説明

食品容器の電子線殺菌検査システム及び食品容器の電子線殺菌検査方法

【課題】大量生産される製造ラインにおいて、確実に電子線の照射が行われたかを検査できる食品容器の電子線殺菌検査システムを提供する。
【解決手段】食品容器10を搬送する食品容器搬送装置20と、前記食品容器搬送装置20によって搬送される前記食品容器10に電子線を照射する電子線照射装置30と、前記電子線照射装置30により前記食品容器10に電子線が照射されて変化した少なくとも一つの物性値を検出する物性検出部40と、前記物性検出部40により検出された前記物性値、又は前記物性値の電子線照射前後における変化量が予め設定された範囲内に収まっているか否かを判断する物性判断部50と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線殺菌の検査システム、及び、電子殺菌の検査方法に関し、特に、PETのような電子線を透過可能な樹脂に電子線を照射して高速に容器に対して殺菌処理を実行する殺菌システムにおける検査システム、及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品又は飲料の容器(以下、食品容器と記す)は、その内外面の殺菌が求められる。細菌、ウイルスのような細胞性生物の破壊するために用いられる粒子線として、電子線が用いられることがある。電子線は、細胞性生物の破壊のために2点で特に好ましい物理的性質を有している。電子線の積算照射量が細胞性生物の種類に応じて見出される細胞性生物破壊の積算照射量の値以上になるように調整すれば、電子線照射で細胞性生物を確実に破壊することができる。電子線は、その加速エネルギーに応じて一定質量以下の樹脂膜に対して透過性を有している。
【0003】
上記と関連して、特許文献1は、負圧(真空)空間内で電子線を走査する走査体の照射窓部より出射される走査電子線を、食品や飲料容器等の立体形状の被照射物に繰り返し照射しながら殺菌等の所期の目的を達成する電子線照射方法において、前記走査電子線が出射される照射窓部を凹設し、該凹設空間内に被照射物を配置した状態で、該照射窓の凹設部位より出射される電子線を前記被照射物に照射させることを特徴とする電子線照射方法、を開示している。
【0004】
また、特許文献2は、電子線を生成する電子線生成器と、前記電子線を磁気的に偏向する電子線偏向器とを具え、前記電子線は、容器の片側部位から前記容器の中に侵入する第1電子線と、前記片側部位から前記容器の中に透過的に侵入する第2電子線と、前記片側部位から前記容器の中に透過的に侵入する第3電子線とを形成し、前記第1電子線は前記容器の内部で前記第2電子線に交叉し、前記第3電子線は前記容器の内部で前記第1電子線に交叉し、前記容器は、電子線透過性材料で形成され、空気中に配置されている殺菌装置、を開示している。
【0005】
このように優れた物理的性質を持つ電子線を細胞性生物破壊のために用いる際に、電子線の照射量が不足した場合には、食品容器が十分に殺菌されない。また、電子線の照射が過照射となった場合には、食品容器の変色などに影響を及ぼすことがある。よって、電子線を食品容器に対して適正な照射量を照射する必要がある。
【0006】
一方で、大量生産される製造ラインでは、確実に検査を行う為に全数検査されることが望まれる。また、検査の際には、検査の手間を省くことでランニングコストを極力抑制されることが求められる。更に、電子線の照射が適正に行われなかった食品容器は、確実に製造ラインから除去されることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11‐248892号 公報
【特許文献2】特開2004‐067233号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、電子線を照射して高速に容器に対して殺菌処理を実行する殺菌システムを備える食品製造ラインにおいて、確実に電子線の照射が行われたかを検査できる食品容器の電子線殺菌検査システムを提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、電子線を照射して高速に容器に対して殺菌処理を実行する殺菌システムを備える食品製造ラインにおいて、ランニングコストが抑制された食品容器の電子線殺菌検査システムを提供することである。
【0010】
本発明の更に他の目的は、電子線を照射して高速に容器に対して殺菌処理を実行する殺菌システムを備える食品製造ラインにおいて、適正に電子線の照射が行われなかった食品容器を確実に製造ラインから除去できる食品容器の電子線殺菌検査システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
その課題を解決するための手段が、下記のように表現される。その表現中に現れる技術的事項には、括弧()つきで、番号、記号等が添記されている。その番号、記号等は、本発明の実施の複数の形態又は複数の実施例のうちの少なくとも1つの実施の形態又は複数の実施例を構成する技術的事項、特に、その実施の形態又は実施例に対応する図面に表現されている技術的事項に付せられている参照番号、参照記号等に一致している。このような参照番号、参照記号は、請求項記載の技術的事項と実施の形態又は実施例の技術的事項との対応・橋渡しを明確にしている。このような対応・橋渡しは、請求項記載の技術的事項が実施の形態又は実施例の技術的事項に限定されて解釈されることを意味しない。
【0012】
本発明に係る食品容器の電子線殺菌検査システム(1)は、食品容器(10)を搬送する食品容器搬送装置(20)と、
食品容器搬送装置(20)によって搬送される食品容器(10)に電子線を照射する電子線照射装置(30)と、
電子線照射装置(30)により食品容器(10)に電子線が照射されて変化した少なくとも一つの物性値を検出する物性検出部(40)と、
物性検出部(40)により検出されたその物性値、又はその物性値の電子線照射前後における変化量が予め設定された範囲内に収まっているか否かを判断する物性判断部(50)と、
を備える。
上述の構成に依れば、電子線が照射された後に、食品容器の物性値を検知し、その物性値を判断する。ここで、食品容器の物性値とは、電子線の照射の前後で変化が生じる食品容器部材の物理化学的特性や、食品容器部材及び食品容器の周囲の物理化学的状態の量をいう。電子線の照射状態(電子線照射線量を含む)を、電子線照射装置側の運転条件の設定値からの推定によるのではなく、被照射体である食品容器部材の物理化学的特性や、食品容器部材及び食品容器の周囲の物理化学的状態を直接計測することによって、より確実に適正に殺菌が成されたかどうかを判断することができるので、適正に電子線の照射が行われなかった食品容器をより確実に製造ラインから除去することができる。
【0013】
本発明に係る食品容器の電子線殺菌検査システム(1)は、
更に、
物性判断部(50)により食品容器の物性値が所定の範囲内に収まっていないと判断された食品容器(10)を除去する不良品除去装置(60)
を備える。
上述の構成に依れば、食品容器の物性の測定値に基いて、適正に電子線が照射されなかった食品容器(10)を自動的に製造ラインから除去することができ、ランニングコストが抑制される。
【0014】
本発明に係る食品容器の電子線殺菌検査システム(1)において、物性検出部(40)は、食品容器の温度を測定する温度検出器(41)を備える。
電子線照射により発熱し温度が上昇する樹脂などのような材料で作られた食品容器においては、食品容器に対して、適正な照射が行われたときの温度検出器の測定値の許容範囲を予め把握しておき、例えば食品容器全面の温度を測定し、所定の箇所の温度がその許容範囲の値を外れたときには電子線の過剰照射又は照射不足と判断して、食品容器を選別することができる。
【0015】
本発明に係る食品容器の電子線殺菌検査システム(1)において、物性検出部(40)は、オゾン濃度を検出するオゾンガスセンサ(42)を備える。
電子線照射を受けた食品容器の中や周囲の空気中では、電子線照射によりオゾンガスが発生する。上述の構成に依れば、適正な照射が行われたときに発生するオゾンガス濃度の許容値を予め把握しておき、電子線照射後のオゾン濃度を測定し、これを所定の許容範囲を外れたときには電子線の過剰照射又は照射不足と判断して、適正に電子線の照射が行われなかった食品容器を確実に製造ラインから除去することができる。
【0016】
本発明に係る食品容器の電子線殺菌検査システム(1)において、物性検出部(40)は、帯電量を測定する帯電量測定器(43)を備える。
食品容器には、電子線照射により帯電するものがある。上述の構成に依れば、予め適正な照射が行われたときに食品容器が発生させる帯電量の範囲を予め把握しておき、電子線照射後の帯電量を測定し、これを所定の許容範囲を外れたと時には電子線の過剰照射又は照射不足と判断して、適正に電子線の照射が行われなかった食品容器を確実に製造ラインから除去することができる。
【0017】
本発明に係る食品容器の電子線殺菌検査システム(1)において、
物性検出部(40)は、カメラ(44)を備える。
食品容器には、電子線照射により色が変化するものがある。上述の構成に依れば、予め適正な照射が行われたときに食品容器が発する又は反射する色の範囲を予め把握しておき、電子線照射時もしくは照射後の食品容器が発する又は反射する色を検出し、これを所定の許容範囲を外れた時には電子線の過剰照射又は照射不足と判断して、適正に電子線の照射が行われなかった食品容器を確実に製造ラインから除去することができる。
【0018】
本発明に係る食品容器の電子線殺菌検査システム(1)において、
物性検出部(40)は、食品容器(10)の姿を反射するミラー(70)
を備え、
カメラ(44)は、ミラー(70)によって反射された食品容器(10)を撮影する。
上述のように、ミラーを用いることで、カメラを任意の位置に備えることが出来る。電子線照射装置の近傍においては、X線量が多量に発生し、カメラの故障の原因となりやすい。よって、カメラを電子線照射装置から離れたX線量の発生が少ない位置に備えることにより、カメラの故障の発生を防止することができる。
【0019】
本発明に係る食品容器の電子線殺菌検査システム(1)は、
更に、
カメラ(44)によって撮影された食品容器(10)の画像に基いて、電子線の照射によって食品容器(10)が発した発光量を計算する発光画像解析部(52)を備える。
【0020】
本発明に係る食品容器の電子線殺菌検査システム(1)は、
更に、
カメラ(44)によって撮影された食品容器(10)の画像に基いて、電子線照射後の食品容器(10)の色を解析する照射後画像解析部(53)
を備える。
【0021】
本発明に係る食品容器の電子線殺菌検査システム(1)において、
食品容器(10)は、樹脂製の容器である。
【0022】
本発明に係る食品容器の電子線殺菌検査システム(1)において、
食品容器(10)は、PETボトルである。
【0023】
本発明に係る食品容器の電子線殺菌検査方法は、
電子線照射装置(30)が、食品容器搬送装置(20)によって搬送される食品容器に電子線を照射するステップ(ステップS10)と、
物性検出部(40)が、電子線照射装置(30)により食品容器(10)に電子線が照射されて変化した少なくとも一つの物性値を検出する物性検出ステップ(ステップS20)と、
物性検出ステップ(S20)において検出されたその物性値、又はその物性値の電子線照射前後における変化量が予め設定された範囲内に収まっているか否かを判断する物性判断ステップ(ステップS30)と、
を備える。
【0024】
本発明に係る食品容器の電子線殺菌検査方法は、
更に、
不良品除去装置(60)が、物性判断部(50)により所定の範囲内に物性値が収まっていないと判断された食品容器(10)を除去するステップ(ステップS40)、
を備える。
【0025】
本発明に係る食品容器の電子線殺菌検査方法において、
物性検出ステップ(ステップS20)は、物性検出部(40)が電子線を照射された後の食品容器(10)の温度を測定するステップ(ステップS22)を備える。
【0026】
本発明に係る食品容器の電子線殺菌検査方法において、
物性検出ステップ(ステップS20)は、物性検出部(40)が電子線を照射された後の食品容器(10)のオゾンガス濃度を測定するステップ(ステップS23)を備える。
【0027】
本発明に係る食品容器の電子線殺菌検査方法において、
物性検出ステップ(ステップS20)は、物性検出部(40)が電子線を照射された後の食品容器(10)の帯電量を測定するステップ(ステップS24)を備える。
【0028】
本発明に係る食品容器の電子線殺菌検査方法において、
物性検出ステップ(ステップS20)は、カメラ(44)が食品容器(10)の姿を撮影する撮影ステップ(ステップS21)を備える。
【0029】
本発明に係る食品容器の電子線殺菌検査方法において、
撮影ステップ(ステップS21)で、カメラ(44)は、ミラー(70)に映った食品容器(10)の映像を撮影する。
【0030】
本発明に係る食品容器の電子線殺菌検査方法において、
物性判断ステップ(ステップS30)は、
カメラ(44)が、食品容器(10)が電子線の照射により発した光の発光量を測定するステップ(ステップS31)
を備える。
【0031】
本発明に係る食品容器の電子線殺菌検査方法において、
物性判断ステップ(ステップS30)は、カメラ(44A、44B)が撮影した食品容器(10)の映像に基いて、電子線照射後の食品容器(10)の色を解析するステップ
(ステップS32)を備える。
【0032】
本発明に係る食品容器の電子線殺菌検査方法において、
食品容器(10)は、樹脂製の容器である。
【0033】
本発明に係る食品容器の電子線殺菌検査方法において、
食品容器(10)は、PETボトルである。
【発明の効果】
【0034】
本発明に依れば、大量生産される製造ラインにおいて、確実に電子線の照射が行われたかを検査できる食品容器の電子線殺菌検査システムが提供される。
【0035】
更に、本発明に依れば、ランニングコストが抑制された食品容器の電子線殺菌検査システムが提供される。
【0036】
更に、本発明に依れば、適正に電子線の照射が行われなかった食品容器を確実に製造ラインから除去できる食品容器の電子線殺菌検査システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】PETボトル飲料充填システムの構成を概略的に示す図である。
【図2A】電子線殺菌検査システム1の構成を概略的に示す図である。
【図2B】カメラ44が二つのカメラ(44A、44B)を備える場合の電子線殺菌検査システム1の構成を概略的に示す図である。
【図3】コンピュータの構成を示すブロック図である。
【図4】格納部59に格納された情報を概念的に示す図である。
【図5】電子線殺菌方法の全体の動作を示すフローチャートである。
【図6】物性検出ステップのフローチャートである。
【図7】物性判断ステップのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、食品容器10であるPETボトルを電子線によって殺菌し、内容物を充填してキャップするPETボトル飲料充填システムの構成を概略的に示す図である。入り口2から投入されたPETボトルは、食品容器搬送装置20によって殺菌部3へ搬送され、電子線照射装置30により殺菌される。殺菌されたPETボトルはすすぎリンサ4へ搬入され、水又は空気により洗浄される。電子線殺菌を行う本発明においては、すすぎリンサ4は不要な場合がある。すすぎリンサ4から送出されたPETボトルには、充填器5によって内容物が充填される。充填器5には制御装置7が接続されており、充填器5の動作を制御している。内容物を充填されたPETボトルは、キャッパー6においてキャップを取り付けられて密封される。PETボトル飲料充填システムには、電子線殺菌検査システム1が組み込まれており、電子線殺菌が十分であるか否かを判別できるようになっている。
【0039】
図2Aは、本実施の形態に係る電子線殺菌検査システム1の構成を概略的に示す図である。電子線殺菌検査システム1は、食品容器搬送装置20、電子線照射装置30、物性検出部40、コンピュータ51、位置モニタリング装置58、制御装置7、及び不良品除去装置60を備えている。
【0040】
食品容器搬送装置20は、食品容器10であるPETボトルを図1のX正方向へ搬送する。食品容器搬送装置20は、複数の食品容器10を連続的に搬送している。
【0041】
電子線照射装置30は、食品容器搬送装置20のY正方向側に設けられている。電子線照射装置30は、食品容器搬送装置20により搬送されてきた食品容器10に対して、電子線を単位時間当たり所定の回数、照射する。即ち、一の食品容器10は、電子線の照射を複数回、受ける。
【0042】
物性検出部40は、温度検出器41、オゾンガスセンサ42、帯電量測定器43、カメラ44、及びミラー70を備えている。
【0043】
温度検出器41は、電子線が照射された後の食品容器10の温度を検出する。温度検出器41としては、食品容器10全体の温度分布を把握することのできるサーモグラフィーを用いることが好ましい。温度検出器41は、検出した温度のデータをコンピュータ51へ通知する。
【0044】
オゾンガスセンサ42は、電子線の照射によって食品容器の中や周囲の空気中に発生し、電子線が照射された後の食品容器10の内部や周囲に残存するオゾンガスを検出する。オゾンガスセンサ42をボトル内部に挿入してボトル内部に残存するオゾンガスを検出し濃度を測定してもよいが、より好ましくは、例えば、オゾンガスセンサ42を食品容器10の開口部11の真上に配置するとよい。オゾンガスセンサ42を食品容器10の開口部11の真上に配置した場合、オゾンガスセンサ42は、食品容器10の開口部11の真上であり、且つ、開口部11から所定の距離だけ離れた位置におけるオゾンガス濃度を測定できるように配置される。オゾンガスセンサ42の測定部分を食品容器10の内部に挿入する手間を掛けることなしに、食品容器10の中や周囲から開口部11の真上に拡散したオゾンガスを検出しオゾンガスの濃度を検出することができる。測定部分を内部に挿入する手間を省くことができるので、ランニングコストが抑制される。オゾンガスセンサ42は、検出したオゾンガス濃度をコンピュータ51へ通知する。
【0045】
帯電量測定器43は、電子線が照射された後の食品容器10について、電子線の照射によって発生した帯電量を検出する機能を実現する。帯電量測定器43としては、市販のものが使用できる。帯電量測定器43の帯電量測定の原理としては、食品容器10に帯電した電荷とは反対符号の電荷を食品容器10に照射して、食品容器10の帯電が中和されるまでに照射したその反対符号の電荷の電荷量を測定する方法がある。帯電量測定器43は、検出した帯電量をコンピュータ51へ通知する。
【0046】
カメラ44は、ミラー70に映った食品容器10の映像を撮影できる位置に設けられている。電子線照射装置30は、食品容器10に対して単位時間あたりに所定の数回の電子線照射を行う。カメラ44は、食品容器10に電子線の照射が開始されてから終了されるまでの間、ミラー70に映った食品容器10の映像を撮影する。電子線照射時にはX線が発生し、カメラ44が電子線照射中の食品容器10を直接撮影した場合には故障の原因となり得る。ミラー70を介することにより、カメラ44をX線の影響に受けない位置に設置することができるので、故障を回避することができる。カメラ44は、撮影した食品容器10の映像を発光画像データとしてコンピュータ51に通知する。また、カメラ44は、電子線照射が終了した後の食品容器10の映像をも撮影する。ここで、電子線照射が終了した後の食品容器10の撮影は、必ずしもミラー70に映った映像を撮影する必要はなく、カメラ44が食品容器10を直接撮影してもよい。カメラ44は撮影した食品容器10の映像を照射後画像データとしてコンピュータ51へ通知する。
【0047】
また、図2Aに示すようにカメラ44は一のカメラで電子線照射中及び電子線照射後の食品容器10の映像を撮影してもよいが、図2Bに示すように電子線照射中の映像を撮影する発光検出用カメラ44Aと、電子線照射後の映像を撮影する色検出用カメラ44Bと、の二つのカメラを備えていてもよい。二つのカメラを備える場合、発光検出用カメラ44Aは電子線が照射されている食品容器10のミラー70に映った映像を撮影して発光画像データとしてコンピュータ51に通知する。一方、色検出用カメラ44Bは電子線照射後の食品容器10の映像を撮影して照射後画像データとしてコンピュータ51に通知する。色検出用カメラ44Bは電子線照射によるX線の影響を受けない位置に設置することができる為、必ずしもミラー70に映る食品容器10を撮影する必要はなく、直接撮影してもよい。
【0048】
図3はコンピュータ51の構成を概略的に示す図である。コンピュータ51は、演算処理装置71、ROM73、RAM72、及び格納部59を備えており、これらは互いにバスを介して接続されている。物性検出部40から通知されたデータはRAM72に一時的に保存される。ROM73には、プログラムとして物性判断部50が格納されており、演算処理装置71によりその機能を実現する。
【0049】
図4は、格納部59に格納された情報を概念的に示す図である。格納部59には、温度、オゾンガス濃度、帯電量、発光量、及び照射後の色、の夫々について所定の範囲が予め格納されている。
【0050】
図3に戻り、物性判断部50は、発光画像解析部52、照射後画像データ解析部53、温度解析部54、オゾンガス濃度解析部55、及び帯電量解析部56の少なくとも一以上の解析部と、殺菌性判断部57とを備えている。
【0051】
温度解析部54は、格納部59を参照して、温度検出器41から通知された食品容器10の温度が、所定の範囲内に収まっているか否かを判断する。温度解析部54は、判断の結果を殺菌性判断部57に通知する。
【0052】
オゾンガス濃度解析部55は、格納部59を参照して、オゾンガスセンサ42から通知された食品容器10のオゾンガス濃度が、所定の範囲に収まっているか否かを判断する。オゾンガス濃度解析部55は、判断の結果を殺菌性判断部57に通知する。
【0053】
帯電量解析部56は、格納部59を参照して、帯電量測定器43から通知された食品容器10の帯電量が、所定の範囲に収まっているか否かを判断し、結果を殺菌性判断部57に通知する機能を実現する。
【0054】
発光画像解析部52は、カメラ44(発光検出用カメラ44A)から通知された発光画像データを解析して、食品容器10が電子線の照射により発した発光量が、所定の範囲に収まっているか否かを判断する。発光画像解析部52は、判断の結果を殺菌性判断部57に通知する。発光画像データの解析方法としては、食品容器10が複数回の電子線照射に対して発した発光量の合計値によって解析する方法や、1回あたりの電子線照射に対して発した発光量の平均値によって解析する方法、が例示される。
【0055】
照射後画像データ解析部53は、カメラ44(色検出用カメラ44B)から通知された照射後画像データを解析して、電子線照射後に一定の時間を経過した食品容器10の色が所定の範囲に収まっているか否かを判断し、結果を殺菌性判断部57に通知する機能を実現する。
【0056】
殺菌性判断部57は、照射後画像データ解析部53、発光画像データ解析部52、温度解析部54、オゾンガス濃度解析部55、及び帯電量解析部56から通知された判断結果に基いて、食品容器10の殺菌性が十分であるか否かの判断をおこなう。殺菌性が十分であるか否かの判断基準は、ユーザーによって設定されて、予め格納部59に格納されている。殺菌性判断部57は、食品容器10の殺菌性が不十分であると判断すると、その判断結果を位置モニタリング装置58へ通知する。
【0057】
位置モニタリング装置58は、食品容器搬送装置20が搬送している複数の食品容器10の個々の位置を監視している。位置モニタリング装置58が殺菌性判断部57から食品容器10の殺菌性が不十分であるとの通知を取得した場合について以下に説明する。位置モニタリング装置58は、食品容器10が充填器5にて内容物を充填される位置まで搬送されると、制御装置7に対して飲料充填が不要である旨を示す飲料充填不用信号を通知する。また、食品容器10が不良品除去装置60が動作する位置まで搬送されると、制御装置7に対して、食品容器10を排除すべき旨を示す排除信号を通知する。
【0058】
制御装置7は、充填器5と不良品除去装置60の動作を制御する。制御装置7は、位置モニタリング装置58から充填不要信号を取得すると、充填器5が食品容器10には内容物を充填しないように、充填器5の動作を制御する。このように内容物を充填しないことで、内容物の材料コストを低減できる。更に、制御装置7は、位置モニタリング装置58から排除信号を取得すると、不良品除去装置60が食品容器10を製造ラインから除去するように、不良品除去装置60の動作を制御する。
【0059】
不良品除去装置60は、充填器5とキャッパー6の間の工程に設けられている。不良品除去装置60は、制御装置7からの指示に従って動作し、不良品と判断された食品容器10を製造ラインから除去する。尚、不良品除去装置60は、物性検出部40の後工程であれば、どの位置に設けられていてもよい。不良品除去装置60が、物性検出部40と充填器5との間に設けられている場合には、既述の、食品容器10に内容物が充填されないように制御装置7が充填器5を制御する、という動作が省略される。
【0060】
図5は本実施の形態に係る電子線殺菌検査システム1の動作方法を示すフローチャートである。本実施の形態に係る電子線殺菌検査システム1の動作方法は、電子線を照射するステップ(ステップS10)、電子線が照射された食品容器の物性を検出する物性検出ステップ(ステップS20)、検出した物性の判断を行う物性検出ステップ(ステップS30)、及び不良品を除去するステップ(ステップS40)を備えている。
【0061】
(ステップS10)
入り口2から投入された食品容器10は、殺菌部3に運ばれて電子線照射装置30により電子線を照射される。電子線の照射は単位時間当たり所定の回数行われる。
【0062】
(ステップS20)
図6は物性検出ステップ(ステップS20)の動作の流れを示すフローチャートである。物性検出ステップは、食品容器を撮影するステップ(ステップS21)、温度を測定するステップ(ステップS22)、オゾン濃度を測定するステップ(ステップS23)、及び帯電量を測定するステップ(ステップS24)を備えている。
【0063】
(ステップS21)
食品容器10に対して電子線が照射されている間、カメラ44(発光検出用カメラ44A)はミラー70に映った食品容器10の映像を撮影している。電子線の照射が終了すると、カメラ44(発光検出用カメラ44A)は撮影した食品容器10の映像を発光画像データとしてコンピュータ51に通知する。また、カメラ44(色検出用カメラ44B)は、電子線の照射が終了した食品容器10の映像をも撮影する。カメラ44(色検出用カメラ44B)は、電子線照射後に撮影した食品容器10の映像を照射後画像データとしてコンピュータ51に通知する。
【0064】
(ステップS22)
電子線の照射が終了すると、温度検出器41が食品容器10の温度を測定する。温度検出器41は、測定した食品容器10の温度を温度データとしてコンピュータ51に通知する。
【0065】
(ステップS23)
電子線の照射が終了すると、オゾンガスセンサ42が食品容器10の開口部11の上部におけるオゾンガスの濃度を測定する。オゾンガスセンサ42は、測定したオゾンガスの濃度を、オゾン濃度データとしてコンピュータ51に通知する。
【0066】
(ステップS24)
電子線の照射が終了した食品容器10に対して、帯電量測定器43が帯電量を測定する。帯電量測定器43は、測定した食品容器10の帯電量を帯電量データとしてコンピュータ51に通知する。
【0067】
図7は物性判断ステップ(ステップS30)の動作の流れを示すフローチャートである。物性判断ステップ(S30)は、発光画像データを解析するステップ(ステップS31)、照射後画像データを解析するステップ(ステップS32)、温度を判断するステップ(ステップS33)、オゾンガス濃度を判断するステップ(ステップS34)、帯電量を判断するステップ(ステップS35)、及び殺菌性を判断するステップ(ステップS36)を備えている。以下、各ステップの動作を詳述する。
【0068】
(ステップS31)
まず、発光画像解析部52がコンピュータ51に通知された発光画像データの解析を行う。発光画像解析部52は、食品容器10が複数回の電子線の照射にたいして発した発光量の合計を求める。発光画像解析部52は格納部59を参照して、求めた発光量の合計値が、格納部59に予め格納された所定の範囲である発光量A〜発光量Bの範囲に収まっているか否かを判断する。更に、発光画像解析部52は、判断の結果を殺菌性判断部57に通知する。
【0069】
(ステップS32)
続いて、照射後画像解析部53が、コンピュータ51に通知された照射後画像データの解析を行う。照射後画像解析部53は、格納部59を参照して、照射後データの映像から、電子線が照射された後の食品容器10の色が所定の範囲である色A〜色Bに収まっているか否かを判断する。照射後画像解析部53は、その判断結果を殺菌性判断部57に通知する。
【0070】
(ステップS33)
続いて、温度解析部54が、コンピュータ51に通知された温度データの解析を行う。温度解析部54は、格納部59を参照して、通知された温度データから食品容器10の温度が所定の範囲である温度A〜温度Bに収まっているか否かを判断する。温度解析部54は、温度の判断結果を殺菌性判断部57に通知する。
【0071】
(ステップS34)
続いて、オゾンガス濃度解析部55が、コンピュータ51に通知されたオゾンガス濃度の解析を行う。オゾンガス濃度解析部55は、格納部59を参照して、通知されたオゾン濃度データから食品容器10から発生したオゾンガスの濃度が所定の範囲である濃度A〜濃度Bに収まっているか否かを判断する。オゾンガス濃度解析部55は、オゾンガス濃度の判断結果を殺菌性判断部57に通知する。
【0072】
(ステップS35)
続いて、帯電量解析部56が、コンピュータ51に通知された帯電量の解析を行う。帯電量解析部56は、格納部59を参照して、帯電量データから、電子線の照射により発生した食品容器10の帯電量が所定の範囲である帯電量A〜帯電量Bに収まっているか否かを判断する。帯電量解析部56は、帯電量の判断結果を殺菌性判断部57に通知する。
【0073】
上述のS31から35までの各ステップの動作は同時に行われてもよいし、任意の順番に行われてもよい。また、S31からS35までの各ステップはコスト削減を目的とし、必ずしも全てのステップを実施する必要はなく、一以上のステップを用いていればよい。
【0074】
(ステップS36)
発光画像、照射後画像、温度、オゾンガス濃度、及び帯電量の判断結果を取得した殺菌性判断部57は、予め設定された基準に従って、食品容器10が正常に殺菌されたかどうかを判断する。食品容器10の殺菌が適正ではないと判断した場合には、殺菌性判断部57は、位置モニタリング58に対して食品容器10の殺菌が適正ではない旨を通知する。
【0075】
(ステップS40)
殺菌性判断部57からの通知を取得した位置モニタリング装置58は、食品容器10が充填器5にて内容物を充填される位置に搬送されてくるのを待って、制御装置7に充填不要信号を発信する。充填不要信号を取得した制御装置7は、食品容器10に対して内容物を充填しないように、充填機5の動作を制御する。また、位置モニタリング装置58は、食品容器が不良品除去装置60が不良品を除去する位置まで搬送されてくるのを待って、制御装置7に排除信号を発信する。排除信号を受信した制御装置7は、食品容器10を製造ラインから除去するように不良品除去装置60の動作を制御する。これにより、電子線殺菌方法の一連の動作が終了する。
【0076】
PETボトル等の食品容器を電子線によって殺菌する場合に、被照射体である食品容器の物性は照射によって変化する場合がある。本実施の形態においては、電子線の照射によって、食品容器の温度、色、発光、帯電量、及びオゾンガス濃度を測定することにより、電子線の照射が正しく行われたか否か把握することができる。被照射体の物性を測定することは、照射側である電子線の発射状態を測定するよりもより直接的に食品容器の状態を測定することである。よって、電子線の照射が正しく行われたか否かをより正確に判定することができる。
【0077】
また、不良品除去装置により、電子線の照射が適正に行われなかった食品容器を自動的にラインから除去することができる。食品容器が自動的にラインから除去されるので、ランニングコストが抑制される。
【0078】
更に、食品容器の色、発光をミラーを介して撮影することにより、カメラを電子線照射装置の近傍ではなく離れた位置に設置できる。よって、電子線照射装置近傍にカメラを設置したときに発生するX線によるカメラの故障を回避することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 電子線殺菌システム
2 入り口
3 殺菌部
4 すすぎリンサ
5 充填器
6 キャッパー
7 制御装置
10 食品容器
11 開口部
20 食品容器搬送装置
30 電子線照射装置
40 物性検出部
41 温度検出器
42 オゾンガスセンサ
43 帯電量測定器
44 カメラ
44A 発光検出用カメラ
44B 色検出用カメラ
50 物性判断部
51 コンピュータ
52 発光画像解析部
53 照射後画像解析部
54 温度解析部
55 オゾンガス濃度解析部
56 帯電量解析部
57 殺菌性判断部
58 位置モニタリング装置
59 格納部
60 不良品除去装置
70 ミラー
71 演算処理装置
72 RAM
73 ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品容器を搬送する食品容器搬送装置と、
前記食品容器搬送装置によって搬送される前記食品容器に電子線を照射する電子線照射装置と、
前記電子線照射装置により前記食品容器に電子線が照射されて変化した少なくとも一つの物性値を検出する物性検出部と、
前記物性検出部により検出された前記物性値が予め設定された範囲内に収まっているか否かを判断する物性判断部と、
前記物性判断部により食品容器の物性値が所定の範囲内に収まっていないと判断された前記食品容器を除去する不良品除去装置と、
を具備し、
前記物性検出部は、前記食品容器から発生したオゾンガス濃度を検出するオゾンガスセンサ、前記食品容器の帯電量を測定する帯電量測定器、及び、カメラによって撮影された前記食品容器の画像に基いて、電子線の照射によって前記食品容器が発した発光量を解析する発光画像解析部、のいずれかを備える
食品容器の電子線殺菌検査システム。
【請求項2】
請求項1に記載された食品容器の電子線殺菌検査システムであって、
前記食品容器は、樹脂製の容器である
食品容器の電子線殺菌検査システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された食品容器の電子線殺菌検査システムであって、
前記食品容器は、PETボトルである
食品容器の電子線殺菌検査システム。
【請求項4】
電子線照射装置が、食品容器搬送装置によって搬送される食品容器に電子線を照射するステップと、
物性検出部が、前記電子線照射装置により前記食品容器に電子線が照射されて変化した少なくとも一つの物性値を検出する物性検出ステップと、
前記物性検出ステップにおいて検出された前記物性値が予め設定された範囲内に収まっているか否かを判断する物性判断ステップと、
不良品除去装置が、前記物性判断ステップにより所定の範囲内に物性値が収まっていないと判断された前記食品容器を除去するステップと、
を具備し、
前記物性検出ステップは、前記物性検出部が、電子線を照射により前記食品容器が発生させたオゾン濃度を測定するステップ、前記物性検出部が、電子線を照射された後の前記食品容器の帯電量を測定するステップ、及びカメラにより撮影された前記食品容器の映像に基いて、前記食品容器が発した光の発光量を解析するステップ、のいずれかを備える
食品容器の電子線殺菌検査方法。
【請求項5】
請求項4に記載された食品容器の電子線殺菌検査方法であって、
前記食品容器は、樹脂製の容器である
食品容器の電子線殺菌検査方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載された食品容器の電子線殺菌検査方法であって、
前記食品容器は、PETボトルである
食品容器の電子線殺菌検査方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−17149(P2012−17149A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186150(P2011−186150)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【分割の表示】特願2005−319582(P2005−319582)の分割
【原出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】