説明

食材の包み皮の製造方法

【課題】提供方法が簡易で作業性に優れ、長時間柔らかな食感が持続する食材の包み皮の製造方法を提供すること。
【解決手段】一回で処理する小麦粉の一部に水分の全量を一度に加水し混練する第一混練工程と、前記一回で処理する小麦粉の残量を加えてさらに混練する第二混練工程と、前記第一・第二混練工程により得られた生地を1枚当りの分量に切り分け、プレス成形・焼成する工程により、食材の包み皮を製造する。これにより、保存袋ごと湯煎又は電子レンジにかけるという簡易な方法によって包み皮を提供することができる上、数時間放置されても、作り立ての柔らかさや風味が持続し、硬くなることがないから、乾燥・硬化を懸念することなく、宴会等のために大量に作り置きするような利用方法も可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な食材を巻いて食するための包み皮の製造方法に関し、特に、提供方法が簡易で作業性に優れ、長時間放置されても柔らかな食感が持続する、食材の包み皮の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日では、日本においても、様々な中華料理が広く普及し身近なものとなっており、例として、春巻き、餃子、北京ダック等が挙げられる。そして、油で調理する春巻きや餃子の皮については、「パリッとした食感」が追求されるため、その製造方法について様々な試みが行われ、特許出願も行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−22753号公報
【特許文献2】特許第3995573号号公報
【特許文献3】特開2010−239884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
他方、北京ダックは、一般家庭の食卓に上ることはあまりない上、その包み皮は油調理等されることなくそのまま食される。このためか、「カオヤーピン」という特別な名称が付されたものでありながら、この包み皮の製造方法が特に追及されることはなかった。しかし、北京ダックも、今日、中華料理店では頻繁に食されるようになっており、しかも近年は、宴会やビュッフェ形式の食事の場で、具材を巻いた状態で提供されることも多い。そのため、短時間の内に簡易な方法で提供でき、且つ作り置きして数時間放置しても柔らかな食感を維持することのできる、新しいタイプの包み皮が求められている。
なお、この包み皮は、「北京ダック」に限らず、様々な食材(生野菜、炒め物、肉料理)を包んで食することができ、現にそのように幅広く利用されているものであるから、本願においては、「カオヤーピン」に限定することなく、「食材の包み皮」(又は単に「包み皮」)として論ずる。
【0005】
従来、この種の包み皮は、袋から取出した後、1枚1枚手で剥がし、蒸し器で2分程蒸した上で提供されており、その作業は煩雑なものであった。その上、宴会等において数時間放置されると、外周部から乾燥して硬くなり、提供し立ての柔らかさはどうしても失われがちであった。
【0006】
そこで、本発明は、一度に多量の包み皮を準備する場合であっても、従来のように煩雑な作業が不要で、より簡易な方法で提供することができ、且つ作り置きした後数時間室内に放置されても硬くならず、提供し立ての柔らかさを持続することのできる食材の包み皮の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一回で処理する小麦粉の一部に水分の全量を一度に加水し混練する第一混練工程と、
前記一回で処理する小麦粉の残量を加えてさらに混練する第二混練工程と、
前記第一・第二混練工程により得られた生地を1枚当りの分量に切り分け、プレス成形・焼成する工程とからなることを特徴とする食材の包み皮の製造方法によって、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、保存袋ごと湯煎にかける、或いは電子レンジで加熱する、という簡便な方法によって包み皮を提供することができ、従来のように1枚1枚手で剥がした上で蒸すという煩雑な作業は全く不要となる。加えて、数時間放置されても、作り立ての柔らかさや風味が持続し、硬くなることがないから、作り立てを提供する場合ばかりでなく、宴会等のために大量に作り置きするような利用法においても、顧客を満足させることができ、近時高まる業界の新たなニーズに応えることができる。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0009】
以下、従来の製法と比較しつつ、本発明の製造方法を説明する。
1.原材料の配合
小麦粉 45.01%
澱粉 4.09%
食物繊維 2.05%
加工油脂 2.05%
ソルビット 2.05%
植物油 2.05%
小麦蛋白加工素材 0.98%
上白糖 0.82%
熱湯 40.92%
【0010】
なお、ここで、「熱湯」とは、約100℃の湯をいう。小麦粉に湯を加えると、水を加えた場合に比しより多くのグルテン(小麦蛋白)を生成することができるから、生地に粘りが出て、もっちりとした食感を作り出すことができる。従って、水より湯を用いるのが好ましい。また、「小麦蛋白加工素材」とは、小麦蛋白を油脂により加工することで、食品の食感や物性改良に利用できるように開発された素材である。
上記の原材料の組合せ及び配合率は一例であって、小麦粉と熱湯以外のものは、所望の食感や風味に合わせて、適宜選択、配合することができる(下記の比較例参照)。例えば、水分を吸収する食物繊維は保湿性を高めるのに有効であり、これを加えてより多く加水できるようにすることによって、包み皮に直接水分(蒸気)を当てなくても、蒸した状態により近付けることができる。また、澱粉や小麦蛋白加工素材によってもっちりとした食感を出すことができ、加工油脂や小麦蛋白加工素材によって、皮に強度を持たせ、破れにくくすることができる。さらに、ソルビットや上白糖によって甘味を加えることができ、糖の働きで保湿性を向上させることもできる。味を引き締めるためには、下記比較例のように、食塩を加えてもよい。
【0011】
2.製造工程
(1)一回で処理する小麦粉の一部と食物繊維を混合する。
(2)加工油脂、ソルビット、植物油、及び熱湯を混合する。
(3)(1)、(2)を混ぜ合わせ、ミキシングする(第一混練工程)。
(4)全体が均一に混ざったら、残りの小麦粉、澱粉、小麦蛋白加工素材、上白糖を加え、さらにミキシングを行う(第二混練工程)。
(5)餅切り機で、1個当り20〜22gの団子状に切り分け成形後、植物油をまぶす。
(6)プレス成形・焼成を行い、乾燥を避けるため覆いを施し、自然放冷。
(7)湯煎・電子レンジ対応の包材に入れ、冷凍する。
【0012】
上記(1)における「一回で処理する小麦粉の一部」とは、一回(バッチ)で使用する小麦粉全量の20重量%以上50重量%以下であることが好ましく、最も好適なのは31〜32重量%である。20重量%未満であると、生地がべた付き、餅切り機で分割することが困難となる。他方、50重量%を超えると、生地が硬過ぎるためプレス成形が困難となり、20〜50重量%の範囲の場合と同じ圧力では、生地を目的の大きさに伸ばすことができない。
その他、上記(1)、(2)、(4)の段階において加える原材料は、既述のとおり、適宜選択し、組合わせることができ、上記の製造工程は一例を示したものに過ぎない。
【0013】
上記の方法で作られた包み皮は、冷凍品を袋ごと湯煎にかける、或いは電子レンジで加熱する、という簡易な作業のみで提供することができ、湯煎にかけた後、包み皮を一枚一枚剥がすのも容易である。また、数時間放置しても柔らかな食感が持続することが確認された。もっとも、作り立ての柔らかさを長時間持続させるためには、食品用ラップフィルムをかけることが望ましいことは、言うまでもない。
【0014】
なお、「湯煎」とは、湯を沸かした鍋の中に容器を入れて、この容器中で食材を間接的に加熱する方法のことであり、この発明では、包み皮を入れた保存袋が容器の役割をする。従って、保存袋ごと、直接湯の中に投入することが「湯煎」となる。
湯煎にかけるのは、加熱による澱粉の糊化(α化)、すなわち粘性を向上させることが目的である。
【0015】
比較対照として、出願人が従来実施してきた製造方法を以下に記載する。
1.原材料の配合
小麦粉 57.36%
食塩 0.28%
植物油 2.7%
ph調整剤 1.2%
ソルビット 0.97%
熱湯 26.99%
水 10.5%
【0016】
2.製造工程
(1)小麦粉の一部、食塩、熱湯をミキシングする。
(2)残りの小麦粉、植物油、ph調整剤、ソルビット、水を(1)に加え、さらにミキシングする。
(3)餅切り機で、1個当り20〜22gの団子状に切り分け成形後、植物油をまぶす。
(4)プレス成形・焼成を行い、自然放冷。
(5)包材に入れ、冷凍する。
【0017】
上記の方法で作られた包み皮を提供するためには、解凍後、1枚1枚剥がした上、蒸し器で約2分蒸さなければならない。そして、数時間放置されると、作り立ての柔らかな食感が失われるものであった。
【0018】
従来、この種の皮を製造する場合、粉末原料の全部に熱湯のみを一度に加水するか、上記のように、小麦粉の一部に熱湯を加えてミキシングした後、残りの小麦粉と水を加えるという形で分けて加水していた。「カオヤーピン」の「ピン」には「餅」という字が当てられており、これは、湯で澱粉を糊化させることで餅のような食感が出ること、プレス成形前は団子状でありまさに餅のように見えることに由来している。湯と水に分けて加水するのは、このもっちりとした食感やべた付きを加減するためであった。
このような従来の製造方法と比較した本願発明の特徴は、最初のミキシングの段階で、小麦粉の一部と熱湯(水分)の全量を混ぜ合わせ、一気に加水を行う点にある。これにより、水分を100%生地全体に行き渡らせることができ、その上で残りの原材料を加えてよく混ぜ合わせることによって、生地の保湿性が高くなる。これは、一定量の小麦粉に対し過剰な水分を加えることによって、膨潤のような現象が起き、生地の保水効果が高まるためと考えられる。このような観点からも、上記したとおり、水分を吸収する食物繊維等を、特に加水の段階で加えることが有効であり、これによってより多く加水できるようにすることで、包み皮に直接水分(蒸気)を当てなくても、袋ごと湯煎にかけ或いは電子レンジで加熱するのみで、蒸した状態により近付けることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一回で処理する小麦粉の一部に水分の全量を一度に加水し混練する第一混練工程と、
前記一回で処理する小麦粉の残量を加えてさらに混練する第二混練工程と、
前記第一・第二混練工程により得られた生地を1枚当りの分量に切り分け、プレス成形・焼成する工程とからなることを特徴とする、
食材の包み皮の製造方法。
【請求項2】
前記小麦粉の一部が、小麦粉全量の20重量%以上50重量%以下である、請求項1の食材の包み皮の製造方法。
【請求項3】
前記第一混練工程又は第二混練工程のいずれかにおいて、澱粉、食物繊維、加工油脂、ソルビット、植物油、小麦蛋白加工素材、上白糖、食塩の全部又はいずれかをさらに加える、請求項1又は2の食材の包み皮の製造方法。
【請求項4】
包装された袋ごと湯煎にかけ、又は電子レンジで加熱するのみで食することができることを特徴とする、食材の包み皮。