説明

食材処理用組成物、食材の処理方法および食材の調理方法

【課題】 リン酸塩で処理された食材の本来の味を復元するための食品用の組成物を提供する。
【解決手段】 リン酸塩で処理された食材からリン酸塩により変性した食味を復元するための食材処理用の組成物は、水1Lに対して、塩化カリウム10〜70g、有効量のレシチン源、有効量の糖分(蜂蜜および黒砂糖)、有効量のpH調整成分(酢等)から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食材処理用組成物、食材の処理方法および食材の調理方法に関する。より詳しく述べるとリン酸塩で処理された食材からリン酸塩により変性した食味を復元するための食材用の組成物、食材の処理方法および食材の調理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生鮮食料品の鮮度を保持する目的でリン酸塩を主体にした鮮度保持剤が開発されている。例えば、特許文献1には、マグロ等の魚肉の油焼け抑制および鮮度保持剤としてアミノ酸と縮合リン酸塩 とビタミンCを配合したものにエタノール、精製水等水分、pH調整剤、増粘剤類を配合して鮮度保持剤とすることが記載されている。
このような鮮度保持剤は、食材の表面を変性して鮮度を保つものであり、長期間食材を新鮮に保つことができる。
【0003】
そして、非特許文献1によると、リン酸塩は鮮度保持以外にも膨張剤、酸化防止剤、変色防止剤等の種々の用途に用いられている。
このようなリン酸塩は、例えば、水で希釈して処理液を調製し、処理液中に食材を浸漬させるかあるいは食材表面に処理液を噴霧して使用している。
【特許文献1】特開2001−238592号公報(要約書)
【非特許文献1】http://www.takeda-kirin.co.jp/seihin/polilin.html (平成17年1月31日検索)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなリン酸塩で処理された食材は、鮮度保持、変色防止、酸化防止等の種々の効果を有するが、食材そのものの味を変化させてしまう場合がある。
例えば、食材を美味しく調理する方法として、本出願人は、食用油に備長炭を入れたままで揚げる方法、備長炭の燃焼温度を所定温度に維持しながら食材を焼き上げる方法、所定温度で加熱した備長炭の粉末とともに食品を煮る方法等の種々の方法を提案している。この種の調理方法で食材が美味しく調理されるのは、備長炭を加熱すると炭素化合物等の有機化合物が放出され、放出された有機化合物、特に、炭素化合物が食材の過酸化脂質を還元して鮮度を回復するように働くからであると考えられている。
【0005】
しかしなら、このようにリン酸塩で処理された食材を本出願人が提案した方法に適用した場合、リン酸塩で処理されていない食材と比較して、これらの方法が期待通りの味とならない場合が多い。
【0006】
また、刺身等の生食用の食材の場合では、リン酸塩で処理された食材は、若干ではあるが旧来の味が損なわれる場合もある。
【0007】
従って、本発明の課題は、リン酸塩で処理された食材の本来の味を復元するための食材用の組成物を提供することである。
本発明の別の課題は、このような食材処理用組成物を用いた食材の処理方法および調理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決する本発明は、リン酸塩で処理された食材からリン酸塩により変性した食味を復元するための食品用の組成物であって、水1Lに対して、塩化カリウム10〜70g、有効量のレシチン源、有効量の糖分、有効量のpH調整成分含むことを特徴とするものでである(請求項1)。
【0009】
本発明の食材処理用組成物において、前記レシチン源が、大豆発酵物であり、水1Lに対して300cc〜1000ccを添加することができる(請求項2)。
【0010】
本発明の食材処理用組成物において、前記糖分が黒砂糖、蜂蜜またはこれらの混合物であって、水1Lに対して20〜60gを添加することができる(請求項3)。
本発明の食材処理用組成物において、前記レシチン源が醤油に基づくものであり、前記食材処理用組成物は醤油ベースの調味料として使用することが可能である(請求項4)。
【0011】
前記課題を解決する本発明はまた、リン酸塩で処理された食材からリン酸塩により変性した食味を復元する食材の処理方法であって、本発明の食材処理用組成物を水で1〜10容量%に希釈して希釈水溶液を調製する水溶液調製工程、前記水溶液調製工程で調製された水溶液に常温でリン酸処理された食材を浸漬する工程を含むことを特徴とするものである(請求項5)。
【0012】
さらに、前記課題を解決する本発明は、本発明の食品組成物を水で1〜10容量%に希釈して希釈水溶液を調製する水溶液調製工程、前記水溶液調製工程で調製された水溶液に常温でリン酸処理された食材を浸漬する浸漬工程、有機化合物放出温度に加熱した備長炭を用いて調理する調理工程を含むことをを特徴とする備長炭を用いた食材の調理方法に関する(請求項6)。
さらに、前記課題を解決する本発明は、本発明の食材処理用組成物を水で1〜10容量%に希釈して希釈水溶液を調製する水溶液調製工程、前記水溶液調製工程で調製された水溶液に常温でリン酸処理された食材を浸漬する浸漬工程、前記浸漬工程で処理された食材を密閉容器に収納するとともに、前記食材の酸化物を還元する還元性を有した添加物を含む調味液を、前記食材に加えて前記密閉容器を密閉し、前記密閉工程により密閉されて収納された前記食材を前記密閉容器ごと冷却する工程を含むことを特徴とする食材の調理方法に関する(請求項7)。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜請求項4に記載の発明によると、リン酸塩で処理された食材からリン酸塩により変性した食味を復元することが可能となる。
請求項5〜請求項7に記載の発明によると、リン酸塩で処理することによって食材本来の味が変質した食材の本体の味を復元して、このようにして本来の味が復元された食材を用いて加工・調理可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
なお、本発明において使用する用語は、以下の意味を有している。
(復元)
食材からの「リン酸塩で処理された食材からリン酸塩により変性した食味を復元する」とは、リン酸塩により食材を処理することによって変化した食材そのものの味を食材本来の味へ戻すまたは近づけることを意味する。以下、「リン酸塩で処理された食材からリン酸塩により変性した食味を復元する」ことを食材の復元処理と言う。
(有効量)
本明細書に使用される用語「有効量」とは、リン酸塩が適用された食材の種類、リン酸塩の量、食材の使用目的に応じて適宜使用されるものであり、「リン酸塩を除去するのに十分な量」と交換可能に使用される。
【0015】
(リン酸塩)
本発明において、「リン酸塩」とは、食材に使用されているものであれば特に限定されるものではなく例えば、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素二カルシウム、リン酸三カルシウム等の正リン酸塩;ピロリン酸二水素二ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸二水素カルシウム、ピロリン酸第二鉄等のピロリン酸塩;ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カルシウム等のポリリン酸塩;およびメタリン酸ナトリウム、メタリン酸カルシウム等のメタリン酸塩及びこれらの混合物が挙げられる。これらのうち、特に食品の鮮度保持として使用されているポリリン酸塩またはポリリン酸塩と他のリン酸塩との混合物が本発明の除去対象のリン酸塩である。これらのリン酸塩は、一般に強酸/弱塩基の塩であるので、水に溶解した際に若干アルカリ性の緩衝液となる。
【0016】
例えば、魚肉練製品または食肉練製品の変色防止、変質防止、保水性、結着性の増大、香辛料、調味料の分散効果および浸透性の向上等に「ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、無水ピロリン酸ナトリウム (無水)、メタリン酸カリウムおよびピロリン酸カリウムの混合物が使用されている。また、例えば、市販されているリン酸塩として、武田キリン食品株式会社から販売されているポリリンサンシリーズが挙げられる。
【0017】
(食材)
本発明の対象となる「食材」は、前記のリン酸塩で処理された食材であれば特に限定されるものではなく、例えば、野菜類、果物類等の青果物、魚介類、甲殻類等の水産物、鳥、豚、牛等の畜産物の表面をリン酸塩で処理したもの、あるいはポリリン酸塩で処理食材を加工した加工品、例えば、蒲鉾、ハンペン、竹輪等の練り物、ハンバーグ、ミートボール等が挙げられる。
【0018】
このような食材上(又は食材中)にリン酸塩を適用すると(特に水産物、畜産物等のタンパク質を有する食材上に適用すると)、食材表面を若干ではあるが変性することによって、鮮度保持機能が得られるものと推測される。さらに、リン酸塩による食材の処理により食材そのもののミネラルバランスが変化して、味に変化を起こすものであると推測される。さらにはリン酸塩で食品の処理により、pHバランスがアルカリ側に傾き食材本来の味が変化することも考えられる。
【0019】
なお、後記する本発明の食材処理用組成物でリン酸塩により処理された食材を復元処理する際に、本発明の食材処理用組成物を食材の表面上に塗布して処理する場合と、食材の内部に浸透させて処理する場合の二種類の方法がある。なお、食材の内部に浸透させて処理する場合も、本発明の食材処理用組成物を食材の表面上に塗布して処理する場合と同様であるので、詳細は省略する。
また、食材処理用組成物を食材の表面上に塗布して処理する場合には本発明の食材処理用組成物を直接食材に塗布する方法と、本発明の食材処理用組成物を希釈して希釈液を調製して、調製した希釈液に食材を浸漬する方法の二種類がある。
【0020】
(本発明の食材処理用組成物)
このようなリン酸塩が適用された食材に対して、本発明の食材処理用組成物(以下、本発明の組成物と言う)を適用するのであるが、本発明の組成物は、水に塩化カリウム、糖分(特に、蜂蜜)、レシチン源(味噌、醤油等の大豆由来レシチン、卵黄等)、pH調整用の酸成分を必須成分として含み、その他従来公知のスパイス類を必要に応じて添加される。
【0021】
(塩化カリウム)
本発明の組成物の第一成分として水1Lに対して10〜70gの塩化カリウム(KCl)を添加する。どのような理由が明らかではないが、恐らく前記量の塩化カリウムを添加することによって、この範囲での塩化カリウムの使用がリン酸塩によりミネラルバランスが変化した食材のミネラルバランスを改善する効果があるものと考えられる。
無機塩として、塩化カリウムを選択すると、他の食品に使用されている塩、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等では考えられない著しいリン酸塩の除去効果を実験的に見出した。また、水1Lに対する塩化カリウムの量を10〜70gと規定するのは、本発明者等の繰り返しの実験の結果選択した範囲である(後記する実施例を参照)。
【0022】
なお、食材そのものに塩化ナトリウムが存在する場合、本発明の組成物中に塩化ナトリウムを含む場合、あるいは味付けにより塩化ナトリウムを添加する場合(例えば、食塩、醤油、味噌等として塩化ナトリウムが存在する場合)には、塩化カリウムの量は、塩化ナトリウム100gに対して30〜50gであることが好ましい。この量についても、本発明者により実験的に見出されたものである。
【0023】
(レシチン)
本発明の組成物の第二成分として有効量のレシチンを添加する。本発明の組成物へのレシチンの添加は、リン酸塩の適用により変性した表面の改質が主たる目的である。レシチンの添加量については、処理しようとする食材の性質によって適宜選択されるが、本発明においては、醤油、味噌等の大豆発酵物をレシチン源とする場合には、水1L当たり300〜1000ccgであり、また卵黄をレシチン源とする場合には、水1L当たり50〜100gである。さらには、レシチン粉末(大豆レシチン粉末、水添レシチン等)である場合には、数mgである。
これらは単独であるいは組み合わせて使用することが可能である。
【0024】
なお、卵黄をレシチン源とする場合には、卵黄を40〜70℃、好ましくは50〜60℃に加温した状態で使用するかあるいは、マヨネーズ等の卵黄の乳化物100g当たり、10〜100g程度の卵黄を加えたもの(いわゆる卵黄過剰のマヨネーズ)であることが好ましい。
【0025】
(糖分)
本発明の第三成分として、糖分を水1L当たり、20〜60gを添加する。特に、蜂蜜、黒糖等の糖分源には、ミネラル分が豊富に含まれているいるのでこれらのミネラルの食材表面上への適用によって、リン酸塩処理によりミネラルバランスが崩れた食材のミネラルバランスを回復することができるので好ましい。なお、蜂蜜と黒糖を併用する場合には、これらの量は前記範囲内で適宜変更することが可能である。
【0026】
(pH調整成分)
本発明の組成物における第四成分として有効量のpH調整成分を本発明の組成物に添加する。前記の通り、リン酸塩は、水溶液とした場合に弱アルカリ性を呈するので、本発明の組成物に使用される用語「有効量のpH調整成分」とは、処理しようとするリン酸塩が適用された食材のpHを部分的にあるいは完全に中和する量、好ましくは完全に中和する量を意味する。本発明の組成物における第四成分として使用可能なpH調整成分は、食用に使用可能な酸成分であれば特に限定されるものではなく、酢酸、乳酸、クエン酸等の酸類、特に入手の容易性から各種酢を使用することが好ましい。
【0027】
(その他成分)
本発明の組成物には、本発明の目的・効果を阻害しない範囲で、食品に添加が認められる他の成分、食材の処理目的に応じて添加することが可能である。このような他の成分として限定されるものではないが、パプリカ、唐辛子、胡椒類(ブラックペッパー、ホワイトペッパー)等が挙げられる。
特に醤油をベースに本発明の組成物を調製することによって、醤油代替調味料組成物として、本発明の組成物を有効に用いることが可能である。
【0028】
(代表的組成物)
このような本発明の組成物の代表例(以下、代表的組成物と言う)は、以下の通りである。
水1L、塩化カリウム10〜70g、醤油300〜1000cc(レシチン源として)、黒砂糖+蜂蜜(糖分、ミネラル源として)20〜60g、食酢20〜80cc。
また、食材をそのまま調理する場合には、パプリカ、唐辛子、胡椒(ブラックペッパー、ホワイトペッパー等)、タイム等のその他の成分を適宜添加することができる。
【0029】
このような本発明の組成物は、リン酸塩で処理された刺身等の生食用の食材に直接塗布して、リン酸塩により処理することに由来する食材の味をその食材本来のものと近づけることが可能である。更に本発明の組成物は、後記するように、水で希釈して希釈液とし、希釈液にリン酸塩で処理された食材を浸漬させてリン酸塩を除去した後に加工することも可能である。この場合も、本発明の組成物を直接塗布する場合と同様に、リン酸塩により処理することに由来する食材の味をその食材本来のものと近づけることが可能である。
【0030】
(食材からのリン酸塩の除去方法1)
以下、食材として水産品、畜産物等の食材表面をリン酸塩により処理した食材を、本発明の組成物により復元処理する方法について説明する。この実施の形態は、例えば、魚、魚の切り身、ドレス、すり身等をリン酸塩の水溶液で処理した食材や、鶏肉、豚肉、牛肉等の切り身、ひき肉等をリン酸塩の水溶液で処理した食材の復元処理を想定している。
【0031】
本発明の組成物(代表的組成物)を、水で1〜10%、好ましくは3〜8容量%に希釈して、処理用の希釈水溶液を調製する。このようにして調製された希釈水溶液中に、対象となる食材の種類、食材の形状、食材中に含まれているリン酸塩の濃度等に応じて定められた所定時間(例えば、数分)、常温で浸漬する。このように本発明の組成物の希釈液に燐酸塩で処理された食材を浸漬することによって、食材中に含まれるリン酸塩を除去することが可能となる。例えば、処理する食材が薄切りの肉である場合、浸漬時間は数秒から数分であり、一方、処理する食材がステーキ等の厚切りの肉である場合、浸漬時間は、10〜30分程度である。
本発明の組成物を用いて同様に、野菜等の青果物も同様に処理可能である。
【0032】
(応用例:加工方法)
本発明の組成物は、更に、食品の加工方法に適用できる。すなわち、リン酸塩で処理された食材を用いた食品の加工方法(調理方法)において、前記食材を加工するのに先立って前記食材を本発明の組成物を水で希釈した希釈溶液に浸漬することを特徴とするものである。
【0033】
このような加工方法の代表例として、本願出願人が先に出願した「食品の加工方法」(特開2004−267120号公報)を適用することが特に好ましい。
すなわち、本発明の組成物により復元処理した食材を密閉容器に収納するとともに、前記食材の酸化物を還元する還元性を有した添加物を含む調味液を、前記食材に加えて前記密閉容器を密閉し、前記密閉工程により密閉されて収納された前記食材を前記密閉容器ごと冷却することが好ましく、特に本発明の組成物により処理した食材を耐熱および耐水性素材からなる密閉容器に収納するとともに、前記食材の酸化物を還元する還元性を有した添加物を前記食材に加えて前記密閉容器を密閉し、密閉された前記食材を前記密閉容器ごと湯温で加熱調理する加熱し、前記加熱工程による加熱調理後、前記食材を前記密閉容器ごと冷却することが好ましい。
【0034】
このような加工法を適用することによって、本発明の組成物で処理することによって、食材そのものの味を復活可能であるだけでなく、加工調理中に食材が劣化するのを防止することができ、しかも、鮮度の落ちやすい食材の鮮度劣化が起り難く、食材の有効利用を図ることができる。
【0035】
同様にして、本出願人が先に出願した特開2002−218916号公報に記載の方法により食材を調理することも可能である。
すなわち、本発明の組成物により復元処理した食材を有機化合物放出温度に加熱した備長炭を用いて調理、例えば、前記食材と前記備長炭とを一緒に煮ることによって、食材そのものの味を引き出すことが可能となる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
(実施例1:代表的組成物No.1〜No.10の調製)
水1Lに対して表1に示す量の塩化カリウム、醤油、黒砂糖、蜂蜜、食酢を添加・混合して本発明の代表的組成物(No.1〜No.10)を調製した。
なお、以下の実施例で使用した塩化カリウムは、高杉制約社製の試薬級塩化カリウムであり、醤油は、キッコウマン株式会社から「丸大豆しょうゆ」という商品名で販売されている市販品であり、黒砂糖は、「株式会社海部商事)」から販売されている市販品であり、蜂蜜は、山田養蜂場から「甘露蜂蜜」という商品名で販売されている市販品であり、食酢は、株式会社ミツカンから「米酢」という商品名で販売されている市販品である。
【0038】
【表1】

【0039】
(実施例2:代表的組成物No.11およびNo.12の調製)
実施例1の代表的組成物No.1において、醤油600ccの代わりに味噌500gを使用した以外は同様にして代表的組成物11を調製した。
実施例1の代表的組成物No.1において、醤油600ccの代わりに、市販マヨネーズに同量の卵黄をくわえたもの600gを添加した以外は同様にして代表的組成物12を調製した。
【0040】
(比較例1:比較用組成物No.1〜No.5の調製)
実施例1の代表的組成物において、表2に示す通りの成分を用いた以外は実施例1と同様にして比較用組成物(No.1〜No.5)を調製した。
【0041】
【表2】

【0042】
(評価試験)
以上のようにして調製した代表的化合物No.1〜No.10を、そのままリン酸塩で処理したマグロの切り身につけて、100人に対して刺身の味の変化について、通常の醤油と比較して、○美味しくなった、△変わらない、×不味くなったの三点評価を行った。結果を表3に示す。
【0043】
【表3】

【0044】
表3の結果より、本発明の組成物を用いて刺身に直接適用すると、通常の醤油を使用した場合と比較して、美味しくなったと回答したものが約90%に増え、リン酸塩処理に由来する味の変化を解消することが可能であることが判る。一方、比較用組成物の場合には、本発明組成物と比較して、優位性が見出せなかった。なお、醤油代替組成物を用いたので醤油の量のおおい代表的組成物No.7を美味しいと感じた人が多く、一方、醤油量の少ない代表的組成物No.5を不味くなったと答えたものが二名いた。このことは、醤油代替組成物として本発明の組成物を用いる場合には醤油量を大目に配合した方が良好な結果が得られることを示している。
【0045】
(食材の加工)
次に、代表的組成物No.1〜No.12または比較用組成物No.1〜No.5を水で希釈して3%水溶液を調製した。
次いで、各3%水溶液中にリン酸塩処理された豚ブロックを30分間浸漬した後、備長炭の温度が、160℃を超え360℃以下でオーブン加熱(加熱時間15分間)して得られた白色粉末0.1gとともに煮て煮豚を調製した。比較例として未処理の煮豚と比較して○美味しくなった、△変わらない、×不味くなったの三点評価を100人に対して行った。結果を表4に示す。
【0046】
【表4】

【0047】
表4の結果より、本発明の組成物の希釈液を用いて豚ブロックに適用し、処理した豚ブロックを調理すると、未処理のものと比較して、美味しくなったと回答したものが約90%に増え、リン酸塩処理に由来する味の変化を解消することが可能であることが判る。一方、比較用組成物の場合には、本発明組成物と比較して、優位性が見出せなかった。なお、味噌をベースとした代表的組成物No.11およびNo.12と比較用組成物No.3とを比較すると、代表的組成物No.11およびNo.12を用いて美味しいと回答したものが8割以上あったのに対して、比較用組成物No.3の場合には不味いと答えたものが9割であった。
また、塩化カリウム、醤油が本発明の範囲内である比較用組成物No.4およびNo.5を美味しいと回答したものが比較的多っかた。このことは、本発明の組成物のうち、塩化カリウムが重要な役割を示していることを示唆している。
【0048】
以上のことから、本発明の組成物は、希釈して食材を浸漬することによって食材そのものの味を復元し、後の調理に有効に使用可能であることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸塩で処理された食材からリン酸塩により変性した食味を復元するための食材処理用組成物であって、水1Lに対して、塩化カリウム10〜70g、有効量のレシチン源、有効量の糖分、有効量のpH調整成分を含むことを特徴とする食材処理用組成物。
【請求項2】
前記レシチン源が、大豆発酵物であり、水1Lに対して300cc〜1000ccを添加することを特徴とする請求項1に記載の食材処理用組成物。
【請求項3】
前記糖分が黒砂糖、蜂蜜またはこれらの混合物であって、水1Lに対して20〜60gを添加することを特徴とする請求項1に記載の食材処理用組成物。
【請求項4】
前記レシチン源が醤油に基づくものであり、前記食材処理用組成物は醤油ベースの調味料として使用するものであることを特徴とする請求項3に記載の食材処理用組成物。
【請求項5】
リン酸塩で処理された食材からリン酸塩により変性した食味を復元する食材の処理方法であって、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の食材処理用組成物を水で1〜10容量%に希釈して希釈水溶液を調製する水溶液調製工程、
前記水溶液調製工程で調製された水溶液に常温でリン酸処理された食材を浸漬する工程
を含むことを特徴とする食材の処理方法。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の食材処理用組成物を水で1〜10容量%に希釈して希釈水溶液を調製する水溶液調製工程、
前記水溶液調製工程で調製された水溶液に常温でリン酸処理された食材を浸漬する浸漬工程、
有機化合物放出温度に加熱した備長炭を用いて調理する調理工程
を含むことをを特徴とする備長炭を用いた食材の調理方法。
【請求項7】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の食材処理用組成物を水で1〜10容量%に希釈して希釈水溶液を調製する水溶液調製工程、
前記水溶液調製工程で調製された水溶液に常温でリン酸処理された食材を浸漬する浸漬工程、
前記浸漬工程で処理された食材を密閉容器に収納するとともに、前記食材の酸化物を還元する還元性を有した添加物を含む調味液を、前記食材に加えて前記密閉容器を密閉し、前記密閉工程により密閉されて収納された前記食材を前記密閉容器ごと冷却する工程
を含むことを特徴とする食材の調理方法。

【公開番号】特開2006−211992(P2006−211992A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−30250(P2005−30250)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【出願人】(390036065)株式会社シービー (4)
【Fターム(参考)】