食品用の包装体、包装体入り食品、食材の調理方法
【課題】生鮮食品をはじめとするあらゆる食材について、焼き調理と、水分を含ませながら加熱する蒸し調理とを、両立する技術を提供する。
【解決手段】食品用の包装体1であって、食材2の収納空間60を有する容器6と、マイクロ波の吸収により発熱して前記食材2を加熱する発熱体4と、を備える。容器6は、食材2の収納用開口部61と、その開口部61を閉じる蓋部62と、を有する。容器6の内面は、食材2を囲む曲面に形成されている。
【解決手段】食品用の包装体1であって、食材2の収納空間60を有する容器6と、マイクロ波の吸収により発熱して前記食材2を加熱する発熱体4と、を備える。容器6は、食材2の収納用開口部61と、その開口部61を閉じる蓋部62と、を有する。容器6の内面は、食材2を囲む曲面に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食材を収納する食品用の包装体に関する。また、本発明は、電子レンジを用いて簡単に調理することが可能な、包装体入り食品に関する。また、本発明は、魚類・肉類・野菜類・加工品等のあらゆる食材の調理に有用な電子レンジを用いた調理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、調理時間を短縮することや後片付けの手間を省くために、電子レンジを用いた調理方法が注目されている。
近年では、電子レンジのマイクロ波を照射することで発熱する発熱体を用いて、食品にクリスピー性を付与したり、食品の表面に焦げ目を付与したりするような調理方法が提案され、このような調理方法を補助する物も提案されている(特許文献1、2、3)。
【0003】
特許文献1には、電子レンジ発熱体を紙容器に装着した電子レンジ発熱体付き紙容器が開示されている。
【0004】
特許文献2には、金属を蒸着してなりマイクロ波吸収により発熱する金属層と、この金属層を覆う耐熱性プラスチックフィルムとからなる発熱体を、紙基材に設けた、前記発熱体と基材が一体となったシートであって、金属層がパターン状に形成されていることを特徴とする電子レンジ調理用シートが開示されている。
【0005】
特許文献3には、電子レンジを用いて魚などを調理する加熱補助部材が開示されている。この加熱補助部材は、電磁波を照射することにより発熱する第1発熱体及び第2発熱体と、前記第1発熱体を支持する第1支持部と、前記第2発熱体を支持する第2支持部とを備えている。また、前記第1支持部と前記第2支持部とは、第1発熱体上に載置された魚などを第2発熱体が接触するように屈曲可能に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−289692号公報
【特許文献2】特開2011−89719号公報
【特許文献3】特開2011−11044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2、3に記載されるような物を用いた電子レンジでの調理では、確かに食品にクリスピー感を付与したり、食品の表面に焦げ目を付与したりすることが簡便に行えるようになった。
しかしながら、これらの技術では、例えば、生鮮食品に対し十分に火を通そうとして調理時間を長く設定すると、ぱさぱさした食感になってしまい美味しくないという問題があった。このような理由から、上記の技術は、半加工食品、加工食品の仕上げには十分であるものの、より鮮度の高い食材の調理には十分とはいえないものであった。
また、これらの技術では、食材を発熱体の上に載置する作業が必要となり、手指や調理器具に食中毒菌が付着したり、臭いが付着したりなど、衛生上の問題があった。
【0008】
他方で、近年、仕事を持つ忙しい女性が増えたことや、子供だけで食事をせざるを得ないことが増えたこともあり、調理時間を短縮するだけでなく、後片付けや掃除もなるべく簡単に行いたいという要望は強い。
しかしながら、加工食品の製造技術が発達した現在でも、できるだけ新鮮な食材を、食する直前に簡単に調理したいという要求は強く、このような場面において電子レンジを用いることについて、大きな期待があった。
【0009】
そこで、本発明は、生鮮食品をはじめとするあらゆる食材について、焼き調理と、水分を含ませながら加熱する蒸し調理とを、両立する技術を提供することを課題とする。
また、本発明は、食材の片面側に発熱体を配置した場合でも、食材全体の加熱調理を良好に仕上げることができる技術を提供する。
さらに、本発明は、衛生的に簡便に上記の調理をすることを可能とする技術を提供する。
【0010】
また、魚類やその干物のように匂いの強い食品の場合、その匂い対策が必要となるため、個人での持ち運びや冷蔵庫での保管などには消極的になることも多々あった。
そこで、本発明は、このような食材について個人での持ち運びや冷蔵庫での保管においても扱いやすい商品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための本発明は、食品用の包装体であって、食材の収納空間を有する容器と、マイクロ波の吸収により発熱して前記食材を加熱する発熱体とを備え、前記容器は、食材の収納用開口部と、その開口部を閉じる蓋部とを有し、前記容器の内面は、前記食材を囲む曲面に形成されていることを特徴とする。
このような包装体は、電子レンジで食材を調理する際に用いる包装体として極めて好適である。このような包装体を用いることにより、焼き調理と蒸し調理を同時に行うことができ、包装体に収納される食材の表面には焦げ目或いはクリスピー性を付与することができ、加えて、食材の内部は、水分を含ませながらふっくらと仕上げることができる。
また、本発明では、容器の内面は、食材を囲む曲面に形成してあるので、曲面に沿って熱や水蒸気を積極的に対流させることが可能になる。したがって、食材の片面側に発熱体を配置した場合でも、食材全体の加熱調理を良好に仕上げることができる。
また、このような包装体は、食材を開口部から容器内に収納して蓋部で閉じるものであるため、熱の分散が少なく効率よく加熱調理を行うことができ、また臭いの放出も抑制できるものである。さらに、蓋部を有することから、冷凍食品、チルド食品等の包装体として価値が高く、流通、保管にも適したものである。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記容器は、紙又は樹脂、若しくはそれらの複合材で形成されていることを特徴とする。
例えば容器を紙で形成する場合、包装用ピローケースのように組み立てが簡易で安価な容器とすることができる。特に、紙は断熱性に優れているので、少し厚めにすることで、電子レンジによる加熱調理を効果的に行うことができる。また、組み立て式とすることで、加熱調理時の水蒸気を容器内に適度に保持する程度の密閉性(若干の通気性)も容易に確保することができる。換言すれば、加熱調理時の容器の内圧調整機能を有する程度の若干の通気性を容易に確保することができる。したがって、高い気密性を必要としない食材の包装体として好適に採用することができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記容器に、前記収納空間と外部との間の圧力調整部が設けられていることを特徴とする。
この圧力調整部は、加熱調理時における前記収納空間の内圧が、容器が破損しないという目的で設定された圧力(設定圧力)を超えた際に、収納空間内の気体を外部に逃がす機能を発揮する。この設定圧力は、容器の強度や気密性に応じて設定される。特に、この圧力調整部は、容器が組み立て式でない場合に好適に設けられる。容器が組み立て式でない場合には、容器の気密性が高く、収納空間の内圧が容器の強度以上に上昇するからである。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記発熱体が、前記容器の内面に沿って湾曲していることを特徴とする。
このように発熱体も湾曲させることで、発熱体を食材の表面に広くかつ、より均一に接触させたり、食材の表面から均等な間隔で離間させたりすることができる。これにより、食材の加熱効果や焼き上げ効果が食材に対し均一に、確実に発揮される構成とすることができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記発熱体が、前記容器の内面に設けられていることを特徴とする。
発熱体を容器の内面に設けることで、容器と発熱体を一体化してシンプルな構成とすることができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記発熱体は、吸液性のある基材と、基材上に設けられた発熱層と、発熱層の上に設けられた保護層とを備えていることを特徴とする。
このように構成した場合、食材から出るドリップや調理汁、油分等の液体を発熱体に設けてある吸液性のある基材に吸収させることで、食材の流通、保管、展示時の状態、及び食材の調理後の状態などをより美麗に保つことが可能になる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記発熱体が、前記収納空間内に収納される食材の下又は上の何れか一方に配置されることを特徴とする。
発熱体を収納空間内の食材の下に配置した場合、収納空間内の食材を効果的に加熱することができる。即ち、発熱体からの熱は食材を直接加熱しつつ、収納空間内の上方へ向かうが、収納空間の内面は前述のように食材を囲む曲面に形成されているので、この曲面に沿って上方へ向かい、そこからさらに下方へと向かい発熱体と食材との間にも供給される。このようにして、収納空間内での熱の循環作用が生じるので、加熱効果が格段に高まることになる。また、容器の内面が曲面に形成されているので、発熱体を食材の上に配置した場合でも、収納空間内での熱の循環作用が活発に行われる。また、食材の上及び下の何れか一方に発熱体を配置することにより、発熱体を両方に配置した場合の発熱体間のスパークを防ぐことができる。また、このような配置により、焼き調理と蒸し調理をバランスよく両立することが可能となる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記容器に、その容器内を見るための窓部が設けられていることを特徴とする。
このように、容器に対して内部を見る窓部を設けた場合、内部に収納する食材を外から見ることができるので、食材の確認や選定を容易に、かつ大変便利に行うことができる。
【0019】
前記課題を解決するための本発明は、包装体入り食品であって、上記に記載の包装体と、その包装体内に収納された食品と、を備え、前記発熱体は、前記包装体の内面と前記食品との間に位置していることを特徴とする。
このような包装体入り食品を電子レンジで加熱することにより、包装体内部の食材に対し、焼き調理と蒸し調理を同時に行うことができ、包装体内の食材の表面には焦げ目或いはクリスピー性を付与することができ、加えて食材の内部をふっくらと仕上げることができる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記食品を収納した包装体の外側を気密性のある袋で被覆してあることを特徴とする。
このような包装体入り食品は、気密性が保持された状態で、冷凍食品やチルド食品等として、流通させ、保管することが可能である。そのため、消費者は、持ち運び時、保管時に食材から臭いが発生することを気にする必要がない。また、包装体入り食品を購入した消費者は、これをそのまま電子レンジ調理に供することができる。あるいは、気密性のある外袋から容器を出してから、その容器ごと電子レンジ調理に供することができる。したがって、加熱調理に先立ち、食材に直接触れる必要がないため、衛生的に簡便に食材を加熱調理することが可能となる。
【0021】
本発明の好ましい形態では、上記に記載の包装体入り食品を、前記容器の開口部を閉じた状態を保持しながら電子レンジで加熱することを特徴とする。
このような調理方法によれば、容器の適度な密閉性を生かして、焼き調理と蒸し調理を適切な時間で効率的に行うことができる。
【0022】
前記課題を解決するための本発明は、マイクロ波を用いた食材の調理方法であって、
マイクロ波を発熱体に照射することにより発熱体から発熱させ、該発熱により食材表面を高温加熱する工程と、マイクロ波を食材に照射することにより、食材から水蒸気を発生させ、該食材を水蒸気雰囲気下で加熱する工程と、を上記に記載の食品用の包装体内で並行して行うことを特徴とする。
このような調理方法によれば、焼き調理と蒸し調理を同時に簡便にしかも効率的に行うことができ、食材の調理が簡便なものとなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の食品用の包装体は、食材を流通させ、保管するのに必要な包装体として十分な機能を有するのみならず、焼き調理と蒸し調理を簡便に同時に行うための包装体として有用である。特に、容器の内面は、食材を囲む曲面に形成してあるので、曲面に沿って熱や水蒸気を積極的に対流させることが可能になる。したがって、食材の片面側に発熱体を配置した場合でも、食材全体の加熱調理を良好に仕上げることができる。
また、本発明の包装体入り食品を、包装体のまま電子レンジで加熱することにより、包装体内の食材の表面には焦げ目或いはクリスピー性を付与することができ、加えて食材の内部をふっくらと仕上げることができる。
また、本発明の包装体入り食品は、冷凍食品、チルド食品として、流通させることが可能であり、消費者は購入した包装体入り食品をそのまま電子レンジ調理に供することができるため、衛生的に簡便に食材を調理することが可能となる。
さらに、本発明の調理方法を用いることにより、焼き調理と蒸し調理を同時に簡便に行うことができ、食材の表面には焦げ目或いはクリスピー性を付与することができ、加えて食材の内部をふっくらと仕上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態1に係る食品用包装体の開封後の状態を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る食品用包装体の開封前の状態を示す概略斜視図である。
【図3】本発明の実施形態1係る食品用包装体の断面図である。
【図4】本発明の実施形態1係る食品用包装体の平面図である。
【図5】本発明の実施形態1係る食品用包装体の発熱体の概略斜視図である。
【図6】本発明の実施形態1係る食品用包装体の発熱体の拡大断面図である。
【図7】本発明の実施形態2に係る発熱体の他の例を示す平面図である。
【図8】本発明の実施形態2に係る発熱体の他の例を示す拡大断面図である。
【図9】本発明の実施形態3に係る包装体入り食品の例を示す平面図である。
【図10】本発明の実施形態3に係る包装体入り食品の他の例を示す端面図である。
【図11】本発明の実施形態4に係る平面図である。
【図12】本発明の実施形態4に係る食品用包装体の一部展開平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図1〜図12を参照して説明する。
<実施形態1>
本発明の実施形態に係る食品用の包装体1は、図1〜図6に示すように、食材2の収納空間60を有する容器6と、マイクロ波の吸収により発熱して食材2を加熱する発熱体4とを備えている。容器6は、食材2の収納用開口部61と、その開口部61を開閉可能な蓋部62とを有している。容器6の内面は、図1及び図3に示すように、食材2を囲む曲面に形成されている。
【0026】
食材2としては、魚類、肉類、野菜類、穀類、或いはその加工品等、加熱調理され得るあらゆる食材が挙げられる。食材としては、焼き調理と蒸し調理を同時に行う調理方法で食されるものであることが特に好ましい。このような食材としては、魚、肉、野菜等の生鮮食品、焼きおにぎり、漬け魚、漬け肉、干物等の半加工食品が挙げられる。
【0027】
図1は、実施形態1に係る食品用包装体の開封後の状態を示す概略斜視図であり、図2は開封前の状態を示す概略斜視図である。図示例の容器6は、いわゆる包装用のピローケースタイプとして構成されている。この容器6は、組み立てた状態で、底面部63と、天面部64と、蓋部62、62で形成される両側の端面部と、を有する扁平な箱型に形成されている。容器6は、全体として耐熱加工の施された紙(耐熱紙)で形成されている。紙の厚さとしては特に限定されないが、必要な断熱性や形状保持性等を持たせる観点から、0.2〜2.0mm程度、好ましくは0.3〜1.0mm程度のものが採用されている。紙の厚さについては、食材2の種類や大きさによって適宜設定される。
【0028】
このように、容器6を紙で形成した場合、包装用ピローケースのように組み立てが簡易で安価な容器とすることができる。特に、紙は断熱性に優れているので、少し厚めにすることで、電子レンジによる加熱調理を効果的に行うことができる。また、組み立て式とすることで、加熱調理時の水蒸気を容器内に適度に保持する程度の密閉性(適度な通気性)も容易に確保することができる。したがって、高い気密性を必要としない食材の包装体として好適に採用することができる。
なお、この容器6を形成する素材としては、紙に限らず、樹脂製シート、あるいは紙と樹脂とを積層した複合材からなるシート、などを用いることもできる。
【0029】
容器6の両側の端面部を構成する蓋部62、62は、図4においてそれぞれ破線で示す内蓋62aと実線で示す外蓋62bの二重蓋構造となっている。これら内蓋62aと外蓋62bは糊付けしても良い。糊付けした場合、容器6が組み立て式であっても、収納空間60の気密性を高めることができる。図3において6cは容器6を組み立てるのに利用する糊代部分を示している。
【0030】
容器6の底面部63と、天面部64は、食材2を囲む円弧状の曲面に形成されている。そして、容器6の天面部64には、図1及び図2に示すように、食材2の取出し開口部65を形成するための切取り線66が設けられている。つまみ64aを引っ張り、切取り線66の部分に沿って天面部64を破断させることで、図1及び図4に示すような、ほぼ矩形の取出し開口部65を形成することができる。これにより、容器6には、図1及び図4に示すように、天面部64の切り起し片64bが形成される。切取り線66は、切り取り前には気密性を保持できるような構造とすることが好ましい。例えば、切取り線部分を薄肉にする方法を採用することができる。また、切取り線をミシン目で形成し、そのミシン目部分を気密性のフィルムでシールする方法などを採用することができる。
【0031】
容器6には、図1及び図2に示すように、収納空間60と外部との間の圧力調整部が設けられている。この圧力調整部は、半円状に切り欠いた指掛け部6aにより形成することもできる。また、切取り線66により形成することもできる。また、別途に設けた専用の通気孔6b等により形成することもできる。但し、圧力調整部は、発熱体と対向する面(本実施形態では天面部64)には設けないことが好ましい。これにより、食材の加熱により生じた水蒸気を収納空間60の下方へ導くことができ、蒸し調理を効果的に行うことができる。
【0032】
このように、収納空間60と外部との間の圧力調整部を容器6に設けることで、その圧力調整部の大きさや通気機能について、容器6内に収納する食材2に適するように任意に設定することができる。したがって、この通気機能は、容器6が組み立て式か否かに左右されることがない。また、この通気機能は、加熱調理時における容器6の内圧調整機能も発揮する。
【0033】
容器6の底面部63の内面には、発熱体4が設けられている。本実施形態では、図1及び図3に示すように、シート状の発熱体4(発熱シート)が容器6の底面に貼り付けられている。なお、発熱体4は、複数備えられていてもよいし、その形状も制限されない。また、発熱体4は、底面部63、天面部64、端面部(蓋部62)の何れに備えられていてもよい。
【0034】
発熱体4は、マイクロ波を吸収することで発熱する。発熱温度としては、焼き調理が可能である限り特に制限されないが、好ましくは食材表面にクリスピー性乃至は焦げ目を付与することができる温度である。具体的には120〜250℃程度、好ましくは170〜250℃程度である。
【0035】
発熱体4について、図5及び図6を用いてより詳細に説明する。発熱体4は、この実施形態では、シート状基材41の表面に、金属蒸着膜からなる発熱層42を設け、さらにその表面にプラスチックフィルムからなる被覆層43を設けた構成となっている。
【0036】
シート状基材41は、コーティング等の表面処理が施された厚紙で形成され、金属蒸着膜42からの熱が容器6の底面部63に直接伝導するのを抑制すると共に、発熱体4全体の曲げに対する変形率を小さくしている。これにより、電子レンジで加熱した際に、発熱体4が変形することを極力防ぎ、食材表面に対する発熱体の隣接度合い(距離)を維持し、食材表面の焼きむらを抑制する。被覆層43は発熱層42が食材2に直接触れないようにする機能も発揮する。なお、シート状基材として、プラスチック基材を用いることも可能である。
また、シート状基材41には、容器6の長辺方向に沿って、スリットを設けることも好ましい。これにより、図2において、容器6の底面部と天面部との境界部分に相当する長辺部分を両側から手で押圧することにより、発熱体4を有する底面部が、スリットを起点に変形し、中味の調理品を簡単に発熱体から剥離することができる。このような観点から、容器6を構成する素材は、手による押圧によって変形可能な、柔軟なものであることが好ましい。
【0037】
また、発熱層42を形成する金属蒸着膜は、アルミニウムで形成されている。金属蒸着膜を形成する金属としては、ニッケル、金、銀、亜鉛、白金等を用いることもできる。なお、上述した温度を発生する材料であれば、発熱体に使用することができることはいうまでもなく、炭素系導電性粉体、金属系導電性粉体、又はこれらの混合粉体等を用いることができる。金属蒸着膜の製造方法については公知の方法を用いればよい。
【0038】
また、プラスチックフィルムからなる被覆層43は、ポリエチレンテレフタレート(PET)で形成されている。被覆層43は、発熱層42からの熱に対して溶融しない材料で形成されていればよい。なお、この被覆層43は設けなくても良い。
【0039】
本実施形態において、発熱体4は、容器6の底面部63の内面に沿って湾曲するように配置されている。このように発熱体4も湾曲させることで、発熱体4を食材2の表面に広くかつ、より均一に接触させることができるからである。これにより、食材2の加熱効果や焼き上げ効果をより確実に発揮させる構成とすることができる。
【0040】
この場合、発熱体4を、容器6の底面部63の内面に直接設けたり、貼り付けたりすることもできる。発熱体4を容器6の内面に設けることで、容器6と発熱体4を一体化することができ、その分、シンプルな構成とすることができる。
【0041】
また、本実施形態では、特に好適な例として、図3に示すように、発熱体4を、収納空間60内の食材2の下に配置している。このように、発熱体4を収納空間60内の食材2の下に配置することで、収納空間60内の食材2を効果的に加熱することができる。即ち、発熱体4からの熱は食材2を直接加熱しつつ、収納空間60内の上方へ向かうが、収納空間60の内面は食材2を囲む円弧状の曲面に形成されているので、この曲面に沿って上方へ向かい、そこからさらに下方へと向かい発熱体4と食材2との間にも供給される。このようにして、収納空間60内での熱の循環作用が生じるので、加熱効果が格段に高まることになる。
【0042】
また、容器6の底面部63及び天面部64の内面が、食材2を囲むように断面円弧状に湾曲する曲面に形成されているので、発熱体4を食材2の上に配置した場合でも、収納空間60内での熱の循環作用が活発に行われる。これにより、食材2の加熱効果を高めることができる。
【0043】
ここまで、食品用の包装体の実施形態について説明したが、図3に示すように、この食品用の包装体1と食材2とで、包装体入り食品10が構成される。包装体入り食品10は、容器6の収納用開口部61から収納空間60内に発熱体4と食材2とを収納したのち、開口部61の蓋部62を閉じることにより得られる。発熱体4が容器6の内面に設けられている場合には、食材2のみを収納すれば良い。
【0044】
本実施形態の包装体入り食品10は、そのまま電子レンジで加熱することができる。この加熱は、蓋部62周囲の隙間や切取り線66等の圧力調整部により容器6に若干の通気性を付与した状態で行うことが望ましい。これにより、容器6の内圧が大きくならない程度の適度な密閉性を保持しながら加熱調理することができるからである。密閉性は、必要な加熱が終了する間保持されていてもよいし、所定時間が経過した時点で解除されてもよい。なお、ここでの密閉性とは、加熱による容器6内の内圧が高くなり過ぎない範囲で熱や水蒸気を容器6内にある程度閉じ込めておくことができることを言う。したがって、この密閉性の程度は、食材の種類に応じて、適宜設定される。
【0045】
包装体入り食品10を電子レンジで加熱すると、電子レンジが発生するマイクロ波が、発熱体4の発熱層42に照射され、吸収されることにより、発熱層42が発熱し、発熱体4に近接した食材2の表面が高温で加熱される。それと同時に、マイクロ波は食材にも照射され、吸収されることにより、食材から水蒸気が発生する。これにより、容器6の内部は水蒸気で満たされ、食材は水蒸気で包み込まれた状態で加熱される。
【0046】
この際、図3に示すように、容器6の底面部63及び天面部64の内面が、食材2を囲むように断面円弧状に湾曲する曲面に形成されているので、収納空間60内での熱や水蒸気の循環作用が活発に行われる。これにより、食材2の加熱効果を高めることができる。
このように、本実施形態の包装体入り食品10を、電子レンジを用いて加熱すれば、食材2に対し焼き調理と蒸し調理を同時に行うことができ、非常に美味しい料理を簡便に作ることができるのである。
【0047】
包装体入り食品10は、例えば、焼き魚、ステーキ、焼き野菜等の焼き物のほか、食材表面は十分に焼き調理がされていて食材内部は一定のレア状態のタタキ等を調理する物として構成することができる。食材内部を一定のレア状態とするためには、容器6の適度な密閉性を利用したり、電子レンジのマイクロ波の発生を適当な時間に停止し、余熱を用いて調理したりすることにより達成することができる。
【0048】
<実施形態2>
図7及び図8は、実施形態1において説明した発熱体4の他の実施形態を示す平面図及び拡大断面図である。なお、これらの図において、図1〜図6と基本的に同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。
【0049】
本実施形態の発熱体4は、吸液性シートで形成された基材41の表面に、金属膜からなる発熱層42を設け、さらにその表面にプラスチックフィルムからなる保護層43を設けた構成となっている。なお、製造過程においては、プラスチックフィルムからなる保護層43の片面に発熱層42を設け、その発熱層42を、基材41の表面に接着剤(図示せず)を介して貼り付けるといった方法が採用される場合もある。
【0050】
発熱層42は、図7の平面図で示すようにメッシュ状(格子状)に形成されている。これにより発熱層42は平面で見て、連続部と不連続部とを有している。即ち、連続部は縦横に延びる線や多数のマス目を形成する線としての格子状の部分である。不連続部は、図7において白抜き表示された多数の矩形空間部分(孔5b)である。これらの矩形空間部分5bは発熱層42が形成されていない不連続部となっている。これにより、連通部5は、保護層43に設けられた孔5aと、発熱層42に設けられた矩形空間の孔5bとにより形成されている。
【0051】
なお、保護層43に設けられた孔5aは、発熱層42に設けられた矩形空間の孔5bよりも小さく形成されている。この結果、保護層43が格子状の発熱層42の表面を確実かつ十分に覆う構成となっている。
【0052】
吸液性シートからなる基材41の下面は、コーティング等の表面処理が施され、発熱層42からの容器6に直接伝導するのを抑制すると共に、発熱体4全体の曲げに対する変形率を小さくしている。これにより、電子レンジで加熱した際に、発熱体4全体の熱による変形を抑制し、食材表面に対する発熱体の隣接度合い(距離)を維持し、食材表面の焼きむらを抑制する。保護層43は発熱層42が食材2に直接触れないようにする機能も発揮する。なお、吸液性シートとして、吸液性のプラスチック基材を用いることも可能である。
【0053】
また、金属膜からなる発熱層42は、アルミニウムで形成されている。なお、発熱層42を形成する金属としては、実施形態1の場合と同様に、ニッケル、金、銀、亜鉛、白金等を用いることもできる。さらに、炭素系導電性粉体、金属系導電性粉体、又はこれらの混合粉体等を用いることもできる。なお、メッシュ状金属膜の製造方法については、公知の方法を用いればよい。例えば、印刷技術の応用や半導体製造工程において多用されるエッチング技術の応用などにより、容易に形成することができる。
【0054】
また、プラスチックフィルムからなる保護層43は、ポリエチレンテレフタレート(PET)で形成されている。保護層43は、金属膜42からの熱に対して溶融しない材料で形成されていればよい。
【0055】
この実施形態2によれば、食材2から出る焼き汁等の液体は、連通部5を構成する保護層43の孔5aから発熱層42の孔5bを通って、吸液性シートからなる基材41の上に滴下し、その内部に吸収される。
【0056】
さらに、格子状の発熱層42で囲まれた各矩形空間5bにおいては、その矩形状に囲む発熱層42からの放射熱が充満する。これにより、各矩形空間5b内に対応する食材部分は焦げ目なくふっくらと焼き上げることが可能になる。
【0057】
また、例えば魚介類や肉類を含む生鮮食品等においては、調理までの保管時、流通時、展示解凍時、展示時などにおいて、ドリップや血液、内臓汁等の液体が流出して包装体内に溜まる場合があった。この液体は包装体が透明の場合に外観を損なう恐れがあり、好ましくなかったが、本実施形態では、吸液性シートからなる基材41を備えているので、こうした問題も同時に解決することができる。
【0058】
<実施形態3>
図9及び図10は、本発明の実施形態3に係る平面図及び側面図である。なお、同図において、図1〜図6の実施形態1と基本的に同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。
この実施形態3では、包装体1に食材を収納した、包装体入り食品10の外側を気密性のある袋7で被覆した構成としたものである。袋7としては、広く流通している包装用の袋であれば、特に制限されることなく使用することができる。袋の材質もプラスチックフィルムやシートの他に、紙、布、あるいはそれらの複合材からなるものも採用することができる。なお、この実施形態3の容器6においては、調理後の食材の取出し用開口部を形成するための切取り線68が設けられている。
【0059】
このような包装体入り食品10は、袋7により気密性を保持した状態で、冷凍食品やチルド食品等として、流通させ、保管することが可能である。そのため、消費者は、持ち運び時、保管時に食材から臭いが発生することを気にする必要がない。また、包装体入り食品10を購入した消費者は、これをそのまま電子レンジ調理に供することができる。あるいは、気密性のある外袋7から容器6を出してから、その容器6ごと電子レンジ調理に供することができる。したがって、加熱調理に先立ち、食材2に直接触れる必要がないため、衛生的に簡便に食材2を加熱調理することが可能となる。
なお、袋7は気密性や液密性を有するものが好ましいが、食材2の種類や状態によっては、気密性、液密性が多少低下する素材からなるものでも採用することができる。
【0060】
<実施形態4>
図11及び図12は、本発明の実施形態4に係る平面図である。図12では説明の便宜上、蓋部を展開して示してある。なお、図11及び図12において、図1〜図10の各実施形態と基本的に同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。
【0061】
この実施形態4では、食材2を収納する包装体1の容器6における天面部64に、食材2を外から(上から)見ることができる窓部8を設けた構成としたものである。さらに、この実施形態4では、食材2の取出し開口を容器6に形成するための切取り線として、容器6の長手方向に沿って延びる1条の切取り線80を形成してある。
【0062】
窓部8は、天面部64の中央部に形成した長穴形状の切り抜き孔81と、この切り抜き孔81を気密に閉じるように、天面部64の裏面から貼り付けた透明シート82とにより形成されている。透明シート82としては、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)等の耐熱性のある樹脂シートが好適に用いられる。
窓部8の大きさや形状については任意であるが、より大きいほど内部の食材2をよく見ることができる点で好ましい。
【0063】
切取り線80は、容器6の天面部64を容器6の長さ方向に延び、さらに容器6の両側の蓋部62、62の端まで延びている。この構成により、天面部64を、一方の蓋部62から他方の蓋部62に向かって手指で切断することで、大きな取出し開口部を容易に形成することができる。特に、1条の切取り線80を、両側の蓋部62、62の端まで延びる構成としたので、どちらの蓋部62側からでも、容易に切断することができる。
なお、この窓部8としては、図示例では、天面部64に1つ設けた例を示しているが、複数設けてもよい。また、窓部8を設ける箇所として、天面部64に限らず、蓋部62に設けることもできる。
【符号の説明】
【0064】
1 食品用の包装体
2 食材
4 発熱体
41 基材
42 発熱層
43 被覆層
5 連通部
5a 保護層の孔
5b 発熱層の孔
6 容器
60 収納空間
61 開口部
62 蓋部
63 底面部
64 天面部
65 取出し用開口部
66 切取り線
7 袋
8 窓部
80 切取り線
81 切り抜き孔
82 透明シート
【技術分野】
【0001】
本発明は、食材を収納する食品用の包装体に関する。また、本発明は、電子レンジを用いて簡単に調理することが可能な、包装体入り食品に関する。また、本発明は、魚類・肉類・野菜類・加工品等のあらゆる食材の調理に有用な電子レンジを用いた調理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、調理時間を短縮することや後片付けの手間を省くために、電子レンジを用いた調理方法が注目されている。
近年では、電子レンジのマイクロ波を照射することで発熱する発熱体を用いて、食品にクリスピー性を付与したり、食品の表面に焦げ目を付与したりするような調理方法が提案され、このような調理方法を補助する物も提案されている(特許文献1、2、3)。
【0003】
特許文献1には、電子レンジ発熱体を紙容器に装着した電子レンジ発熱体付き紙容器が開示されている。
【0004】
特許文献2には、金属を蒸着してなりマイクロ波吸収により発熱する金属層と、この金属層を覆う耐熱性プラスチックフィルムとからなる発熱体を、紙基材に設けた、前記発熱体と基材が一体となったシートであって、金属層がパターン状に形成されていることを特徴とする電子レンジ調理用シートが開示されている。
【0005】
特許文献3には、電子レンジを用いて魚などを調理する加熱補助部材が開示されている。この加熱補助部材は、電磁波を照射することにより発熱する第1発熱体及び第2発熱体と、前記第1発熱体を支持する第1支持部と、前記第2発熱体を支持する第2支持部とを備えている。また、前記第1支持部と前記第2支持部とは、第1発熱体上に載置された魚などを第2発熱体が接触するように屈曲可能に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−289692号公報
【特許文献2】特開2011−89719号公報
【特許文献3】特開2011−11044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2、3に記載されるような物を用いた電子レンジでの調理では、確かに食品にクリスピー感を付与したり、食品の表面に焦げ目を付与したりすることが簡便に行えるようになった。
しかしながら、これらの技術では、例えば、生鮮食品に対し十分に火を通そうとして調理時間を長く設定すると、ぱさぱさした食感になってしまい美味しくないという問題があった。このような理由から、上記の技術は、半加工食品、加工食品の仕上げには十分であるものの、より鮮度の高い食材の調理には十分とはいえないものであった。
また、これらの技術では、食材を発熱体の上に載置する作業が必要となり、手指や調理器具に食中毒菌が付着したり、臭いが付着したりなど、衛生上の問題があった。
【0008】
他方で、近年、仕事を持つ忙しい女性が増えたことや、子供だけで食事をせざるを得ないことが増えたこともあり、調理時間を短縮するだけでなく、後片付けや掃除もなるべく簡単に行いたいという要望は強い。
しかしながら、加工食品の製造技術が発達した現在でも、できるだけ新鮮な食材を、食する直前に簡単に調理したいという要求は強く、このような場面において電子レンジを用いることについて、大きな期待があった。
【0009】
そこで、本発明は、生鮮食品をはじめとするあらゆる食材について、焼き調理と、水分を含ませながら加熱する蒸し調理とを、両立する技術を提供することを課題とする。
また、本発明は、食材の片面側に発熱体を配置した場合でも、食材全体の加熱調理を良好に仕上げることができる技術を提供する。
さらに、本発明は、衛生的に簡便に上記の調理をすることを可能とする技術を提供する。
【0010】
また、魚類やその干物のように匂いの強い食品の場合、その匂い対策が必要となるため、個人での持ち運びや冷蔵庫での保管などには消極的になることも多々あった。
そこで、本発明は、このような食材について個人での持ち運びや冷蔵庫での保管においても扱いやすい商品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための本発明は、食品用の包装体であって、食材の収納空間を有する容器と、マイクロ波の吸収により発熱して前記食材を加熱する発熱体とを備え、前記容器は、食材の収納用開口部と、その開口部を閉じる蓋部とを有し、前記容器の内面は、前記食材を囲む曲面に形成されていることを特徴とする。
このような包装体は、電子レンジで食材を調理する際に用いる包装体として極めて好適である。このような包装体を用いることにより、焼き調理と蒸し調理を同時に行うことができ、包装体に収納される食材の表面には焦げ目或いはクリスピー性を付与することができ、加えて、食材の内部は、水分を含ませながらふっくらと仕上げることができる。
また、本発明では、容器の内面は、食材を囲む曲面に形成してあるので、曲面に沿って熱や水蒸気を積極的に対流させることが可能になる。したがって、食材の片面側に発熱体を配置した場合でも、食材全体の加熱調理を良好に仕上げることができる。
また、このような包装体は、食材を開口部から容器内に収納して蓋部で閉じるものであるため、熱の分散が少なく効率よく加熱調理を行うことができ、また臭いの放出も抑制できるものである。さらに、蓋部を有することから、冷凍食品、チルド食品等の包装体として価値が高く、流通、保管にも適したものである。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記容器は、紙又は樹脂、若しくはそれらの複合材で形成されていることを特徴とする。
例えば容器を紙で形成する場合、包装用ピローケースのように組み立てが簡易で安価な容器とすることができる。特に、紙は断熱性に優れているので、少し厚めにすることで、電子レンジによる加熱調理を効果的に行うことができる。また、組み立て式とすることで、加熱調理時の水蒸気を容器内に適度に保持する程度の密閉性(若干の通気性)も容易に確保することができる。換言すれば、加熱調理時の容器の内圧調整機能を有する程度の若干の通気性を容易に確保することができる。したがって、高い気密性を必要としない食材の包装体として好適に採用することができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記容器に、前記収納空間と外部との間の圧力調整部が設けられていることを特徴とする。
この圧力調整部は、加熱調理時における前記収納空間の内圧が、容器が破損しないという目的で設定された圧力(設定圧力)を超えた際に、収納空間内の気体を外部に逃がす機能を発揮する。この設定圧力は、容器の強度や気密性に応じて設定される。特に、この圧力調整部は、容器が組み立て式でない場合に好適に設けられる。容器が組み立て式でない場合には、容器の気密性が高く、収納空間の内圧が容器の強度以上に上昇するからである。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記発熱体が、前記容器の内面に沿って湾曲していることを特徴とする。
このように発熱体も湾曲させることで、発熱体を食材の表面に広くかつ、より均一に接触させたり、食材の表面から均等な間隔で離間させたりすることができる。これにより、食材の加熱効果や焼き上げ効果が食材に対し均一に、確実に発揮される構成とすることができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記発熱体が、前記容器の内面に設けられていることを特徴とする。
発熱体を容器の内面に設けることで、容器と発熱体を一体化してシンプルな構成とすることができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記発熱体は、吸液性のある基材と、基材上に設けられた発熱層と、発熱層の上に設けられた保護層とを備えていることを特徴とする。
このように構成した場合、食材から出るドリップや調理汁、油分等の液体を発熱体に設けてある吸液性のある基材に吸収させることで、食材の流通、保管、展示時の状態、及び食材の調理後の状態などをより美麗に保つことが可能になる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記発熱体が、前記収納空間内に収納される食材の下又は上の何れか一方に配置されることを特徴とする。
発熱体を収納空間内の食材の下に配置した場合、収納空間内の食材を効果的に加熱することができる。即ち、発熱体からの熱は食材を直接加熱しつつ、収納空間内の上方へ向かうが、収納空間の内面は前述のように食材を囲む曲面に形成されているので、この曲面に沿って上方へ向かい、そこからさらに下方へと向かい発熱体と食材との間にも供給される。このようにして、収納空間内での熱の循環作用が生じるので、加熱効果が格段に高まることになる。また、容器の内面が曲面に形成されているので、発熱体を食材の上に配置した場合でも、収納空間内での熱の循環作用が活発に行われる。また、食材の上及び下の何れか一方に発熱体を配置することにより、発熱体を両方に配置した場合の発熱体間のスパークを防ぐことができる。また、このような配置により、焼き調理と蒸し調理をバランスよく両立することが可能となる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記容器に、その容器内を見るための窓部が設けられていることを特徴とする。
このように、容器に対して内部を見る窓部を設けた場合、内部に収納する食材を外から見ることができるので、食材の確認や選定を容易に、かつ大変便利に行うことができる。
【0019】
前記課題を解決するための本発明は、包装体入り食品であって、上記に記載の包装体と、その包装体内に収納された食品と、を備え、前記発熱体は、前記包装体の内面と前記食品との間に位置していることを特徴とする。
このような包装体入り食品を電子レンジで加熱することにより、包装体内部の食材に対し、焼き調理と蒸し調理を同時に行うことができ、包装体内の食材の表面には焦げ目或いはクリスピー性を付与することができ、加えて食材の内部をふっくらと仕上げることができる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記食品を収納した包装体の外側を気密性のある袋で被覆してあることを特徴とする。
このような包装体入り食品は、気密性が保持された状態で、冷凍食品やチルド食品等として、流通させ、保管することが可能である。そのため、消費者は、持ち運び時、保管時に食材から臭いが発生することを気にする必要がない。また、包装体入り食品を購入した消費者は、これをそのまま電子レンジ調理に供することができる。あるいは、気密性のある外袋から容器を出してから、その容器ごと電子レンジ調理に供することができる。したがって、加熱調理に先立ち、食材に直接触れる必要がないため、衛生的に簡便に食材を加熱調理することが可能となる。
【0021】
本発明の好ましい形態では、上記に記載の包装体入り食品を、前記容器の開口部を閉じた状態を保持しながら電子レンジで加熱することを特徴とする。
このような調理方法によれば、容器の適度な密閉性を生かして、焼き調理と蒸し調理を適切な時間で効率的に行うことができる。
【0022】
前記課題を解決するための本発明は、マイクロ波を用いた食材の調理方法であって、
マイクロ波を発熱体に照射することにより発熱体から発熱させ、該発熱により食材表面を高温加熱する工程と、マイクロ波を食材に照射することにより、食材から水蒸気を発生させ、該食材を水蒸気雰囲気下で加熱する工程と、を上記に記載の食品用の包装体内で並行して行うことを特徴とする。
このような調理方法によれば、焼き調理と蒸し調理を同時に簡便にしかも効率的に行うことができ、食材の調理が簡便なものとなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の食品用の包装体は、食材を流通させ、保管するのに必要な包装体として十分な機能を有するのみならず、焼き調理と蒸し調理を簡便に同時に行うための包装体として有用である。特に、容器の内面は、食材を囲む曲面に形成してあるので、曲面に沿って熱や水蒸気を積極的に対流させることが可能になる。したがって、食材の片面側に発熱体を配置した場合でも、食材全体の加熱調理を良好に仕上げることができる。
また、本発明の包装体入り食品を、包装体のまま電子レンジで加熱することにより、包装体内の食材の表面には焦げ目或いはクリスピー性を付与することができ、加えて食材の内部をふっくらと仕上げることができる。
また、本発明の包装体入り食品は、冷凍食品、チルド食品として、流通させることが可能であり、消費者は購入した包装体入り食品をそのまま電子レンジ調理に供することができるため、衛生的に簡便に食材を調理することが可能となる。
さらに、本発明の調理方法を用いることにより、焼き調理と蒸し調理を同時に簡便に行うことができ、食材の表面には焦げ目或いはクリスピー性を付与することができ、加えて食材の内部をふっくらと仕上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態1に係る食品用包装体の開封後の状態を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る食品用包装体の開封前の状態を示す概略斜視図である。
【図3】本発明の実施形態1係る食品用包装体の断面図である。
【図4】本発明の実施形態1係る食品用包装体の平面図である。
【図5】本発明の実施形態1係る食品用包装体の発熱体の概略斜視図である。
【図6】本発明の実施形態1係る食品用包装体の発熱体の拡大断面図である。
【図7】本発明の実施形態2に係る発熱体の他の例を示す平面図である。
【図8】本発明の実施形態2に係る発熱体の他の例を示す拡大断面図である。
【図9】本発明の実施形態3に係る包装体入り食品の例を示す平面図である。
【図10】本発明の実施形態3に係る包装体入り食品の他の例を示す端面図である。
【図11】本発明の実施形態4に係る平面図である。
【図12】本発明の実施形態4に係る食品用包装体の一部展開平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図1〜図12を参照して説明する。
<実施形態1>
本発明の実施形態に係る食品用の包装体1は、図1〜図6に示すように、食材2の収納空間60を有する容器6と、マイクロ波の吸収により発熱して食材2を加熱する発熱体4とを備えている。容器6は、食材2の収納用開口部61と、その開口部61を開閉可能な蓋部62とを有している。容器6の内面は、図1及び図3に示すように、食材2を囲む曲面に形成されている。
【0026】
食材2としては、魚類、肉類、野菜類、穀類、或いはその加工品等、加熱調理され得るあらゆる食材が挙げられる。食材としては、焼き調理と蒸し調理を同時に行う調理方法で食されるものであることが特に好ましい。このような食材としては、魚、肉、野菜等の生鮮食品、焼きおにぎり、漬け魚、漬け肉、干物等の半加工食品が挙げられる。
【0027】
図1は、実施形態1に係る食品用包装体の開封後の状態を示す概略斜視図であり、図2は開封前の状態を示す概略斜視図である。図示例の容器6は、いわゆる包装用のピローケースタイプとして構成されている。この容器6は、組み立てた状態で、底面部63と、天面部64と、蓋部62、62で形成される両側の端面部と、を有する扁平な箱型に形成されている。容器6は、全体として耐熱加工の施された紙(耐熱紙)で形成されている。紙の厚さとしては特に限定されないが、必要な断熱性や形状保持性等を持たせる観点から、0.2〜2.0mm程度、好ましくは0.3〜1.0mm程度のものが採用されている。紙の厚さについては、食材2の種類や大きさによって適宜設定される。
【0028】
このように、容器6を紙で形成した場合、包装用ピローケースのように組み立てが簡易で安価な容器とすることができる。特に、紙は断熱性に優れているので、少し厚めにすることで、電子レンジによる加熱調理を効果的に行うことができる。また、組み立て式とすることで、加熱調理時の水蒸気を容器内に適度に保持する程度の密閉性(適度な通気性)も容易に確保することができる。したがって、高い気密性を必要としない食材の包装体として好適に採用することができる。
なお、この容器6を形成する素材としては、紙に限らず、樹脂製シート、あるいは紙と樹脂とを積層した複合材からなるシート、などを用いることもできる。
【0029】
容器6の両側の端面部を構成する蓋部62、62は、図4においてそれぞれ破線で示す内蓋62aと実線で示す外蓋62bの二重蓋構造となっている。これら内蓋62aと外蓋62bは糊付けしても良い。糊付けした場合、容器6が組み立て式であっても、収納空間60の気密性を高めることができる。図3において6cは容器6を組み立てるのに利用する糊代部分を示している。
【0030】
容器6の底面部63と、天面部64は、食材2を囲む円弧状の曲面に形成されている。そして、容器6の天面部64には、図1及び図2に示すように、食材2の取出し開口部65を形成するための切取り線66が設けられている。つまみ64aを引っ張り、切取り線66の部分に沿って天面部64を破断させることで、図1及び図4に示すような、ほぼ矩形の取出し開口部65を形成することができる。これにより、容器6には、図1及び図4に示すように、天面部64の切り起し片64bが形成される。切取り線66は、切り取り前には気密性を保持できるような構造とすることが好ましい。例えば、切取り線部分を薄肉にする方法を採用することができる。また、切取り線をミシン目で形成し、そのミシン目部分を気密性のフィルムでシールする方法などを採用することができる。
【0031】
容器6には、図1及び図2に示すように、収納空間60と外部との間の圧力調整部が設けられている。この圧力調整部は、半円状に切り欠いた指掛け部6aにより形成することもできる。また、切取り線66により形成することもできる。また、別途に設けた専用の通気孔6b等により形成することもできる。但し、圧力調整部は、発熱体と対向する面(本実施形態では天面部64)には設けないことが好ましい。これにより、食材の加熱により生じた水蒸気を収納空間60の下方へ導くことができ、蒸し調理を効果的に行うことができる。
【0032】
このように、収納空間60と外部との間の圧力調整部を容器6に設けることで、その圧力調整部の大きさや通気機能について、容器6内に収納する食材2に適するように任意に設定することができる。したがって、この通気機能は、容器6が組み立て式か否かに左右されることがない。また、この通気機能は、加熱調理時における容器6の内圧調整機能も発揮する。
【0033】
容器6の底面部63の内面には、発熱体4が設けられている。本実施形態では、図1及び図3に示すように、シート状の発熱体4(発熱シート)が容器6の底面に貼り付けられている。なお、発熱体4は、複数備えられていてもよいし、その形状も制限されない。また、発熱体4は、底面部63、天面部64、端面部(蓋部62)の何れに備えられていてもよい。
【0034】
発熱体4は、マイクロ波を吸収することで発熱する。発熱温度としては、焼き調理が可能である限り特に制限されないが、好ましくは食材表面にクリスピー性乃至は焦げ目を付与することができる温度である。具体的には120〜250℃程度、好ましくは170〜250℃程度である。
【0035】
発熱体4について、図5及び図6を用いてより詳細に説明する。発熱体4は、この実施形態では、シート状基材41の表面に、金属蒸着膜からなる発熱層42を設け、さらにその表面にプラスチックフィルムからなる被覆層43を設けた構成となっている。
【0036】
シート状基材41は、コーティング等の表面処理が施された厚紙で形成され、金属蒸着膜42からの熱が容器6の底面部63に直接伝導するのを抑制すると共に、発熱体4全体の曲げに対する変形率を小さくしている。これにより、電子レンジで加熱した際に、発熱体4が変形することを極力防ぎ、食材表面に対する発熱体の隣接度合い(距離)を維持し、食材表面の焼きむらを抑制する。被覆層43は発熱層42が食材2に直接触れないようにする機能も発揮する。なお、シート状基材として、プラスチック基材を用いることも可能である。
また、シート状基材41には、容器6の長辺方向に沿って、スリットを設けることも好ましい。これにより、図2において、容器6の底面部と天面部との境界部分に相当する長辺部分を両側から手で押圧することにより、発熱体4を有する底面部が、スリットを起点に変形し、中味の調理品を簡単に発熱体から剥離することができる。このような観点から、容器6を構成する素材は、手による押圧によって変形可能な、柔軟なものであることが好ましい。
【0037】
また、発熱層42を形成する金属蒸着膜は、アルミニウムで形成されている。金属蒸着膜を形成する金属としては、ニッケル、金、銀、亜鉛、白金等を用いることもできる。なお、上述した温度を発生する材料であれば、発熱体に使用することができることはいうまでもなく、炭素系導電性粉体、金属系導電性粉体、又はこれらの混合粉体等を用いることができる。金属蒸着膜の製造方法については公知の方法を用いればよい。
【0038】
また、プラスチックフィルムからなる被覆層43は、ポリエチレンテレフタレート(PET)で形成されている。被覆層43は、発熱層42からの熱に対して溶融しない材料で形成されていればよい。なお、この被覆層43は設けなくても良い。
【0039】
本実施形態において、発熱体4は、容器6の底面部63の内面に沿って湾曲するように配置されている。このように発熱体4も湾曲させることで、発熱体4を食材2の表面に広くかつ、より均一に接触させることができるからである。これにより、食材2の加熱効果や焼き上げ効果をより確実に発揮させる構成とすることができる。
【0040】
この場合、発熱体4を、容器6の底面部63の内面に直接設けたり、貼り付けたりすることもできる。発熱体4を容器6の内面に設けることで、容器6と発熱体4を一体化することができ、その分、シンプルな構成とすることができる。
【0041】
また、本実施形態では、特に好適な例として、図3に示すように、発熱体4を、収納空間60内の食材2の下に配置している。このように、発熱体4を収納空間60内の食材2の下に配置することで、収納空間60内の食材2を効果的に加熱することができる。即ち、発熱体4からの熱は食材2を直接加熱しつつ、収納空間60内の上方へ向かうが、収納空間60の内面は食材2を囲む円弧状の曲面に形成されているので、この曲面に沿って上方へ向かい、そこからさらに下方へと向かい発熱体4と食材2との間にも供給される。このようにして、収納空間60内での熱の循環作用が生じるので、加熱効果が格段に高まることになる。
【0042】
また、容器6の底面部63及び天面部64の内面が、食材2を囲むように断面円弧状に湾曲する曲面に形成されているので、発熱体4を食材2の上に配置した場合でも、収納空間60内での熱の循環作用が活発に行われる。これにより、食材2の加熱効果を高めることができる。
【0043】
ここまで、食品用の包装体の実施形態について説明したが、図3に示すように、この食品用の包装体1と食材2とで、包装体入り食品10が構成される。包装体入り食品10は、容器6の収納用開口部61から収納空間60内に発熱体4と食材2とを収納したのち、開口部61の蓋部62を閉じることにより得られる。発熱体4が容器6の内面に設けられている場合には、食材2のみを収納すれば良い。
【0044】
本実施形態の包装体入り食品10は、そのまま電子レンジで加熱することができる。この加熱は、蓋部62周囲の隙間や切取り線66等の圧力調整部により容器6に若干の通気性を付与した状態で行うことが望ましい。これにより、容器6の内圧が大きくならない程度の適度な密閉性を保持しながら加熱調理することができるからである。密閉性は、必要な加熱が終了する間保持されていてもよいし、所定時間が経過した時点で解除されてもよい。なお、ここでの密閉性とは、加熱による容器6内の内圧が高くなり過ぎない範囲で熱や水蒸気を容器6内にある程度閉じ込めておくことができることを言う。したがって、この密閉性の程度は、食材の種類に応じて、適宜設定される。
【0045】
包装体入り食品10を電子レンジで加熱すると、電子レンジが発生するマイクロ波が、発熱体4の発熱層42に照射され、吸収されることにより、発熱層42が発熱し、発熱体4に近接した食材2の表面が高温で加熱される。それと同時に、マイクロ波は食材にも照射され、吸収されることにより、食材から水蒸気が発生する。これにより、容器6の内部は水蒸気で満たされ、食材は水蒸気で包み込まれた状態で加熱される。
【0046】
この際、図3に示すように、容器6の底面部63及び天面部64の内面が、食材2を囲むように断面円弧状に湾曲する曲面に形成されているので、収納空間60内での熱や水蒸気の循環作用が活発に行われる。これにより、食材2の加熱効果を高めることができる。
このように、本実施形態の包装体入り食品10を、電子レンジを用いて加熱すれば、食材2に対し焼き調理と蒸し調理を同時に行うことができ、非常に美味しい料理を簡便に作ることができるのである。
【0047】
包装体入り食品10は、例えば、焼き魚、ステーキ、焼き野菜等の焼き物のほか、食材表面は十分に焼き調理がされていて食材内部は一定のレア状態のタタキ等を調理する物として構成することができる。食材内部を一定のレア状態とするためには、容器6の適度な密閉性を利用したり、電子レンジのマイクロ波の発生を適当な時間に停止し、余熱を用いて調理したりすることにより達成することができる。
【0048】
<実施形態2>
図7及び図8は、実施形態1において説明した発熱体4の他の実施形態を示す平面図及び拡大断面図である。なお、これらの図において、図1〜図6と基本的に同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。
【0049】
本実施形態の発熱体4は、吸液性シートで形成された基材41の表面に、金属膜からなる発熱層42を設け、さらにその表面にプラスチックフィルムからなる保護層43を設けた構成となっている。なお、製造過程においては、プラスチックフィルムからなる保護層43の片面に発熱層42を設け、その発熱層42を、基材41の表面に接着剤(図示せず)を介して貼り付けるといった方法が採用される場合もある。
【0050】
発熱層42は、図7の平面図で示すようにメッシュ状(格子状)に形成されている。これにより発熱層42は平面で見て、連続部と不連続部とを有している。即ち、連続部は縦横に延びる線や多数のマス目を形成する線としての格子状の部分である。不連続部は、図7において白抜き表示された多数の矩形空間部分(孔5b)である。これらの矩形空間部分5bは発熱層42が形成されていない不連続部となっている。これにより、連通部5は、保護層43に設けられた孔5aと、発熱層42に設けられた矩形空間の孔5bとにより形成されている。
【0051】
なお、保護層43に設けられた孔5aは、発熱層42に設けられた矩形空間の孔5bよりも小さく形成されている。この結果、保護層43が格子状の発熱層42の表面を確実かつ十分に覆う構成となっている。
【0052】
吸液性シートからなる基材41の下面は、コーティング等の表面処理が施され、発熱層42からの容器6に直接伝導するのを抑制すると共に、発熱体4全体の曲げに対する変形率を小さくしている。これにより、電子レンジで加熱した際に、発熱体4全体の熱による変形を抑制し、食材表面に対する発熱体の隣接度合い(距離)を維持し、食材表面の焼きむらを抑制する。保護層43は発熱層42が食材2に直接触れないようにする機能も発揮する。なお、吸液性シートとして、吸液性のプラスチック基材を用いることも可能である。
【0053】
また、金属膜からなる発熱層42は、アルミニウムで形成されている。なお、発熱層42を形成する金属としては、実施形態1の場合と同様に、ニッケル、金、銀、亜鉛、白金等を用いることもできる。さらに、炭素系導電性粉体、金属系導電性粉体、又はこれらの混合粉体等を用いることもできる。なお、メッシュ状金属膜の製造方法については、公知の方法を用いればよい。例えば、印刷技術の応用や半導体製造工程において多用されるエッチング技術の応用などにより、容易に形成することができる。
【0054】
また、プラスチックフィルムからなる保護層43は、ポリエチレンテレフタレート(PET)で形成されている。保護層43は、金属膜42からの熱に対して溶融しない材料で形成されていればよい。
【0055】
この実施形態2によれば、食材2から出る焼き汁等の液体は、連通部5を構成する保護層43の孔5aから発熱層42の孔5bを通って、吸液性シートからなる基材41の上に滴下し、その内部に吸収される。
【0056】
さらに、格子状の発熱層42で囲まれた各矩形空間5bにおいては、その矩形状に囲む発熱層42からの放射熱が充満する。これにより、各矩形空間5b内に対応する食材部分は焦げ目なくふっくらと焼き上げることが可能になる。
【0057】
また、例えば魚介類や肉類を含む生鮮食品等においては、調理までの保管時、流通時、展示解凍時、展示時などにおいて、ドリップや血液、内臓汁等の液体が流出して包装体内に溜まる場合があった。この液体は包装体が透明の場合に外観を損なう恐れがあり、好ましくなかったが、本実施形態では、吸液性シートからなる基材41を備えているので、こうした問題も同時に解決することができる。
【0058】
<実施形態3>
図9及び図10は、本発明の実施形態3に係る平面図及び側面図である。なお、同図において、図1〜図6の実施形態1と基本的に同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。
この実施形態3では、包装体1に食材を収納した、包装体入り食品10の外側を気密性のある袋7で被覆した構成としたものである。袋7としては、広く流通している包装用の袋であれば、特に制限されることなく使用することができる。袋の材質もプラスチックフィルムやシートの他に、紙、布、あるいはそれらの複合材からなるものも採用することができる。なお、この実施形態3の容器6においては、調理後の食材の取出し用開口部を形成するための切取り線68が設けられている。
【0059】
このような包装体入り食品10は、袋7により気密性を保持した状態で、冷凍食品やチルド食品等として、流通させ、保管することが可能である。そのため、消費者は、持ち運び時、保管時に食材から臭いが発生することを気にする必要がない。また、包装体入り食品10を購入した消費者は、これをそのまま電子レンジ調理に供することができる。あるいは、気密性のある外袋7から容器6を出してから、その容器6ごと電子レンジ調理に供することができる。したがって、加熱調理に先立ち、食材2に直接触れる必要がないため、衛生的に簡便に食材2を加熱調理することが可能となる。
なお、袋7は気密性や液密性を有するものが好ましいが、食材2の種類や状態によっては、気密性、液密性が多少低下する素材からなるものでも採用することができる。
【0060】
<実施形態4>
図11及び図12は、本発明の実施形態4に係る平面図である。図12では説明の便宜上、蓋部を展開して示してある。なお、図11及び図12において、図1〜図10の各実施形態と基本的に同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。
【0061】
この実施形態4では、食材2を収納する包装体1の容器6における天面部64に、食材2を外から(上から)見ることができる窓部8を設けた構成としたものである。さらに、この実施形態4では、食材2の取出し開口を容器6に形成するための切取り線として、容器6の長手方向に沿って延びる1条の切取り線80を形成してある。
【0062】
窓部8は、天面部64の中央部に形成した長穴形状の切り抜き孔81と、この切り抜き孔81を気密に閉じるように、天面部64の裏面から貼り付けた透明シート82とにより形成されている。透明シート82としては、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)等の耐熱性のある樹脂シートが好適に用いられる。
窓部8の大きさや形状については任意であるが、より大きいほど内部の食材2をよく見ることができる点で好ましい。
【0063】
切取り線80は、容器6の天面部64を容器6の長さ方向に延び、さらに容器6の両側の蓋部62、62の端まで延びている。この構成により、天面部64を、一方の蓋部62から他方の蓋部62に向かって手指で切断することで、大きな取出し開口部を容易に形成することができる。特に、1条の切取り線80を、両側の蓋部62、62の端まで延びる構成としたので、どちらの蓋部62側からでも、容易に切断することができる。
なお、この窓部8としては、図示例では、天面部64に1つ設けた例を示しているが、複数設けてもよい。また、窓部8を設ける箇所として、天面部64に限らず、蓋部62に設けることもできる。
【符号の説明】
【0064】
1 食品用の包装体
2 食材
4 発熱体
41 基材
42 発熱層
43 被覆層
5 連通部
5a 保護層の孔
5b 発熱層の孔
6 容器
60 収納空間
61 開口部
62 蓋部
63 底面部
64 天面部
65 取出し用開口部
66 切取り線
7 袋
8 窓部
80 切取り線
81 切り抜き孔
82 透明シート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品用の包装体であって、
食材の収納空間を有する容器と、
マイクロ波の吸収により発熱して前記食材を加熱する発熱体と、を備え、
前記容器は、食材の収納用開口部と、その開口部を閉じる蓋部と、を有し、
前記容器の内面の少なくとも一部は、前記食材を囲む曲面に形成されていることを特徴とする、食品用の包装体。
【請求項2】
前記容器は、紙又は樹脂、若しくはそれらの複合材で形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の食品用の包装体。
【請求項3】
前記容器には、前記収納空間と外部との間の圧力調整部が設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の食品用の包装体。
【請求項4】
前記発熱体は、前記容器の内面に沿って湾曲していることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の食品用の包装体。
【請求項5】
前記発熱体は、前記容器の内面に設けられていることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の食品用の包装体。
【請求項6】
前記発熱体は、吸液性のある基材と、基材上に設けられた発熱層と、発熱層の上に設けられた保護層とを備えていることを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載の食品用の包装体。
【請求項7】
前記発熱体は、前記収納空間内に収納される食材の下又は上の何れか一方に配置されることを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載の食品用の包装体。
【請求項8】
前記容器に、その容器内を見るための窓部が設けられていることを特徴とする、請求項1〜7の何れかに記載の食品用の包装体。
【請求項9】
包装体入り食品であって、
請求項1〜7に記載の包装体と、
その包装体内に収納された食品と、を備え、
前記発熱体は、前記包装体の内面と前記食品との間に位置していることを特徴とする、包装体入り食品。
【請求項10】
前記食品を収納した包装体の外側を気密性のある袋で被覆してあることを特徴とする、請求項9に記載の包装体入り食品。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の包装体入り食品を、前記容器の開口部を閉じた状態を保持しながら電子レンジで加熱することを特徴とする、食材の調理方法。
【請求項12】
マイクロ波を用いた食材の調理方法であって、
マイクロ波を発熱体に照射することにより発熱体から発熱させ、該発熱により食材表面を高温加熱する工程と、
マイクロ波を食材に照射することにより、食材から水蒸気を発生させ、該食材を水蒸気雰囲気下で加熱する工程と、
を請求項1〜8に記載の食品用の包装体内で並行して行うことを特徴とする、食材の調理方法。
【請求項1】
食品用の包装体であって、
食材の収納空間を有する容器と、
マイクロ波の吸収により発熱して前記食材を加熱する発熱体と、を備え、
前記容器は、食材の収納用開口部と、その開口部を閉じる蓋部と、を有し、
前記容器の内面の少なくとも一部は、前記食材を囲む曲面に形成されていることを特徴とする、食品用の包装体。
【請求項2】
前記容器は、紙又は樹脂、若しくはそれらの複合材で形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の食品用の包装体。
【請求項3】
前記容器には、前記収納空間と外部との間の圧力調整部が設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の食品用の包装体。
【請求項4】
前記発熱体は、前記容器の内面に沿って湾曲していることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の食品用の包装体。
【請求項5】
前記発熱体は、前記容器の内面に設けられていることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の食品用の包装体。
【請求項6】
前記発熱体は、吸液性のある基材と、基材上に設けられた発熱層と、発熱層の上に設けられた保護層とを備えていることを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載の食品用の包装体。
【請求項7】
前記発熱体は、前記収納空間内に収納される食材の下又は上の何れか一方に配置されることを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載の食品用の包装体。
【請求項8】
前記容器に、その容器内を見るための窓部が設けられていることを特徴とする、請求項1〜7の何れかに記載の食品用の包装体。
【請求項9】
包装体入り食品であって、
請求項1〜7に記載の包装体と、
その包装体内に収納された食品と、を備え、
前記発熱体は、前記包装体の内面と前記食品との間に位置していることを特徴とする、包装体入り食品。
【請求項10】
前記食品を収納した包装体の外側を気密性のある袋で被覆してあることを特徴とする、請求項9に記載の包装体入り食品。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の包装体入り食品を、前記容器の開口部を閉じた状態を保持しながら電子レンジで加熱することを特徴とする、食材の調理方法。
【請求項12】
マイクロ波を用いた食材の調理方法であって、
マイクロ波を発熱体に照射することにより発熱体から発熱させ、該発熱により食材表面を高温加熱する工程と、
マイクロ波を食材に照射することにより、食材から水蒸気を発生させ、該食材を水蒸気雰囲気下で加熱する工程と、
を請求項1〜8に記載の食品用の包装体内で並行して行うことを特徴とする、食材の調理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−60233(P2013−60233A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238813(P2011−238813)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(510042482)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(510042482)
【Fターム(参考)】
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