説明

食品機械

【課題】 減圧作業に不都合を生じることなく熱交換器の冷却用水の使用量を削減できる食品機械の提供。
【解決手段】 処理槽2内を減圧する水封式真空ポンプ4と、処理槽2から吸引された蒸気を冷却する熱交換器5と、熱交換器5の冷却用水および水封式真空ポンプ4の封水を供給する給水手段7を備える。制御部8は、水封式真空ポンプ4の運転開始時点から所定時間が経過するまでは、熱交換器5へ冷却用水を供給し、熱交換器5を通過した前記冷却用水を水封式真空ポンプ4へ封水として供給し、前記所定時間の経過後は、熱交換器5へ冷却用水を供給し、熱交換器5を通過した前記冷却用水は水封式真空ポンプ4を経由せずに排出しおよび/または給水手段7へ戻すとともに、水封式真空ポンプ4へ封水を供給するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被処理物が収容された処理槽内を減圧する工程を実行可能に構成され、処理槽から吸引された蒸気を凝縮する熱交換器を備える食品機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空冷却装置、真空調理装置などの食品機械は、被処理物である食品を収容した処理槽を減圧することにより飽和蒸気温度を低下させ、これにより被処理物の水分を蒸発させる際の気化潜熱を利用して被処理物を冷却する工程を行う。このような食品機械においては、減圧の効率を高めるため、被処理物より発生した蒸気を熱交換器により凝縮させてから真空ポンプなどの減圧装置により減圧作業を行っている。この場合、蒸気を凝縮させるために熱交換器に供給する冷却用水を大量に要していた。
【0003】
そこで、下記特許文献1においては、真空冷却装置における熱交換器に供給する冷却用水の削減方法が提案されている。特許文献1に記載の方法は、被処理物たる食品を冷却する場合において、通常、食品を収容する処理槽の減圧開始直後は食品からほとんど蒸気が発生せず、減圧が進行し飽和蒸気温度が食品温度以下となった時点から蒸気の発生量が急激に増加する点に着目したもので、真空冷却装置の運転開始からの経過時間をタイマー装置によって計測し、所定時間(たとえば、1分間)が経過するまでは熱交換器への冷却用水の供給を一切行わず、前記所定時間経過後に冷却用水の供給を開始することで冷却用水の削減を図ろうとするものである。
【0004】
しかしながら、食品の種類、温度などの差異により、食品からの蒸気の発生量が急激に増加する時点が異なる。そのため、特許文献1の方法では、熱交換器への冷却用水の供給が全くなされない前記所定時間経過前においても大量の蒸気が発生し、減圧作業に不都合が生ずる可能性がある。
【0005】
また、処理槽内の食品を蒸気によって加熱調理する調理工程を行った直後に減圧工程に移行し冷却を行う真空調理装置の場合は、減圧工程が開始される時点においても処理槽内に多量の蒸気が存在している。そのため、食品から蒸気が多量に発生し始める前の期間においても、熱交換器により処理槽内から排出される蒸気を冷却、凝縮する必要があるが、前記所定時間経過前においては熱交換器への冷却用水の供給を全く行わない特許文献1の方法は、このような真空調理装置には適用することができない。
【特許文献1】特開2001−91120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、被処理物からの蒸気発生量の急激に増加する時点が変動した場合においても、また、処理槽内の食品を蒸気によって加熱調理する調理工程を行った直後に減圧工程に移行する場合においても、減圧作業に不都合を生じることなく熱交換器の冷却用水の使用量を削減できる食品機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、被処理物が収容される処理槽と、処理槽と減圧配管を介して接続される水封式真空ポンプと、減圧配管内の蒸気を冷却する熱交換器と、熱交換器の冷却用水および水封式真空ポンプの封水を供給する給水手段と、熱交換器への冷却用水の供給および水封式真空ポンプへの封水の供給を制御する制御部とを備えた食品機械であって、制御部は、水封式真空ポンプの運転開始時点から所定時間が経過するまでは、熱交換器へ冷却用水を供給し、熱交換器を通過した前記冷却用水を水封式真空ポンプへ封水として供給し、前記所定時間の経過後は、熱交換器へ冷却用水を供給し、熱交換器を通過した前記冷却用水は水封式真空ポンプを経由せずに排出しおよび/または給水手段へ戻すとともに、水封式真空ポンプへ封水を供給するように制御することを特徴とする食品機械である。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、被処理物からの蒸気発生量の急激に増加する時点が変動した場合においても、また、被処理物を蒸気によって加熱調理する調理工程を行った直後に減圧工程に移行する場合においても、減圧作業に不都合を生じることなく熱交換器の冷却用水の使用量を削減できる食品機械を実現することができる。さらに、前記所定時間の経過後に熱交換器へ供給される冷却用水を給水手段へ戻す場合は、冷却用水の使用量を一層削減することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記食品機械は、計時手段を備えており、前記所定時間は、計時手段により計測される水封式真空ポンプの運転開始時点からの設定経過時間とされることを特徴とする請求項1に記載の食品機械である。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、センサを設けることなく計時手段により前記所定時間の経過を確認するため、簡易な構成によりこの発明が実現できる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記食品機械は、熱交換器内の温度または熱交換器を通過した冷却用水の温度を計測する温度センサを備えており、前記所定時間は、水封式真空ポンプの運転開始時点から温度センサにより計測される温度が設定値に達するまでの時間とされることを特徴とする請求項1に記載の食品機械である。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、熱交換器内の温度または熱交換器を通過した冷却用水の温度に基づいて前記所定時間が決定されるため、熱交換器への冷却用水の供給および水封式真空ポンプへの封水の供給を的確に制御することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記食品機械は、処理槽内の圧力を計測する圧力センサを備えており、前記所定時間は、水封式真空ポンプの運転開始時点から圧力センサにより計測される圧力が設定値に達するまでの時間とされることを特徴とする請求項1に記載の食品機械である。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、処理槽内の圧力に基づいて前記所定時間が決定されるため、熱交換器への冷却用水の供給および水封式真空ポンプへの封水の供給を的確に制御することができる。
【0015】
さらに、請求項5に記載の発明は、前記所定時間が経過するまでに熱交換器へ供給される冷却用水の流量と、前記所定時間経過後に水封式真空ポンプへ供給される封水の流量とが同等量とされることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の食品機械である。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、前記所定時間が経過する前後において水封式真空ポンプに供給される封水の量が変動しないため、安定した減圧作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、被処理物からの蒸気発生量の急激に増加する時点が変動した場合においても、また、被処理物を蒸気によって加熱調理する調理工程を行った直後に減圧工程に移行する場合においても、減圧作業に不都合を生じることなく熱交換器の冷却用水の使用量を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。この発明は、真空冷却装置、真空調理装置などの食品機械に関する。もっとも、この発明は、被処理物が収容された処理槽内を減圧する工程を実行可能に構成され、処理槽から吸引された蒸気、および/または蒸気エゼクタからの蒸気を冷却、凝縮する熱交換器を備える食品機械であれば、その種類を問わず適用できる。また、真空冷却装置における被処理物としては、典型的には汁物、揚物、米飯などの加熱調理された食品が挙げられるが、特にその種類は限定されない。
【0019】
本実施形態の食品機械は、被処理物が収容される処理槽と、処理槽と減圧配管を介して接続される水封式真空ポンプと、減圧配管内の蒸気を冷却する熱交換器と、熱交換器の冷却用水および水封式真空ポンプの封水を供給する給水手段と、熱交換器への冷却用水の供給および水封式真空ポンプへの封水の供給を制御する制御部とを備える真空冷却装置である。
【0020】
前記処理槽は、被処理物を収容して密閉可能な中空容器であり、形状および被処理物を出し入れするための開口位置は特に限定されない。本実施形態の処理槽は、扉により開閉可能な中空ボックス状である。
【0021】
前記水封式真空ポンプは、処理槽内の空気を外部へ吸引排気することで、処理槽内を減圧する。処理槽内を減圧する手段としては、水封式真空ポンプのみで構成してもよいし、さらに複数もしくは複数種の減圧装置を組み合わせて構成してもよい。好ましくは、処理槽内を減圧する手段を、処理槽と減圧配管を介して接続される蒸気エゼクタと、蒸気エゼクタの出口側に接続される水封式真空ポンプとで構成することができる。
【0022】
前記熱交換器は、処理槽から吸引された蒸気、および/または蒸気エゼクタからの蒸気を冷却し凝縮させる。前記熱交換器はコイルなどの熱交換手段を備え、給水配管に接続されて冷却用水が供給される。処理槽内を減圧する手段が、処理槽と減圧配管を介して接続される蒸気エゼクタと、減圧配管を介して蒸気エゼクタの出口側に接続される水封式真空ポンプとで構成されている場合、熱交換器は蒸気エゼクタと水封式真空ポンプとの間に設けるのが好ましい。
【0023】
前記給水手段は、冷却用水および封水として供給される水を貯める給水タンク、給水タンクから送られる水を冷却するチラー、および給水タンクからチラーへ水を送り出す循環ポンプで構成される。もっとも、前記給水手段として、チラーを省略し地下水や水道水などの常温水を使用することもできる。また、給水手段を、常温水とチラーにより製造される冷水とを切り替えて供給するように構成してもよい。
【0024】
前記制御部は、水封式真空ポンプの運転開始時点から所定時間が経過するまでは、熱交換器へ冷却用水を供給し、熱交換器を通過した前記冷却用水を水封式真空ポンプへ封水として供給し、前記所定時間の経過後は、熱交換器へ冷却用水を供給し、熱交換器を通過した前記冷却用水は水封式真空ポンプを経由せずに排出するとともに、水封式真空ポンプへ封水を供給するように制御する。ここで、給水手段としてチラーを備える場合、前記制御部は、前記所定時間の経過後、熱交換器へ冷却用水を供給し、熱交換器を通過した前記冷却用水は水封式真空ポンプを経由せずに排出しおよび/または給水手段へ戻すとともに、水封式真空ポンプへ封水を供給するように制御する。また、前記所定時間が経過するまでに熱交換器へ供給される冷却用水の流量と、前記所定時間経過後に水封式真空ポンプへ供給される封水の流量とを同等量とするのが好ましい。さらに、前記所定時間としては、計時手段により計測される時間とするのみならず、各種センサにより計測された値が設定値に達するまでの時間とすることも含む。
【0025】
好ましくは、本実施形態の真空冷却装置は計時手段を備えることができる。この場合、制御部は、計時手段により計測される水封式真空ポンプの運転開始時点からの経過時間に基づき、熱交換器への冷却用水の供給および水封式真空ポンプへの封水の供給を前記のように制御する。
【0026】
また、前記計時手段に代えて、本実施形態の真空冷却装置は、熱交換器内の温度または熱交換器を通過した冷却用水の温度を計測する温度センサを備えることができる。この場合、制御部は、温度センサが計測した前記温度に基づき、熱交換器への冷却用水の供給および水封式真空ポンプへの封水の供給を前記のように制御する。
【0027】
さらに、前記計時手段もしくは前記温度センサに代えて、本実施形態の真空冷却装置は、処理槽内の圧力を計測する圧力センサを備えることができる。この場合、制御部は、前記圧力センサが計測した前記圧力に基づき、熱交換器への冷却用水の供給および水封式真空ポンプへの封水の供給を前記のように制御する。
【0028】
もっとも、前記所定時間を計測する手段としては、前記計時手段、前記温度センサ、および前記圧力センサに限定されない。たとえば、処理槽内に収容される被処理物の温度や、蒸気が熱交換器により凝縮されてなる凝縮水の温度を計測する温度センサを使用することもできる。
【実施例】
【0029】
以下、この発明を真空冷却装置に適用した具体的実施例を図面に基づいて説明する。図1はこの実施例の真空冷却装置1の概略構成図、図2は前期工程における冷却用水および封水の流路を示す概略図、図3は後期工程における冷却用水および封水の流路を示す概略図である。
【0030】
この実施例の真空冷却装置1は、図1に示すように、被処理物たる食品が収容される処理槽2、処理槽2内を減圧する蒸気エゼクタ3および水封式真空ポンプ4、蒸気を冷却する熱交換器5、外気を導入して減圧された処理槽2内を復圧する復圧手段6、熱交換器5の冷却用水および水封式真空ポンプ4の封水を供給する給水手段7、各部の動作を制御する制御部8とを備えている。
【0031】
処理槽2は、密閉する扉(不図示)により開閉可能な中空ボックス状であり、内部に食品が収容される。処理槽2には、処理槽2内の空気を外部に真空引きして処理槽内を減圧する蒸気エゼクタ3および水封式真空ポンプ4が、減圧配管9を介して接続されている。また、処理槽2には、除菌フィルター10を介して外気と連通可能とされた外気導入配管11と、外気導入配管11の中途に設けられた復圧制御弁12とを備え、処理槽2内を大気圧まで復圧する復圧手段6が接続されている。
【0032】
処理槽2内を減圧する手段としての蒸気エゼクタ3においては、蒸気入口13は給蒸配管14を介してボイラ(不図示)と接続され、吸入口15は減圧配管9を介して処理槽2と接続され、出口16は減圧配管9を介して熱交換器5および水封式真空ポンプ4と接続されている。そして、前記給蒸配管14の中途には、給蒸制御弁17が設けられている。この給蒸制御弁17は、電磁弁のような開閉を切り替えるだけのものでもよいが、比例制御弁またはモータバルブなどのように開度調整が可能なものを用いることができる。給蒸制御弁17が開度調整可能な場合には、蒸気エゼクタ3の蒸気入口13への蒸気供給の有無だけでなく、その蒸気供給量を変更して減圧能力を調整することができる。
【0033】
この実施例の真空冷却装置1の減圧工程においては、まず水封式真空ポンプ4を作動させて処理槽2内の減圧を開始する。そして、そのまま処理槽2内を減圧してゆき、食品から発生する蒸気の温度が低下し、この蒸気を熱交換器5で凝縮できなくなる少し手前の時点において、制御部8は、給蒸制御弁17を開き、給蒸配管14を介して蒸気エゼクタ3へ蒸気の供給を開始し、蒸気エゼクタ3を作動させる。
【0034】
蒸気エゼクタ3と水封式真空ポンプ4との間の減圧配管9には、熱交換器5と逆止弁18が設けられている。前記熱交換器5は、内部に熱交換手段としてコイル19を備える。このコイル19へは給水手段7から冷却用水が供給され、コイル19の内部を冷却用水が通過することにより、減圧配管9を介して熱交換器5に流入した蒸気が冷却、凝縮される。
【0035】
熱交換器5を蒸気エゼクタ3と水封式真空ポンプ4との間に設けることにより、水封式真空ポンプ4を作動させつつ蒸気エゼクタ3の蒸気入口13から出口16へ向けて蒸気を噴射させ、食品から発生した蒸気と蒸気エゼクタ3に供給された蒸気とが混合してなる混合流体が熱交換器5により冷却、凝縮される。このように、蒸気エゼクタ3と水封式真空ポンプ4とにより、処理槽2内の空気を外部へ吸入排出するため、処理槽2内を効果的に減圧することができる。
【0036】
給水手段7として、常温水供給手段20と冷水供給手段21を備える。この常温水供給手段20は、水道に接続された常温水供給配管22を備える。冷水供給手段21は、冷却用水および封水として供給される水を貯める給水タンク23、給水タンク23から送られる水を冷却するチラー24、および給水タンク23からチラー24へ水を送り出す循環ポンプ25を備える。給水タンク23とチラー24とは、第一循環配管26で接続されており、第一循環配管26の中途に循環ポンプ25が設けられている。
【0037】
チラー24には、水を送り出すための第一給水配管27が接続されており、第一給水配管27の他端はチラー24から供給される水の流路を切り替える三方弁で構成される第一給水制御弁28に接続されている。この第一給水制御弁28には、第一給水配管27のほかに熱交換器5の熱交入口29へ繋がる第二給水配管30と給水タンク23へ繋がる第二循環配管31が接続されている。この第一給水制御弁28により水の流路が第二循環配管31へ切り替えられた場合、チラー24から送り出される水は循環ポンプ25により、第一給水配管27、第二循環配管31、給水タンク23、第一循環配管26を介してチラー24へと循環され、給水タンク23内の水を所望の温度まで下げることができる。
【0038】
ここで、給水手段7から送り出される水の流路について説明する。第一給水制御弁28を介して冷水供給手段21と熱交入口29とを結ぶ第二給水配管30には、常温水供給配管22と接続された、三方弁で構成される第二給水制御弁32が設けられている。また、第二給水配管30には、第二給水制御弁32の下流側において第一封水配管33が接続されている。そして、この第一封水配管33の他端は、水封式真空ポンプ4に接続されている。この第一封水配管33には、開閉二動作で制御される電磁弁で構成される第一封水制御弁34と、第一封水配管33を流れる水量を制限し、水封式真空ポンプ4へ供給される封水の量を一定にする定流量弁35が設けられている。
【0039】
熱交換器5を通過した冷却用水が排出される熱交出口36には、第一冷却用水配管37が接続されている。第一冷却用水配管37の中途には、第一冷却用水制御弁38が設けられている。そして、第一冷却用水配管37の下流側は、第二冷却用水配管39と冷却用水排水配管40とに分岐している。第二冷却用水配管39は、給水タンク23に接続されており、その中途には第二冷却用水制御弁41が設けられている。また、冷却用水排水配管40は、排水口(不図示)へ接続されており、その中途には冷却用水排水制御弁42が設けられている。第一冷却用水制御弁38、第二冷却用水制御弁41、および冷却用水排水制御弁42は、いずれも開閉二動作で制御される電磁弁で構成されている。ここで、第二冷却用水制御弁41と冷却用水排水制御弁42とは、第二冷却用水配管39と冷却用水排水配管40との分岐点43に設けられる一の三方弁で代替することもできる。
【0040】
また、第一冷却用水配管37には、中途に設けられた第一冷却用水制御弁38の上流側において第二封水配管44が接続されている。この第二封水配管44の他端は、第一封水制御弁34の下流側において第一封水配管33と接続されており、その中途には開閉二動作で制御される電磁弁で構成された第二封水制御弁45が設けられている。
【0041】
前記制御部8は各部の動作を制御するもので、特に各弁装置の動作を制御し、熱交換器5への冷却用水の供給および水封式真空ポンプ4への封水の供給を制御する。また、制御部8は計時手段46を備えており、この計時手段46により水封式真空ポンプ4の運転開始時点からの経過時間が計測される。そして、制御部8は、計時手段46により計測された時間が設定経過時間に達したら各弁装置を切り替える制御を行う。ここで、前記設定経過時間とは、水封式真空ポンプ4の運転開始時点から、処理槽2内が減圧され飽和蒸気温度が食品温度以下となり食品からの水分の蒸発が急激に増加するまでの時間に相当する時間であって、予め制御部8に設定され、記憶された時間をいう。
【0042】
次に、図2および図3を参照し、この実施例の真空冷却装置1の運転と対応させて、給水手段7から供給される水の流路について説明する。図2および図3においては、各配管のうち水の流れる箇所を実線で示し、弁装置が閉じられるために水の流れない箇所を破線で示している。
【0043】
この実施例の真空冷却装置1により食品を冷却する場合、まず、食品を処理槽2内に収納し、扉を閉めて密閉してから、制御部8は水封式真空ポンプ4を作動させて処理槽2内の減圧を開始する。
【0044】
この水封式真空ポンプ4の作動で開始される減圧工程は、処理槽2内が減圧されて飽和蒸気温度が食品温度以下となり食品からの水分の蒸発が急激に増加するまでの前期工程と、前期工程終了後の後期工程とに分けられる。この実施例の真空冷却装置1における前期工程では主として処理槽2内の空気が吸引されるため、食品からの蒸気の発生はほとんどない。この前期工程においては、制御部8は第二給水制御弁32により常温水供給配管からの常温水が熱交換器へ供給されるように制御する。そして、制御部8により第一封水制御弁34および第一冷却用水制御弁38が閉じられ、第二封水制御弁45が開かれる。そのため、前期工程においては、図2に示すとおり、給水手段7から供給された水は熱交換器5を通過して熱交出口36から第一冷却用水配管37に入り、第二封水配管44へと流れ、第二封水配管44の下流側に接続された第一封水配管33を介して水封式真空ポンプ4へと供給される。すなわち、前期工程においては、熱交換器5で使用した冷却用水が水封式真空ポンプ4の封水として使用されることになる。このとき、給水手段7より供給される水の量は、水封式真空ポンプ4の動作に必要な封水の量(たとえば、毎分5リットル)とされる。そして、水封式真空ポンプ4で使用された封水は、封水排水配管47を介して排水口(不図示)へ排出される。
【0045】
前期工程が終了すると、減圧工程は後期工程へ移行する。後期工程への移行は、制御部8により行われる。計時手段46により計測された水封式真空ポンプ4の動作開始時点からの経過時間が設定経過時間に達したら、制御部8により第一封水制御弁34と第一冷却用水制御弁38が開かれ、第二封水制御弁45が閉じられるとともに、給水手段7からの水の供給量が増加される(たとえば、毎分20リットル)。後期工程においては、このような弁装置の制御により、図3に示すとおり、熱交換器5の冷却用水は第二給水配管30を介して供給され、水封式真空ポンプ4の封水は第二給水配管30から分岐する第一封水配管33を介して供給される。このとき、給水手段7から供給される水の総量は前期工程の場合と比べて増加するが、第一封水配管33には通過する水の量を一定量(たとえば、毎分5リットル)に制限する定流量弁35が設けられているため、水封式真空ポンプ4へ供給される封水の量は前期工程における供給量から変化しない。つまり、水封式真空ポンプ4へは、常に水封式真空ポンプ4の動作に必要な封水の量(たとえば、毎分5リットル)のみが供給され、その残余の水(たとえば、毎分15リットル)が冷却用水として熱交換器5へ供給されることになる。
【0046】
後期工程において、熱交出口36付近に設けられた温度センサ(不図示)により検出された冷却用水の温度が所定温度以下となるまでは、制御部8により第二冷却用水制御弁41が閉じられるとともに、冷却用水排水制御弁42が開かれ、熱交換器5を通過した冷却用水は、第一冷却用水配管37および冷却用水排水配管40を流れて排水口(不図示)へ排出される。その後、処理槽2内の減圧が進み、前記熱交出口36付近に設けられた温度センサ(不図示)により検出された冷却用水の温度が所定温度以下となると、熱交換器5および水封式真空ポンプ4へ供給される水は、制御部8による第二給水制御弁32の切り替えによって、常温水から冷水供給手段21により製造された冷水へと変更される。あわせて、制御部8により第二冷却用水制御弁41が開かれるとともに、冷却用水排水制御弁42が閉じられ、熱交換器5を通過した冷却用水は、第一冷却用水配管37および第二冷却用水配管39を流れて給水タンク23へと戻されて再使用される。
【0047】
そして、食品の温度が目標値まで低下すると、制御部8により復圧制御弁12が開かれ、除菌フィルター10を通過した外気が外気導入配管11を介して処理槽2内に導入され、処理槽2内が復圧される。あわせて、制御部8により給水手段7による水の供給が停止されて、減圧工程が終了する。
【0048】
以上、この発明の一実施例について説明したが、この発明は前記実施例の構成に限定されるものではなく、適宜変更可能である。たとえば、前記実施例における冷却用水および封水の流路を構成する各配管は前記実施例の構成に限定されるものではなく、適宜変更することができる。また、前記実施例では、給水手段7として冷水供給手段21を設けているが、省略することも可能である。さらに、前記実施例では蒸気エゼクタ3を使用しているが、省略することも可能である。さらにまた、前記実施例では、前期工程から後期工程への移行開始を決定する手段として計時手段46を使用しているが、この計時手段46に代えて、温度センサや圧力センサなどのセンサを使用し、センサにより計測された各種測定値に基づいて前期工程から後期工程への移行開始を決定するように構成してもよい。
【0049】
また、前記実施例ではこの発明を真空冷却装置に適用した場合について説明したが、この発明は真空冷却装置のほか、真空調理装置など被処理物が収容された処理槽内を減圧する工程を実行可能に構成され、処理槽から吸引された蒸気、および/または蒸気エゼクタからの蒸気を冷却、凝縮する熱交換器を備える食品機械であれば、その種類を問わず適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】この発明の実施例における真空冷却装置の概略構成図である。
【図2】前期工程における冷却用水および封水の流路を示す概略図である。
【図3】後期工程における冷却用水および封水の流路を示す概略図である。
【符号の説明】
【0051】
1 真空冷却装置
2 処理槽
4 水封式真空ポンプ
5 熱交換器
7 給水手段
8 制御部
46 計時手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物が収容される処理槽と、
処理槽と減圧配管を介して接続される水封式真空ポンプと、
減圧配管内の蒸気を冷却する熱交換器と、
熱交換器の冷却用水および水封式真空ポンプの封水を供給する給水手段と、
熱交換器への冷却用水の供給および水封式真空ポンプへの封水の供給を制御する制御部と
を備えた食品機械であって、
制御部は、
水封式真空ポンプの運転開始時点から所定時間が経過するまでは、熱交換器へ冷却用水を供給し、熱交換器を通過した前記冷却用水を水封式真空ポンプへ封水として供給し、
前記所定時間の経過後は、熱交換器へ冷却用水を供給し、熱交換器を通過した前記冷却用水は水封式真空ポンプを経由せずに排出しおよび/または給水手段へ戻すとともに、水封式真空ポンプへ封水を供給するように制御すること
を特徴とする食品機械。
【請求項2】
前記食品機械は、計時手段を備えており、
前記所定時間は、計時手段により計測される水封式真空ポンプの運転開始時点からの設定経過時間とされること
を特徴とする請求項1に記載の食品機械。
【請求項3】
前記食品機械は、熱交換器内の温度または熱交換器を通過した冷却用水の温度を計測する温度センサを備えており、
前記所定時間は、水封式真空ポンプの運転開始時点から温度センサにより計測される温度が設定値に達するまでの時間とされること
を特徴とする請求項1に記載の食品機械。
【請求項4】
前記食品機械は、処理槽内の圧力を計測する圧力センサを備えており、
前記所定時間は、水封式真空ポンプの運転開始時点から圧力センサにより計測される圧力が設定値に達するまでの時間とされること
を特徴とする請求項1に記載の食品機械。
【請求項5】
前記所定時間が経過するまでに熱交換器へ供給される冷却用水の流量と、前記所定時間経過後に水封式真空ポンプへ供給される封水の流量とが同等量とされること
を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の食品機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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