコンベア41の退去作業などを不要にして、ハムホルダー32の着脱作業をスムーズかつ簡単に行うことができる。
【0029】
なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の変形例を包含している。例えば、前記実施の形態では、ベーコン原木Fを保持するハムホルダー32を操作部材35の凹部35bに挿通したが、ハム原木を保持するハムホルダーやチーズ原木を保持するホルダーにも適用できるのはいうまでもない。この場合、ホルダーの中央部の凹部は、食品原木の下部の断面形状に則した形状に形成される。
【0030】
また、前記実施の形態では、操作部材35を丸刃3の刃面と略平行に延びるレール34に支持したが、操作部材を丸刃の回転軸と平行な軸回りに回転自在に支持し、この操作部材が取付位置から公転移行路外位置まで上回り又は下回りで変換されるようにしてもよい。
【0031】
更に、前記実施の形態では、ハムホルダー32を取付位置から丸刃3のほぼ公転移行路8外の公転移行路外位置に変換させるようにしたが、レールをもう少し長くするなどして、ハムホルダーが丸刃の公転移行路外の公転移行路外位置まで確実に変換されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 食品原木スライス装置
3 丸刃
6 丸刃取付用回転体(回転円盤)
7 第2回転軸(丸刃軸)
8 公転移行路
32 ハムホルダー(ホルダー)
33 操作手段
34 レール
35 操作部材
F ベーコン原木(食品原木)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在な回転円盤上の偏芯位置に設けられた丸刃軸を中心に自転しかつ前記回転円盤の回転により公転する丸刃を備え、この丸刃の公転移行路に対し送り込み台より断続的に送り込まれる食品原木を前記丸刃によってスライスするようにした食品原木スライス装置であって、
前記送り込み台の公転移行路側端には、当該送り込み台から前記丸刃の公転移行路に対し送り込まれる食品原木を保持するホルダーが着脱自在に取り付けられており、
前記ホルダーには、当該ホルダーを前記丸刃の公転移行路外から操作可能とする操作手段が設けられ、この操作手段は、前記送り込み台の公転移行路側端の取付位置と前記丸刃のほぼ公転移行路外の公転移行路外位置との間で前記ホルダーを変換させるように構成されていることを特徴する食品原木スライス装置。
【請求項2】
前記操作手段には、
前記ホルダーの取付位置と公転移行路外位置との間を延びるレールと、
一端が前記ホルダーに固定されて他端が前記丸刃の公転移行路外に延び、前記レールに支持されて前記ホルダーを前記取付位置と前記公転移行路外位置とに変換する操作部材と、が設けられている請求項1に記載の食品原木スライス装置。
【請求項3】
前記レールは、前記丸刃の刃面と略平行に延びている請求項2に記載の食品原木スライス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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