説明

食植性有用介類初期種苗用配合餌料およびその配合餌料の給餌方法

【課題】食植性有用介類の初期種苗(殻長0.5mm〜3mm)の飼育においてしばしば発生する餌料不足および餌料価値の低下による大量減耗・成長停滞を解消し高密度飼育に効果を示す食植性有用介類初期種苗用配合餌料およびその配合餌料の給餌方法を提供する。
【解決手段】食植性有用介類初期種苗用配合餌料は、食植性有用介類の初期種苗の消化機構および消化吸収に関与する細胞構造が二枚貝幼生と類似することを初めて見出し、二枚貝幼生に有効な浮遊性植物プランクトンを主たる成分とし、高密度に含有し、動物性蛋白質を含む補助材料を従たる成分とし、食植性有用介類の初期種苗が口器によって容易に摂餌できる大きさの成分で構成され、この配合餌料を、初期種苗が付着生息する飼育基質表面に、直径数mm以下の小塊で且つ数mm間隔の近距離で、霧状に噴霧して供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食植性有用介類(アワビ類(クロアワビ、メガイアワビ、マダカアワビ、エゾアワビ、トコブシ、およびオーストラリア、南アフリカ産のHariotis属アワビ類)サザエ類(サザエ、ヤコウガイ)、ナマコ類(マナマコ)、ウニ類(アカウニ、ムラサキウニ、キタムラサキウニ、エゾバフンウニ))の初期種苗(殻長0.5mm〜3mm)の飼育においてしばしば発生する餌料不足および餌料価値の低下による大量減耗・成長停滞を解消し高密度飼育に効果を示す食植性有用介類初期種苗用配合餌料およびその配合餌料の給餌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食植性有用介類の初期種苗(殻長0.5mm〜3mm)は基質表面に付着して生息し周辺の付着性の植物プランクトン類を主食するが、消化器系が未発達であるため餌料の質および量が成長・生残を左右する。また、1mm以下の種苗では口器の大きさから摂餌可能な餌料サイズに制限があり(10〜30μm)このことも成長・生残を左右する。
通常の種苗生産工程では自然発生する付着性の植物プランクトン類を餌料として栽培して飼育するが、これら付着性の植物プランクトン類の餌料は植生遷移の影響を受けるため、優良な餌料となる種類およびその生産量は経時的に変動する。
さらに、付着性の植物プランクトン類からなる餌料の生産量は付着基質の面積によって決定される。つまり餌料となる付着性の植物プランクトン類は高密度化することができない。
これらの理由により食植性有用介類の初期種苗の飼育では、付着性の植物プランクトン類からなる餌料の質の低下や量的不足を解決する有効な方法がなく、餌料不足および餌料価値の低下による大量減耗や生産効率の低下が発生する。
【0003】
天然において主たる餌料である付着性の植物プランクトン類を大量培養して供給する方法は、付着性植物プランクトンの生産量が光力を利用できる面積に比例するため、十分量の餌料を培養するには膨大な施設面積を必要とすることから実用性に乏しい。このため解決を目的として特開平11−46696に示される配合餌料の組成および使用方法が考案されたが、主成分は成体の主食である海藻類である。
【0004】
ところで、本願の発明者らは、食植性有用介類の初期種苗は消化器官消化機構および消化吸収に関与する細胞構造が二枚貝幼生に類似して未発達であることを、組織学方法によって初めて見出した。
すなわち、発明者らが初めて見出したところによると、食植性有用介類の初期種苗(殻長0.5mm〜3mm)では、成体の主たる消化吸収器官である消化盲嚢が未発達であるため、同器官の機能細胞による飲食胞作用および消化酵素の分泌が十分に期待できないことが明らかとなった(図1)。
【0005】
このため、食植性有用介類の初期種苗では、消化・吸収力が脆弱で、特開平11−46696の主成分である海藻を主な構成とするものを餌料として利用できない。従って特開平11−46696に示される海藻粉を主成分とする配合餌料では初期種苗(殻長0.5mm〜3mm)への餌料効果は期待できないことが明らかとなった。
また動物性蛋白質は補助的な栄養成分としては有効であるが、食植性有用介類はもともと植物性の餌料が主食であるため動物性蛋白質の消化能力が低く、特に消化盲嚢が未発達で消化・吸収力が脆弱な食植性有用介類の初期種苗においては、動物性蛋白質を餌料の主成分として使用することはできない。即ち、食植性有用介類の初期種苗の餌料として、特開平11−46696に示される魚粉等を餌料の主成分とする添加では、餌料効果の代替が全く期待できないことも明らかとなった。
【0006】
殻長0.5mm〜3mmの食植性有用介類の初期種苗に対する餌料の供給方法についても、特開平11−46696に示される餌料の加熱または乾燥させる方法での供給は、付着基質上の3mm以下の食植性有用介類初期種苗をあらかじめ除去する必要があり、付着基質上に生息させたままでの給餌は成立しない。しかも、3mm以下の食植性有用介類初期種苗の除去移動作業は実質的に困難であり、食植性有用介類初期種苗には適用できない。
また特開平11−46696に示される塗布による供給では、3mm以下の付着基質上の食植性有用介類初期種苗は塗布した配合餌料によって埋没死あるいは圧死が発生する。
さらに特開平11−46696に示される接着による供給では、移動能力の低い食植性有用介類の初期種苗に均一に餌料を供給するために数mm間隔の接着作業が必要であり実用性が低い。
従って、特開平11−46696に示される発明は、数cm以上の大きさとなった食植性有用介類種苗については適用可能であるが、殻長0.5mm〜3mmの食植性有用介類の初期種苗には全く適用できないし、参考にもならない。
【0007】
一方、本願発明が対象とする殻長0.5mm〜3mmの食植性有用介類の初期種苗の給餌方法では、食植性有用介類初期種苗を除去・移動させることなく繰り返し餌料を付着基質表面に供給する有効な供給方法が不可欠である。併せて食植性有用介類の初期種苗は口器によって付着基質表面の餌料を連続して削り取るように摂餌するため1回の摂餌行動によって摂取される餌料の量がわずかで、摂餌した餌料中の有効成分の量が重要となる。このため配合餌料には消化吸収可能な成分が高密度で含まれる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−46696
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、殻長0.5mm〜3mmの食植性有用介類の初期種苗に対する配合餌料には、
(1)消化吸収可能な餌料成分を主成分とすること
(2)初期種苗の口器によって容易に摂餌できる大きさの成分で構成されること
が求められる。
また、その配合餌料を給餌させるには、
(3)消化吸収可能な成分が高密度で含まれること
(4)移動能力の低い初期種苗が埋没死あるいは圧死せず容易に摂餌できる給餌が可能であること
(5)自然発生餌料や初期種苗を除去・移動させることなく繰り返し餌料を付着基質表面に供給することが可能であること
が求められる。
本発明はこれらの課題を解決することによって、食植性有用介類初期種苗用配合餌料および給餌方法を開発したものである。発明者は従来の自然発生餌料を用いた飼育方法との比較試験を行った結果、発明した配合餌料および給餌方法の有効性を見出すに至った。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するために、請求項1の発明の食植性有用介類初期種苗用配合餌料は、食植性有用介類の初期種苗の消化機構および消化吸収に関与する細胞構造が二枚貝幼生と類似することを初めて見出し、二枚貝幼生に有効な浮遊性植物プランクトンを主たる成分とし、食植性有用介類の初期種苗が口器によって容易に摂餌できる大きさの成分で構成される手段からなる。
発明者らは電子顕微鏡観察などの手法を用いて二枚貝浮遊幼生の消化器系を観察し、二枚貝浮遊幼生の飼育に用いられる浮遊性植物プランクトンが、消化盲嚢が未発達な初期幼生でも消化管内で容易に分解・吸収されることを確認した(図2)。
さらに食植性有用介類初期種苗においても二枚貝浮遊幼生と同様に消化盲嚢が未発達な時期があり、餌料は消化管内で容易に分解・吸収される必要があることを初めて見出した(図1)。
両者について、これらの形態的特徴の比較はこれまでに報告がなく、この新知見を得たことにより、従来の配合餌料で主成分として用いられる海藻ではなく、浮遊性植物プランクトンを主たる成分として用いる手段を発明した。
また、二枚貝浮遊幼生は食植性有用介類初期種苗に比較すると小型(0.06mm〜0.3mm)であるため口器も小さく、用いる浮遊性植物プランクトンの大きさは10μm前後である。これは食植性有用介類初期種苗の摂餌可能な餌料サイズ(10〜30μm)に適合する。
【0011】
また、以上の課題を解決するために、請求項2の発明の食植性有用介類初期種苗用配合餌料は、前記の請求項1の手段に加えて、主たる成分である浮遊性植物プランクトンを高密度に含有する手段からなる。
食植性有用介類の初期種苗は口器によって付着基質表面の餌料を連続して削り取るように摂餌するため、摂餌した餌料中の有効成分の密度が餌料の質を左右する。
ところで、浮遊性植物プランクトンは生産量が光力を利用できる面積に比例する付着性植物プランクトンと異なり立体的に光力を利用して培養するため、効率的(500〜5000万細胞/ml、付着性植物プランクトンの5〜50倍)な生産が可能である。これを遠心分離あるいはフリーズドライによって濃縮(4億細胞/ml以上)することで、主たる成分である浮遊性植物プランクトンを高密度に含有させることが可能となり、食植性有用介類の初期種苗が1回の摂餌で摂取する餌料量中に十分量の主成分を含むことができる。
また、この食植性有用介類初期種苗用配合餌料を給餌する場合には、浮遊性植物プランクトンは基質に対する付着性がないため、濃縮を行うだけでは食植性有用介類初期種苗は摂餌できない。このため給餌においては餌料成分を添着剤(寒天、ゼラチン、ゲル化炭化水素等の難水溶性糊剤)に封入し種苗の生息する付着基質上に添着固定する必要がある。
そこで、本発明の給餌される食植性有用介類初期種苗用餌料は、濃縮した主成分および粉末の従成分を添着剤に混入するため、主成分を高濃度となる1億細胞/ml以上2.5億細胞未満の密度で封入できる(図3)。これは同サイズの付着性植物プランクトンを1000〜2500倍量積層した量に匹敵する。植物プランクトンとして付着性のものに代えて浮遊性のものにしたことで初めて実現したのである。
【0012】
従って本発明による配合餌料は、主たる成分である浮遊性植物プランクトン、或いは必要に応じて植物プランクトンに含有されない動物性蛋白質を含む補助材料を従たる成分として人工的に配合し、また、給餌する場合には、添着剤中に主たる成分である浮遊性植物プランクトンを高密度に含有させて付着基質上に添着固定する食植性有用介類初期種苗用の餌料をいう。
【0013】
また、請求項1〜請求項2の食植性有用介類初期種苗用配合餌料の好ましい態様としては、栄養補完を目的として、動物性蛋白質を含む補助材料を従たる成分とし、食植性有用介類の初期種苗が口器によって容易に摂餌できる大きさの成分で構成されるのがよい。
食植性有用介類はもともと植物性の餌料が主食であるため動物性蛋白質の消化能力は低いが、主たる成分には含まれない動物性蛋白質は従たる成分(体積比率で20%以下)に含まれる範囲では、消化能力が低い食植性有用介類初期種苗でも少量は消化可能で、補助的な栄養成分として有効である。
また、前記したように、二枚貝浮遊幼生は食植性有用介類初期種苗に比較すると小型(0.06mm〜0.3mm)であるため口器も小さく、用いる補助剤の大きさは10μm前後に粉砕することで摂餌可能となる。これは食植性有用介類初期種苗の摂餌可能な餌料サイズ(10〜30μm)に適合する。
【0014】
また、以上の課題を解決するために、請求項5の食植性有用介類初期種苗用配合餌料の給餌方法は、請求項2の食植性有用介類初期種苗用配合餌料を、初期種苗が付着生息する飼育基質表面に、移動能力の低い初期種苗が埋没死あるいは圧死せず容易に配合餌料を摂餌できる直径数mm以下の小塊で且つ数mm間隔の近距離で、霧状に噴霧して供給する手段からなり、請求項6の食植性有用介類初期種苗用配合餌料の給餌方法は、請求項4の食植性有用介類初期種苗用配合餌料を,初期種苗が付着生息する飼育基質表面に、移動能力の低い初期種苗が埋没死あるいは圧死せず容易に配合餌料を摂餌できる直径数mm以下の小塊で且つ数mm間隔の近距離で、霧状に噴霧して供給する手段からなる。
請求項5及び請求項6の給餌方法では、霧状に噴霧供給することで、餌料は直径数mm以下例えば1〜2mm前後の小塊として基質上に数mm間隔例えば5〜10mm前後の近距離で多数添着する(図4)。この結果噴霧面に付着生息する初期種苗が埋没死することなく配合餌料への遭遇率を向上できる。また、この結果自然発生餌料の埋没は限定され、飼育基質上で共存することが可能となるため除去の必要はなく継続して繰り返し給餌することが可能である。
【発明の効果】
【0015】
以上の課題を解決するための手段を備えた本発明によれば、食植性有用介類初期種苗用配合餌料およびその配合餌料の給餌方法を用いることで、殻長0.5mm〜3mmの食植性有用介類初期種苗に対して消化吸収可能な餌料が効率的に経口摂取され、しばしば発生する餌料不足および餌料の質の低下による大量減耗・成長停滞を解消し、良好な高密度飼育を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(1)は殻長0.5mmのアワビ初期種苗の光学顕微鏡像を示し、像中の点線楕円は胃を示し、像中の右下側の横太線のスケールは50μmを示す。(2)は同図(1)の殻長0.5mmのアワビ初期種苗の胃に比較して未発達な消化盲嚢の光学顕微鏡像を示し、像中の点線楕円は未発達な消化盲嚢を示し、像中の矢印は消化盲嚢の数個にとどまる機能細胞を示し、像中の右下側の横太線のスケールは50μmを示す。(3)は消化盲嚢が発達している殻長4mmのアワビ種苗の消化器官の光学顕微鏡像を示し、像中の右下側の横太線のスケールは200μmを示す。
【図2】(1)は二枚貝浮遊幼生に摂餌され、胃腔内で消化吸収中の植物プランクトンの電子顕微鏡像を示し、像中の矢印は植物プランクトンを示し、像中の右下側の横太線のスケールは2μmを示す。(2)は餌料の植物プランクトンの電子顕微鏡像を示し、像中の右下側の横太線のスケールは2μmを示す。
【図3】本発明の給餌される配合餌料の添着剤内に封入される多数の浮遊性植物プランクトンの光学顕微鏡像を示し、像中の矢印は浮遊性植物プランクトンを示す。像中の右下側の横太線のスケールは50μmを示す。
【図4】付着基質に噴霧して添着させた本発明の配合餌料の部分拡大図を示し、図中の点在する点が添着した各々の配合餌料の小塊を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明を実施するための形態を説明する。本発明の食植性有用介類初期種苗用配合餌料は高密度に濃縮したChaetoceros calcitrans ,Chaetoceros gracillis,などの二枚貝浮遊幼生飼育に用いられる浮遊性植物プランクトン類を補助材料とともに添着剤に混合して作成する。添着剤に対する餌料成分の含有率は添着・付着剤の効果が失われない範囲においてできるだけ高率となる50%程度が望ましい。主成分と従たる成分の比は有効成分の体積比で主成分が100〜80%、従たる成分が20〜0%でよい。
作成された食植性有用介類初期種苗用配合餌料は、添着剤が液状を保つ温度に保持しながら種苗が着底している飼育基質面に対して微小な小塊として点在するように噴霧して付着させる。付着した餌料はすみやかに冷却され固化することで飼育基質面に付着・固定される。また、霧状に噴霧供給することで直径1〜2mm前後の小塊として基質上に5〜7mm前後間隔の近距離で多数添着する。餌料の追加給餌は摂餌状況に応じて随時行う。
【実施例】
【0018】
以下本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定したものではなく食植性有用介類(アワビ類(クロアワビ、メガイアワビ、マダカアワビ、エゾアワビ、トコブシ、およびオーストラリア、南アフリカ産のHariotis属アワビ類)サザエ類(サザエ、ヤコウガイ)、ナマコ類(マナマコ)、ウニ類(アカウニ、ムラサキウニ、キタムラサキウニ、エゾバフンウニ))の初期種苗(殻長0.5mm〜3mm)の種苗生産においても有効である。
【0019】
メガイアワビ初期種苗を用いた飼育実施例を示す。平均殻長488.7μm(約0.49mm)と520.0μm(約0.52mm)の2群のメガイアワビ種苗(日齢17)に対して、主成分として浮遊性植物プランクトン(学名 Chaetoceros gracillis、田崎真珠(株)製)および動物性蛋白質を含む補助材料として二枚貝用微粒子餌料(日本農産工業(株)製 商品名 NOSAN SHELLFISH MICRON M1)を用いて作成した食植性有用介類初期種苗用配合餌料を与えて比較実験を行った。
【0020】
主成分のChaetoceros gracillisは餌料中の密度が1.25〜2.5億細胞/ml(餌料中の含有体積比率40%、有効成分比80%)、二枚貝用微粒子餌料は乾燥重量で25〜50μg(餌料中の含有体積比率10%、有効成分比20%)となるように添着剤(1%寒天水溶液、餌料中の含有体積比率50%)に混合した。添着剤は水道水に粉末寒天を加え80℃前後に加熱して溶解して作成した。作成した添着剤は蛋白質の熱変性を抑えるため60℃に冷却して成分を混合・作成した。これを寒天水溶液が液状を維持する約50℃に保温しながら飼育基質100cm2(10cm×10cm)あたり0.52mlを噴霧して、配合餌料が1〜2mmの小塊として基質上に5〜7mm間隔で多数添着するように給餌した。配合餌料の添加は1週間毎に行い、対照区としては自然発生餌料による飼育群を用いた。比較実験は2回行い、飼育開始(日齢17)と終了(日齢87、平均殻長約2mm)の生残率、平均殻長および飼育基質1cm2あたりの飼育密度および生物量(飼育密度と平均殻長の積)を比較した。結果を表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
実験終了時の生残率は対照区では実験1で10%、実験2で16%であったのに対して実験区では実験1で24%、実験2で41%であった。また、飼育密度は対照区では実験1で0.15個体/cm2,実験2で0.19個体/cm2であったのに対して、実験区では実験1で0.34/cm2、実験2で0.67個体/cm2と実験区が2〜3倍の生残率および飼育密度を示した。平均殻長は両群とも実験区がやや大きかった。また、平均殻長と個体数を乗じて求めた生物量は2回とも実験区が対照区の約2〜3倍を示した。なお実験区、対照区ともに基質上の天然餌料は遷移により餌料価値の高い餌料種類の減少が観察された。
以上の結果から本発明の食植性有用介類初期種苗用配合餌料を用いることにより、種苗生産においてしばしば発生する餌料の量的不足あるいは餌料の質の低下による初期種苗の減耗・成長停滞の解消と高密度飼育の実現に効果があることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は産業上有用な食植性有用介類初期種苗用餌料における初期種苗の安定生産と生産効率の向上を可能にし、水産業における増養殖分野(養殖業および栽培漁業)において貢献度が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食植性有用介類の初期種苗の消化機構および消化吸収に関与する細胞構造が二枚貝幼生と類似することを初めて見出し、二枚貝幼生に有効な浮遊性植物プランクトンを主たる成分とし、食植性有用介類の初期種苗が口器によって容易に摂餌できる大きさの成分で構成されることを特徴とする食植性有用介類初期種苗用配合餌料。
【請求項2】
請求項1の食植性有用介類初期種苗用配合餌料は、主たる成分である浮遊性植物プランクトンを高密度に含有することを特徴とする食植性有用介類初期種苗用配合餌料。
【請求項3】
栄養補完を目的として、動物性蛋白質を含む補助材料を従たる成分とし、食植性有用介類の初期種苗が口器によって容易に摂餌できる大きさの成分で構成される請求項1記載の食植性有用介類初期種苗用配合餌料。
【請求項4】
栄養補完を目的として、動物性蛋白質を含む補助材料を従たる成分とし、食植性有用介類の初期種苗が口器によって容易に摂餌できる大きさの成分で構成される請求項2記載の食植性有用介類初期種苗用配合餌料。
【請求項5】
請求項2の食植性有用介類初期種苗用配合餌料を、初期種苗が付着生息する飼育基質表面に、移動能力の低い初期種苗が埋没死あるいは圧死せず容易に配合餌料を摂餌できる直径数mm以下の小塊で且つ数mm間隔の近距離で、霧状に噴霧して供給することを特徴とする食植性有用介類初期種苗用配合餌料の給餌方法。
【請求項6】
請求項4の食植性有用介類初期種苗用配合餌料を、初期種苗が付着生息する飼育基質表面に、移動能力の低い初期種苗が埋没死あるいは圧死せず容易に配合餌料を摂餌できる直径数mm以下の小塊で且つ数mm間隔の近距離で、霧状に噴霧して供給することを特徴とする食植性有用介類初期種苗用配合餌料の給餌方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−213602(P2010−213602A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62455(P2009−62455)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000214191)長崎県 (106)
【出願人】(502404416)WDB株式会社 (1)
【Fターム(参考)】