説明

食物サプリメントが濃縮された植物性乳カードに基づく食物ペーストを製造する方法、及びこれにより得られる食物ペースト

食物サプリメントが濃縮された植物性乳カードに基づく食物ペーストを製造する方法であって、得られるペーストが顕著な味を有し、動物乳由来の製品に特徴的な栄養の質を有するように、大きな割合での食物サプリメントの均一な組込みを可能とする、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品サプリメントが濃縮された植物性乳カードに基づく食品ペーストを製造する方法、及びこれにより得られる食品ペーストに関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、植物性乳カードに基づくチーズ食品ペーストを製造する方法、及びこれにより得られる食品ペーストに関する。
【0003】
特に、本発明は、豆乳カードに基づくチーズ豆腐を製造する方法、及び高含有量のチーズを有するチーズ豆腐に関する。
【背景技術】
【0004】
植物性乳は、植物性原料、例えば大豆、ココナツ、アーモンド、米、エンバク、オージャ(orgeat)等に基づく飲料である。これらの植物性乳は、商業的に購入することができる。
【0005】
植物性乳に基づく多くの食品ペーストは、或る特定の栄養素が欠乏している。したがって、植物性乳に基づく食品ペーストを製造する方法であって、顕著な割合、すなわち乾燥抽出物に基づく植物性乳の重量に対する食品サプリメント粉末の重量が10%より大きい割合での、1つ又は複数の食品サプリメントの導入を可能とする、方法を提唱することが望ましい。使用することができる食品サプリメントの例としては、チーズ粉末、ジャガイモ粉末、又は植物性乳と混合することが可能なように粉末形態の任意の他の食品サプリメントが挙げられる。
【0006】
特に、豆乳は、程度の差はあるが軟らかいペーストのケーキ又はブロックの形態の伝統的なアジアの製品である、豆腐の調製のために使用される。
【0007】
豆乳は、大豆の既知の処理であって、大豆を洗浄し、浸漬し、粉砕してブロスを得る、処理の産物である。その後このブロスを加熱し、濾過して豆乳を得る。
【0008】
豆腐を製造するために、カード及びホエーが得られるまで凝固剤を使用して豆乳を凝固させる。ホエーを廃棄し、カードを漉し布の中に置いた後、加圧して豆腐を得る。
【0009】
豆腐の味を向上させるために、豆腐の製造時にシトラスの抽出物又は香味料を添加することが既に提唱されている。しかしながら、得られる豆腐乾物に対するそれらの割合は非常に低い。加えてこれらは、豆腐の栄養の欠乏を補うことができる食品サプリメントではない。
【0010】
チーズを豆腐に添加することも提唱されている。この方法は、特許文献1に記載されており、アルカリ性物質によるチーズの処理、及び豆乳へのその添加を提唱している。特許文献1は、低粘性の流動性物質を作り出すためのチーズへの水の添加を提唱しており、この物質を脱水し噴霧乾燥する。これにより得られる粉末を、その後豆乳と混合する。
【0011】
しかしながら、この方法では、10重量%を超えるとチーズは豆乳中に組み込まれずホエーと共に失われるため、豆腐の調製時に豆乳乾燥抽出物の重量に対して10重量%以下のチーズ粉末しか豆乳中には組込むことができないことが見出されている。したがって豆腐のチーズ含有量は低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭61−195658号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、粉末形態の食品サプリメントが濃縮された食品ペーストを製造する方法であって、得られる食品ペーストが、向上した栄養の質、特に動物乳由来の製品に特徴的な栄養の質を有するように、大きな割合でのこの粉末の均一な組込みを可能とする、方法を提唱することに関する。
【0014】
特に、本発明は、チーズ豆腐を製造する方法であって、豆腐が、向上した栄養の質に加えて顕著なチーズ風味を有するように、大きな割合でのチーズの均一な組込みを可能とする方法を提唱することに関する。
【0015】
本出願人は、食品サプリメント粉末の製造を変更することにより、より大きな量の食品サプリメントを植物性乳中に組み込むことができ、得られる食品ペーストが、良好な均質性、良好なテクスチャ、向上した栄養の質、及び組み込まれた食品サプリメントに応じてより顕著な風味を有することを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的のために、本発明の主題の1つは、食品サプリメントが濃縮された植物性乳カードに基づく食品ペーストを製造する方法であって、以下の工程:
水中において食品サプリメント及び乳化剤を乳化する工程、
先の工程において得られる乳濁液を蒸気ロール上で乾燥させる工程であって、食品サプリメントの脱水したフィルムを得るように、約130℃〜150℃、好ましくは約140℃の温度で、及び該ロールの内部圧力が3.6bar〜7barであるような圧力で、該蒸気を該ロール中に注入する、乾燥させる工程、
脱水した食品サプリメント粉末を得るために、先の工程において得られるフィルムを粉砕する工程、
これにより得られる食品サプリメント粉末を植物性乳中に混合する工程、
カード及びホエーを得るために、先の工程において得られる混合物中に凝固剤を添加する工程、並びに
前記食品ペーストを得るように、前記ホエーを除去すると共に、前記カードを分離しその後加圧する工程
を含む、方法である。
【0017】
本発明の他の実施の形態によれば、
・前記食品サプリメントは、チーズ、チーズ類の混合物、果実、果実類の混合物、野菜、野菜類の混合物、及びそれらの混合物から選択され得る。
・前記植物性乳は豆乳であり得る。また前記カードを加圧した後で得られる食品ペーストは豆腐であり得る。
・前記食品サプリメント粉末を前記植物性乳と混合する工程は、以下の下位工程(substep):
水2用量〜5用量、好ましくは水3用量当たり食品サプリメント粉末1用量の割合で、水に前記食品サプリメント粉末を溶解する下位工程、及び
これにより得られる溶液を前記植物性乳と混合する下位工程
を含み得る。
・植物性乳乾燥抽出物の重量に対する脱水した食品サプリメント粉末の重量は、約11%〜100%、好ましくは約40%〜80%である。
【0018】
本発明は、食品サプリメントが濃縮された植物性乳カードに基づく食品ペーストであって、前述した製造する方法により得ることができ、植物性乳乾燥抽出物の重量に対する食品サプリメント粉末の重量が、約11%〜100%、好ましくは約40%〜80%である、食品ペーストにも関する。
【0019】
本発明の他の実施の形態によれば、
・前記食品サプリメントは、チーズ、チーズ類の混合物、果実、果実類の混合物、野菜、野菜類の混合物、及びそれらの混合物から選択される。
・前記植物性乳は豆乳であり得る。また前記カードを加圧した後で得られる食品ペーストは豆腐であり得る。
【発明を実施するための形態】
【0020】
明細書の残りの記載において、豆乳及びチーズ粉末からのチーズ豆腐の製造に関して本発明を説明する。
【0021】
本発明の1つの実施例によれば、蒸気乾燥ロール(Hatmakerの方法)を使用して、アルカリ処理されたチーズからチーズ粉末を調製する。
【0022】
以下の表に実施例を列挙して、様々な種類の出発材料に対して行うアルカリ処理を示す。
【0023】
【表1】

【0024】
これらの出発材料は、「原産地呼称(designation of origin)」チーズ、例えばカマンベール又はブリ(Brie)、及び商標名で提供される工業的チーズ(Saint Albray(登録商標)、Chaumes(登録商標)、Fol Epi(登録商標)、Bresse Bleu(登録商標)、Etorki(登録商標)、Chavroux(登録商標)及びCaprice des Dieux(登録商標)チーズ・スペシャルティ)の両方である。
【0025】
本発明による方法に従って、チーズ出発材料を水中で乳化剤と予備混合する。乳化工程時に乳化剤を使用して、均一な混合物を得る。食品サプリメントがチーズ又はチーズ類の混合物である場合、乳化剤は混合用塩である。例えば、使用することができる混合用塩は、リン酸ナトリウム、オルトリン酸ナトリウム、及び好ましくはJoha社から得られる塩Joha−S9Dである。後者の混合用塩は、方法の残りの工程に関して優れた混合を可能とし、pHを増大させ、イオン交換を向上させ、クリーム化力(creaming power)を有しない。
【0026】
その後この乳濁液を、Hatmakerの蒸気ロール上で、130℃〜150℃、好ましくは140℃の温度で、及び該ロールの内部圧力が3.6bar〜7barであるような圧力で、乾燥させる。この目的のために、例えば8bar〜14bar、好ましくは10bar〜12barの圧力で、圧力を注入する。蒸気ロールの上を通した後、脱水したチーズフィルムが得られ、これを、例えば回転ブラシにより、又は任意の他の粉砕手段により、粉末にする。「脱水したフィルム又は粉末」という用語は、5重量%未満の水を含有するフィルム又は粉末を意味する。
【0027】
温度及び圧力を、乳濁液の均質性に応じて適合させることができる。乳濁液が非常に均質である場合、温度及び圧力は高くてもよい。乳濁液が均質でない場合、成分を燃やさないように、温度及び圧力を低減すべきである。
【0028】
これにより得られた脱水したチーズ粉末を、その後の豆乳カードに基づくチーズ豆腐の調製のために貯蔵してもよい。
【0029】
この豆腐の調製のために、チーズが乳中で再水和した状態となるように、先に得られたチーズ粉末を豆乳と混合する。
【0030】
驚くべきことに、植物性乳乾燥抽出物の重量に対する先に得られた脱水したチーズ粉末の重量は、約11%〜100%、好ましくは約40%〜80%である。チーズ粉末は、タンパク質のより大幅な変性に基づき、微粒化により得られた粉末の再水和能力より高い再水和能力を有する。したがってチーズ粉末はより良好なゲル化力を有し、そのようなものとして粉末及び植物性乳の混合が、乳化剤を添加する必要なく容易に起こる。
【0031】
例えば、蒸気ロール上で脱水したチーズ粉末0.2kgを、豆乳乾燥抽出物の量が約1.8kgであるような量の豆乳と混合することにより、第1のチーズ豆腐を調製した。100%の収率でこの混合物を調製した、すなわち全ての混合したチーズが豆腐中に見出された。したがって植物性乳乾燥抽出物の重量に対する脱水したチーズ粉末の重量は、約11%(0.2/1.8×100)である。
【0032】
蒸気ロール上で脱水したチーズ粉末1.8kgを、豆乳乾燥抽出物の量が約1.8kgであるような量の豆乳と混合することにより、第2のチーズ豆腐も調製した。実質的に100%に等しい収率でこの混合物を調製した、すなわち事実上全ての混合したチーズが豆腐中に見出され、極めて小量がホエー中に見出された。したがって植物性乳乾燥抽出物の重量に対する脱水したチーズ粉末の重量は、約100%(1.8/1.8×100)である。
【0033】
高温の、すなわち好ましくは80℃〜95℃の温度の豆乳を用いて、この混合物を調製する。好ましくは、チーズ粉末を、水2用量〜5用量当たり、好ましくは水3用量当たりチーズ粉末1用量の割合で、事前に水中で再水和させる。これにより得られた溶液をその後、豆乳と混合する。
【0034】
その後凝固剤をこの混合物に添加して、混合物を凝固させる。使用することができる凝固剤は、例えば「にがり」(水及び塩化ナトリウムを取り出した海水から得られる残渣から形成される伝統的な日本の凝固剤)、塩化マグネシウム、無水形態又は水和形態の塩化カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、グルコノ−デルタ−ラクトン等である。
【0035】
これにより得られた製品は、ホエーとして知られる液体部分、及びカードとして知られる固体部分から構成される。
【0036】
ホエーを廃棄し、カードを加圧して、所望の堅さの豆腐を得るのに十分な量の液体を除去する。その後この豆腐を加圧機から取り出し、切り出し、消費用に包装する。
【0037】
蒸気ロール上でチーズ粉末を調製することにより、この粉末は、植物性乳乾燥抽出物の重量に対する脱水したチーズ粉末の重量により約11%より大きくかつ最大約100%の高い割合で、100%に近い(すなわち、乳中に組み込まれた実質的に全てのチーズが豆腐中に見出される)収率で、組み込むことが可能であるという特徴を有する。
【0038】
加えて、粉末及び乳のこの混合物は、さらなる添加(例えば乳化剤の)を行うことなく容易に得られ、その安定性は豆腐の製造に適合する。
【0039】
これにより得られた豆腐は、大量のチーズ風味と共に、加えて、わずかな加熱調理味を有する。
【0040】
これにより得られた豆腐では、豆乳乾燥抽出物の重量に対するチーズ粉末の重量は、約11%〜100%、好ましくは約40%〜80%であり得る。これらの割合において、豆乳中に組み込まれたチーズの約100%が豆腐中に見出される。
【0041】
植物性乳乾燥抽出物の重量に対する脱水したチーズ粉末の重量の比率が100%を超えると、材料の損失の問題が生じる、すなわち豆乳と混合したチーズ粉末の幾らかはカード中に見出されず、ホエーと共に除去される。それにより収率が影響を受ける。植物性乳乾燥抽出物の重量に対する脱水したチーズ粉末の重量の比率が約11%未満であると、得られた食品ペーストは十分に顕著なチーズ風味を有さず、栄養素が十分に濃縮されていない。
【0042】
他の実施の形態によれば、食品サプリメントは、果実、果実類の混合物、野菜、野菜類の混合物、及びそれらの混合物から選択され得る。例えば、ジャガイモ、ニンジン、豆、ナスビ等を使用することができる。好ましくは、食品サプリメントは、高いタンパク質含有量を有するものから選択される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品サプリメントが濃縮された植物性乳カードに基づく食品ペーストを製造する方法であって、以下の工程:
水中において食品サプリメント及び乳化剤を乳化する工程、
先の工程において得られる乳濁液を蒸気ロール上で乾燥させる工程であって、食品サプリメントの脱水したフィルムを得るように、約130℃〜150℃、好ましくは約140℃の温度で、及び該ロールの内部圧力が3.6bar〜7barであるような圧力で、該蒸気を該ロール中に注入する、乾燥させる工程、
脱水した食品サプリメント粉末を得るために、先の工程において得られるフィルムを粉砕する工程、
これにより得られる食品サプリメント粉末を植物性乳中に混合する工程、
カード及びホエーを得るために、先の工程において得られる混合物中に凝固剤を添加する工程、並びに
前記食品ペーストを得るように、前記ホエーを除去すると共に、前記カードを分離しその後加圧する工程
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記食品サプリメントが、チーズ、チーズ類の混合物、果実、果実類の混合物、野菜、野菜類の混合物、及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記植物性乳が豆乳であり、前記カードを加圧した後で得られる食品ペーストが豆腐である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記食品サプリメント粉末を前記植物性乳と混合する工程が以下の下位工程(substep):
水2用量〜5用量、好ましくは水3用量当たり食品サプリメント粉末1用量の割合で、水に前記食品サプリメント粉末を溶解する下位工程、及び
これにより得られる再水和した食品サプリメントの溶液を前記植物性乳と混合する下位工程
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
植物性乳乾燥抽出物の重量に対する脱水した食品サプリメント粉末の重量が、約11%〜100%、好ましくは約40%〜80%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
食品サプリメントが濃縮された植物性乳カードに基づく食品ペーストであって、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造する方法により得ることができ、植物性乳乾燥抽出物の重量に対する食品サプリメント粉末の重量が、約11%〜100%、好ましくは約40%〜80%である、食品ペースト。
【請求項7】
前記食品サプリメントが、チーズ、チーズ類の混合物、果実、果実類の混合物、野菜、野菜類の混合物、及びそれらの混合物から選択される、請求項6に記載のチーズ食品ペースト。
【請求項8】
前記植物性乳が豆乳であり、前記カードを加圧した後で得られる食品ペーストが豆腐である、請求項6又は7に記載のチーズ食品ペースト。

【公表番号】特表2012−501666(P2012−501666A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526527(P2011−526527)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【国際出願番号】PCT/FR2009/001077
【国際公開番号】WO2010/029226
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(503226316)
【Fターム(参考)】