説明

飲料抽出用原料の粉砕装置

【課題】装置内部の帯電量を低減することで、粉砕によって生成された粉原料が装置内部に付着・残留するのを大幅に低減でき、その粉原料を装置から精度よく吐出させることができる飲料抽出用原料の粉砕装置を提供する。
【解決手段】原料の粉砕時に、生成された粉原料を回転軸22の径方向に送り出す下側細粉砕リング25と、導電材料から成り、下側細粉砕リング25の外周面に対向し且つ外周面全体を囲うように配置された通路壁リング27と、粉送出し通路26内を移動自在の羽根部24aを有し、羽根部24aが粉送出し通路26内を移動することにより、粉送出し通路26内の粉原料を収集し、吐出口27aから外部に吐出する粉原料収集・吐出プレート24と、下側細粉砕リング25および羽根部24aを駆動するモータ3と、通路壁リング27を接地する接地手段3a、29、30と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ式自動販売機や飲料ディスペンサなどに適用され、コーヒーなどの飲料を抽出によって調理するために、コーヒー豆などの原料を粉砕する飲料抽出用原料の粉砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コーヒー豆の粉砕装置として、例えば特許文献1に開示されたコーヒーミルが知られている。このコーヒーミルは、水平に延びる回転軸を有するモータと、このモータの回転軸に直結された駆動軸の先端側に設けられた回転刃と、駆動軸が貫通した状態で、回転刃と対向するように配置されたリング状の固定刃と、駆動軸の外周面に設けられ、コーヒー豆を回転刃と固定刃の間に送るためのスクリュウと、回転刃の外周側に、これと一体に回転するように設けられた回転羽根などを備えている。また、コーヒーミルは、その外殻を構成するケーシングを備えており、このケーシングの所定の内壁面と、回転刃および固定刃の外周面との間には、それらの刃によって粉砕されたコーヒー豆(以下「コーヒー粉」という)が両刃の隙間から外部に送り出されるとともに、回転羽根が周回移動するリング状の粉送出し通路が画成されている。また、ケーシングには、スクリュウの上側に、コーヒー豆が上方から投入されるコーヒー豆投入口が設けられる一方、粉送出し通路の下側に、コーヒー粉を下方に排出するための排出通路が設けられている。
【0003】
このコーヒーミルにおいて、モータを作動させ、これに前後して、コーヒー豆をコーヒー豆投入口に投入すると、そのコーヒー豆は、回転するスクリュウによって、回転刃と固定刃の間に送られ、両刃の間で粉砕される。この粉砕によって生成されたコーヒー粉は、回転刃の遠心力により、粉送出し通路に送り出される。そして、粉送出し通路内を周回移動する回転羽根により、コーヒー粉が掻き集められ、排出通路を介して、下方に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−124062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のコーヒーミルでは、コーヒー豆が回転刃と固定刃の間で粉砕されることによって、また、両刃から粉送出し通路に送り出されたコーヒー粉が、回転羽根で掻き集められる際に、ケーシングの内壁面にこすられることによって、コーヒー粉には、静電気による帯電が生じる。このように、コーヒー粉が帯電すると、粉送出し通路と排出通路の接続付近や排出通路の内壁面において、コーヒー粉が付着・残留しやすくなるため、上記のコーヒーミルでは、排出通路の横断面を下方に向かって次第に大きくなるように形成し、それにより、コーヒー粉の上記の付着・残留を抑制している。
【0006】
しかし、上記のような形状を有する排出通路の採用だけでは、コーヒー粉の付着・残留の抑制には不十分である。すなわち、コーヒー豆の粉砕時に、コーヒーミルの内部においてコーヒー豆が接触する部分、具体的には、回転刃や固定刃、ケーシングの内壁面などには、帯電したコーヒー粉の極性と反対の極性の帯電が生じる。特に、コーヒー豆の粉砕が繰り返し行われると、コーヒーミルの内部の帯電量が大きくなるため、互いに反対の極性に帯電するコーヒー粉とコーヒーミルの内部との吸引力も大きくなる。その結果、コーヒー粉がコーヒーミルの内部に付着・残留しやすくなる。それにより、投入されたコーヒー豆の量に対し、生成されたコーヒー粉の量が少なくなるなど、コーヒーミルからコーヒーブリュアに供給されるコーヒー粉の供給精度が悪化してしまう。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、装置内部の帯電量を低減し、それにより、原料の粉砕によって生成された粉原料が装置内部に付着・残留するのを大幅に低減でき、その粉原料を装置から精度よく吐出させることができる飲料抽出用原料の粉砕装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、抽出による飲料の調理に使用される原料を粉砕する飲料抽出用原料の粉砕装置であって、所定方向に延びる軸線を中心として回転自在に構成され、原料の粉砕時に、供給された原料を回転しながら粉砕し、粉砕された原料である粉原料を軸線の径方向に送り出す回転粉砕部と、導電材料から成り、回転粉砕部の外周面に対向し且つ外周面全体を囲うように配置され、外周面との間に粉原料が送り出されるリング状の粉送出し通路を画成するとともに、粉送出し通路内の粉原料を外部に吐出するための吐出口が形成された通路壁と、粉送出し通路内を移動自在の可動部を有し、原料の粉砕時に、可動部が粉送出し通路内を移動することにより、粉送出し通路内の粉原料を収集し、吐出口から外部に吐出する粉原料収集・吐出部と、原料の粉砕時に、回転粉砕部、および粉原料収集・吐出部の可動部を駆動する駆動手段と、通路壁を接地する接地手段と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、原料の粉砕時に、駆動手段で駆動される回転粉砕部が軸線を中心として回転することにより、供給された原料を回転しながら粉砕し、その粉砕された原料である粉原料を、回転粉砕部の遠心力によって軸線の径方向に送り出す。また、この粉原料は、回転粉砕部の外周面と通路壁との間に画成されたリング状の粉送出し通路に送り出される。そして、駆動手段で駆動される粉原料収集・吐出部の可動部が、粉送出し通路内を移動することにより、粉送出し通路内の粉原料を収集し、通路壁の吐出口から外部に吐出する。
【0010】
上記のようにして原料を粉砕する粉砕装置では、その内部において、原料との摩擦により、静電気が発生する。具体的には、原料を粉砕する回転粉砕部、および粉原料収集・吐出部で収集される際に粉原料が摺動する通路壁が、正負の一方の極性に帯電し、生成される粉原料が正負の他方の極性に帯電する。前述したように、従来のコーヒーミルのような粉砕装置では、原料の粉砕が繰り返されると、装置内部の帯電量が蓄積されて大きくなり、このため、装置内部とその反対の極性に帯電する粉原料との吸引力も大きくなり、粉原料が装置内部に付着・残留しやすくなる。そのため、本発明では、通路壁を導電材料で構成し、その通路壁を、接地手段によって接地することにより、帯電する通路壁の電荷を除去することができ、それにより、通路壁の帯電量を低減することができる。また、この場合、原料の粉砕時に回転粉砕部から粉送出し通路に送り出される粉原料が、回転粉砕部と通路壁とをつなぐ導体として機能することで、帯電する回転粉砕部の電荷も除去され、それにより、回転粉砕部の帯電量も低減することができる。
【0011】
以上により、本発明の粉砕装置によれば、装置内部の帯電量を低減できるとともに、通路壁に摺動することで帯電する粉原料の帯電量の上昇を抑制することができ、それにより、粉原料が装置内部に付着・残留するのを大幅に低減でき、その粉原料を装置から精度よく吐出させることができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の飲料抽出用原料の粉砕装置において、通路壁は、アルミニウムを主成分とする金属で構成されていることを特徴とする。
【0013】
一般に、アルミニウムを主成分とする金属は、比較的安価でかつ成形が容易であるので、上記のような材料で通路壁を構成することにより、通路壁を比較的安価にかつ容易に得ることができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の飲料抽出用原料の粉砕装置において、通路壁の吐出口に接続され、吐出口から吐出された粉原料を外部に案内するための案内部材を、さらに備え、案内部材は、帯電列上、原料の粉砕時に原料が帯電する極性と同じ極性に且つ原料よりも帯電する傾向が高い材料で構成されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、通路壁の吐出口から吐出された粉原料は、その吐出口に接続された案内部材を介して、外部に案内される。この案内部材は、帯電列上、原料が帯電する極性と同じ極性に且つ原料よりも帯電する傾向が高い材料で構成されている。すなわち、例えば、原料が正の極性に帯電する場合、案内部材は、原料よりも正の極性に帯電する傾向が高くなっている。したがって、吐出口から吐出された粉原料が、案内部材を介して案内される際に、その案内部材に接したときの摩擦により、上記の場合、正の極性に帯電していた粉原料は、相対的に負の極性に帯電する。つまり、正の極性に帯電していた粉原料は、その帯電量(電位)が低下する。またこの場合、粉原料の帯電量が低下した分、案内部材は、正の極性に帯電する。
【0016】
以上のように、粉原料および案内部材はいずれも、同じ極性に帯電した状態になるので、両者の間に反発力が作用し、それにより、粉原料は、案内部材に付着しにくくなり、円滑に外部に送り出される。また、粉原料は、電気的に中性に近い状態になるので、その後の飲料抽出時に、水と混ざりやすくなり、その結果、飲料の抽出効率が向上する。
【0017】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の飲料抽出用原料の粉砕装置において、案内部材は、ポリアセタールで構成されていることを特徴とする。
【0018】
例えば、原料としてコーヒー豆を採用した場合、後述する帯電列上、コーヒー豆は、鉄やアルミニウムなどの金属との摩擦により、正の極性に帯電する。また、ポリアセタールは、コーヒー豆との摩擦により、正の極性に帯電する。したがって、案内部材の材料として、ポリアセタールを採用することにより、請求項3の前述した作用効果を有する案内部材を、容易に得ることができる。また、ポリアセタールは、合成樹脂の中でも、耐摩耗性および生産性に優れており、しかも食品衛生を確保するための材料として好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態による飲料抽出用原料の粉砕装置を適用したコーヒーミルを示す斜視図である。
【図2】図1のコーヒーミルを示しており、(a)は平面図、(b)は右側面図である。
【図3】コーヒーミルの内部構造を示す断面図である。
【図4】コーヒーミルの不動ミル部を示す斜視図、およびその分解斜視図である。
【図5】(a)は、コーヒーミルの回転ミル部、通路壁リングおよび案内部材を示す斜視図、(b)は、(a)から通路壁リングおよび案内部材を省略し、回転ミル部を示す斜視図である。
【図6】図5(a)を分解して示す斜視図である。
【図7】コーヒーミルにおけるコーヒー豆の粉砕動作を説明するための説明図である。
【図8】帯電列の一例を示す図である。
【図9】コーヒーミルにおけるコーヒー豆の粉砕時の電荷の移動を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1および図2は、本発明の一実施形態による飲料抽出用原料の粉砕装置を適用したコーヒーミルを示している。このコーヒーミル1は、例えばカップ式自動販売機や飲料ディスペンサなどに内蔵され、コーヒーを抽出によって調理する際に、その原料であるコーヒー豆を、コーヒー1杯分ずつ粉砕し、コーヒー粉(粉原料)を生成するものである。
【0021】
図1および図2に示すように、このコーヒーミル1は、中央部にコーヒー豆を粉砕するミル本体部2を有しており、その後ろ側には、ミル本体部2を駆動するモータ3が配置され、前側には、ミル本体部2から送り出されたコーヒー粉を下方のコーヒー抽出機(図示せず)に供給する粉原料供給部4が配置されている。なお、コーヒーミル1は、その外殻を構成するケース1aが、複数の外殻部品を互いに組み付けて構成されており、上記のミル本体部2およびモータ3が、ケース1aに適宜、組み付けられている。また、粉原料供給部4の左端部に設けられた円筒部4aは、ケース1aの内外を連通するように構成されており、例えば、コーヒー豆の粉砕時に生じるコーヒー粉の香りを、外部に放出するためなどに利用される。
【0022】
図3は、コーヒーミル1の内部構造を示している。同図に示すように、ミル本体部2は、上半部がケース1aの上方に突出した状態で、ケース1aに組み付けられ、コーヒーミル1の作動時には不動の不動ミル部6と、ケース1aに内蔵され、コーヒーミル1の作動時に回転する回転ミル部7とを有している。
【0023】
図4に示すように、不動ミル部6は、上下方向に延びる円筒状に形成され、上方から投入されたコーヒー豆を受け取るホッパ11と、このホッパ11内の下部にねじ止めされ、コーヒー豆を比較的粗い状態に粉砕(以下「粗粉砕」という)するための粗粉砕リング12と、この粗粉砕リング12の下面にねじ止めされ、回転ミル部7の後述する下側細粉砕リング25と協働して、粗粉砕されたコーヒー豆を、より細かい状態に粉砕(以下「細粉砕」という)するための上側細粉砕リング13とを有している。
【0024】
ホッパ11は、プラスチックの成形品から成り、その外周面には、上下方向の中央よりも若干高い位置に、ギヤ部14が設けられている。また、ホッパ11の外周面の下半部には、雄ねじ部15が形成されており、この雄ねじ部15がねじ込まれた状態で、ホッパ11がケース1aに取り付けられている。したがって、図1などに示すように、ギヤ部14に噛み合うウォームギヤ10aを有する粒度調整ねじ10を、適宜回すことにより、不動ミル部6がケース1aに対して回るように移動しながら昇降し、不動ミル部6の上側細粉砕リング13と、回転ミル部7の下側細粉砕リング25との間の隙間が調整される。これにより、上側細粉砕リング13および下側細粉砕リング25によって細粉砕されるコーヒー豆の粒度を簡単に調整することができる。
【0025】
粗粉砕リング12は、所定の金属(例えばアルミニウムやその合金)から成り、周壁が比較的厚い円筒状に形成されている。この粗粉砕リング12の底部には、周方向の全体にわたって延びるとともに内方に突出し、後述する原料フィーダ21と協働して、コーヒー豆を粗粉砕する粉砕凸部18が設けられている。この粉砕凸部18は、原料フィーダ21との間に、コーヒー豆の粒径よりも小さい所定の間隔を隔てた状態で突出するように構成されている。
【0026】
また、粉砕凸部18は、所定の厚さを有しており、その上面18aが、上下方向に延びる原料フィーダ21と直交する平面に沿うように形成され、この上面18aに連なりかつ原料フィーダ21に対向する先端面18bが、上面18aとで直角を為す角部を形成している。加えて、粉砕凸部18には、その周方向に沿って、凹状に形成された複数(本実施形態では12個)の凹部18cが設けられている。図2および図4に示すように、各凹部18cは、粉砕凸部18の上面18aと先端面18bの間にわたって開放するように形成されている。
【0027】
また、粗粉砕リング12の内面には、粉砕凸部18の上方に、周方向に沿って複数(本実施形態では12個)の凹部19が形成されている。図2および図4に示すように、各凹部19は、粗粉砕リング12の上面から内面にわたって開放するように形成されており、その内面が、粗粉砕リング12の径方向にほぼ沿うように形成された、三角形状の三角面19aと、この三角面19aに連なり、反時計方向に円弧状に延びるように形成された円弧面19bとで構成されている。
【0028】
後述するように、コーヒー豆の粉砕時に、原料フィーダ21が反時計方向に回転することにより、原料フィーダ21の周囲のコーヒー豆は、原料フィーダ21と同じ反時計方向に回るように移動するものの、コーヒー豆が、上記凹部19(三角面19a)や、粉砕凸部18の凹部18cの内面に当たることで、周方向へのコーヒー豆の移動やスリップを抑制することができる。これにより、原料フィーダ21によってコーヒー豆を下方に効率よく送ることができるとともに、粗粉砕を効率的に行うことができる。
【0029】
上側細粉砕リング13は、所定の金属(例えばステンレス)から成り、下側細粉砕リング25と上下対称に形成されている。この上側細粉砕リング13は、粗粉砕リング12の粉砕凸部18の内径よりも若干大きい内径を有するとともに、粗粉砕リング12の外径よりも若干大きい外径を有している。また、上側細粉砕リング13は、内側から外側に向かって厚さが次第に厚くなるように形成されており、傾斜した下面の粉砕面13aには、各々が径方向に延びるとともに、周方向に沿って配置された多数の刃(図示せず)が形成されている。
【0030】
図5(a)は、回転ミル部7およびその周囲を示し、同図(b)は、回転ミル部7のみを示しており、図6は、図5(a)を分解して示している。これらの図および図3に示すように、回転ミル部7は、上下方向に延び、ホッパ11に投入されたコーヒー豆を下方に送る原料フィーダ21と、原料フィーダ21の回転軸22の下部に固定されたミルギヤ23と、回転軸22のミルギヤ23の上方に固定された粉原料収集・吐出プレート24(粉原料収集・吐出部)と、この粉原料収集・吐出プレート24上にねじ止めされた下側細粉砕リング25(回転粉砕部)とを有している。
【0031】
原料フィーダ21は、所定の金属(例えばアルミニウムやその合金)から成り、上下方向に所定長さ延びる円筒状に形成された回転部21aと、この回転部21aの外周面から所定長さ突出し、回転部21aの上端部から下端部にわたって時計方向に1周するように、螺旋状に延びる螺旋凸部21bとを有している。そして、この原料フィーダ21は、上下方向に延びる回転軸22が回転部21aに下方から挿入され、その上端から上方に突出した回転軸22の上端部にナット21cが螺合して締め付けられることにより、回転軸22に固定されている。なお、回転軸22は、その下端部および上下方向の中央よりも若干下側の位置において、ケース1a内に固定された軸受22a、22aによって回転自在に支持されている。
【0032】
ミルギヤ23は、比較的大きな径を有するはすば歯車で構成され、図3に示すように、回転軸22の上下の軸受22a、22a間に固定されている。また、ミルギヤ23は、モータ3の出力軸に固定された駆動ギヤ31に噛み合う中間ギヤ32に噛み合っている。なお、本実施形態では、本発明の駆動手段が、モータ3、駆動ギヤ31、中間ギヤ32、ミルギヤ23および回転軸22などによって構成されている。
【0033】
粉原料収集・吐出プレート24は、コーヒー豆の粉砕時に、後述する粉送出し通路26に送り出されたコーヒー粉を収集し、前方の粉原料供給部4側に吐出するものである。この粉原料収集・吐出プレート24は、下側細粉砕リング25の外径よりも一回り大きい径を有する円盤状に形成されており、その外周部には、中心に対して周方向に沿って互いに等角度(60°)ごとに配置され、上方に突出する6つの羽根部24a(可動部)が設けられている。また、粉原料収集・吐出プレート24の羽根部24aの側方には、上側および下側細粉砕リング13、25の外周面との間に粉送出し通路26を画成し、ケース1a内に固定された通路壁リング27(通路壁)が配置されている。
【0034】
この通路壁リング27は、例えばアルミニウムやその合金など、アルミニウムを主成分とする金属から成り、粉原料収集・吐出プレート24の外径よりも若干大きい内径を有する円筒状に形成されている。図6に示すように、通路壁リング27には、その前部に、通路壁リング27の内外を連通する吐出口27aが設けられ、後部に、後方に突出し、接地用の後述する接続ばね29の一端部を係止するためのばね係止部27bが設けられている。このように構成された通路壁リング27は、その内周面が上側および下側細粉砕リング13、25の外周面に対向し、その外周面全体を囲うように、ケース1a内に固定されている。これにより、上側および下側細粉砕リング13、25の外周面と通路壁リング27の内周面との間に、コーヒー豆の粉砕時に、両細粉砕リング13、25の間からコーヒー粉が送り出されるリング状の前記粉送出し通路26が画成されている。
【0035】
また、通路壁リング27の吐出口27aには、この吐出口27aからほぼ水平に吐出されるコーヒー粉を下方に案内する案内部材28が接続されている。この案内部材28は、ポリアセタール製の成形品から成り、背面から下面にわたって開放する所定形状に形成されている。そして、案内部材28の下側には、上下方向に所定長さ延びる筒状のシュート36が接続されている。
【0036】
さらに、通路壁リング27のばね係止部27bには、通路壁リング27とモータ3の外殻を構成する金属製のケース3aとを、電気的に接続するための接続ばね29が係止されている。この接続ばね29は、金属製のコイルばねで構成されており、一端部に通路壁リング27のばね係止部27bが挿入され、他端部がモータ3のケース3aに当接している。また、モータ3のケース3aには、接続部3bが設けられており、この接続部3bに、アース線30の端子30aが接続されている。以上のように、通路壁リング27は、接続ばね29、モータ3のケース3a、およびアース線30の順に、電気的に接続されており、これらによって、接地されている。なお、本実施形態では、本発明の接地手段が、接続ばね29、モータ3のケース3aおよびアース線30などによって構成されている。
【0037】
次に、以上のように構成されたコーヒーミル1におけるコーヒー豆の粉砕動作について、図7を参照して説明する。なお、このコーヒーミル1は、粉砕前のコーヒー豆を供給するコーヒー豆供給装置(図示せず)の下方に設置され、そのコーヒー豆供給装置から下方に延びる原料シュート37が、ホッパ11に接続されている。また、コーヒー豆供給装置は、種類や焙煎度合の異なるコーヒー豆(ホットコーヒー用やアイスコーヒー用など)がコーヒーミル1に供給可能になっている。
【0038】
まず、コーヒー豆供給装置から所定量のコーヒー豆が、原料シュート37を介して、コーヒーミル1のホッパ11に投入される。これに前後して、モータ3が作動し、駆動ギヤ31および中間ギヤ32を介して、ミルギヤ23が回転駆動される。これにより、回転ミル部7の回転軸22が反時計方向に回転し、これに伴い、原料フィーダ21、粉原料収集・吐出プレート24および下側細粉砕リング25も、反時計方向に回転する。
【0039】
ホッパ11に投入されたコーヒー豆は、図7において上側の黒矢印で示すように落下し、原料フィーダ21に到達する。この原料フィーダ21の上端部に到達したコーヒー豆は、原料フィーダ21が反時計方向に回転することで、下方に送られる。この場合、原料フィーダ21の螺旋凸部21bと粗粉砕リング12の粉砕凸部18とが協働して、コーヒー豆を粗粉砕する。
【0040】
具体的には、原料フィーダ21の周囲のコーヒー豆には、螺旋凸部21bによる上方からの押圧力が作用し、そのコーヒー豆が、粗粉砕リング12の粉砕凸部18の先端部に上方から押し付けられることによって剪断される。これにより、原料フィーダ21と粉砕凸部18との間を通過可能なサイズに粗粉砕されたコーヒー豆は、図7において下側の黒矢印で示すように、原料フィーダ21により、上側細粉砕リング13との間のスペースを通って、両細粉砕リング13、25の間に送られる。
【0041】
上記のように粗粉砕されたコーヒー豆は、回転する下側細粉砕リング25による遠心力によって、その径方向に送られながら、両細粉砕リング13、25の粉砕面13a、25aによってより細かく、すなわち細粉砕される。この細粉砕によって生成されたコーヒー粉は、両細粉砕リング13、25の間から、粉送出し通路26に送り出される。またこの場合、粉原料収集・吐出プレート24の回転に伴い、複数の羽根部24aが粉送出し通路26内を周回移動し、これらの羽根部24aによって、粉送出し通路26内のコーヒー粉が、収集されながら、図7において上側の白抜き矢印で示すように、通路壁リング27の吐出口27aから前方に吐出される。そして、この吐出されたコーヒー粉は、案内部材28の内面28aに当たることによって、図7において下側の白抜き矢印で示すように、下方に方向転換され、シュート36を介して、図示しない下方のコーヒー抽出機に供給される。
【0042】
以上のように、コーヒーミル1によれば、コーヒー豆を細粉砕する前に、粗粉砕するので、コーヒー豆を直接、細粉砕する場合に比べて、モータ3の駆動負荷の変動を抑制することができる。これにより、コーヒー豆を十分かつ安定して粉砕し、粒径がほぼ均一のコーヒー粉を生成することができ、また、モータ3として出力トルクが小さいもの、すなわちサイズが小さく安価なものを採用できるので、コーヒーミル1を、装置全体としてコンパクトに且つ低コストで製造することができる。
【0043】
次に、コーヒー豆の粉砕時にコーヒーミル1の内部で生じる静電気の除去(除電)方法について説明する。上述したようにして、コーヒーミル1によってコーヒー豆が粉砕されると、コーヒーミル1の内部には、コーヒー豆やコーヒー粉との摩擦により、静電気が発生する。具体的には、原料フィーダ21、粗粉砕リング12、上側細粉砕リング13、下側細粉砕リング25および通路壁リング27が、正負の一方の極性に帯電し、これと反対に、生成されるコーヒー粉が正負の他方の極性に帯電する。
【0044】
図8は、帯電列の一例を示している。この帯電列から明らかなように、鉄およびアルミニウムは、コーヒー豆との摩擦により、負の極性、すなわちマイナスに帯電しやすく、一方、コーヒー豆は、正の極性、すなわちプラスに帯電しやすい。したがって、コーヒーミル1において、コーヒー豆が粉砕されると、ステンレスあるいはアルミニウムなどで構成された、原料フィーダ21、粗粉砕リング12、上側細粉砕リング13、下側細粉砕リング25および通路壁リング27は、マイナスに帯電し、生成されるコーヒー粉は、プラスに帯電する。特に、上側および下側細粉砕リング13、25から粉送出し通路26に送り出されたコーヒー粉は、その通路26内を周回移動する羽根部24aによって、通路壁リング27の内面に押し付けられた状態で、摺動しながら収集されるため、比較的大きな摩擦力が生じ、その結果、コーヒー粉および通路壁リング27の帯電量が、比較的大きくなる。
【0045】
前述したように、コーヒーミル1では、通路壁リング27が接地されているので、図9の波線矢印で示すように、マイナスに帯電する通路壁リング27では、そのマイナスの電荷の大部分が、接続ばね29、モータ3のケース3aおよびアース線30を介して除去される。またこの場合、上側および下側細粉砕リング13、25から粉送出し通路26に送り出されるコーヒー粉が、両細粉砕リング13、25と通路壁リング27とをつなぐ導体として機能することで、原料フィーダ21、粗粉砕リング12、上側細粉砕リング13および下側細粉砕リング25のマイナスの電荷の大部分も、通路壁リング27、接続ばね29、モータ3のケース3aおよびアース線30を介して除去される。
【0046】
一方、プラスに帯電したコーヒー粉は、前述したように、通路壁リング27の吐出口27aを介して、前方に吐出され、案内部材28の内面28aに当たって、下方に方向転換される。前述したように、案内部材28は、ポリアセタールで構成されており、前記図8に示す帯電列上、ポリアセタールは、コーヒー豆よりもプラスに帯電する傾向が高い。このため、プラスに帯電したコーヒー粉は、案内部材28の内面28aに接することによる摩擦により、相対的にマイナスに帯電する。つまり、プラスに帯電していたコーヒー粉は、その帯電量(電位)が低下する。またこの場合、コーヒー粉の帯電量が低下した分、案内部材28は、プラスに帯電する。
【0047】
以上により、コーヒー粉および案内部材28はいずれも、同じ極性であるプラスに帯電した状態になるので、両者の間に反発力が作用し、それにより、コーヒー粉は、案内部材28の内面28aに付着しにくくなり、後続のシュート36に円滑に案内され、その下方のコーヒー抽出機にさらに案内される。また、このコーヒー粉は、電気的に中性に近い状態になるので、その後のコーヒー抽出時に、水(湯を含む)と混ざりやすくなり、その結果、コーヒーの抽出効率が向上する。
【0048】
以上詳述したように、本実施形態のコーヒーミル1によれば、除電により、その内部の帯電量を低減できるとともに、通路壁リング27に摺動することで帯電するコーヒー粉の帯電量の上昇を抑制することができる。それにより、コーヒー粉が、コーヒーミル1の内部に付着・残留するのを大幅に低減でき、そのコーヒー粉をコーヒーミル1から精度よく吐出させることができる。
【0049】
なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。実施形態では、本発明をコーヒーミルに適用した場合について説明したが、本願発明はこれに限定されるものではなく、例えば、茶系飲料を抽出によって調理する際に、その原料である茶葉を粉砕する粉砕装置に適用することも可能である。また、実施形態では、通路壁リング27を、アルミニウムを主成分とする金属で構成したが、帯電した電荷を接地によって除去可能であれば、種々の導電材料で構成することも可能である。さらに、実施形態では、案内部材28を、ポリアセタールで構成したが、帯電列上、コーヒー豆よりもプラスに帯電する傾向の高い他の材料(例えばガラスやエポキシ樹脂)で構成することも可能である。
【0050】
なお、上側および下側細粉砕リング13、25、ならびに通路壁リング27などを、帯電列上、コーヒー豆よりもプラスに帯電する傾向の高い材料で構成することも可能である。この場合、コーヒー粉がマイナスに帯電するので、案内部材28の材料として、帯電列上、コーヒー豆よりもマイナスに帯電する傾向の高い材料(例えばポリプロピレンやポリフェニレンサルファイド)を採用することが好ましい。
【0051】
また、実施形態では、上下方向に延びる回転軸22を中心として、原料フィーダ21、下側細粉砕リング25および粉原料収集・吐出プレート24が回転するように構成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、前述した従来のコーヒーミルと同様、回転軸を水平に延びるように配置したコーヒーミルに本発明を適用することも可能である。さらに、実施形態で示したコーヒーミル1の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 コーヒーミル
2 ミル本体部
3 モータ
3a モータのケース(接地手段)
6 不動ミル部
7 回転ミル部
13 上側細粉砕リング
18 粉砕凸部
21 原料フィーダ
22 回転軸
24 粉原料収集・吐出プレート(粉原料収集・吐出部)
24a 羽根部(可動部)
25 下側細粉砕リング(回転粉砕部)
26 粉送出し通路
27 通路壁リング(通路壁)
27a 吐出口
28 案内部材
29 接続ばね(接地手段)
30 アース線(接地手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽出による飲料の調理に使用される原料を粉砕する飲料抽出用原料の粉砕装置であって、
所定方向に延びる軸線を中心として回転自在に構成され、原料の粉砕時に、供給された原料を回転しながら粉砕し、当該粉砕された原料である粉原料を前記軸線の径方向に送り出す回転粉砕部と、
導電材料から成り、前記回転粉砕部の外周面に対向し且つ当該外周面全体を囲うように配置され、当該外周面との間に前記粉原料が送り出されるリング状の粉送出し通路を画成するとともに、当該粉送出し通路内の粉原料を外部に吐出するための吐出口が形成された通路壁と、
前記粉送出し通路内を移動自在の可動部を有し、原料の粉砕時に、当該可動部が前記粉送出し通路内を移動することにより、当該粉送出し通路内の粉原料を収集し、前記吐出口から外部に吐出する粉原料収集・吐出部と、
原料の粉砕時に、前記回転粉砕部、および前記粉原料収集・吐出部の前記可動部を駆動する駆動手段と、
前記通路壁を接地する接地手段と、
を備えていることを特徴とする飲料抽出用原料の粉砕装置。
【請求項2】
前記通路壁は、アルミニウムを主成分とする金属で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の飲料抽出用原料の粉砕装置。
【請求項3】
前記通路壁の前記吐出口に接続され、当該吐出口から吐出された粉原料を外部に案内するための案内部材を、さらに備え、
当該案内部材は、帯電列上、原料の粉砕時に当該原料が帯電する極性と同じ極性に且つ当該原料よりも帯電する傾向が高い材料で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の飲料抽出用原料の粉砕装置。
【請求項4】
前記案内部材は、ポリアセタールで構成されていることを特徴とする請求項3に記載の飲料抽出用原料の粉砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−39206(P2013−39206A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177213(P2011−177213)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】