説明

飲料ディスペンサ

【課題】氷を利用する飲料ディスペンサにおいて、手間をかけることなく長時間の運用を可能とする。
【解決手段】飲料ディスペンサとして、断熱材からなる筐体を下段の冷却室と上段の製氷室に分割して構成したディスペンサ本体と、冷却室に設置し、飲料タンクから供給する飲料を氷で冷却するコールドプレートと、製氷室に設置し、コールドプレート上に蓄積する氷を自動的に製氷、供給する製氷装置と、この製氷装置に製氷のための水を供給する水タンクと、コールドプレートで冷却した飲料を注出する注出コックとを備えるという手段を採用した。また、製氷装置は、製氷室を冷却する冷却盤と、水タンクから製氷のための水を供給する給水ポンプと、この給水ポンプから供給された水で製氷する製氷皿と、製氷皿を反転させ氷を落下させるモータユニットと、これらを制御して製氷量や製氷時間を管理する制御装置とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生ビール等の飲料を急速に冷却しながら供給する飲料ディスペンサに関するもので、特に氷を用いて冷却するディスペンサを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料ディスペンサとしては、例えば、特許文献1に開示された構成のものが知られている。そして、その基本的な構成は、冷却水を貯留する冷却水槽と、飲料タンクからの飲料導管に接続した飲料冷却コイルと、冷却ユニットにより冷媒を循環させる蒸発コイル等からなり、上記冷却水に飲料冷却コイルと蒸発コイルとを浸漬して、飲料冷却コイルを流通する飲料を冷却するようにしたものである。また、冷却ユニットは、圧縮機で圧縮したガス冷媒を熱交換により凝縮器で冷却して液化した液冷媒を蒸発コイルに送り、蒸発コイルでは液冷媒が蒸発する際の蒸発熱により周域に着氷した氷塊との熱交換により冷却水の温度を略0℃に保つものであり、飲料は飲料冷却コイルを流通して冷却水との熱交換により冷やされて、注出ノズルから供給するのである。
【0003】
また、これより簡単な構成のものとしては、例えば、特許文献2に開示されているような、氷により冷却するものも知られている。そして、その構成は、冷却室内に、冷却パイプがコイル状に巻かれ、全体の形状がかご状に形成された冷却コイルを配置し、そのかご状の冷却コイルの内側に砕氷を入れて冷却パイプと接触させ、冷却パイプ内を通過する飲料を冷却するようにしたものである。
【0004】
【特許文献1】特開2008−1391号公報
【特許文献2】特開2002−255287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されたものでは、冷却ユニットで冷却する冷却水を媒介とするから、適温に冷却するまでに多少の時間を要するものであった。これを防止するためには冷却ユニットを強力なものとする必要があり、全体が大型化し、広い設置スペースを必要とするばかりでなく、高価なものとなる。また、飲料冷却コイルや蒸発コイルを冷却のために所定の長さに設定すると、その巻数を多くするなど加工に手間がかかり、これも高価の要因となる。
【0006】
また、特許文献2のように氷により冷却するようにしたものは、時間の経過と共に氷が溶け、冷却効率の低下を招くから、定期的に氷を補充する必要があり、多大な手間を要するものであった。また、氷の補充を行うために蓋をしばしば開けることで、外気が入り、冷却効率を下げる要因の一つとなっている。
【0007】
本発明は、かかる従来の問題に鑑み成されたものであって、氷を利用する比較的簡単な構成の飲料ディスペンサにおいて、冷却効率のよいコールドプレートを利用して飲料を冷却すると共に、氷を自動的に製造して補充するようにして、種々の手間をかけることなく長時間に渡って運用可能な飲料ディスペンサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明は、飲料ディスペンサとして、断熱材からなる筐体を下段の冷却室と上段の製氷室に分割して構成したディスペンサ本体と、前記冷却室に設置し、飲料タンクから供給する飲料を氷で冷却するコールドプレートと、前記製氷室に設置し、前記コールドプレート上に蓄積する氷を自動的に製氷、供給する製氷装置と、この製氷装置に製氷のための水を供給する水タンクと、前記コールドプレートで冷却した飲料を注出する注出コックとを備えるという手段を採用した。
【0009】
また、上記製氷装置は、製氷室を冷却する冷却盤と、水タンクから製氷のための水を供給する給水ポンプと、この給水ポンプから供給された水で製氷する製氷皿と、製氷皿を反転させ氷を落下させるモータユニットと、これらを制御して製氷量や製氷時間を管理する制御装置とからなるという手段を採用した。
【0010】
また、上記コールドプレート上で氷が溶けた水を回収し、その水を揚水ポンプを介して上記水タンクに循環供給するようにするという手段を採用した。
【発明の効果】
【0011】
上記構成に係る本発明の飲料ディスペンサは、氷を用いてコールドプレートによって飲料を冷却するのであるから、コールドプレートの冷却蛇管を流通する飲料は急速に冷却され、注出することが可能である。
【0012】
その際、コールドプレート上に蓄積する氷を、製氷装置を用いて自動的に供給するようにしているので、氷が溶けても、随時、氷が補給される。そのため、コールドプレートの冷却効率が低下することはなく、適温に冷却された飲料を、常に、注出コックから供給できるようになった。
【0013】
また、自動的に補給される氷を用いてコールドプレートによって冷却するので、従来のように複雑な構成の冷却ユニットを必要とせず、構造が簡単で、低い製造コストで飲料ディスペンサを提供できる。また、メンテナンスも容易である。
【0014】
さらに、氷は自動的に補給するようにしたので、氷の量を確認したり、追加補給したりする手間が軽減されるほか、冷却室の開閉によって生じる冷却効率の低下も防ぐことが出来る。
【0015】
また、コールドプレー上で氷が溶けた水は、回収され、揚水ポンプを介して循環されるので、溶けた水によってコールドプレートの冷却効率が低下することもなく、水の循環は資源の無駄をなくすものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る飲料ディスペンサの好ましい実施形態を、添付した図面に従って説明する。図1は、本発明の飲料ディスペンサの構造を模式的に示す断面図で、生ビールを冷却・供給する場合のものである。
【0017】
図1において、1はディスペンサ本体で、全体を断熱材により水密に形成すると共に、上下2室に分割した筐体からなり、下段を冷却室2とし、上段を製氷室3としたものである。下段の冷却室2において、4は冷却室2の床面に設置するコールドプレートであって、内部に生ビールを導入してこれを冷却するものである。即ち、このコールドプレート4は、例えば、アルミ合金等の熱伝導性の良い金属材料により盤状のブロック4aを成形し、その成形の際に、内部に飲料を流通させる冷却蛇管4bを埋設して構成している。またその表面を波形に形成し、表面積を大きくして熱交換の効率を高めている。5は大量のキューブ状の氷であり、下述する製氷室3で製氷されるものであるが、上記コールドプレート4と接触して、その融解熱によって冷却蛇管4bを流通する生ビールを冷却するものである。なお、6は注出コックであって、上記コールドプレート4の冷却蛇管4bの出口側と接続して、冷却された生ビールをジョッキに注出するものである。
【0018】
次に、上段の製氷室3には製氷装置が設けられており、その製氷装置として、7は製氷皿であって、水供給管8から供給された水をキューブ状に製氷するものである。この製氷皿7は中空に支持され、例えば、モータユニット9によって反転して、出来た氷5を下方に落下する。落下した氷5は、製氷室3下面に設けた開口10を介して上記冷却室2のコールドプレート4上に蓄積される。11は冷却盤であって、製氷室3内を製氷可能な温度に冷却するものである。12は前記製氷皿7に一定量の水を供給する供給ポンプである。上記モータユニット9、冷却盤11、供給ポンプ12は、それぞれ制御装置13に接続され、製氷の時間や量を管理する。即ち、制御装置13は、図示しない適宜なセンサーによって、冷却室2内の温度や氷の量、及び製氷室3内の温度や製氷皿7の状態等を随時検知し、冷却室2を生ビールを冷却するのに最適な状態に管理すると共に、製氷皿7への水の供給や製氷間隔、製氷量等を総合的に管理している。
【0019】
なお、上記製氷室3における製氷装置の構成は一例であり、冷却室2に供給する大量の氷5を継続して提供できるものであれば、その構成を特に限定するものではない。
【0020】
14は上記ディスペンサ本体1の上部に設置された水タンクで、上記供給ポンプ12を介して製氷皿7に必要な量の水を供給する。また、15はディスペンサ本体1の外側下部に設置された揚水ポンプで、冷却室2内で氷5が溶けた水を回収し、揚水管16を介して上記水タンク14に循環供給するものである。
【0021】
なお、17は生ビールのタンク、18は炭酸ガスボンベで、従来公知の手段で、上記ディスペンサに生ビールを供給する。また、本実施形態では生ビールの供給に適用する例を提示しているが、これに限定するものではなく、各種の飲料に適用できることは明らかである。
【0022】
次に、上記構成の飲料(生ビール)ディスペンサの使用方法について述べると、常温(20℃〜30℃)で保管している生ビールのタンク17をディスペンサ本体1の供給口に接続し、タンク17には炭酸ガスボンベ18を接続する。タンク17に高圧の炭酸ガスを供給すると共にタンク17のコックを操作すると、タンク17内の生ビールがガス圧で押し出され、ディスペンサ本体1に設置されたコールドプレート4の冷却蛇管4b内に流通する。コールドプレート4上には大量の氷5が蓄積されているので、熱交換作用により氷5の融解熱で冷却蛇管4bを流通する生ビールは0℃前後に急速に冷却される。このとき、注出コック6を操作して、ジョッキに生ビールを注ぎ出せばよい。
【0023】
この場合、氷5は時間の経過と共に溶けていくが、前記制御装置13を介して、氷5は製氷装置から常時補給されているので、コールドプレート4の冷却効率が低下することはない。また、氷5が溶けた水は、揚水ポンプ15を介して回収されるので、冷却室2内に不要な水が貯留されることもなく、コールドプレート4が融解した水に接触することによって起こる冷却効率の低下も防止することが出来る。従って、生ビールを大量に注出する場合であっても、冷却効率が低下することがないので、注出コック6から注出される生ビールは、常に一定の低温で供給することが可能である。
【0024】
また、上記構成の飲料ディスペンサは、コールドプレート上に氷を蓄積して飲料を冷却するものであり、その氷を自動的に補給するようにしたので、従来のように、圧縮機や凝縮器などからなる冷却ユニットを使用したものに比べて、構造が簡単であり、製造コストを安価にすることが出来る。また、構造が簡単であるのでメンテナンスも容易である。
【0025】
さらに、氷を自動的に補給するようにしたので、氷の量を確認したり、補給したりする手間が軽減されるほか、蓋を開けることによる冷却効率の低下も防ぐことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る飲料ディスペンサの構造を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 ディスペンサ本体
2 冷却室
3 製氷室
4 コールドプレート
5 氷
6 注出コック
7 製氷皿
8 水供給管
9 モータユニット
11 冷却盤
12 供給ポンプ
13 制御装置
14 水タンク
15 揚水ポンプ
16 揚水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材からなる筐体を下段の冷却室と上段の製氷室に分割して構成したディスペンサ本体と、前記冷却室に設置し、飲料タンクから供給する飲料を氷で冷却するコールドプレートと、前記製氷室に設置し、前記コールドプレート上に蓄積する氷を自動的に製氷、供給する製氷装置と、この製氷装置に製氷のための水を供給する水タンクと、前記コールドプレートで冷却した飲料を注出する注出コックとを備えたことを特徴する飲料ディスペンサ。
【請求項2】
製氷装置は、製氷室を冷却する冷却盤と、水タンクから製氷のための水を供給する給水ポンプと、この給水ポンプから供給された水で製氷する製氷皿と、製氷皿を反転させ氷を落下させるモータユニットと、これらを制御して製氷量や製氷時間を管理する制御装置とからなる請求項1記載の飲料ディスペンサ。
【請求項3】
コールドプレート上で氷が溶けた水を回収し、その水を揚水ポンプを介して上記水タンクに循環供給するようにした請求項1または請求項2記載の飲料ディスペンサ。

【図1】
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【公開番号】特開2010−23915(P2010−23915A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190840(P2008−190840)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(595151121)株式会社ヰゲタ (11)
【Fターム(参考)】