説明

食品用吸収紙及びその製造方法

【課題】ドリップの吸収性能に優れた食品用吸収紙を提供する。
【解決手段】坪量が30〜65g/m2のドライクレープ紙からなり、表面毛羽立ち本数が1500〜2500本であり、かつJIS P 8117に規定される透気抵抗度が0.5〜3.0秒/300mリットルである食品用吸収紙とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の包装等に用いられる食品用吸収紙およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食肉をブロックのまま一時保管する場合、食肉から染み出てくるドリップを吸収させるために紙に包んで保管することが行われている。この保管時の包装に使用される紙としては、ドリップの吸収性能に優れたものが要求されており、単層のクレープ紙の他、多層紙(例えば特許文献1、2参照)も提案されている。
このうち、多層紙は吸収性能を向上させ易い一方で、製造が複雑になる、コストが嵩む等の問題があり、使い捨て用途であることも考慮に入れるとクレープ紙の方が好ましい。また、クレープ紙においては、ドライヤー表面にクレーピングドクターを当てて紙の剥離とクレーピングを行う、つまり乾燥後にクレープを付けるドライクレープと、プレスパートのプレスロールにクレーピングドクターを当てて湿紙の剥離とクレーピングを行う、つまり湿紙の状態でクレープを付けるウェットクレープとがあるが、ドライクレープの方が、食品包装に適した柔らかい紙となるとともに、乾燥効率が高く、生産性が良くなるため好ましい。
しかしながら、従来のドライクレープ紙は吸収性能が低く、ドリップの量によっては吸収しきれずに表面に膜状に残留してしまうことがあった。
【特許文献1】特開2004−330526号公報
【特許文献2】特開平10−296079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明の主たる課題は、ドライクレープ紙からなる食品用吸収紙の吸収性能を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
坪量が30〜65g/m2のドライクレープ紙からなる食品用吸収紙であって、
表面毛羽立ち本数が1500〜2500本であり、かつJIS P 8117に規定される透気抵抗度が0.5〜3.0秒/300mリットルである、ことを特徴とする食品用吸収紙。
【0005】
(作用効果)
クレープ紙は、クレープの程度によって吸収性能を向上させることができるが、その性能向上には限界がある。そこで、本発明では、敢えてクレープ紙の表面毛羽立ちを増加し、毛羽による表面積の増加および毛細管現象により吸収性能を向上させるとともに、透気抵抗度を特定範囲とすることにより、繊維が密になり過ぎることによる吸収性の悪化および通気性が高過ぎることによる食材の乾燥を回避したものである。このことからも判るように、吸収性能の向上に対しては、単に毛羽立ちを増加するだけでは不十分である。
なお、本発明の表面毛羽立ち本数とは、0.1mm以上の毛羽立ち繊維の本数であり、ファイバーライジングテスター(マツボー社製)によって測定できる数値を意味する。ちなみに、本発明の表面毛羽立ち本数は、食品用吸収紙の技術分野において通常想定される範囲と比較すると、著しく多いものである。
【0006】
<請求項2記載の発明>
吸収速度が50〜150秒/50μリットルである、請求項1記載の食品用吸収紙。
【0007】
(作用効果)
吸収速度がこの範囲内にあると、排出されるドリップを移動させることなく、確実に吸収できる。
なお、本発明の吸収速度とは次の方法で測定されるものである。すなわち、サンプルシートをコップの口に載せ、サンプルの周縁部を輪ゴムでコップの口に固定する。スポイトを用いて液体(グリセリン添加により粘度5〜10mpa・S)50μリットルをサンプルの上に高さ8cmの位置から落とし、液滴がサンプル中に完全に吸い込まれる(液滴部分を真上ではなく斜めから見たときに光が反射しなくなる)までの時間をストップウォッチで測定し、吸収速度(秒/50μリットル)とする。
【0008】
<請求項3記載の発明>
JIS P 8117に規定される透気抵抗度が0.5〜3.0秒/300mリットルである、請求項1または2記載の食品用吸収紙。
【0009】
(作用効果)
クレープ深さ及びクレープ間隔がこの範囲内にあると、ドリップを吸収する表面積が十分に確保され、表面毛羽立ちも相まって、より優れた吸収性能が発揮される。
なお、図1に示すように、本発明のクレープ深さaとは、谷部の深さ、つまり隣接する山部の頂点y1と谷部の底点y2との高低差を意味する。また、本発明のクレープ間隔aとは、隣接する山部の頂点y1,y1間距離を意味する。これらは紙の断面を顕微鏡で観察し、任意の部分に関して測定することにより求めることができる。
【0010】
<請求項4記載の発明>
湿紙をヤンキードライヤーに貼り付けて乾燥した後、クレーピングドクターで剥離してクレーピングする工程を経て、食品用吸収紙を製造する方法において、
前記湿紙はドライヤー用剥離剤を0〜0.5kg/t含むようにし、前記湿紙の水分率を5.5〜7.0%とし、かつドライヤー蒸気圧を0.38〜0.55MPaとして前記乾燥を行う、ことを特徴とする食品用吸収紙の製造方法。
【0011】
(作用効果)
本発明の製造方法は、湿紙の水分率を通常レベルに維持しつつ、剥離剤を使用しないか又は少なくすること、およびドライヤー蒸気圧を低く抑えることで、ヤンキードライヤー表面に対する紙の張り付きを強くし、それによって、クレーピングドクターによる剥離時にクレーピングのみならず表面を顕著に毛羽立たせるものである。このような方法を用いることにより、吸収性能に優れた食品用吸収紙を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のとおり本発明によれば、吸収性能に優れるようになる等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について詳説する。
本発明の吸収紙は、パルプ繊維等を紙料として製造することができる。パルプ繊維としては、特に限定されないが、広葉樹パルプを20〜60重量%用い、残量を針葉樹パルプとするのが好ましい。また、古紙パルプ繊維のみや古紙パルプ繊維とパルプ繊維の混合を紙料として製造することもできる。
【0014】
本発明の吸収紙では、必要に応じて各種の添加剤を添加することができ、特に液体を吸収するものであるため、湿潤紙力増強剤を添加するのが好ましい。湿潤紙力増強剤としては、ポリアクリル・エピクロロヒドリン樹脂、ポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂等を用いることができる。
【0015】
本発明は、坪量が30〜65g/m2の紙シート全般を対象とするが、特に坪量が40〜65g/m2のものが好ましい。
【0016】
本発明の吸収紙では、表面毛羽立ち本数が1500〜2500本とされる。特に好ましい範囲は、表面毛羽立ち本数が1800〜2500本である。表面毛羽立ち本数が少なすぎると、表面積が少なくなりまた毛細管現象もおきにくくドリップを吸収しにくくなるという問題点があり、多すぎると毛羽立ちが食材の表面にとられやすくなるという問題点がある。
【0017】
このような毛羽立ちは、ドライヤーパートにおいて湿紙をヤンキードライヤーに貼り付けて乾燥した後、クレーピングドクターで剥離してクレーピングするに際し、湿紙のドライヤーへの張り付きを強くすることによって達成できる。具体的手法としては、予め湿紙に添加するドライヤー用剥離剤の使用量を少なくする、ドライヤー蒸気圧を低くする等を採用することができる。これらの手法は組み合わせて適用するのが好ましく、例えばドライヤーパートに供給される湿紙の水分率を5.5〜7.0%(通常レベル)とした場合、ドライヤー用剥離剤の使用量を、通常0.8〜2.0kg/tのところを0〜0.5kg/t程度に抑えるとともに、ドライヤー蒸気圧を、通常0.50〜0.70MPaのところを0.38〜0.55MPaに抑えることにより形成することができる。なお、ドライヤー用剥離剤は他の添加剤とともに、予め湿紙に内添されるものであり、ポリエチレンワックス系薬品等の公知のものを用いることができる。
【0018】
また、本発明の吸収紙では、JIS P 8117に規定される透気抵抗度(通気度)が0.5〜3.0秒/300mリットル、特に0.5〜1.5秒/300mリットルとされる。透気抵抗度が低すぎると、食材が乾燥しやすくなるという問題点があり、高すぎると繊維の目がつまりすぎてドリップ吸収性が悪いという問題点がある。
【0019】
さらに、本発明の吸収紙では、クレープ深さが50μm以上、クレープ間隔が200μm以上とされるのが好ましい。特に好ましい範囲は、クレープ深さが50〜150μm、クレープ間隔が200〜600μmである。クレープが浅すぎたり、間隔が狭すぎたりすると、ドリップを吸収する表面積が少なくなる。
【0020】
さらに、本発明の吸収紙では、吸収速度が50〜150秒/50μリットル、特に50〜100秒/50μリットルであるのが好ましい。また、吸収量は200〜300g/m2であるのが好ましい。吸収速度が遅すぎると、ドリップを吸収しにくいという問題点があり、速すぎるとドリップを吸収しすぎて食材が乾燥し変色するという問題点がある。また、吸収量が少なすぎると、ドリップを吸収しにくく食材が変色するという問題点があり、多すぎるとドリップを吸収しすぎ食材が乾燥、変色するという問題点がある。なお、吸収量は次の手順で測定されるものである。
(1) 100mm角のサンプルを用意し、吸収前の重量を測定する。
(2) 水にグリセリンを添加して粘度5〜10mpa・Sに調整した試験液を用意する。
(3) サンプルを試験液中に1分間浸漬した後に引き上げ、吸収後の重量を測定する。
(4) 吸収液重量(吸収後の重量−吸収前の重量)を、平米当たりに換算して吸収量(g/m2)を得る。
【0021】
さらに、本発明の吸収紙では、湿潤引張強度(JIS P 8135)は縦方向が1000〜2600CN、横方向が500〜1400CNであるのが好ましい。湿潤引張強度が弱すぎると、ドリップを吸収し濡れた際に紙が破れるという問題点があり、強すぎるとドリップを吸収しにくいという問題点がある。
【実施例】
【0022】
表1に示すように各種の吸収紙を製造し、食肉を載せて1時間放置して、ドリップの吸収性を、◎…非常に良い、○…良い、△…普通、×…悪い、の四段階で評価した。評価結果は表1に示されるとおりであり、本発明に係る実施例1〜3は、比較例1〜6と比べてドリップの吸収性に著しく優れていた。なお、表中のクレープの種類に関して、ドライとあるのはドライクレープを意味し、また、ウェットとあるのはウェットクレープを意味する。
【0023】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、食肉や冷凍食品等のように、水分等の液体が滲み出る食品の包装に利用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】クレープ深さ及びクレープ間隔の説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1…クレープ、a…クレープ間隔、d…クレープ深さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
坪量が30〜65g/m2のドライクレープ紙からなる食品用吸収紙であって、
表面毛羽立ち本数が1500〜2500本であり、かつJIS P 8117に規定される透気抵抗度が0.5〜3.0秒/300mリットルである、ことを特徴とする食品用吸収紙。
【請求項2】
吸収速度が50〜150秒/50μリットルである、請求項1記載の食品用吸収紙。
【請求項3】
クレープ深さが50μm以上であり、かつクレープ間隔が200μm以上である、請求項1または2記載の食品用吸収紙。
【請求項4】
湿紙をヤンキードライヤーに貼り付けて乾燥した後、クレーピングドクターで剥離してクレーピングする工程を経て、食品用吸収紙を製造する方法において、
前記湿紙はドライヤー用剥離剤を0〜0.5kg/t含むようにし、前記湿紙の水分率を5.5〜7.0%とし、かつドライヤー蒸気圧を0.38〜0.55MPaとして前記乾燥を行う、ことを特徴とする食品用吸収紙の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−63712(P2007−63712A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251407(P2005−251407)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】