説明

食道腺癌の診断及び治療のための方法及び組成物

【課題】食道癌腫との関連においては、食道扁平上皮癌患者の腫瘍サンプルにおいて、核中のpri−miRNAからpre−miRNAへの変換レベルで作用するmiRNAプロセシング酵素、RNASENの増加した発現を最近の研究は示しており、食道腫瘍進行におけるmiRNAの役割を示唆している。最近、扁平上皮食道、バレット食道、噴門及び癌間でのmiRNAの発現差違が報告されているけれども、それらのサンプルサイズは限定されていた。食道腺癌に内在する生物学的メカニズムのよりよい理解は、生存率を増加させることを希望する、早期診断及びより有効な治療選択肢に極めて重要である。
【解決手段】食道腺癌及びバレット食道付随腺癌の診断、予後判定及び/又は治療のための方法及び組成物がマーカーとともに開示されており、相違は食道腺癌、扁平上皮癌、及び/又はバレット食道付随腺癌又はそれらへの素因を示す。本発明は、それらに対する抗癌剤を同定する方法及び組成物も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その全開示が本明細書において特別に援用される、2007年10月11日に提出された米国仮出願番号第60/979,300号の優先権を主張する。
【0002】
連邦委託研究に関する記載
本発明は、National Cancer Institute 助成金番号xxxのもと政府支援で行われた。政府は本発明にある種の権利を有する。
本発明の技術分野及び工業的応用性
本発明は一般的には分子生物学の分野に関する。より特定的には、食道癌及びバレット食道のためのバイオマーカーを含んでいる方法及び組成物に関する。本発明のある側面は、バレット食道(Barrett’s esophagus)及び腺癌(adenocarcinoma)及び扁平上皮癌(squamous cell carcinoma)を含む食道癌の診断、治療及び予後における応用を含む。
【背景技術】
【0003】
このセクションで開示された背景技術が合法的に先行技術を構成すると認められるものはない。
食道癌は、8番目に多い癌であり、全世界の癌死の6番目に多い原因である。しばしば後期で診断され、罹患患者の生存率は欧州の10%から米国での16%の範囲であり、非常に低い。食道癌の発生率は地理的位置により(中国、南東部アフリカ、及び日本で最も多くみられる)、及び性別により(男性は女性より多く罹患する(7:1比))大きく異なる。しかしながら近年、米国においては、主として胃逆流及び肥満により起こされるバレット食道関連腺癌の発生率が上昇しており、一方、主としてたばこ及びアルコールの消費により起こされる扁平上皮癌の発生率が減少している
【0004】
バレット食道は慢性の胃食道逆流から生じ、異形成円柱上皮による正常食道扁平細胞上皮の置き換えにより特徴付けられる。この慢性炎症状態は、食道腺癌の前兆としてよく認識されている5,6
【0005】
miRNAは、mRNAの翻訳を調節する、小さな(20〜24ヌクレオチド)、よく保存された,非翻訳RNA分子である7−9。1993年のC.エレガンスにおける最初のmiRNA、lin−4の発見10以来、miRNA登録には、2002年における218から2007年における4584までの配列が収められており、霊長類、齧歯類、鳥類、魚類、虫類、ハエ類、植物及びウイルス類におけるmiRNAが含まれている11,12。ヒトにおいては、300を超えるmiRNAが発見されている。成熟miRNAは、数百塩基対を含有する一次miRNA(pri−miRNA)分子から発生し、一次miRNAはさらに核においてドローシャ(Drosha)及びパーシャ(Pasha)によりpre−miRNAにプロセシングされる13−15。pre−miRNAは次ぎに細胞質へ搬出され、ダイサー(Dicer)により、小さな、〜22ヌクレオチド長のRNA二本鎖へさらにプロセシングされる16,17
【0006】
機能性miRNA鎖は次ぎに、ダイサー、TRBP及びアルゴノート(Argonaute)2複合体を含むRISC複合体内に結合する3,18。動物において、このmiRNA−RISC複合体は、部分的配列相補性を介してその標的mRNAに結合し、それにより翻訳を阻止する19。各miRNAは、数百の遺伝子の転写後調節に役割を果たしていると考えられており、そして所与の遺伝子の翻訳阻止は一つより多くのmiRNAの結合を必要とするであろう19。miRNAのこの広範な影響は、それらの到る所に存在する役割、及び遺伝的及び疾患経路の大半における関与を示唆する。
【0007】
近年、増加している研究は、種々のヒト癌におけるmiRNAの役割を示して来ており20、ほとんどの腫瘍タイプにおける変化したmiRNA発現を示している21,22。加えて、miRNAはしばしば、脆弱部位又は癌に関連したゲノム領域に位置している23,24。癌におけるmiRNAの関与は、慢性リンパ球性白血病において最初に報告されており、腫瘍症例の〜68%においてmir−15及びmir−16が下方制御されていた25。続いての発現研究は、B細胞リンパ腫におけるmir−15526及びmir−17−92座位27の関与、結腸直腸癌におけるmir−143及びmir−145の減少した発現28、神経膠芽腫におけるmir−21の過剰発現29、及び肺癌組織におけるlet−7の減少した発現及びその生存との関係30を示してきた。最近、我々及び関係者は、肺癌診断及び予後におけるlet−7及びmir−155の関与を報告し(19〜22)31、そしてmiR−21の高発現は結腸癌の悪い生存率及び治療結果と関係があった[Schetter A, JAMA 2008, PMID: 18230780]。他の発現プロファイリング研究は、膵臓癌32、乳癌33及び乳頭様甲状腺癌34におけるmiRNAシグナチャの同定を可能にした。重要なことは、マウス35及び非ヒト霊長類[Elmen J, Nature 2008, PMID: 18368051]においてmiRNAを発現抑制するためのantagomirの成功裡の使用は、治療におけるmiRNAの使用の可能性を示唆している。
【0008】
食道癌腫との関連においては、食道扁平上皮癌患者の腫瘍サンプルにおいて、核中のpri−miRNAからpre−miRNAへの変換レベルで作用するmiRNAプロセシング酵素、RNASENの増加した発現を最近の研究は示しており、食道腫瘍進行におけるmiRNAの役割を示唆している36。最近、扁平上皮食道、バレット食道、噴門及び癌間でのmiRNAの発現差違が報告されているけれども、それらのサンプルサイズは限定されていた37
【0009】
食道腺癌に内在する生物学的メカニズムのよりよい理解は、生存率を増加させることを希望する、早期診断及びより有効な治療選択肢に極めて重要である。
これらの疾患を治療するための療法についての多大な研究にもかかわらず、効果的に診断及び治療することは困難なままであり、そして患者で観察された死亡率は、本疾患の診断、治療及び予防に改善が必要とされていることを示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Parkin, DM, Bray, F, Ferlay, J, Pisani, P (2005) Global cancer statistics, 2002. CA Cancer J Clin 55:74-108.
【非特許文献2】Sant, M et al. (2003) EUROC ARE-3: survival of cancer patients diagnosed 1990-94- results and commentary. Ann.Oncol. 14 Suppl 5:v61-118.
【非特許文献3】(2007) Surveillance and Epidemiology and End Results (SEER).
【非特許文献4】Crew, KD, Neugut, AI (2004) Epidemiology of upper gastrointestinal malignancies. Semin. Oncol. 31:450-464.
【非特許文献5】Crew, KD, Neugut, AI (2004) Epidemiology of upper gastrointestinal malignancies. Semin. Oncol. 31:450-464.
【非特許文献6】Cameron, AJ, Ott, BJ, Payne, WS (1985) The incidence of adenocarcinoma in columnar-lined (Barrett's) esophagus. N. Engl. J.Med. 313:857-859.
【非特許文献7】Maley, CC, Rustgi, AK (2006) Barrett's esophagus and its progression to adenocarcinoma. J.Natl. Compr.Canc.Netw. 4:367-374.
【非特許文献8】Lagos-Quintana, M, Rauhut, R, Lendeckel, W, Tuschl, T (2001) Identification of novel genes coding for small expressed RNAs. Science 294:853-858.
【非特許文献9】Lau, NC, Lim, LP, Weinstein, EG, Bartel, DP (2001) An abundant class of tiny RNAs with probable regulatory roles in Caenorhabditis elegans. Science 294:858- 862.
【非特許文献10】Lee, RC, Ambros, V (2001) An extensive class of small RNAs in Caenorhabditis elegans. Science 294:862-864.
【非特許文献11】Lee, RC, Feinbaum, RL, Ambros, V (1993) The C. elegans heterochronic gene lin-4 encodes small RNAs with antisense complementarity to lin-14. Cell 75:843- 854.
【非特許文献12】Griffiths-Jones, S et al. (2006) miRBase: microRNA sequences, targets and gene nomenclature. Nucleic Acids Res 34:D140-D144.
【非特許文献13】Griffiths-Jones, S (2004) The microRNA Registry. Nucleic Acids Res. 32:D1O9-D111.
【非特許文献14】Bartel, DP (2004) MicroRNAs: genomics, biogenesis, mechanism, and function. Cell 116:281-297.
【非特許文献15】Esquela-Kerscher, A, Slack, FJ (2006) Oncomirs - microRNAs with a role in cancer. Nat.Rev. Cancer 6:259-269.
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【非特許文献17】Lu, J et al. (2005) MicroRNA expression profiles classify human cancers. Nature 435:834-838.
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【非特許文献21】Esquela-Kerscher, A et al. (2008) The let-7 microRNA reduces tumor growth in mouse models of lung cancer. Cell Cycle 7:759-764.
【非特許文献22】Johnson, SM et al. (2005) RAS is regulated by the let-7 microRNA family. Cell 120:635-647.
【非特許文献23】Takamizawa, J et al. (2004) Reduced expression of the let-7 microRNAs in human lung cancers in association with shortened postoperative survival. Cancer Res. 64:3753-3756.
【非特許文献24】Schetter, AJ et al. (2008) MicroRNA expression profiles associated with prognosis and therapeutic outcome in colon adenocarcinoma. JAMA 299:425-436.
【非特許文献25】Budhu, A et al. (2008) Identification of metastasis-related microRNAs in hepatocellular carcinoma. Hepatology 47:897-907.
【非特許文献26】Lee, EJ et al. (2007) Expression profiling identifies microRNA signature in pancreatic cancer. Int.J.Cancer 120:1046-1054.
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【非特許文献29】Krutzfeldt, J et al. (2005) Silencing of microRNAs in vivo with 'antagomirs'. Nature 438:685-689.
【非特許文献30】Elmen, J et al. (2008) LNA-mediated microRNA silencing in non-human primates. Nature
【非特許文献31】Sugito, N et al. (2006) RNASEN regulates cell proliferation and affects survival in esophageal cancer patients. Clin Cancer Res 12:7322-7328.
【非特許文献32】Feber, A et al. (2008) MicroRNA expression profiles of esophageal cancer. J Thorac.Cardio vase. Surg. 135:255-260.
【非特許文献33】Watson, DI et al. (2007) Hp24 microrna expression profiles in barrett's oesophagus. ANZ.J.Surg. 77 Suppl 1:A45.
【非特許文献34】Watson, DI et al. (2007) Hp24 microrna expression profiles in barrett's oesophagus. ANZJ Surg. 77 Suppl 1:A45.
【非特許文献35】Liu, CG et al. (2004) An oligonucleotide microchip for genome- wide microRNA profiling in human and mouse tissues. Proc Natl Acad Sci U. S. A 101:9740- 9744.
【非特許文献36】Calin, GA et al. (2004) Human microRNA genes are frequently located at fragile sites and genomic regions involved in cancers. Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 101:2999-3004.
【非特許文献37】Esquela-Kerscher, A et al. (2008) The let-7 microRNA reduces tumor growth in mouse models of lung cancer. Cell Cycle 7:759-764.
【発明の概要】
【0011】
第一の広範な側面において、対象における病理学的状態を評価するための方法がここに提供され、その方法は一つまたはそれ以上のマーカーの発現プロファイルを測定することを含み、相違は食道癌及び食道癌又はそれらへの素因を引き起こし得る炎症性前駆状態を示す。
【0012】
一つの広範な側面において、対象における食道腺癌、バレット食道及び扁平上皮癌の一つ又はそれ以上を検出する方法がここに提供される。
別の広範な側面において、食道腺癌、バレット食道又は扁平上皮癌を有していると疑われる対象を早期診断する方法がここに提供される。
【0013】
さらに別の広範な側面において、食道腺癌、バレット食道又は扁平上皮癌を発症する対象の可能性を決定する方法がここに提供される。
これらの方法は、食道腺癌、バレット食道又は扁平上皮癌と関係がある少なくとも一つのバイオマーカーの変化した発現についてサンプルを分析すること、及び該少なくとも一つのバイオマーカーの変化した発現とサンプル中の食道腺癌、バレット食道又は扁平上皮癌の存在又は不存在を関連付けることを含むことができ、該少なくとも一つのバイオマーカーは本明細書に記載されているmirから成る群より選択される。
【0014】
ある態様において、該バイオマーカーは本明細書にリストされている一つ又はそれ以上のmirプローブから成る群より選択されるプローブを使用してサンプルから検出される。
【0015】
ある態様において、相関は、1)腺癌(ADC)患者における癌性組織(CT)及び非癌性組織(NCT);2)バレット食道(BE)を有する腺癌(ADC)患者における癌性組織(CT)及び非癌性組織(NCT);3)腺癌患者(ADC)におけるバレット食道(BE)及び非バレット食道(NBE);4)扁平上皮癌(SCC)における癌性組織(CT)及び非癌性組織(NCT);及び5)癌性組織(CT)における腺癌(ADC)及び扁平上皮癌(SCC)、の一つ又はそれ以上の間を区別する。
【0016】
ある態様において、相関1)については:mir−21、mir−223、mir−146a、mir−146b及びmir−181aから成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの増加した発現;及び/又はlet−7c、mir−203及びmir−205から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの減少した発現;の一つまたはそれ以上について該サンプルが分析される。
【0017】
ある態様において、相関2)については:mir−21、mir−103及びmir−107から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの増加した発現;及び/又はlet−7c、mir−210、mir−203及びmir−205から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの減少した発現;の一つまたはそれ以上について該サンプルが分析される。
【0018】
ある態様において、相関3)については:mir−192、mir−215、mir−194、mir−135a、mir−92、mir−93、mir−7、mir−17、mir20b、mir−107、mir−103及びmir−191から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの増加した発現;及び/又はmir−30b、mir−193a、let−7b、let−7i、let−7d、let−7a、mir−369及びlet−7cから成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの減少した発現;の一つまたはそれ以上について該サンプルが分析される。
【0019】
ある態様において、相関4)については:mir−21、mir−223、mir−146b、mir−224、mir−155、mir−7−2、mir−181b、mir−146a、mir−181、mir−7、mir−16、mir−122a、mir−125a及びmir−16から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの増加した発現;及び/又はmir−202、mir−29c、mir−30b、mir−30c、mir−126、mir−99a、mir−220、mir−320、mir−499、mir−30c、mir−125b、mir−1、mir−145、mir−143、mir−378、mir−200b、mir−133a、mir−375及びmir−203から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの減少した発現;の一つまたはそれ以上について該サンプルが分析される。
【0020】
ある態様において、相関5)については:mir−215、mor−192及びmir−194から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの増加した発現;及び/又はmir−142、mir−224及びmir−155から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの減少した発現;の一つまたはそれ以上について該サンプルが分析される。
【0021】
サンプルは血液又は組織であることができ、ある態様において、組織は食道組織である。該組織は、腫瘍組織、非腫瘍組織及び腫瘍に隣接する組織から成る群より選択され得る。
【0022】
さらに別の広範な側面において、食道癌、バレット食道又は扁平上皮癌を有する対象を治療する方法がここに提供され、本明細書にリストしたmirから成る群より選択された少なくとも一つのバイオマーカーに相補的な核酸を含んでなる組成物の治療的有効量を投与することを含んでなる。
【0023】
別の広範な側面において、本明細書にリストしたmirから成る群より選択された少なくとも一つのバイオマーカーに相補的な核酸を含んでなる医薬組成物がここに提供される。
【0024】
別の広範な側面において、化学放射線療法を受けた腺癌組織サンプル及び化学放射線療法を受けていない癌腫組織サンプル間を比較する方法がここに提供され、本明細書にリストした少なくとも一つのmirの発現差違を比較することを含んでなる。
【0025】
別の広範な側面において、扁平上皮癌組織サンプルにおけるリンパ節転移を比較する方法がここに提供され、本明細書にリストした少なくとも一つのmirの発現差違を比較することを含んでなる。
【0026】
別の広範な側面において、扁平上皮癌組織サンプルのステージ分類を比較する方法がここに提供され、本明細書にリストした少なくとも一つのmirの発現差違を比較することを含んでなる。
【0027】
別の広範な側面において、対象が食道癌、バレット食道又は扁平上皮癌を有する、又は発症するリスクがあるかどうかを診断する方法がここに提供され、該対象からの試験サンプル中の少なくとも一つのmirのレベルを測定することを含んでなり、対照サンプル中の対応するmirのレベルと比較して、該試験サンプル中の該mirのレベルの変化は、該対象が食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌を有しているか、又は発症するリスクがあるかを示し;該mirは本明細書にリストしたmirの一つ又はそれ以上から選択される。
【0028】
別の広範な側面において、食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌を抑制することを、それらを必要とする対象において行う方法がここに提供され、本明細書にリストしたmirから成る群より選択される少なくとも一つの遺伝子を投与することを含んでなる。
【0029】
別の広範な側面において、対象の一つ又はそれ以上の予後マーカーと関係がある食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌関連疾患を診断する方法がここに提供され、該対象からのサンプル中の、少なくとも一つのmirのレベルを測定することを含んでなり、対照サンプル中の対応するmirのレベルと比較して、試験サンプル中の少なくとも一つのmirのレベルの変化は、一つ又はそれ以上の予後マーカーと関係がある食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌関連疾患を有している対象を示し;該mirは本明細書にリストしたmirから成る群より選択される。
【0030】
別の広範な側面において、対象が食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌を有するか、又は発症するリスクがあるかどうかを診断する方法がここに提供され、1)対象から得られた試験サンプルからのRNAを逆転写して、標的オリゴデオキシヌクレオチドの組を提供し;2)該標的オリゴデオキシヌクレオチドを、miRNA特異的プローブオリゴヌクレオチドを含んでなるマイクロアレイにハイブリダイズさせて試験サンプルについてのハイブリダイゼーションプロファイルを提供し;及び3)該試験サンプルハイブリダイゼーションプロファイルと対照サンプルから発生させたハイブリダイゼーションプロファイルを比較し、少なくとも一つのmiRNAのシグナルの変化は、対象が食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌関連疾患を有する、又は発症するリスクがあることを示し;該mirは本明細書にリストしたmirから成る群より選択される。ある態様において、該少なくとも一つのmiRNAのシグナルは、対照サンプルから発生されたシグナルと比較し、下方調節されている。ある他の態様において、該少なくとも一つのmiRNAのシグナルは、対照サンプルから発生されたシグナルと比較し、上方調節されている。
【0031】
別の広範な側面において、食道癌、バレット食道又は扁平上皮癌関連疾患を、それらを患っている対象において治療する方法がここに提供され、対照細胞と比較し、該対象の癌細胞において少なくとも一つのmiR遺伝子産物は下方調節又は上方調節されており;1)少なくとも一つのmirが該癌細胞中で下方調節されている場合、該対象中の癌細胞の増殖が抑制されるように、少なくとも一つの単離されたmirの有効量を該対象に投与すること;又は2)少なくとも一つのmirが該癌細胞中で上方調節されている場合、該対象中の癌細胞の増殖が抑制されるように、該少なくとも一つのmirの発現を抑制するための少なくとも一つの化合物の有効量を該対象に投与すること;を含んでなり;該mirは本明細書にリストしたmirから成る群より選択される。
【0032】
別の広範な側面において、対象における食道癌腫関連疾患を治療する方法がここに提供され;該対象において食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌細胞の増殖が抑制されるように;1)対照細胞と比較し、食道細胞中の少なくとも一つのmirの量を決定すること、ここで該mirは本明細書にリストしたmirから成る群より選択され; 及び2)(i)もし、食道細胞中で発現された該mirの量が、対照細胞中で発現された該mirの量よりも少ないならば、少なくとも一つの単離されたmirの有効量を該対象に投与すること;又は(ii)もし、食道細胞中で発現された該mirの量が、対照細胞中で発現された該mirの量よりも多いならば、該少なくとも一つのmirの発現を抑制するための少なくとも一つの化合物の有効量を該対象に投与すること;により食道細胞中で発現されるmirの量を変化させること;を含んでなる。
【0033】
別の広範な側面において、抗食道関連疾患剤を同定する方法がここに提供され、食道細胞に試験剤を与えること、そして該食道細胞中の減少した発現レベルに関係する少なくとも一つのmirのレベルを測定することを含んでなり、ここで、適した対照細胞と比較して該食道細胞中のmirのレベルの増加は、該試験剤が抗癌剤であることを示し、該mirは本明細書にリストしたmirから成る群より選択される。
【0034】
別の広範な側面において、対象における病的状態又は病的状態を発生するリスクを評価するための方法がここに提供され、該対象からのサンプル中の一つまたはそれ以上のマーカーの発現プロファイルを測定することを含んでなり、該対象からのサンプル中の発現プロファイルと正常サンプルとの発現プロファイルの相違は、食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌、又はそれらへの素因を示し、該マーカーは本明細書にリストした一つまたはそれ以上のmirを少なくとも含んでなる。
【0035】
別の広範な側面において、一つ又はそれ以上のmirを含んでなる組成物がここに提供され、該mirは本明細書にリストしたmirから成る群より選択される。
別の広範な側面において、食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌を試験するための試薬がここに提供され、該試薬は、本明細書にリストした少なくとも一つのmirのヌクレオチド配列、又は該マーカーのヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含んでなる、ポリヌクレオチドを含んでなる。
【0036】
別の広範な側面において、食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌関連疾患を試験するための試薬がここに提供され、該試薬は、本明細書にリストした少なくとも一つのmirによりコードされたタンパク質を認識する抗体を含んでなる。
【0037】
別の広範な側面において、食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌を予防する、診断する及び/又は治療する療法の有効性を評価する方法がここに提供され、1)その有効性が評価されている療法を動物に受けさせること;及び本明細書にリストした少なくとも一つのmirを評価することにより、食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌を治療すること又は予防することにおいて試験されている治療の有効性のレベルを決定すること;を含んでなる。ある態様において、候補療法剤は:医薬組成物、栄養補助食品成分又はホメオパシー組成物の一つ又はそれ以上を含んでなる。ある態様において、該評価されている療法はヒト対象における使用のためである。
【0038】
別の広範な側面において、一つの製品がここに提供され、本明細書にリストした少なくとも一つのmirから選択される、食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌関連疾患のためのマーカーに結合する少なくとも一つの捕捉試薬を含んでなる。
【0039】
別の広範な側面において、食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌関連疾患を治療する療法剤の候補化合物をスクリーニングするためのキットがここに提供され、該キットは:本明細書にリストした少なくとも一つのmirの一つまたはそれ以上の試薬、及び少なくとも一つのmirを発現している細胞を含んでなる。ある態様において、mirの存在は、少なくとも一つのmirと特異的に結合する抗体又は抗体断片を含んでなる試薬を使用して検出される。
【0040】
別の広範な側面において、食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌関連疾患のためのスクリーニング試験がここに提供され:本明細書にリストしたmirの一つまたはそれ以上と、こうしたmirの基質及び試験剤を接触させること、そして試験剤が該mirの活性を変調するかどうかを決定すること;を含んでなる。ある態様において、すべての方法工程はインビトロで実施される。
【0041】
別の広範な側面において、個体において食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌関連疾患合併症を治療する、予防する、逆行させる、又は重症度を限定させるための医薬の製造のため、食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌関連疾患応答シグナル経路に干渉する剤の使用がここに提供され、該剤は本明細書にリストした少なくとも一つのmirを含んでなる。
【0042】
別の広範な側面において、食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌関連疾患合併症を治療する、予防する、逆行させる、又は重症度を限定させることを、それらを必要とする個体において行う方法がここに提供され、少なくとも食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌関連疾患応答カスケードに干渉する剤を該個体に投与することを含んでなり、該剤は本明細書にリストした少なくとも一つのmirを含んでなる。
【0043】
別の広範な側面において、個体において癌関連疾患合併症を治療する、予防する、逆行させる、又は重症度を限定させるための医薬の製造のため、少なくとも食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌関連疾患応答カスケードに干渉する剤の使用がここに提供され、該剤は本明細書にリストした少なくとも一つのmirを含んでなる。
【0044】
別の広範な側面において、食道癌及び炎症性前駆状態の診断、予後及び治療のための新規方法及び組成物がここに提供される。本発明は、抗食道癌剤及び抗炎症性前駆体剤を同定する方法も提供する。
【0045】
付随する図面を照らし合わせて読んだ場合、以下の好ましい態様の詳細な説明から、当業者には本発明の多様な目的及び利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
本特許又は出願ファイルは少なくとも一つのカラーで仕上げられた図及び/又は一つ又はそれ以上の写真を含む。この特許又はカラーの図(s)及び/又は写真(s)を含む特許出願印刷物のコピーは、依頼及び必要な料金の支払い後、本事務所により提供されるであろう。
【図1−1】図1A〜IB:qRT−PCR miRNA発現と生存との関係を描いているカプラン・マイヤー分析。miRNA発現値は、カットオフとしてコホート内中央発現値を使用して低及び高群に二分した。
【0047】
図1A:バレット食道を有しないADC患者において観察された関係。NCT(N=11)における減少したmiR−203の発現は、より悪い予後と関係がある。生存プロファイルは、ログランク検定を使用して比較され、P<0.05が統計的有意性を示している。
【図1−2】図1B:SCC患者において観察された関係。NCTにおいて、miR−21(N=35)、miR−155(N=35)、miR−146b(N=35)及びmiR−181b(N=35)の発現上昇は、より悪い予後と関係があり、一方、CTにおけるmiR−375(N=35)の減少した発現は、より悪い予後と関係がある。
【図1−3】図1B続き:SCC患者において観察された関係。NCTにおいて、miR−21(N=35)、miR−155(N=35)、miR−146b(N=35)及びmiR−181b(N=35)の発現上昇は、より悪い予後と関係があり、一方、CTにおけるmiR−375(N=35)の減少した発現は、より悪い予後と関係がある。
【図1−4】図1C:変化倍数<0.75又は>1.25を示している、異なって発現されたmiRNAの比。腺癌患者における癌性(CT)及び非癌性組織(NCT)(1)、バレット食道(BE)を有するADC患者におけるCT及びNCT(2)、ADC患者におけるBE及び非BE(NBE)のCT組織(3)、SCC患者におけるCT及びNCT(4)、ADC及びSCC患者におけるCT組織(5)間のマイクロアレイ発現差異。カラースケールはマイクロアレイ発現に対応する。
【図2】図2:癌性及び非癌性組織を比較した場合に異なって発現されたmiRNAのqRT−PCR検証。ADC(a)及びSCC(b)患者における癌性(CT)及び非癌性(NCT)間の相対的log発現差違。すべての発現値はRNAU66で規格化された。ADC患者において、両セットにおけるmiR−375発現差違及びトレーニングセットサンプルにおけるmiR−194発現差違はボーダーラインで統計的に有意であり(0.005<P<0.05)、一方、他のすべては統計的に有意であった(P<0.005)。SCC患者において、検証セットサンプルにおけるmiR−181b、miR−155及びmiR−146b発現差違及びトレーニングセットサンプルにおけるmiR−203発現差違はボーダーラインで統計的に有意であり、一方、他のすべての変化は統計的に有意であった。
【図3】図3:腺癌症例の癌性組織においてバレット食道(BE)及び非バレット食道(NBE)を比較した場合、異なって発現されたmirのqRT−PCR検証。癌性組織におけるBE及びNBE間の相対的log発現差違。すべての発現値はRNAU66で規格化され、示されたすべての発現差違はボーダーラインで統計的に有意であった(0.005<P<0.05)。
【図4】図4:ADC及びSCC患者間の癌性組織で変化した発現を有するmirのqRT−PCR検証。癌性組織におけるADC及びSCC患者間の相対的log発現差違。すべての発現値はRNAU66で規格化され、ここに示された変化した発現は、トレーニングセット中のmiR−375を除いて(0.05<P<0.005)統計的に有意であった(P<0.005)。
【図5】図5:表1:患者の臨床学的、病理学的及び人口学的特性.
【図6】図6:表2:トレーニングセットにおけるmirプローブのマイクロアレイ発現差違。
【図7】図7:表3:mir qRT−PCR発現レベルと生存間の関係を評価するための一変量及び多変量コックスモデル化。
【図8】図8:腺癌サンプル中のCT及びNCT組織を比較した場合、マイクロアレイ発現に従った、成熟mirを示す、異なって発現されたプローブ(P<0.05及びDRF<10%)を示している補足表1。
【図9】図9:補足表2:腺癌/バレット食道サンプル中のCT及びNCT組織を比較した場合、マイクロアレイ発現に従った、成熟mirを示す、異なって発現されたプローブ(P<0.05及びDRF<10%)。
【図10】図10:補足表3:バレット食道(BE)及び非バレット食道(NBE)腺癌組織を比較した場合、マイクロアレイ発現に従った、成熟mirを示す、異なって発現されたプローブ(P<0.05及びDRF<10%)。
【図11】図11:補足表4:化学放射線療法(CRT)を受けた及び受けていない(nCRT)腺癌組織サンプルを比較した場合、マイクロアレイ発現に従った、成熟mirを示す、異なって発現されたプローブ(P<0.05及びDRF<10%)。
【図12】図12:補足表5:扁平上皮癌サンプルにおけるCT及びNCT組織を比較した場合、マイクロアレイ発現に従った、成熟mirを示す、異なって発現されたプローブ(P<0.05及びDRF<10%)。
【図13】図13:補足表6:扁平上皮癌性組織においてリンパ節の転移(N=0vs.N=1)を比較した場合、マイクロアレイ発現に従った、成熟mirを示す、異なって発現されたプローブ(P<0.05及びDRF<10%)。
【図14】図14:補足表7:扁平上皮癌性組織においてステージ分類(TMN病期0〜I対II〜IV)を比較した場合、マイクロアレイ発現に従った、成熟mirを示す、異なって発現されたプローブ(P<0.05及びDRF<10%)。癌性組織におけるADC及びSCC患者間の相対的log発現差違。すべての発現値はRNAU66で規格化され、ここに示された変化した発現は、トレーニングセット中のmiR−375を除いて(0.05<P<0.005)統計的に有意であった(P<0.005)。
【図15】図15:補足表8:癌性組織においてADC及びSCCサンプルを比較した場合、マイクロアレイ発現に従った、成熟mirを示す、異なって発現されたプローブ(P<0.05及びDRF<10%)。
【図16】図16:補足表9:miRNAマイクロアレイ発現プロファイルを使用した。それらの診断、BE状態及び組織学的カテゴリーへのサンプルの分類。
【図17】図17:補足表10:miRNAマイクロアレイ発現を使用し、最終PAM分類モデルで使用された持続性miRNAプローブのリスト。
【図18A】図18A:補足表11:細目にわたる一変量及び多変量コックスモデル。
【図18B】図18B:補足表11:細目にわたる一変量及び多変量コックスモデル。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本開示を通して、種々の刊行物、特許及び公開された特許明細書は引用を特定することにより参照される。これらの刊行物、特許及び公開された特許明細書は、本発明が関与する分野の状態をより完全に記述するために、本開示に引用文献として援用される。
【0049】
本発明は以下の実施例でさらに定義され、特に記載しない限り、すべての部分及びパーセンテージは重量によるものであり、度は摂氏である。これらの実施例は、本発明の好ましい態様を示しているが、例示のためにのみ与えられていることを理解すべきである。上記の議論及びこれらの実施例から、当業者は本発明の本質的特徴を確かめることができ、そしてそれらの精神及び範囲から離れることなく、多様な使用及び条件に適合させるために本発明の多様な変形及び修飾を行うことができる。本明細書で言及された、特許及び非特許文献を含む全ての出版物は、本明細書において特別に援用される。
【0050】
miRNAマイクロアレイ38を使用して測定した、腫瘍(CT)及び隣接非癌性(NCT)組織対のmiRNA発現レベルを、CT及びNCT組織及びバレット食道(BE)及び非バレット食道(NBE)組織間の発現差違を評価するために使用した。選択された成熟miRNAの発現差違は、CT/NCT対を含んでなる独立したコホートにおいて、qRT−PCRを使用して検証した。さらに、診断/予後及びバレット食道状態を含む臨床病理学的結果の予測バイオマーカーとしてmiRNAの有用性を評価した。
【0051】
食道腺癌を研究することに加えて、扁平上皮癌におけるmiRNA発現を評価した。我々は腺癌及び扁平上皮癌患者における癌性及び非癌性組織miRNA間の発現差違を同定しそして確認し、miRNAプロファイルを成功裏に使用して、診断(バレット食道状態)及び組織学的タイプを予測した。有意に、他の既知の予後判定臨床的パラメーターと独立した、生存と関係するmiRNAを同定した。それ故、miRNA、食道癌腫及び炎症間の連結を示し、早期診断及び予後判定バイオマーカーとして、それらの可能性のある臨床有用性についての予備的証拠を提出した。これらのmiRNAは、さらに新規個別化薬剤療法の潜在的標的として使用することができる。
【0052】
予後に関係したマイクロRNA発現レベルは、さらに組織マイクロアレイのインサイツハイブリダイゼーションに使用し得る。この技術は高スループット分析も可能にし、研究者がマイクロRNAバイオマーカーの予後判定有用性を改良できるかどうかを評価することを可能にする。食道腺癌のステージ分類の曖昧さ及び不確実さのため、miRNA予後指標は療法の選択を非常に助けることができる。加えて、ヒト細胞株の機能アッセイ(それにより特異的miRNAをノックイン又はノックアウトできる)を、腫瘍及びバレット食道表現型における変化を評価するために使用し得る。
【0053】
食道腺癌は、しばしば後期に検出され、ほとんどの場合、予後不良を伴っている。個体のバレット食道及び/又は食道腺癌の素因となることができる潜在的miRNAバイオマーカーは、早期検出の手段を提供することができ、より良い治療オプションを同定することの助けとなる。さらに、インビボでmiRNAの発現を抑制するため、アンタゴニストが成功裏に使用されており、それにより、癌関連遺伝子の発現を調節することを容易にしている。本出願は、それ故、新規薬剤標的及び療法を同定することにおける、miRNAの使用可能性に道を開くものである。
【0054】
発明者はさらに、大規模コホートにおいてのヒト食道癌及びバレット食道の病変形成におけるmiRNAの関与をここに示し、そして生存率との関係を探究した。
本発明は以下の実施例でさらに定義され、特に記載しない限り、すべての部分及びパーセンテージは重量によるものであり、度は摂氏である。これらの実施例は、本発明の好ましい態様を示しているが、例示のためにのみ与えられていることを理解すべきである。上記の議論及びこれらの実施例から、当業者は本発明の本質的特徴を確かめることができ、そしてそれらの精神及び範囲から離れることなく、多様な使用及び条件に適合させるために本発明の多様な変形及び修飾を行うことができる。本明細書で言及された、特許及び非特許文献を含む全ての出版物は、本明細書において特別に援用される。
【実施例】
【0055】
トレーニング及び検証セットに分けられた患者から切除された癌性(CT)及び非癌性(NCT)組織を使用し、最初にmiRNAマイクロアレイ35プロファイルを発生させ、続いてすべてのサンプルにおいてqRT−PCRを使用して関連するmiRNAの発現差違を確認した。すべての患者の臨床的特徴は図5−表1に要約されている。
【0056】
ADC患者については両方のコホートで臨床的変数間の相違は観察されなかったが、SCC患者のコホート間で、性及びステージにおける相違が観察された。マイクロRNAマイクロアレイ発現値は、最初にトレーニングセットサンプルで評価し、続いてすべてのサンプルにおいてqRT−PCRを使用して確認した。
【0057】
ADC症例におけるマイクロRNAの発現差違
ADC患者に特異的なmiRNAマイクロアレイ発現レベルの変化は、32のCT及び隣接NCT対において評価した。図6−表2の一番上のパネルは、異なって発現されたmiRNA(P<0.05、FDR<10%)をリストしており、そのプローブは成熟miRNA配列を含有する。増加した発現は、miR−21、miR−223、miR−146a、miR−146b及びmiR−181aについて観察され、そして減少した発現はmiR−203及びmiR−205について観察された。バレット食道付随ADC患者が評価された場合、miR−21、miR−103、miR−107及びlet−7cは増加した発現を示し、一方、miR−210、miR−203及びmiR−205は減少した発現を示した。変化した発現を有するmiRNAは散発性ADCを有する患者においては同定されなかった。バレット食道付随及び散発性ADC CT間の発現は、miR−192、miR−215、miR−194、miR−135aが増加し、let−7ファミリーに属しているmiRNAの多くが減少した。
【0058】
多数の異なって発現されたプローブが脆弱部位及び癌関連ゲノム領域(Cancer Associate Genomic Region )に位置している(図8−補足表1、図9−補足表2、図10−補足表3)。これらの比較についてのmiRNA倍数変化の視覚的表示が図1Cに描かれている。
【0059】
qRT−PCRを使用し、トレーニングセットサンプルのサブセットで測定されたlet−7a及びlet−7cの発現レベルはマイクロアレイ結果との一致を示さなかった。それにもかかわらず、これらのmiRNAは、脆弱部位又は癌関連ゲノム領域に位置しているので、さらなる研究の正当な理由となる。さらに、let−7は、マウスの肺の腫瘍形成を抑制することが見出されており、及びlet−7の減少した発現と生存との間の関係がヒト肺癌組織において示されている。発現差違は、ネオアジュバント化学放射線療法を受けた及び受けていないADC患者の癌性組織間でも観察された。療法は組織採取に先立って行われているので、これらの影響を受けたmiRNAと療法を直接結び付けるのは不可能であった。年齢、リンパ節の転移、ステージ、喫煙状況及びアルコール消費を評価した場合、発現差違は観察されなかった。
【0060】
選択されたmiRNA(P<0.05、FDR<10%、及び最も大きな変化倍数)の発現測定は、qRT−PCRを使用して検証した。隣接する非癌性組織と比較して、ADC癌性におけるmiR−21、miR−223の上昇した発現、及びmiR−203及びmiR−375の減少した発現がトレーニング及び検証セットサンプルで確認された(図2a)。
【0061】
加えて、バレット食道付随及び散発性ADC患者間の癌性組織におけるmiR−194及びmiR−192の変化した発現を検証した(図3)。これら二つのmiRNAの増加した発現は、非癌性組織と比較した癌性組織においても増加していたが、これらの変化は、マイクロアレイ分析においては統計的に有意ではなかった。さらに、バレット食道を有するADC患者は、非癌性組織と比較した癌性組織において、miR−21、miR−192、miR−194の増加した発現及びmiR−203の減少した発現を示した。これらのmiRNAの変化した発現は、バレット食道のない患者においても存在したが、多分、小さなサンプルサイズのため(N=14)、統計的有意性は達成されなかった。
【0062】
miRNA発現及び生存間の関係
説明をより容易にするため、qRT−PCRから得られたmiRNA発現値を、コホート内の中央値カットオフに基づいて二分した(本明細書の方法を参照されたい)。
【0063】
miRNA発現及び生存間の関係はADC患者(N=73)においては観察されなかった。バレット食道を有しないADC患者を評価した場合、非癌性組織(N=22)におけるmiR−203の低発現は、予後不良とボーダーラインで関係しており(HR=0.2;95% 信頼区間[CI]=0.04〜0.96)、リンパ節状態及び年齢とは無関係であった(HR=0.2;95%CI=0.04−1.02)(図5−表3、図18−表11b)。
【0064】
バレット食道とも診断されたADC患者のmiRNA発現は、生存と統計的に有意な関係を示さなかった。
SCC症例におけるマイクロRNAの発現差違
SCCに特異的な変化したmiRNA発現を次ぎに44人の患者で探した。癌性及び隣接する非癌性組織を比較した場合、増加した発現がmiR−21、miR−223、miR−146b、miR−224、miR−155、miR−181b、miR−146aで観察され、減少した発現がmiR−203、miR−375及びmiR−133aで検出された(P<0.05及びFDR<10%)(図6−表2参照)。
【0065】
プローブの35パーセントが癌関連ゲノム領域に位置していた(図12−補足表5)。年齢、ネオアジュバント化学放射線療法の施行、喫煙及びアルコール消費状態で比較した場合、変化した発現は観察されなかった。しかしながら、変化した発現が、リンパ節の転移を有する患者の非癌性組織において、及び低病理学的TMNステージの患者において観察された(図13−補足表6)。異なって発現されたmiRNAの変化倍数の視覚的要約が図1Cに示されている。
【0066】
発現測定は、26の追加の検証セットサンプルを含むすべての利用可能なケースにおいて、qRT−PCRを使用して確認した。miR−21、miR−l8lb、miR−155及びmiR−146bの上昇した発現レベル、及びmiR−203、miR−375の減少したレベルは、癌性及び隣接する非癌性組織を比較して確認した(図2b)。興味深いことに、miR−21、miR−203の上昇したレベル及び癌性組織におけるmiR−375のレベルは、ADCサンプルにおいても観察され、これらのmiRNAの発現が、組織学的タイプに関係なく、食道癌腫において変化できることを示唆している。
【0067】
miRNA発現及び生存間の関係
ADC患者の分析と同様に、qRT−PCR発現値を、各コホート内の中央値カットオフに基づいて二分した。カプラン・マイヤー分析は、非癌性組織におけるmiR−21の高発現(HR=4.99;95%CI=1.86〜13.4)及びより悪い予後間の統計的に有意な関係を明らかにした(図1、図7−表3、図14−補足表7)。
【0068】
非癌性組織におけるmiR−155(HR=3.15;95%CI=1.25〜7.9)、miR−146b(HR=2.72;95%CI=1.13〜6.56)及びmiR−181b(HR=3.04;95%CI=1.21〜7.67)の上昇したレベルは、より悪い予後とボーダーラインの有意な関係を示した。さらに、腫瘍組織において、減少したmiR−375発現(HR=0.41;95%CI=0.17〜0.95)はボーダーラインで予後不良と関係があった。多変量コックスモデル化は、miRNA発現及び生存間の関係は、リンパ節の転移及び年齢に無関係であることを明らかにした。
【0069】
ADC及びSCC患者間のマイクロRNAの発現差違
癌性組織において組織学的タイプを比較した場合、miR−215、miR−192、miR−194の増加した発現、及びmiR−155、miR−224及びmiR−142の減少した発現が、SCC患者と比較してADCにおいて観察された(図4、表2、図15−補足表8及び 図1C)。
【0070】
非癌性組織において発現差違は検出されず、組織学的タイプに関係なく、隣接する非癌性組織は類似したmiRNAプロファイルを有していることを示唆している。バレット食道を有しない患者のみを考慮した場合、SCC症例においてmiR−192の増加した発現、及びmiR−155の減少した発現が観察されたが(P<0.05)、FDRは上昇していた(>50%)。SCC患者と比較し、ADCにおけるmiR−194及びmiR−192の癌性組織での上昇した発現レベルは、qRT−PCRを使用して確認した(図4)。
【0071】
SCC患者と比較し、ADCの癌性組織におけるmiR−375の増加した発現が、我々の検証においても観察された。これらのmiRNAの変化した発現は、癌性細胞の根底にある生物学的メカニズムが二つの異なった組織学的タイプ間で異なることができること、及び各組織学的タイプに特異的な治療療法がより効果的であることができることを示唆している。
【0072】
miRNAマイクロアレイ発現を使用するサンプル分類
マイクロアレイの予測解析にmiRNAマイクロアレイ発現値をインプットすることにより、腫瘍状態及びタイプでサンプルを分類した(図16−補足表9)。ADCサンプルを分類する場合、隣接する非癌性組織から癌性組織を識別した時に71%精度(P=0.005)が得られた。バレット食道付随ADC患者を使用すると、精度は77%(P=0.006)に増加し、一方、散発性ADCを有する患者を使用すると、上記の発現差違分析と類似して、ほぼ無作為の分類帰属(精度58%)を得た。さらに、精度78%(P=0.003)が、バレット食道付随又は散発性ADC患者の癌性組織を分類した場合に得られた。予期されるように、無作為分類精度は、非癌性組織における発現がインプットされた場合に得られた。癌性及び非癌性組織へのSCCサンプルの分類は86%精度(P<1e−4)が得られ、それは、ADCサンプルをそれらの診断カテゴリーに分類する場合に得られた値(71.2%)よりも実質的に高かった。
【0073】
この発見は、ADC症例のmiRNAプロファイルはSCC症例のプロファイルよりも不均一であることを示唆しており、それは一部、バレット食道状態の相違のためであろう。最後に、組織学によるサンプルの分類は、癌性及び非癌性組織発現プロファイルを使用して、それぞれ82%及び85%精度を得た。重要なことには、「持続性」miRNAプローブ間には大きな重なりがあり、それは分類、及び発現差違を示したものに最も寄与する(図17−補足表10)。全症例において、すべてのプローブを使用するモデルと「持続性」プローブを除去した後に組み立てたモデル間の精度の相違は統計的に有意である(P<0.05)。
【0074】
臨床的特徴間の発現差違
マイクロアレイ測定を使用し、ネオアジュバント化学放射線療法を受けていない腺癌(ADC)患者と比較し、それを受けた患者の癌性組織において、43の成熟miRNAプローブの変化した発現が観察された(図11−補足表4)。しかしながら、非癌性組織においては、ネオアジュバント化学放射線療法状態を比較した場合は、発現差違は観察されなかった。これらの観察は、miRNA発現が癌細胞においてはネオアジュバント化学放射線療法により影響されうるが、隣接する非癌性組織においては影響されないことを示唆する。さらに、癌性組織において療法により変化したmiRNAは、療法に抵抗性である腫瘍の指標であることができる。しかしながら、これらの仮説は、化学療法の施行に先立った及び後の両方で癌性と隣接する非癌性組織を比較することによってのみ検証し得る。すべてのこれらの症例において、化学放射線療法は手術に先立って、それ故サンプル採取に先立って施行された。
【0075】
SCC患者において、リンパ節の転移がある又はない患者の非癌性組織の発現レベルを比較する場合、19のプローブが発現差違を示した(図13−補足表6)。しかしながら、癌性組織における発現レベルが評価された場合、どのプローブも変化しなかった。この観察は、miRNA調節とリンパ節転移間の可能な関係を示唆するにもかかわらず、ADC症例では観察は欠如していた。にもかかわらず、腫瘍が食道のライニングに限定されているより低いステージ症例(TMNステージ0〜I)に対するより高い症例(TNMステージII〜IV)の非癌性組織においても発現差違が観察された。より具体的には、mir−21の成熟配列を含んでいるプローブは、より低いステージ症例において上昇したレベルを示す(図14−補足表7)。リンパ節状態と同様に、癌性組織におけるステージ間では発現の変化は観察されなかった。
【0076】
全症例において、化学放射線療法を受けた又は受けていない患者を比較した場合、癌性組織においては発現差違が観察されたが(図18−補足表11)、非癌性組織においては観察されなかった。再び、療法は外科的切除に先立って施行されるため、発現差違が単に療法によるものかどうかを直接評価することは不可能である。SCC患者で観察されたように、mir−21プローブの発現は、より低いステージ分類(TNM0〜I)を有する症例とより高いステージ分類(TNMII〜IV)を有する症例の非癌性組織間で変化した。
【0077】
議論
本明細書の実施例は、食道癌におけるmiRNAの診断及び予後判定有用性の可能性を評価する研究を記述している。miRNA発現を、143の癌性及び隣接する非癌性組織対において評価し、診断及びバレット食道カテゴリーへの分類のために重要なmiRNAを同定した。
【0078】
SCC及びADCサンプル両方で、独立して、上昇したmiR−21及び減少したmiR−203及びmiR−375レベルが観察され、これらのmiRNAは組織学的タイプとは独立して、食道発癌に関与することができることを示している。
【0079】
癌性組織において、miR−194、miR−192及びmiR−223の増加した発現がADC患者で観察され、一方、miR−181b、miR−155及びmiR−146bの増加した発現がSCC患者で検出される。
【0080】
これらのmiRNAの変化した発現は組織学的タイプに特異的であり、予後を改善するための組織学特異的療法の有用性の可能性を示唆している。
上述のmiRNAの発現レベルは、qRT−PCRを使用し、すべてのサンプルにおいて検証した。miR−21及びmiR−155の過剰発現は、それらが肺、乳房、胃、前立腺、結腸、膵臓を含む固形腫瘍で、及び慢性リンパ球性白血病で偏在的に誘導されているので非常に興味深い。miR−155発現は、バーキット及びB細胞リンパ腫においても上昇し、及びマウスにおいてはマクロファージ駆動炎症に応答して誘導され、それにより、炎症及び癌におけるmiR−155の役割を関係付けている。ホスファターゼ及びテンシンホモログ PTEN、癌抑制遺伝子トロポミオシン1 TPM1、プログラム細胞死4 PDCD4及びSprouty2を含むmiR−21標的腫瘍及び転移抑制遺伝子は、それにより、腫瘍増殖、浸潤及び転移へのその関与を示している。
【0081】
また、miR−155は肺癌における予後指標であり、そして上昇したmiR−21癌性/非癌性比発現レベルは、結腸癌における予後不良及び治療結果と関係している。さらに、miR−181bは慢性リンパ球性白血病において異なって発現され、そして癌遺伝子Tellの発現を負に調節しており、及びmiR−146bは炎症性サイトカインにより誘導されてToll様レセプター及びサイトカインシグナル伝達系で役割を果たしている。これら及び他の結果は、miRNA及び炎症性サイトカイン間の調節性相互作用を示している。
【0082】
発明者はここで、SCC患者の非癌性組織におけるmiR−21の変化したレベルは生存と関係することを示し、miR−21はSCC腫瘍に間接的な効果を有することができることを示唆している。我々は、肺ADC患者の非癌性及び癌性組織におけるサイトカイン発現の組み合わせは、生存の指標であることを以前に確立しており、腫瘍及びそれを取り囲む肺環境間の相互作用の可能性を示唆している。さらに、生得的及び後天的免疫応答の調節におけるmiRNAの役割についての証拠が増加している。具体的には、miR−21発現は、B細胞リンパ腫及び慢性リンパ球性白血病を含む免疫関連疾患と関係があった。さらに、最近の研究は、miR−21誘導に対するインターロイキン6のStat3依存性効果を示しており、それはStat3の発癌能に寄与している。結果的に、miR−21の増加したレベルが非癌性組織におけるより悪い予後と関係があるという我々の発見は、腫瘍発生と関係がある免疫応答の反映である可能性がある。
【0083】
我々の観察と一致して、7患者のコホートに基づいた最近の研究は、miR−21がADCにおいて過剰発現され、miR−143はADCにおいて過少発現され、そしてmiR−194がバレット食道において過剰発現されていることを報告している(30)。前記研究は、バレット食道におけるmiR−203、miR−205、miR−143及びmiR−215の過剰発現も報告しているが、それらは我々の分析においては観察されなかった。
【0084】
また我々の観察と一致して、別の研究は20症例及び9の正常上皮組織の分析を報告しており、両方の組織学的サブタイプにおける癌性組織でのmiR−21の過剰発現及びmiR−203及びmiR−205の過少発現を明らかにした(70)。
【0085】
SCC患者におけるmiRNA発現を評価している以前の研究において、miR−103及びmiR−107の高発現は30人の患者における悪い生存と相関しており、発見は22人のSCC患者の独立したセットで確認された(71)。これらの結果は我々の分析と一致しておらず、おそらく、異なったマイクロアレイプラットフォーム及びより限定されたサンプルサイズの使用によるためである。
【0086】
本実施例で使用された患者の54%でのネオアジュバント化学放射線療法の施行(手術先だった)及び患者の22%における完全病理学的応答は、miRNA発現と診断/予後間の関係への療法の役割への否定力を制限する。注目すべきは、完全病理学的応答の患者は必ずしも治癒する必要はなく、多分、残存している全身的プロセスのため又は小さな転移性疾患を検出できないためである(72)。これらの患者の生存率は、母集団の生存率よりも悪く、そしてこうした患者が完全病理学的応答のない患者よりも長期の生存を得るかどうかは、いまだ議論中である(73)。この観察はさらに、ステージ分類の精密化を助ける及び治療応答を予測するであろう、miRNAのような分子バイオマーカーの重要性を示した。さらに、慢性アルコール消費及び喫煙は食道癌患者の生存に悪影響を与える(74)(75)ことができる一方、欠測値(喫煙及びアルコールの消費欠測値はそれぞれ16%及び23% )のため、我々の多変量コックス分析において、これらの共変量の影響を適切に評価することが不可能であった。
【0087】
これらの実施例は食道癌におけるmiRNAの役割を示し、その発現がSCC及びADC癌性組織間、及びバレット付随及び散発性ADC癌性組織間の癌性組織で変化するmiRNAを同定する。
【0088】
これらの実施例は、非癌性組織における上昇したmiR−21レベルとより悪い予後との間の関係も示し、それにより、miR−21、免疫応答及びSCC間の関係の可能性を示唆している。非癌性組織におけるmiRNA発現と予後判定との関係は、これらのmiRNAの変化したレベルは、進行疾患ステージ及び症状の発生の先だった証拠となることができるので、特に興味を引かれる。より侵襲的でないバイオプシーでのmiRNA発現レベルを、非常に侵襲的手法である食道の外科的切除から利益を得ることができるか又はできないかを評価するために使用することができる。miRNA転写を阻止する能力は、食道癌腫のための新規薬剤標的及び療法を同定することにおける、miRNAの使用可能性に道を開くものである。
材料及び方法
臨床サンプル
外科的切除により入手可能な癌性及び隣接する非癌性組織を有する総計で143人の患者を、トレーニング及び検証セットに分割した。該トレーニングセットは、44SCC症例及び32ADC症例を含み、その18はバレット食道とも診断され、一方、検証セットは26SCC症例及び41ADC症例を含んでなり、バレット食道と診断された30人の患者を含んでいる。患者は、3つの異なったコホート:(1)Baltimore, MD のUniversity of Maryland Medical System 、(2)東京、日本のNippon Medical School 、(3)NY, US のNew York Presbyterian- Weill Cornell Medical Center から動員した。メリーランドコホートから採取されたサンプルは二つの群に分割した:MDコホート1はトレーニングセットに含まれ、一方、MDコホート2は検証セットに含まれている(図5−表1)。
【0089】
疾患ステージ及び生存は、診療記録、病理報告、State of Maryland 記録及びNational Death Indexから得られた。これらの研究は、関与施設の施設内治験審査委員会により認可された。この研究に関連した臨床病理学的データは、それぞれの供給源から提供され、そして性別、年齢、組織診断、バレット食道の存在/不存在、ネオアジュバント化学放射線療法施行、アルコール消費、喫煙状況及び病理学的ステージ分類を含む(図5−表1)。
RNA単離及びmiRNAの定量
miRNAレベルの定量に使用した総RNAは、製造元の説明書に従い、TRIZOL(Invitrogen, カタログ番号15596-026)を使用して我々の実験室において食道組織から抽出した。miRNA発現レベルは、329のヒトmiRNA及び249マウスmiRNAプローブを二重に含有するmiRNAマイクロアレイチップ バージョン3(Ohio State University)を使用して測定した(1)。5μgの総RNAをビオチン標識第一鎖cDNAに変換し、該チップ上にハイブリッド形成させ、ストレプトアビジン−アレクサ(Alexa)647コンジュゲートによるビオチン含有転写体の直接検出により処理した。スライドは続いてAxon 4000B Scanner(Molecular Device, Inc.)で走査し、スポット強度はGenepix (バージョン Pro 6.0.1.00)で定量した。マイクロアレイデータは、MIAMEガイドラインに伴うコンプライアンスにより遺伝子発現オムニバス(Gene Expression Omnibus) に現在提出されている。
【0090】
変化したmiRNAの検証は、Taqman miRNA逆転写アッセイ(Applied Biosystems, カタログ番号. 4366596)及び適したプライマーを使用し、製造元の説明書に従い、qRT−PCRで実施した。簡単には、特異的成熟miRNAのために特別に設計されたプローブを使用する、15μlの逆転写反応に、鋳型として10ngの総RNAを使用した。各miRNAについて、7500RT-PCR システム(Applied Biosystems)及び対照としてRNU66(Applied Biosystems, カタログ番号. 4373382)を使用し、反応は三重に行った。
【0091】
統計分析
発現差違
プレプロセシング及びmiRNAマイクロアレイ発現値の規格化は、統計コンピューター処理及びグラフィックスのためのフリーソフトウェア環境、R(バージョン2.6.0)(2)で実施し、発現差違解析は、Dr. Richard Simon 及びAmy Peng Lamにより開発されたBRB ArrayTools(バージョン3.5.0)(http://linus.nci.nih.gov/BRB-ArrayTools.html)で実施した。Rを使用し、各サンプルの平均スポット値は、画像定量化ソフトウェアGenePix(バージョンPro 6.0.1.00)によりフラグされなかったスポットについて抽出された。加えて、スポットは、もしそれらのバックグラウンド強度がそれらそれぞれのフォアグラウンド強度よりも高かったならば、及びもし、四つ組強度スポット値が1以上(log2スケールで)異なっているならば、スポットを除去した。残ったスポットは次ぎに、真のスポット強度がすべてのアレイに渡っているものの平均により推定される、単一チャネルアレイデータのために修飾されたレス(loess)規格化を使用して規格化した。レス曲線は各アレイについてのフィットスルー(fit through)(z〜「平均」)であり、ここでzは所与のアレイ中の各スポットの強度であり、平均は推定された真のスポット強度である。規格化されたスポット強度は、実際のスポット強度からの予測値(適合されたレス曲線から得られる)を差し引くことにより得られる。
【0092】
二重のスポット強度値を平均した後、BRB ArrayTools(バージョン3.5.0)内へ規格化されたデータをインプットし、続いての分析は、サンプルの少なくとも25%に存在する強度値を有するヒトmiRNAプローブに制限した。miRNAプローブの変化した発現は、t検定を実施するClass Comparison Tool を使用して決定し、P<0.05及び対応する誤検出率(False Discovery Rate)<10%の発現変化を統計的に有意であると考えた。癌性及び隣接する非癌性組織発現を比較する場合、対のあるt検定を実施し、一方、全ての他の比較には、日付順乱塊法のt検定を応用した。日付順乱塊法は、マイクロアレイがハイブリッド形成され及びスキャンされた日付で発現差異が混乱しないことを確実にするため、可能な日付バイアスについて制御する。
【0093】
qRT−PCRを無作為に選択したトレーニングセットサンプルの10%における13のmiRNAのマイクロアレイ発現測定を検証するために利用した。発現カウントは、RNU66カウントで規格化した。我々は最初にこれらの測定が、トレーニングセットサンプル中のマイクロアレイからのものと一致した(統計的有意性及び同方向変化倍数)ことを確立した。次ぎに、独立した検証セットサンプル中の発現を測定して、発現変化をさらに確認した。両測定の一致(統計的有意性及び同方向変化倍数)を9miRNAについて確立し、qRT−PCRを使用して、その発現を残り全てのサンプルで続けて測定した。発現カウントは、RNU66カウントで規格化し、両側、対のある又は対のないt検定(それぞれ、癌性及び隣接する非癌性組織を比較する場合及び全ての他の比較)を実施した。
【0094】
生存分析
説明を容易にするため、カットオフとして各コホート(即ち、MD コホート、日本コホート及びコーネルコホート)内の中央発現値を使用して、高及び低にmiRNA発現値を二分した。カプラン・マイヤー曲線を構築し、生存差異をマンテル・ヘンツェル検定又はログランク検定を使用して評価した。比例ハザード仮説を試験するため、scaled Schoenfeld 残差と時間の適した転換を関係付けるR関数cox.zph()を利用した。一変量及び多変量コックス分析を実施し、臨床変数と予後間の関係を評価し、関連する臨床変数を調節した。
【0095】
多変量コックスモデルは、単変量解析において生存と関係があったか、又は以前の出版物で重要な臨床変数として知られている臨床共変数を含んでいる。具体的には、以前に生存と関係することが示されているリンパ節の転移(3)、及び年齢が最終多変量モデルに含まれた。
【0096】
群当たりのイベントの十分な数を確実にするため、検証及び試験コホートを合併させた。別々に分析した場合、所与のmiRNAについては両方のコホートにおいてハザード比は同一の傾向を示したが、P値は0.05を超えており(データは示されていない)、ストラータ当たりのイベントが不十分な数による可能性が最も高い。重要なことには、miRNA発現及び生存間のすべての統計的に有意な関係について、完全病理学的応答を示した患者及び示さなかった患者間で生存に相違が観察されないことである。発現検証及び生存分析の統計的有意性は、P<0.005の場合(9の多重比較についてのストリンジェントボンフェローニ補正を適用後のP<0.05に相当する)に達成され、ボーダーライン統計的有意性は0.005<P<0.05の場合に達成された。
【0097】
分類
腫瘍状態、組織学及びバレット食道状態によるサンプル分類は、Rパッケージ 「pamr」(バージョン1.34.0)、マイクロアレイの予測解析(PAM)(4)を使用して実施した。失われた強度値は、最近傍平均化アルゴリズムを使用するパッケージルーチン「pamr.knnimpute」を使用して帰属した。PAMの20の反復を行い、各反復について、10分割交差検定(CV)精度を計算した。加えて、各反復の最終モデルにおいて使用したmiRNAプローブのリストを記録し、「持続性」miRNAプローブは、反復の少なくとも80%の最終モデルで現れるものとして定義した。分類に対する持続性プローブの重要性をさらに評価するため、それらを全プローブリストから取り除き、20反復を繰り返した。同様に、10分割CVパーセント精度を、この減少させたプローブのセットを使用して組み立てたモデルについて記録し、これらの精度を、すべてのプローブを使用して組み立てたモデルから得られたものと比較した。
【0098】
モデルの頑健性を評価するため二つのテストを実施した。第一に、オリジナルデータの置換を伴う再サンプリングからのCVパーセント精度の分布を見積もるため、ブートストラップ技術を使用した(10,000反復)。得られたパーセント精度がランダムでないかどうかを評価するため、50%未満又は50%と等しいパーセント精度を得ることの確率をブートストラップ分布から推定した。第二に、すべてのプローブを使用するモデルと持続性プローブを除いたプローブを使用するモデル間で観察される精度の相違を評価するため、ゼロ未満又はゼロに等しい精度差を得ることの確率をブートストラップ推定分布から推定した。報告された信頼区間は、ブートストラップ推定分布から計算した。
【0099】
各クラスでの大いに異なったサンプルの数は、人為的に高い精度を起こし得る。この人為的結果を補正するため、各クラスについてプライア(prior)確率補正をPAMモデルに適用し、それは本質的には新規サンプル及び異なったクラス間の判別スコアを増大させ、真及び偽陽性率のバランスを均衡させる。プライアの至適セット(各クラスについて)を決定するため、プライアの異なったセット(即ち、[0,1]、[0.01、0.99]、 ... 、[1、0])を使用してPAMを実施し、偽陽性率vs.真陽性率をプロットするReceiving Operating Curvesを構築した。至適プライアセットは、偽陽性率を最小化する一方、真陽性率を最大化する、凸包上にあるポイントを同定することにより、客観的に決定された。
【0100】
使用例
一つの側面において、本発明は癌を有する対象の生存を予測するための方法を提供する。該予測法は、癌細胞中のバイオマーカーとしての多数のmirの発現差異に基づいている。用語「バイオマーカー」は用語「mir」、「mirs」、「miRs」、「miRNA」及び「遺伝子産物」と相互交換的に使用し得ることを理解すべきである。
【0101】
いくつかのバイオマーカーは過剰発現される傾向があり、一方、他のバイオマーカーは過少発現される傾向があることが発見された。癌を有する対象からの細胞のサンプル中のこれらのバイオマーカーの独特な発現パターンは、その対象についての、相対的生存時間及び最終的予後を予測するために使用できる。
【0102】
癌を有する対象の生存を予測するための方法
本発明の一つの側面は、癌生存を予測するための方法を提供する。該方法は、癌を有する対象からの細胞のサンプル中の少なくとも一つの、又はある態様においては複数のバイオマーカーの発現差違を決定することを含んでなる。癌のバイオマーカー発現シグナチャは、その癌からの生存の予測であるリスクスコアを導くために使用することができる。該スコアは、対象が長期生存できる(即ち、5年より長く)ような低リスク、又は対象が長期生存できない(即ち、2年未満)ような高リスクを示すことができる。
【0103】
生存関連バイオマーカー
バイオマーカーのいくつかは長期生存者において過剰発現されており、バイオマーカーのいくつかは短期生存者において過剰発現される。バイオマーカーは、細胞接着、細胞運動性又は炎症及び免疫応答に影響を及ぼすことにより癌転移の一因となることができる。バイオマーカーは、アポトーシスにも関与することができる。バイオマーカーは輸送機構においても一因となることができる。バイオマーカーは他のタイプの癌においても生存と関係することができる。
【0104】
複数のバイオマーカーの発現の測定
癌を有する対象からの細胞サンプル中の、複数の生存関連バイオマーカーの発現差違を測定することが含まれる。各癌において異なった発現のパターン(又は遺伝子発現シグナチャ)は次ぎに、癌生存を予測するリスクスコアを発生させるために使用できる。バイオマーカーの発現のレベルは、他の癌を有する対象と比較して増加している、又は減少しているであろう。バイオマーカーの発現は短期生存者よりも長期生存者においてより高くてもよい。もしくは、バイオマーカーの発現は長期生存者よりも短期生存者においてより高くてもよい。
【0105】
複数のバイオマーカーの発現差違は、当該技術分野において公知である多様な技術により測定することができる。バイオマーカーのメッセンジャーRNA(mRNA)のレベルを定量化することは、該バイオマーカーの発現を測定するために使用することができる。もしくは、バイオマーカーのタンパク質生成物のレベルを定量化することは、該バイオマーカーの発現を測定するために使用することができる。以下に議論された方法に関する追加の情報は、Ausubel et al., (2003) Current Protocols in 分子生物学, John Wiley & Sons, New York, NY, 又はSambrook et al. (1989). Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY.に見出すことができる。当業者は、目的のmRNA又はタンパク質の検出を最適化するため、どのパラメーターを操作することができるのかを知るであろう。
【0106】
核酸マイクロアレイを、複数のバイオマーカーの発現差違を定量化するために使用することができる。マイクロアレイ分析は、Affymetrix GeneChip(商標) technology (Santa Clara, CA)、又はIncyte(Fremont, CA)からのマイクロアレイシステムのような、商業的に入手可能な装置を使用し、製造元のプロトコールに従って実施することができる。典型的には、一本鎖核酸(例えば、cDNAs又はオリゴヌクレオチド)をマイクロチップ基質上に加え、整列させる。整列された配列は次ぎに、目的の細胞からの特異的核酸プローブとハイブリダイズさせる。蛍光標識されたcDNAプローブは、目的の細胞から抽出されたRNAの逆転写による、蛍光標識デオキシヌクレオチドの取り込みを介して発生させることができる。もしくは、RNAをインビトロ転写により増幅し、ビオチンのようなマーカーで標識することができる。標識プローブは、次ぎに高度にストリンジェントな条件下、マイクロチップ上の固定化された核酸へハイブリダイズさせる。非特異的に結合されたプローブを除去するためのストリンジェント洗浄後、共焦点レーザー顕微鏡法又はCCDカメラのような別の検出方法でチップをスキャンする。ハイブリダイゼーションファイル中の生の蛍光強度データは一般に、ロバストマルチアレイ平均(RMA)アルゴリズムで前処理し、発現値を発生させた。
【0107】
定量的リアルタイムPCR(qRT−PCR)は、複数のバイオマーカーの発現差違を測定するためにも用いることができる。qRT−PCRにおいて、RNA鋳型は一般にcDNAへ逆転写され、それは次ぎにPCR反応を介して増幅される。PCR産物の量は、mRNAの初濃度を決定することを可能にする、リアルタイムでのサイクル−バイ−サイクルが続く。PCR産物の量を測定するため、該反応を、二本鎖DNAに結合するSYBR Greenのような蛍光色素の存在下で実施することができる。該反応は、増幅されているDNAに特異的である蛍光レポータープローブで実施することもできる。蛍光レポータープローブの非制限例は、TaqMan(登録商標)プローブ(Applied Biosystems, Foster City, CA)である。該蛍光レポータープローブは、PCR伸長サイクル間にクエンチャーが除去された時に蛍光を発する。多重qRT−PCRは、そのそれぞれが異なったフルオロフォアを含有する多遺伝子−特異的レポータープローブを使用することにより実施することができる。蛍光値を各サイクル間に記録し、増幅反応のその時点までの増幅された生成物の量を示す。誤差を最小にし、そしてサンプル間の変異を減少させるため、QRT−PCRは、典型的には、標準試料を使用して実施する。理想的な標準試料は異なった組織間で一定のレベルで発現され、そして実験処理により影響されない。適した標準試料には、限定されるわけではないが、ハウスキーピング遺伝子グリセロアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)及びβアクチンが含まれる。元サンプル中のmRNAのレベル又は各バイオマーカーの発現における変化倍数は、当該技術分野において公知の計算を使用して決定することができる。
【0108】
免疫組織化学的染色も、複数のバイオマーカーの発現差違を測定するために用いることができる。この方法は、タンパク質と特異的抗体の相互作用により、組織切片の細胞中のタンパク質の局在化を可能にする。このためには、組織をホルムアルデヒド又は別の適した固定液で固定し、ワックス又はプラスチックに包埋し、ミクロトームを使用し、薄片(約0.1mmから数mm厚)に切断する。もしくは、組織を凍結し、クライオスタットを使用して薄片に切断することができる。組織の切片は固体表面に整列させ、そして貼り付かせることができる(即ち、組織マイクロアレイ)。組織の切片を、目的の抗原に対する一次抗体とインキュベートし、続いて洗浄して未結合抗体を除去する。一次抗体は、検出システムと共役させることができ、又は一次抗体は、検出システムと共役する二次抗体で検出することができる。検出システムはフルオロフォアであることができ、又は、基質を比色分析、蛍光又は化学発光生成物へ変換し得る西洋ワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼのような酵素であることができる。染色組織切片は、一般に顕微鏡下でスキャンする。癌を有する対象からの組織のサンプルは不均一(即ち、いくつかの細胞は正常であり、他の細胞は癌性であることができる)であるので、組織中の陽性に染色された細胞のパーセンテージを決定することができる。この測定は、染色の強度の定量化とともに、バイオマーカーについての発現値を発生させるために使用することができる。
【0109】
酵素連結免疫吸着アッセイ、又はELISAは、複数のバイオマーカーの発現差違を測定するために用いることができる。ELISAアッセイの多くの変法がある。すべてが、固体表面、一般にマイクロタイタープレート上への抗原又は抗体の固定化に基づいている。元々のELISA法は、目的のバイオマーカータンパク質を含有するサンプルを調製すること、マイクロタイタープレートのウェルをサンプルで被覆すること、各ウェルを特異的抗原を認識する一次抗体とインキュベートすること、非結合抗体を洗い流すこと。そして次ぎに抗体抗原複合体を検出することを含んでなる。抗体−抗体複合体は直接的に検出することができる。このためには、一次抗体は、検出可能な生成物を産生する酵素のような検出システムにコンジュゲートされる。抗体−抗体複合体は間接的に検出することができる。このためには、一次抗体は、前述の検出システムへコンジュゲートされている二次抗体により検出される。マイクロタイタープレートをスキャンし、生の強度データを当該技術分野で公知の手段を使用して発現値へ変換することができる。
抗体マイクロアレイは、複数のバイオマーカーの発現差違を測定するためにも用いることができる。抗体を整列させ、マイクロアレイ又はバイオチップの表面に共有結合で結合させる。目的のバイオマーカータンパク質を含有するタンパク質抽出物は、一般に蛍光色素で標識される。標識バイオマーカータンパク質を抗体マイクロアレイとインキュベートする。非結合タンパク質を除去するために洗浄後、マイクロアレイをスキャンし、生の蛍光強度データを当該技術分野で公知の手段を使用して発現値へ変換することができる。
ルミネックスマルチプレックスマイクロスフェアは、複数のバイオマーカーの発現差違を測定するためにも用いることができる。これらの微小ポリスチレンビーズは、各ビーズが特有のスペクトルシグナチャを有するように(100まで)、蛍光色素で内部的に色分けされている。同一のシグナチャを有するビーズは、目的の標的(即ち、バイオマーカーmRNA又はタンパク質)に結合するであろう特異的オリゴヌクレオチド又は特異抗体でタグ付けされている。順に、標的は蛍光レポーターでもタグ付けされている。それ故、色には二つの起源があり、一つはビーズからのもの、そして他は標的上のレポーター分子からのものである。ビーズは次ぎに標的を含有するサンプルとインキュベートし、一つのウェル中で100までを検出することができる。ビーズの小さなサイズ/表面積、及び標的へのビーズの三次元的暴露は、結合反応間のほぼ溶液相動力学を可能にする。捕捉された標的は、各ビーズ及びアッセイ間に捕捉されたいずれのレポーター色素も同定する内部色素をレーザーが励起するフローサイトメトリーに基づいたハイテック(high-tech)流体工学により検出される。取得ファイルからのデータは、当該技術分野で公知の手段を使用して発現値へ変換することができる。
【0110】
インサイツハイブリダイゼーションも、複数のバイオマーカーの発現差違を測定するために用いることができる。この方法は、組織切片の細胞において、目的のmRNAの局在化を可能にする。この方法に対しては、組織を凍結し又は固定し、そして包埋し、次ぎに薄い切片に切断し、それを固体表面に整列させ、そして貼り付かせる。組織切片は、目的のmRNAとハイブリダイズするであろう標識アンチセンスプローブとインキュベートする。ハイブリダイゼーション及び洗浄工程は一般に高ストリンジェント条件下で実施する。プローブは、標識ハイブリッドを顕微鏡下で検出及び可視化できるように、別のタンパク質又は抗体により検出することができるフルオロフォア又は小さなタグ(ビオチン又はジゴキシゲニンのような)で標識することができる。もし各アンチセンスプローブが識別可能な標識を有しているならば、多数のmRNAを同時に検出することができる。ハイブリダイズされた組織アレイは一般には顕微鏡下でスキャンする。癌を有する対象からの組織のサンプルは不均一(即ち、いくつかの細胞は正常であり、他の細胞は癌性であることができる)であるので、組織中の陽性に染色された細胞のパーセンテージを決定することができる。この測定は、染色の強度の定量化とともに、各バイオマーカーについての発現値を発生させるために使用することができる。
【0111】
その発現が、癌を有する対象からの組織のサンプル中で測定されるバイオマーカーの数を変化させることができる。生存の予測スコアはバイオマーカーの発現差違に基づいているので、より高い程度の精度は、より多くのバイオマーカーの発現が測定された場合に達成されるべきである。
【0112】
癌を有する対象からの細胞のサンプルを得ること
複数のバイオマーカーの発現は、癌を有する対象からの細胞のサンプルにおいて測定されるであろう。癌のタイプ及び分類は変動し得るし、またするものであろう。癌は早期癌、即ち、ステージI又はステージIIであってもよく、又は末期癌、即ち、ステージIII又はステージIVであってもよい。
【0113】
一般に、細胞のサンプル又は組織サンプルは、癌を有する対象から、バイオプシー又は外科的切除により得られるであろう。バイオプシーのタイプは、癌の位置及び性質に依存して変動するであろう。細胞、組織又は体液のサンプルは、針穿刺吸引バイオプシーにより取り出すことができる。このためには、シリンジに取り付けられた細針を皮膚を通し、そして目的の器官又は組織内に挿入する。針は、典型的には、超音波又はコンピューター断層撮影を使用して、目的の領域へ導かれる。針が組織内に挿入されたら、細胞又は体液が針を通して吸い込まれてシリンジ中に集められるように、シリンジに真空が作られる。細胞又は組織のサンプルは、切開又はコアバイオプシーによっても取り出すことができる。このためには、円錐形、円柱形又は極わずかの組織が、目的の領域から取り出される。コンピューター断層撮影、超音波又は内視鏡がこのタイプのバイオプシーを導くために一般に使用される。最後に、全癌性病巣を、切除バイオプシー又は外科的切除により取り出すことができる。
【0114】
細胞のサンプル又は組織サンプルが癌を有する対象から取り出されたら、当該技術分野において公知の、及びAusubel et al., (2003) Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, NY.のような標準分子生物学参考書に記載されている技術を使用して、RNA又はタンパク質の単離のために処理することができる。組織サンプルは、後の使用のため保存する、又は急速冷凍して−80℃で保存することもできる。バイオプシーされた組織サンプルはホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド又は酢酸/エタノールのような固定液で固定することもできる。固定された組織サンプルはワックス(パラフィン)又はプラスチック樹脂中に包埋することができる。包埋された組織サンプル(又は冷凍組織サンプル)は薄い切片に切断することができる。RNA又はタンパク質は、固定された又はワックス包埋された組織サンプルから抽出することもできる。
【0115】
癌を有する対象は、一般には哺乳類対象であろう。哺乳類は、霊長類、家畜動物及びコンパニオンアニマルを含むことができる。非制限例には:霊長類はヒト、類人猿、サル及びテナガザルを含むことができ;家畜動物はウマ、雌ウシ、ヤギ、ヒツジ、シカ及びブタを含むことができ;コンパニオンアニマルはイヌ、ネコ、ウサギ及び齧歯類(マウス、ラット及びモルモットを含む)を含むことができる。例示の態様において、該対象はヒトである。
【0116】
リスクスコアの発生
ある態様において、本発明のバイオマーカーは癌生存に関連する。複数のこれらのバイオマーカーの発現の異なったパターンを、癌を有する対象の生存転帰を予測するために使用することができる。特定のバイオマーカーは、長期生存者において過剰発現される傾向があり、一方、他のバイオマーカーは短期生存者において過剰発現される傾向がある。対象における複数のバイオマーカーの発現の独特のパターン(即ち、発現シグナチャ)を生存のリスクスコアを発生させるために使用することができる。高リスクスコアを有する対象は、外科的切除後に短い生存期間(<2年)を有する。低リスクスコアを有する対象は、切除後に長い生存期間(>5年)を有する。
【0117】
複数のバイオマーカーの発現差違を測定するために用いられる技術に関係なく、各バイオマーカーの発現は、典型的には、発現値に変換されるであろう。これらの発現値は次ぎに、当該技術分野において公知である統計的手法を使用して、癌を有する対象のための生存のリスクスコアを計算するために使用されるであろう。該リスクスコアは、一変量コックス回帰分析を使用しても計算することができる。一つの好ましい態様において、リスクスコアはパーシャルコックス回帰分析を使用して計算することができる。
【0118】
パーシャルコックス回帰分析により発生させたスコアは、二つの群に分かれた:1)正の値を有するもの;及び2)負の値を有するもの。正の値を有するリスクスコアは、短期生存期間と関係があり、負の値を有するリスクスコアは、長期生存期間と関係がある。
【0119】
本方法の一つの態様において、組織サンプルは、早期癌を有する対象から外科的切除により取り除くことができる。組織のサンプルは、後日RNAを単離できるように、RNAlater中か又は急速冷凍して保存した。該RNAは複数のバイオマーカーの発現が分析されるqRT−PCRのための鋳型として使用することができ、発現データは、パーシャルコックス回帰分類法を使用してリスクスコアを誘導するために使用した。該リスクスコアは、対象が短期又は長期癌生存者であるのかどうかを予測するために使用することができる。
【0120】
本方法の特に好ましい態様において、組織サンプルは、早期癌を有する対象から採取することができる。RNAは組織から単離され、核酸マイクロアレイ分析のための標識プローブを発生させるために使用することができる。マイクロアレイ分析から発生させた発現値は、パーシャルコックス回帰分類法を使用してリスクスコアを誘導するために使用することができる。該リスクスコアは、対象が短期又は長期癌生存者であるのかどうかを予測するために使用することができる。
【0121】
疾患を有する対象の予後を決定するための方法
本発明の別の側面は、癌を有する対象の予後を決定するための方法を提供する。本方法は該対象からの細胞のサンプル中の一つ又はそれ以上のバイオマーカーの発現差違を測定することを含んでなる。各バイオマーカーの発現差違は発現値へ変換され、そして発現値は、上記の統計的手法を使用し、該対象についてのスコアを誘導するために使用される。正の値を有するスコアは、予後不良又は転帰不良を示し、一方、負の値を有するスコアは、良好な予後又は良好な転帰を示す。
【0122】
この方法の一つの態様において、早期癌を有する対象についての発現シグナチャは核酸マイクロアレイ分析により発生され、そして発現値はスコアを計算するために使用される。計算されたスコアは、対象が癌転帰の良好な予後又は予後不良を有しているであろうかどうかを予測するために使用することができる。
【0123】
疾患を有する対象のための治療を選択するための方法
本発明のさらなる側面は、疾患を有する対象のための有効な治療を選択するための方法を提供する。対象についてのリスクスコアが計算されたら、その情報は、該対象についての治療の適切な過程を決定するために使用することができる。正のリスクスコア(即ち、短期生存期間又は予後不良)を有している対象は、攻撃的な治療計画から恩恵を受けることができる。攻撃的な治療計画は、適した化学療法剤又は剤を含んでなることができる。攻撃的な治療計画は、放射線療法も含んでなることができる。治療計画は、癌のタイプ及びステージに依存して変動し得るし、またするものであろう。負のリスクスコア(即ち、長期生存期間又は良好な予後)を有している対象は、再発癌を発症する可能性は少ないので、追加の治療を必要としないであろう。
【0124】
細胞は、一つ又はそれ以上の剤が、マイクロRNAの発現又は活性を抑制する、マイクロRNAの一つ又はそれ以上の標的遺伝子の発現を抑制する、又はそれらの組み合わせを抑制する条件下に維持され、それにより、該細胞の増殖を抑制する。
【0125】
癌細胞の増殖を抑制するために使用し得る剤を同定する方法も提供される。該方法は、一つ又はそれ以上のマイクロRNAと評価されている剤を接触させること;一つ又はそれ以上の標的遺伝子と評価されている剤を接触させること;又はそれらの組み合わせを接触させることを含んでなる。もし、マイクロRNAの発現が剤の存在下で抑制されたら;標的遺伝子のの発現が剤の存在下で増強されたら;又は剤の存在下でそれらの組み合わせが起こったら、該剤を濾胞性甲状腺癌腫細胞の増殖を抑制するために使用し得る。
【0126】
療法剤を同定する方法
本明細書においては、それを必要とする患者を治療するために使用し得る剤を同定する方法も提供される。本方法は、一つ又はそれ以上のマイクロRNAと評価されている剤を接触させること;一つ又はそれ以上のマイクロRNAの一つ又はそれ以上の標的遺伝子を接触させること;又はそれらの組み合わせを接触させることを含んでなる。もし、マイクロRNAの発現が剤の存在下で抑制されたら;標的遺伝子のの発現が剤の存在下で増強されたら;又は剤の存在下でそれらの組み合わせが起こったら、該剤を濾胞性甲状腺癌腫細胞の増殖を抑制するために使用し得る。
【0127】
本明細書で提供される方法で評価し得る剤には、miRNA阻害剤が含まれる。こうした剤の他の例には、医薬品、薬剤、化学化合物、イオン性化合物、有機化合物、有機リガンド(補因子を含む)、サッカライド、組換え及び合成ペプチド、タンパク質、ペプトイド、核酸配列(遺伝子を含む)、核酸生成物、及び抗体及びそれらの抗原結合断片が含まれる。こうした剤は、個々にスクリーニングできるし、又は本明細書の方法に従って一つ又はそれ以上の化合物(単数及び複数)を同時に試験し得る。コンビナトリアル化学合成又は他の方法により生成された化合物のラージコンビナトリアルライブラリー(例えば、有機化合物、組換え又は合成ペプチド、ペプトイド、核酸)を試験し得る。コンビナトリアルライブラリーから選択された化合物が特有のタグを運んでいる場合、クロマトグラフ法による個別化合物の同定が可能である。化合物ライブラリー、微生物ブロス及びファージディスプレイライブラリーも、本明細書の方法に従って試験(スクリーニング)し得る。
【0128】
対象の生存又は予後を予測するためのキット
本発明のさらなる側面は、癌を有する対象の生存又は予後を予測するためのキットを提供する。キットは、一つ又はそれ以上のバイオマーカーの発現差違を測定するための複数の剤、発現データを発現値に変換するための手段、及び生存又は予後を予測するスコアを発生させるために発現値を分析するための手段、を含んでなる。バイオマーカー発現を測定するためのキット中の剤は、バイオマーカーのmRNAに相補的なポリヌクレオチドのアレイを含んでなることができる。別の態様において、バイオマーカー発現を測定するためのキット中の剤は、qRT−PCRのための複数のPCRプローブ及び/又はプライマーを含んでなることができる。
【0129】
本発明は、個体の癌を検出するためのキットにも関し、1)一つ又はそれ以上のマイクロRNA;2)一つ又はそれ以上のマイクロRNAの一つ又はそれ以上の標的遺伝子;3)標的遺伝子により発現される一つ又はそれ以上のポリペプチド;又は4)それらの組み合わせ、を検出するための一つ又はそれ以上の試薬を含んでなる。例えば、該キットは、ハイブリダイゼーションプローブ、制限酵素(例えば、RFLP分析のための)、アレル特異的オリゴヌクレオチド、及び標的遺伝子により発現されるポリペプチドに結合する抗体を含んでなることができる。
【0130】
特定の態様において、該キットは少なくとも、マイクロRNAの一つ又はそれ以上の領域と実質的にあるいは完全に相補的である近接ヌクレオチド配列を含んでなる。一つの態様において、キット中の一つ又はそれ以上の試薬は標識されており、それ故、該キットは該標識を検出することが可能な剤をさらに含んでなる。該キットは、キットの成分を使用して癌を検出するための説明書をさらに含んでなる。
【0131】
核酸アレイ
本発明の別の側面は、本発明のバイオマーカーのmRNAにハイブリダイズするポリヌクレオチドを含んでなる核酸アレイを提供する。一般的に言えば、核酸アレイは、少なくとも一つのアドレスを有する基質から成っている。核酸アレイは当該技術分野において公知であり、そしてさらに、核酸アレイを含んでなる基質も当該技術分野において公知である。基質材料の非制限例には、ガラス及びプラスチックが含まれる。基質はスライド又はチップ(即ち、四辺形の形状)のように成形することができ、又はもしくは、基質はウェルのように成形することができる。
【0132】
本発明のアレイは、少なくとも一つのアドレスから成っており、該アドレスにはその上に、本発明のバイオマーカーのmRNAにハイブリダイズできる核酸が配置されている。一つの態様において、該アレイは多数のアドレスから成っており、該アドレスにはその上に、肺癌を有する対象の生存を予測するためのバイオマーカーのmRNAにハイブリダイズできる核酸が配置されている。該アレイは一つ又はそれ以上のアドレスも含んでなることができ、該アドレスにはその上に、対照核酸が配置されている。該対照は、内部対照(即ち、アレイ自身のための対照)及び/又は外部対照(即ち、アレイに加えられたサンプルのための対照)であることができる。アレイは典型的には、約1〜約10,000間のアドレスから成っている。一つの態様において、該アレイは約10〜約8,000間のアドレスから成っている。別の態様において、該アレイは500しかないアドレスから成っている。代わりの態様において、該アレイは500未満のアドレスから成っている。核酸アレイを使用する方法は、当該技術分野において公知である。
【0133】
使用法
一つの側面において、対象が評価されている及び/又は治療されている疾患を有するか、又は発症するリスクを有するかどうかを診断する方法が本明細書において提供され:対象からの試験サンプル中の少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルを測定すること、及び試験サンプル中の該miR遺伝子産物のレベルを、対照サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルと比較することを含んでなる。本明細書で使用される「対象」は、食道癌及び/又はバレット食道を有している、又は有していると疑われるいずれの哺乳類でもあり得る。特定の態様において、該対象はこうした疾患を有している、又は有していると疑われるヒトである。
【0134】
少なくとも一つの遺伝子産物のレベルは、対象から得られた生物学的サンプルの細胞中で測定し得る。例えば、組織サンプルは、慣用的生検技術により、こうした疾患を有していると疑われる対象から、取り出し得る。別の実施例において、血液試料を対象から取り出すことが可能であり、そして標準技術によるDNA抽出のために白血球細胞を単離し得る。血液又は組織サンプルは、好ましくは、放射線療法、化学療法及びホルモン療法又は他の療法的治療に先立って対象から得られる。対応する対照組織又は血液サンプルは、対象の罹患していない組織から、正常ヒト個体又は正常個体の集団から、又は患者のサンプル中の大多数の細胞に対応している培養細胞から得ることが可能である。対照組織又は血液サンプルは次ぎに、対象のサンプルからの細胞における所与の遺伝子から産生された遺伝子産物のレベルを、対照サンプルの細胞からの対応する遺伝子産物レベルと比較できるように、対象のサンプルと同様に処理する。
【0135】
対照サンプル中の遺伝子産物のレベルと比較して、対象から得られたサンプル中の対応する遺伝子産物のレベルの変化(即ち、増加又は減少)は、対象におけるこうした疾患の存在を示す。一つの態様において、試験サンプル中の少なくとも一つの遺伝子産物のレベルは、対照サンプル中の対応する遺伝子産物のレベルよりも高い(即ち、遺伝子産物の発現が「上方調節」されている)。本明細書で使用する遺伝子産物の発現が「上方調節」されているとは、対象からの細胞又は組織サンプル中の遺伝子産物の量が、対照細胞又は組織サンプル中の同一遺伝子産物の量よりも多い場合である。別の態様において、試験サンプル中の少なくとも一つの遺伝子産物のレベルは、対照サンプル中の対応する遺伝子産物のレベルよりも低い(即ち、遺伝子産物の発現が「下方調節」されている)。本明細書で使用する遺伝子産物の発現が「下方調節」されているとは、対象からの細胞又は組織サンプル中の遺伝子産物の量が、対照細胞又は組織中の同一遺伝子産物の量よりも少ない場合である。対照及び正常サンプル中の相対的遺伝子発現は、一つ又はそれ以上のRNA発現標品に対して決定し得る。該標品は、例えば、ゼロ遺伝子発現レベル、標準細胞株中での遺伝子発現レベル、又は正常ヒト対照の集団について以前に得られている遺伝子発現の平均レベルを含むことが可能である。
【0136】
サンプル中の遺伝子産物のレベルは、生物学的サンプル中のRNA発現レベルを検出するために適しているいずれかの技術を使用して測定し得る。生物学的サンプルからの細胞中のRNA発現レベルを決定するために適した技術(例えば、ノーザンブロット分析、RT−PCR、インサイツハイブリダイゼーション)は当業者には公知である。特定の態様において、少なくとも一つの遺伝子産物のレベルはノーザンブロット分析を使用して検出される。例えば、全細胞性RNAを、核酸抽出緩衝剤の存在下での均質化により、続いての遠心分離により細胞から精製し得る。核酸を沈澱させ、DNaseによる処理及び沈澱によりDNAが取り出される。RNA分子は次ぎに、標準技術に従ってアガロースゲル上でのゲル電気泳動により分離され、ニトロセルロースフィルターに移される。RNAは次ぎに加熱によりフィルター上に固定される。特異的RNAの検出及び定量は、目的のRNAと相補的である、適切に標識されたDNA又はRNAプローブを使用して達成される。例えば、その全開示が本明細書において援用される、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, J. Sambrook et al., eds., 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989, 7章、を参照されたい。
【0137】
所与の遺伝子産物のノーザンブロットハイブリダイゼーションに適したプローブは、所与の遺伝子産物の核酸配列から産生される。標識されたDNA及びRNAプローブの製造法、及び標的ヌクレオチド配列へのそれらのハイブリダイゼーションについての条件は、その開示が本明細書において援用される、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, J. Sambrook et al., eds., 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989, 10及び11章、に記載されている。
【0138】
例えば、核酸プローブは、例えば、H、32P、33P、14C、又は35Sのような放射性核種;重金属;又は標識化リガンドのための特異的結合対メンバーとして機能することが可能であるリガンド(例えば、ビオチン、アビジン又は抗体)、蛍光分子、ケミルミネッセント分子、酵素などで標識化し得る。
【0139】
プローブは、それらの全開示が本明細書において援用される、Rigby et al., J. Mol. Biol. 113:237-251(1977) 、のニックトランスレーション法によるか、又はFienberg et al., Anal. Biochem. 132:6-13(1983) 、のランダムプライミング法により高比活性で標識し得る。後者は、一本鎖DNAから、又はRNA鋳型から高比活性の32P−標識プローブを合成するために選択される方法である。例えば、ニックトランスレーション法に従って、既存のヌクレオチドを高放射性ヌクレオチドで置き換えることにより、10cpm/マイクログラムをかなり上回る比活性を有する32P−標識核酸プローブを製造することが可能である。ハイブリダイゼーションのオートラジオグラフィー検出を、ハイブリダイズされたフィルターを写真フィルムに暴露することにより実施し得る。ハイブリダイズされたフィルターにより暴露された写真フィルムのデンシトメトリックスキャニングは、遺伝子転写体レベルの正確な測定を提供する。別のアプローチを使用し、遺伝子転写体レベルは、Amersham Biosciences, Piscataway, NJ. から入手可能であるMolecular Dynamics 400-B 2D Phosphorimager のような、コンピューター化されたイメージングシステムにより定量し得る。
【0140】
DNA又はRNAプローブの放射性核種標識化が実際的ではない場合、プローブ分子内に類似体、例えば、dTTP類似体5−(N−(N−ビオチニル−エプシロン−アミノカプロイル)−3−アミノアリル)デオキシウリジン三リン酸を取り込ませるために、ランダム−プライマー法を使用し得る。ビオチニル化プローブオリゴヌクレオチドは、アビジン、ストレプトアビジン、及び蛍光色素又は呈色反応を生み出す酵素に結合された抗体(例えば、抗ビオチン抗体)のような、ビオチン結合性タンパク質との反応により検出し得る。
【0141】
ノーザン及び他のRNAハイブリダイゼーション技術に加えて、RNA転写体のレベルを決定することは、インサイツハイブリダイゼーションの技術を使用して達成し得る。この技術は、ノーザンブロッティング技術よりも少ない細胞数しか必要とせず、及び全細胞を顕微鏡カバーガラス上に沈着させること、及び放射活性又は他の方法で標識化された核酸(例えば、cDNA又はRNA)プローブを含有する溶液で、細胞の核酸内容物を探査することを含む。この技術は、対象からの組織バイオプシーサンプルを分析するために特によく適している。インサイツハイブリダイゼーション技術の実際は、その全開示が本明細書において援用される米国特許第5,427,916号により詳細に記載されている。所与の遺伝子産物のインサイツハイブリダイゼーションに適したプローブは、核酸配列から生成し得る。
【0142】
細胞中の遺伝子転写体の相対数は、遺伝子転写体の逆転写、続いての、ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)による逆転写された転写体の増幅によっても決定し得る。遺伝子転写体のレベルは、内部標準、例えば、同一サンプル中に存在する「ハウスキーピング」遺伝子からのmRNAのレベルとの比較により定量し得る。内部標準としての使用に適した「ハウスキーピング」遺伝子には、例えば、ミオシン又はグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(G3PDH)が含まれる。定量的RT−PCR及びそれらの変法のための方法は当業者の範囲内である。
【0143】
いくつかの例において、サンプル中の複数の異なった遺伝子産物の発現レベルを同時に決定することが望ましいであろう。他の例において、癌と相関するすべての既知の遺伝子の転写体の発現レベルを決定することが望ましいであろう。数百の遺伝子について癌特異的発現レベルを評価することは多大な時間を必要とし、及び大量の総RNA(各ノーザンブロットについて少なくとも20μg)及び放射性同位元素を必要とするオートラジオグラフィー技術を要求する。
【0144】
これらの制限を克服するため、遺伝子又は遺伝子産物のセットに特異的であるプローブオリゴデオキシヌクレオチドのセットを含有するようにオリゴライブラリーをマイクロチップフォーマット(即ち、マイクロアレイ)で構築することができる。こうしたマイクロアレイを使用し、生物学的サンプル中の複数のマイクロRNA発現レベルを、RNAを逆転写して標的オリゴデオキシヌクレオチドのセットを発生させ、及びそれらをマイクロアレイ上のプローブオリゴデオキシヌクレオチドにハイブリダイズさせ、ハイブリダイゼーション又は発現プロファイルを発生させることにより決定し得る。試験サンプルのハイブリダイゼーションプロファイルは次ぎに対照サンプルのものと比較することが可能であり、どのマイクロRNAがこうした疾患において変化した発現レベルを有しているのかを決定する。本明細書で使用する「プローブオリゴヌクレオチド」又は「プローブオリゴデオキシヌクレオチド」は、標的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることが可能であるオリゴヌクレオチドを指す。「標的オリゴヌクレオチド」又は「標的オリゴデオキシヌクレオチド」は、検出されるべき分子を指す(例えば、ハイブリダイゼーションを介して)。「特異的プローブオリゴヌクレオチド」又は「遺伝子産物に対して特異的なプローブオリゴヌクレオチド」では、特異的遺伝子産物又は特異的遺伝子産物の逆転写体にハイブリダイズするように選択された配列を有するプローブオリゴヌクレオチドを意味する。
【0145】
特定のサンプルの「発現プロファイル」又は「ハイブリダイゼーションプロファイル」は、本質的にサンプルの状態のフィンガープリントである;2つの状態は同様に発現されるいずれかの特定の遺伝子を有することができるが、多くの遺伝子の同時評価は、細胞の状態に独特である遺伝子発現プロファイルの発生を可能にする。即ち、正常細胞を該細胞から区別することができ、そして細胞内で、異なった予後状態(例えば、良好な又は不良な長期生存見通し)を決定することができる。異なった状態にある細胞の発現プロファイルを比較することにより、これらの状態の各々においてどの遺伝子が重要であるかに関する情報(遺伝子の上方及び下方調節を含んで)が得られる。細胞又は正常細胞において異なって発現された配列、ならびに異なった予後転帰を生じる発現差違の同定は、この情報のさまざまな形での使用を可能にする。例えば、特定の治療計画を評価することができる(例えば、特定の患者において、長期予後を改善するために化学療法薬剤が作用するかどうかを決定するための)。同様に、患者サンプルと既知の発現プロファイルを比較することにより、診断を行う又は確認することができる。さらに、これらの遺伝子発現プロファイル(又は個々の遺伝子)は、発現プロファイルを抑制する、又は不良な予後プロファイルをより良い予後プロファイルに変換する薬剤候補のスクリーニングを可能にする。
【0146】
従って、本発明は、対象がこうした疾患を有するか、又は発症するリスクを有するかどうかを診断する方法を提供し、対象から得られた試験サンプルからRNAを逆転写して標的オリゴデオキシヌクレオチドのセットを提供すること、標的オリゴデオキシヌクレオチドを、miRNA特異的プローブオリゴヌクレオチドを含んでなるマイクロアレイとハイブリダイズさせて試験サンプルについてのハイブリダイゼーションプロファイルを提供すること、及び試験サンプルハイブリダイゼーションプロファイルと対照サンプルから発生させたハイブリダイゼーションプロファイル比較することを含んでなり、少なくとも一つのmiRNAのシグナルの変化は、該対象がこうした疾患を有するか又は発症するリスクにあるかの指標である。
【0147】
本発明は、一つ又はそれ以上の予後マーカーと関係があるこうした疾患を診断する方法も提供し、対象からの試験サンプル中の少なくとも一つの遺伝子産物のレベルを測定すること、及び試験サンプル中の少なくとも一つの遺伝子産物のレベルと、対照サンプル中の対応する遺伝子産物のレベルとを比較することを含んでなる。対照サンプルと比較して試験サンプル中の少なくとも一つの遺伝子産物の変化(例えば、増加、減少)は、該対象が、一つ又はそれ以上の予後マーカーに関係するこうした疾患を有するか又は発症するリスクにあるかを示す。
【0148】
該疾患は、一つ又はそれ以上の予後マーカー又は特性と関係することができ、悪い(即ち、負の)予後と関係するマーカー、又は良好な(即ち、正の)予後と関係するマーカーが含まれる。ある態様において、本明細書に記載した方法を使用して診断されるこうした疾患は、一つ又はそれ以上の悪い予後特性と関係する。
【0149】
その発現がこれらの予後マーカーのそれぞれに関係する細胞中で変化した特定のマイクロRNAが本明細書に記載されている。一つの態様において、該少なくとも一つの遺伝子産物のレベルは、対象から得られた試験サンプルからのRNAを逆転写して標的オリゴデオキシヌクレオチドのセットを提供すること、該標的オリゴデオキシヌクレオチドを、miRNA−特異的プローブオリゴヌクレオチドを含んでなるマイクロアレイとハイブリダイズさせて試験サンプルについてのハイブリダイゼーションプロファイルを提供すること、そして該試験サンプルハイブリダイゼーションプロファイルと対照サンプルから発生させたハイブリダイゼーションプロファイルを比較すること、により測定される。
【0150】
いずれか一つの理論に束縛されるものではないが、細胞中の一つ又はそれより多くの遺伝子産物のレベルの変化は、これらの遺伝子産物についての一つ又はそれより多くの意図された標的の調節解除を生じることができると考えられており、それはこうした疾患の形成を導き得る。それ故、遺伝子産物のレベルを変化させることで(例えば、細胞中で上方調節されている遺伝子産物のレベルを減少させることにより、癌細胞中で下方調節されている遺伝子産物のレベルを増加させることにより)、こうした疾患を成功裏に治療することができる。細胞中で調節解除された遺伝子産物の推定遺伝子標的の例が本明細書に記載されている。
従って、本発明は、対象においてこうした疾患を治療する方法を包含し、ここで該対象の癌細胞中では、少なくとも一つの遺伝子産物が調節解除されている(例えば、下方制御、上方制御)。該細胞中で少なくとも一つの単離された遺伝子産物が下方制御されている場合、本方法は、対象中の癌細胞の増殖が抑制されるように、少なくとも一つの単離された遺伝子産物の有効量を投与することを含んでなる。癌細胞中で少なくとも一つの単離された遺伝子産物が上方制御されている場合、本方法は、該細胞の増殖が抑制されるように、本明細書において遺伝子発現抑制化合物と称される、少なくとも一つの遺伝子の発現を抑制するための少なくとも一つの化合物の有効量を該対象に投与することを含んでなる。
【0151】
本明細書で使用される用語「治療する」、「治療すること」及び「治療」は、例えば、疾患又は状態に関連する症状を寛解させることを指し、疾患症状の発症を防止する又は遅延すること、及び/又は疾患又は状態の症状の重症度又は頻度を減らすことを含んでいる。用語「対象」、「患者」及び「個体」は、限定されるわけではないが、霊長類、乳牛、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウス又は他のウシ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコ、げっ歯類又はマウス種を含む哺乳類のような動物を含むことが本明細書において定義される。好ましい態様において、該動物はヒトである。
【0152】
本明細書で使用される単離された遺伝子産物の「有効量」とは、こうした疾患を患っている対象中の癌細胞の増殖を抑制するために十分な量である。当業者は、対象のサイズ及び体重;疾患浸透の程度;対象の年齢、健康及び性;投与経路;及び投与が局所的であるか又は全身的であるかどうかのような因子を考慮に入れることにより、所与の対象に投与すべき遺伝子産物の有効量を容易に決定し得る。
【0153】
例えば、単離された遺伝子産物の有効量は、治療されるべき対象のおよその又は推定体重に基づき得る。好ましくは、こうした有効量は、本明細書に記載した通り、非経口的に又は経腸的に投与される。例えば、単離された遺伝子産物の有効量は、体重kg当たり約5〜3000マイクログラム、体重kg当たり約700〜1000マイクログラムの範囲で、又は体重kg当たり約1000マイクログラムを超えて対象に投与される。
【0154】
当業者は、所与の対象へ一つ又はそれより多くの遺伝子産物を投与することについての適切な投与計画も容易に決定し得る。例えば、一つ又はそれより多くの遺伝子産物は対象に一度で投与し得る(例えば、単回注射又はデポジションとして)。もしくは、一つ又はそれより多くの遺伝子産物は、約3〜約28日、より好ましくは約7日〜約10日の期間、対象に1日1回又は2回投与し得る。特定の投与計画において、一つ又はそれより多くの遺伝子産物は7日にわたって1日1回投与される。投与計画が複数の投与を含んでなる場合、対象に投与される一つ又はそれより多くの遺伝子産物の有効量は、全投与計画にわたって投与された遺伝子産物の総量を含むことが可能であることが理解される。
【0155】
本明細書で使用される「単離された」遺伝子産物は、合成された又はヒトの介在を介して天然の状態から変化された又は取り出されたものである。例えば、合成遺伝子産物又はその天然の状態で同時に存在する物質から部分的に又は完全に分離された遺伝子産物が、「単離されて」いると考えられる。単離された遺伝子産物は実質的に精製された形態で存在することが可能であり、又は遺伝子産物が送達される細胞内に存在することが可能である。それ故、細胞へ計画的に送達された又は細胞中で発現された遺伝子産物は、「単離された」遺伝子産物と考えられる。前駆分子から細胞内部で産生された遺伝子産物も「単離された」分子であると考えられる。
【0156】
単離された遺伝子産物は、多くの標準技術を使用して得ることが可能である。例えば、該遺伝子産物は当該技術分野で公知の方法を使用して化学的に合成又は組換え的に産生し得る。一つの態様において、遺伝子産物は適切に保護されたリボヌクレオシドホスホラミダイト及び慣用的DNA/RNAシンセサイザーを使用して化学的に合成される。合成RNA分子又は合成試薬の商業的供給元には、例えば、Proligo (Hamburg, Germany), Dharmacon Research (Lafayette, CO, U.S.A.), Pierce Chemical (Perbio Science の一部門, Rockford, IL, U.S.A.), Glen Research (Sterling, VA, U.S.A.), ChemGenes (Ashland, MA, U.S.A.) 及びCruachem (Glasgow, UK) が含まれる
もしくは、該遺伝子産物は、いずれかの適したプロモーターを使用して組換え環状又は直線状DNAプラスミドから発現し得る。プラスミドからRNAを発現するために適したプロモーターには、例えば、U6又はH1 RNAポリメラーゼIIIプロモーター配列又はサイトメガロウイルスプロモーターが含まれる。他の適したプロモーターの選択は当業者には自明である。本発明の組換えプラスミドは、癌細胞中での遺伝子産物の発現のための誘導可能又は調節可能プロモーターも含み得る。
【0157】
組換えプラスミドから発現された該遺伝子産物は、標準技術により培養細胞発現システムから単離し得る。組換えプラスミドから発現された遺伝子産物は、癌細胞へ送達する、及び該細胞中で直接発現することも可能である。癌細胞へ該遺伝子産物を送達するための組換えプラスミドの使用は、以下により詳細に議論されている。
【0158】
該遺伝子産物は別の組換えプラスミドから発現することも、又は同一の組換えプラスミドから発現することも可能である。一つの態様において、該遺伝子産物は、単一プラスミドからRNA前駆分子として発現され、そして該前駆分子は、限定されるわけではないが、癌細胞内に実存するプロセッシングシステムを含む適したプロセッシングシステムにより、機能性遺伝子産物にプロセッシングされる。他の適したプロセッシングシステムには、例えば、インビトロ ショウジョウバエ細胞溶解システム(例えば、その全開示が本明細書において援用される、Tuschl et al. による米国公開特許出願番号2002/0086356に記載されている)及び大腸菌(E.coli)RNAseIIIシステム(例えば、その全開示が本明細書において援用される、Yang et al. による米国公開特許出願番号2004/0014113に記載されている)が含まれる。
【0159】
該遺伝子産物を発現するために適したプラスミドの選択、プラスミド内へ遺伝子産物を発現するための核酸配列を挿入する方法、及び組換えプラスミドを目的の細胞へ送達する方法は当業者には自明である。例えば、その全開示が本明細書において援用される、Zeng et al. (2002), Molecular Cell 9:1327-1333; Tuschl (2002), Nat.Biotechnol, 20:446-448; Brummelkamp et al. (2002), Science 296:550-553; Miyagishi et al. (2002), Nat. Biotechnol. 20:497-500; Paddison et al. (2002), Genes Dev. 16:948-958; Lee et al. (2002), Nat. Biotechnol. 20:500-505; 及び Paul et al. (2002), Nat. Biotechnol. 20:505-508 を参照されたい。
【0160】
一つの態様において、該遺伝子産物を発現しているプラスミドは、CMV中間初期プロモーター制御下の前駆体RNAをコードしている配列を含んでなる。本明細書において使用されるプロモーターの「制御下」とは、プロモーターが遺伝子産物コード配列の転写を開始できるように、遺伝子産物をコードする核酸配列が該プロモーターの3’に位置していることを意味する。
【0161】
該遺伝子産物は組換えウイルスベクターからも発現し得る。該遺伝子産物が2つの別の組換えウイルスベクターから、又は同一のウイルスベクターから発現し得ることが企図される。該組換えウイルスベクターから発現されたRNAは、標準技術により培養細胞発現システムから単離することが可能であり、又は癌細胞中で直接発現することも可能である。癌細胞へ該遺伝子産物を送達するための組換えウイルスベクターの使用は以下により詳細に議論されている。
【0162】
本発明の組換えウイルスベクターは、該遺伝子産物をコードする配列及びRNA配列を発現するためのいずれかの適したプロモーターを含んでなる。適したプロモーターには、例えば、U6又はH1 RNApol IIIプロモーター配列又はサイトメガロウイルスプロモーターが含まれる。他の適したプロモーターの選択は当業者には自明である。本発明の組換えウイルスベクターは、癌細胞中での該遺伝子産物の発現のための誘導可能又は調節可能プロモーターも含み得る。
【0163】
該遺伝子産物のコード配列を受容することが可能ないずれかのウイルスベクターを使用し得る;例えば、アデノウイルス(AV); アデノ随伴ウイルス(AAV);レトロウイルス(例えば、レンチウイルス(LV)、ラブドウイルス、マウス白血病ウイルス);ヘルペスウイルスなどに由来するベクター。ウイルスベクターの向性は、他のウイルスからの外被タンパク質又は他の表面抗原でベクターをシュードタイピングすることにより、又は必要に応じて、異なったウイルスカプシドタンパク質で置換することにより修飾し得る。
【0164】
例えば、本発明のレンチウイルスベクターを、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、狂犬病、エボラ、モコラなどからの表面タンパク質でシュードタイピングし得る。本発明のAAVベクターは、異なったカプシドタンパク質血清タイプを発現するようにベクターを工学処理することにより、異なった細胞を標的とするようにできる。例えば、血清タイプ2ゲノム上の血清タイプ2カプシドを発現しているAAVベクターは、AAV2/2と称される。このAAV2/2ベクター中の血清タイプ2カプシド遺伝子を血清タイプ5カプシド遺伝子で置き換えることができて、AAV2/5ベクターが産生される。異なったカプシドタンパク質血清タイプを発現するAAVベクターを構築するための技術は、当業者には自明である;例えば、その全開示が本明細書において援用される、Rabinowitz, J.E., et al. (2002), J. Virol. 76:791-801を参照されたい。
【0165】
本発明での使用に適した組換えウイルスベクターの選択、RNAを発現するための核酸配列をベクター内へ挿入する方法、該ウイルスベクターを目的の細胞へ送達する方法及び発現されたRNA産物の回収は当業者には自明である。例えば、その全開示が本明細書において援用される、Dornburg (1995), Gene Therap. 2:301-310; Eglitis (1988), Biotechniques 6:608-614; Miller (1990), Hum. Gene Therap. 1:5-14; 及びAnderson (1998), Nature 392:25-30 、を参照されたい。
【0166】
ある態様において、適したウイルスベクターはAV及びAAVに由来するものである。該遺伝子産物を発現するために適したAVベクター、該組換えAVベクターを構築するための方法、及び標的細胞内に該ベクターを送達するための方法は、その全開示が本明細書において援用される、Xia et al. (2002), Nat. Biotech. 20:1006-1010 に記載されている。該遺伝子産物を発現するために適したAAVベクター、該組換えAAVベクターを構築するための方法、及び標的細胞内に該ベクターを送達するための方法は、その全開示が本明細書において援用される、Samulski et al. (1987), J. Virol. 61:3096-3101; Fisher et al. (1996), J. Virol, 70:520-532; Samulski et al. (1989), J. Virol. 63:3822-3826;米国特許第5,252,479号;米国特許第5,139,941号;国際特許出願番号WO 94/13788 ;及び国際特許出願番号WO 93/24641 に記載されている。
【0167】
ある態様において、本発明の組換えAAVウイルスベクターは、ヒトU6 RNAプロモーター制御下、ポリT終結配列と作動可能なように連結された前駆体RNAをコードする核酸配列を含んでなる。本明細書において使用される「ポリT終結配列と作動可能なように連結された」とは、センス又はアンチセンス鎖をコードする核酸配列が、ポリT終結シグナルと5’方向ですぐに隣接していることを意味する。ベクターからの該配列の転写の間、ポリT終結シグナルは転写を終結させるように作用する。
【0168】
本発明の治療法の他の態様において、発現を抑制する少なくとも一つの化合物の有効量も対象に投与し得る。本明細書において使用される「遺伝子発現を抑制する」とは、治療後、遺伝子産物の活性、成熟形態の産生が、治療に先だって産生された量よりも少ないことを意味する。当業者は、例えば、上記診断法で議論した転写体レベルを決定するための技術を使用して、癌細胞において発現が抑制されたかどうかを容易に決定し得る。抑制は、遺伝子発現のレベル(即ち、該遺伝子産物をコードする遺伝子の転写を抑制することにより)、又はプロセッシングのレベル(例えば、前駆体の成熟、活性遺伝子産物へのプロセッシングを抑制することにより)で起こり得る。
【0169】
本明細書で使用される、発現を抑制する化合物の「有効量」とは、癌関連染色体特性を有する癌を罹患した対象中の、癌細胞の増殖を抑制するために十分な量である。当業者は、対象のサイズ及び体重;疾患浸透の程度;対象の年齢、健康及び性;投与経路;及び投与が局所的であるか又は全身的であるかどうかのような因子を考慮に入れて、所与の対象に投与すべき発現抑制化合物の有効量を容易に決定し得る。
【0170】
例えば、該発現抑制化合物の有効量は、治療されるべき対象のおよその又は推定体重に基づき得る。こうした有効量は、中でも本明細書に記載した非経口的に又は経腸的に投与される。例えば、対象に投与される発現抑制化合物の有効量は、体重kg当たり約5〜3000マイクログラム、体重kg当たり約700〜1000マイクログラム又は体重kg当たり約1000マイクログラム以上であり得る。
【0171】
当業者は、本明細書に記載したように、発現を抑制する化合物を所与の対象に投与するための適切な投与計画を容易に決定することも可能である。例えば、発現抑制化合物は該対象に一度で投与し得る(例えば、単回投与又は沈着)。もしくは、発現抑制化合物は約3日から約28日、より好ましくは約7日から約10日の期間、1日1又は2回投与し得る。特定の投与計画において、発現抑制化合物は7日間にわたって1日1回投与した。投与計画が多数回投与を含んでなる場合、対象に投与された発現抑制化合物の有効量は、全投与計画にわたって投与された化合物の総量を含み得る。
【0172】
発現を抑制するために適した化合物には、二本鎖RNA(短い又は小さな干渉RNA又は「siRNA」のような)、アンチセンス核酸及びリボザイムのような酵素的RNA分子が含まれる。これらの化合物の各々は、所与の遺伝子産物へ標的化されることが可能であり、標的遺伝子産物を破壊する又は破壊を誘導する。
【0173】
例えば、所与の遺伝子の発現は、該遺伝子産物の少なくとも一部と、少なくとも90%、例えば少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列相同性を有する単離された二本鎖RNA(「dsRNA」)分子で該遺伝子のRNA干渉を誘発することにより抑制し得る。特定の態様において、dsRNA分子は、「短い又は小さな干渉RNA」又は「siRNA」である。
【0174】
本方法で有用なsiRNAは、約17ヌクレオチド〜約29ヌクレオチド長の、好ましくは約19〜約25ヌクレオチド長の短い二本鎖DNAを含んでなる。該siRNAは、標準ワトソン−クリック塩基対形成相互作用により(以後「塩基対形成された」)一緒にアニーリングされたセンスRNA鎖及び相補的アンチセンスRNA鎖を含んでなる。該センス鎖は、該標的遺伝子産物内に含有されている核酸配列と実質的に同一である核酸配列を含んでなる。
【0175】
本明細書で使用される、該標的mRNA内に含有されている標的配列と「実質的に同一である」、siRNA中の核酸配列は、該標的配列と同一である、又は1又は2ヌクレオチドのみ該標的配列と異なっている核酸配列である。該siRNAのセンス及びアンチセンス鎖は、二つの相補的な一本鎖RNA分子を含んでなることが可能であり、又は二つの相補的部分が塩基対形成された、及び一本鎖「ヘアピン」領域により共有結合で連結された単一分子を含んでなることも可能である。
【0176】
該siRNAは、一つ又はそれ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換及び/又は改変により天然に存在するRNAとは異なった改変RNAであることも可能である。こうした改変は、該siRNAの末端(単数又は複数)に対する又は該siRNAの一つ又はそれ以上の内部ヌクレオチドに対する非ヌクレオチド物質の付加、又はヌクレアーゼ消化に対して該siRNAを耐性にする修飾、又はデオキシリボヌクレオチドによる該siRNA中の一つ又はそれ以上のヌクレオチドの置換を含むことができる。
【0177】
該siRNAの一つ又は両方の鎖は、3’オーバーハングも含み得る。本明細書において使用される「3’オーバーハング」とは、二重鎖形成したRNA鎖の3’末端から伸長する少なくとも一つの、対を形成していないヌクレオチドを指す。それ故、特定の態様において、該siRNAは、1〜約6ヌクレオチド(リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドを含む)長、1〜約5ヌクレオチド長、1〜約4ヌクレオチド長、又は約2〜約4ヌクレオチド長の少なくとも一つの3’オーバーハングを含んでなる。特定の態様において、該3’オーバーハングは該siRNAの両方の鎖上に存在し、及び2ヌクレオチド長である。例えば、該siRNAの各鎖は、ジチミジル酸(「TT」)又はジウリジル酸(「uu」)の3’オーバーハングを含んでなることができる。
【0178】
該siRNAは、化学的又は生物学的、又は単離された遺伝子産物について前に記載した組換えプラスミド又はウイルスベクターから発現することも可能である。dsRNA又はsiRNA分子を産生する又は試験する方法の例は、それら両方の全開示が本明細書において援用される、Gewirtz による米国公開特許出願番号2002/0173478及びReich et al. による米国公開特許出願番号2004/0018176 に記載されている。
【0179】
所与の遺伝子の発現は、アンチセンス核酸によっても抑制し得る。本明細書で使用される「アンチセンス核酸」とは、標的RNAの活性を変化させるRNA−RNA又はRNA−DNA又はRNA−ペプチド核酸相互作用により標的RNAに結合する核酸分子を指す。本方法における使用のために適したアンチセンス核酸は、遺伝子産物中の近接する核酸配列に相補的な核酸配列を一般的に含んでなる、一本鎖核酸(例えば、RNA、DNA、RNA−DNAキメラ、PNA)である。該アンチセンス核酸は、遺伝子産物中の近接する核酸配列と50〜100%相補的、75〜100%相補的、又は95〜100%相補的である核酸配列を含んでなることができる。該遺伝子産物の核酸配列は本明細書に提供されている。いずれかの理論に束縛されるものではないが、該アンチセンス核酸は、RNase H又は該遺伝子産物/アンチセンス核酸二重鎖を消化する別の細胞ヌクレアーゼを活性化すると信じられている。
【0180】
アンチセンス核酸は、標的特異性、ヌクレアーゼ耐性、送達又は該分子の有効性に関する他の特性を増強するため、核酸主鎖への又は糖及び塩基部分(またはそれらの均等物)への修飾も含有し得る。こうした修飾には、コレステロール部分、アクリジンのような二重鎖インターカレーター、又は一つ又はそれ以上のヌクレアーゼ抵抗性基が含まれる。
【0181】
アンチセンス核酸は、化学的又は生物学的、又は該単離された遺伝子産物について前に記載した組換えプラスミド又はウイルスベクターから発現することも可能である。産生する又は試験するための方法の例は、当業者には自明である;例えば、それらの全開示が本明細書において援用される、Stein and Cheng (1993), Science 261 :1004及びWoolf et al., による米国特許第5,849,902号を参照されたい。
【0182】
所与の遺伝子の発現は、酵素的核酸によっても抑制し得る。本明細書で使用される「酵素的核酸」とは、遺伝子産物の近接する核酸配列に相補性を有する基質結合領域を含んでなる核酸を指し、それは該遺伝子産物を特異的に切断することが可能である。酵素的核酸基質結合領域は、遺伝子産物中の近接する核酸配列と、例えば、50〜100%相補的、75〜100%相補的又は95〜100%相補的であり得る。該酵素的核酸は、塩基、糖及び/又はリン酸基に修飾を含んでなることもできる。本方法における使用のための酵素的核酸の例はリボザイムである。
【0183】
該酵素的核酸は、化学的又は生物学的、又は該単離された遺伝子産物について前に記載した組換えプラスミド又はウイルスベクターから発現することも可能である。dsRNA又はsiRNA分子を産生する又は試験するための方法の例は、それらの全開示が本明細書において援用される、Werner and Uhlenbeck (1995), Nucl Acids Res. 23:2092-96; Hammann et al. (1999), Antisense and Nucleic Acid Drug Dev. 9:25-31 ;及びCech et al. による米国特許第4,987,071 号に記載されている。
【0184】
少なくとも一つの遺伝子産物、又は発現を抑制するための少なくとも一つの化合物の投与は、癌関連染色体特性に関係する癌を有する対象中の癌細胞の増殖を抑制するであろう。本明細書で使用される「癌細胞の増殖を抑制する」とは、該細胞を殺す、又は該細胞の増殖を持続的又は一時的に休止させる又は遅らせることを意味する。もし、遺伝子産物又は遺伝子発現抑制化合物の投与後に該対象中のこうした細胞の数が一定に残るか又は減少したら、癌細胞増殖の抑制が推測できる。もし、こうした細胞の絶対数が増加しても、腫瘍増殖の速度が低下したら、癌細胞の増殖の抑制がまた推測できる。
【0185】
対象体の体内の癌細胞の数は、直接測定により、又は原発性又は転移性腫瘍塊のサイズからの推定により決定し得る。例えば、対象中の癌細胞の数は、免疫組織学的方法、フローサイトメトリー、又は癌細胞の特徴的表面マーカーを検出するように設計された他の技術により測定し得る。
【0186】
遺伝子産物又は遺伝子発現抑制化合物は、対象の癌細胞へこれらの化合物を送達するために適したいずれかの手段により対象に投与し得る。例えば、該遺伝子産物又は遺伝子発現抑制化合物は、これらの化合物で、又はこれらの化合物をコードする配列を含んでなる核酸で該対象の細胞をトランスフェクトするために適した方法により投与し得る。
【0187】
遺伝子産物又は遺伝子発現抑制化合物は、いずれかの適した経腸又は非経口投与経路によっても対象に投与し得る。本方法のために適した経腸投与経路には、例えば、経口、直腸又は鼻孔内送達が含まれる。適した非経口投与経路には、例えば、血管内投与(例えば、静脈内ボーラス投与、静脈内注入、動脈内ボーラス投与、動脈内注入、及び血管系内へのカテーテル点滴注入);組織周辺及び組織内注射(例えば、腫瘍周囲及び腫瘍内注射、網膜内注射又は網膜下注射);皮下注入(浸透圧ポンプによるような)を含む皮下注射又はデポジション;カテーテル又は他の設置デバイス(例えば、網膜ペレット又は座剤、又は多孔質、非多孔質又はゲル状物質を含んでなる移植片)による目的の組織への直接適用;及び吸入が含まれる。特に適した投与経路は注射、注入及び患者内への静脈投与である。
【0188】
本方法において、遺伝子産物又は遺伝子産物発現抑制化合物は、裸のRNAとして、送達試薬と組み合わせて、又は該遺伝子産物又は発現抑制化合物を発現する配列を含んでなる核酸(例えば、組換えプラスミド又はウイルスベクター)として該対象に投与し得る。適した送達試薬には、例えば、Mirus Transit TKO 親油性試薬;リポフェクチン;リポフェクタミン;セルフェクチン;ポリカチオン(例えば、ポリリジン)及びリポソームが含まれる。
【0189】
該遺伝子産物又は遺伝子発現抑制化合物を発現する配列を含んでなる組換えプラスミド又はウイルスベクター、及びこうしたプラスミド及びベクターを癌細胞に送達するための技術は本明細書で議論されている。
【0190】
特定の態様において、遺伝子産物又は遺伝子発現阻害化合物(又はそれらをコードする配列を含んでなる核酸)を対象に送達するためにリポソームが使用される。リポソームは該遺伝子産物又は核酸の血中半減期を増加させることもできる。本発明で使用するために適したリポソームは、一般的に中性又は陰性に荷電したリン脂質及びコレステロールのようなステロールを含む、標準小胞形成脂質から形成し得る。脂質の選択は、所望のリポソームサイズ及び血流におけるリポソームの半減期のような因子の考慮により一般的に導かれる。例えば、それらの全開示が本明細書において援用される、Szoka et al. (1980), Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9:467;及び米国特許第4,235,871、4,501,728、4,837,028及び5,019,369 号に記載されているように、リポソームを作製するための多様な方法は公知である。
【0191】
本方法で使用するためのリポソームは、リポソームに癌細胞を標的とさせるリガンド分子を含むことができる。腫瘍細胞抗原に結合するモノクローナル抗体のような、癌細胞に一般的なレセプターに結合するリガンドが好ましい。
【0192】
本方法で使用するためのリポソームは、単核マクロファージ系(「MMS」)及び細網内皮系(「RES」)によるクリアランスを避けるために修飾され得る。こうした修飾リポソームは、表面上又はリポソーム構造内に組み入れられたオプソニン化阻害部分を有する。特に好ましい態様において、本発明のリポソームはオプソニン化阻害部分及びリガンドの両方を含んでなることが可能である。
【0193】
本発明のリポソームの調製において使用のためのオプソニン化阻害部分は、典型的にはリポソーム膜へ結合された大きな親水性ポリマーである。本明細書で使用する、オプソニン化阻害部分がリポソーム膜に「結合されて」いるとは、例えば、膜それ自身内への脂溶性アンカーのインターカレーションにより、又は膜脂質の活性基への直接結合により化学的又は物理的に膜に結合されている場合である。これらのオプソニン化阻害親水性ポリマーは保護的表面層を形成し、MMS及びRESによるリポソームの取り込みを著しく減少させる;例えば、その全開示が本明細書において援用される米国特許第4,920,016号に記載されているように。
【0194】
リポソームを修飾するために適したオプソニン化阻害部分は、好ましくは、約500〜約40,000ダルトン、及びより好ましくは約2,000〜約20,000ダルトンの平均分子量を有する水溶性ポリマーである。こうしたポリマーには、ポリエチレングリコール(PEG)又はポリプロピレングリコール(PPG)又はそれらの誘導体;例えば、メトキシPEG及びPPG、又はPEG及びPPGステアレート;ポリアクリルアミド又はポリN−ビニルピロリドンのような合成ポリマー;直鎖状、分枝又は樹状のポリアミドアミン;ポリアクリル酸;多価アルコール、例えば、カルボキシ又はアミノ基が化学的に結合されたポリビニルアルコール及びポリキシリトール、ならびにガングリオシドGMlのようなガングリオシド、が含まれる。PEG、メトキシPEG又はメトキシPPG又はそれらの誘導体のコポリマーも適している。加えて、該オプソニン化阻害ポリマーは、PEGとポリアミノ酸、ポリサッカリド、ポリアミドアミン、ポリエチレンアミン又はポリヌクレオチドとのブロックコポリマーでもあり得る。該オプソニン化阻害ポリマーは、アミノ酸又はカルボン酸、例えば、ガラクツロ酸、グルクロン酸、マンノン酸、ヒアルロン酸、ペクチン酸、ノイラミン酸、アルギン酸、カラゲナンを含有する天然のポリサッカリド;アミノ化ポリサッカリド又はオリゴサッカリド(直鎖又は分枝);又は、例えば、生じたカルボキシル基で繋がっている炭酸の誘導体と反応させたカルボキシル化ポリサッカリド又はオリゴサッカリドでもあり得る。好ましくは、オプソニン化阻害部分はPEG、PPG又はそれらの誘導体である。PEG又はPEG誘導体で修飾されたリポソームは、しばしば「PEG化リポソーム」と称される。
【0195】
オプソニン化阻害部分は、多数の公知の技術のいずれか一つによりリポソーム膜に結合し得る。例えば、PEGのN−ヒドロキシスクシニミドエステルはホスファチジル−エタノールアミン脂溶性アンカーへ結合することが可能であり、そして次ぎに膜へ結合される。同様に、デキストランポリマーは、Na(CN)BH及び30:12の比のテトラヒドロフラン及び水のような溶媒混合物を使用した60℃での還元的アミノ化を介して、ステアリルアミン脂溶性アンカーで誘導体化し得る。
【0196】
オプソニン化阻害部分で修飾されたリポソームは、循環系において無修飾リポソームよりも長く残存する。このような理由のため、こうしたリポソームはしばしば「ステルス」リポソームと称される。ステルスリポソームは、多孔質又は「漏出性」微小血管系から栄養を受けている組織で蓄積されることが知られている。それ故、こうした微小血管系欠陥により特徴付けられる組織、例えば、固形腫瘍はこれらのリポソームを効率的に蓄積するであろう;Gabizon, et al. (1988), Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 18:6949-53 を参照されたい。加えて、RESによる減少した取り込みは、肝臓及び脾臓におけるリポソームの有意な蓄積を防止することにより、ステルスリポソームの毒性を低下させる。それ故、オプソニン化阻害部分で修飾されたリポソームは、該遺伝子産物又は遺伝子発現阻害化合物(又はそれらをコードする配列を含んでなる核酸)を腫瘍細胞に送達するのに特に適している。
【0197】
遺伝子産物又は遺伝子発現抑制化合物は、当該技術分野で公知である技術に従って、対象への投与に先立って、しばしば「医薬(medicament)」と称される医薬組成物として製剤し得る。従って、本発明はすべてを治療するのための医薬組成物を包含する。一つの態様において、該医薬組成物は、少なくとも一つの単離された遺伝子産物及び薬学的に許容できる坦体を含んでなる。特定の態様において、少なくとも一つの遺伝子産物は、適した対照細胞と比べてすべての細胞中で減少したレベルの発現を有する遺伝子産物に対応する。
【0198】
他の態様において、本発明の医薬組成物は、少なくとも一つの発現阻害化合物を含んでなる。特定の態様において、該少なくとも一つの遺伝子発現抑制化合物は、対照細胞よりもすべての細胞においてその発現が多い遺伝子に特異的である。
【0199】
本発明の医薬組成物は少なくとも無菌で及び発熱物質が含まれていないことで特徴付けられる。本明細書で使用される「医薬製剤」は、ヒト及び獣医学使用のための製剤を含む。本発明の医薬組成物を製造するための方法は、例えば、その全開示が本明細書において援用される、Remington's Pharmaceutical Science, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa. (1985) に記載されているように、当業者には自明である。
【0200】
本医薬製剤は、医薬として受容可能な坦体と混合された、少なくとも一つの遺伝子産物又は遺伝子発現抑制化合物(又はそれらをコードする配列を含んでなる少なくとも一つの核酸)(例えば、0.1〜90重量%)又はそれらの生理学的に受容可能な塩を含んでなる。本発明の医薬製剤は、リポソームで被包されている少なくとも一つの遺伝子産物又は遺伝子発現抑制化合物(又は、それらをコードする配列を含んでなる少なくとも一つの核酸)及び薬学的に許容できる坦体も含むことができる。
【0201】
特に適した薬学的に許容できる坦体は、水、緩衝化水、通常の生理食塩水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン、ヒアルロン酸などである。
特定の態様において、本発明の医薬組成物は、ヌクレアーゼによる分解に耐性である該遺伝子産物又は遺伝子発現抑制化合物(又は、それらをコードする配列を含んでなる少なくとも一つの核酸)を含んでなる。当業者は、例えば、2’位が修飾されている一つ又はそれ以上のリボヌクレオチドを該遺伝子産物内に取り込ませることにより、ヌクレアーゼ耐性である核酸を容易に合成し得る。適した2’修飾リボヌクレオチドには、フルオロ、アミノ、アルキル、アルコキシ及びO−アリルで2’位が修飾されているものが含まれる。
【0202】
本発明の医薬組成物は、慣用的医薬賦形剤及び/又は添加剤も含むことができる。適した医薬賦形剤には、安定剤、抗酸化剤、浸透圧調節剤、緩衝剤及びpH調整剤が含まれる。適した添加剤には、例えば、生理学的生体適合性緩衝剤(例えば、トロメタミン塩酸塩)、キレート剤(例えば、DTPA又はDTPA−ビスアミドのような)又はカルシウムキレート錯体(例えば、カルシウムDTPA、CaNaDTPA−ビスアミドのような)の添加又は、随意に、カルシウム又はナトリウム塩の添加(例えば、塩化カルシウム、アスコビル酸カルシウム、グルコン酸カルシウム又は乳酸カルシウム)が含まれる。本発明の医薬組成物は液体形態での使用のために包装することができ、又は凍結乾燥することができる。
【0203】
本発明の固形医薬組成物のためには、慣用的無毒固体の薬学的に許容できる坦体を使用することができる;例えば、医薬用のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなど。
【0204】
例えば、経口投与のための固形医薬組成物は、上に列挙したいずれかの坦体及び賦形剤、及び10〜95%、好ましくは25%〜75%の該少なくとも一つの遺伝子産物又は遺伝子発現阻害化合物(又は、それらをコードする配列を含んでなる少なくとも一つの核酸)を含み得る。エアロゾル(吸入)投与のための医薬組成物は、0.01〜20重量%、好ましくはl%〜10重量%の上記のようにリポソーム中に被包された該少なくとも一つの遺伝子産物又は遺伝子発現抑制化合物(又は、それらをコードする配列を含んでなる少なくとも一つの核酸)、及び噴霧剤を含み得る。望むなら坦体も含ませ得る;例えば、鼻腔内送達のためのレシチン。
【0205】
本発明は、抗癌剤を同定する方法も包含し、細胞に試験剤を提供すること、及び該細胞中の少なくとも一つの遺伝子産物のレベルを測定することを含んでなる。一つの態様において、該方法は、細胞に試験剤を提供すること、及び該細胞中で減少したレベルに関係する少なくとも一つの遺伝子産物のレベルを測定することを含んでなる。適した対照サンプルと比較し、該細胞中での該遺伝子産物のレベルの増加は、該試験剤が抗癌剤であることを示す。
【0206】
他の態様において、該方法は、細胞に試験剤を提供すること、及び癌細胞中で増加した発現に関連する少なくとも一つの遺伝子産物のレベルを測定することを含んでなる。適した対照サンプルと比較し、該細胞中での該遺伝子産物のレベルの減少は、該試験剤が抗癌剤であることを示す。
【0207】
適した剤には、限定されるわけではないが、薬剤(例えば、低分子、ペプチド)及び生体高分子(例えば、タンパク質、核酸)が含まれる。該剤は、組換え的に、合成的に製造することが可能であり、又は天然源から単離する(即ち、精製する)ことができる。細胞へこうした剤を提供するための多様な方法(例えば、トランスフェクション)は当該技術分野では公知であり、こうした方法のいくつかは上に記載されている。少なくとも一つの遺伝子産物の発現検出するための方法(例えば、ノーザンブロッティング法、インサイツハイブリダイゼーション、RT−PCR、発現プロファイリング)も当該技術分野では公知である。
【0208】
定義
用語「アレイ」は、本明細書においては用語「マイクロアレイ」と相互交換的に使用する。
【0209】
本明細書で使用する用語「 癌(cancer)」は、調節されていない細胞増殖及び他の組織を侵襲するそれらの細胞の能力により典型的に特徴付けられる、哺乳類の生理学的状態を指す。
【0210】
本明細書で使用する用語「発現」は、DNA配列情報のメッセンジャーRNA(mRNA)又はタンパク質への変換を指す。発現は、完全長mRNA、mRNA断片、完全長タンパク質又はタンパク質断片のレベルを測定することによりモニターすることができる。
【0211】
用語「融合タンパク質」は、機能可能なように連結されている、少なくとも二つのポリペプチド(典型的には異なった起源から)を記述することが意図される。ポリペプチドに関し、該用語機能可能なように連結されているとは、各ポリペプチドがその意図される機能が働くような様式で二つのポリペプチドが連結されていることを意味することが意図される。典型的には、該二つのポリペプチドはペプチド結合を介して共有結合で結合されている。融合タンパク質は、好ましくは、標準的DNA組換え技術により生成される。例えば、第一のポリペプチドをコードするDNA分子は第二のポリペプチドをコードする別のDNA分子にライゲートされ、生じたハイブリッドDNA分子は宿主細胞中で発現されて、融合タンパク質を産生する。該DNA分子は、ライゲーション後、コードされたポリペプチドの翻訳フレームが変化しないように(即ち、該DNA分子は互いにインフレームでライゲートされる)、互いに5’−3’配向でライゲートされる。
【0212】
本明細書で使用する句「遺伝子発現シグナチャ」は、細胞、特に癌細胞における遺伝子発現の特有のパターンを指す。
本明細書で使用する用語「ハイブリダイゼーション」は、二つの一本鎖核酸間の結合、アニーリング又は塩基対形成のプロセスを指す。「ハイブリダイゼーションのストリンジェンシー」は、温度及びイオン強度の条件により決定される。核酸ハイブリッドの安定性は融解温度又はTmで表現され、それは定義された条件下、ハイブリッドが50%変性されている温度である。所与のハイブリッドのTmを推定するため、式が導かれている:式は、核酸のG+C含有量、ハイブリダイゼーションプローブの長さなどを考慮している(例えば、Sambrook et al., 1989)。プローブとその標的とのアニーリングの率を最大にするため、Tmより約20〜25℃低い温度で、高イオン強度(6xSSC又は6xSSPE)の溶液中でハイブリダイゼーションは一般に実施される。もしハイブリダイズされるべき配列が同一でないならば、1%の誤対合ごとにハイブリダイゼーション温度を1〜1.5℃低下させる。一般に、洗浄条件は可能な限りストリンジェントであるべきである(即ち、計算されたTmより約12〜20℃低い温度で、低イオン強度)。例として、高度にストリンジェントな条件は、典型的には、6xSSC/5xデンハート液/1.0%SDS中、68℃でのハイブリダイズ化及び0.2xSSC/0.1%SDS中、65℃での洗浄を含む。至適ハイブリダイゼーション条件は、溶液中で実施されるハイブリダイゼーションと固定化された核酸を使用するハイブリダイゼーション間では一般に異なる。当業者は、ハイブリダイゼーションを至適化する操作ためのパラメーターを認識するであろう。
本明細書で使用する用語「核酸」は、連結されたヌクレオチドの配列を指す。該ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドであることができ、それらは標準又は非標準ヌクレオチドであることができ;それらは修飾された又は誘導体化ヌクレオチドであることができ;それらは合成類似体であることができる。該ヌクレオチドはリン酸ジエステル結合又は非加水分解性結合により連結されることができる。該核酸は、少数のヌクレオチド(即ち、オリゴヌクレオチド )を含むことができ、又はそれは多くのヌクレオチド(即ち、ポリヌクレオチド9を含むことができる。該核酸は、一本鎖又は二本鎖であることができる。
本明細書で使用する用語「予後」は、癌の起こり得る経過及び転帰、そして特には、回復の可能性を指す。
【0213】
本発明を多様な及び好ましい態様を参照して説明してきたが、本発明の本質的範囲から離れることなく、多様な変形を行うことができ、そして均等物でそれらの要素を置換することができることを当業者は理解するであろう。加えて、多くの修飾を、その本質的範囲から離れることなく、本発明の教示による特定の状況又は材料に適合させるために行うことができる。
参照文献
本発明を明らかにする又は本発明の実行についての追加の詳細を提供するため、本明細書で使用された刊行物及び他の材料が参照文献としてここに取り込まれ、そして都合がよいように下記の文献目録に提供されている。
【0214】
本明細書に列挙したいずれの文書の引用も、いずれの先行文献も適切な先行技術であるとの承認を目的とするものではない。日付に関するすべての記載又はこれらの文書の内容に関するすべての表現は、出願者に入手可能な情報に基づいており、これらの文書の日付又は内容の正確さに関する承認を構成するものではない。
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルの食道腺癌、バレット食道及び扁平上皮癌の一つ又はそれ以上を検出する方法であって、
食道腺癌、バレット食道又は扁平上皮癌と関係がある少なくとも一つのバイオマーカーの変化した発現について該サンプルを分析すること、及び
該少なくとも一つのバイオマーカーの変化した発現と該サンプル中の食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌の存在又は非存在を相関させることを含んでなり、
該少なくとも一つのバイオマーカーが表2(図6)にリストされたmirから成る群より選択される、前記方法。
【請求項2】
該相関が:
1)腺癌(ADC)患者における癌性組織(CT)及び非癌性組織(NCT);
2)バレット食道(BE)を有する腺癌(ADC)患者における癌性組織(CT)及び非癌性組織(NCT);
3)腺癌患者(ADC)におけるバレット食道(BE)及び非バレット食道(NBE);
4)扁平上皮癌(SCC)における癌性組織(CT)及び非癌性組織(NCT);及び
5)癌性組織(CT)における腺癌(ADC)及び扁平上皮癌(SCC);
の一つまたはそれ以上の間を区別する、請求項1の方法。
【請求項3】
相関1)については:
mir−21、mir−223、mir−146a、mir−146b及びmir−181aから成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの増加した発現;及び
mir−203及びmir−205から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの減少した発現;の一つまたはそれ以上について該サンプルが分析される、請求項2の方法。
【請求項4】
相関2)については:
mir−21、mir−103及びmir−107から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの増加した発現;及び
let−7c、mir−210、mir−203及びmir−205から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの減少した発現;の一つまたはそれ以上について該サンプルが分析される、請求項2の方法。
【請求項5】
相関3)については:
mir−192、mir−215、mir−194、mir−135a、mir−92、mir−93、mir−7、mir−17、mir20b、mir−107、mir−103及びmir−191から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの増加した発現;及び
mir−30b、mir−193a、let−7b、let−7i、let−7d、let−7a、mir−369及びlet−7cから成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの減少した発現;の一つまたはそれ以上について該サンプルが分析される、請求項2の方法。
【請求項6】
相関4)については:
mir−21、mir−223、mir−146b、mir−224、mir−155、mir−7−2、mir−181b、mir−146a、mir−181、mir−7、mir−16、mir−122a、mir−125a及びmir−16から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの増加した発現;及び
mir−202、mir−29c、mir−30b、mir−30c、mir−126、mir−99a、mir−220、mir−320、mir−499、mir−30c、mir−125b、mir−1、mir−145、mir−143、mir−378、mir−200b、mir−133a、mir−375及びmir−203から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの減少した発現;の一つまたはそれ以上について該サンプルが分析される、請求項2の方法。
【請求項7】
相関5)については:
mir−215、mor−192及びmir−194から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの増加した発現;及び
mir−142、mir−224及びmir−155から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの減少した発現;の一つまたはそれ以上について該サンプルが分析される、請求項2の方法。
【請求項8】
該サンプルが血液又は組織である、請求項1〜7のいずれか一つの方法。
【請求項9】
該組織が食道組織である、請求項8の方法。
【請求項10】
該食道組織が、腫瘍組織、非腫瘍組織及び腫瘍に隣接する組織から成る群より選択される、請求項9の方法。
【請求項11】
食道腺癌、バレット食道又は扁平上皮癌を有していると疑われる対象を早期診断する方法であって:
該対象からサンプルを得ること;
食道腺癌、バレット食道又は扁平上皮癌と関係がある少なくとも一つのバイオマーカーの変化した発現について該サンプルを分析すること;
少なくとも一つのバイオマーカーの変化した発現と該対象における食道腺癌、バレット食道又は扁平上皮癌の存在を相関させること;を含んでなり、
該少なくとも一つのバイオマーカーが表2(図6)にリストされたmirから成る群より選択される、前記方法。
【請求項12】
該相関が:
1)腺癌(ADC)患者における、癌性組織(CT)及び非癌性組織(NCT);
2)バレット食道(BE)を伴う腺癌(ADC)患者における癌性組織(CT)及び非癌性組織(NCT);
3)腺癌患者(ADC)におけるバレット食道(BE)及び非バレット食道(NBE);
4)扁平上皮癌(SCC)における癌性組織(CT)及び非癌性組織(NCT)及び
5)癌性組織(CT)における腺癌(ADC)及び扁平上皮癌(SCC);の一つまたはそれ以上の間を区別する、請求項11の方法。
【請求項13】
相関1)については:
mir−21、mir−223、mir−146a、mir−146b及びmir−181aから成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの増加した発現;及び
mir−203及びmir−205から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの減少した発現;の一つまたはそれ以上について該サンプルが分析される、請求項12の方法。
【請求項14】
相関2)については:
mir−21、mir−103及びmir−107から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの増加した発現;及び
let−7c、mir−210、mir−203及びmir−205から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの減少した発現;の一つまたはそれ以上について該サンプルが分析される、請求項12の方法。
【請求項15】
相関3)については:
mir−192、mir−215、mir−194、mir−135a、mir−92、mir−93、mir−7、mir−17、mir20b、mir−107、mir−103及びmir−191から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの増加した発現;及び
mir−30b、mir−193a、let−7b、let−7i、let−7d、let−7a、mir−369及びlet−7cから成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの減少した発現;の一つまたはそれ以上について該サンプルが分析される、請求項12の方法。
【請求項16】
相関4)については:
mir−21、mir−223、mir−146b、mir−224、mir−155、mir−7−2、mir−181b、mir−146a、mir−181、mir−7、mir−16、mir−122a、mir−125a及びmir−16から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの増加した発現;及び
mir−202、mir−29c、mir−30b、mir−30c、mir−126、mir−99a、mir−220、mir−320、mir−499、mir−30c、mir−125b、mir−1、mir−145、mir−143、mir−378、mir−200b、mir−133a、mir−375及びmir−203から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの減少した発現;の一つまたはそれ以上について該サンプルが分析される、請求項12の方法。
【請求項17】
相関5)については:
mir−215、mor−192及びmir−194から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの増加した発現;及び
mir−142、mir−224及びmir−155から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの減少した発現;の一つまたはそれ以上について該サンプルが分析される、請求項12の方法。
【請求項18】
該サンプルが血液又は組織である、請求項11〜17のいずれか一つの方法。
【請求項19】
該組織が食道組織である、請求項18の方法。
【請求項20】
該食道組織が、腫瘍組織、非腫瘍組織及び腫瘍に隣接する組織から成る群より選択される、請求項19の方法。
【請求項21】
食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌を発症する患者の可能性を決定する方法であって:
食道腺癌、バレット食道又は扁平上皮癌と関係がある少なくとも一つのバイオマーカーの変化した発現についてサンプルを分析すること;
少なくとも一つのバイオマーカーの変化した発現の程度と、患者が食道腺癌、バレット食道又は扁平上皮癌を発症するであろう可能性を相関させること;を含んでなり、
少なくとも一つのバイオマーカーが表2(図6)にリストされたmirから成る群より選択される、前記方法。
【請求項22】
該相関が:
1)腺癌(ADC)患者における、癌性組織(CT)及び非癌性組織(NCT);
2)バレット食道(BE)を伴う腺癌(ADC)患者における癌性組織(CT)及び非癌性組織(NCT);
3)腺癌患者(ADC)におけるバレット食道(BE)及び非バレット食道(NBE);
4)扁平上皮癌(SCC)における癌性組織(CT)及び非癌性組織(NCT)及び
5)癌性組織(CT)における腺癌(ADC)及び扁平上皮癌(SCC);の一つまたはそれ以上の間を区別する、請求項21の方法。
【請求項23】
相関1)については:
mir−21、mir−223、mir−146a、mir−146b及びmir−181aから成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの増加した発現;及び
mir−203及びmir−205から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの減少した発現;の一つまたはそれ以上について該サンプルが分析される、請求項22の方法。
【請求項24】
相関2)については:
mir−21、mir−103及びmir−107から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの増加した発現;及び
let−7c、mir−210、mir−203及びmir−205から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの減少した発現;の一つまたはそれ以上について該サンプルが分析される、請求項22の方法。
【請求項25】
相関3)については:
mir−192、mir−215、mir−194、mir−135a、mir−92、mir−93、mir−7、mir−17、mir20b、mir−107、mir−103及びmir−191から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの増加した発現;及び
mir−30b、mir−193a、let−7b、let−7i、let−7d、let−7a、mir−369及びlet−7cから成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの減少した発現;の一つまたはそれ以上について該サンプルが分析される、請求項22の方法。
【請求項26】
相関4)については:
mir−21、mir−223、mir−146b、mir−224、mir−155、mir−7−2、mir−181b、mir−146a、mir−181、mir−7、mir−16、mir−122a、mir−125a及びmir−16から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの増加した発現;及び
mir−202、mir−29c、mir−30b、mir−30c、mir−126、mir−99a、mir−220、mir−320、mir−499、mir−30c、mir−125b、mir−1、mir−145、mir−143、mir−378、mir−200b、mir−133a、mir−375及びmir−203から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの減少した発現;の一つまたはそれ以上について該サンプルが分析される、請求項22の方法。
【請求項27】
相関5)については:
mir−215、mor−192及びmir−194から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの増加した発現;及び
mir−142、mir−224及びmir−155から成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの減少した発現;の一つまたはそれ以上について該サンプルが分析される、請求項22の方法。
【請求項28】
該サンプルが血液又は組織である、請求項21〜27のいずれか一つの方法。
【請求項29】
該組織が食道組織である、請求項28の方法。
【請求項30】
該食道組織が、腫瘍組織、非腫瘍組織及び腫瘍に隣接する組織から成る群より選択される、請求項29の方法。
【請求項31】
食道癌腫、バレット食道又は扁平上皮癌を有する対象を治療する方法であって、表2(図6)にリストされたmirから成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーに相補的な核酸を含んでなる組成物の療法的有効量を投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項32】
表2(図6)にリストされたmirから成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーに相補的な核酸を含んでなる医薬組成物。
【請求項33】
該バイオマーカーが、補足表1(図8)にリストされたmiRNAプローブから成る群より選択される少なくとも一つのプローブを使用して該サンプル中で検出される、請求項3、13又は23の方法。
【請求項34】
該バイオマーカーが、補足表2(図9)にリストされたmiRNAプローブから成る群より選択されるプローブを使用して該サンプル中で検出される、請求項4、14又は24の方法。
【請求項35】
該バイオマーカーが、補足表3(図10)にリストされたmiRNAプローブから成る群より選択される少なくとも一つのプローブを使用して該サンプル中で検出される、請求項5、15又は25の方法。
【請求項36】
該バイオマーカーが、補足表5(図12)にリストされたmiRNAプローブから成る群より選択される少なくとも一つのプローブを使用して該サンプル中で検出される、請求項6、16又は26の方法。
【請求項37】
該バイオマーカーが、補足表8(図15)にリストされたmiRNAプローブから成る群より選択される少なくとも一つのプローブを使用して該サンプル中で検出される、請求項7、17又は27の方法。
【請求項38】
化学放射線療法を受けた腺癌組織サンプルと化学放射線療法を受けていない癌腫組織サンプルを比較する方法であって:
補足表4(図11)にリストされたmirから成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの発現差違を比較することを含んでなる、前記方法。
【請求項39】
扁平上皮癌組織サンプルにおけるリンパ節の転移を比較する方法であって:
補足表6(図13)にリストされたmirから成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの発現差違を比較することを含んでなる、前記方法。
【請求項40】
扁平上皮癌組織サンプルのステージ分類を比較する方法であって:
補足表7(図14)にリストされたmirから成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの発現差違を比較することを含んでなる、前記方法。
【請求項41】
対象が食道癌、バレット食道又は扁平上皮癌を有する、又は発症するリスクがあるかどうかを診断する方法であって:
該対象からの試験サンプル中の少なくとも一つのmirのレベルを測定することを含んでなり、
対照サンプル中の対応するmirのレベルと比較して、該試験サンプル中の該mirのレベルの変化は、該対象が食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌を有しているか、又は発症するリスクがあるかを示し;
該mirが表2(図6)にリストしたmirから成る群より選択される、前記方法。
【請求項42】
食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌を抑制することを、それらを必要とする対象において行う方法であって:
表2(図6)にリストしたmirから成る群より選択される少なくとも一つの遺伝子を投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項43】
対象における一つ又はそれ以上の予後マーカーと関係がある食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌関連疾患を診断する方法であって:
該対象からのサンプル中の、少なくとも一つのmirのレベルを測定することを含んでなり、
対照サンプル中の対応するmirのレベルと比較して、該試験サンプル中の少なくとも一つのmirのレベルの変化は、一つ又はそれ以上の予後マーカーと関係がある食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌関連疾患を有している対象を示し;
該mirが表2(図6)にリストしたmirから成る群より選択される、前記方法。
【請求項44】
対象が食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌を有するか、又は発症するリスクがあるかどうかを診断する方法であって:
該対象から得られた試験サンプルからのRNAを逆転写して、標的オリゴデオキシヌクレオチドのセットを提供し;
該標的オリゴデオキシヌクレオチドを、miRNA特異的プローブオリゴヌクレオチドを含んでなるマイクロアレイにハイブリダイズさせて試験サンプルについてのハイブリダイゼーションプロファイルを提供し;及び
該試験サンプルハイブリダイゼーションプロファイルと対照サンプルから発生させたハイブリダイゼーションプロファイルを比較することを含んでなり、
少なくとも一つのmiRNAのシグナルの変化は、該対象が食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌関連疾患を有する、又は発症するリスクがあることを示し;
該mirが表2(図6)にリストしたmirから成る群より選択される、前記方法。
【請求項45】
該少なくとも一つのmiRNAのシグナルが、対照サンプルから発生されたシグナルと比較し、下方調節されている、請求項44の方法。
【請求項46】
該少なくとも一つのmiRNAのシグナルが、対照サンプルから発生されたシグナルと比較し、上方調節されている、請求項44の方法。
【請求項47】
食道癌、バレット食道又は扁平上皮癌関連疾患を、それらを患っている対象において治療する方法であって、対照細胞と比較し、該対象の癌細胞において少なくとも一つのmiR遺伝子産物は下方調節又は上方調節されており:
少なくとも一つのmirが該癌細胞中で下方調節されている場合、該対象中の癌細胞の増殖が抑制されるように、少なくとも一つの単離されたmirの有効量を該対象に投与すること;又は
少なくとも一つのmirが該癌細胞中で上方調節されている場合、該対象中の癌細胞の増殖が抑制されるように、該少なくとも一つのmirの発現を抑制するための少なくとも一つの化合物の有効量を該対象に投与すること;を含んでなり;
該mirが表2(図6)にリストしたmirから成る群より選択される、前記方法。
【請求項48】
対象における食道癌腫関連疾患を治療する方法であって;
対照細胞と比較し、食道細胞中の少なくとも一つのmirの量を決定すること、ここで該mirは表2(図6)にリストしたmirから成る群より選択され; 及び
該対象において食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌細胞の増殖が抑制されるように;
(i)もし、食道細胞中で発現された該mirの量が、対照細胞中で発現された該mirの量よりも少ないならば、少なくとも一つの単離されたmirの有効量を該対象に投与すること;又は
(ii)もし、食道細胞中で発現された該mirの量が、対照細胞中で発現された該mirの量よりも多いならば、該少なくとも一つのmirの発現を抑制するための少なくとも一つの化合物の有効量を該対象に投与すること;により食道細胞中で発現されるmirの量を変化させること、を含んでなる、前記方法。
【請求項49】
抗食道関連疾患剤を同定する方法であって:
食道細胞に試験剤を与えること、そして
該食道細胞中の減少した発現レベルに関係する少なくとも一つのmirのレベルを測定することを含んでなり、
適した対照細胞と比較して該食道細胞中のmirのレベルの増加は、該試験剤が抗癌剤であることを示し;該mirが表2(図6)にリストしたmirから成る群より選択される、前記方法。
【請求項50】
対象における病的状態又は病的状態を発生するリスクを評価するための方法であって:
該対象からのサンプル中の一つまたはそれ以上のマーカーの発現プロファイルを測定することを含んでなり、
該対象からのサンプル中の発現プロファイルと正常サンプルの発現プロファイルとの相違は、食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌、又はそれらへの素因を示し、
該マーカーが表2(図6)にリストした一つまたはそれ以上のmirを少なくとも含んでなる、前記方法。
【請求項51】
表2(図6)にリストしたmirから成る群より選択される一つまたはそれ以上のmirを含んでなる組成物。
【請求項52】
食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌を試験するための試薬であって、該試薬が表2(図6)にリストした少なくとも一つのmirのヌクレオチド配列、又は該マーカーのヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチドを含んでなる、前記試薬。
【請求項53】
食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌関連疾患を試験するための試薬であって、該試薬が表2(図6)にリストした少なくとも一つのmirによりコードされたタンパク質を認識する抗体を含んでなる、前記試薬。
【請求項54】
食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌を予防する、診断する及び/又は治療する療法の有効性を評価する方法であって:
その有効性が評価されている療法を動物に受けさせること;及び
表2(図6)にリストした少なくとも一つのmirを評価することにより、食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌を治療すること又は予防することにおいて試験されている治療の有効性のレベルを決定すること;を含んでなる、前記方法。
【請求項55】
該候補療法剤が、医薬組成物、栄養補助食品成分又はホメオパシー組成物の一つ又はそれ以上を含んでなる、請求項54の方法。
【請求項56】
該評価されている療法がヒト対象における使用のためである、請求項55の方法。
【請求項57】
表2(図6)にリストした少なくとも一つのmirから選択される、食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌関連疾患のためのマーカーに結合する少なくとも一つの捕捉試薬を含んでなる製品。
【請求項58】
食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌関連疾患を治療する療法剤の候補化合物をスクリーニングするためのキットであって:表2(図6)にリストした少なくとも一つのmirの一つまたはそれ以上の試薬、及び少なくとも一つのmirを発現している細胞;を含んでなる、前記キット。
【請求項59】
該mirの存在が、少なくとも一つのmirと特異的に結合する抗体又は抗体断片を含んでなる試薬を使用して検出される、請求項58のキット。
【請求項60】
食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌関連疾患のためのスクリーニング試験であって:
表2(図6)にリストしたmirの一つまたはそれ以上と、こうしたmirの基質及び試験剤を接触させること、そして
試験剤が該mirの活性を変調するかどうかを決定すること;
を含んでなる、前記スクリーニング試験。
【請求項61】
すべての方法工程がインビトロで実施される、請求項60のスクリーニング試験。
【請求項62】
個体において食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌関連疾患合併症を治療する、予防する、逆行させる、又は重症度を限定させる医薬の製造のための、食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌関連疾患応答シグナル経路に干渉する剤の使用であって、該剤が表2(図6)にリストした少なくとも一つのmirを含んでなる、前記使用。
【請求項63】
食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌関連疾患合併症を治療する、予防する、逆行させる、又は重症度を限定させることを、それらを必要とする個体において行う方法であって:
少なくとも食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌関連疾患応答カスケードに干渉する剤を該個体に投与することを含んでなり、該剤が表2(図6)にリストした少なくとも一つのmirを含んでなる、前記方法。
【請求項64】
個体において癌関連疾患合併症を治療する、予防する、逆行させる、又は重症度を限定させるための医薬の製造のため、少なくとも食道腺癌、バレット食道又は食道扁平上皮癌関連疾患応答カスケードに干渉する剤の使用であって、該剤が表2(図6)にリストした少なくとも一つのmirを含んでなる、前記使用。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【公表番号】特表2011−501943(P2011−501943A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529072(P2010−529072)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/079482
【国際公開番号】WO2009/049129
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(593172050)ジ・オハイオ・ステイト・ユニバーシティ・リサーチ・ファウンデイション (33)
【氏名又は名称原語表記】THE OHIO STATE UNIVERSITY RESEARCH FOUNDATION
【出願人】(502006782)アメリカ合衆国 (47)
【Fターム(参考)】