説明

食品用カップ

【課題】水や油の拡散が早く、吸水性および吸油性に優れるため、食品の食味を良好に維持し、付形性および保型性がよく、他の食品への味移りを防ぐことができ、さらに、フィルムに印刷する方法で意匠性を付与することができるお弁当用あるいはお弁当用冷凍食品に適した食品カップを提供すること。
【解決手段】側面にひだを有する食品用カップであって、該カップが熱可塑性合成長繊維不織布(A)と熱可塑性フィルム(B)との積層体により形成され、該不織布の目付および厚みがそれぞれ10〜50g/m2および15〜300μmであり、該フィルムの厚みが15〜100μmであり、不織布(A)とフィルム(B)が、不織布面が該カップの内側になるように接着されていることを特徴とする食品用カップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、お弁当などの調理した食品の盛り付け用途などに利用される食品カップに関し、保型性がよく食品の保持力に優れているため持ち運びによる食品の配置崩れがなく、吸水性および吸油性に優れ、食品の風味を維持し、他の料理に味移りすることがない食品カップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、お弁当などの調理した食品の盛り付け用途や味移り防止の目的などにアルミ箔、フィルム、フィルムと紙が積層されたものおよび撥油紙などから作製された食品カップが利用されている。最近はコンビニエンスストア等で販売されているお弁当は電子レンジで温めるため、フィルム製の食品カップが普及している。しかしながら、アルミ箔およびフィルム単体を使用したものは、吸水性および吸油性がないため、食品にべたつき感が残り、食味が落ちるという問題があった。この問題を解決するため、また、吸水性および吸油性を付与するためアルミやフィルムに紙を敷いたものもあるが、食品の食味を維持するには不十分であった。
また、食品の保持力が小さく、ひだ部が広がりやすいため、食品を保持できなかったり、お弁当等を移動するときなどに食品がこぼれて他の食品に接触して味移りがおこるという問題があった。
【0003】
特許文献1には、未延伸ポリエステルフィルムの片面に主としてポリエステル繊維からなる不織布を張り合わせ、不織布が容器の内側になるように成型加工された容器が開示されている。
この容器は一体成型するために不織布が圧着により圧縮されるため、吸水および吸油量が不十分であるという問題点がある。また、一体成型することから、フィルムが延伸されるためフィルムに印刷する方法で意匠性を付与することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−95227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、吸水性および吸油性に優れ、食品の食味を良好に維持し、保型性がよく、食品カップのひだの拡がりによって食品がこぼれるのを防止し、他の食品への味移りを防ぐことができる食品カップを提供することである。さらに、フィルム側に印刷することが出来、意匠性を付与することができる食品カップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記課題を解決するために、合成長繊維不織布とフィルムを積層した食品カップの構成を鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち、本発明は、以下の通りである。
【0007】
(1)側面にひだを有する食品用カップであって、該カップが熱可塑性合成長繊維不織布(A)と熱可塑性フィルム(B)との積層体により形成され、該不織布の目付および厚みがそれぞれ10〜50g/m2および15〜300μmであり、該フィルムの厚みが15〜100μmであり、不織布(A)とフィルム(B)が、不織布面が該カップの内側になるように接着されていることを特徴とする食品用カップ。
(2)熱可塑性合成長繊維不織布が、平均繊維径が10〜30μmである不織布層と平均繊維径が0.5〜5μmのメルトブロウン極細繊維不織布層をそれぞれ少なくとも1層以上含み、熱圧着によって一体化された積層不織布からなり、平均繊維径が10〜30μmである不織布が食品カップの表層側にあることを特徴とする上記(1)に記載の食品用カップ。
(3)食品用カップの下記式で表される形状保持性が1〜1.3であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の食品用カップ。
形状保持性=食品充填後の開口部ひだ部直径/食品充填前の開口部ひだ部直径
(4)不織布(A)とフィルム(B)が、食品カップのひだ部で接着されていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の食品用カップ。
【発明の効果】
【0008】
本発明の食品用カップは、水や油の拡散が早く、吸水性および吸油性に優れるため、食品の食味を良好に維持できる。また、不織布とフィルムの厚みバランスを制御することで付形性および保型性がよく、食品カップのひだが拡がることによって食品がこぼれるのを防止し、他の食品への味移りを防ぐことができる。特に、熱可塑性合成長繊維不織布として平均繊維径の異なる不織布を積層した積層不織布を用いることで、更に優れた拡散性、吸水性および吸油性を発揮し、本発明の効果を向上できる。また、印刷手法によりフィルム側に意匠性を付与することができ、お弁当用あるいはお弁当用冷凍食品に適した食品カップである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の食品カップは、熱可塑性合成長繊維不織布とフィルムの積層体を、不織布面が内側となるようにカップ形状としたものであり、側面にひだが付形されている。カップ開口部の形状としては、円形、楕円形、正方形および長方形など形状は制限されない。ひだ付け加工において、ひだの高さは特に制限されないが、一般的に開口部でひだの山谷間の高さが3mm〜8mmの範囲が好ましい。また、山−山間の間隔、即ちひだ間隔もとくに制限はされないが5mm〜15mmの範囲が好ましい。
【0010】
本発明に用いる合成長繊維不織布を構成する繊維として、ポリエチレン、ポリプロピレンおよび共重合ポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよび共重合ポリエステルなどのポリエステル系繊維、ナイロン−6、ナイロン−66および共重合ナイロンなどのポリアミド系繊維、鞘がポリエチレン、ポリプロピレンおよび共重合ポリエステル、芯がポリプロピレンおよびポリエステルなどの組み合わせから成る芯鞘構造の複合繊維、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートおよびポリエチレンサクシネートなどの生分解性繊維などが用いられる。吸水性および吸油性を両立するためにはポリエステル系繊維を用いることが好ましい。また、揚げ物等の油の多い食品には吸油性に優れたポリオレフィン系繊維が好ましく用いられる。ポリオレフィン繊維に吸水性を付与するためには親水加工が必要になる場合がある。親水加工としては例えばコロナ放電処理がある。
【0011】
熱可塑性合成長繊維不織布は、熱圧着によって一体化された平均繊維径が10〜30μmの単層不織布を用いてもよいが、平均繊維径が0.5〜5μmの極細繊維不織布層と平均繊維径が10〜30μmの長繊維不織布層を含む積層不織布を使用することが好ましい。例えば、表面層(C層)、中間層(D層)および裏面層(E層)のそれぞれ一層以上からなる積層不織布であって、該表面層(C層)と裏面層(E層)の不織布は平均繊維径が10〜30μmの熱可塑性合繊長繊維からなり、該中間層(D層)の不織布は平均繊維径が0.5〜5μmのメルトブロウン極細繊維からなる不織布を使用すると、表面の平均繊維径が10〜30μmの不織布層が水分や油分を拡散し、内側の極細繊維層が水分や油分を保液するためより一層食品に対して水分や油分が濡れ戻ることなく食品の食味を維持する効果が高くなる。極細繊維不織布層の積層方法はこの例に限るものではないが、食品に接する側は平均繊維径が10〜30μmの長繊維不織布であるほうが食品に繊維屑が付着し難い。
【0012】
不織布の役割は、水分および油分の拡散と保液である。極細繊維層は保液の寄与が大きいため、不織布中における混合比は10%〜70%が好ましく、より好ましくは15%〜50%である。
極細繊維層を含む積層不織布は、極細繊維層を含まない不織布に比べて剛性が高いため、形状保持性も向上させることができる。また、極細繊維層を含む積層不織布は、通常の長繊維不織布に比べて均一性が高いため、食品カップ個々の性能ばらつきが小さく、品質面でもより好ましい性能を示す。
【0013】
熱可塑性合成長繊維不織布を接合して積層不織布となす場合の接合手段としては、熱圧着点(ポイントボンディング)法、熱風法、その他溶融成分での接合(ホットメルト剤)法などがあるが、熱圧着点法が好ましい。熱可塑性合成長繊維不織布を熱圧着点法で接合する場合のエンボス比率は5〜20%が好ましく,より好ましくは8%〜15%である。5%より小さいと、食品に繊維が付着し繊維屑が食品に残りやすくなり、また、エンボス比率が20%を超えると吸油量が小さくなる傾向にある。
【0014】
本発明に使用する合成長繊維不織布の目付は10〜50g/m2であることが好ましく、より好ましくは15〜40g/m2である。10g/m2より小さいと吸水および吸油量が不足し、50g/m2より大きいと嵩高くなるため、付形加工時に重ね合わせて加工できる枚数が少なくなり生産性が悪くなる。また合成長繊維不織布の厚みは15〜300μmが好ましく、より好ましくは15〜200μmである。15μmより薄いと吸水および吸油量が不足し、300μmより厚いと食品カップの付形性が悪くなる。
【0015】
本発明に使用する熱可塑性フィルムには、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリエチレンおよび共重合ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリ乳酸および共重合ポリエステルなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66および共重合ナイロンなどのポリアミド系樹脂、エチレン−酢酸ビニール共重合樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、およびポリアミド系エラストマーの単層または2層以上の積層フィルムが用いられる。
【0016】
フィルムの厚みは15〜100μm、好ましくは20〜70μm、より好ましくは25〜50μmである。厚みが15μm未満では、積層する不織布の種類により、きれいに付形できないことがあったり、形状保持性が不十分な場合がある。一方、厚みが100μmを超えると、形状保持性は高くなるが、不織布との貼り合わせ加工および熱付形性が低下し、生産性が落ちる傾向にある。
【0017】
本発明の食品カップの製造法は、熱可塑性合成長繊維不織布とフィルムを重ね合わせて裁断し、そのまま次の熱プレス工程に付すことができる。無溶剤接着剤等を用いて常法でフィルムと不織布を接着したのち、適当な大きさに切断し、熱プレス工程で所定の形状に付形することにより本発明の食品カップを得ることができる。しかし、あらかじめ接着剤等で接着したのち付形加工するよりも、付形加工時に同時に熱接着するほうがより効率的に生産できるため好ましい。
【0018】
熱プレス工程の際は必要に応じて複数枚重ねて付形してもよく、重ね合わせる枚数が多いほど生産性が向上する。熱プレスによる付形加工の条件は一般的なものを使用することができる。例えば、熱プレス機の雄型または雌型の少なくとも一方を、使用する材質にあわせて100℃から180℃程度に加熱し、1〜10秒間程度熱プレスすればよい。
【0019】
この際、使用する不織布として、高融点成分からなるポリエステル系繊維層と、該高融点成分からなるポリエステル繊維層の融点より30℃以上低い低融点成分を含むポリエステル系繊維層とを積層して熱圧着で一体化した積層不織布を用いると、フィルムと容易に熱接着することができ、尚一層好ましい。長繊維不織布が上述の積層不織布の場合には、表面層または裏面層のいずれか一方が低融点成分を含む層であり、低融点成分を含む層とフィルムが重なるように積層すると接着剤を使用することなしに熱接着で簡単にフィルムと不織布を接着することができ、複数枚の食品カップを同時に熱圧着で付形しても、一枚ずつはがしやすく生産性に影響を与えることが無い。
また、吸油性および吸水性の観点から側面のみの接着で、底面は接着していない方が、フィルム層と不織布層の間に水及び油を保持することができ、より吸水および吸油量を多くすることができる。
【0020】
食品カップの形状保持性は、後述の実施例に示した評価方法で評価することができる。食品カップの形状が円形の場合は食品充填前後における直径の増加率で、楕円の場合は食品充填前後における長径および短径の平均増加率で、方形の場合は食品充填前後における縦および横の辺の長さの平均増加率でそれぞれ評価することができる。
【0021】
上記方法で評価した場合、形状保持率は1〜1.3が好ましく、1〜1.2がより好ましく、1に近似するほど優れた形状保持性を有する。形状保持率が1.3を超えると食品の種類といれる量によっては、その重量に耐えられず食品カップのひだが広がり、食品がお弁当内にこぼれてしまうリスクが生じる。
【0022】
本発明の食品カップの形状保持性を良好に保つためには、熱可塑性フィルムの厚み(μm)と熱可塑性合成長繊維不織布の厚み(μm)の比(熱可塑性フィルムの厚み/熱可塑性合成長繊維不織布の厚み)は0.15〜0.50の範囲が好ましく、より好ましくは、0.20〜0.35の範囲である。フィルムと不織布の厚みの比がこの範囲であると、フィルムと不織布の双方の剛性が適正範囲となり、優れた形状保持性を与える。
【0023】
フィルムと不織布の積層方法において、ひだ部での側面接着(部分接着)が、形態保持性と吸油性の双方が適切となり、好ましい接合といえる。また、全面接着は、形態保持性には優れるが、吸油性がやや劣る態様といえる。しかし、実務上は問題なく、全面接着も本発明の範囲内である。
【0024】
本発明の食品カップの吸水率は100〜300%の範囲が好ましく、より好ましくは130〜250%の範囲である。 本発明の食品カップの吸油率は400〜1500%の範囲が好ましく、より好ましくは400〜1200%の範囲である。吸水率および吸油率がこの範囲であると、食品カップとして、充分な吸水および吸油性能を有する。
一般に、フィルム層を厚くし、不織布層の厚みを薄くすると、形状安定性は向上するが、吸油性が低下し、両方性能は相反する傾向にある。
【0025】
しかし、本発明においては、熱可塑性合成長繊維不織布として、極細繊維層を含む積層不織布を用いると、極細繊維層が保液の役割をし、極細繊維層で充分な吸水および吸油性能が発揮され、食品に対して濡れ戻ることが無く、形状安定性と吸水および吸油性能との両方を改善でき、食味を維持する効果が高い。
【0026】
食品用カップは意匠性を高めるためや食品を美味しく見せるために色柄等を印刷して付与する場合がある。食品がインキと接触しないようフィルムの内側に印刷される場合が多いが、本発明の食品カップは何ら問題なくフィルムの内側に印刷して付形することができる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例および比較例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
以下の実施例および比較例において、各特性値は下記の方法で測定した。
(1)目付(g/m2):縦25cm×横25cmの試料を3カ所切り取り、重量を測定し、その平均値から求める(JIS−L−1906)。
(2)厚み(μm):JIS−L−1906に準拠して求める。
(3)吸水性:水に10分間浸したのち、1分間カップの淵をピンセットでつかんで水切りし、カップの吸水量を測定する。食品カップの重量に対する水の重量比率で表した。
(4)吸油性:日清食品(株)製サラダオイルを食品カップに入れ、全体に行き渡るように油を浸し、10分間浸したのち、カップの淵をピンセットでつかんで1分間油切りし、カップの吸油量を測定する。食品カップの重量に対する油の重量比率で表した。
(5)吸水・吸油速度(水油混合品拡散性):日清食品(株)製サラダオイルと水を1:1で混合し、よく振り混ぜて乳化させた後、0.1ccをマイクロピペッターで計り取り、食品カップの内側に滴下し、3分後に濡れ広がった面積を測定した。N=3の平均値で示した。
(6)油の濡れ戻り性:日清食品(株)製サラダオイルを0.1cc食品カップに滴下し、10分後にあらかじめ重量を測定した直径3cmの円形に切り抜いた濾紙をおき、その上に5g/cm2の荷重を負荷する。30秒後に荷重を取り除き、油を吸った濾紙の重量を測定し、吸い取った油の量を算出した。
(7)形状保持性:カップに小豆をすりきりいっぱい入れ、上部ひだ部の開き率を測定する。即ち、小豆充填前後における開口部ひだ部直径(外側山−山間の直径)に基づいて、下記式により算出した。本発明の実施例および比較例の食品カップの試験には大納言小豆50gを使用して試験した。
形状保持性=小豆充填後の開口部ひだ部直径/小豆充填前の開口部ひだ部直径
(8)平均繊維径(μm)
生産された不織布の両端部10cmを除き、幅方向にほぼ5等分して1cm角の試験片をサンプリングし、電子顕微鏡で繊維の直径を各20点ずつ測定し、その平均値を記載した。
【0028】
以下の実施例および比較例において、食品カップの製造は特別に記載した事項を除いて以下のとおり行なった。熱可塑性合成長繊維不織布とフィルムを重ね合わせ直径10cmの円形シートに裁断し、不織布が内側になるよう金型に設置し、150℃で2秒間付形加工した。金型は雌型および雄型からなり、雌型を加熱することにより熱圧着付形できるようになっており、カップ側面のひだ部で不織布とフィルムが接合される。出来上がった食品カップは底面が直径4cmの円形であり、ひだ数は26個で、開口部の直径は6.5cm(外側山−山間測定)、開口部の各ひだの山谷間高さは5mmであった。
【0029】
[実施例1]
平均繊維径が14μm、目付が20g/m2のポリエチレンテレフタレート長繊維不織布(旭化成せんい(株)製エルタス:エンボス比率11%)とポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み30μm)を重ね合わせ、10cmの円形に打ち抜き、この積層体を熱プレス加工機に設置し、不織布側が内側になるようにして、熱プレスすることにより底面が4cmの食品用カップを製造した。用いた不織布およびフィルムの特性と得られた食品用カップの評価結果を表1に示す。
【0030】
[実施例2]
不織布として、表面層/中間層/裏面層の質量比が1.7/1/1.7である3層からなり、中間層の不織布が平均繊維径1.8μmのポリエチレンテレフタレートメルトブロウン極細繊維であり、表面層および裏面層が平均繊維径14μmのポリエチレンテレフタレート長繊維不織布である、厚みが85μm、目付が20g/m2のポリエステル長繊維積層不織布(旭化成せんい(株)製プレシゼ:エンボス比率14%)を用いた以外は実施例1と同様の方法で食品用カップを製造した。用いた不織布およびフィルムの特性と得られた食品用カップの評価結果を表1に併せて示す。
【0031】
[実施例3]
表面層/中間層/裏面層の質量比が2.5/1/2.5の3層からなり、中間層の不織布が平均繊維径1.8μmのポリエチレンテレフタレートメルトブロウン極細繊維であり、表面層および裏面層が平均繊維径14μmのポリエチレンテレフタレート長繊維不織布であり、融点が206℃でポリエチレンテレフタレート繊維層の融点より約50℃低い共重合ポリエチレンテレフタレートを鞘部とし、ポリエチレンテレフタレートを芯部とする鞘芯構造の繊維からなる層を裏面層に積層して熱圧着で一体化した、厚みが94μm、目付が20g/m2の積層不織布(旭化成せんい(株)製プレシゼαシール:エンボス比率14%)を用い、低融点繊維層を含む側がフィルムと接するように重ね合わせて実施例1と同様の方法で積層成型した食品用カップを製造した。用いた不織布およびフィルムの特性と得られた食品用カップの評価結果を表1に併せて示す。
【0032】
[実施例4]
平均繊維径が14μm、目付が20g/m2のポリエチレンテレフタレート長繊維不織布(旭化成せんい(株)製エルタス:エンボス比率11%)とポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み30μm)をあらかじめ接着剤で張り合わせた後、10cmの円形に打ち抜き、この積層体を熱プレス加工機に設置し、不織布側が内側になるようにして、熱プレスすることにより底面が4cmの食品用カップを製造した。用いた不織布およびフィルムの特性と得られた食品用カップの評価結果を表1に併せて示す。
【0033】
[実施例5]
平均繊維径が14μm、目付が25g/m2のポリエチレンテレフタレート長繊維不織布(旭化成せんい(株)製エルタス:エンボス比率11%)とポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み25μm)を重ね合わせ、10cmの円形に打ち抜き、この積層体を熱プレス加工機に設置し、不織布側が内側になるようにして、熱プレスすることにより底面が4cmの食品用カップを製造した。用いた不織布およびフィルムの特性と得られた食品用カップの評価結果を表1に併せて示す。
【0034】
[実施例6]
平均繊維径が14μm、目付が12g/m2のポリエチレンテレフタレート長繊維不織布(旭化成せんい(株)製エルタス:エンボス比率11%)とポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み30μm)を重ね合わせ、実施例1と同様の方法で食品用カップを製造した。用いた不織布およびフィルムの特性と得られた食品用カップの評価結果を表1に併せて示す。
【0035】
[実施例7]
平均繊維径が19μm、目付が15g/m2のポリプロピレン長繊維不織布(旭化成せんい(株)製エルタス:エンボス比率8%)と平均繊維径が2.5μm、目付が10g/m2のポリプロピレンメルトブロウン極細繊維不織布をエンボスロールで熱圧着し、室温22℃の雰囲気化にて放電量45W・min/m2(放電度4.0W/cm2)の条件でコロナ放電処理を行い、濡れ張力が39mN/mである不織布積層体をえた。該不織布積層体を長繊維不織布側が表に、極細繊維層がフィルム側になるようにポリプロピレンフィルム(厚み25μm)と重ね合わせ、不織布側が内側になるように熱プレスして底面が4cmの食品カップを製造した。用いた不織布およびフィルムの特性と得られた食品用カップの評価結果を表1に併せて示す。
【0036】
[実施例8]
実施例7と同様のコロナ処理を行った、平均繊維径が19μm、目付が25g/m2のポリプロピレン長繊維不織布(旭化成せんい(株)製エルタス:エンボス比率8%)とポリプロピレンフィルム(厚み25μm)とを重ね合わせ、不織布側が内側になるように熱プレスして底面が4cmの食品カップを製造した。用いた不織布およびフィルムの特性と得られた食品用カップの評価結果を表1に併せて示す。
【0037】
[比較例1]
平均繊維径が14μm、目付が70g/m2のポリエチレンテレフタレート長繊維不織布(旭化成せんい(株)製エルタス:エンボス比率11%)とポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み30μm)を重ね合わせ、実施例1と同様の方法で食品用カップを製造した。できたカップのひだ部にはわずかだが不織布にシワが発生し底面と側面の境界部が鮮明ではなかった。用いた不織布およびフィルムの特性と得られた食品用カップの評価結果を表1に併せて示す。
【0038】
[比較例2]
平均繊維径が14μm、目付が20g/m2のポリエチレンテレフタレート長繊維不織布(旭化成せんい(株)製エルタス:エンボス比率11%)とポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)を重ね合わせ、実施例1と同様の方法で食品用カップを製造した。用いた不織布およびフィルムの特性と得られた食品用カップの評価結果を表1に併せて示す。
【0039】
[比較例3]
実施例7と同様のコロナ処理を行なった、平均繊維径が19μm、目付が70g/m2のポリプロピレン長繊維不織布(旭化成せんい(株)製エルタス:エンボス比率8%)とポリプロピレンフィルム(厚み25μm)を重ね合わせ、実施例1と同様の方法で食品用カップを製造した。用いた不織布およびフィルムの特性と得られた食品用カップの評価結果を表1に併せて示す。
【0040】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の食品用カップは、吸水性および吸油性に優れ、食品の食味を良好に維持し、保型性がよく、食品カップのひだの拡がりによって食品がこぼれるのを防止し、他の食品への味移りを防ぐことができるので、産業上の利用価値は極めて大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面にひだを有する食品用カップであって、該カップが熱可塑性合成長繊維不織布(A)と熱可塑性フィルム(B)との積層体により形成され、該不織布の目付および厚みがそれぞれ10〜50g/m2および15〜300μmであり、該フィルムの厚みが15〜100μmであり、不織布(A)とフィルム(B)が、不織布面が該カップの内側になるように接着されていることを特徴とする食品用カップ。
【請求項2】
熱可塑性合成長繊維不織布が、平均繊維径が10〜30μmである不織布層と平均繊維径が0.5〜5μmのメルトブロウン極細繊維不織布層をそれぞれ少なくとも1層以上含み、熱圧着によって一体化された積層不織布からなり、平均繊維径が10〜30μmである不織布が食品カップの表層側にあることを特徴とする請求項1に記載の食品用カップ。
【請求項3】
食品用カップの下記式で表される形状保持性が1〜1.3であることを特徴とする請求項1又は2に記載の食品用カップ。
形状保持性=食品充填後の開口部ひだ部直径/食品充填前の開口部ひだ部直径
【請求項4】
不織布(A)とフィルム(B)が、食品カップのひだ部で接着されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の食品用カップ。

【公開番号】特開2010−247855(P2010−247855A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98216(P2009−98216)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】