説明

食用カニの管理システム

【課題】 食用カニ、特に地域ブランドが付された食用カニのブランド価値を守り、より高めていくための管理システムが格別に存在していなかったという点である。
【解決手段】 食用カニの管理システムは水揚げ情報の管理センタに設置されたサーバに対し、水揚げされたカニの各個体に対して付与されたID番号と、少なくともその水揚げ日、水揚げ漁港、船主を含む水揚げ情報を、パーソナルコンピュータをはじめとする情報入力手段を介して入力保存し、前記したカニの各個体の流通過程及び最終消費者は、前記した水揚げ情報を、カニの各個体に付設された二次元コードを携帯電話に設けられたカメラで撮影し、前記サーバから前記した水揚げ情報を携帯電話の画面で確認できることとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食用カニの管理システム、特に地域ブランドが付された水産上の重要種カニの管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、寒海系の種で水産上の重要種の一つとされるズワイガニは福井県近辺では越前ガニと称され、鳥取、島根両県をはじめ各地でマツバガニと称される。特に福井県近辺で水揚げされ、越前ガニと称されるズワイガニはその味のよいことから珍重され、各地へそのブランド名を付して出荷され、県内をはじめとする各地の飲食店やホテル、旅館等において顧客に供されている。
【0003】
しかしながら、現状では「越前ガニ」の場合、単に「越前ガニ」と表記したタグをカニ個体に取り付けて流通させ、食に供する場合にはそのカニ個体の傍らにそのタグを添え置くことだけで、越前ガニであることの情報提供もしくは提供側としての主張がなされていた。
【0004】
そのために時として、水揚げ漁港、即ち漁獲地が異なるズワイガニや水揚げ後の日数がたち鮮度が落ちたもの等も、消費者や卸業者に供されることもあり、特に直接的に食する消費者はその味覚に落胆してしまい、リピーターが少なくなるばかりか、悪評がたってしまうこともあり、地元産業としては大きな痛手をこうむってしまうこともあった。
【特許文献1】特許第3355366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする問題点は、食用カニ、特に地域ブランドが付された食用カニのブランド価値を守り、より高めていくための管理システムが格別に存在していなかったという点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した問題点を解決するために、本発明に係る食用カニの管理システムは水揚げ情報の管理センタに設置されたサーバに対し、水揚げされたカニの各個体に対して付与されたID番号と、少なくともその水揚げ日、水揚げ漁港、船主を含む水揚げ情報を、パーソナルコンピュータをはじめとする情報入力手段を介して入力保存し、前記したカニの各個体の流通過程及び最終消費者は、前記した水揚げ情報を、カニの各個体に付設された二次元コードを携帯電話に設けられたカメラで撮影し、前記サーバから前記した水揚げ情報を携帯電話の画面で確認できることを特徴としている。
【0007】
また、本発明に係る食用カニの管理システムは前記したID番号は結束型のタグ内に埋設された超小型の無線ICチップ(ミューチップ)に書き込まれていることを特徴とし、前記した二次元コードは前記したタグの外表面一部にシールとして貼着あるいは直接的に刻設してあることを特徴とし、前記した二次元コードには管理センタに設置されたサーバのホームページアドレスも情報として収納してあることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る食用カニの管理システムは上記のように構成されている。そのため水揚げ漁港において、出荷に先立ってカニの各個体に対し、脱落がないよう取り付けられる結束型のタグ内には予め専用データ(ID番号)が記録されたミューチップと二次元コードが付されているため、この二次元コードを携帯電話のカメラで撮影すると、ID番号や水揚げ情報が入力登録された管理センタのホームページから各個体についての水揚げ情報を、即時に携帯電話の画面で確認することができ、最終消費者や中間の流通業者も安心して食したり、取引を行うことができ、加えて、かかるタグが付されることで従来では獲得することが困難であった地域ブランドに対する信用、信頼も蓄積されることとなり、経時的にも粗悪品を排除していくことができ、その経済的な効果も大きなものとなるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図として示す実施例のように構成することで実現した。
【実施例1】
【0010】
次に、本発明の好ましい実施の一例を図面を参照して説明する。図1は本発明に係る食用カニの管理システムを示す図、図2は同じくカニ個体に取り付けられるタグを示す正面図、図3は同じく背面図、図4は同じく側面図、図5は同じく図2中のA−A線拡大断面図である。
【0011】
まず、本発明の実施は、食用カニ、特に福井県近辺の漁港で地域ブランドとしての越前ガニが水揚げされた時点で開始される。各漁港には水揚げされた各カニの個体に取り付けられるタグ1、1‥が多数用意されており、このタグ1をカニ個体の一体について一つづつ取り付けを行うが、この取り付けは特に脱落の虞のないハサミ脚に対してなされる。
【0012】
前記したタグ1、1‥をカニ個体に取り付けた後、出荷前に水揚げ情報の管理センタ2に設置されたウェブサーバ3に情報をインターネットを介して送り、登録することとなる。この作業はパーソナルコンピュータ4をはじめ、その他の入力装置が用いられる。
【0013】
前記したタグ1はプラスチックで成形されており、本実施例では表面側にカニを模した形態の偏平部5を有し、その偏平部5の下方に延設された連結部6と、その連結部6の下方に一体に設けられた係合部7とを備えており、係合部7には等ピッチで大径部7a、7a‥が連続して形成され、その大径部7aの下方は錐状とされたものとなっている。
【0014】
また、前記した偏平部5の下端寄りには前記した係合部7及び連結部6をループ状に曲成させて、その先端から挿通を行う係止部8が一体に設けられている。この係止部8は後端を球面状としてそこに挿し込み口8aを形成した筒状となっており、この挿し込み口8aの内側開口縁には使用時に拡開されるバネ性を有した係止片8bが放射状に形成されている。即ち、挿し込み口8aからループ状に曲成させた係合部7の先端を挿通させると、係止片8bの内面に沿って下方を錐状とした大径部7a、7a‥が順次進み、その先端を係止部8の前面開口から突出させ、これを摘んで引き絞ることで、ハサミ脚に対し、密に結束状態で取り付けることができる。大径部7a、7a‥が連続して多数形成されているため、種々のハサミ脚の外径に対し、その引き絞りを調整でき、最終的な大径部7aと係止片8bとの係合によってロックされ、このタグ1の脱落や取り外しが防止されるもので、このタグ1を人為的に外す場合は係合部7をカッターや鋏で切断して切り離すこととなる。
【0015】
さらに、前記したタグ1の偏平部5には超小型の無線ICチップ(ミューチップ)9がラミネート加工によって埋設内蔵されている。元来ミューチップは紙に埋め込まれることを想定して開発されたICで、無線通信機能とROM機能のみを持つ単純なチップ構成であり、外から見た場合の機能は自分のID番号を知らせる機能のみとなる。そのため、このミューチップ9の使用に関してはチップ上のID番号と他のデータをサーバ上で関連づけて保存することとなり、本実施例ではタグ1をカニ個体に取り付けて、管理センタ2のウェブサーバ3に登録する際には各タグ1、1‥のID番号と水揚げ情報(漁港、船主、水揚げ日)を関連づけた状態で登録することとなる。
【0016】
そして、前記したタグ1の偏平部5の本実施例にあって背面には二次元コード10、特にQRコード(デンソーウェーブ社開発)がプリントシールとして、あるいはレーザ等による刻設で設けられている。これによって、前記したミューチップ9は二次元コード10付のものとして作用できるものとなり、この二次元コード10には少なくとも管理センタ2のウェブサーバ3のホームページアドレスが収容されている。
【0017】
前記したタグ1が取り付けられたカニ個体はその状態で流通され、飲食店等において食に供せられる場合は調理され、そのタグ1は外されてそのカニ個体に添えられて出されるが、その最終消費者や流通途中の卸業者や小売店等にあっても、前記した二次元コード10を携帯電話11に設けられたカメラで撮影すると、その撮影によってウェブサーバ3のホームページアドレスが取り込まれ、このウェブサーバ3のホームページとインターネットを介して接続され、ミューチップ9から読み取られるID番号に基づいて各カニ個体の水揚げ情報が携帯電話11の画面に即時表示されることとなる。
【0018】
前記した水揚げ情報には前記したように、少なくとも漁港、船主、水揚げ日が含まれており、消費者は供された越前ガニが、いつ、どこで、誰によって捕獲されたかが明確に把握でき、安心感と信頼をもって食することができるようになり、信頼性に加え、親密感も得られるものとなる。
【0019】
さらに、管理センタ2にあっては登録されたカニ個体のID番号や水揚げ情報を所定の日数の経過によって削除していくことも可能となり、それによって鮮度の失われたカニ個体を地域ブランド品として出回ることを防止することもできるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明に係る食用カニの管理システムは上記のように構成されている。実施例にあっては越前ガニを一応の対象としているが、これにこだわらずマツバガニとしてのズワイガニや、魚地を特定してのタラバガニや毛ガニ等の水産重要種のカニについても応用実施することができる。
【0021】
また、タグ1の形態も実施例の形態にこだわらず、種々の外観デザインのものとすることが可能で、加えて、色彩や模様を変える事等で、水揚げ漁港を当初より明確とすること等も行うことができるもので、二次元コード10もQRコードのほか、他に発表されているタイプのものを使用することも勿論可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る食用カニの管理システムを示す図である。
【図2】カニ個体に取り付けられるタグを示す正面図である。
【図3】背面図である。
【図4】側面図である。
【図5】図2中のA−A線拡大断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 タグ
2 管理センタ
3 ウェブサーバ
4 パーソナルコンピュータ
5 偏平部
6 連結部
7 係合部
7a 大径部
8 係止部
8a 挿し込み口
8b 係止片
9 ミューチップ
10 二次元コード
11 携帯電話

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水揚げ情報の管理センタに設置されたサーバに対し、水揚げされたカニの各個体に対して付与されたID番号と、少なくともその水揚げ日、水揚げ漁港、船主を含む水揚げ情報を、パーソナルコンピュータをはじめとする情報入力手段を介して入力保存し、前記したカニの各個体の流通過程及び最終消費者は、前記した水揚げ情報を、カニの各個体に付設された二次元コードを携帯電話に設けられたカメラで撮影し、前記サーバから前記した水揚げ情報を携帯電話の画面で確認できることを特徴とする食用カニの管理システム。
【請求項2】
前記したID番号は結束型のタグ内に埋設された超小型の無線ICチップ(ミューチップ)に書き込まれていることを特徴とする請求項1に記載の食用カニの管理システム。
【請求項3】
前記した二次元コードは前記したタグの外表面一部にシールとして貼着あるいは直接的に刻設してあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の食用カニの管理システム。
【請求項4】
前記した二次元コードには管理センタに設置されたサーバのホームページアドレスも情報として収納してあることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3に記載の食用カニの管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−70925(P2008−70925A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246334(P2006−246334)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000227711)日邦産業株式会社 (29)
【出願人】(597157439)株式会社アートテクノロジー (5)
【Fターム(参考)】