説明

食品製造用組合体

【課題】熟練者によらずとも、練り製品を所望形状に成形することができる食品製造用組合体を提供する。
【解決手段】長手方向に沿って延びる貫通穴を形成する筒体と、複数の棒状部材が連結部材により横手方向に連結された巻き簾とを備え、前記筒体の貫通穴の内径と丸めた前記巻き簾の外径とが略等しく、丸めた前記巻き簾を前記貫通穴内に保持したとき前記巻き簾の横手方向の一方端に配設された第1の棒状部材と前記一方端に対して反対側の他方端に配設された第2の棒状部材との間に隙間が概ねないことを特徴とする、食品製造用組合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は食品製造用組合体に関し、より詳細には鳴門巻、伊達巻等の練り製品を成形するための食品製造用組合体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鳴門巻を成形する場合は、従来以下のような工程により行われていた。
魚肉のすり身と赤色に着色した魚肉のすり身とからなる練り状物を渦巻状の断面模様を形成するように混合した後、棒状に成形する。棒状の練り状物を所定長さに切断後、温水に一定時間浸漬して練り状物の表面をゲル化させる。
表面がゲル化された棒状の練り状物の外周に巻き簾を巻き付けた後、練り状物を一次加熱する。該加熱処理後、巻き簾を練り状物(鳴門巻)から取り除く。その後、一次冷却して包装した後、二次加熱して二次冷却を行う。
【0003】
【特許文献1】特開2004−201662号公報
【特許文献2】登録実用新案3135945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、練り状物の外周に巻き簾を正確且つ確実に巻き付けなければ、練り状物(鳴門巻)の外周面の山谷形状の模様がきれいに形成されず、製品不良に繋がる。例えば、巻き付けた際に巻き簾の横手方向の両端の間に隙間があると、この隙間に対応する練り状物(鳴門巻)の部分が山高になり練り状物(鳴門巻)の外周面には不均一且つ不完全な山谷形状が形成されることになる。
他方、練り状物の外周に巻き簾を巻き付けた後に巻き簾の上からひもを巻き付けて巻き簾を固定する方法も採用されたが、均一且つ完全な山谷形状を形成するようにひもを巻き付けるには相当の熟練を要する。
【0005】
[課題を解決するための手段及びその効果]
上記課題を解決するための本願発明に係る食品製造用組合体は、長手方向に沿って延びる貫通穴を形成する筒体と、複数の棒状部材が連結部材により横手方向に連結された巻き簾とを備え、前記筒体の貫通穴の内径と丸めた前記巻き簾の外径とが略等しく、丸めた前記巻き簾を前記貫通穴内に保持したとき前記巻き簾の横手方向の一方端に配設された第1の棒状部材と前記一方端に対して反対側の他方端に配設された第2の棒状部材との間に隙間が概ねないことを特徴とする。
これによって、上記食品製造用組合体は、熟練者によらずとも練り製品の外周面にきれいな山谷模様を形成することができるという有利な効果を奏しうる。換言すれば、不均一且つ不完全な山谷模様を有する不良製品の数を減らすことができる。
【0006】
好ましくは、前記筒体の長手方向の端面の内側が面取りされている。これによって、前記筒体の貫通穴内に丸めた前記巻き簾を容易に挿入することができるという有利な効果を奏することができる。
また好ましくは、前記第1の棒状部材及び前記第2の棒状部材のうちの少なくとも一方がその他の棒状部材より短い。また好ましくは、前記第1の棒状部材の長手方向の一方端部が他の棒状部材より短く形成され、前記第2の棒状部材の前記長手方向の一方端部と反対側の他方端部が他の棒状部材より短く形成されている。また好ましくは、前記第1の棒状部材及び前記第2の棒状部材のうちの少なくとも一方に視認マークが設けられている。
これによって、前記巻き簾の横手方向の端が容易に視認できるため、前記巻き簾を練り状物(鳴門巻)から容易に取り除くことができる。
また好ましくは、前記筒体の側壁を貫通する孔が設けられている。これによって、巻き簾を巻き付けた練り状物が筒体の貫通穴内に保持された状態で一次加熱される際、従来の一次加熱条件を採用しても当該加熱処理後の品温を所定温度に維持する製造条件は満たされる。
【実施例】
【0007】
[各要素の構成]
図1中、筒体1は、側壁1aの内側に長手方向に沿って延びる貫通穴1bを形成する円筒体である。筒体1の形状は成形する練り状物の所望形状に合わせて円筒体以外の形状(例えば、四角形筒体等の多角形筒体)でもよい。筒体1には、側壁1aを貫通し開口面の形状が円又は楕円形の孔1dが設けられている。孔1dは長手方向に沿って3つ配設された列と2つ配設された列とが交互に4列ずつ設けられ、孔1dの合計数は16であるが、孔1dの数は適宜変更可能である。孔1dの外側において面取り1eがされてもよい。なお、孔1dは設けられなくともよい。
図2に示すように、筒体1の長手方向の端面1cは、内側において面取り1fがされ、外側において面取り1gがされてもよい。
【0008】
図3中、巻き簾2は、複数の棒状部材3が連結部材4により横手方向に連結されて構成される。棒状部材3の横断面3aは山3bを有する略三角形でもよいが、製造する食品に合わせてその他の形状を適宜採用することができる。本実施例では、連結部材4はひも状部材であり隣接する棒状部材3は所定間隔離間しているが、連結部材4は帯状部材でもよい。
【0009】
[組合体の構成]
図4に示すように、筒体1と巻き簾2とを備える本願発明に係る食品製造用組合体は、筒体1の貫通穴1bの内径と丸めた巻き簾2の外径とが略等しく、貫通穴1b内に丸めた巻き簾2を保持しうるよう構成される。丸めた巻き簾2が貫通穴1b内に略緊密に保持された状態において、巻き簾2の横手方向の一方端に配設された第1の棒状部材3aと上記横手方向の一方端と反対側の他方端に配設された第2の棒状部材3bとの間に隙間が概ねないことが好ましい。
【0010】
第1の棒状部材3a及び第2の棒状部材3bのうちの少なくとも一方がその他の棒状部材3より短く形成されていることが好ましい。例えば、第1の棒状部材3aの長手方向の一方端部3cが他の棒状部材3より短く形成され、第2の棒状部材3bの前記長手方向の一方端部と反対側の他方端部3dが他の棒状部材3より短く形成されてもよい。また、例えば長手方向に延びる有色帯状(図4参照)や有色点(図示せず)等からなる視認マーク3eが、第1の棒状部材3a及び/又は第2の棒状部材3bに設けられてもよい。
【0011】
[使用方法]
鳴門巻を例に挙げて、本願発明に係る食品製造用組合体の使用方法(図示せず)について説明する。
魚肉のすり身と赤色に着色した魚肉のすり身とからなる練り状物を渦巻状の断面模様を形成するように混合した後、棒状に成形する。棒状の練り状物を所定長さに切断後、温水に一定時間浸漬して練り状物の表面をゲル化させる。
表面がゲル化された棒状の練り状物の外周に、棒状部材3の山3bが半径方向内方を指向するように巻き簾2を巻き付ける。その後、練り状物を巻いた巻き簾2を筒体1の貫通穴1b内に挿入する。この際、筒体1の端面1cが内側において面取り1fされているため、貫通穴1b内に巻き簾2を挿入することが容易である。また、第1の棒状部材3aと第2の棒状部材3bとの間に隙間があると、この隙間に対応する練り状物の部分が山高となり形状不良(製品不良)になるが、本組合体はそのような隙間が概ねないため上述のような形状不良は極めて発生しにくい。
【0012】
その後、巻き簾2を巻き付けた練り状物は筒体1の貫通穴1b内に保持された状態で一次加熱される。或る鳴門巻製造時の一次加熱の条件によれば、練り状物は摂氏約95度の蒸気により約20分間加熱される。一次加熱の間、筒体1の側壁1aに設けられた孔1dを経由して蒸気が練り状物に行き届き練り状物が十分に加熱されるため、従来の一次加熱条件を採用しても一次加熱処理後の練り状物の品温を76〜86度に維持する製造条件は満たされる。したがって、従来の一次加熱条件を変更することなく本願発明に係る食品製造用組合体を採用することができる。この場合、孔1dの数は上述したように16であることが好ましいが16に限るものでなく、また孔1dの開口面の形状は円や楕円形に限定される必要はない。
【0013】
上記一次加熱処理後、巻き簾2は練り状物(鳴門巻)から取り除かれる。練り状物には、巻き簾2に対応する山谷形状が形成される。なお、巻き簾2を練り状物(鳴門巻)から取り除くとき、棒状部材3の短く形成された一方端部3c及び他方端部3d並びに視認マーク3eを手掛かりに、巻き簾2の横手方向の端は容易に視認される。したがって、巻き簾2を練り状物(鳴門巻)から容易に取り除くことができる。
その後冷却された鳴門巻は、包装され、二次加熱された後二次冷却を経て梱包されて出荷される。
【0014】
なお、本組合体は例えば伊達巻等の鳴門巻以外の食品の製造にも適用できる。伊達巻の場合について、以下に例示する。
伊達巻の手巻き成形の従来の一般的な方法(図示せず)は次のとおりである。まず、白身魚等のすり身に卵を混ぜ合わせた混練りすり身を底面が平らな直方体の容器を用いて焼く。上記容器から焼いたすり身を取り出し、焼き表面を下にして横断面が「の」の字状になるように巻いて形を馴染ませる。その後、巻き簾を用いて渦巻状に巻き、巻きひもで巻き簾を締めてから冷却して成形する。
本願発明に係る食品製造用組合体を使用して伊達巻を成形する場合、伊達巻の所望太さに対応する巻き簾2を用いて上述の如く焼いた混練りすり身を巻いた後、筒体1の貫通穴1b内に巻き簾2を保持してから冷却することで伊達巻の成形をすることができる。これによって、従来用いていた巻きひもの締め具合を調整する必要が無くなり、熟練者でなくても伊達巻を容易に成形することができる利点がある。また、冷却の際、筒体1の側壁1aに設けられた孔1dの作用により、伊達巻を所望温度まで冷却する時間を短縮できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】筒体の正面図である。
【図2】筒体の平面図である。
【図3】巻き簾の部分正面図である。
【図4】筒体と巻き簾とを組み合わせた食品製造用組合体の正面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 筒体
2 巻き簾
3 棒状部材
4 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って延びる貫通穴を形成する筒体と、複数の棒状部材が連結部材により横手方向に連結された巻き簾とを備える食品製造用組合体において、
前記筒体の貫通穴の内径と丸めた前記巻き簾の外径とが略等しく、丸めた前記巻き簾を前記貫通穴内に保持したとき前記巻き簾の横手方向の一方端に配設された第1の棒状部材と前記一方端に対して反対側の他方端に配設された第2の棒状部材との間に隙間が概ねないことを特徴とする、食品製造用組合体。
【請求項2】
前記筒体の側壁を貫通する孔が設けられている、請求項1に記載の食品製造用組合体。
【請求項3】
前記筒体の長手方向の端面の内側が面取りされている、請求項1又は2に記載の食品製造用組合体。
【請求項4】
前記第1の棒状部材及び前記第2の棒状部材のうちの少なくとも一方がその他の棒状部材より短い、請求項1乃至3の何れか1項に記載の食品製造用組合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−201654(P2009−201654A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−46056(P2008−46056)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000141509)株式会社紀文食品 (39)
【Fターム(参考)】