説明

食品用しみ込み抑制剤、粘性食品および浸透性食品

【課題】離水による食品へのしみ込み防止効果が高く、加熱工程が不要で、食感がよく、照り艶を与えることができる食品用しみ込み抑制剤、粘性食品および浸透性食品を提供する。
【解決手段】ラムダカラギーナンとキサンタンガムとグァーガムとタマリンドシードガムとを、100:17:10:10の配合比で含む。ラムダカラギーナンとキサンタンガムとグァーガムとタマリンドシードガムとが、ぶどう糖とマルトデキストリンとデキストリンとを3:5:5の比率で配合した分散剤に分散されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用しみ込み抑制剤、粘性食品および浸透性食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品の購入形態が多様化し、また流通が高度に発達することによって、加工度の高い食品が提供されるようになった。できあいの食品を購入した場合、食品が製造されてから実際食べられるまでに、相当の時間が経過している。時間の経過と共に、タレ・ソースもしくは具材などから離水が生じ、それによるパンや米飯、麺類のふやけ、惣菜類の照り艶の消失等が発生し、外観上好ましくない状態となる。また、外観の変化に加えてテクスチャー(食感)の変化も加わり、食品において最も重要なおいしさが失われ、商品価値を著しく損なうこととなる。
【0003】
このような問題を解決するため、従来、食品への水分のしみ込みを防止する技術として、水分調節剤としてトレハロースを用いて離水防止効果をもたらす方法(特許文献1参照)や、魚類由来のゼラチンを用いる方法(特許文献2参照)、膨潤したサツマイモファイバーとLMペクチン等のゲル化剤を組み合わせた水溶性ソース(特許文献3参照)、こんにゃく粉、水飴、およびでん粉を合わせて調整した乾燥こんにゃく加工品を用いて離水防止効果をもたらす方法(特許文献4参照)等がある。
【0004】
【特許文献1】特開平9−56342号公報
【特許文献2】特開平11−164655号公報
【特許文献3】特開平11−266788号公報
【特許文献4】特開2004−215646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1乃至4に記載の方法では、離水による食品へのしみ込み防止が不十分であり、食味が悪くなるという課題があった。また、ゼラチンやゲル化剤は、加熱溶解の工程が必要であるため、非加熱の食品には使えないという課題もあった。その点、トレハロースは、加熱溶解は不要だが、添加量が多くないと離水防止の効果がなく、効果を発揮する添加量になると、食品の味に影響を与えてしまうという課題もあった。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、離水による食品へのしみ込み防止効果が高く、加熱工程が不要で、食感がよい、食品用しみ込み抑制剤、その抑制剤を用いた粘性食品および浸透性食品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る食品用しみ込み抑制剤は、ラムダカラギーナンを含むことを、特徴とする。
【0008】
カラギーナンは、室温でゲルを形成する性質を有し、食品その他の工業でゲル化剤、増粘剤、安定剤などとして使用されている。カラギーナンには、硬く強いゲルを作るカッパ、軟らかいゲルを作るイオタ、水ではゲル化しないが、タンパク質と混ぜたとき軟らかいゲルを作るラムダの、3つのタイプがある。特に、ラムダカラギーナンは、他のカラギーナンとは異なり、冷水に溶解して粘ちょうな溶液となり、カッパやイオタよりも離水防止効果が高い。ラムダカラギーナンは、冷水可溶のキサンタンガムやグァーガムよりも溶解が早く、粘度の立ち上がりが早いという特徴がある。また、食感に糊のような粘りがなくのどごしがよい。
【0009】
本発明に係る食品用しみ込み抑制剤は、タレやソース、具材などの粘性食品に添加して使用される。本発明に係る食品用しみ込み抑制剤は、ラムダカラギーナンを含んでいるため、離水防止効果が高く、離水による食品へのしみ込み防止効果が高い。また、ラムダカラギーナンが冷水に溶けるため、添加するときに加熱工程が不要で、作業時間を短縮することができる。ラムダカラギーナンにより、食感を滑らかにすることもできる。
【0010】
本発明に係る食品用しみ込み抑制剤は、キサンタンガムを含むことが好ましい。この場合、キサンタンガムにより、さらに粘度を高めることができる。また、長時間安定に粘度を保つことができるため、食品へのしみ込み防止効果をより高めることができる。キサンタンガムにより、添加される粘性食品に照り艶を与えることもできる。また、キサンタンガムも冷水に溶けるため、添加時の加熱工程が不要である。
【0011】
本発明に係る食品用しみ込み抑制剤は、さらに、グァーガムとタマリンドシードガムとを含むことが好ましい。この場合、グァーガムの高い保水効果により、さらに染み込み防止効果を高めることができる。グァーガムも冷水に溶けるため、添加時の加熱工程が不要である。また、タマリンドシードガムは、粘度や食感を変えることなく離水を防止することができるため、食品へのしみ込み防止効果をより高めることができる。タマリンドシードガムにより、添加される粘性食品に照り艶を与え、食感を滑らかにすることもできる。
【0012】
本発明に係る食品用しみ込み抑制剤は、さらに、分散剤を含み、前記ラムダカラギーナンと前記キサンタンガムと前記グァーガムとが前記分散剤に分散されていてもよい。あるいは、本発明に係る食品用しみ込み抑制剤は、さらに、分散剤を含み、前記ラムダカラギーナンと前記キサンタンガムと前記タマリンドシードガムとが前記分散剤に分散されていてもよい。特に、分散剤を含み、前記ラムダカラギーナンと前記キサンタンガムと前記グァーガムと前記タマリンドシードガムとが前記分散剤に分散されていることが好ましい。分散剤に分散させた場合、添加される粘性食品への分散を容易にすることができる。分散剤は、ブドウ糖やマルトデキストリン、デキストリンなどの糖類や、アルコールから成ることが好ましい。
【0013】
本発明に係る粘性食品は、前述の食品用しみ込み抑制剤を含み、粘度が30cps乃至700cpsであることを特徴とする。粘度が30cps未満の場合、しみ込み抑制効果が低く、粘度が700cpsを超える場合、食感に影響を与え、さらに800cpsを超えると食感が著しく劣り、好ましくない。特に、本発明に係る粘性食品は、前述の食品用しみ込み抑制剤を含み、粘度が52cps乃至571cpsであることが好ましく、129乃至571cpsであることがより好ましい。この場合、特に、しみ込み防止効果と食感とのバランスが良いためである。
【0014】
ラムダカラギーナン、キサンタンガム、グァーガム、タマリンドシードガムの添加量は、添加される食品の性質にもよるが、添加される食品に対し0.3重量%乃至0.8重量%の範囲が好ましい。ラムダカラギーナンに対するキサンタンガム、グァーガム、タマリンドシードガムの添加割合は、キサンタンガムが10重量%乃至25重量%、グァーガムが5重量%乃至20重量%、タマリンドシードガムが5重量%乃至50重量%の範囲が好ましい。また、ラムダカラギーナンの配合量は、4成分全体の50重量%以上であることが好ましい。この場合、特に、離水による食品へのしみ込み防止効果が高く、加熱工程が不要で、食感がよく、照り艶を与えることができる。ラムダカラギーナンの配合量が50重量%より少ないと、他成分の影響が強くなり、しみ込み防止効果が落ちたり、食感に影響を及ぼしたりする。
【0015】
本発明に係る浸透性食品は、前述の粘性食品を液体浸透性食品に付着させて成ることを、特徴とする。液体浸透性食品としては、ご飯やパンなどのデンプン質食品が代表的に挙げられる。浸透性食品としては、おにぎりや、調理パン、弁当、肉まんなどが代表的に挙げられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、離水による食品へのしみ込み防止効果が高く、加熱工程が不要で、食感がよく、照り艶を与えることができる食品用しみ込み抑制剤、粘性食品および浸透性食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
食品用しみ込み抑制剤について、増粘多糖類の種類、増粘多糖類の組み合わせ、増粘多糖類の配合比率を検討するために、以下の試験を行った。
【0018】
[増粘多糖類の種類の検討]
しみ込み防止に最適な増粘多糖類を選択するため、その種類を変えて、塩辛の米飯へのしみ込みを調べた。増粘多糖類として、ラムダカラギーナン、キサンタンガム、グァーガム、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、精製サイリウムシードガム、精製タラガム、プルラン、カードランを使用した。それぞれの増粘多糖類0.5重量%を塩辛に添加混合し、濾紙上に一定量置いて、水分の広がりと塩辛の重量減少率とを測定した。また、そのときの、テクスチャーの変化も調べた。
【0019】
試験の結果、キサンタンガム、タマリンドシードガム、グァーガムの順で、水分の広がりを抑えていることが確認された。重量減少率は、ラムダカラギーナンが低いことが確認された。ラムダカラギーナンおよびグァーガムは、澱粉様のもったりとした重い食感になるのに対し、タマリンドシードガムは、それほど糊料感はなく、口当たりは良好だった。キサンタンガムは、0.5重量%の添加量では、粘度が強すぎ、糸引き感のある粘着性を有する食感になっている。以下の試験でわかるように、粘度を一定にしたとき、ラムダカラギーナン、キサンタンガム、グァーガム、タマリンドシードガムのうち、キサンタンガムが最も小量となる。このため、粘度を高めるには、キサンタンガムの使用が効果的である。
【0020】
[増粘多糖類のしみ込み防止効果の検討]
増粘多糖類のしみ込み防止効果を検討するため、ラムダカラギーナン、キサンタンガム、グァーガム、タマリンドシードガムの濾紙上でのしみ込み比較試験を行った。以下の試験区に示す配合比率で、8000rpmで5分間撹拌して溶液を調整した。なお、各試験区の溶液の配合比率は、粘度が約150cpsになるように調整している。各試験区の溶液を、6Cの濾紙上に立てた直径8mmの円筒中に、0.2ミリリットル滴下し、10分後のしみ出しを測定した。
【0021】
試験区1:ラムダカラギーナン0.5重量%、 食塩2重量%、砂糖8重量%、
水89.5重量%
試験区2:キサンタンガム0.15重量%、 食塩2重量%、砂糖8重量%、
水89.85重量%
試験区3:グァーガム0.35%、 食塩2重量%、砂糖8重量%、
水89.65重量%
試験区4:タマリンドシードガム0.8重量%、食塩2重量%、砂糖8重量%、
水89.2重量%
試験区5:デキストリン0.4重量%、 食塩2重量%、砂糖8重量%、
水89.6重量%
【0022】
測定の結果、表1に示すように、各増粘安定剤を添加した溶液(試験区1乃至4)では、しみ出しを抑制する効果が認められた。特に、ラムダカラギーナン(試験区1)、タマリンドシードガム(試験区4)、グァーガム(試験区3)は、しみ出し抑制効果が高いことが確認された。
【0023】
【表1】

【0024】
[増粘多糖類の組み合わせの検討]
しみ込み防止に最適な増粘多糖類の組み合わせを検討するため、ラムダカラギーナン、キサンタンガム、グァーガム、タマリンドシードガムの組み合わせを変えて、濾紙上でのしみ込み比較試験を行った。各増粘多糖類の配合比率を表2に示す。なお、各試験区では、増粘多糖類の総量を0.4重量%とし、食塩2重量%、砂糖8重量%、水89.6重量%の配合比率で、8000rpmで5分間撹拌して溶液を調整した。各試験区の溶液を、6Cの濾紙上に立てた直径8mmの円筒中に、0.2ミリリットル滴下し、10分後のしみ出しを測定した。
【0025】
【表2】

【0026】
測定の結果、表3に示すように、増粘多糖類の種類を増やしていくと、しみ出し抑制効果が明らかに向上することが確認された。
【0027】
【表3】

【0028】
[増粘多糖類の配合比率の検討]
しみ込み防止に最適な増粘多糖類の配合比率を検討するため、ラムダカラギーナンを100に固定し、その他の成分の割合を変えて、濾紙上でのしみ込み比較試験を行った。各増粘多糖類の配合比率を表4に示す。なお、各試験区では、増粘多糖類の総量を0.4重量%とし、食塩2重量%、砂糖8重量%、水89.6重量%の配合比率で、8000rpmで5分間撹拌して溶液を調整した。各試験区の溶液を、6Cの濾紙上に立てた直径8mmの円筒中に、0.2ミリリットル滴下し、10分後のしみ出しを測定した。また、食感も調べた。
【0029】
【表4】

【0030】
測定の結果、表5に示すように、試験区12および試験区19が、食感が良く、しみ出し抑制効果も高いことが確認された。また、試験区14は、しみ出し抑制効果がやや劣るものの、食感が良いことも確認された。この結果から、粘度、濾紙へのしみ出し、食感において、適正な配合割合は、ラムダカラギーナンに対して、キサンタンガムが10重量%乃至25重量%、グァーガムが5重量%乃至20重量%、タマリンドシードガムが5重量%乃至50重量%の範囲が好ましいことが確認された。なお、食感は、○:良い、△:やや悪い、×:悪い、の3段階で評価している。
【0031】
【表5】

【0032】
[粘度としみ込み防止効果との関係]
粘度としみ込み防止効果との関係を調べるために、粘度を変えて、濾紙上でのしみ込み比較試験を行った。ラムダカラギーナン、キサンタンガム、グァーガム、タマリンドシードガムを、100:17:10:10の配合比とした。これらの増粘多糖類の添加量を0.1重量%から0.9重量%まで変えて、食塩2重量%、砂糖8重量%、水89.9乃至89.1重量%の配合比率で、8000rpmで5分間撹拌して溶液を調整した。各溶液を、6Cの濾紙上に立てた直径8mmの円筒中に、0.2ミリリットル滴下し、10分後のしみ出しを測定した。また、食感も調べた。
【0033】
測定の結果、表6に示すように、50cpsを超えるとしみ込み防止効果が認められ、粘度が高くなるに従って、しみ込み防止効果が顕著になっていくことが確認された。しかし、700cpsを超えると食感が悪くなる傾向が認められ、800cpsでは粘りのある重い食感になった。このように、粘度は、50cps乃至700cpsが好ましく、このときの増粘多糖類の添加量は、0.3重量%乃至0.8重量%の範囲である。また、しみ込み防止効果と食感とのバランスを考慮すると、粘度は、特に150乃至500cpsであることが好ましい。なお、食感は、○:良い、△:やや悪い、×:悪い、の3段階で評価している。
【0034】
【表6】

【0035】
[分散剤の検討]
分散剤として、アルコールは液体であることから、糖類を選んだ。
通常使用される分散剤として、デキストリンがあるが、溶解性がそれほど良くない。特に、一度に投入すると部分的に塊になり、溶解させるのに時間を要する。また、粉末状態で、多少べたつきがある。ぶどう糖は、水分散性はすぐれているが、甘味度が高く、味への影響が大きい。一方、オリゴデキストリンは、デキストリンとぶどう糖との間に位置し、水への溶解性が高く、甘味度は低い。特に、ぶどう糖やデキストリンよりも吸湿性が低く、べたつきを抑える効果がある。これらから、水分散性、甘味度、粉体の流動性、吸湿性のバランスを最も良くするために、ぶどう糖、マルトデキストリン、デキストリンの配合を3:5:5に設定した。
【0036】
以上の検討の結果から、食品用しみ込み抑制剤として、ラムダカラギーナン、キサンタンガム、グァーガム、タマリンドシードガムを、100:17:10:10の配合比で含むものが、しみ込み防止効果が高く、食感がよいことが確認された。また、これらは冷水に溶けるため、添加時の加熱工程が不要である。さらに、添加される粘性食品に照り艶を与えることができ、耐塩性、耐酸性、耐冷凍性、耐酵素性にも優れている。
【0037】
食品用しみ込み抑制剤は、ラムダカラギーナン、キサンタンガム、グァーガム、タマリンドシードガムが、ぶどう糖、マルトデキストリン、デキストリンを3:5:5の比率で配合した分散剤に分散されるのが望ましいことが確認された。これにより、容易に、添加される粘性食品に分散させることができる。
【0038】
以下に、ラムダカラギーナン25重量%、グァーガム2.5重量%、タマリンドシードガム2.5重量%、キサンタンガム4.25重量%、ぶどう糖15.75重量%、マルトデキストリン25重量%、および、デキストリン25重量%を含む、食品用しみ込み抑制剤(以下、本添加剤という)を、タレやソース、具材などに使用した実施例を示す。なお、その効果を検討するために、キサンタンガムのみから成る添加剤(以下、比較添加剤という)との比較も行った。
【実施例1】
【0039】
濾紙上でのタレのしみ込み比較試験を行った。食塩2重量%、砂糖28重量%、水70重量%を含み、色素にて色をつけた模式的なタレを作成した。このタレに、本添加剤を1重量%添加し、それを濾紙上に立てた円柱に0.5ミリリットル滴下し、1時間後のしみ出しを測定した。また同様に、比較添加剤を0.3重量%添加し、それを濾紙上に立てた円柱に0.5ミリリットル滴下し、1時間後のしみ出しを測定した。なお、各タレとも、調味液粘度を150cpsに設定した。図1に示すように、測定の結果、比較添加剤を添加したタレでは、円柱の縁より長径5.1mm、短径4.2mmほどしみ出したが、本添加剤を添加したタレでは、長径1.6mm、短径1.3mmしか、しみ出しが認められなかった。このように、本添加剤は、タレに添加することにより、タレの食品へのしみ込み防止効果を高めることが確認された。
【実施例2】
【0040】
塩辛おにぎりについて、塩辛の米飯へのしみ込み比較試験を行った。本添加剤1.0重量%および比較添加剤0.5重量%を、それぞれ塩辛に添加混合し、100gの米飯にて包んだ。図2に示すように、冷蔵2日後のしみ込み状態を調べると、比較添加剤を添加した塩辛は、本添加剤を添加した塩辛に比べ粘度は高かったが、しみ込みを防止できていないことが確認された。また、本添加剤を添加した塩辛は、無添加のものと比較して、明らかに米飯へのしみ込みが防止されていることが確認された。さらに、比較添加剤を添加した塩辛は、食感がべたつく傾向にあった。このように、本添加剤は、塩辛に添加することにより、塩辛の米飯へのしみ込み防止効果を高めるとともに、食感も良いことが確認された。
【実施例3】
【0041】
豚角煮饅頭上掛けタレの、生地へのしみ込み試験を行った。本添加剤1.0重量%を豚角煮饅頭上掛けタレに添加混合し、そのタレ10gと豚角煮1枚15gを生地35gに挟み、一旦凍結後、そのまま蒸し器にて4時間蒸煮した。図3に示すように、無添加のものはタレが生地にしみ込み、ふやけが生じていたが、本添加剤を添加したタレは、タレの照り艶を失わず、生地へのしみ込みも防止されていることが確認された。また、タレの生地上での残存率を測定したところ、無添加のタレで63%、本添加剤を添加したタレで81%と、明らかにしみ込みが防止されていることが確認された。このように、本添加剤は、タレに添加することにより、タレの生地へのしみ込み防止効果を高めるとともに、タレに照り艶を与えることが確認された。
【実施例4】
【0042】
トマトソースの、パンへのしみ込み試験を行った。本添加剤1.0重量%をトマトソースに添加混合し、パンで挟んだ。図4に示すように、本添加剤を添加したトマトソースは、冷蔵1日後で、トマトソース本来の照り艶があり、パンへのしみ込みも抑えられていることが確認された。無添加のものは、トマトソースが完全にパンにしみ込み、ソースの具材のみがパン上に残り、照り艶のない、外観上劣るものとなっている。このように、本添加剤は、トマトソースに添加することにより、トマトソースのパンへのしみ込み防止効果を高めるとともに、トマトソースに照り艶を与えることが確認された。
【実施例5】
【0043】
マヨネーズソースの、パンへのしみ込み試験を行った。本添加剤0.5重量%をマヨネーズとケチャップとを混合したマヨネーズソースに添加混合し、パンで挟んだ。図5に示すように、本添加剤を添加したマヨネーズソースは、冷蔵1日後で、マヨネーズソース本来の照り艶があり、パンへのしみ込みも防止されていることが確認された。無添加のものは、マヨネーズソースが完全にパンにしみ込み、パン表面がふやけた状態となっている。このように、本添加剤は、マヨネーズソースに添加することにより、マヨネーズソースのパンへのしみ込み防止効果を高めるとともに、マヨネーズソースに照り艶を与えることが確認された。
【実施例6】
【0044】
ずんだ餡の離水試験を行った。本添加剤1.0重量%を、茶豆、グラニュー糖、白あん等で作成したずんだ餡に添加混合した。その結果、本添加剤は、ずんだ餡の離水を抑える効果が高いことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態の食品用しみ込み抑制剤を添加したタレのしみ込み比較試験の(a)本添加剤の試験結果を示す平面図、(b)比較添加剤の試験結果を示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態の食品用しみ込み抑制剤を添加した塩辛の米飯へのしみ込み比較試験の、無添加の塩辛おにぎり、本添加剤の塩辛おにぎり、比較添加剤の塩辛おにぎりの(a)試験結果を示す断面図、(b)塩辛を取り除いた試験結果を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態の食品用しみ込み抑制剤を添加した豚角煮饅頭上掛けタレの生地へのしみ込み試験の(a)本添加剤の試験結果を示す斜視図、(b)比較添加剤の試験結果を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態の食品用しみ込み抑制剤を添加したトマトソースのパンへのしみ込み試験の(a)本添加剤の試験結果を示す斜視図、(b)比較添加剤の試験結果を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態の食品用しみ込み抑制剤を添加したマヨネーズソースのパンへのしみ込み試験の本添加剤および無添加の試験結果を示すパンの両面の平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラムダカラギーナンを含むことを、特徴とする食品用しみ込み抑制剤。
【請求項2】
キサンタンガムを含むことを、特徴とする請求項1記載の食品用しみ込み抑制剤。
【請求項3】
グァーガムとタマリンドシードガムとを含むことを、特徴とする請求項2記載の食品用しみ込み抑制剤。
【請求項4】
分散剤を含み、
前記ラムダカラギーナンと前記キサンタンガムと前記グァーガムとが前記分散剤に分散されていることを、
特徴とする請求項3記載の食品用しみ込み抑制剤。
【請求項5】
分散剤を含み、
前記ラムダカラギーナンと前記キサンタンガムと前記タマリンドシードガムとが前記分散剤に分散されていることを、
特徴とする請求項3記載の食品用しみ込み抑制剤。
【請求項6】
請求項1,2,3,4または5記載の食品用しみ込み抑制剤を含み、粘度が30cps乃至700cpsであることを特徴とする粘性食品。
【請求項7】
請求項6記載の粘性食品を液体浸透性食品に付着させて成ることを、特徴とする浸透性食品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−99640(P2008−99640A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286724(P2006−286724)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(591219566)青葉化成株式会社 (21)
【Fターム(参考)】