説明

食品組成物

【課題】喫食時に好ましい官能特性を有し、温熱感向上作用、交感神経活性亢進作用、または代謝活性亢進作用を有する食品組成物を提供する。
【解決手段】食品組成物中に、酸棗仁(Ziziphus jujube MILL.の種子)由来抽出物および竜眼肉(Euphoria longan LOUR.の仮種皮)由来抽出物を含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満は、高脂血症、高血圧、糖尿病などの生活習慣病を引き起こす原因ともなり、飽食が懸念されている先進諸国においては、将来の医療費負担増大の一因としてその抑制が重要視されている。一方で、いわゆるダイエットにおいては、当人のそれまでの生活スタイルを大きく変える必要があり、様々な困難を伴う。そのために低カロリー、脂肪吸収阻害、食欲抑制、脂肪蓄積阻害、代謝促進といった機能を有する食品が求められるようになってきた。
【0003】
また、肥満は、摂取エネルギー量が消費エネルギー量を上回ることにより起きる。従って、これを逆転させることで肥満は解消されることになる。摂取エネルギー量と消費エネルギー量との関係を逆転させる方法としては、
1)摂取エネルギー量を減らすこと、
2)エネルギー代謝を活性化して消費エネルギーを増大させること、および
3)上記1)および2)の併用、
が考えられる。摂取エネルギー量の削減には、往々にして食に付随する「楽しみ」を減らす精神的苦痛を伴うことから、エネルギー代謝の活性化、特に、過激な運動を伴わずにエネルギー代謝を活性化する方法がQOL(Quality of Life)の観点から望ましい。近年、カテキン等の脂質燃焼機能成分を含有した組成物が報告されている(特許文献1)。
【0004】
一方、自律神経は交感神経と副交感神経から構成されており、これらのバランスは生体の恒常性維持の上で重要なものとなっている。近年では、交感神経の活性化が褐色脂肪細胞における脂質燃焼を亢進させることを利用した代謝活性化についても報告がなされている(特許文献2)。
【0005】
また、肥満とは異なるが、代謝活性や自律神経系が関与する生活上深い悩みの一つに冷え性が挙げられる。冷え性の軽減のために、代謝活性向上や血流改善を目的とした食品組成物の開発等が報告されている(特許文献3)。
【0006】
また、技術分野は異なるが、漢方薬の成分に着目した健康食品に関する技術として、従来、特許文献4、特許文献5および非特許文献3に記載のものがある。
【0007】
特許文献4および非特許文献3には、酸棗仁と竜眼肉とを含む茶が記載されている。
【0008】
また、特許文献5には、生薬粉末の粒子に天然カルシウム高含有物またはカルシウム塩の粒子をコーティングすることが記載されている。コーティングにより、製剤効率および製剤性に優れた生薬粉末含有食品固形物を提供できるとされている。
【特許文献1】特開2005−2035号公報
【特許文献2】特開2004−115440号公報
【特許文献3】特開2004−18512号公報
【特許文献4】特開平7−059546号公報
【特許文献5】特開2002−275075号公報
【非特許文献1】王者悦主編、「中国薬膳大辞典」、大連出版社、1992年刊、p.698
【非特許文献2】王者悦主編、「中国薬膳大辞典」、大連出版社、1992年刊、p.1575
【非特許文献3】王者悦主編、「中国薬膳大辞典」、大連出版社、1992年刊、p.4423
【非特許文献4】Inoue, N.、「Autonomic nervous responses according to preference for the odor of jasmine tea」、Biosci. Biotechnol. Biochem.、67(6)、p.1206−1214、2003年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、肥満解消や冷え性改善などを通じて人々のQOL向上をめざした食品組成物の開発は急速に進展してきている。しかし、特許文献1〜特許文献3に取り上げられている素材類については、官能特性や嗜好上の点で、必ずしも万人に受け入れられやすいものばかりではない。
【0010】
また、漢方薬の成分に着目した特許文献4、特許文献5および非特許文献3に記載の技術においても、肥満解消および冷え性改善については全く検討されていなかった。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、日常の食生活において簡便かつ嗜好的に好ましく摂取することができ、温熱感向上作用、自律神経活性亢進作用または代謝活性亢進作用を有する食品組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、様々な食材について鋭意検討を重ねた。具体的には、中国では古来より食されている薬膳中のソフトな生理作用を有する素材に着目し、これをベースとする食品組成物について検討した。
【0013】
その結果、酸棗仁(Ziziphus jujube MILL.の種子)またはその抽出物と竜眼肉(Euphoria longan LOUR.の仮種皮)またはその抽出物とを摂取することにより、温熱感の向上、自律神経活性の亢進または代謝活性の亢進を図ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0014】
本発明によれば、酸棗仁もしくは酸棗仁由来抽出物と、竜眼肉もしくは竜眼肉抽出物と、を必須成分として含み、温熱感向上作用を有する食品組成物が提供される。
【0015】
本発明の食品組成物は、酸棗仁(Ziziphus jujube MILL.の種子)またはその抽出物と、竜眼肉(Euphoria longan LOUR.の仮種皮)またはその抽出物とを必須成分として含むため、呈味性に優れる。また、本発明の食品組成物は、温熱感の向上作用を有するため、日常の食生活において簡便に摂取可能であるとともに、冷え性の改善効果が期待される。
【0016】
また、本発明によれば、酸棗仁もしくは酸棗仁由来抽出物と、竜眼肉もしくは竜眼肉抽出物と、を必須成分として含み、自律神経活性亢進作用を有する食品組成物が提供される。
【0017】
本発明の食品組成物は、酸棗仁(Ziziphus jujube MILL.の種子)またはその抽出物と、竜眼肉(Euphoria longan LOUR.の仮種皮)またはその抽出物とを必須成分として含むため、呈味性に優れる。また、本発明の食品組成物は、自律神経活性亢進作用を有するため、日常の食生活において簡便に摂取可能であるとともに、肥満の改善効果が期待される。
【0018】
また、本発明によれば、酸棗仁もしくは酸棗仁由来抽出物と、竜眼肉もしくは竜眼肉抽出物と、を必須成分として含み、代謝活性亢進作用を有する食品組成物が提供される。
【0019】
本発明の食品組成物は、酸棗仁(Ziziphus jujube MILL.の種子)またはその抽出物と、竜眼肉 (Euphoria longan LOUR.の仮種皮)またはその抽出物とを必須成分として含むため、呈味性に優れる。また、本発明の食品組成物は、代謝活性亢進作用を有するため、日常の食生活において簡便に摂取可能であるとともに、冷え性および肥満の改善効果が期待される。
【0020】
本発明の食品組成物において、当該食品組成物100gに対し、前記酸棗仁および酸棗仁由来抽出物の固形分と前記竜眼肉および竜眼肉抽出物の固形分との合計が0.4g以上3.0g以下であってもよい。こうすることにより、食品組成物の呈味性をさらに良好に保ちつつ、温熱感向上作用、自律神経活性亢進作用または代謝活性亢進作用をさらに確実に得ることができる。
【0021】
本発明の食品組成物は、種々の形状とすることができ、たとえば、液体状、粉末状、顆粒状、錠剤状、カプセル状およびゼリー状のいずれかであってもよい。
【0022】
なお、これらの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた本発明の態様として有効である。
【0023】
たとえば、本発明によれば、酸棗仁もしくは酸棗仁由来抽出物と、竜眼肉もしくは竜眼肉抽出物と、を必須成分として含む温熱感向上用食品組成物が提供される。
また、本発明によれば、酸棗仁もしくは酸棗仁由来抽出物と、竜眼肉もしくは竜眼肉抽出物と、を必須成分として含む温熱感向上剤が提供される。
【0024】
本発明によれば、酸棗仁もしくは酸棗仁由来抽出物と、竜眼肉もしくは竜眼肉抽出物と、を必須成分として含む自律神経活性亢進用食品組成物が提供される。
また、本発明によれば、酸棗仁もしくは酸棗仁由来抽出物と、竜眼肉もしくは竜眼肉抽出物と、を必須成分として含む自律神経活性亢進剤が提供される。
【0025】
本発明によれば、酸棗仁もしくは酸棗仁由来抽出物と、竜眼肉もしくは竜眼肉抽出物と、を必須成分として含む代謝活性亢進用食品組成物が提供される。
また、本発明によれば、酸棗仁もしくは酸棗仁由来抽出物と、竜眼肉もしくは竜眼肉抽出物と、を必須成分として含む代謝活性亢進剤が提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、酸棗仁もしくは酸棗仁由来抽出物と竜眼肉もしくは竜眼肉抽出物とを必須成分として含むことにより、日常の食生活において簡便かつ嗜好的に好ましく摂取することができ、温熱感向上作用、自律神経活性亢進作用または代謝活性亢進作用を有する食品組成物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の食品組成物は、酸棗仁もしくは酸棗仁由来抽出物と竜眼肉もしくは竜眼肉抽出物とを必須の有効成分として含み、温熱感向上作用、自律神経活性亢進作用、または代謝活性亢進作用のうち一以上の作用を有する。
【0028】
酸棗仁および竜眼肉は、伝統的植物性食材として用いられてきた。
本発明において用いられる酸棗仁とは、クロウメモドキ科のサネブトナツメ、学名Ziziphus jujube MILL.の種子のことである。酸棗仁について、中医薬の世界では、養肝陰、補血、寧心神および斂汗の効能が伝えられている(非特許文献1)。
【0029】
また、本発明において、竜眼肉とは、ムクロジ科の竜眼、学名Euphoria longan LOUR.の仮種皮のことである。竜眼肉について、中医薬の世界では、補益心脾および養血安神の効能が伝えられている(非特許文献2)。
【0030】
本発明の食品組成物において、酸棗仁および竜眼肉から抽出物が、温熱感向上、自律神経活性亢進および代謝活性亢進の効果を呈する基本成分である。なお、代謝活性亢進は、酸素消費量亢進、脂質燃焼量亢進または糖質燃焼量亢進という状態で現れるため、本明細書において、代謝活性亢進とは、酸素消費量亢進、脂質燃焼量亢進および糖質燃焼量亢進のうちいずれかの状態であることを意味する。
【0031】
本発明の食品組成物は、日常の食生活において簡便かつ嗜好的に好ましく摂取することが可能であって、温熱感向上作用、自律神経活性亢進作用および代謝活性(酸素消費量、脂質燃焼量、糖質燃焼量)亢進のソフトな効能を有する。このため、本発明の食品組成物は、呈味的に優れるとともに、その温熱感向上作用および代謝活性亢進作用により、冷え性改善効果を有する健康食品として利用できる。また、その代謝活性亢進作用および自律神経活性亢進作用により、冷え性改善効果を有する健康食品として利用できる。また、本発明の食品組成物は加工適性の面においても優れたものである。
【0032】
本発明で用いられる酸棗仁および竜眼肉は、いずれも、市中の漢方薬局等の店頭で入手できる程度に清浄なものであればよく、特に格別の選別等は必要とされない。
【0033】
本発明の食品組成物においては、所定の形状および大きさの酸棗仁および竜眼肉がそのまま含まれていてもよいし、これら由来の抽出物が含まれていてもよい。本明細書において、酸棗仁からの抽出物と竜眼肉からの抽出物とを含む抽出物を、適宜「酸棗仁由来および竜眼肉由来抽出物」とも呼ぶ。
【0034】
また、本発明の食品組成物は、酸棗仁抽出物および竜眼肉抽出物を予め含んでいてもよい。また、抽出前の酸棗仁および竜眼肉を含み、喫食前に喫食者が当該食品組成物から抽出物を得る態様であってもよい。この場合、たとえば、喫食者が本発明の食品組成物をたとえば90℃以上の熱湯中に入れて、1〜10分間程度静置することにより、酸棗仁抽出物および竜眼肉抽出物を含む飲料を得ることができる。
【0035】
以下、本発明の食品組成物が酸棗仁および竜眼肉を原料とした抽出物を予め含む場合を例として、さらに詳細に説明する。
【0036】
はじめに、酸棗仁および竜眼肉を原料とした抽出物の調製方法を説明する。
原料として用意した酸棗仁および竜眼肉から抽出物を得るにあたっては、特段の装置や設備は必要なく、原料に対して重量比で1倍〜100倍、好ましくは10倍〜70倍程度の食品用途に適する清浄な水を加えて加熱する。このとき、達温90℃以上、好ましくは95℃以上で1〜10分間程度加温することで所望の抽出物を得ることができる。達温を上記範囲とすることにより、温熱感向上、自律神経活性亢進、および代謝活性亢進の期待効能をさらに高めることができる。また、喫食時の好ましい風味をさらに確実に得ることができる。
【0037】
なお、抽出にあたっては、酸棗仁と竜眼肉を各々単独または混合して用いることができ、最終的に食品組成物中に両抽出物が共存していればよい。つまり、本発明の食品組成物を摂取する際に両抽出物が共存する態様であれば、本発明の作用効果が得られる。
【0038】
また、得られた抽出液は、そのまま抽出物として用いることもできるし、乾燥させて得られる固形分を用いてもよい。
【0039】
さらに、前述のようにして得られた抽出物については、その後の食品加工上の目的に応じて、その他の副原料と混合して用いることが可能である。
【0040】
たとえば、本発明の食品組成物は、副原料として、各種のビタミン類やミネラル類など各種の栄養成分;
ショ糖、食塩、有機酸類などの矯味成分;
デンプン、デキストリン、乳糖などの賦形成分;
有機酸塩類、シュガーエステル、グリシン、ポリリジンなどの静菌性成分;
各種色素;
などを含んでもよい。また、これらの副原料を適宜乾燥した乾燥物、濃縮した濃縮物等を含んでもよい。これらの副原料は、単独で用いてもよいし、複数組み合わせて用いてもよい。
【0041】
本発明において、少量の摂取で温熱感向上、自律神経活性亢進、および代謝活性亢進という作用を確実に発現させる観点では、酸棗仁由来抽出物および竜眼肉由来抽出物を、合計で、固形分換算で食品組成物100g当たり0.4g以上、好ましくは0.6g以上含有させる。つまり、当該食品組成物100gに対し、酸棗仁および酸棗仁由来抽出物の固形分と竜眼肉および竜眼肉抽出物の固形分との合計がたとえば0.4g以上、好ましくは0.6g以上となるようにする。
【0042】
また、本発明の食品組成物の風味をさらに向上させて、呈味的に優れたものとする観点では、酸棗仁由来抽出物および竜眼肉由来抽出物を、固形分換算で食品組成物100g当たり3.0g以下、好ましくは1.8g以下含有させる。つまり、当該食品組成物100gに対し、酸棗仁および酸棗仁由来抽出物の固形分と竜眼肉および竜眼肉抽出物の固形分との合計がたとえば3.0g以下、好ましくは1.8g以下となるようにする。
【0043】
本発明の食品組成物において、主要構成成分である酸棗仁由来抽出物と竜眼肉由来抽出物の比率は、重量比で通常1:3〜3:1程度、好ましくは1:2〜2:1程度である。なお、上記比率は目安であり、必ずしもこの比率に限定されるものではない。
【0044】
本発明においては酸棗仁由来および竜眼肉由来抽出物を種々の形態にて提供すればよく、その形態は特に限定されるものではない。たとえば、本発明の食品組成物は、液体状、粉末状、顆粒状、錠剤状、カプセル状およびゼリー状のいずれかとすることができる。以下に、代表的な形態について記載する。
【0045】
まず、本発明の食品組成物が液体状の場合について述べる。酸棗仁由来および竜眼肉由来抽出物を液体状食品組成物の形態にて提供する際には、酸棗仁由来および竜眼肉由来抽出物の合計の固形分換算重量が、食品組成物100g当たりたとえば0.4g以上3.0g以下、好ましくは0.6g以上1.8g以下になるように調製し、かつ、酸棗仁由来および竜眼肉由来抽出物の溶液を溶存酸素濃度が30ppm以下(25℃)、好ましくは10ppm以下(25℃)になるように無菌充填すれば、目的とする液体状食品組成物を得ることができる。
【0046】
なお、容器としては、アルミパウチ、アルミ製缶、スチール製缶等が挙げられるが、酸素による劣化をさらに抑制する観点から、内装に脱酸素処理を施した紙製パック、脱酸素性を有する包材、酸素バリア性を有する包材からなるものを用いることが好ましい。
【0047】
また、基本成分である酸棗仁由来および竜眼肉由来抽出物に、上述した副原料、さらに具体的には、食塩、アルコール等の保存料として機能する材料等を配合させることができる。
【0048】
ここで、食塩、アルコール等の保存料を配合することにより、常温流通可能な組成物を提供することができるが、酸棗仁由来および竜眼肉由来抽出物をより一層効果的に摂取するためには、食塩含量を下げることが好ましい。常温で流通可能とするとともに食塩含量を下げる方法としては、たとえば抽出物溶液を殺菌後無菌充填する方法が挙げられる。なお、無菌充填する際には、酸棗仁由来および竜眼肉由来抽出物の溶存酸素による酸化により生じる風味劣化をさらに効果的に防止する意味で、25℃における溶存酸素濃度がたとえば5ppm以下、好ましくは3ppm以下、さらに好ましくは2ppm以下になるように充填を行うとよい。
【0049】
次に、本発明の食品組成物が固体状の場合について述べる。酸棗仁由来および竜眼肉由来抽出物を固体状食品組成物の形態にて提供する際には、固形分換算で、食品組成物100g当たり、酸棗仁由来および竜眼肉由来抽出物を合計0.4g以上3.0g以下、好ましくは0.6g以上1.8g以下になるように調製する。この酸棗仁由来および竜眼肉由来抽出物に、賦型剤、矯味成分等の上述した所定の副原料を混合し、その後、粉末化、顆粒化、または錠剤化して目的の固体状食品組成物を調製すればよい。
【0050】
なお、この時に用いる賦型剤としては、たとえば、グルコース、スクロース、トレハロース、マルトース、ラクトース、デキストリン、澱粉などの糖質;
ゼラチン、カゼイン、それらの部分分解物などのペプチド;および
タンパク質が挙げられる。
【0051】
また、スクロース、アスパルテーム、アセスルファムK、グルタミン酸ナトリウム、食塩等の嬌味成分を配合することにより、味、食感などにおける食品としての所定の適当な機能を付与することができる。
【0052】
また、本発明の食品組成物を粉末状にするための手段としては、酸棗仁由来および竜眼肉由来抽出物を必要に応じて濃縮した後に、噴霧乾燥、凍結乾燥、減圧薄膜ドラム乾燥、または常圧ドラム乾燥などにより乾燥させる方法が挙げられる。
【0053】
また、酸棗仁由来および竜眼肉由来抽出物について、味の影響を受けずに摂取させるために、酸棗仁由来および竜眼肉由来抽出物を上記に示した手段によって粉末化した後にカプセルに充填して提供することも可能である。
【0054】
また、酸棗仁由来および竜眼肉由来抽出物を食べやすい状態で提供するための手段として、ゲル化作用を有する成分を添加してゼリー状の食品として提供することも可能である。この時に用いるゲル化剤として、たとえば寒天、ゼラチン、澱粉類およびガム類が挙げられ、これらのうちいずれか1種類以上が用いられる。また、この時においても、より摂取しやすくするために、前述したスクロース、アスパルテーム、アセスルファムK、グルタミン酸ナトリウム、食塩等の嬌味成分を配合することができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0057】
(試料の調製)
(試料1)
以下の方法で、酸棗仁と竜眼肉の抽出物を含む飲食物(以下、本実施例では、「酸棗仁竜眼肉飲」とも呼ぶ。)を調製した。すなわち、酸棗仁(Ziziphus jujube MILL.)9gおよび竜眼肉(Euphoria longana Lamarck)9gに対し、水180gを加えて1時間浸漬し、沸騰後30分間加熱を続けて、抽出を行った。得られた抽出液を試料1として、以下の評価に用いた。
【0058】
本液の固形分含量は、0.6%(w/w)であった。また糖濃度を測定したところ、38g/lであった。
【0059】
(試料2)
コントロールとして、試料1の酸棗仁竜眼肉飲の糖濃度に合わせて38g/lショ糖水溶液を調製し、試料2とした。
【0060】
(試料3)
試料1の方法を用いて、竜眼肉の抽出物を調製した。すなわち、竜眼肉(Euphoria longana Lamarck)9gに対し、水180gを加えて1時間浸漬し、沸騰後30分間加熱を続けて、抽出を行った。得られた抽出液を試料3として、以下の評価に用いた。
【0061】
(試料4)
試料1の方法を用いて、酸棗仁の抽出物を調製した。すなわち、酸棗仁(Ziziphus jujube MILL.)9gに対し、水180gを加えて1時間浸漬し、沸騰後30分間加熱を続けて、抽出を行った。得られた抽出液を試料4として、以下の評価に用いた。
【0062】
(評価方法)
試料1〜試料4のそれぞれを摂取したときの温熱感変化、ならびに、試料1および試料2のそれぞれを摂取したときの自律神経活性および代謝活性の変化を以下の方法で測定した。
【0063】
(温熱感変化)
試料1〜試料4のそれぞれを摂取した時の温熱感変化については、Visual Analog Scaleテスト(以下、「VASテスト」と呼ぶ。)および体表面温度変化計測により評価した。
【0064】
VASテストについては、実験の同意を得た健康な男女8名から17名を被験者として、心拍変動パワースペクトル解析の測定前後に10cm VASテストを行った。VASテストは、主観評価の簡便な手法として使われてきた。VASテスト用紙には10cmのバーが記載されており、バーの両端にそれぞれ、手足が温かいか/冷たいか、温熱感(ぽかぽか感)が高いか/低いかを表記した。被験者は、その時の主観をバーにチェックした。心拍1拍ごとの間隔の時間つまりR−R間隔の測定前後でチェックの位置がどれだけ移動したかを評価対象とした。
【0065】
なお、心拍変動パワースペクトル解析実験の際は、心拍変動の測定は室温(25±1℃)、湿度(約40%)が一定になるように冷房で調節した静かな部屋で実験を行い、15時から16時の間に測定を開始した。
【0066】
各試料について、室温(23±1℃)、湿度(約40%)が一定になるように暖房で調節した静かな部屋で実験を行い、16時半に測定を開始した。
また、測定開始3時間前から、摂食、摂水、運動を禁止した。被験者には胸部に心電図測定用電極を取り付けてもらった。椅子に座り体温が安定するまでしばらく安静にしてもらった後、実験を開始した。
【0067】
心拍変動の測定の前に1回目のVASを記入してもらった。心拍変動の測定は5分間測定、2分間休憩を1セットとして7セット行い、2セット目と3セット目の間に常温の試料飲料180mlを摂取してもらった。心拍変動測定中の5分間はメトロノームの音に合わせて0.25Hzで呼吸するように被験者に指示した。測定後に再度VASの記入をしてもらった。
【0068】
試料1および試料2については、VASテストと同時に、体表面温度変化計測も実施した。被験者に鼓膜および首の人体温度測定専用の高感度熱電対センサを付して、体温変化を計測した。
【0069】
(自律神経活性変化)
試料1および試料2について、前述した温熱感や体表面温度変化測定時に同時に自律神経活性変化を測定した。具体的には、自律神経活動を評価するため、心拍1拍ごとの間隔の時間(R−R intervals)のパワースペクトル解析を行った。解析は、非特許文献4に記載の方法に準じて行った。心電図のシグナルはCM5誘導に設置した電極から記録した。そのシグナルは1000Hzでサンプリングされ、13ビットA/Vコンバーター(PS−2032GP、TEAC、Japan)によってデジタル化された。デジタル化された心電図のシグナルは微分され、QRSスパイクとR−R間隔は後の解析のために連続的に記録された。記録されたR−R間隔のデータは表示され、効果的なサンプリング頻度である2Hzで並べられた。ハミングタイプデータ窓を経た後、高速フーリエ変換によってパワースペクトル解析がなされた。
【0070】
本実験では、被験者の自律神経活動を評価するために、低周波成分(LFC:0.035Hz−0.15Hz)と高周波成分(HLC:0.15Hz−0.5Hz)を解析した。一般的に、HFCは迷走神経活動と関連しており、LFCは迷走神経と交感神経活動両方によって調整されている。ベースの自律神経活動と心拍数は個人によって異なるため、サンプル摂取前の心拍の平均値をベースラインとし、摂取前の自律神経活動の平均値を100%として表し、摂取後の相対値と比較した。心拍の呼吸関連変動が低周波心拍変動(0.15Hz以下)と重ならないようにするため、すべての被験者は15回/分(0.25Hz)のメトロノームで呼吸を同期させた(非特許文献4参照)。
【0071】
(代謝活性変化)
試料1について、温熱感や体表面温度の上昇がみとめられたことから、前述の方法に従って試料1および試料2の摂取時の代謝変化を呼気ガス分析法により測定した。
【0072】
試料1および試料2を摂取した際の代謝活性変化として、マススペクトル解析を用いた間接的熱量測定器(Alco−2000、ArcoSystem、Chiba、Japan)によって呼気ガスを測定した。呼気ガス分析実験には実験の同意を得た男女9名を被験者とした。ベースの酸素消費量は個人差が大きいため、摂取前の酸素消費量の平均値を100%とし、摂取後の値を相対値で示した。
【0073】
実験は、室温(23±1℃)および湿度(約60%)が一定になるように調節した静かな部屋で行い、10時半に測定を開始した。被験者は、前日の激しい運動と0時以降の摂食、当日9時以降の摂水が禁止された状態で実験に参加した。被験者には首、手首および額に体温センサを取り付け、呼気ガス測定用マスクを装着してもらった。仰向けに寝てしばらく安静にしてもらった後実験を開始した。測定は75分間行い、開始から15分後に一度起きあがって常温の試料飲料180mlを摂取してもらった。
【0074】
(評価結果)
(温熱感変化)
試料1〜試料4のそれぞれの摂取前後での温熱感の変化を図1および図2に示す。図1は、「ぽかぽか感」の評価結果を示す図であり、図2は、「手足の温かさ」の評価結果を示す図である。試料1では、「ぽかぽか感」および「手足の温かさ」のいずれも摂取後に温熱感は上昇しており、危険率5%で有意差があった。具体的には、「ぽかぽか感」が、摂取前後で50.2±3.2から65.0±2.7に増加し、「手足の温かさ」が、51.3±3.7から65.1±2.6に増加した。
【0075】
これに対し、試料2〜試料4については、そのような変化はみられなかった。
具体的には、試料2の砂糖水の場合、摂取前後の「ぽかぽか感」は、それぞれ62.4±4.1および56.8±4.6となり、摂取前後の「手足の温かさ」は、それぞれ58.5±5.3および58.3±5.6となった。
【0076】
また、試料3の竜眼肉単独の場合、摂取前後の「ぽかぽか感」は、それぞれ60.3±3.1および54.2±4.7となり、摂取前後の「手足の温かさ」は、それぞれ55.2±5.2および54.5±5.4となった。
【0077】
また、試料4の酸棗仁単独の場合、摂取前後の「ぽかぽか感」は、それぞれ65.1±3.2および59.0±4.8となり、摂取前後の「手足の温かさ」は、それぞれ64.1±4.6および61.2±5.5となった。
【0078】
このことより、酸棗仁竜眼肉飲摂取がヒトの温熱感上昇効果を有することが示された。
【0079】
また、試料1および試料2について、上述した温熱感変化測定時に同時に測定した体表面温度の変化を図3および図4に示す。図3は、鼓膜温の測定結果を示す図であり、図4は、首温の測定結果を示す図である。
【0080】
試料1については、摂取後徐々に上昇傾向を示し、30分以降では危険率5%で有意差をもって摂取前より約0.5℃手首温度が上昇していた。これは前項で述べたVASテストの結果を支持するものであり、酸棗仁竜眼肉飲摂取が体内での熱産生を引き起こすことが示された。
【0081】
一方、比較対照として試料2の砂糖水を用いた場合、図3中および図4中に示したように、試料1のような温熱感上昇は認められなかった。
【0082】
(自律神経活性変化)
試料1および試料2を摂取した際の総自律神経活性と交感神経活性の変化をそれぞれ図5および図6に示した。
【0083】
試料1については、総自律神経活性および交感神経活性のいずれも摂取後に徐々に上昇傾向を示し、20分目には危険率5%で有意差をもって摂取前より上昇していた。
【0084】
一方、試料2の砂糖水を用いた場合、図5および図6に示したように、試料1のような自律神経活性変化は認められなかった。このことから、酸棗仁竜眼肉飲摂取により、自律神経、特に交感神経活動を賦活化できることが示された。
【0085】
(代謝活性変化)
図7〜図9は、呼気ガス分析法における酸素消費量の変化、糖質燃焼量の変化および脂質燃焼量の変化をそれぞれ示す図である。
【0086】
試料1については、酸素消費量(図7)は摂取後徐々に上昇し、8分後には危険率5%で有意差をもって上昇していた。糖質燃焼量(図8)も同様で13分後には危険率5%で有意差をもって上昇していた。脂質燃焼量(図9)については緩やかに上昇して、43分後には危険率5%で有意差をもって上昇していた。
【0087】
一方、試料2の摂取時では、このような変化は認められなかった。このことから、酸棗仁竜眼肉飲摂取により、代謝活性、特に酸素消費、糖質燃焼および脂質燃焼が促進されることが示された。
【0088】
なお、試料1の酸棗仁竜眼肉飲は、呈味性にも優れ、官能的に好ましいものであった。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】実施例における試料摂取前後のぽかぽか感の変化を示す図である。
【図2】実施例における試料摂取前後の手足の温かさの変化を示す図である。
【図3】実施例における試料摂取前後の鼓膜温の変化を示す図である。
【図4】実施例における試料摂取前後の首温の変化を示す図である。
【図5】実施例における試料摂取前後の総自律神経活性の変化を示す図である。
【図6】実施例における試料摂取前後の交感神経活性の変化を示す図である。
【図7】実施例における試料摂取前後の酸素消費量の変化を示す図である。
【図8】実施例における試料摂取前後の糖質燃焼量の変化を示す図である。
【図9】実施例における試料摂取前後の脂質燃焼量の変化を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸棗仁もしくは酸棗仁由来抽出物と、竜眼肉もしくは竜眼肉抽出物と、を必須成分として含み、温熱感向上作用を有する食品組成物。
【請求項2】
酸棗仁もしくは酸棗仁由来抽出物と、竜眼肉もしくは竜眼肉抽出物と、を必須成分として含み、自律神経活性亢進作用を有する食品組成物。
【請求項3】
酸棗仁もしくは酸棗仁由来抽出物と、竜眼肉もしくは竜眼肉抽出物と、を必須成分として含み、代謝活性亢進作用を有する食品組成物。
【請求項4】
当該食品組成物100gに対し、前記酸棗仁および酸棗仁由来抽出物の固形分と前記竜眼肉および竜眼肉抽出物の固形分との合計が0.4g以上3.0g以下である請求項1乃至3いずれかに記載の食品組成物。
【請求項5】
当該食品組成物が、液体状、粉末状、顆粒状、錠剤状、カプセル状およびゼリー状のいずれかである請求項1乃至4いずれかに記載の食品組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−204419(P2007−204419A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−24986(P2006−24986)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】